ベルトリフティング装置及び移動装置
【課題】長尺体が変形した場合でも、長尺体やシールベルトが損傷するのを防止できると共に、シールベルトが長尺体の開口部をシールする性能を維持できるベルトリフティング装置及び移動装置を提供する。
【解決手段】 移動装置1及びベルトリフティング装置3は、長尺体97の上部に設けられる開口部971の上方に配置され、長尺体97の長手方向に沿って移動する移動体2に接続される装置本体31と、開口部971を覆ってシールするシールベルト98の一部分を持ち上げるようにシールベルトを案内すべく、装置本体31の下部に取り付けられる一対の下部案内部材321,321を有する案内手段32と、装置本体31が移動体2に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、装置本体31と移動体2とを接続する接続手段33とを備えることを特徴とする。
【解決手段】 移動装置1及びベルトリフティング装置3は、長尺体97の上部に設けられる開口部971の上方に配置され、長尺体97の長手方向に沿って移動する移動体2に接続される装置本体31と、開口部971を覆ってシールするシールベルト98の一部分を持ち上げるようにシールベルトを案内すべく、装置本体31の下部に取り付けられる一対の下部案内部材321,321を有する案内手段32と、装置本体31が移動体2に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、装置本体31と移動体2とを接続する接続手段33とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺体の上部に設けられる開口部を覆ってシールするシールベルトの一部分を持ち上げるベルトリフティング装置に関し、さらに、そのベルトリフティング装置を備える移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺体の上部に設けられる開口部を覆ってシールするシールベルトとして、コークスを製造するコークス製造設備における長尺な固定ダクトの開口部を覆ってシールするシールベルト(例えば、特許文献1)や、石炭や鉱石を搬送する搬送設備における長尺なコンベヤケーシングの開口部を覆ってシールするシールベルト(例えば、特許文献2及び3)が知られている。そして、斯かるシールベルトの一部分を持ち上げる装置として、ベルトリフティング装置が知られている。
【0003】
斯かるベルトリフティング装置は、図12(a)に示すように、長尺体110の開口部の上方に配置され、長尺体110の長手方向に沿って移動する移動体120に固定される装置本体130と、シールベルト140が掛け渡される複数の案内部材151,152,…を有する案内手段150とを備えている。
【0004】
そして、複数の案内部材151,152,…には、装置本体130の下部に固定される一対の下部案内部材151,151と、各下部案内部材151よりも上方に配置される複数の上部案内部材152,…とが設けられており、シールベルト140が各案内部材151,152,…に掛け渡されることで、シールベルト140の一部分が持ち上げられている。
【0005】
斯かる構成のベルトリフティング装置によれば、移動体120が長尺体110の長手方向に沿って移動するのに伴って、装置本体130も長尺体110の長手方向に沿って移動し、各案内部材151,152がシールベルト140を案内する。これにより、各案内部材151,152で持ち上げられるシールベルト140の部分が長手方向で移動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−6979号公報
【特許文献2】特開平10−258941号公報
【特許文献3】特開平8−157076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1〜3に係るベルトリフティング装置において、図12(b)に示すように、下部案内部材151が長尺体110に近過ぎると、移動体120が移動している際に、長尺体110に装置本体130の荷重がかかったり、下部案内部材151と長尺体110とでシールベルト140が挟圧されたりして、長尺体110やシールベルト140等の設備が損傷するという問題を生じさせる。
【0008】
また、反対に、図12(c)に示すように、下部案内部材151が長尺体110から遠過ぎると、移動体120が停止している際に、シールベルト140が下部案内部材151の近傍の開口部をシールできないという問題を生じさせる。したがって、下部案内部材151が長尺体110に近過ぎず且つ遠過ぎずといった所望の位置に位置されていなければならない。
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る固定ダクトや、特許文献2及び3に係るコンベヤケーシングといった長尺体110は、経年劣化することで、全体的又は部分的に湾曲状に変形したり、波状に変形したりする。したがって、初期の段階で、下部案内部材151が所望の位置に位置されるように設定されていたとしても、時間が経過するにつれて、長手方向の或る位置では、下部案内部材151が長尺体110に近過ぎたり、長手方向の他の位置では、下部案内部材151が長尺体110から遠過ぎたりすることになる。
【0010】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、長尺体が変形した場合でも、長尺体やシールベルトが損傷するのを防止できると共に、シールベルトが長尺体の開口部をシールする性能を維持できるベルトリフティング装置及び移動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るベルトリフティング装置は、長尺体の上部に設けられる開口部の上方に配置され、長尺体の長手方向に沿って移動する移動体に接続される装置本体と、開口部を覆ってシールするシールベルトの一部分を持ち上げるようにシールベルトを案内すべく、シールベルトが掛け渡される複数の案内部材を有する案内手段とを備え、複数の案内部材には、装置本体の下部に取り付けられる一対の下部案内部材と、各下部案内部材よりも上方で装置本体に取り付けられる少なくとも一つの上部案内部材とが設けられるベルトリフティング装置において、装置本体が移動体に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、装置本体と移動体とを接続する接続手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るベルトリフティング装置によれば、装置本体が移動体に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、接続手段が装置本体と移動体とを接続している。これにより、移動体が移動する際には、移動体に対して装置本体を上方に変位させ、下部案内部材が長尺体に所定以上接近するのを防止できると共に、移動体が停止している際には、移動体に対して装置本体を下方に変位させ、下部案内部材が長尺体から所定以上離間するのを防止できる。
【0013】
また、本発明に係るベルトリフティング装置においては、装置本体の下部に固定され、長尺体の開口部に接続される接続口部を備え、接続口部は、周縁に沿って並列され且つ長尺体と当接することで個別に変形又は変位可能な複数の当接部材を備えてもよい。
【0014】
斯かる構成のベルトリフティング装置によれば、装置本体の下部に固定されている接続口部が長尺体の開口部に接続される。そして、接続口部には、周縁に沿って並列されている複数の当接部材が長尺体と当接することで個別に変形又は変位できるため、長尺体が部分的に変形していた場合でも、移動体に対して装置本体を下方に変位させた際に、各当接部材が長尺体と確実にそれぞれ当接できる。
【0015】
また、本発明に係る移動装置は、前記のベルトリフティング装置と、長尺体の長手方向に沿って移動する移動体と、各下部案内部材と長尺体とを接離させるべく、移動体に対して装置本体を上下方向に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
斯かる構成の移動装置によれば、装置本体が移動体に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、接続手段が装置本体と移動体とを接続している。これにより、移動体が移動する際には、変位手段が装置本体を移動体に対して上方に変位させることで、下部案内部材が長尺体に所定以上接近するのを防止できると共に、移動体が停止している際には、変位手段が装置本体を移動体に対して下方に変位させることで、下部案内部材が長尺体から所定以上離間するのを防止できる。
【0017】
また、本発明に係る移動装置においては、接続手段は、装置本体が自重で下降可能なように、装置本体と移動体とを接続し、装置本体は、下降するのを規制すべく、長尺体と当接する下降規制部を下部に備え、変位手段は、下降規制部と長尺体とを離間させるべく、装置本体に下方側から当接して押し上げる位置と、下降規制部と長尺体とを当接させるべく、装置本体と離間する位置とに切り替え可能に構成されてもよい。
【0018】
斯かる構成の移動装置によれば、変位手段が装置本体に下方側から当接して押し上げるように位置することで、下降規制部と長尺体とが離間する。その一方、装置本体が自重で下降可能なように、接続手段が装置本体と移動体とを接続しているため、変位手段が装置本体と離間するように位置することで、装置本体の下部に設けられる下降規制部が長尺体と当接する位置まで、装置本体が下降する。
【0019】
したがって、下降規制部が長尺体と当接する位置で、装置本体が位置決めされることになる。これにより、長尺体の変形に対応して、装置本体の下限位置が設定されるため、長尺体の長手方向における何れの位置においても、シールベルトが長尺体の開口部をシールする性能を維持できるように、下部案内部材を位置させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の如く、本発明に係るベルトリフティング装置及び移動装置によれば、移動体が移動する際には、移動体に対して装置本体を上方に変位させ、下部案内部材が長尺体に所定以上接近するのを防止できるため、長尺体が変形した場合でも、長尺体やシールベルトが損傷するのを防止できると共に、移動体が停止している際には、移動体に対して装置本体を下方に変位させ、下部案内部材が長尺体から所定以上離間するのを防止できるため、長尺体が変形した場合でも、シールベルトが長尺体の開口部をシールする性能を維持できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るベルトリフティング装置を有する移動装置が設けられるコークス製造設備の概略側面図(一部断面図)を示す。
【図2】同実施形態に係るコークス製造設備の概略平面図(一部断面図)を示す。
【図3】同実施形態に係る移動装置の要部正面図を示す。
【図4】同実施形態に係る移動装置の要部側面図を示す。
【図5】同実施形態に係る移動装置の要部分解正面図を示す。
【図6】同実施形態に係るベルトリフティング装置の図3のA領域における拡大図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態における図4のE−E線の断面図、(b)は同状態における正面図、(c)は装置本体が下限位置に位置する状態における図4のE−E線の断面図、(d)は同状態における正面図を示す。
【図7】同実施形態に係るベルトリフティング装置の図4のD領域で且つ図3のC−C線における要部拡大断面図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図8】同実施形態に係るベルトリフティング装置の図3のB領域における要部拡大図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図9】本発明の他の実施形態に係るベルトリフティング装置の要部拡大縦断面図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係るベルトリフティング装置の要部拡大縦断面図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図11】本発明のさらに他の実施形態に係るベルトリフティング装置の要部拡大縦断面図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図12】従来におけるベルトリフティング装置の概要図であって、(a)は全体正面図、(b)及び(c)はそれぞれF領域の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るベルトリフティング装置及び移動装置における一実施形態について、図1〜図8を参酌して説明する。
【0023】
本実施形態に係るベルトリフティング装置及び移動装置は、図1及び図2に示すように、コークス製造設備に設けられている。具体的には、本実施形態に係る移動装置は、コークガイド車であって、本実施形態に係る長尺体は、固定ダクトである。ここで、ベルトリフティング装置及び移動装置の各構成を説明するのに先立って、コークス製造設備について説明する。
【0024】
コークス製造設備は、原料石炭を乾留させるための複数の炭化室911,…が並設されるコークス炉91と、炭化室911の上方から炭化室911内に石炭を投入する装入車92とを備える。なお、各炭化室911は、長尺に形成されると共に、複数の炭化室911,…は、幅方向(長手方向と直交する水平方向)に並設されている。
【0025】
そして、コークス製造設備は、炭化室911,…が並設される方向(水平方向)に沿って移動可能であって、炭化室911の一方の窯口から、乾留されたコークスを押出ラム931で押し出すコークス押出機93を備える。また、コークス製造設備は、炭化室911,…が並設される方向に沿って移動可能であって、押し出されて他方の窯口から出されたコークスを導入するコークガイド車1を備える。
【0026】
さらに、コークス製造設備は、コークガイド車1から導出されるコークスをバケット941で受け入れ可能であって、軌条942上を走行することで、炭化室911,…が並設される方向に沿って移動可能なバケット台車94を備える。また、コークス製造設備は、バケット台車94からコークスを受け取り、不活性ガスによりコークスを冷却(消火)し、その顕熱を蒸気として回収する乾式消火装置95を備える。
【0027】
そして、コークス製造設備は、フード961でバケット942の上方を覆いつつ、コークガイド車1及び乾式消火装置95間をバケット台車94と同期して往復移動するように、軌条962上を走行するフード車96を備える。加えて、コークス製造設備は、地上に固定される固定ダクト97と、固定ダクト97の上部に設けられる開口部971を覆ってシールするシールベルト98とを備える。
【0028】
また、コークス製造装置は、含塵ガスを除塵部991で除塵処理し、除塵されたガスを大気に放出する集塵機99を備える。なお、集塵機99は、ブロワ992を備えることにより、コークガイド車1やフード車96で捕集した含塵ガスを、固定ダクト97を介して吸引している。
【0029】
固定ダクト97は、図1〜図4に示すように、長尺な筒状に形成され、コークガイド車1が移動する方向に沿って延設されている。そして、固定ダクト97の開口部971は、上方に向けて開放されており、シールベルト98にシールされるべく、上面が平面状に形成されている。また、開口部971は、長手方向に沿って延設されている。
【0030】
シールベルト98は、長尺な帯状に形成され、固定ダクト97の開口部971と密着することで、開口部971をシールしている。また、シールベルト98は、例えば、ゴムと補強布とが積層する構造であって、さらに、鋼芯や繊維強化プラスチック等の芯材が一定ピッチで幅方向に埋設されているため、長手方向の柔軟性を有しつつ幅方向の剛性を有している。なお、図4において、シールベルト98を省略して図示している。
【0031】
本実施形態に係る移動装置であるコークガイド車1は、図1〜図5に示すように、炭化室911,…の他方の窯口側に配置され、固定ダクト97の長手方向に沿って地上を移動する移動体2を備える。そして、コークガイド車1は、シールベルト98の一部分を持ち上げるべく、移動体2に接続される装置本体31を有するベルトリフティング装置3を備える。
【0032】
また、コークガイド車1は、移動体2に対して装置本体31を上下方向に変位させる変位手段4,4と、装置本体31を上限位置で保持する保持手段5,5とを備える。さらに、コークガイド車1は、シールベルト98を押さえる押圧手段6,6を装置本体31の外側に備えると共に、シールベルト98の表面に堆積する粉塵等を除去する除去手段7,7を押圧手段6の外側に備える。
【0033】
移動体2は、軌条上を走行する本体部21と、コークス押出機93に押し出されたコークスをガイドするガイド装置22とを備える。また、移動体2は、コークスから発生する含塵ガスを捕集するための集塵フード23と、集塵フード23に連結され、含塵ガスを流通させる機上ダクト24とを備える。なお、集塵フード23及び機上ダクト24は、本体部21に固定されている。
【0034】
本実施形態に係るベルトリフティング装置3は、図3〜図8に示すように、固定ダクト97の開口部971を覆ってシールするシールベルト98の一部分を持ち上げるように、シールベルト98を案内する案内手段32を備える。また、ベルトリフティング装置3は、装置本体31が移動体2に対して変位可能となるように、装置本体31と移動体2とを接続する接続手段33と、機上ダクト24と固定ダクト97とを接続する接続ダクト34とを備える。
【0035】
装置本体31は、固定ダクト97の長手方向に沿って配置される上枠311及び下枠312と、上枠311及び下枠312の長手方向の端部同士を連結する一対の側枠313,313とを備える。また、装置本体31は、下降するのを規制すべく、固定ダクト97と当接する下降規制部314,…を複数備える。そして、装置本体31は、固定ダクト97の開口部971の上方に配置されている。
【0036】
各下降規制部314は、長尺に形成されている。そして、各下降規制部314は、長さが変更可能に構成されている。また、各下降規制部314は、下枠312の下部に固定されている。具体的には、各下降規制部314は、下枠312から下方に向けて突出するように配置されている。
【0037】
案内手段32は、シールベルト98が掛け渡される複数の案内部材321,322,…を備える。そして、複数の案内部材321,322,…には、装置本体31の下部に取り付けられる一対の下部案内部材321,321と、各下部案内部材321よりも上方で装置本体31に取り付けられる複数の上部案内部材322,…とが設けられている。
【0038】
各下部案内部材321は、装置本体31の下枠312の下部で且つ長手方向の各端部に固定されている。そして、各下部案内部材321は、下端が下降規制部314の下端よりも所定量(シールベルト98の厚み寸法と略同じ量)だけ上方に位置するように配置されている。また、各下部案内部材321がシールベルト98を上方に向けて案内しており、一対の下部案内部材321,321間に位置するシールベルト98の部分が持ち上げられている。
【0039】
複数の上部案内部材322,…は、装置本体31の上枠311と各側枠313とに取り付けられている。そして、複数のうち、少なくとも一つの上部案内部材322は、装置本体31に対して変位可能に取り付けられると共に、付勢手段(図示及び採番していない)によりシールベルト98に向けて付勢される一方、残りの上部案内部材322,…は、装置本体31に固定されている。これにより、案内手段32は、装置本体31が移動体2に対して上下方向に変位しても、シールベルト98の張力が略一定となるように調節する。
【0040】
接続手段33は、装置本体31に固定され、上下方向で移動体2に摺接する摺接部331と、上下方向において装置本体31と移動体2と間に配置される弾性体332,332と、機上ダクト24と接続ダクト34とを連結し、上下方向で伸縮可能な蛇腹状の伸縮ダクト333とを備える。これにより、装置本体31が移動体2に対して上下方向で変位できる。さらに、下方向の変位については、装置本体31が自重で下降できる。
【0041】
摺接部331は、移動体2の本体部21に設けられる一対の縦材211,211に摺接する複数の摺接部材331a,…を備える。そして、各摺接部材331aは、本体部21の縦材211に沿って配置される装置本体31の側枠313に固定されており、本実施形態においては、回転ローラとしている。
【0042】
また、摺接部331は、複数の摺接部材331a,…が縦材211の各側面と摺接することにより、装置本体31が移動体2に対して横方向(水平方向)において所定量以上変位するのを規制している。具体的には、摺接部331は、装置本体31が一対の縦材211,211間に位置するように、装置本体31が移動するのを規制している。
【0043】
各弾性体332は、筒状に形成されている。そして、各弾性体332は、上端部が装置本体31の上枠311と当接すると共に、上枠311から下方に向けて突出する突出片311aに上方側から挿入されている。また、各弾性体332は、下端部が移動体2の本体部21の上材212と当接すると共に、上材212から上方に向けて突出する突出片212aに下方側から挿入されている。
【0044】
接続ダクト34は、ダクト本体341の下端部に、固定ダクト97の開口部971に接続される接続口部342を備える。そして、接続ダクト34は、装置本体31の下部、具体的には、装置本体31の下枠312に固定されている。さらに、接続ダクト34は、下方に向けて開口が広がるように形成されている。また、接続口部342は、固定ダクト97の開口部971と当接する当接部材342a,…を複数備える。
【0045】
複数の当接部材342a,…は、接続口部342の周縁に沿って並列されている。また、各当接部材342aは、固定ダクト97の開口部971と当接することで、個別に変形できるように弾性を有している。そして、各当接部材342aは、下端が各下降規制部314の下端よりも下方に位置するように配置されている。
【0046】
各変位手段4は、移動体2の本体部21に固定される駆動源41と、移動体2の本体部21に回動可能に固定され、駆動源41の駆動を受けることで装置本体31に接離する接離部材42とを備える。そして、各接離部材42は、基端部421で駆動源41に連結され、駆動源41が駆動することで、先端部422が装置本体31の下枠312と接離するように回動する。
【0047】
具体的には、各接離部材42は、下降規制部314,…と固定ダクト97とを離間させるべく、装置本体31に下方側から当接して押し上げる位置と、下降規制部314,…と固定ダクト97とを当接させるべく、装置本体31と離間する位置とに切り替え可能に構成されている。なお、本実施形態において、各駆動源41を油圧(又は空圧)シリンダとしており、シリンダが伸びるのに伴い、装置本体31が下降し、シリンダが縮むのに伴い、装置本体31が上昇する。
【0048】
各保持手段5は、移動体2の本体部21に固定される駆動源51と、駆動源51の駆動を受けて装置本体31に接離し、装置本体31を係止可能な係止部材52とを備える。そして、各係止部材52は、駆動源51の駆動を受け、上限位置に位置している装置本体31に接近することで、装置本体31の側枠313に設けられる凹部313aに先端部が挿入し且つ係止するように構成されている。
【0049】
各押圧手段6は、移動体2の本体部21の下部に回動可能に取り付けられる回動部材61と、回動部材61の先端部に固定され、シールベルト98を押さえる押圧部材62とを備える。そして、各押圧手段6は、押圧部材62がシールベルト98を押圧すべく、回動部材61の基端部を付勢する付勢部材63を備える。
【0050】
除去手段7は、移動体2の本体部21の下部に基端部71が回動可能に取り付けられ、先端部72がシールベルト98の表面に接することで、シールベルト98の表面に堆積する粉塵等を除去する。そして、除去手段7は、自重により回動し、先端部72がシールベルト98と接するように構成されている。
【0051】
本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1及びベルトリフティング装置3の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1及びベルトリフティング装置3の動作について、図6〜図8を参酌して、説明する。
【0052】
まず、移動体2を移動させることで、コークガイド車1が作業する炭化室911に向けて移動する。ここで、移動体2が移動する前に、図6(a)及び図6(b)に示すように、駆動源41であるシリンダを縮小させることで、接離部材42の先端部422が装置本体31に下方側から当接し、装置本体31が押し上げられていると共に、弾性体332が伸長している。
【0053】
これにより、装置本体31が上限位置に位置しているため、図7(a)に示すように、各下降規制部314が固定ダクト97と離間していると共に、接続口部342の各当接部材342aが固定ダクト97と離間している。さらに、図8(a)に示すように、下部案内部材321が固定ダクト97から十分に離間している。
【0054】
したがって、移動体2が移動する際に、各下部案内部材321が固定ダクト97の近傍に位置するのを防止できると共に、各下降規制部314や接続口部342が固定ダクト97に当接するのを防止できる。なお、移動体2が移動する際には、保持手段5が装置本体31を上限位置で保持している。
【0055】
また、各回動部材61の先端部が付勢手段63により下方に向けて付勢されているため、押圧手段6が押圧部材62でシールベルト98を押圧している。そして、除去手段7の先端部72がシールベルト98の表面に当接しているため、移動体2が移動するのに伴って、除去手段7がシールベルト98の表面に堆積している粉塵等を除去する。
【0056】
その後、コークガイド車1が所定の炭化室911に到着すると、移動体2が停止する。そして、移動体2が停止した後に、図6(c)及び図6(d)に示すように、駆動源41であるシリンダを伸長させることで、接離部材42の先端部422が下方に向けて移動するため、装置本体31が自重で下降する。それに伴って、弾性体332は、縮小する。
【0057】
そして、装置本体31が下降していくと、図7(b)に示すように、各下降規制部314が固定ダクト97に当接することで、装置本体31の下降が規制され、装置本体31が固定ダクト97に対して位置決めされる。これにより、装置本体31が下限位置に位置しているため、接続口部342の各当接部材342aが固定ダクト97に当接して変形しており、接続ダクト34と固定ダクト97とが密接している。
【0058】
さらに、図8(b)に示すように、各下部案内部材321が固定ダクト97の近傍に位置しているため、シールベルト98が各下部案内部材321の近傍における固定ダクト97の開口部971をシールできる。また、各回動部材61の先端部が付勢手段63により下方に向けて付勢されているため、押圧手段6が押圧部材62でシールベルト98を押圧している。
【0059】
そして、各下降規制部314が固定ダクト97に当接した後も、接離部材42の先端部422が下方に向けてさらに移動するため、図6(c)及び図6(d)に示すように、接離部材42の先端部422が装置本体31から離反する。なお、縮小している弾性体332の反力(弾性力)により、装置本体31の全荷重が固定ダクト97にかかるのを防止している。
【0060】
その後、所定の炭化室911での作業を終えると、駆動源41であるシリンダを縮小させることで、接離部材42の先端部422が上方に向けて移動する。これにより、接離部材42の先端部422が装置本体31に接近し、その後、当接し、さらには、装置本体31を下方側から押し上げる。そして、図6(a)、図6(b)、図7(a)、及び図8(a)に示すように、変位手段4が装置本体31を上限位置まで押し上げた状態で、移動体2が移動する。
【0061】
以上より、本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1及びベルトリフティング装置3によれば、移動体2が移動する際には、変位手段4が装置本体31を移動体2に対して上方に変位させることで、各下部案内部材321が固定ダクト97に所定以上接近するのを防止できる。したがって、固定ダクト97が変形した場合でも、各下部案内部材321が固定ダクト97やシールベルト98を損傷するのを防止できる。
【0062】
しかも、移動体2が停止している際には、変位手段4が装置本体31を移動体2に対して下方に変位させることで、各下部案内部材321が固定ダクト97から所定以上離間するのを防止できる。したがって、固定ダクト97が変形した場合でも、シールベルト98が固定ダクト97の開口部971をシールする性能を維持できるため、移動体2で捕集した含塵ガスが固定ダクト97を介して送られる際に、各下部案内部材321の近傍において、固定ダクト97とシールベルト98との間から含塵ガスが漏出するのを防止できる。
【0063】
また、本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1及びベルトリフティング装置3によれば、固定ダクト97の開口部971に接続される接続口部342には、周縁に沿って複数の当接部材342a,…が並列されている。そして、固定ダクト97が部分的に変形していた場合でも、各当接部材342aが固定ダクト97と当接することで個別に変形できるため、固定ダクト97の変形に応じて、各当接部材342aが変形する。
【0064】
したがって、装置本体31が下限位置に位置することで、各当接部材342aが固定ダクト97と確実にそれぞれ当接できるため、接続ダクト34が固定ダクト97の開口部971を密封できる。これにより、移動体2で捕集した含塵ガスが接続ダクト34及び固定ダクト97を介して送られる際に、接続ダクト34と固定ダクト97との間から含塵ガスが漏出するのを防止できる。
【0065】
また、本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1によれば、変位手段4の接離部材42が装置本体31に下方側から当接して押し上げることで、装置本体31が上昇して上限位置に位置し、各下降規制部314と固定ダクト97とが離間する。その一方、接続手段33を介して、装置本体31が自重で下降できるように移動体2に接続されているため、接離部材42が下方に向けて移動するのに伴って、装置本体31が下降する。
【0066】
そして、装置本体31の下部に設けられる各下降規制部314が固定ダクト97と当接すると、装置本体31の下降が規制されるため、それ以降、接離部材42がさらに下方に向けて移動するのに伴って、装置本体31と接離部材42とが離反する。したがって、各下降規制部314が固定ダクト97と当接する位置で、装置本体31の下限位置が設定されるため、固定ダクト97のさまざまな変形に対応して、各下部案内部材321を好適な位置に位置させることができる。
【0067】
なお、本発明に係る移動装置及びベルトリフティング装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0068】
例えば、上記実施形態に係る移動装置1においては、装置本体31が下限位置に位置する際に、変位手段4が装置本体31と離間する構成を説明したが、斯かる構成に限られず、装置本体31が上限位置に位置する際だけでなく、装置本体31が下限位置に位置する際にも、即ち、装置本体31の位置に関わらず、変位手段が装置本体31と接している構成でもよい。
【0069】
具体的には、変位手段は、接離部材42の先端部422が装置本体31に連結(枢着)され、接離部材42が回動することで、装置本体31が昇降する構成でもよい。さらには、変位手段は、上下方向で伸縮する駆動源(シリンダ)を備え、駆動源の先端部に装置本体31が連結され、駆動源が上下方向で伸縮することで、装置本体31が昇降する構成でもよい。
【0070】
また、上記実施形態に係る移動装置1においては、変位手段4の駆動源41がシリンダである構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、変位手段は、モータからなる駆動源と、駆動源の駆動を上下方向の作用力に変換させて装置本体31に伝達するギア機構とを備える構成でもよい。要するに、変位手段は、装置本体31に連結されて且つ昇降したり、或いは、装置本体31に下方側から接離したりすることで、装置本体31を昇降させる構成であればよい。
【0071】
また、上記実施形態に係る移動装置1及びベルトリフティング装置3においては、接続口部342の各当接部材342aが固定ダクト97と当接することで変形する構成を説明したが、斯かる構成に限られず、各当接部材が固定ダクト97と当接することで変位する構成でもよい。斯かる構成の具体例を図9及び図10にそれぞれ示す。
【0072】
図9に示す接続口部343の各当接部材343aは、基端部がダクト本体341に回転可能に取り付けられる。具体的には、各当接部材343aは、ヒンジ部材343bを介してダクト本体341に取り付けられている。そして、図9(a)に示すように、装置本体31が上限位置に位置している状態から、図9(b)に示すように、装置本体31が下限位置に位置している状態になることで、各当接部材343aの先端部が固定ダクト97に当接するため、各当接部材343aがダクト本体341に対して個別に回転変位する。
【0073】
また、図10に示す接続口部344の各当接部材344aは、ダクト本体341に上下方向でスライド可能に取り付けられている。そして、図10(a)に示すように、装置本体31が上限位置に位置している状態から、図10(b)に示すように、装置本体31が下限位置に位置している状態になることで、当接部材344aの先端部が固定ダクト97に当接するため、各当接部材344aがダクト本体341に対して上方向に変位する。
【0074】
また、上記実施形態に係る移動装置1及びベルトリフティング装置3においては、コークス製造設備に採用される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、移動装置及びベルトリフティング装置は、石炭や鉱石等を搬送する搬送設備(前述の特許文献2及び3参照)に採用される構成でもよい。
【0075】
また、上記実施形態に係る移動装置1及びベルトリフティング装置3においては、移動装置がコークス製造設備のコークガイド車1である構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、移動装置は、コークス製造設備のコークス押出機である構成でもよく、また、コークス製造設備のフード車である構成でもよい。
【0076】
また、本発明に係る移動装置及びベルトリフティング装置においては、図11に示すように、装置本体310は、接続口部342が固定ダクト97の開口部971に対して位置決めされるべく、位置決め手段315,…を備える構成でもよい。斯かる位置決め手段315は、下降規制部314に固定されていると共に、固定ダクト97と摺接するガイド部315aが幅方向の内方に配設されている。
【0077】
斯かる構成によれば、図11(a)に示すように、装置本体310が上限位置に位置している状態から、図11(b)に示すように、装置本体310が下限位置に位置している状態になる際に、ガイド部315aが固定ダクト97の開口部971の側縁に摺接することで、接続口部342を固定ダクト97の開口部971に対して位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…移動装置(コークガイド車)、2…移動体、3…ベルトリフティング装置、4…変位手段、31,310…装置本体、32…案内手段、97…長尺体(固定ダクト)、98…シールベルト、314…下降規制部、321…下部案内部材、322…上部案内部材、342,343,344…接続口部、342a,343a,344a…当接部材、971…開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺体の上部に設けられる開口部を覆ってシールするシールベルトの一部分を持ち上げるベルトリフティング装置に関し、さらに、そのベルトリフティング装置を備える移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺体の上部に設けられる開口部を覆ってシールするシールベルトとして、コークスを製造するコークス製造設備における長尺な固定ダクトの開口部を覆ってシールするシールベルト(例えば、特許文献1)や、石炭や鉱石を搬送する搬送設備における長尺なコンベヤケーシングの開口部を覆ってシールするシールベルト(例えば、特許文献2及び3)が知られている。そして、斯かるシールベルトの一部分を持ち上げる装置として、ベルトリフティング装置が知られている。
【0003】
斯かるベルトリフティング装置は、図12(a)に示すように、長尺体110の開口部の上方に配置され、長尺体110の長手方向に沿って移動する移動体120に固定される装置本体130と、シールベルト140が掛け渡される複数の案内部材151,152,…を有する案内手段150とを備えている。
【0004】
そして、複数の案内部材151,152,…には、装置本体130の下部に固定される一対の下部案内部材151,151と、各下部案内部材151よりも上方に配置される複数の上部案内部材152,…とが設けられており、シールベルト140が各案内部材151,152,…に掛け渡されることで、シールベルト140の一部分が持ち上げられている。
【0005】
斯かる構成のベルトリフティング装置によれば、移動体120が長尺体110の長手方向に沿って移動するのに伴って、装置本体130も長尺体110の長手方向に沿って移動し、各案内部材151,152がシールベルト140を案内する。これにより、各案内部材151,152で持ち上げられるシールベルト140の部分が長手方向で移動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−6979号公報
【特許文献2】特開平10−258941号公報
【特許文献3】特開平8−157076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1〜3に係るベルトリフティング装置において、図12(b)に示すように、下部案内部材151が長尺体110に近過ぎると、移動体120が移動している際に、長尺体110に装置本体130の荷重がかかったり、下部案内部材151と長尺体110とでシールベルト140が挟圧されたりして、長尺体110やシールベルト140等の設備が損傷するという問題を生じさせる。
【0008】
また、反対に、図12(c)に示すように、下部案内部材151が長尺体110から遠過ぎると、移動体120が停止している際に、シールベルト140が下部案内部材151の近傍の開口部をシールできないという問題を生じさせる。したがって、下部案内部材151が長尺体110に近過ぎず且つ遠過ぎずといった所望の位置に位置されていなければならない。
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る固定ダクトや、特許文献2及び3に係るコンベヤケーシングといった長尺体110は、経年劣化することで、全体的又は部分的に湾曲状に変形したり、波状に変形したりする。したがって、初期の段階で、下部案内部材151が所望の位置に位置されるように設定されていたとしても、時間が経過するにつれて、長手方向の或る位置では、下部案内部材151が長尺体110に近過ぎたり、長手方向の他の位置では、下部案内部材151が長尺体110から遠過ぎたりすることになる。
【0010】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、長尺体が変形した場合でも、長尺体やシールベルトが損傷するのを防止できると共に、シールベルトが長尺体の開口部をシールする性能を維持できるベルトリフティング装置及び移動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るベルトリフティング装置は、長尺体の上部に設けられる開口部の上方に配置され、長尺体の長手方向に沿って移動する移動体に接続される装置本体と、開口部を覆ってシールするシールベルトの一部分を持ち上げるようにシールベルトを案内すべく、シールベルトが掛け渡される複数の案内部材を有する案内手段とを備え、複数の案内部材には、装置本体の下部に取り付けられる一対の下部案内部材と、各下部案内部材よりも上方で装置本体に取り付けられる少なくとも一つの上部案内部材とが設けられるベルトリフティング装置において、装置本体が移動体に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、装置本体と移動体とを接続する接続手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るベルトリフティング装置によれば、装置本体が移動体に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、接続手段が装置本体と移動体とを接続している。これにより、移動体が移動する際には、移動体に対して装置本体を上方に変位させ、下部案内部材が長尺体に所定以上接近するのを防止できると共に、移動体が停止している際には、移動体に対して装置本体を下方に変位させ、下部案内部材が長尺体から所定以上離間するのを防止できる。
【0013】
また、本発明に係るベルトリフティング装置においては、装置本体の下部に固定され、長尺体の開口部に接続される接続口部を備え、接続口部は、周縁に沿って並列され且つ長尺体と当接することで個別に変形又は変位可能な複数の当接部材を備えてもよい。
【0014】
斯かる構成のベルトリフティング装置によれば、装置本体の下部に固定されている接続口部が長尺体の開口部に接続される。そして、接続口部には、周縁に沿って並列されている複数の当接部材が長尺体と当接することで個別に変形又は変位できるため、長尺体が部分的に変形していた場合でも、移動体に対して装置本体を下方に変位させた際に、各当接部材が長尺体と確実にそれぞれ当接できる。
【0015】
また、本発明に係る移動装置は、前記のベルトリフティング装置と、長尺体の長手方向に沿って移動する移動体と、各下部案内部材と長尺体とを接離させるべく、移動体に対して装置本体を上下方向に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
斯かる構成の移動装置によれば、装置本体が移動体に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、接続手段が装置本体と移動体とを接続している。これにより、移動体が移動する際には、変位手段が装置本体を移動体に対して上方に変位させることで、下部案内部材が長尺体に所定以上接近するのを防止できると共に、移動体が停止している際には、変位手段が装置本体を移動体に対して下方に変位させることで、下部案内部材が長尺体から所定以上離間するのを防止できる。
【0017】
また、本発明に係る移動装置においては、接続手段は、装置本体が自重で下降可能なように、装置本体と移動体とを接続し、装置本体は、下降するのを規制すべく、長尺体と当接する下降規制部を下部に備え、変位手段は、下降規制部と長尺体とを離間させるべく、装置本体に下方側から当接して押し上げる位置と、下降規制部と長尺体とを当接させるべく、装置本体と離間する位置とに切り替え可能に構成されてもよい。
【0018】
斯かる構成の移動装置によれば、変位手段が装置本体に下方側から当接して押し上げるように位置することで、下降規制部と長尺体とが離間する。その一方、装置本体が自重で下降可能なように、接続手段が装置本体と移動体とを接続しているため、変位手段が装置本体と離間するように位置することで、装置本体の下部に設けられる下降規制部が長尺体と当接する位置まで、装置本体が下降する。
【0019】
したがって、下降規制部が長尺体と当接する位置で、装置本体が位置決めされることになる。これにより、長尺体の変形に対応して、装置本体の下限位置が設定されるため、長尺体の長手方向における何れの位置においても、シールベルトが長尺体の開口部をシールする性能を維持できるように、下部案内部材を位置させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の如く、本発明に係るベルトリフティング装置及び移動装置によれば、移動体が移動する際には、移動体に対して装置本体を上方に変位させ、下部案内部材が長尺体に所定以上接近するのを防止できるため、長尺体が変形した場合でも、長尺体やシールベルトが損傷するのを防止できると共に、移動体が停止している際には、移動体に対して装置本体を下方に変位させ、下部案内部材が長尺体から所定以上離間するのを防止できるため、長尺体が変形した場合でも、シールベルトが長尺体の開口部をシールする性能を維持できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るベルトリフティング装置を有する移動装置が設けられるコークス製造設備の概略側面図(一部断面図)を示す。
【図2】同実施形態に係るコークス製造設備の概略平面図(一部断面図)を示す。
【図3】同実施形態に係る移動装置の要部正面図を示す。
【図4】同実施形態に係る移動装置の要部側面図を示す。
【図5】同実施形態に係る移動装置の要部分解正面図を示す。
【図6】同実施形態に係るベルトリフティング装置の図3のA領域における拡大図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態における図4のE−E線の断面図、(b)は同状態における正面図、(c)は装置本体が下限位置に位置する状態における図4のE−E線の断面図、(d)は同状態における正面図を示す。
【図7】同実施形態に係るベルトリフティング装置の図4のD領域で且つ図3のC−C線における要部拡大断面図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図8】同実施形態に係るベルトリフティング装置の図3のB領域における要部拡大図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図9】本発明の他の実施形態に係るベルトリフティング装置の要部拡大縦断面図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係るベルトリフティング装置の要部拡大縦断面図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図11】本発明のさらに他の実施形態に係るベルトリフティング装置の要部拡大縦断面図であって、(a)は装置本体が上限位置に位置する状態、(b)は装置本体が下限位置に位置する状態を示す。
【図12】従来におけるベルトリフティング装置の概要図であって、(a)は全体正面図、(b)及び(c)はそれぞれF領域の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るベルトリフティング装置及び移動装置における一実施形態について、図1〜図8を参酌して説明する。
【0023】
本実施形態に係るベルトリフティング装置及び移動装置は、図1及び図2に示すように、コークス製造設備に設けられている。具体的には、本実施形態に係る移動装置は、コークガイド車であって、本実施形態に係る長尺体は、固定ダクトである。ここで、ベルトリフティング装置及び移動装置の各構成を説明するのに先立って、コークス製造設備について説明する。
【0024】
コークス製造設備は、原料石炭を乾留させるための複数の炭化室911,…が並設されるコークス炉91と、炭化室911の上方から炭化室911内に石炭を投入する装入車92とを備える。なお、各炭化室911は、長尺に形成されると共に、複数の炭化室911,…は、幅方向(長手方向と直交する水平方向)に並設されている。
【0025】
そして、コークス製造設備は、炭化室911,…が並設される方向(水平方向)に沿って移動可能であって、炭化室911の一方の窯口から、乾留されたコークスを押出ラム931で押し出すコークス押出機93を備える。また、コークス製造設備は、炭化室911,…が並設される方向に沿って移動可能であって、押し出されて他方の窯口から出されたコークスを導入するコークガイド車1を備える。
【0026】
さらに、コークス製造設備は、コークガイド車1から導出されるコークスをバケット941で受け入れ可能であって、軌条942上を走行することで、炭化室911,…が並設される方向に沿って移動可能なバケット台車94を備える。また、コークス製造設備は、バケット台車94からコークスを受け取り、不活性ガスによりコークスを冷却(消火)し、その顕熱を蒸気として回収する乾式消火装置95を備える。
【0027】
そして、コークス製造設備は、フード961でバケット942の上方を覆いつつ、コークガイド車1及び乾式消火装置95間をバケット台車94と同期して往復移動するように、軌条962上を走行するフード車96を備える。加えて、コークス製造設備は、地上に固定される固定ダクト97と、固定ダクト97の上部に設けられる開口部971を覆ってシールするシールベルト98とを備える。
【0028】
また、コークス製造装置は、含塵ガスを除塵部991で除塵処理し、除塵されたガスを大気に放出する集塵機99を備える。なお、集塵機99は、ブロワ992を備えることにより、コークガイド車1やフード車96で捕集した含塵ガスを、固定ダクト97を介して吸引している。
【0029】
固定ダクト97は、図1〜図4に示すように、長尺な筒状に形成され、コークガイド車1が移動する方向に沿って延設されている。そして、固定ダクト97の開口部971は、上方に向けて開放されており、シールベルト98にシールされるべく、上面が平面状に形成されている。また、開口部971は、長手方向に沿って延設されている。
【0030】
シールベルト98は、長尺な帯状に形成され、固定ダクト97の開口部971と密着することで、開口部971をシールしている。また、シールベルト98は、例えば、ゴムと補強布とが積層する構造であって、さらに、鋼芯や繊維強化プラスチック等の芯材が一定ピッチで幅方向に埋設されているため、長手方向の柔軟性を有しつつ幅方向の剛性を有している。なお、図4において、シールベルト98を省略して図示している。
【0031】
本実施形態に係る移動装置であるコークガイド車1は、図1〜図5に示すように、炭化室911,…の他方の窯口側に配置され、固定ダクト97の長手方向に沿って地上を移動する移動体2を備える。そして、コークガイド車1は、シールベルト98の一部分を持ち上げるべく、移動体2に接続される装置本体31を有するベルトリフティング装置3を備える。
【0032】
また、コークガイド車1は、移動体2に対して装置本体31を上下方向に変位させる変位手段4,4と、装置本体31を上限位置で保持する保持手段5,5とを備える。さらに、コークガイド車1は、シールベルト98を押さえる押圧手段6,6を装置本体31の外側に備えると共に、シールベルト98の表面に堆積する粉塵等を除去する除去手段7,7を押圧手段6の外側に備える。
【0033】
移動体2は、軌条上を走行する本体部21と、コークス押出機93に押し出されたコークスをガイドするガイド装置22とを備える。また、移動体2は、コークスから発生する含塵ガスを捕集するための集塵フード23と、集塵フード23に連結され、含塵ガスを流通させる機上ダクト24とを備える。なお、集塵フード23及び機上ダクト24は、本体部21に固定されている。
【0034】
本実施形態に係るベルトリフティング装置3は、図3〜図8に示すように、固定ダクト97の開口部971を覆ってシールするシールベルト98の一部分を持ち上げるように、シールベルト98を案内する案内手段32を備える。また、ベルトリフティング装置3は、装置本体31が移動体2に対して変位可能となるように、装置本体31と移動体2とを接続する接続手段33と、機上ダクト24と固定ダクト97とを接続する接続ダクト34とを備える。
【0035】
装置本体31は、固定ダクト97の長手方向に沿って配置される上枠311及び下枠312と、上枠311及び下枠312の長手方向の端部同士を連結する一対の側枠313,313とを備える。また、装置本体31は、下降するのを規制すべく、固定ダクト97と当接する下降規制部314,…を複数備える。そして、装置本体31は、固定ダクト97の開口部971の上方に配置されている。
【0036】
各下降規制部314は、長尺に形成されている。そして、各下降規制部314は、長さが変更可能に構成されている。また、各下降規制部314は、下枠312の下部に固定されている。具体的には、各下降規制部314は、下枠312から下方に向けて突出するように配置されている。
【0037】
案内手段32は、シールベルト98が掛け渡される複数の案内部材321,322,…を備える。そして、複数の案内部材321,322,…には、装置本体31の下部に取り付けられる一対の下部案内部材321,321と、各下部案内部材321よりも上方で装置本体31に取り付けられる複数の上部案内部材322,…とが設けられている。
【0038】
各下部案内部材321は、装置本体31の下枠312の下部で且つ長手方向の各端部に固定されている。そして、各下部案内部材321は、下端が下降規制部314の下端よりも所定量(シールベルト98の厚み寸法と略同じ量)だけ上方に位置するように配置されている。また、各下部案内部材321がシールベルト98を上方に向けて案内しており、一対の下部案内部材321,321間に位置するシールベルト98の部分が持ち上げられている。
【0039】
複数の上部案内部材322,…は、装置本体31の上枠311と各側枠313とに取り付けられている。そして、複数のうち、少なくとも一つの上部案内部材322は、装置本体31に対して変位可能に取り付けられると共に、付勢手段(図示及び採番していない)によりシールベルト98に向けて付勢される一方、残りの上部案内部材322,…は、装置本体31に固定されている。これにより、案内手段32は、装置本体31が移動体2に対して上下方向に変位しても、シールベルト98の張力が略一定となるように調節する。
【0040】
接続手段33は、装置本体31に固定され、上下方向で移動体2に摺接する摺接部331と、上下方向において装置本体31と移動体2と間に配置される弾性体332,332と、機上ダクト24と接続ダクト34とを連結し、上下方向で伸縮可能な蛇腹状の伸縮ダクト333とを備える。これにより、装置本体31が移動体2に対して上下方向で変位できる。さらに、下方向の変位については、装置本体31が自重で下降できる。
【0041】
摺接部331は、移動体2の本体部21に設けられる一対の縦材211,211に摺接する複数の摺接部材331a,…を備える。そして、各摺接部材331aは、本体部21の縦材211に沿って配置される装置本体31の側枠313に固定されており、本実施形態においては、回転ローラとしている。
【0042】
また、摺接部331は、複数の摺接部材331a,…が縦材211の各側面と摺接することにより、装置本体31が移動体2に対して横方向(水平方向)において所定量以上変位するのを規制している。具体的には、摺接部331は、装置本体31が一対の縦材211,211間に位置するように、装置本体31が移動するのを規制している。
【0043】
各弾性体332は、筒状に形成されている。そして、各弾性体332は、上端部が装置本体31の上枠311と当接すると共に、上枠311から下方に向けて突出する突出片311aに上方側から挿入されている。また、各弾性体332は、下端部が移動体2の本体部21の上材212と当接すると共に、上材212から上方に向けて突出する突出片212aに下方側から挿入されている。
【0044】
接続ダクト34は、ダクト本体341の下端部に、固定ダクト97の開口部971に接続される接続口部342を備える。そして、接続ダクト34は、装置本体31の下部、具体的には、装置本体31の下枠312に固定されている。さらに、接続ダクト34は、下方に向けて開口が広がるように形成されている。また、接続口部342は、固定ダクト97の開口部971と当接する当接部材342a,…を複数備える。
【0045】
複数の当接部材342a,…は、接続口部342の周縁に沿って並列されている。また、各当接部材342aは、固定ダクト97の開口部971と当接することで、個別に変形できるように弾性を有している。そして、各当接部材342aは、下端が各下降規制部314の下端よりも下方に位置するように配置されている。
【0046】
各変位手段4は、移動体2の本体部21に固定される駆動源41と、移動体2の本体部21に回動可能に固定され、駆動源41の駆動を受けることで装置本体31に接離する接離部材42とを備える。そして、各接離部材42は、基端部421で駆動源41に連結され、駆動源41が駆動することで、先端部422が装置本体31の下枠312と接離するように回動する。
【0047】
具体的には、各接離部材42は、下降規制部314,…と固定ダクト97とを離間させるべく、装置本体31に下方側から当接して押し上げる位置と、下降規制部314,…と固定ダクト97とを当接させるべく、装置本体31と離間する位置とに切り替え可能に構成されている。なお、本実施形態において、各駆動源41を油圧(又は空圧)シリンダとしており、シリンダが伸びるのに伴い、装置本体31が下降し、シリンダが縮むのに伴い、装置本体31が上昇する。
【0048】
各保持手段5は、移動体2の本体部21に固定される駆動源51と、駆動源51の駆動を受けて装置本体31に接離し、装置本体31を係止可能な係止部材52とを備える。そして、各係止部材52は、駆動源51の駆動を受け、上限位置に位置している装置本体31に接近することで、装置本体31の側枠313に設けられる凹部313aに先端部が挿入し且つ係止するように構成されている。
【0049】
各押圧手段6は、移動体2の本体部21の下部に回動可能に取り付けられる回動部材61と、回動部材61の先端部に固定され、シールベルト98を押さえる押圧部材62とを備える。そして、各押圧手段6は、押圧部材62がシールベルト98を押圧すべく、回動部材61の基端部を付勢する付勢部材63を備える。
【0050】
除去手段7は、移動体2の本体部21の下部に基端部71が回動可能に取り付けられ、先端部72がシールベルト98の表面に接することで、シールベルト98の表面に堆積する粉塵等を除去する。そして、除去手段7は、自重により回動し、先端部72がシールベルト98と接するように構成されている。
【0051】
本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1及びベルトリフティング装置3の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1及びベルトリフティング装置3の動作について、図6〜図8を参酌して、説明する。
【0052】
まず、移動体2を移動させることで、コークガイド車1が作業する炭化室911に向けて移動する。ここで、移動体2が移動する前に、図6(a)及び図6(b)に示すように、駆動源41であるシリンダを縮小させることで、接離部材42の先端部422が装置本体31に下方側から当接し、装置本体31が押し上げられていると共に、弾性体332が伸長している。
【0053】
これにより、装置本体31が上限位置に位置しているため、図7(a)に示すように、各下降規制部314が固定ダクト97と離間していると共に、接続口部342の各当接部材342aが固定ダクト97と離間している。さらに、図8(a)に示すように、下部案内部材321が固定ダクト97から十分に離間している。
【0054】
したがって、移動体2が移動する際に、各下部案内部材321が固定ダクト97の近傍に位置するのを防止できると共に、各下降規制部314や接続口部342が固定ダクト97に当接するのを防止できる。なお、移動体2が移動する際には、保持手段5が装置本体31を上限位置で保持している。
【0055】
また、各回動部材61の先端部が付勢手段63により下方に向けて付勢されているため、押圧手段6が押圧部材62でシールベルト98を押圧している。そして、除去手段7の先端部72がシールベルト98の表面に当接しているため、移動体2が移動するのに伴って、除去手段7がシールベルト98の表面に堆積している粉塵等を除去する。
【0056】
その後、コークガイド車1が所定の炭化室911に到着すると、移動体2が停止する。そして、移動体2が停止した後に、図6(c)及び図6(d)に示すように、駆動源41であるシリンダを伸長させることで、接離部材42の先端部422が下方に向けて移動するため、装置本体31が自重で下降する。それに伴って、弾性体332は、縮小する。
【0057】
そして、装置本体31が下降していくと、図7(b)に示すように、各下降規制部314が固定ダクト97に当接することで、装置本体31の下降が規制され、装置本体31が固定ダクト97に対して位置決めされる。これにより、装置本体31が下限位置に位置しているため、接続口部342の各当接部材342aが固定ダクト97に当接して変形しており、接続ダクト34と固定ダクト97とが密接している。
【0058】
さらに、図8(b)に示すように、各下部案内部材321が固定ダクト97の近傍に位置しているため、シールベルト98が各下部案内部材321の近傍における固定ダクト97の開口部971をシールできる。また、各回動部材61の先端部が付勢手段63により下方に向けて付勢されているため、押圧手段6が押圧部材62でシールベルト98を押圧している。
【0059】
そして、各下降規制部314が固定ダクト97に当接した後も、接離部材42の先端部422が下方に向けてさらに移動するため、図6(c)及び図6(d)に示すように、接離部材42の先端部422が装置本体31から離反する。なお、縮小している弾性体332の反力(弾性力)により、装置本体31の全荷重が固定ダクト97にかかるのを防止している。
【0060】
その後、所定の炭化室911での作業を終えると、駆動源41であるシリンダを縮小させることで、接離部材42の先端部422が上方に向けて移動する。これにより、接離部材42の先端部422が装置本体31に接近し、その後、当接し、さらには、装置本体31を下方側から押し上げる。そして、図6(a)、図6(b)、図7(a)、及び図8(a)に示すように、変位手段4が装置本体31を上限位置まで押し上げた状態で、移動体2が移動する。
【0061】
以上より、本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1及びベルトリフティング装置3によれば、移動体2が移動する際には、変位手段4が装置本体31を移動体2に対して上方に変位させることで、各下部案内部材321が固定ダクト97に所定以上接近するのを防止できる。したがって、固定ダクト97が変形した場合でも、各下部案内部材321が固定ダクト97やシールベルト98を損傷するのを防止できる。
【0062】
しかも、移動体2が停止している際には、変位手段4が装置本体31を移動体2に対して下方に変位させることで、各下部案内部材321が固定ダクト97から所定以上離間するのを防止できる。したがって、固定ダクト97が変形した場合でも、シールベルト98が固定ダクト97の開口部971をシールする性能を維持できるため、移動体2で捕集した含塵ガスが固定ダクト97を介して送られる際に、各下部案内部材321の近傍において、固定ダクト97とシールベルト98との間から含塵ガスが漏出するのを防止できる。
【0063】
また、本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1及びベルトリフティング装置3によれば、固定ダクト97の開口部971に接続される接続口部342には、周縁に沿って複数の当接部材342a,…が並列されている。そして、固定ダクト97が部分的に変形していた場合でも、各当接部材342aが固定ダクト97と当接することで個別に変形できるため、固定ダクト97の変形に応じて、各当接部材342aが変形する。
【0064】
したがって、装置本体31が下限位置に位置することで、各当接部材342aが固定ダクト97と確実にそれぞれ当接できるため、接続ダクト34が固定ダクト97の開口部971を密封できる。これにより、移動体2で捕集した含塵ガスが接続ダクト34及び固定ダクト97を介して送られる際に、接続ダクト34と固定ダクト97との間から含塵ガスが漏出するのを防止できる。
【0065】
また、本実施形態に係るコークガイド車(移動装置)1によれば、変位手段4の接離部材42が装置本体31に下方側から当接して押し上げることで、装置本体31が上昇して上限位置に位置し、各下降規制部314と固定ダクト97とが離間する。その一方、接続手段33を介して、装置本体31が自重で下降できるように移動体2に接続されているため、接離部材42が下方に向けて移動するのに伴って、装置本体31が下降する。
【0066】
そして、装置本体31の下部に設けられる各下降規制部314が固定ダクト97と当接すると、装置本体31の下降が規制されるため、それ以降、接離部材42がさらに下方に向けて移動するのに伴って、装置本体31と接離部材42とが離反する。したがって、各下降規制部314が固定ダクト97と当接する位置で、装置本体31の下限位置が設定されるため、固定ダクト97のさまざまな変形に対応して、各下部案内部材321を好適な位置に位置させることができる。
【0067】
なお、本発明に係る移動装置及びベルトリフティング装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0068】
例えば、上記実施形態に係る移動装置1においては、装置本体31が下限位置に位置する際に、変位手段4が装置本体31と離間する構成を説明したが、斯かる構成に限られず、装置本体31が上限位置に位置する際だけでなく、装置本体31が下限位置に位置する際にも、即ち、装置本体31の位置に関わらず、変位手段が装置本体31と接している構成でもよい。
【0069】
具体的には、変位手段は、接離部材42の先端部422が装置本体31に連結(枢着)され、接離部材42が回動することで、装置本体31が昇降する構成でもよい。さらには、変位手段は、上下方向で伸縮する駆動源(シリンダ)を備え、駆動源の先端部に装置本体31が連結され、駆動源が上下方向で伸縮することで、装置本体31が昇降する構成でもよい。
【0070】
また、上記実施形態に係る移動装置1においては、変位手段4の駆動源41がシリンダである構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、変位手段は、モータからなる駆動源と、駆動源の駆動を上下方向の作用力に変換させて装置本体31に伝達するギア機構とを備える構成でもよい。要するに、変位手段は、装置本体31に連結されて且つ昇降したり、或いは、装置本体31に下方側から接離したりすることで、装置本体31を昇降させる構成であればよい。
【0071】
また、上記実施形態に係る移動装置1及びベルトリフティング装置3においては、接続口部342の各当接部材342aが固定ダクト97と当接することで変形する構成を説明したが、斯かる構成に限られず、各当接部材が固定ダクト97と当接することで変位する構成でもよい。斯かる構成の具体例を図9及び図10にそれぞれ示す。
【0072】
図9に示す接続口部343の各当接部材343aは、基端部がダクト本体341に回転可能に取り付けられる。具体的には、各当接部材343aは、ヒンジ部材343bを介してダクト本体341に取り付けられている。そして、図9(a)に示すように、装置本体31が上限位置に位置している状態から、図9(b)に示すように、装置本体31が下限位置に位置している状態になることで、各当接部材343aの先端部が固定ダクト97に当接するため、各当接部材343aがダクト本体341に対して個別に回転変位する。
【0073】
また、図10に示す接続口部344の各当接部材344aは、ダクト本体341に上下方向でスライド可能に取り付けられている。そして、図10(a)に示すように、装置本体31が上限位置に位置している状態から、図10(b)に示すように、装置本体31が下限位置に位置している状態になることで、当接部材344aの先端部が固定ダクト97に当接するため、各当接部材344aがダクト本体341に対して上方向に変位する。
【0074】
また、上記実施形態に係る移動装置1及びベルトリフティング装置3においては、コークス製造設備に採用される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、移動装置及びベルトリフティング装置は、石炭や鉱石等を搬送する搬送設備(前述の特許文献2及び3参照)に採用される構成でもよい。
【0075】
また、上記実施形態に係る移動装置1及びベルトリフティング装置3においては、移動装置がコークス製造設備のコークガイド車1である構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、移動装置は、コークス製造設備のコークス押出機である構成でもよく、また、コークス製造設備のフード車である構成でもよい。
【0076】
また、本発明に係る移動装置及びベルトリフティング装置においては、図11に示すように、装置本体310は、接続口部342が固定ダクト97の開口部971に対して位置決めされるべく、位置決め手段315,…を備える構成でもよい。斯かる位置決め手段315は、下降規制部314に固定されていると共に、固定ダクト97と摺接するガイド部315aが幅方向の内方に配設されている。
【0077】
斯かる構成によれば、図11(a)に示すように、装置本体310が上限位置に位置している状態から、図11(b)に示すように、装置本体310が下限位置に位置している状態になる際に、ガイド部315aが固定ダクト97の開口部971の側縁に摺接することで、接続口部342を固定ダクト97の開口部971に対して位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…移動装置(コークガイド車)、2…移動体、3…ベルトリフティング装置、4…変位手段、31,310…装置本体、32…案内手段、97…長尺体(固定ダクト)、98…シールベルト、314…下降規制部、321…下部案内部材、322…上部案内部材、342,343,344…接続口部、342a,343a,344a…当接部材、971…開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体の上部に設けられる開口部の上方に配置され、長尺体の長手方向に沿って移動する移動体に接続される装置本体と、開口部を覆ってシールするシールベルトの一部分を持ち上げるようにシールベルトを案内すべく、シールベルトが掛け渡される複数の案内部材を有する案内手段とを備え、
複数の案内部材には、装置本体の下部に取り付けられる一対の下部案内部材と、各下部案内部材よりも上方で装置本体に取り付けられる少なくとも一つの上部案内部材とが設けられるベルトリフティング装置において、
装置本体が移動体に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、装置本体と移動体とを接続する接続手段を備えることを特徴とするベルトリフティング装置。
【請求項2】
装置本体の下部に固定され、長尺体の開口部に接続される接続口部を備え、
接続口部は、周縁に沿って並列され且つ長尺体と当接することで個別に変形又は変位可能な複数の当接部材を備える請求項1に記載のベルトリフティング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベルトリフティング装置と、長尺体の長手方向に沿って移動する移動体と、各下部案内部材と長尺体とを接離させるべく、移動体に対して装置本体を上下方向に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする移動装置。
【請求項4】
接続手段は、装置本体が自重で下降可能なように、装置本体と移動体とを接続し、
装置本体は、下降するのを規制すべく、長尺体と当接する下降規制部を下部に備え、
変位手段は、下降規制部と長尺体とを離間させるべく、装置本体に下方側から当接して押し上げる位置と、下降規制部と長尺体とを当接させるべく、装置本体と離間する位置とに切り替え可能に構成される請求項3に記載の移動装置。
【請求項1】
長尺体の上部に設けられる開口部の上方に配置され、長尺体の長手方向に沿って移動する移動体に接続される装置本体と、開口部を覆ってシールするシールベルトの一部分を持ち上げるようにシールベルトを案内すべく、シールベルトが掛け渡される複数の案内部材を有する案内手段とを備え、
複数の案内部材には、装置本体の下部に取り付けられる一対の下部案内部材と、各下部案内部材よりも上方で装置本体に取り付けられる少なくとも一つの上部案内部材とが設けられるベルトリフティング装置において、
装置本体が移動体に対して少なくとも上下方向で変位可能となるように、装置本体と移動体とを接続する接続手段を備えることを特徴とするベルトリフティング装置。
【請求項2】
装置本体の下部に固定され、長尺体の開口部に接続される接続口部を備え、
接続口部は、周縁に沿って並列され且つ長尺体と当接することで個別に変形又は変位可能な複数の当接部材を備える請求項1に記載のベルトリフティング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベルトリフティング装置と、長尺体の長手方向に沿って移動する移動体と、各下部案内部材と長尺体とを接離させるべく、移動体に対して装置本体を上下方向に変位させる変位手段とを備えることを特徴とする移動装置。
【請求項4】
接続手段は、装置本体が自重で下降可能なように、装置本体と移動体とを接続し、
装置本体は、下降するのを規制すべく、長尺体と当接する下降規制部を下部に備え、
変位手段は、下降規制部と長尺体とを離間させるべく、装置本体に下方側から当接して押し上げる位置と、下降規制部と長尺体とを当接させるべく、装置本体と離間する位置とに切り替え可能に構成される請求項3に記載の移動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−166925(P2012−166925A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30507(P2011−30507)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(502369746)住友重機械プロセス機器株式会社 (29)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(502369746)住友重機械プロセス機器株式会社 (29)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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