説明

ベルトコンベヤ装置

【課題】搬送用ベルトのテンション用プーリの位置を制御して、ベルトと駆動装置の長寿命化を実現できるベルトコンベヤ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】搬送用ベルト55は、後端プーリ53、前端プーリ52、駆動補助用プーリ67、駆動用プーリ65、第1テンション用プーリ69、第2テンション用プーリ73、そして前記後端プーリ53へ戻るように順に引き回されており、駆動用モータ66により駆動用プーリ65を回転させることにより、搬送用ベルト55は回動される構成とされ、駆動用モータ66へ供給される電流により搬送用ベルト55の負荷が求められ、求められた搬送用ベルト55の負荷に応じてリリーフ付き減圧弁72へ圧力指令信号が出力され、テンション用油圧シリンダ71を介して第1テンション用プーリ69が移動され、搬送用ベルト55に前記負荷に比例したテンションが付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベヤ装置、特に自走式ベルトコンベヤ装置における搬送用ベルトのテンション付与装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自走式のベルトコンベヤ装置の一例が、特許文献1に開示されている。
すなわち、自走式のベルトコンベヤ装置は、コンベヤ本体と、支持手段を介して前記コンベヤ本体を支持する自走車両とで構成され、前記コンベヤ本体は、コンベヤフレームと、コンベヤフレームの前後両端部に設けられたプーリと、両プーリ間に巻回され、被搬送物(土砂等)を搬送するベルトと、ベルトを回動させる駆動装置と、ベルトのテンションを調節するスクリュー式のテークアップ装置と、ベルトおよび被搬送物の重量を受ける複数のキャリヤローラとで構成されている。
【0003】
前記スクリュー式のテークアップ装置は、前記コンベヤフレームに設けられた枠体と、前記ベルトの移動経路の途中に設けられ前記枠体に昇降自在に支持される調整用プーリと、この調整用プーリを昇降させて調整用プーリの上下位置を調節するネジ棒とで構成され、ベルトのテンションが不足した場合は、作業者がテークアップ装置のネジ棒を回して調整用プーリを下降させ、またベルトのテンションが増大し過ぎた場合は、作業者がテークアップ装置のネジ棒を回して調整用プーリを上昇させている。
【0004】
このように、作業者が手動で、ベルトのテンションを調整するテークアップ装置が設けられ、ベルトのテンションは、負荷を想定して(ベルトにより被搬送物を搬送しているときを想定して)ベルトがスリップしないように調整されている。また負荷を想定したテンションに調整されるために、駆動装置には、このテンションに抗してベルトを回動させる駆動力が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4187429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来のベルトコンベヤ装置では、ベルトのテンションは、ベルトにより被搬送物を搬送している際にベルトがスリップしないように、負荷を想定して調整されているために、無負荷のとき(被搬送物を搬送していない空の状態でベルトが回動されているとき)にも、同一のテンションがベルトにかかり、駆動装置にこのテンションに抗してベルトを回動させる駆動力が求められるために、ベルトと駆動装置の寿命が短くなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、負荷により搬送用ベルトのテンション用プーリの位置を制御して、スリップを防止するとともに、ベルトと駆動装置の長寿命化を実現できるベルトコンベヤ装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、コンベヤフレームと、このコンベヤフレームの両端部に設けられたプーリと、これら両プーリ間に巻回されて被搬送物を搬送する搬送用ベルトと、前記搬送用ベルトを回動させる駆動装置と、前記搬送用ベルトにテンションを付与するテンション付与装置を備えたベルトコンベヤ装置であって、
前記駆動装置として、前記搬送用ベルトの移動経路の途中に配置されて前記搬送用ベルトを駆動する駆動用プーリと、前記駆動用プーリを回動する駆動用モータとを設け、
前記テンション付与装置として、前記搬送用ベルトの移動経路の途中に所定方向に移動可能に設けられたテンション用プーリと、前記テンション用プーリを前記所定方向に移動させて前記搬送用ベルトにテンションを付与するテンション用油圧シリンダとを設け、
外部からの圧力指令信号に応じて前記テンション用油圧シリンダにかかる油圧を調整するリリーフ付き減圧弁と、前記駆動用モータへ供給される電流に基づいて前記搬送用ベルトの負荷を求め、求めた前記搬送用ベルトの負荷に応じて前記リリーフ付き減圧弁へ前記圧力指令信号を出力し、前記テンション用油圧シリンダを介して前記テンション用プーリを移動させ、前記搬送用ベルトに前記負荷に比例したテンションを付与する制御装置を備えることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、駆動用モータへ供給される電流に基づいて搬送用ベルトの負荷が求められ、求められた搬送用ベルトの負荷に応じてリリーフ付き減圧弁を介してテンション用プーリが移動され、搬送用ベルトに前記負荷に比例したテンションが付与される。
【0010】
搬送用ベルトによる搬送する被搬送物の重量が増加すると(負荷が増加すると)、駆動用プーリがスリップしやすくなることから、テンション用プーリは搬送用ベルトを張る方向に移動され、テンションが増加され、スリップの恐れが解消され、安定して被搬送物が搬送される。この搬送用ベルトを張った状態では、搬送用ベルトと駆動装置(駆動用プーリ)に大きな負荷がかかり続けることになり、搬送用ベルトと駆動装置の寿命が短くなるが、搬送用ベルトによる搬送する被搬送物の重量が減少すると(負荷が減少すると)、テンション用プーリは搬送用ベルトを緩める方向に移動され、テンションが減少される。すると、駆動用プーリから搬送用ベルトへ駆動力を伝達する摩擦力が低下するが、負荷が減少しているために、スリップする恐れはなく、また搬送用ベルトを緩めた状態では、搬送用ベルトと駆動装置(駆動用プーリ)にかかる負荷は減少されることにより、搬送用ベルトと駆動装置の寿命が延びる。
【0011】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、外部からの回転数指令に基づいて、指令された設定回転数で前記駆動用モータを駆動し、このとき前記駆動用モータへ供給する電流を検出して前記制御装置へ出力するインバータを備え、前記制御装置は、外部からの搬送用ベルトの速度指令に基づいて、指令された速度に相当する前記駆動用プーリの回転数を求め、この求めた回転数を前記回転数指令として前記インバータへ出力することを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、駆動用モータは、インバータによって、制御装置から出力される回転数指令により指令される設定回転数で駆動され、このときインバータは駆動用モータへの供給電流を検出し、制御装置へ出力し、この供給電流により、搬送用ベルトの負荷が求められる。
【0013】
また請求項3に記載の発明は、コンベヤフレームと、このコンベヤフレームの両端部に設けられたプーリと、これら両プーリ間に巻回されて被搬送物を搬送する搬送用ベルトと、前記搬送用ベルトを回動させる駆動装置と、前記搬送用ベルトにテンションを付与するテンション付与装置を備えたベルトコンベヤ装置であって、
前記駆動装置として、前記搬送用ベルトの移動経路の途中に配置されて前記搬送用ベルトを駆動する2台の駆動用プーリと、前記各駆動用プーリをそれぞれ回動する駆動用モータとを設け、
前記テンション付与装置として、前記搬送用ベルトの移動経路の途中に所定方向に移動可能に設けられたテンション用プーリと、前記テンション用プーリを前記所定方向に移動させて前記搬送用ベルトにテンションを付与するテンション用油圧シリンダとを設け、
外部からの圧力指令信号に応じて前記テンション用油圧シリンダにかかる油圧を調整するリリーフ付き減圧弁と、前記搬送用ベルトの移動経路の途中に配置された案内用プーリと、前記案内用プーリの回転速度を検出し、前記搬送用ベルトの実際の速度を検出するベルト速度検出器とを備え、
前記駆動用モータへ供給される電流に基づいて前記搬送用ベルトの速度を演算し、この演算された搬送用ベルトの速度から、前記ベルト速度検出器により検出された前記搬送用ベルトの実際の速度を減算して速度差を求め、この求めた速度差が所定の速度差以内にあるとき、前記2台の各駆動用モータへそれぞれ供給される電流の平均値に基づいて前記搬送用ベルトの負荷を演算し、この演算した搬送用ベルトの負荷に応じて前記リリーフ付き減圧弁へ前記圧力指令信号を出力し、前記テンション用油圧シリンダを介して前記テンション用プーリを移動させ、前記搬送用ベルトに前記負荷に比例したテンションを付与し、前記求めた速度差が所定の速度差を超えると、前記圧力指令信号を強めて前記リリーフ付き減圧弁へ出力し、前記搬送用ベルトのテンションを強める制御装置を備えることを特徴とするものである。
【0014】
上記構成によれば、2台の各駆動用モータへそれぞれ供給される電流に基づいて搬送用ベルトの速度が演算され、この演算された搬送用ベルトの速度から、ベルト速度検出器により検出された搬送用ベルトの実際の速度が減算されて速度差が求められ、この求められた速度差が所定の速度差以内にあるかどうかが判定され、すなわち駆動用モータによる駆動用プーリの回転に基づく搬送用ベルトの速度と、実測した搬送用ベルトの速度により、スリップが発生しているかどうかが判定される。
【0015】
求めた速度差が所定の速度差以内のとき、すなわちスリップが発生していないとき、2台の駆動用モータへ供給される電流の平均値に基づいて搬送用ベルトの負荷が求められ、求められた搬送用ベルトの負荷に応じてリリーフ付き減圧弁を介してテンション用プーリが移動され、搬送用ベルトに前記負荷に比例したテンションが付与される。
【0016】
また求めた速度差が所定の速度差を超えたとき、すなわちスリップが発生したとき、圧力指令信号が強めて出力され、搬送用ベルトのテンションが強められ、スリップが解消される。
【0017】
また請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明であって、外部からの回転数指令に基づいて、指令された設定回転数で前記2台の駆動用モータをそれぞれ駆動し、このとき前記各駆動用モータへ供給する電流を検出して前記制御装置へ出力するインバータを備え、前記制御装置は、外部からの搬送用ベルトの速度指令に基づいて、指令された速度に相当する前記駆動用プーリの回転数を求め、この求めた回転数を前記回転数指令として前記インバータへ出力するとともに、前記求めた速度差が所定の速度差を超えると、あるいは前記2台の各駆動用モータへそれぞれ供給される電流の電流差が所定の範囲を超えると、前記回転数指令の指令回転数を低くして出力することを特徴とするものである。
【0018】
上記構成によれば、各インバータによって、制御装置から指令される設定回転数により各駆動用モータは駆動され、そのときの各駆動用モータへの供給電流が検出され、これら供給電流により、搬送用ベルトの負荷が求められる。また求めた速度差が所定の速度差を超えたとき、すなわちスリップが発生したとき、回転数指令の設定回転数は低くされ、駆動用モータの回転数を低くされて(減速されて)、スリップが解消される。また2台の各駆動用モータへそれぞれ供給される電流の電流差が所定の範囲を超えたとき、回転数指令の設定回転数を低くされ、2台の各駆動用モータの発生トルクと回転数の違いにより搬送用ベルトが大きく波打つことが回避される。
【0019】
また請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明であって、前記テンション付与装置は、前記搬送用ベルトの移動経路の途中に所定方向に移動可能に設けられた第2のテンション用プーリと、前記第2のテンション用プーリを前記所定方向に移動させる手動操作の移動機構を備えることを特徴とするものである。
【0020】
上記構成によれば、第2のテンション用プーリが移動機構により手動で移動されて、搬送用ベルトにテンションが付与され、このテンションを基礎に、テンション用プーリが自動で移動されることにより、搬送用ベルトのテンションが自動で調整される。
【0021】
また請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明であって、前記コンベヤフレームは、前記搬送用ベルトによる被搬送物の搬送経路に沿って、主フレーム体と、ヒンジ体の幅方向の横軸を中心に回動自在に前記主フレーム体に連結された副フレーム体とに分割され、前記主フレームと副フレームはそれぞれ、前記横軸を中心に上下方向に回動可能とされたことを特徴とするものである。
【0022】
上記構成によれば、コンベヤフレームは、主フレームと副フレームは分割されており、それぞれは横軸を中心に上下方向に回動可能とされ、搬送用ベルトの後端と先端の高さ位置が変更可能とされる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のベルトコンベヤ装置は、搬送用ベルトに負荷に比例したテンションが付与されることにより、スリップの恐れを解消でき、搬送用ベルトと駆動装置の長寿命化を実現できる、という効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1におけるベルトコンベヤ装置の搬送用ベルトの駆動装置とテンション付与装置の構成を示す模式図である。
【図2】同ベルトコンベヤ装置を備えた自走式ベルトコンベヤ装置の側面図である。
【図3】同ベルトコンベヤ装置のコンベヤ本体の図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
【図4】同ベルトコンベヤ装置のコンベヤ本体の要部側面図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるベルトコンベヤ装置の搬送用ベルトの駆動装置とテンション付与装置の構成を示す模式図である。
【図6】同ベルトコンベヤ装置の制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2は本発明の実施の形態におけるベルトコンベヤ装置を備えた自走式ベルトコンベヤ装置の側面図であり、図2に示すように、自走式ベルトコンベヤ装置11は、ベルトコンベヤ装置12と、支持装置13を介して前記ベルトコンベヤ装置12を支持する自走車両14から構成されている。なお、この自走車両14の進行方向を前後方向とし、この前後方向とは直角な方向を左右方向として説明する。
【0026】
[自走車両14]
自走車両14は、車両本体21と、車両本体21を支持する左右一対の前車輪22および左右一対の後車輪23とを備えている。
【0027】
前記車両本体21は、枠部材25および天板26からなる支持架台27と、この支持架台27上に設けられて前記ベルトコンベヤ装置12を左右側から傾動自在に支持する左右一対の支持部材28と、上記枠部材25の前後位置での下面にそれぞれ取り付けられて土砂等の被運搬物54の搬送時に下端部を接地させて支持架台27を支持する伸縮自在の支持脚体29とから構成される。
【0028】
前記車両本体21には、支持架台27(天板26)の下部に、車両本体21を走行させるエンジン(図示せず)と、いずれも図1に示す、油圧ポンプ32、油圧ユニット33、発電機34、コンバータ35、およびインバータ36が設けられ、またその側部に、運転席37と、支持架台27上に作業者が上るための階段38と、図1に示す制御装置39が収納された制御盤40が設けられている。図1に示すように、発電機34により発電された電力により、コンバータ35、インバータ36を介してベルトコンベヤ装置12の駆動モータ(後述する)が駆動される。またインバータ36は、制御装置39(外部)より出力される回転数指令に基づいて、指令された設定回転数で駆動用モータを回転し、運転中に駆動用モータへ供給している電流を測定し、その測定した電流値を制御装置39へ出力する機能を有している。
【0029】
[支持装置13]
支持装置13は、車両本体21の前部および後部に設けられて上記ベルトコンベヤ装置12を鉛直面内で傾動自在に支持する傾動用前部シリンダ41および傾動用後部シリンダ42とから構成される。
【0030】
図1に示すように、油圧ポンプ32から吐出された圧油は、油圧ユニット33に供給されており、この油圧ユニット33により、傾動用前部シリンダ41および傾動用後部シリンダ42に圧油が供給され、ロッドの伸縮が実行される(詳細な説明は省略する)。
【0031】
[ベルトコンベヤ装置12]
ベルトコンベヤ装置12は、図2〜図4に示すように、コンベヤフレーム51と、コンベヤフレーム51の前後両端部に設けられた前端プーリ52および後端プーリ53と、これら両プーリ52,53間に巻回されて被搬送物(土砂等)54を搬送する搬送用ベルト55と、コンベヤフレーム51の中央下部に配置されて搬送用ベルト55を回動させる駆動装置56と、コンベヤフレーム51の中央下部に配置されて搬送用ベルト55にテンション(張力)を付与するテンション付与装置57と、搬送用ベルト55および被搬送物54(土砂等)の重量を受ける、中央部支持ローラ58Aおよび側部支持ローラ58Bからなる複数のキャリヤローラ59とから構成されている。以下、上記両プーリ52,53の上端を接続してなる搬送用ベルト55の面を搬送面とし、上記両端プーリ52,53の下端を接続してなる搬送用ベルト55の面を戻り面とする。
【0032】
前記キャリヤローラ59の中央部支持ローラ58Aは、その上端が搬送面に位置するようにコンベヤフレーム51の前後に亘って配置され、側部支持ローラ58Bは、中央部支持ローラ58Aの左右両側に配置されるとともに、中央部支持ローラ58A側から左右端側へ向けて上方へ傾斜させて、被運搬物54の落下を防止し得る配置にされている。すなわち、中央部支持ローラ58Aおよび側部支持ローラ58Bの前面視が、上方に開口した略円弧形状にされている。
【0033】
前記コンベヤフレーム51は、骨組構造であって前後方向に長尺のフレーム体から構成され、前部の搬送フレーム体(主フレーム体の一例)61および後部の荷受フレーム体(副フレーム体の一例)62からなり、これら前後部のフレーム体61,62は互いにヒンジ体の左右方向(幅方向)の接合軸(横軸)63で回動自在(傾動自在)に接続され、この接合軸63は、両端部で左右一対の前記支持部材28により支持架台27に支持されている。したがって、搬送フレーム体61および荷受フレーム体62はそれぞれ、前記傾動用前部シリンダ41および傾動用後部シリンダ42により独立して、接合軸63を中心にして上下方向に回動可能(傾動可能)とされている。
【0034】
また後部の荷受フレーム体62の後端には、被搬送物54を搬送用ベルト55上へ投入するホッパー64が着脱自在に設けられ、このホッパー64の下方には、搬送用ベルト55の下にキャリヤローラ59が集中的に(例えば10基)配置されており、被搬送物54の落下による衝撃に耐え得る構造としている。
[実施の形態1]
以下、実施の形態1における上記駆動装置56とテンション付与装置57について説明する。
【0035】
「駆動装置56」
駆動装置56は、図1〜図4に示すように、駆動用プーリ65と、減速機付駆動用モータ66と、駆動補助用プーリ67を備えている。
【0036】
駆動用プーリ65は、搬送フレーム体61の後部位置(コンベヤフレーム51の略中間位置)で、且つ搬送用ベルト55の移動経路の途中に配置されて搬送用ベルト55を駆動する。
【0037】
また減速機付駆動用モータ66は、駆動用プーリ65の回転軸にその回転軸が直結され、駆動用プーリ65を回動する。
また駆動補助用プーリ67は、搬送フレーム体61の後部位置(コンベヤフレーム51の略中間位置)で、且つ搬送用ベルト55の移動経路の途中に上端が前記戻り面に位置するように配置され、搬送用ベルト55を転向させるとともに、駆動用プーリ65および搬送用ベルト55の接触面積を増して駆動用プーリ65のトルクを搬送用ベルト55へ効率的に伝達する。またこの駆動補助用プーリ67の前下方の近傍に、前記駆動用プーリ65が配置されている。
【0038】
「テンション付与装置57」
テンション付与装置57は、図1〜図4に示すように、コンベヤフレーム51の中央下部に配置された、第1テンション用プーリ69、第1レール70、単動式のテンション用油圧シリンダ71、第2テンション用プーリ73、第2レール74、およびネジ棒(移動機構の一例)75を備え、さらにリリーフ付き減圧弁72を備えている。
【0039】
第1テンション用プーリ69は、搬送フレーム体61の後部位置(コンベヤフレーム51の略中間位置)で、且つ搬送用ベルト55の移動経路の途中に設けられ搬送フレーム体61に前後方向に移動可能に支持され、搬送用ベルト55のテンションを調整し得る。
【0040】
また第1レール70は、搬送フレーム体61に固定され、第1テンション用プーリ69を前後方向にスライド自在に支持する。
また単動式のテンション用油圧シリンダ71は、搬送フレーム体61に固定され、第1レール70に案内させてテンション用プーリ69を前後方向に移動させて搬送用ベルト55にテンションを付与する。
【0041】
また第2テンション用プーリ73は、搬送フレーム体61の後部位置(コンベヤフレーム51の略中間位置)で、且つ搬送用ベルト55の移動経路の途中に設けられ搬送フレーム体61に前後方向に移動可能に支持され、搬送用ベルト55のテンションを調整する。
【0042】
また前記第2レール74は、搬送フレーム体61に固定され、第2テンション用プーリ73を前後方向にスライド自在に支持する。
またネジ棒75は、搬送フレーム体61に回転自在に支持され、第2レール74に案内させて第2テンション用プーリ73を前後方向に手動操作で移動可能な構成とされ、第2テンション用プーリ73の前後位置を調節する。
【0043】
また第1テンション用プーリ69は、駆動補助用プーリ67より後方で且つ駆動用ローラ65よりも後方に配置され、第2テンション用プーリ73は、その上端が前記戻り面に位置され、第1テンション用プーリ69と駆動補助用プーリ67との間に位置されている。
【0044】
またリリーフ付き減圧弁72は、油圧ポンプ32からテンション用油圧シリンダ71ヘ圧油を供給する配管77(図1参照)に介装され、制御装置39(外部)からの圧力指令信号に応じてテンション用油圧シリンダ71にかかる油圧を調整する。
【0045】
搬送用ベルト55のテンションが不足した場合は、作業者がネジ棒75を回して第2テンション用プーリ73を前方向へ移動させ、また搬送用ベルト55のテンションが増大し過ぎた場合は、作業者がネジ棒75を回して第2テンション用プーリ73を後方向へ移動させ、基礎となる搬送用ベルト55のテンションが調整される。
【0046】
上記構成により、図1に示すように、搬送用ベルト55は、後端プーリ53、前端プーリ52、駆動補助用プーリ67、駆動用プーリ65、第1テンション用プーリ69、第2テンション用プーリ73、そして前記後端プーリ53へ戻るように順に引き回されており、駆動用プーリ65により回動され、第1テンション用プーリ69および第2テンション用プーリ73の前後の移動位置によりテンションが調整されている。
【0047】
前記制御装置39は、搬送用ベルト55の速度およびテンションの調整を行う制御装置であり、図1に示すように、制御装置39には、運転席37から、ベルトコンベヤ装置12により被搬送物54を搬送する速度指令値、すなわち搬送用ベルト55が移動する移動速度(被搬送物54の搬送速度)が入力されている。
【0048】
前記制御装置39は、回転数制御部79とテンション制御部80を有している。
回転数制御部79は、前記速度指令値を入力すると、この搬送用ベルト55の移動速度を出すための駆動用プーリ65の回転数、すなわち駆動用モータ66の回転数を演算し(求め)、この演算した回転数を設定回転数とする上記回転数指令を、インバータ36へ出力する。なお、速度指令値がゼロのとき、インバータ36へは停止信号を出力する。
【0049】
インバータ36は、制御装置39より入力した回転数指令に基づいて、指令された設定回転数で駆動用モータ66を駆動する。すなわち、設定回転数で駆動用モータ66が回転されるよう、負荷に応じて駆動用モータ66へ給電する電流を制御し、これにより駆動用プーリ65を介して搬送用ベルト55が、運転席37から入力された一定の移動速度で移動される。このときインバータ36は、駆動用モータ66へ供給する電流Iを検出して制御装置39へ出力する。またインバータ36は、制御装置39より停止信号を入力すると、駆動モータ66を停止し、よって搬送用ベルト55は停止される。
【0050】
前記テンション制御部80は、インバータ36より入力した、駆動用モータ66への供給する電流Iにより、駆動用モータ66が発生しているトルクを求め、すなわち搬送用ベルト55の負荷を求め、求めた搬送用ベルト55の負荷に比例した圧力指令Pを、リリーフ付き減圧弁72へ出力する。
【0051】
これにより、搬送用ベルト55の負荷が大きくなると、すなわち搬送用ベルト55に搬送されている被搬送物54が重くなり、駆動用モータ66の負荷が重くなると、この負荷に抗して設定回転数(すなわち、被搬送物54の搬送速度)を維持するために駆動用モータ66へ供給される電流Iは大きくなる(駆動用モータ66の発生トルクが大きくされる)。この電流Iに応じて前記圧力指令Pを高くし、リリーフ付き減圧弁72によりテンション用油圧シリンダ71へ印加される圧力を高めて第1テンション用プーリ69を後方向へ移動させ、搬送用ベルト55を引っ張る。すると、搬送用ベルト55のテンションが高まり、駆動用プーリ65から搬送用ベルト55へ駆動力を伝達する摩擦力が増加し、スリップが防止される。
【0052】
また逆に、搬送用ベルト55の負荷が小さくなると、すなわち搬送用ベルト55に搬送されている被搬送物54が軽くなり、駆動用モータ66の負荷が軽くなると、設定回転数(すなわち、被搬送物54の搬送速度)を維持するために駆動用モータ66へ供給される電流Iは小さくなる(駆動用モータ66の発生トルクは小さくされる)。この電流Iに応じて前記圧力指令Pを低くし、リリーフ付き減圧弁72によりテンション用油圧シリンダ71へ印加される圧力を弱めて第1テンション用プーリ69を前方向へ移動させ、搬送用ベルト55を緩める。すると、搬送用ベルト55のテンションが弱まり、駆動用プーリ65から搬送用ベルト55へ駆動力を伝達する摩擦力が減少するが、負荷が小さくなっているためにスリップすることはなく、またテンションが減少されることにより、搬送用ベルト55と駆動用モータ66(駆動用プーリ65)にかかる負荷が減少されることにより、搬送用ベルト55と駆動用モータ66(駆動用プーリ65)の長寿命化が実現される。
[作用]
上記構成による自走式ベルトコンベヤ装置11の作用を説明する。なお、自走式ベルトコンベヤ装置11の走行(移動)に関する作用の説明は省略する。また自走式ベルトコンベヤ装置11の走行中は、コンベヤフレーム51は水平な姿勢、すなわち傾斜用前部シリンダ41のロッドは縮められ、傾斜用後部シリンダ42のロッドは伸びた状態とされる。また油圧ボンプ32と発電機34は起動されているものとする。
【0053】
被搬送物54の搬送位置に自走車両14が到着すると、作業者は、ネジ棒75により第2テンション用プーリ73の位置を調整して搬送用ベルト55のテンションを調整する。すなわち、搬送用ベルト55のテンションが不足している場合は、ネジ棒75を回して第2テンション用プーリ73を前方向へ移動させ、また搬送用ベルト55のテンションが強過ぎている場合は、作業者がネジ棒75を回して第2テンション用プーリ73を後方向へ移動させる。このテンションが、第1テンション用プーリ69による搬送用ベルト55のテンション、すなわち張りの基礎となる。
【0054】
次に、作業者は、運転席37から油圧ユニット33を操作して傾斜用前部シリンダ41および傾斜用後部シリンダ42を駆動する。すなわち、被搬送物54が投入される高さに応じて、傾斜用後部シリンダ42のロッドを縮めて荷受フレーム体62の後端を下降させ、また被搬送物54を積み上げる高さに応じて、傾斜用前部シリンダ41のロッドを伸ばして搬送フレーム体61の前端を上昇させる。
【0055】
続いて、作業者は、運転席37から制御装置39へベルトコンベヤ装置12の起動操作をしてベルトコンベヤ装置12により被搬送物54を搬送する速度指令値、すなわち被搬送物54の搬送速度を入力する。
【0056】
すると制御装置39は、インバータ36を起動して、被搬送物54の搬送速度を得ることができる設定回転数で駆動用モータ66を回転させ、これにより駆動用プーリ65を介して搬送用ベルト55が前記搬送速度で移動される。また制御装置39は、インバータ36から入力される駆動用モータ66へ供給する電流Iに応じて、リリーフ付き減圧弁72へ圧力指令信号Pを出力し、テンション用油圧シリンダ71に印加される圧力を制御して第1テンション用プーリ69の前後位置を制御し、搬送用ベルト55にかけるテンションを制御する。
【0057】
ホッパー64に被搬送物54が投入されると、被搬送物54は搬送用ベルト55により搬送され、コンベヤフレーム51の前端(先端)から搬出される。搬送用ベルト55により搬送されている被搬送物54の重量の変動により、駆動用ベルト55(駆動用プーリ65)にかかる負荷が変動し、これにより、駆動用プーリ65を設定回転数で回転させるための駆動用モータ66の電流値が変動する。このとき、制御装置39により供給電流Iに応じて第1テンション用プーリ69の前後位置が制御され、被搬送物54の重量に比例して搬送用ベルト55にかけるテンションが制御され、駆動用プーリ65から搬送用ベルト55へ駆動力を伝達する摩擦力が制御される。
【0058】
すなわち、搬送用ベルト55による搬送する被搬送物54の重量が増加すると(負荷が増加すると)、駆動用プーリ65がスリップしやすくなることから、第1テンション用プーリ69が搬送用ベルト55を張る方向に移動され、テンションが増加され、駆動用プーリ65から搬送用ベルト55へ駆動力を伝達する摩擦力が増加してスリップの恐れが解消され、安定して被搬送物が搬送される。
【0059】
また、搬送用ベルトを張った状態では、搬送用ベルト55と駆動用モータ66(駆動用プーリ65)に大きな負荷がかかり続けることになり、搬送用ベルト55と駆動用モータ66(駆動用プーリ65)の寿命が短くなるが、搬送用ベルト55による搬送する被搬送物54の重量が減少すると(負荷が減少すると)、第1テンション用プーリ69が搬送用ベルト55を緩める方向に移動され、テンションが減少される。すると、駆動用プーリ65から搬送用ベルト55へ駆動力を伝達する摩擦力が低下するが、負荷が減少しているために、スリップする恐れはなく、また搬送用ベルト55を緩めた状態では、搬送用ベルト55と駆動用モータ66(駆動用プーリ65)にかかる負荷は減少されることにより、搬送用ベルト55と駆動用モータ66(駆動用プーリ65)の寿命が延びる。
【0060】
次に、被搬送物54の搬送が終了すると、作業者は、運転席37から制御装置39へベルトコンベヤ装置12の停止操作を行う。すると制御装置39は、インバータ36を停止して、搬送用ベルト55が停止される。
【0061】
次に、作業者は、運転席37から油圧ユニット33を操作して傾斜用前部シリンダ41および傾斜用後部シリンダ42を駆動して、コンベヤフレーム51を水平な姿勢に戻す。すなわち、傾斜用後部シリンダ42のロッドを伸ばして荷受フレーム体62の姿勢を水平とし、また傾斜用前部シリンダ41のロッドを縮めて搬送フレーム体61の姿勢を水平とする。
【0062】
そして、自走式ベルトコンベヤ装置11を移動させるときは、運転席37から運転操作を行う。
以上のように本実施の形態1によれば、リアルタイムで測定される駆動用モータ66へ供給される電流Iにより、リアルタイムでテンション制御を実現できる。よって、搬送用ベルト55による搬送する被搬送物54の重量が増加すると(負荷が増加すると)、第1テンション用プーリ69が搬送用ベルト55を張る方向に移動されてテンションが増加され、駆動用プーリ65から搬送用ベルト55へ駆動力を伝達する摩擦力が増加されることにより、スリップの恐れを解消でき、安定して被搬送物54を搬送することができる。また搬送用ベルト55による搬送する被搬送物54の重量が減少すると(負荷が減少すると)、第1テンション用プーリ69が搬送用ベルト55を緩める方向に移動されてテンションが減少され、搬送用ベルト55と駆動用モータ66(駆動用プーリ65)にかかる負荷が減少されることにより、搬送用ベルト55と駆動用モータ66(駆動用プーリ65)の長寿命化を実現できる。
【0063】
また本実施の形態1によれば、第2のテンション用プーリ73が手動で移動されて、搬送用ベルト55にテンションが付与され、このテンションを基礎に、第1テンション用プーリ69が自動で移動され、搬送用ベルト55のテンションが自動で調整されることにより、第1テンション用プーリ69の移動によるテンションを精度良く制御することができる。
【0064】
また本実施の形態1によれば、インバータ36により、設定回転数で駆動用モータ66を駆動しているときの駆動用モータ66への供給電流が検出されることにより、他に電流センサを配置する必要がなくなり、電流センサを配置するスペースを確保する必要を無くすことができる。
【0065】
また本実施の形態1によれば、コンベヤフレーム51は、搬送フレーム体61と荷受フレーム体62に分割され、それぞれは接合軸63を中心に上下方向に回動可能とされていることにより、搬送用ベルト55の後端と先端の高さ位置を、被搬送物54が投入される高さ位置と、被搬送物54を積み上げる高さ位置に応じて変更することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2では、図5に示すように、駆動装置56を、タンデム駆動式としている。すなわち、第1駆動用プーリ65Aと第1減速機付駆動用モータ66Aと第1駆動補助用プーリ67Aからなるセットと、第2駆動用プーリ65Bと第2減速機付駆動用モータ66Bと第2駆動補助用プーリ67Bからなるセットとを合計2セット備えている。
【0066】
駆動用プーリ65A,65Bは、搬送フレーム体61の後部位置(コンベヤフレーム51の略中間位置)で、且つ搬送用ベルト55の移動経路の途中に配置されて搬送用ベルト55を駆動する。
【0067】
また駆動用モータ66A,66Bはそれぞれ、駆動用プーリ65A,65Bの回転軸にその回転軸が直結され、駆動用プーリ65A,65Bを回動する。
また駆動補助用プーリ67A,67Bはそれぞれ、搬送フレーム体61の後部位置(コンベヤフレーム51の略中間位置)で、且つ搬送用ベルト55の移動経路の途中に上端が前記戻り面に位置するように配置され、搬送用ベルト55を転向させるとともに、各駆動用プーリ65A,65Bと搬送用ベルト55の接触面積を増して各駆動用プーリ65A,65Bのトルクを搬送用ベルト55へ効率的に伝達する。また第1駆動補助用プーリ67Aの前下方の近傍に、前記第1駆動用プーリ65Aが配置され、第2駆動補助用プーリ67Bの後方の近傍に、前記第2駆動用プーリ65Bが配置されている。
【0068】
そして、各駆動用モータ66A,66Bに対応して、第1インバータ36Aと第2インバータ36Bが設けられ、第1駆動用モータ66Aは、発電機34により発電された電力により、コンバータ35を介して第1インバータ36Aにより駆動され、第2駆動用モータ66Bは、発電機34により発電された電力により、コンバータ35を介して第2インバータ36Bにより駆動される。また各インバータ36A,36Bはそれぞれ、制御装置39より出力される回転数指令に基づいて、指令された設定回転数で駆動用モータ66A,66Bを回転し、運転中に駆動用モータ66A,66Bへ供給している電流I,Iを測定し、その測定した電流値I,Iを制御装置39へ出力する機能を有している。
【0069】
また第1テンション用プーリ69と第2テンション用プーリ73は、その上下位置が実施の形態1の場合とは逆にされており、これに伴い、第2テンション用プーリ73と後端プーリ53との間で、搬送用ベルト55の移動経路の途中に、搬送用ベルト55を導く案内用プーリ82が配置され、さらに案内用プーリ82の回転軸に連結されて案内用プーリ82の回転速度を検出することにより、搬送用ベルト55の実際の速度を検出するベルト速度検出器83が設けられている。
【0070】
上記構成により、図5に示すように、搬送用ベルト55は、後端プーリ53、前端プーリ52、第1駆動補助用プーリ67A、第1駆動用プーリ65A、第2駆動用プーリ65B、第2駆動補助用プーリ67B、第1テンション用プーリ69、第2テンション用プーリ73、案内用プーリ82、そして前記後端プーリ53へ戻るように順に引き回されており、第1駆動用プーリ65Aおよび第2駆動用プーリ65Bにより回動され、第1テンション用プーリ69および第2テンション用プーリ73の前後の移動位置によりテンションが調整されている。
【0071】
制御装置39の構成を図6に示す。
図6に示すように、制御装置39には、運転席37から指令された上記速度指令値(被搬送物54の搬送速度)と、第1インバータ36Aにより測定された第1駆動用モータ66Aへの供給する電流Iと、第2インバータ36Bにより測定された第2駆動用モータ66Bへの供給する電流Iと、ベルト速度検出器83により検出された搬送用ベルト55の実速度Vが入力されている。また制御装置39より各インバータ36A,36Bヘ回転数指令が出力され、リリーフ付き減圧弁72へ圧力指令Pが出力されている。
【0072】
前記制御装置39は、図6に示すように、上記回転数制御部79とテンション制御部80の他に次の構成を有している。
回転数制御部79により演算された、入力した前記速度指令値に基づく駆動用モータ66の回転数に、後述する条件によりバイアスをかける第1加算器86と、
テンション制御部80により設定された搬送用ベルト55の負荷に比例した圧力指令Pに、後述する条件によりバイアスをかける第2加算器87と、
第1駆動用モータ66Aへ供給している電流Iと、第2駆動用モータ66Bへ供給している電流Iとの電流差ΔIを演算する第1減算器88と、
第1減算器88により演算された電流差ΔIが、予め設定された電流IS1と電流IS2(>IS1)間に収まっているかどうかにより、電流差ΔIが、適正な範囲にあるかどうかを判定し、適正な範囲にあるときに動作する第1比較器89と、
第1比較器89が動作したときに動作する第1リレイ90と、
第1駆動用モータ66Aへ供給している電流Iと、第2駆動用モータ66Bへ供給している電流Iとの平均電流値IABを演算する平均値演算部91と、
平均値演算部91により演算された平均電流値IABにより2台の駆動モータ66A,66Bの平均回転数を演算し、この演算した平均回転数、すなわち駆動用プーリ65A,65Bの平均回転数により搬送用ベルト55の移動速度Vを演算するベルト速度演算部92と、
ベルト速度演算部92により演算された搬送用ベルト55の移動速度Vから、ベルト速度検出器83により検出された搬送用ベルト55の実速度Vを減算して、速度差ΔV、すなわちスリップの度合いを求める第2減算器93と、
第2減算器93により演算された速度差ΔVが所定の速度V以下かどうか、すなわちスリップが許容範囲にあるかどうかを判定し、許容範囲にあるときに動作する第2比較器94と、
第2比較器94が動作したときに動作する第2リレイ95と
が設けられている。
【0073】
なお、前記テンション制御部80は、平均値演算部91により演算された平均電流値IABにより、2台の駆動用モータ66A,66Bが平均して発生しているトルクを求め、すなわち搬送用ベルト55の負荷を求め、求めた搬送用ベルト55の負荷に比例した圧力指令Pを演算している。また第1リレイ90が動作しているとき(a接点が閉動作しているとき)、すなわち電流差ΔIが、適正な範囲にあることを実行条件として、圧力指令Pを演算しており、電流差ΔIが適正な範囲になく、2台の駆動用モータ66A,66Bの一方に異常が発生している恐れがあるときは、適正な範囲にあるときに演算した圧力指令Pを維持して変更しないようにしている。
【0074】
また第1加算器86にかけるバイアスとして、第1リレイ90が動作していないとき(b接点が閉動作しているとき)、すなわち2台の駆動用モータ66A,66Bへ供給している電流I,Iの電流差ΔIが、適正な範囲にないとき、あるいは第2リレイ95が動作していないとき(b接点が閉動作しているとき)、すなわちスリップが許容範囲外にあり、スリップが大きくなっているとき、演算された駆動用モータ66の回転数を低くするマイナスの設定値(−β)が入力される。その他のときは、バイアスとしてゼロが入力され、回転数制御部79により演算された、入力した前記速度指令値に基づく駆動用モータ66の回転数がそのまま回転数指令として出力される。
【0075】
また第2加算器87にかけるバイアスとして、第2リレイ95が動作していないとき(b接点が閉動作しているとき)、すなわちスリップが許容範囲外にあり、スリップが大きくなっているとき、圧力指令Pを大きくする(テンションを強める)プラスの設定値(+α)が入力される。その他のときは、バイアスとしてゼロが入力され、テンション制御部80により設定された搬送用ベルト55の負荷に比例した圧力指令Pがそのまま出力される。
【0076】
上記制御装置39の構成による作用を説明する。
回転数制御部79によって、運転席37より入力した前記速度指令値に基づいて駆動用モータ66の回転数が演算され、またテンション制御部80によって搬送用ベルト55の負荷に比例した圧力指令Pが演算される。
【0077】
また2台の各駆動用モータ66A,66Bへそれぞれ供給される電流I,Iに基づいて搬送用ベルト55の速度Vが演算され、この演算された搬送用ベルト55の速度Vから、ベルト速度検出器83により検出された搬送用ベルト55の実際の速度Vが減算して速度差ΔVが求められ、この求められた速度差ΔVが所定の速度差V以内にあるかどうかが判定され、すなわち駆動用モータ66A,66Bによる駆動用プーリ65A,65Bの回転に基づく搬送用ベルト55の速度Vと、実測した搬送用ベルト55の速度Vにより、スリップが発生しているかどうかが判定される。
【0078】
また2台の駆動用モータ66A,66Bへ供給している電流I,Iの電流差ΔIが求められ、電流差ΔIが適正な範囲にあるかどうかが判定される。
速度差ΔVが所定の速度差Vを超えて、スリップが大きいと判断された場合(第2リレイ95が動作してなく、b接点が閉動作しているとき)、あるいは電流差ΔIが適正な範囲にない場合(第1リレイ90が動作してなく、a接点が開動作、b接点が閉動作しているとき)、インバータ36A,36Bへ出力される設定回転数が低くされ{マイナスの設定値(−β)がバイアスされ}、よって各駆動用モータ66A,66Bの回転数が落とされる(減速される)。その結果、スリップが小さくされ、また各駆動用モータ66A,66Bのトルクと回転数の違いにより搬送用ベルト55が大きく波打つことが回避される。
【0079】
なお、前記スリップが小さく、且つ電流差ΔIが適正な範囲にあるとき、すなわち駆動用モータ66の回転数にバイアスがかけられないとき、回転数指令は、運転席37より入力した前記速度指令値に基づいて出力され、搬送用ベルト55は入力した一定の移動速度で移動される。
【0080】
また速度差ΔVが所定の速度差Vを超えて、スリップが大きいと判断された場合、圧力指令Pが強められて(テンションを強めるように)出力され{プラスの設定値(+α)がバイアスされ}、よって第1テンション用プーリ69が搬送用ベルト55を張る方向に移動され、テンションが増加され、その結果、スリップが小さくされる。また電流差ΔIが適正な範囲にない場合、テンション制御部80では新たな演算を中止し、電流差ΔIが適正な範囲にあるときに演算した圧力指令Pがそのまま保持して出力され、電流I,Iが変動してもテンションはそのまま維持される。
【0081】
なお、速度差ΔVが所定の速度差V以内で、スリップが小さく、バイアスがかけられないとき、前記圧力指令Pは、搬送用ベルト55の負荷に応じてリリーフ付き減圧弁72へ出力され、テンション用油圧シリンダ71を介して第1テンション用プーリ69を移動させ、搬送用ベルト55に前記負荷に比例したテンションが付与される。
【0082】
上記構成による自走式ベルトコンベヤ装置11の作用は、制御装置39の動作以外は実施の形態1と同じであり説明を省略する。
以上のように本実施の形態2によれば、実施の形態1による効果、すなわち、リアルタイムで測定される駆動用モータ66A,66Bへ供給される電流I,Iの平均電流値IABにより、リアルタイムで、搬送用ベルト55により搬送される被搬送物54(負荷)に応じたテンション制御を実現でき、よって、スリップの恐れを解消でき、安定して被搬送物54を搬送することができ、さらに搬送用ベルト55と駆動用モータ66A,66B(駆動用プーリ65A,65B)の長寿命化を実現できる。
【0083】
さらにこのようにテンション制御を実行していても、実際に許容範囲を超えてスリップが発生したことが検出されると(駆動用モータ66A,66Bによる駆動用プーリ65A,65Bの回転に基づく搬送用ベルト55の速度と実測した搬送用ベルト55の速度差ΔVが所定の速度差Vを超えると)、圧力指令Pにはプラスの設定値(+α)がバイアスされ、テンションを強められることにより、スリップを回避することができる。また同時に、各インバータ36A,36Bへ出力される設定回転数が低くされて{マイナスの設定値(−β)がバイアスされて}、各駆動用モータ66A,66Bの回転数が落とされることにより、スリップの発生を抑制する方向とすることができる。
【0084】
また本実施の形態2によれば、2台の駆動用モータ66A,66Bへ供給している電流I,Iの電流差ΔIが、適正な範囲にない場合、インバータ36A,36Bへ出力される設定回転数が低くされることにより、各駆動用モータ66A,66Bの回転数が落とされ、その結果、各駆動用モータ66A,66Bのトルクと回転数の違いにより搬送用ベルト55が大きく波打つことを回避することができる。
【0085】
また本実施の形態2によれば、2台の各駆動用モータ66A,66Bへそれぞれ供給される電流に基づいて搬送用ベルト55の速度が演算され、この演算された搬送用ベルト55の速度から、ベルト速度検出器83により検出された搬送用ベルト55の実際の速度が減算されて速度差が求められ、この求められた速度差が所定の速度差以内にあるかどうかが判定され、すなわち駆動用モータ66A,66Bによる駆動用プーリ65A,65Bの回転に基づく搬送用ベルト55の速度と、実測した搬送用ベルト55の速度により、スリップが発生しているかどうかが判定されることにより、高精度のスリップ判定を期待できる。
【符号の説明】
【0086】
11 自走式ベルトコンベヤ装置
12 ベルトコンベヤ装置
13 支持装置
14 自走車両
32 油圧ポンプ
33 油圧ユニット
34 発電機
35 コンバータ
36,36A,36B インバータ
39 制御装置
41 傾動用前部シリンダ
42 傾動用後部シリンダ
51 コンベヤフレーム
52 前端プーリ
53 後端プーリ
54 被搬送物(土砂等)
55 搬送用ベルト
56 駆動装置
57 テンション付与装置
58A 中央部支持ローラ
58B 側部支持ローラ
59 キャリヤローラ
61 搬送フレーム体
62 荷受フレーム体
63 接合軸
64 ホッパー
65,65A,65B 駆動用プーリ
66,66A,66B 減速機付駆動用モータ
67,67A,67B 駆動補助用プーリ
69,73 テンション用プーリ
70,74 レール
71 テンション用油圧シリンダ
72 リリーフ付き減圧弁
75 ネジ棒
79 回転数制御部
80 テンション制御部
82 案内用プーリ
83 ベルト速度検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤフレームと、このコンベヤフレームの両端部に設けられたプーリと、これら両プーリ間に巻回されて被搬送物を搬送する搬送用ベルトと、前記搬送用ベルトを回動させる駆動装置と、前記搬送用ベルトにテンションを付与するテンション付与装置を備えたベルトコンベヤ装置であって、
前記駆動装置として、
前記搬送用ベルトの移動経路の途中に配置されて前記搬送用ベルトを駆動する駆動用プーリと、
前記駆動用プーリを回動する駆動用モータと
を設け、
前記テンション付与装置として、
前記搬送用ベルトの移動経路の途中に所定方向に移動可能に設けられたテンション用プーリと、
前記テンション用プーリを前記所定方向に移動させて前記搬送用ベルトにテンションを付与するテンション用油圧シリンダと
を設け、
外部からの圧力指令信号に応じて前記テンション用油圧シリンダにかかる油圧を調整するリリーフ付き減圧弁と、
前記駆動用モータへ供給される電流に基づいて前記搬送用ベルトの負荷を求め、求めた前記搬送用ベルトの負荷に応じて前記リリーフ付き減圧弁へ前記圧力指令信号を出力し、前記テンション用油圧シリンダを介して前記テンション用プーリを移動させ、前記搬送用ベルトに前記負荷に比例したテンションを付与する制御装置
を備えること
を特徴とするベルトコンベヤ装置。
【請求項2】
外部からの回転数指令に基づいて、指令された設定回転数で前記駆動用モータを駆動し、このとき前記駆動用モータへ供給する電流を検出して前記制御装置へ出力するインバータを備え、
前記制御装置は、外部からの搬送用ベルトの速度指令に基づいて、指令された速度に相当する前記駆動用プーリの回転数を求め、この求めた回転数を前記回転数指令として前記インバータへ出力すること
を特徴とする請求項1に記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項3】
コンベヤフレームと、このコンベヤフレームの両端部に設けられたプーリと、これら両プーリ間に巻回されて被搬送物を搬送する搬送用ベルトと、前記搬送用ベルトを回動させる駆動装置と、前記搬送用ベルトにテンションを付与するテンション付与装置を備えたベルトコンベヤ装置であって、
前記駆動装置として、
前記搬送用ベルトの移動経路の途中に配置されて前記搬送用ベルトを駆動する2台の駆動用プーリと、
前記各駆動用プーリをそれぞれ回動する駆動用モータと
を設け、
前記テンション付与装置として、
前記搬送用ベルトの移動経路の途中に所定方向に移動可能に設けられたテンション用プーリと、
前記テンション用プーリを前記所定方向に移動させて前記搬送用ベルトにテンションを付与するテンション用油圧シリンダと
を設け、
外部からの圧力指令信号に応じて前記テンション用油圧シリンダにかかる油圧を調整するリリーフ付き減圧弁と、
前記搬送用ベルトの移動経路の途中に配置された案内用プーリと、
前記案内用プーリの回転速度を検出し、前記搬送用ベルトの実際の速度を検出するベルト速度検出器と
を備え、
前記駆動用モータへ供給される電流に基づいて前記搬送用ベルトの速度を演算し、この演算された搬送用ベルトの速度から、前記ベルト速度検出器により検出された前記搬送用ベルトの実際の速度を減算して速度差を求め、
この求めた速度差が所定の速度差以内にあるとき、前記2台の各駆動用モータへそれぞれ供給される電流の平均値に基づいて前記搬送用ベルトの負荷を演算し、この演算した搬送用ベルトの負荷に応じて前記リリーフ付き減圧弁へ前記圧力指令信号を出力し、前記テンション用油圧シリンダを介して前記テンション用プーリを移動させ、前記搬送用ベルトに前記負荷に比例したテンションを付与し、
前記求めた速度差が所定の速度差を超えると、前記圧力指令信号を強めて前記リリーフ付き減圧弁へ出力し、前記搬送用ベルトのテンションを強める制御装置
を備えること
を特徴とするベルトコンベヤ装置。
【請求項4】
外部からの回転数指令に基づいて、指令された設定回転数で前記2台の駆動用モータをそれぞれ駆動し、このとき前記各駆動用モータへ供給する電流を検出して前記制御装置へ出力するインバータを備え、
前記制御装置は、外部からの搬送用ベルトの速度指令に基づいて、指令された速度に相当する前記駆動用プーリの回転数を求め、この求めた回転数を前記回転数指令として前記インバータへ出力するとともに、前記求めた速度差が所定の速度差を超えると、あるいは前記2台の各駆動用モータへそれぞれ供給される電流の電流差が所定の範囲を超えると、前記回転数指令の指令回転数を低くして出力すること
を特徴とする請求項3に記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項5】
前記テンション付与装置は、
前記搬送用ベルトの移動経路の途中に所定方向に移動可能に設けられた第2のテンション用プーリと、
前記第2のテンション用プーリを前記所定方向に移動させる手動操作の移動機構
を備えること
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項6】
前記コンベヤフレームは、前記搬送用ベルトによる被搬送物の搬送経路に沿って、主フレーム体と、ヒンジ体の幅方向の横軸を中心に回動自在に前記主フレーム体に連結された副フレーム体とに分割され、前記主フレームと副フレームはそれぞれ、前記横軸を中心に上下方向に回動可能とされたこと
を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のベルトコンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−63351(P2011−63351A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213862(P2009−213862)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】