ベルト型ろ過濃縮機
【課題】 既存の毛細管吸水機能と排水機能を有するろ材を組み合わせ、濃縮性能を発揮するベルト型ろ過濃縮機を提供する。
【解決手段】 上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を、給泥直後の投入濃縮ゾーン(A)と汚泥濃縮を行う濃縮ゾーン(B)に区画し、細長孔(L)を順次縮小開口する複数の分割固定ろ材(14a、14b、14c)を濃縮ゾーン(B)に配列して、走行方向に登り勾配(α)としたもので、上部走行ろ材(1)の毛細管吸水機能と分割固定ろ材(14a、14b、14c)の排水機能の相乗効果により、汚泥投入初期の大量のろ液の排出が可能となり、良好な濃縮性能が確保できる。若干の登り勾配を有する複合ろ材としたので、ろ液排出性が大巾に向上し、高濃度の濃縮汚泥と高い固形物回収率が得られる。分割固定ろ材(14a、14b、14c)に支持されて、上部走行ろ材(1)は垂れによる磨耗がなく、常にろ液に潤滑されて寿命延長が期待できる。
【解決手段】 上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を、給泥直後の投入濃縮ゾーン(A)と汚泥濃縮を行う濃縮ゾーン(B)に区画し、細長孔(L)を順次縮小開口する複数の分割固定ろ材(14a、14b、14c)を濃縮ゾーン(B)に配列して、走行方向に登り勾配(α)としたもので、上部走行ろ材(1)の毛細管吸水機能と分割固定ろ材(14a、14b、14c)の排水機能の相乗効果により、汚泥投入初期の大量のろ液の排出が可能となり、良好な濃縮性能が確保できる。若干の登り勾配を有する複合ろ材としたので、ろ液排出性が大巾に向上し、高濃度の濃縮汚泥と高い固形物回収率が得られる。分割固定ろ材(14a、14b、14c)に支持されて、上部走行ろ材(1)は垂れによる磨耗がなく、常にろ液に潤滑されて寿命延長が期待できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、或いは、OD余剰汚泥などの汚泥を濃縮するベルト型ろ過濃縮機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ布を用いたベルト型ろ過濃縮機は古くから実用化されており、ベルトプレスの濃縮ゾーンにも採用されている。ろ材としてのろ布は、材質、開口率、通気度、目開き、強度、織形、各種の選択肢があり、軽量でコストも低廉であるので、殆どのベルト型ろ過濃縮機に採用されている。これまでのベルト型ろ過濃縮機に採用されているろ布は、一定の汚泥固形物の回収率を確保することを重視して、一般的に目開きが小さなものが選定されており、ろ液の排出性に若干の難点がある。ろ布を織布する繊維の強度は金属ほど強くなく、摺動による磨耗によってろ材寿命が金網ほど長くない。近年、ろ液の排出性が良く、剥離性と洗浄性もよい金属性ろ材をベルト型ろ過濃縮機に使用することが提案されている。例えば、リング状の線材を相互に当接して上層と下層の間に空隙を有するベルト本体を形成して、上層の毛細現象で吸引し、無端ベルトを振動と曲げを与えて排水する汚泥の濃縮装置は、特許文献1に記載してあるように公知である。また、金属線材で構成した無端ベルトの水切り装置に関する技術としては、無端ベルトの下側に所定間隔をあけて支え板を配置したベルト型濃縮機も、例えば、特許文献2に記載してあるように公知である。
【特許文献1】特許第3504252号公報(段落番号0009乃至段落番号000 12、図2及び図3)
【特許文献2】特開2005−95845号公報(段落番号0024乃至段落番号0 025、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のベルト型ろ過濃縮機に採用しているろ布は、ろ布の湾曲垂れ防止のために支架している支持ロールが、ロール間のろ布と汚泥の重量を分担するので、ろ布の支持面圧が比較的大きく、これが断続的に作用してろ布の磨耗が早くなる。線材同士が密着して上下層を形成する金属などの無端ベルトでは、毛細管吸水機能を有するため、汚泥からの吸水機能は優れるが、その一方で高い毛細管吸水機能がろ液の排出抵抗を大きくする。空隙を有する上下層の中間部に侵入した汚泥固形物は、極めて排出し難く入念に洗浄しなければ汚泥固形物は排除できない。また、金属などの線材からなる無端ベルトでは、無端ベルトと汚泥の重量を分担するキャリアローラを狭い間隔で配設すると、ローラ間での湾曲が少なくなり、振動と曲げ作用が無くなるため、ろ液を大量に排出しなければならない投入初期には適さない。従来の無端ベルトを支える支え板の配置間隔を狭くすると、無端ベルトの振動と曲げ作用が無くなり、ろ液排出が阻害されて水切り作用を促進できない。無端ベルトが支え板の端部角に摺接し、通過時の磨耗の進行は避けられない。そして、ヘリボン網などの無端ベルトでは、金属線材間の表裏面に粗い凹凸が形成され、スクレーパで掻き取る際に濃縮汚泥が残留し、目詰まりしやすく多量の洗浄水が必要となる。分離したろ液中の固形物濃度が高く、洗浄ノズルが詰る恐れがあり、ろ液を洗浄水として利用できない。この発明は、既存の毛細管吸水作用と排水作用を有するろ材を組み合わせ、濃縮機能を発揮するベルト型ろ過濃縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係るベルト型ろ過濃縮機は、ロール間に無端ベルトを走行自在に掛け回し、無端ベルトのろ過面に汚泥を供給して固液分離を行なう濃縮装置において、毛細管吸水機能を有する織布状の上部走行ろ材を張設し、上部走行ろ材のろ過面を下部固定ろ材に摺接支架させると共に、下部固定ろ材に排水機能を有する深溝の細長孔を上部走行ろ材の走行方向に形成したもので、走行ろ材の毛細管吸水機能と固定ろ材の排水機能の相乗効果により、格段の毛細管吸水作用と排水作用を発揮して、大量のろ液の排出を必要とする低濃度の汚泥でも良好な濃縮作用が確保できる。そして、汚泥を供給した上部走行ろ材のろ過面を下部固定ろ材で支持するので、上部走行ろ材の面圧が小さくなり、上部走行ろ材の垂れによる磨耗が無くなる。下部固定ろ材の細長孔が上部走行ろ材の走行方向に連続的に配置され、常に上部走行ろ材と摺接支架する下部固定ろ材がろ液により潤滑されるのでろ材の磨耗も少ない。
【0005】
上部走行ろ材をろ布又はネットコンベアベルト金網で構成し、下部固定ろ材をウェッジワイヤー又は平行金網で構成したもので、ウェッジワイヤー又は平行金網の下部固定ろ材は、厚み方向に貫通する細長孔を有するので、ろ布又はネットコンベアベルト金網の上部走行ろ材の強度を維持しながら、固形物の停滞による細長孔の目詰まりは進行せずに通水性を確保できる。適切な汚泥濃度と固形物の回収率が得られ、ろ速の低下、剥離不良は発生せずに、長期使用が可能なろ材機能となる。そして、ウェッジワイヤーとろ布を組み合わせると、細長孔がろ過面側からろ液の排出側に向かって広がって、金属ろ材の目詰まりし難い特性が強化され、毛細管吸水作用と排水作用を発揮する濃縮機能が得られる。
【0006】
上部走行ろ材のろ過面と上部走行ろ材を摺接支架する下部固定ろ材に、ろ布の走行方向に向かって登り勾配の傾斜角を形成したもので、若干の登り勾配を有する複合ろ材を採用することにより、細長孔の間隙を流れる流速の速いろ液がろ布に負圧を与え排出機能を高める。下部固定ろ材の細長孔に沿ってろ液が滞留することなく排出されて、ろ液排出性(濃縮性能)が大巾に改善向上し、高い固形物回収率も得られる。
【0007】
下部固定ろ材を分割し、分割固定ろ材の細長孔を上部走行ろ材の走行方向に順次縮小開口したもので、上部走行ろ材のろ過面は、走行方向後段に移行するに従って、排出すべきろ液量が減少し、排水能力よりも毛細管吸水能力の方が要求される。分割固定ろ材の細長孔を上部走行ろ材の走行方向に順次縮小開口すれば、毛細管吸水機能が増加して、孔径を一定とした従来のろ材に比較して、含水率の低下など濃縮度が向上するもので、排出すべきろ液量と毛細管吸水能力の要求に応じて、適宜微細金属ろ材の孔径、ピッチを設定できる。また、下部固定ろ材を分割すれば、分割固定ろ材の加工が容易となり、比較的重量物である分割固定ろ材は、最初の組立にあっても分割した形態で組み付けが可能であり、重量的に作業の支障はない。
【0008】
上部走行ろ材のろ過面を摺接支架させる複数の分割固定ろ材の細長孔幅、ワイヤー間隔を、上部走行ろ材の走行方向に0.2〜20mmの範囲で順次縮小開口したもので、排水機能と水切り機能が要求される汚泥の投入初期には、分割固定ろ材の目開き寸法を大きくし、排水能力よりも毛管吸水能力を要求される中期には、分割固定ろ材の目開きは投入初期に比べると比較的小さくし、後期の分割固定ろ材はさらに小さくして毛管吸水能力を高めたもので、毛細管吸水機能および排水機能をさらに増幅することができる。
【0009】
上記上部走行ろ材のろ過面を、給泥直後の投入濃縮ゾーンと汚泥濃縮を行う濃縮ゾーンに区画し、複数の分割固定ろ材を濃縮ゾーンに配列してもよいもので、下部固定ろ材を取除いた投入濃縮ゾーンでは、排出ろ液の抵抗となることがなく、大量のろ液を排出させることができる。汚泥の投入部の投入濃縮ゾーンでは、上部走行ろ材に僅かな湾曲作用が発生し、汚泥溜まりを若干深くして濃縮圧力を高め、且つ濃縮時間を長くして濃縮作用を高めることができる。
【0010】
下部固定ろ材の細長孔構成部材の裏面に、上部走行ろ材を横切る方向に堰板状の連結支持部材を配設すれば、下部固定ろ材の細長孔に沿って流下するろ液が、連結支持部材に堰き止められて落下して、適当な間隔でろ材から排除することができる。ろ液が下部固定ろ材に累積されて、上部走行ろ材から下部固定ろ材への排出を阻害することがなく、水切り材となって効率的なろ液の排除が行える。そして、上部走行ろ材のろ過面を摺接支架させる前後の分割固定ろ材の間に、所定の間隙を設けてもよく、分割固定ろ材の下流側間隙からろ液を排出することにより、ウェッジワイヤーに沿って流れるろ液を分断し、水切り機能が向上する。
【0011】
下部固定ろ材の裏面に洗浄装置を配設すれば、下部固定ろ材の洗浄が可能となり、ろ材機能が維持されて長寿命となる。投入濃縮ゾーンの下部固定ろ材を取除けば、ろ液排出量の多い投入濃縮ゾーンのろ液が下部固定ろ材の洗浄の障害となることがなく、上部走行ろ材の高速走行での汚泥濃縮と同時に、分割固定ろ材の洗浄が可能となる。そして、上部走行ろ材をろ布とすれば、高い固形物回収率を維持しているので、ろ液をリサイクルしてろ材洗浄が可能であり、洗浄水の供給が不要となる。ウェッジワイヤーで分割固定ろ材を構成すれば、上部走行ろ材の摺接面側からろ液排出側に拡大する拡開側のワイヤー孔から洗浄するので、目詰まりの解消が容易となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るベルト型ろ過濃縮機は、毛細管吸水機能を有する上部走行ろ材と、排水機能に優れた下部固定ろ材を組み合わせた複合ろ材のベルト型ろ過濃縮機としたので、毛細管吸水作用と排水作用の相乗効果により、大量のろ液の排出が可能となり濃縮性能と処理量の向上が図れる。上部走行ろ材にろ布を使用すれば、ろ布の持つ高い固形物回収率と、高い洗浄性はそのまま維持しつつ、ろ液をリサイクルして洗浄水として利用でき、低い水圧と少ない洗浄水でろ材面の再生が可能となる。そして、下部固定ろ材をろ液で潤滑させながら、上部走行ろ材のろ過面を支持しているので、ろ布などの上部走行ろ材の磨耗が少なく、従来の単独ろ布よりも寿命延長が期待でき、上部走行ろ材の交換頻度が大巾に減少する。ベルト型ろ過濃縮機の性能向上を高分子凝集剤の添加量の削減や濃縮機の機長短縮に転化することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係るベルト型ろ過濃縮機を図面に基づき詳述すると、図1はベルト型ろ過濃縮機の側面図であって、無端状の上部走行ろ材1がフレーム2の前後に配設した緊張ロール3と駆動ロール4に張設してあり、上部走行ろ材1の上面をろ過面1aとしてある。緊張ロール3にろ布緊張装置5と、駆動ロール4に駆動装置6が連動連結してある。図2はベルト型ろ過濃縮機の平面図であって、上部走行ろ材1の始端側のろ過面1aに給泥トラフ7と、給泥トラフ7近傍の給泥直後のろ過面1aの両側に汚泥の溢流防止用の案内板8、8が配設してあり、駆動ロール4に掛け回した上部走行ろ材1にスクレーパ9が当設してある。図1に示すように、汚泥投入初期の大量にろ液が排出される上部走行ろ材1の裏面近傍にろ液トラフ10が配設してある。無端状の上部走行ろ材1の反転下面部にろ布蛇行修正装置11と、ろ材洗浄装置12が配設してあり、その下方に濃縮部のろ液と洗浄排水を受ける総合排水トラフ13が配設してある。図1及び図2に示す緊張ロール3と駆動ロール4に掛け回した上部走行ろ材1は、毛細管吸水機能を備えた平織、綾織、二重織などのろ布、又はネットコンベアベルト金網で構成してある。ろ布とネットコンベアベルト金網は毛細管吸水機能に優れ、洗浄性と屈曲柔軟性が良くベルト駆動に好適である。上部走行ろ材1をろ布で構成すれば汚泥固形物の回収率が高く、汚泥投入初期のろ液トラフ10に受けた大量のろ液は、ろ材洗浄液として利用できる。
【0014】
図1及び図2に示すように、上部走行ろ材1のろ過面1aを摺接支架させる下部固定ろ材14がフレーム2に配設してあり、上部走行ろ材1と下部固定ろ材14を組み合わせた複合ろ材としてある。図3は下部固定ろ材の構造を示す概念図であって、下部固定ろ材14は上部走行ろ材1を走行方向に摺接支架する並列した長尺の細長孔構成部材15・・・と、細長孔構成部材15・・・の下面に所定の間隔を開けて上部走行ろ材1の走行方向に概略直行させて止着した複数の連結支持部材16・・・で構成してある。図4は下部固定ろ材の要部拡大図であって、所定の間隔をあけて並列した細長孔構成部材15・15の間に細長孔幅Sと、細長孔深さHを有する長尺の細長孔Lを形成してある。この発明の実施例では、ベルト型濃縮機の大きさに応じて、連結支持部材16・・・の間隔を10〜100mmの範囲に設定してある。
【0015】
図5はウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材の他の実施例の概念図であって、この発明の実施例では、ウェッジワイヤーで下部固定ろ材17を構成してあり、多数並列した断面視が逆三角形状の長尺のワイヤー18と、所定の間隔をあけてワイヤー18・・・の下面に止着した複数の連結支持部材19・・・で構成してある。図6はウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材17の要部拡大図であって、左右のワイヤー18、18の間にワイヤー間隔Saとワイヤー高さHaを有する長尺のワイヤー孔Laを形成してある。ウェッジワイヤーで下部固定ろ材17を構成すれば、長尺のワイヤー孔Laが上部走行ろ材1の摺接面側からろ液排出側に拡大して、金属ろ材の目詰まりし難い特性が強化される。また、下部固定ろ材17は厚み方向に貫通する細長孔が形成された平行金網で構成してもよいもので、排水機能(水切り機能)を備えたろ材となる。
【0016】
図3及び図5に示す下部固定ろ材14、17のろ材孔は、厚み方向に貫通する細長孔L、Laなので、排水機能(水切り機能)を備えたろ材となり、固形物の停滞による目詰まりは進行せずに通水性を確保でき、濃縮性能の低下は発生せずに、長期使用が可能なろ材機能となる。汚泥を供給した上部走行ろ材1のろ過面1aを下部固定ろ材14、17で摺接支架するので、上部走行ろ材1の面圧が小さくなり、上部走行ろ材1の垂れによる磨耗がなくなる。常に上部走行ろ材1はろ液で潤滑され、下部固定ろ材14、17の細長孔L、Laが上部走行ろ材1の走行方向に沿って配置されるので、摺接支架による磨耗も少なく、上部走行ろ材1の強度を維持できる。ろ布又はネットコンベアベルト金網で構成した上部走行ろ材1の毛細管吸水機能と、ウェッジワイヤー又は平行金網の下部固定ろ材14、17の排水機能の相乗効果により、毛細管吸水作用と排水作用が発揮され、大量のろ液の排出を必要とする低濃度汚泥でも良好な濃縮性能が確保でき、適切な汚泥濃度と固形物の回収率が得られる。従来の単独ろ布よりも寿命延長が期待でき、ろ材の交換が大巾に減少する。比較的重量物である下部固定ろ材14、17も、固定のまま使用して交換の必要が無い。
【0017】
図7は上部走行ろ材と下部固定ろ材を配置したベルト型ろ過濃縮機の概念図であって、無端状に張設した上部走行ろ材1のろ過面1aと摺接支架させる下部固定ろ材14、17の複合ろ材を、上部走行ろ材1の走行方向に向かって傾斜角αの登り勾配としてある。ベルト速度によって傾斜の効果が左右される従来の傾斜付きベルト型濃縮機と異なり、ベルト速度に関係なく傾斜を独立して設定できる。
【0018】
上部走行ろ材1のろ過面1aと摺接支架させる下部固定ろ材14、17は、単に上部走行ろ材1の毛管吸水機能と摺接支架させる下部固定ろ材14、17の排水機能を合体させただけでなく、傾斜させた下部固定ろ材14、17の細長孔L、Laの間隙を速く流れるろ液が上部走行ろ材1に負圧を付与して排出機能を高め、上部走行ろ材1の毛細管吸水機能および排水機能をさらに増幅する。上部走行ろ材1から下部固定ろ材14、17側に排出されるろ液は、下部固定ろ材14、17の傾斜面に沿って流れ、上部走行ろ材1を支える下部固定ろ材14、17の裏面の連結支持部材16、19が、上部走行ろ材1の走行方向に概略直交して堰板状となり、適当な間隔で下部固定ろ材14、17から排除される。ろ液が下部固定ろ材14、17の細長孔L、Laに累積されて、上部走行ろ材1から下部固定ろ材14、17への排出を阻害することがなく、水切り材となって効率的なろ液の排除が行える。従来の単独ろ材では成し得なかった高い濃縮性能が発現し、高い固形物回収率が得られる。
【0019】
図8は下部固定ろ材を分割する他の実施例の概念図であって、上部走行ろ材1のろ過面1aを、下部固定ろ材14を取除いた給泥直後の投入濃縮ゾーンAと、複数の分割固定ろ材14a、14b、14cで摺接支架させた濃縮ゾーンBに区分してある。汚泥の投入直後の投入濃縮ゾーンAには下部固定ろ材14を摺接させずに、上部走行ろ材1だけで重力分離させる。投入濃縮ゾーンAでは、排出ろ液の抵抗が小さく、大量のろ液を排出させることができる。投入濃縮ゾーンAでは、上部走行ろ材1の僅かな湾曲作用により、投入初期の汚泥溜まりが深くなり、濃縮圧力を高め、且つ濃縮時間も長くなり、濃縮作用を高めることができる。この発明の実施例では、濃縮ゾーンBを濃縮前期B1、濃縮中期B2、濃縮後期B3に区分し、3分割した分割固定ろ材14a、14b、14cを上部走行ろ材1のろ過面1aに摺接支架させてある。分割固定ろ材14a、14b、14cの細長孔幅Sを、排水機能と水切り機能が要求される汚泥の濃縮前期B1は大きく取り、濃縮中期B2は排水能力よりも毛管吸水能力の方が要求されるので、濃縮前期B1に比べると比較的小さくし、濃縮後期B3はさらに小さくしてある。
【0020】
図8に示すように、傾斜させた上部走行ろ材1を支架する濃縮ゾーンBの分割固定ろ材14a、14b、14cの間には、所定の間隙Dを設けてある。分割固定ろ材14a、14b、14cの傾斜下端の間隙Dからろ液を排出することにより、ろ材に沿って流れるろ液を分断し、水切り機能が向上する。下部固定ろ材14は比較的重量物であり、下部固定ろ材14を分割すれば、分割固定ろ材14a、14b、14cの加工が容易となり、最初の組立にあっても分割した形態で組み付けが可能であり、重量的に作業の支障はない。なお、この発明の実施例では、3組の分割固定ろ材14a、14b、14cとしてあるが、ベルト型濃縮機の濃縮の進行状況に応じて、濃縮前期B1、濃縮中期B2、濃縮後期B3に配設する分割固定ろ材14a、14b、14cを適宜増加させることができる。
【0021】
図9は下部固定ろ材の他の実施例の概念図であって、ウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材17を分割し、複数の分割固定ろ材17a、17b、17cを濃縮ゾーンの濃縮前期B1、濃縮中期B2、濃縮後期B3に配設してある。ウェッジワイヤーはワイヤー巾Wを0.8mm、ワイヤー高さHaを2mmのウェッジワイヤーを使用しており、下部固定ろ材17のワイヤー間隔Saは処理容量と汚泥性状に応じて適宜設定できるもので、分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー間隔Saを、0.2〜20mmの範囲で濃縮前期B1、濃縮中期B2、濃縮後期B3の順に順次縮小開口してある。排出すべきろ液量と毛細管吸水機能の要求に応じて、適正なワイヤー間隔Saに設定すれば、毛細管吸水作用の増加と含水率の低下により濃縮性能が向上する。濃縮ゾーンBの前後の分割固定ろ材17a、17b、17cの間には、5〜30mmの間隙Daを設けてある。上部走行ろ材1を摺接支架させる下部固定部材17は、分割したウェッジワイヤー17a、17b、17cのワイヤー面が上部走行ろ材1の走行方向に連続的に配置され、ろ過面1aの全面をウェッジワイヤー17a、17b、17cで支持しているので、面圧が小さく、ワイヤー間隔Saも0.2〜20mmと狭いので、上部走行ろ材1の垂れによる湾曲がない。常にウェッジワイヤー17a、17b、17cがろ液により潤滑されているので、上部走行ろ材1の磨耗が少なく、ろ布などの上部走行ろ材1は、従来の単独ろ布よりも寿命延長が期待できる。
【0022】
図7に示すように、下部固定ろ材14、17の裏面近傍に往復動自在な洗浄装置20を配設すれば、下部固定ろ材14、17に汚泥が固着し、排水機能が低下した時に下部固定ろ材14、17の目詰まりを解消できる。上部走行ろ材1にろ布を使用すれば、ろ布の持つ高固形物回収率と高洗浄性により清澄なろ液となるので、ろ液をリサイクルしてろ材洗浄が可能であり、洗浄水の供給が不要となる。そして、ウェッジワイヤーで下部固定ろ材17を構成すれば、拡開側のスリット孔から洗浄するので、目詰まりの解消が容易となる。図7及び図8に示す、濃縮ゾーンBだけに配設した分割固定ろ材14a、14b、14c、17a、17b、17cを洗浄する場合には、上部走行ろ材1を走行させながら汚泥の供給を停止し、上部走行ろ材1の排出側から開始すれば、給泥トラフ7近傍の投入直後のろ液排出量の多い投入濃縮ゾーンAでは、洗浄装置20が汚泥投入側に近づく間に濃縮前期B1の大量のろ液排出は終っており、上部走行ろ材1からの排出ろ液はろ材洗浄水の障害となることがなく、運転中の洗浄も可能となる。下部固定ろ材14、17の裏面全面の高速洗浄を可能とし、ろ材機能が維持されて半永久的に使用できる。
【0023】
図10は複合ろ材を用いたベルト型濃縮機のフローチャートであって、図8に示す、ろ布製の上部走行ろ材1の濃縮ゾーンBに、図9に示す、ウェッジワイヤー製の分割固定ろ材17a、17b、17cを摺接支架させるベルト型濃縮機の処理フローについて説明する。図10に示すように、高分子凝集剤を添加してフロックを生成させた凝集汚泥を給泥トラフ7から上部走行ろ材1の投入濃縮ゾーンAに供給する。投入濃縮ゾーンAでは、上部走行ろ材1の僅かな湾曲作用により、投入初期の汚泥溜まりが深くなり、濃縮圧力を高め、且つ濃縮時間も長くなり、濃縮作用を高める。そして、上部走行ろ材1の投入濃縮ゾーンA及び濃縮ゾーンBの濃縮前期B1の下方に、ろ液トラフ10が配設してあり上部走行ろ材1で分離したろ液を洗浄水タンク21に貯水する。上部走行ろ材1のろ布は汚泥固形物の回収率が高く、ろ布で分離したろ液は、清澄度が高く洗浄液として利用できる。投入濃縮ゾーンAからろ液を大量に分離した濃縮汚泥を、濃縮ゾーンBの濃縮前期B1に移送して、ろ液を分離しながら濃縮中期B2、濃縮後期B3に移送する。
【0024】
図10に示すように、濃縮ゾーンBの分割固定ろ材17a、17b、17cで摺接支架する上部走行ろ材1側では、汚泥から毛細管作用によって吸水したろ液が、上部走行ろ材1を貫通して分割固定ろ材17a、17b、17c側へ排水されるルートと、上部走行ろ材1と分割固定ろ材17a、17b、17cの間隙の毛細管作用によって吸水したろ液が、分割固定ろ材17a、17b、17c側へ排水されるルートが発生する。そして、分割固定ろ材17a、17b、17c側では、ろ液が分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー孔Laに沿って傾斜下流方向に流れるルートと、ワイヤー18の側面に沿って重力方向に流れるルートを発生する。ワイヤー孔Laに沿って傾斜下流方向に流れるルートは、障害物がない勾配を有する直線溝状の流路であり、過分のろ液はワイヤーの側面に沿って重力方向に流れるルートで排出される。また、ワイヤー18の側面に沿って重力方向に流れるルートは、分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー孔Laが拡開する方向に流れるので抵抗がなく、ワイヤー幅Wは最下端が鋭角になっているのでろ液の表面張力が解除されて滴下する。ろ液量が少なくなってもワイヤー孔Laにろ液を表面張力で保持することがない。傾斜させた下部固定ろ材17aのワイヤー孔Laの間隙を速く流れるろ液が、上部走行ろ材1の毛細管吸水機能と排水機能をさらに増幅させる。更に、分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー18・・・を支持する連結支持部材19が、上部走行ろ材1の走行方向に概略直交して堰板状となり、ろ液を排除する。ろ液が分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー孔La・・・に累積されて、上部走行ろ材1から分割固定ろ材17a、17b、17cへの排出を阻害することがなく、水切り材となって効率的なろ液の排除が行える。濃縮ゾーンBの濃縮中期B2、濃縮後期B3に移送されるに従って、従来の単独ろ材では成し得なかった高い濃縮性能が発現し、高い固形物回収率が得られる。
【0025】
次に、駆動ロール4に沿って反転する上部走行ろ材1から、濃縮ゾーンを通過して高濃度となった濃縮汚泥をスクレーパ9で剥離する。濃縮汚泥を剥離した上部走行ろ材1に走行ろ材洗浄ノズル12aが対設してあり、洗浄水タンク21に連結した走行ろ材洗浄ポンプ22から走行ろ材洗浄ノズル12aにろ液を供給し、上部走行ろ材1のろ布を洗浄する。ろ布は単繊維の織物なので洗浄性が良い。洗浄した上部走行ろ材1に、蛇行修正ロール11aが当接してあり、蛇行した上部走行ろ材1の偏寄を修正して緊張ロールに掛け回した後、再びろ過面1aに移送される。分割固定ろ材17a、17b、17cの下方近傍に固定ろ材洗浄ノズル20aが配設してあり、洗浄水タンク21に連結した固定ろ材洗浄ポンプ23から固定ろ材洗浄ノズル20aにろ液を供給し、分割固定ろ材17a、17b、17cを洗浄する。分割固定ろ材17a、17b、17cのウェッジワイヤーは、ワイヤー孔Laが上部走行ろ材1の摺接面側からろ液排出側に拡大する拡開側のワイヤー孔Laから洗浄するので、目詰まりの解消が容易となる。
【実施例】
【0026】
ろ布を用いたベルト型濃縮機は古くから実用化されており、濃縮専用の機種もあるが、ベルトプレスの濃縮ゾーンにも組み合わせて採用されている。ろ布は材質、開口率、通気度、目開き、強度、織形式など各種の選択肢があり、軽量でコストも低廉であるので、多くのベルト型濃縮機に採用されている。また、近年濃縮機に金網が使われることもあるが、一長一短がある。そこで、従来の固液分離装置に使用するろ材について、その特性と欠点について調査した。ろ材としては、織ろ布、金網、不織布、金属ろ材、及び、ろ布と金属ろ材を組み合わせた複合ろ材を対象とした。水平姿勢でベルトろ材として使用した場合の、毛細管吸水機能、水切り機能(排水機能)、回収率、目詰まり洗浄性、及び屈曲柔軟性について、基礎試験を行い、経験値も含めて考察した。検討評価は、構造や物性の分析および濃縮試験の結果に基づいて行った。ろ材の毛細管吸水機能は、そのろ材の持つ水切り機能(排水機能)とセットの作用であり、両者の作用は小さい方の能力に制約される。表1は、特徴と欠点を比較検討したろ材種別の評価表である。
【0027】
【表1】
【0028】
(1)ろ布(平織、綾織、二重織、他)
これまでのベルト型濃縮機に採用されているろ布は一定の回収率を確保することを重視し、一般的に目開きが小さなものが選定されており、毛細管吸水性能は十分であるが、ろ液の排出性に若干の難点がある。剥離性には問題はなく高い回収率となる。また、単繊維の織物なので洗浄性が良い。屈曲柔軟性もよくベルト駆動に好適である。繊維の強度は金属ほど強くなく、従来型のすき返しでは摺動による摩耗によってろ材寿命が金網ほど長くない。
(2)金網/織網(平織、綾織、他)
平織、綾織などの金網及び織網は、屈曲性以外はろ布と同様の機能を有するが、金網及び織網のベルトを走行させるには、屈曲性が著しく劣り致命的な欠点となる。
(3)金網/ネットコンベアベルト(荒目ヘリボン網)
実用化されている金網はヘリボン網であり、目巾が広くヘリボン線径が1mm程度あり表面は凹凸が大きく粗いため、ろ液濁度が高くなり回収率が悪化する。すき返し装置や排出スクレーパで掻き取る際に汚泥が凹部に食い込んで残留し易いので洗浄排水の濁度が高くなり更に回収率が悪化する。また、ヘリボン網の金網は上下層が構成され、上下層間に進入した汚泥のSS粒子は低水圧の洗浄では排除し難く、上下から丁寧な洗浄が必要であり、洗浄不十分の場合、目詰まりが進行する恐れがある。そして、一般的に金網の寿命はろ布よりも長いが、ろ布に比べるとコストは高い。また重量が重いためベルト幅が広くなると重機を用いた作業が必要となる。ヘリボン網の金網は、ネットコンベア用に開発された編み方なので屈曲柔軟性もよくベルト駆動に好適である。
(4)不織布
不織布は毛細管吸水性能は極めて高いが、逆に排水機能は無く、目詰まりや洗浄性の問題は致命的な欠点である。
(5)ウェッジワイヤー
ウェッジワイヤーは、ろ材スリットが排水側に拡開しており根本的に排出水切り機能が優れた形状であり、一般的に洗浄性のよいスクリーンとして採用される。目巾を狭くすれば毛細管吸水性能も向上するが、開口率が少なくなり、排出機能が低下して実用上の処理量を満足しない。目巾を比較的広くすれば排出水切り機能が優れている反面、毛細管吸水性能が劣るので高濃度の濃縮が困難であり且つろ液に汚泥が多量に抜けるため回収率が悪化し実用に耐えない。屈曲性がなくベルト走行はできない。
(6)パンチングメタル
パンチングメタルは極薄板にすれば屈曲ベルト状での使用は可能であるが、小孔径の丸孔は表面張力により毛細管吸水および排出性能とも他のろ材よりかなり劣る。
(7)パンチングメタルとろ布の複合ろ材
下部固定ろ材にパンチングメタル、上部走行ろ材にろ布を組み合わせると、パンチングメタルの毛細管吸水機能および排出性能機能とも他のろ材よりかなり劣る欠点が障害となって、ろ布の長所の毛細管吸水機能は発揮されない。
(8)ウェッジワイヤーとろ布の複合ろ材
下部固定ろ材にウェッジワイヤー、上部走行ろ材にろ布を組み合わせると、ろ布の毛細管吸水機能とウェッジワイヤーの排水機能の相乗効果により、ろ布の弱点であった排水性能がウェッジワイヤーで解消され、ウェッジワイヤーの弱点であつた回収率が、ろ布の毛細管吸水作用で解消される。強力な毛細管吸水作用と水切り作用が発揮され、良好な濃縮性能が確保され、高い回収率が得られた。ウェッジワイヤーは固定仕様とすれば屈曲性は必要がなく、屈曲柔軟性の良いろ布だけを走行させれば、剥離性に優れたろ材であり、洗浄性も良い。ウェッジワイヤーとろ布を組合せれば、欠点のないろ材が導き出せることが基礎試験より確認された。
【0029】
基礎試験の結果から水平な姿勢におけるウェッジワイヤーとろ布の組み合せにより、毛細管吸水作用と排水作用の欠点はなくなるが、更に登り勾配を加えると濃縮性能が大幅に向上することが判明した。それは、登り勾配により各作用が相乗的に増大するためであり、小さくてもよいが明らかな流れ勾配は極めて有効である。水が自然に流れ出す最小限の緩やかな勾配を水勾配と言うが、経験的に出来るだけ傾斜を抑え、且つ水溜りが出来ないようにする必要がある。これらの経験値と、一般的な計算式から角度と水勾配、ろ過面のレベル差が導き出せる。その結果を表2に表記する。
【0030】
【表2】
【0031】
そこで、某浄化センターで、ベルトの傾斜角度の有無と濃縮濃度の関係についてベルト型ろ過濃縮機を使用して実証試験を行った。ベルト型ろ過濃縮機は、500mm巾×有効長さ3000mmのろ布とウェッジワイヤーを組み合せた複合ろ材を使用して、ろ材走行速度を10m/minに設定した。供給汚泥は、TS濃度0.72%、SS濃度0.46%の余剰汚泥に高分子凝集剤を0.25%(対TS)添加して、この凝集汚泥を250L/minで供給し、ベルトの傾斜角が0度の場合と2度の場合について、濃縮汚泥濃度を調査した。試験結果の複合ろ材のベルトの傾斜角度の有無と濃縮濃度の関係を表3に表記する。
【0032】
【表3】
【0033】
ベルトプレス脱水機前段の濃縮ゾーンでは、ろ布単独のベルト濃縮が採用されるが、傾斜角を大きくすると濃縮濃度が上昇するという知見がある。これはろ布走行方向に登り勾配の傾斜角度をつけることによって、ろ液がろ材に同伴するのを防止し、濃縮汚泥排出側に搬送され難くなるものである。この作用はベルト速度が1m/分程度のベルトプレスの場合は5度程度の比較的小さな傾斜角度で効果を発揮するが、ベルト濃縮では一般的にベルト速度が10〜40m/分と高速になるので、10〜15度のかなり大きな傾斜角度をつけないとその効果は小さい。しかし、10度以上の大きな角度をつけると濃縮汚泥排出側のレベルが高くなり、装置の全高が高くなり好ましくない。例えば、ろ布ベルトの駆動ロールと緊張ロール間が3000mmの場合、傾斜角10〜15度で約500〜800mm高くなる。さらに、10度以上の大きな傾斜角度をつけると、ろ布走行の駆動動力も増加するため好ましくない。
【0034】
装置の全高を低くし、ろ布走行の駆動動力を小さくするには、傾斜角度はできるかぎり小さい方がよい。表2に示した一般的な水勾配角度では、できるだけ傾斜を抑え、且つ水溜りが発生しないように風呂場やバルコニーの床は通常1/100〜1/50、車庫の床等流れ難い泥水の排水で、且つ傾斜がさほど問題とならない場合は1/20程度まで勾配を大きくしている。また、ウェッジワイヤー等の固定ろ材面にも僅かながらうねりがあり、局部的に登り勾配を減じることとなることも考慮して、傾斜角度2度程度、勾配1/30程度とした。一例として、ろ布ベルトの駆動ロールと緊張ロール間が3000mmの場合、ろ布ベルトの傾斜角度が2度であれば全高は約100mm程度しか高くならない。
【0035】
登り勾配2度の傾斜角に設定した時の毛細管吸水機能と水切り機能(排水機能)、及び回収率と目詰まり洗浄性についてろ材種別ごとに比較基礎試験を行った。その実験結果を表4に表記する。登り勾配の傾斜をつけることにより、ウェッジワイヤーとろ布の組合せによる複合ろ材は、毛細管吸水機能と排水水切り機能が他のろ材を上回り、毛細管吸水作用と排水水切り作用が相乗的に増大して強力な濃縮機能を発現する。尚、単独ろ材は、ウェッジワイヤーの水切り機能(排水機能)が増加した。他のろ材も傾斜効果で濃縮性能の向上が見られるが、これらは小幅であった。ウェッジワイヤー+ろ布+傾斜の場合は他のろ材の傾斜効果より上昇幅の大きな効果が得られた。ウェッジワイヤーとろ布の複合ろ材では下部固定ろ材は走行しないので走行ろ材の速度に関係なく、僅かの傾斜角度があればろ液の同伴防止が図れる。ベルト速度によって傾斜の効果が左右される従来の傾斜付きベルト型濃縮機と異なり、下部固定ろ材はベルト速度に関係なく傾斜を独立して設定できる。
【0036】
【表4】
【0037】
図11及び図12はろ布とウェッジワイヤーを組み合わせた複合ろ材のろ液排出状況を示す概念図であって、ろ液の流れを観察すると、傾斜させたワイヤー間隙を流れるろ液は流速が速い。ろ液排出量が多い投入濃縮ゾーンでは、ウェッジワイヤーのワイヤーを支えるロッドに堰き止められてろ液が落下している。ワイヤー間隙を流れるろ液がろ布に負圧を与え、排出機能を高めているものと推測される。図13は各種ろ材の比較基礎試験のデータから、最善のウェッジワイヤーとろ布の組合せによる複合ろ材の濃縮メカニズムであって、ろ布側では、上部汚泥から毛細管作用によって吸水したろ液がろ布を貫通してウェッジワイヤー側へ排水されるルート[a]と、ろ布とウェッジワイヤーの間隙の毛細管作用によって吸水したろ液がウェッジワイヤー側へ排水されるルート[b]が発生する。いずれも毛細管吸水作用は大きいが排水作用は若干劣る。尚、[b]のルートはろ布単独では発現しない。ウェッジワイヤー側では、ろ液がウェッジワイヤーのワイヤー長手方向に沿って傾斜下流方向に流れるルート[c]と、ワイヤーの側面に沿って重力方向に流れるルート[
d]を発生する。[c]のルートは勾配を有する障害物がない直線溝状の流路であり、過分のろ液はワイヤーの側面に沿って重力方向に流れる[d]のルートで排出される。[d]はワイヤー間隔が拡開する方向に流れるので抵抗がなく、ワイヤー幅は最下端が鋭角になっているのでろ液の表面張力が解除されて滴下する。ろ液量が少なくなってもウェッジワイヤー間にろ液を表面張力で保持することがない。いずれも排水作用は大きいが毛細管吸水作用は若干劣る。単にろ布の毛細管吸水機能とウェッジワイヤーの排水機能を合体させただけでなく、[c][d]のルートで発現するウェッジワイヤーの高い排水作用によって、[a][b]のルートのろ布の毛細管吸水機能および排水機能をさらに増幅するため、単独ろ材では成し得なかった高い濃縮性能が発現する。上記のウェッジワイヤーとろ布を組合せた複合ろ材のろ液の流出ルートと毛細管吸水機能と排水機能を表5に表記する。
【0038】
【表5】
【0039】
次に、従来の金網及びろ布の単独ろ材と、ろ布とウェッジワイヤーを組み合せた複合ろ材について濃縮性能を調査した。テストに使用するベルト型ろ過濃縮機は、500mm巾×有効長さ3000mmの試験機を使用して、某下水処理場から採集した汚泥濃度0.5%の下水余剰汚泥に、高分子凝集剤を0.2%添加して、ろ材種別ごとに10m/minのろ材走行速度で濃縮性能を調査した。そのベルト型ろ過濃縮機の運転条件を表6に示す。
【0040】
【表6】
【0041】
表6の運転条件に基づき、複合ろ材と単独ろ材ごとの処理量(m3/m・h)に対する濃縮濃度(%)、固形物回収率(%)、ろ液濁度(mg/L)の性能を調査した。そのろ材種別毎の濃縮性能の実験結果を表7に表記する。なお、括弧内の数値は傾斜角度0度の場合を示す。下水汚泥に複合ろ材ベルト型ろ過濃縮機を適用する場合、初沈汚泥は沈降濃縮度がよいので従来の重力濃縮法で濃縮し、沈降性のよくない余剰汚泥を強制濃縮する処理に適用する。時間・ベルト巾当り20m3程度が金網やろ布を使用した従来機の標準的性能であるが、ろ布+ウェッジワイヤーの処理量を50%増加の時間・ベルト巾当り30m3としても、濃縮濃度が0.5〜0.6ポイント程度向上している。表8は、傾斜角度2度と傾斜角度0度の種別毎の濃縮濃度実験結果の対比表である。ろ液濁度と固形物回収率については金網からの改善度が大きくろ布よりも若干良い結果となっている。傾斜角度0度(水平姿勢)でも複合ろ材なら処理量30m3/m・hは可能であるが、到達濃度は処理量20m3/m・hで傾斜角度2度のろ布単独と同一の4.4%であり、傾斜角度2度で複合ろ材の4.9%よりも0.5ポイント劣っている。表9は、傾斜角度2度と傾斜角度0度の種別毎の回収率の実験結果の対比表である。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明に係るベルト型ろ過濃縮機は、毛細管吸水機能を有する上部走行ろ材と、排水機能に優れた下部固定ろ材を組み合わせて複合ろ材とし、ろ過面を上部走行ろ材の走行方向に僅かに上り勾配としたので、毛細管吸水作用と排水作用の相乗効果により、大量のろ液の排出が可能となり、濃縮濃度と処理量の向上が図れ、ろ液の良好な回収性と洗浄性を維持しつつ、濃縮機能を発揮するベルト型ろ過濃縮機となる。そして、ベルト型ろ過濃縮機の性能向上を高分子凝集剤の添加量の削減や濃縮機の機長短縮に転化することも可能となる。従って、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、或いは、OD余剰汚泥などの汚泥を濃縮するベルト型ろ過濃縮機に使用して最適となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明に係るベルト型ろ過濃縮機の側面図である。
【図2】同じく、ベルト型ろ過濃縮機の平面図である。
【図3】同じく、下部固定ろ材の構造を示す概念図である。
【図4】同じく、下部固定ろ材の要部拡大図である。
【図5】同じく、ウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材の他の実施例の概念図である。
【図6】同じく、ウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材の要部拡大図である。
【図7】同じく、上部走行ろ材と下部固定ろ材を配置したベルト型ろ過濃縮機の概念図である。
【図8】同じく、下部固定ろ材を分割する他の実施例の概念図である。
【図9】同じく、下部固定ろ材の他の実施例の概念図である。
【図10】同じく、複合ろ材を用いたベルト型濃縮機のフローチャートである。
【図11】同じく、ろ布とウェッジワイヤーを組み合わせた複合ろ材のろ液排出の状況を示す概念図である。
【図12】同じく、ろ布とウェッジワイヤーを組み合わせた複合ろ材のろ液排出状況を示す概念図である。
【図13】同じく、ウェッジワイヤーとろ布の組合せによる複合ろ材の濃縮メカニズムである。
【符号の説明】
【0047】
1 上部走行ろ材
1a ろ過面
14、17 下部固定ろ材
14a、14b、14c、17a、17b、17c 分割固定ろ材
15 細長孔構成部材
18 ワイヤー
16、19 連結支持部材
20 洗浄装置
A 投入濃縮ゾーン
B 濃縮ゾーン
L 細長孔
La ワイヤー孔
B1 濃縮前期
B2 濃縮中期
B3 濃縮後期
D、Da 間隙
α 傾斜角
【技術分野】
【0001】
この発明は、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、或いは、OD余剰汚泥などの汚泥を濃縮するベルト型ろ過濃縮機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ布を用いたベルト型ろ過濃縮機は古くから実用化されており、ベルトプレスの濃縮ゾーンにも採用されている。ろ材としてのろ布は、材質、開口率、通気度、目開き、強度、織形、各種の選択肢があり、軽量でコストも低廉であるので、殆どのベルト型ろ過濃縮機に採用されている。これまでのベルト型ろ過濃縮機に採用されているろ布は、一定の汚泥固形物の回収率を確保することを重視して、一般的に目開きが小さなものが選定されており、ろ液の排出性に若干の難点がある。ろ布を織布する繊維の強度は金属ほど強くなく、摺動による磨耗によってろ材寿命が金網ほど長くない。近年、ろ液の排出性が良く、剥離性と洗浄性もよい金属性ろ材をベルト型ろ過濃縮機に使用することが提案されている。例えば、リング状の線材を相互に当接して上層と下層の間に空隙を有するベルト本体を形成して、上層の毛細現象で吸引し、無端ベルトを振動と曲げを与えて排水する汚泥の濃縮装置は、特許文献1に記載してあるように公知である。また、金属線材で構成した無端ベルトの水切り装置に関する技術としては、無端ベルトの下側に所定間隔をあけて支え板を配置したベルト型濃縮機も、例えば、特許文献2に記載してあるように公知である。
【特許文献1】特許第3504252号公報(段落番号0009乃至段落番号000 12、図2及び図3)
【特許文献2】特開2005−95845号公報(段落番号0024乃至段落番号0 025、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のベルト型ろ過濃縮機に採用しているろ布は、ろ布の湾曲垂れ防止のために支架している支持ロールが、ロール間のろ布と汚泥の重量を分担するので、ろ布の支持面圧が比較的大きく、これが断続的に作用してろ布の磨耗が早くなる。線材同士が密着して上下層を形成する金属などの無端ベルトでは、毛細管吸水機能を有するため、汚泥からの吸水機能は優れるが、その一方で高い毛細管吸水機能がろ液の排出抵抗を大きくする。空隙を有する上下層の中間部に侵入した汚泥固形物は、極めて排出し難く入念に洗浄しなければ汚泥固形物は排除できない。また、金属などの線材からなる無端ベルトでは、無端ベルトと汚泥の重量を分担するキャリアローラを狭い間隔で配設すると、ローラ間での湾曲が少なくなり、振動と曲げ作用が無くなるため、ろ液を大量に排出しなければならない投入初期には適さない。従来の無端ベルトを支える支え板の配置間隔を狭くすると、無端ベルトの振動と曲げ作用が無くなり、ろ液排出が阻害されて水切り作用を促進できない。無端ベルトが支え板の端部角に摺接し、通過時の磨耗の進行は避けられない。そして、ヘリボン網などの無端ベルトでは、金属線材間の表裏面に粗い凹凸が形成され、スクレーパで掻き取る際に濃縮汚泥が残留し、目詰まりしやすく多量の洗浄水が必要となる。分離したろ液中の固形物濃度が高く、洗浄ノズルが詰る恐れがあり、ろ液を洗浄水として利用できない。この発明は、既存の毛細管吸水作用と排水作用を有するろ材を組み合わせ、濃縮機能を発揮するベルト型ろ過濃縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係るベルト型ろ過濃縮機は、ロール間に無端ベルトを走行自在に掛け回し、無端ベルトのろ過面に汚泥を供給して固液分離を行なう濃縮装置において、毛細管吸水機能を有する織布状の上部走行ろ材を張設し、上部走行ろ材のろ過面を下部固定ろ材に摺接支架させると共に、下部固定ろ材に排水機能を有する深溝の細長孔を上部走行ろ材の走行方向に形成したもので、走行ろ材の毛細管吸水機能と固定ろ材の排水機能の相乗効果により、格段の毛細管吸水作用と排水作用を発揮して、大量のろ液の排出を必要とする低濃度の汚泥でも良好な濃縮作用が確保できる。そして、汚泥を供給した上部走行ろ材のろ過面を下部固定ろ材で支持するので、上部走行ろ材の面圧が小さくなり、上部走行ろ材の垂れによる磨耗が無くなる。下部固定ろ材の細長孔が上部走行ろ材の走行方向に連続的に配置され、常に上部走行ろ材と摺接支架する下部固定ろ材がろ液により潤滑されるのでろ材の磨耗も少ない。
【0005】
上部走行ろ材をろ布又はネットコンベアベルト金網で構成し、下部固定ろ材をウェッジワイヤー又は平行金網で構成したもので、ウェッジワイヤー又は平行金網の下部固定ろ材は、厚み方向に貫通する細長孔を有するので、ろ布又はネットコンベアベルト金網の上部走行ろ材の強度を維持しながら、固形物の停滞による細長孔の目詰まりは進行せずに通水性を確保できる。適切な汚泥濃度と固形物の回収率が得られ、ろ速の低下、剥離不良は発生せずに、長期使用が可能なろ材機能となる。そして、ウェッジワイヤーとろ布を組み合わせると、細長孔がろ過面側からろ液の排出側に向かって広がって、金属ろ材の目詰まりし難い特性が強化され、毛細管吸水作用と排水作用を発揮する濃縮機能が得られる。
【0006】
上部走行ろ材のろ過面と上部走行ろ材を摺接支架する下部固定ろ材に、ろ布の走行方向に向かって登り勾配の傾斜角を形成したもので、若干の登り勾配を有する複合ろ材を採用することにより、細長孔の間隙を流れる流速の速いろ液がろ布に負圧を与え排出機能を高める。下部固定ろ材の細長孔に沿ってろ液が滞留することなく排出されて、ろ液排出性(濃縮性能)が大巾に改善向上し、高い固形物回収率も得られる。
【0007】
下部固定ろ材を分割し、分割固定ろ材の細長孔を上部走行ろ材の走行方向に順次縮小開口したもので、上部走行ろ材のろ過面は、走行方向後段に移行するに従って、排出すべきろ液量が減少し、排水能力よりも毛細管吸水能力の方が要求される。分割固定ろ材の細長孔を上部走行ろ材の走行方向に順次縮小開口すれば、毛細管吸水機能が増加して、孔径を一定とした従来のろ材に比較して、含水率の低下など濃縮度が向上するもので、排出すべきろ液量と毛細管吸水能力の要求に応じて、適宜微細金属ろ材の孔径、ピッチを設定できる。また、下部固定ろ材を分割すれば、分割固定ろ材の加工が容易となり、比較的重量物である分割固定ろ材は、最初の組立にあっても分割した形態で組み付けが可能であり、重量的に作業の支障はない。
【0008】
上部走行ろ材のろ過面を摺接支架させる複数の分割固定ろ材の細長孔幅、ワイヤー間隔を、上部走行ろ材の走行方向に0.2〜20mmの範囲で順次縮小開口したもので、排水機能と水切り機能が要求される汚泥の投入初期には、分割固定ろ材の目開き寸法を大きくし、排水能力よりも毛管吸水能力を要求される中期には、分割固定ろ材の目開きは投入初期に比べると比較的小さくし、後期の分割固定ろ材はさらに小さくして毛管吸水能力を高めたもので、毛細管吸水機能および排水機能をさらに増幅することができる。
【0009】
上記上部走行ろ材のろ過面を、給泥直後の投入濃縮ゾーンと汚泥濃縮を行う濃縮ゾーンに区画し、複数の分割固定ろ材を濃縮ゾーンに配列してもよいもので、下部固定ろ材を取除いた投入濃縮ゾーンでは、排出ろ液の抵抗となることがなく、大量のろ液を排出させることができる。汚泥の投入部の投入濃縮ゾーンでは、上部走行ろ材に僅かな湾曲作用が発生し、汚泥溜まりを若干深くして濃縮圧力を高め、且つ濃縮時間を長くして濃縮作用を高めることができる。
【0010】
下部固定ろ材の細長孔構成部材の裏面に、上部走行ろ材を横切る方向に堰板状の連結支持部材を配設すれば、下部固定ろ材の細長孔に沿って流下するろ液が、連結支持部材に堰き止められて落下して、適当な間隔でろ材から排除することができる。ろ液が下部固定ろ材に累積されて、上部走行ろ材から下部固定ろ材への排出を阻害することがなく、水切り材となって効率的なろ液の排除が行える。そして、上部走行ろ材のろ過面を摺接支架させる前後の分割固定ろ材の間に、所定の間隙を設けてもよく、分割固定ろ材の下流側間隙からろ液を排出することにより、ウェッジワイヤーに沿って流れるろ液を分断し、水切り機能が向上する。
【0011】
下部固定ろ材の裏面に洗浄装置を配設すれば、下部固定ろ材の洗浄が可能となり、ろ材機能が維持されて長寿命となる。投入濃縮ゾーンの下部固定ろ材を取除けば、ろ液排出量の多い投入濃縮ゾーンのろ液が下部固定ろ材の洗浄の障害となることがなく、上部走行ろ材の高速走行での汚泥濃縮と同時に、分割固定ろ材の洗浄が可能となる。そして、上部走行ろ材をろ布とすれば、高い固形物回収率を維持しているので、ろ液をリサイクルしてろ材洗浄が可能であり、洗浄水の供給が不要となる。ウェッジワイヤーで分割固定ろ材を構成すれば、上部走行ろ材の摺接面側からろ液排出側に拡大する拡開側のワイヤー孔から洗浄するので、目詰まりの解消が容易となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るベルト型ろ過濃縮機は、毛細管吸水機能を有する上部走行ろ材と、排水機能に優れた下部固定ろ材を組み合わせた複合ろ材のベルト型ろ過濃縮機としたので、毛細管吸水作用と排水作用の相乗効果により、大量のろ液の排出が可能となり濃縮性能と処理量の向上が図れる。上部走行ろ材にろ布を使用すれば、ろ布の持つ高い固形物回収率と、高い洗浄性はそのまま維持しつつ、ろ液をリサイクルして洗浄水として利用でき、低い水圧と少ない洗浄水でろ材面の再生が可能となる。そして、下部固定ろ材をろ液で潤滑させながら、上部走行ろ材のろ過面を支持しているので、ろ布などの上部走行ろ材の磨耗が少なく、従来の単独ろ布よりも寿命延長が期待でき、上部走行ろ材の交換頻度が大巾に減少する。ベルト型ろ過濃縮機の性能向上を高分子凝集剤の添加量の削減や濃縮機の機長短縮に転化することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係るベルト型ろ過濃縮機を図面に基づき詳述すると、図1はベルト型ろ過濃縮機の側面図であって、無端状の上部走行ろ材1がフレーム2の前後に配設した緊張ロール3と駆動ロール4に張設してあり、上部走行ろ材1の上面をろ過面1aとしてある。緊張ロール3にろ布緊張装置5と、駆動ロール4に駆動装置6が連動連結してある。図2はベルト型ろ過濃縮機の平面図であって、上部走行ろ材1の始端側のろ過面1aに給泥トラフ7と、給泥トラフ7近傍の給泥直後のろ過面1aの両側に汚泥の溢流防止用の案内板8、8が配設してあり、駆動ロール4に掛け回した上部走行ろ材1にスクレーパ9が当設してある。図1に示すように、汚泥投入初期の大量にろ液が排出される上部走行ろ材1の裏面近傍にろ液トラフ10が配設してある。無端状の上部走行ろ材1の反転下面部にろ布蛇行修正装置11と、ろ材洗浄装置12が配設してあり、その下方に濃縮部のろ液と洗浄排水を受ける総合排水トラフ13が配設してある。図1及び図2に示す緊張ロール3と駆動ロール4に掛け回した上部走行ろ材1は、毛細管吸水機能を備えた平織、綾織、二重織などのろ布、又はネットコンベアベルト金網で構成してある。ろ布とネットコンベアベルト金網は毛細管吸水機能に優れ、洗浄性と屈曲柔軟性が良くベルト駆動に好適である。上部走行ろ材1をろ布で構成すれば汚泥固形物の回収率が高く、汚泥投入初期のろ液トラフ10に受けた大量のろ液は、ろ材洗浄液として利用できる。
【0014】
図1及び図2に示すように、上部走行ろ材1のろ過面1aを摺接支架させる下部固定ろ材14がフレーム2に配設してあり、上部走行ろ材1と下部固定ろ材14を組み合わせた複合ろ材としてある。図3は下部固定ろ材の構造を示す概念図であって、下部固定ろ材14は上部走行ろ材1を走行方向に摺接支架する並列した長尺の細長孔構成部材15・・・と、細長孔構成部材15・・・の下面に所定の間隔を開けて上部走行ろ材1の走行方向に概略直行させて止着した複数の連結支持部材16・・・で構成してある。図4は下部固定ろ材の要部拡大図であって、所定の間隔をあけて並列した細長孔構成部材15・15の間に細長孔幅Sと、細長孔深さHを有する長尺の細長孔Lを形成してある。この発明の実施例では、ベルト型濃縮機の大きさに応じて、連結支持部材16・・・の間隔を10〜100mmの範囲に設定してある。
【0015】
図5はウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材の他の実施例の概念図であって、この発明の実施例では、ウェッジワイヤーで下部固定ろ材17を構成してあり、多数並列した断面視が逆三角形状の長尺のワイヤー18と、所定の間隔をあけてワイヤー18・・・の下面に止着した複数の連結支持部材19・・・で構成してある。図6はウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材17の要部拡大図であって、左右のワイヤー18、18の間にワイヤー間隔Saとワイヤー高さHaを有する長尺のワイヤー孔Laを形成してある。ウェッジワイヤーで下部固定ろ材17を構成すれば、長尺のワイヤー孔Laが上部走行ろ材1の摺接面側からろ液排出側に拡大して、金属ろ材の目詰まりし難い特性が強化される。また、下部固定ろ材17は厚み方向に貫通する細長孔が形成された平行金網で構成してもよいもので、排水機能(水切り機能)を備えたろ材となる。
【0016】
図3及び図5に示す下部固定ろ材14、17のろ材孔は、厚み方向に貫通する細長孔L、Laなので、排水機能(水切り機能)を備えたろ材となり、固形物の停滞による目詰まりは進行せずに通水性を確保でき、濃縮性能の低下は発生せずに、長期使用が可能なろ材機能となる。汚泥を供給した上部走行ろ材1のろ過面1aを下部固定ろ材14、17で摺接支架するので、上部走行ろ材1の面圧が小さくなり、上部走行ろ材1の垂れによる磨耗がなくなる。常に上部走行ろ材1はろ液で潤滑され、下部固定ろ材14、17の細長孔L、Laが上部走行ろ材1の走行方向に沿って配置されるので、摺接支架による磨耗も少なく、上部走行ろ材1の強度を維持できる。ろ布又はネットコンベアベルト金網で構成した上部走行ろ材1の毛細管吸水機能と、ウェッジワイヤー又は平行金網の下部固定ろ材14、17の排水機能の相乗効果により、毛細管吸水作用と排水作用が発揮され、大量のろ液の排出を必要とする低濃度汚泥でも良好な濃縮性能が確保でき、適切な汚泥濃度と固形物の回収率が得られる。従来の単独ろ布よりも寿命延長が期待でき、ろ材の交換が大巾に減少する。比較的重量物である下部固定ろ材14、17も、固定のまま使用して交換の必要が無い。
【0017】
図7は上部走行ろ材と下部固定ろ材を配置したベルト型ろ過濃縮機の概念図であって、無端状に張設した上部走行ろ材1のろ過面1aと摺接支架させる下部固定ろ材14、17の複合ろ材を、上部走行ろ材1の走行方向に向かって傾斜角αの登り勾配としてある。ベルト速度によって傾斜の効果が左右される従来の傾斜付きベルト型濃縮機と異なり、ベルト速度に関係なく傾斜を独立して設定できる。
【0018】
上部走行ろ材1のろ過面1aと摺接支架させる下部固定ろ材14、17は、単に上部走行ろ材1の毛管吸水機能と摺接支架させる下部固定ろ材14、17の排水機能を合体させただけでなく、傾斜させた下部固定ろ材14、17の細長孔L、Laの間隙を速く流れるろ液が上部走行ろ材1に負圧を付与して排出機能を高め、上部走行ろ材1の毛細管吸水機能および排水機能をさらに増幅する。上部走行ろ材1から下部固定ろ材14、17側に排出されるろ液は、下部固定ろ材14、17の傾斜面に沿って流れ、上部走行ろ材1を支える下部固定ろ材14、17の裏面の連結支持部材16、19が、上部走行ろ材1の走行方向に概略直交して堰板状となり、適当な間隔で下部固定ろ材14、17から排除される。ろ液が下部固定ろ材14、17の細長孔L、Laに累積されて、上部走行ろ材1から下部固定ろ材14、17への排出を阻害することがなく、水切り材となって効率的なろ液の排除が行える。従来の単独ろ材では成し得なかった高い濃縮性能が発現し、高い固形物回収率が得られる。
【0019】
図8は下部固定ろ材を分割する他の実施例の概念図であって、上部走行ろ材1のろ過面1aを、下部固定ろ材14を取除いた給泥直後の投入濃縮ゾーンAと、複数の分割固定ろ材14a、14b、14cで摺接支架させた濃縮ゾーンBに区分してある。汚泥の投入直後の投入濃縮ゾーンAには下部固定ろ材14を摺接させずに、上部走行ろ材1だけで重力分離させる。投入濃縮ゾーンAでは、排出ろ液の抵抗が小さく、大量のろ液を排出させることができる。投入濃縮ゾーンAでは、上部走行ろ材1の僅かな湾曲作用により、投入初期の汚泥溜まりが深くなり、濃縮圧力を高め、且つ濃縮時間も長くなり、濃縮作用を高めることができる。この発明の実施例では、濃縮ゾーンBを濃縮前期B1、濃縮中期B2、濃縮後期B3に区分し、3分割した分割固定ろ材14a、14b、14cを上部走行ろ材1のろ過面1aに摺接支架させてある。分割固定ろ材14a、14b、14cの細長孔幅Sを、排水機能と水切り機能が要求される汚泥の濃縮前期B1は大きく取り、濃縮中期B2は排水能力よりも毛管吸水能力の方が要求されるので、濃縮前期B1に比べると比較的小さくし、濃縮後期B3はさらに小さくしてある。
【0020】
図8に示すように、傾斜させた上部走行ろ材1を支架する濃縮ゾーンBの分割固定ろ材14a、14b、14cの間には、所定の間隙Dを設けてある。分割固定ろ材14a、14b、14cの傾斜下端の間隙Dからろ液を排出することにより、ろ材に沿って流れるろ液を分断し、水切り機能が向上する。下部固定ろ材14は比較的重量物であり、下部固定ろ材14を分割すれば、分割固定ろ材14a、14b、14cの加工が容易となり、最初の組立にあっても分割した形態で組み付けが可能であり、重量的に作業の支障はない。なお、この発明の実施例では、3組の分割固定ろ材14a、14b、14cとしてあるが、ベルト型濃縮機の濃縮の進行状況に応じて、濃縮前期B1、濃縮中期B2、濃縮後期B3に配設する分割固定ろ材14a、14b、14cを適宜増加させることができる。
【0021】
図9は下部固定ろ材の他の実施例の概念図であって、ウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材17を分割し、複数の分割固定ろ材17a、17b、17cを濃縮ゾーンの濃縮前期B1、濃縮中期B2、濃縮後期B3に配設してある。ウェッジワイヤーはワイヤー巾Wを0.8mm、ワイヤー高さHaを2mmのウェッジワイヤーを使用しており、下部固定ろ材17のワイヤー間隔Saは処理容量と汚泥性状に応じて適宜設定できるもので、分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー間隔Saを、0.2〜20mmの範囲で濃縮前期B1、濃縮中期B2、濃縮後期B3の順に順次縮小開口してある。排出すべきろ液量と毛細管吸水機能の要求に応じて、適正なワイヤー間隔Saに設定すれば、毛細管吸水作用の増加と含水率の低下により濃縮性能が向上する。濃縮ゾーンBの前後の分割固定ろ材17a、17b、17cの間には、5〜30mmの間隙Daを設けてある。上部走行ろ材1を摺接支架させる下部固定部材17は、分割したウェッジワイヤー17a、17b、17cのワイヤー面が上部走行ろ材1の走行方向に連続的に配置され、ろ過面1aの全面をウェッジワイヤー17a、17b、17cで支持しているので、面圧が小さく、ワイヤー間隔Saも0.2〜20mmと狭いので、上部走行ろ材1の垂れによる湾曲がない。常にウェッジワイヤー17a、17b、17cがろ液により潤滑されているので、上部走行ろ材1の磨耗が少なく、ろ布などの上部走行ろ材1は、従来の単独ろ布よりも寿命延長が期待できる。
【0022】
図7に示すように、下部固定ろ材14、17の裏面近傍に往復動自在な洗浄装置20を配設すれば、下部固定ろ材14、17に汚泥が固着し、排水機能が低下した時に下部固定ろ材14、17の目詰まりを解消できる。上部走行ろ材1にろ布を使用すれば、ろ布の持つ高固形物回収率と高洗浄性により清澄なろ液となるので、ろ液をリサイクルしてろ材洗浄が可能であり、洗浄水の供給が不要となる。そして、ウェッジワイヤーで下部固定ろ材17を構成すれば、拡開側のスリット孔から洗浄するので、目詰まりの解消が容易となる。図7及び図8に示す、濃縮ゾーンBだけに配設した分割固定ろ材14a、14b、14c、17a、17b、17cを洗浄する場合には、上部走行ろ材1を走行させながら汚泥の供給を停止し、上部走行ろ材1の排出側から開始すれば、給泥トラフ7近傍の投入直後のろ液排出量の多い投入濃縮ゾーンAでは、洗浄装置20が汚泥投入側に近づく間に濃縮前期B1の大量のろ液排出は終っており、上部走行ろ材1からの排出ろ液はろ材洗浄水の障害となることがなく、運転中の洗浄も可能となる。下部固定ろ材14、17の裏面全面の高速洗浄を可能とし、ろ材機能が維持されて半永久的に使用できる。
【0023】
図10は複合ろ材を用いたベルト型濃縮機のフローチャートであって、図8に示す、ろ布製の上部走行ろ材1の濃縮ゾーンBに、図9に示す、ウェッジワイヤー製の分割固定ろ材17a、17b、17cを摺接支架させるベルト型濃縮機の処理フローについて説明する。図10に示すように、高分子凝集剤を添加してフロックを生成させた凝集汚泥を給泥トラフ7から上部走行ろ材1の投入濃縮ゾーンAに供給する。投入濃縮ゾーンAでは、上部走行ろ材1の僅かな湾曲作用により、投入初期の汚泥溜まりが深くなり、濃縮圧力を高め、且つ濃縮時間も長くなり、濃縮作用を高める。そして、上部走行ろ材1の投入濃縮ゾーンA及び濃縮ゾーンBの濃縮前期B1の下方に、ろ液トラフ10が配設してあり上部走行ろ材1で分離したろ液を洗浄水タンク21に貯水する。上部走行ろ材1のろ布は汚泥固形物の回収率が高く、ろ布で分離したろ液は、清澄度が高く洗浄液として利用できる。投入濃縮ゾーンAからろ液を大量に分離した濃縮汚泥を、濃縮ゾーンBの濃縮前期B1に移送して、ろ液を分離しながら濃縮中期B2、濃縮後期B3に移送する。
【0024】
図10に示すように、濃縮ゾーンBの分割固定ろ材17a、17b、17cで摺接支架する上部走行ろ材1側では、汚泥から毛細管作用によって吸水したろ液が、上部走行ろ材1を貫通して分割固定ろ材17a、17b、17c側へ排水されるルートと、上部走行ろ材1と分割固定ろ材17a、17b、17cの間隙の毛細管作用によって吸水したろ液が、分割固定ろ材17a、17b、17c側へ排水されるルートが発生する。そして、分割固定ろ材17a、17b、17c側では、ろ液が分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー孔Laに沿って傾斜下流方向に流れるルートと、ワイヤー18の側面に沿って重力方向に流れるルートを発生する。ワイヤー孔Laに沿って傾斜下流方向に流れるルートは、障害物がない勾配を有する直線溝状の流路であり、過分のろ液はワイヤーの側面に沿って重力方向に流れるルートで排出される。また、ワイヤー18の側面に沿って重力方向に流れるルートは、分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー孔Laが拡開する方向に流れるので抵抗がなく、ワイヤー幅Wは最下端が鋭角になっているのでろ液の表面張力が解除されて滴下する。ろ液量が少なくなってもワイヤー孔Laにろ液を表面張力で保持することがない。傾斜させた下部固定ろ材17aのワイヤー孔Laの間隙を速く流れるろ液が、上部走行ろ材1の毛細管吸水機能と排水機能をさらに増幅させる。更に、分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー18・・・を支持する連結支持部材19が、上部走行ろ材1の走行方向に概略直交して堰板状となり、ろ液を排除する。ろ液が分割固定ろ材17a、17b、17cのワイヤー孔La・・・に累積されて、上部走行ろ材1から分割固定ろ材17a、17b、17cへの排出を阻害することがなく、水切り材となって効率的なろ液の排除が行える。濃縮ゾーンBの濃縮中期B2、濃縮後期B3に移送されるに従って、従来の単独ろ材では成し得なかった高い濃縮性能が発現し、高い固形物回収率が得られる。
【0025】
次に、駆動ロール4に沿って反転する上部走行ろ材1から、濃縮ゾーンを通過して高濃度となった濃縮汚泥をスクレーパ9で剥離する。濃縮汚泥を剥離した上部走行ろ材1に走行ろ材洗浄ノズル12aが対設してあり、洗浄水タンク21に連結した走行ろ材洗浄ポンプ22から走行ろ材洗浄ノズル12aにろ液を供給し、上部走行ろ材1のろ布を洗浄する。ろ布は単繊維の織物なので洗浄性が良い。洗浄した上部走行ろ材1に、蛇行修正ロール11aが当接してあり、蛇行した上部走行ろ材1の偏寄を修正して緊張ロールに掛け回した後、再びろ過面1aに移送される。分割固定ろ材17a、17b、17cの下方近傍に固定ろ材洗浄ノズル20aが配設してあり、洗浄水タンク21に連結した固定ろ材洗浄ポンプ23から固定ろ材洗浄ノズル20aにろ液を供給し、分割固定ろ材17a、17b、17cを洗浄する。分割固定ろ材17a、17b、17cのウェッジワイヤーは、ワイヤー孔Laが上部走行ろ材1の摺接面側からろ液排出側に拡大する拡開側のワイヤー孔Laから洗浄するので、目詰まりの解消が容易となる。
【実施例】
【0026】
ろ布を用いたベルト型濃縮機は古くから実用化されており、濃縮専用の機種もあるが、ベルトプレスの濃縮ゾーンにも組み合わせて採用されている。ろ布は材質、開口率、通気度、目開き、強度、織形式など各種の選択肢があり、軽量でコストも低廉であるので、多くのベルト型濃縮機に採用されている。また、近年濃縮機に金網が使われることもあるが、一長一短がある。そこで、従来の固液分離装置に使用するろ材について、その特性と欠点について調査した。ろ材としては、織ろ布、金網、不織布、金属ろ材、及び、ろ布と金属ろ材を組み合わせた複合ろ材を対象とした。水平姿勢でベルトろ材として使用した場合の、毛細管吸水機能、水切り機能(排水機能)、回収率、目詰まり洗浄性、及び屈曲柔軟性について、基礎試験を行い、経験値も含めて考察した。検討評価は、構造や物性の分析および濃縮試験の結果に基づいて行った。ろ材の毛細管吸水機能は、そのろ材の持つ水切り機能(排水機能)とセットの作用であり、両者の作用は小さい方の能力に制約される。表1は、特徴と欠点を比較検討したろ材種別の評価表である。
【0027】
【表1】
【0028】
(1)ろ布(平織、綾織、二重織、他)
これまでのベルト型濃縮機に採用されているろ布は一定の回収率を確保することを重視し、一般的に目開きが小さなものが選定されており、毛細管吸水性能は十分であるが、ろ液の排出性に若干の難点がある。剥離性には問題はなく高い回収率となる。また、単繊維の織物なので洗浄性が良い。屈曲柔軟性もよくベルト駆動に好適である。繊維の強度は金属ほど強くなく、従来型のすき返しでは摺動による摩耗によってろ材寿命が金網ほど長くない。
(2)金網/織網(平織、綾織、他)
平織、綾織などの金網及び織網は、屈曲性以外はろ布と同様の機能を有するが、金網及び織網のベルトを走行させるには、屈曲性が著しく劣り致命的な欠点となる。
(3)金網/ネットコンベアベルト(荒目ヘリボン網)
実用化されている金網はヘリボン網であり、目巾が広くヘリボン線径が1mm程度あり表面は凹凸が大きく粗いため、ろ液濁度が高くなり回収率が悪化する。すき返し装置や排出スクレーパで掻き取る際に汚泥が凹部に食い込んで残留し易いので洗浄排水の濁度が高くなり更に回収率が悪化する。また、ヘリボン網の金網は上下層が構成され、上下層間に進入した汚泥のSS粒子は低水圧の洗浄では排除し難く、上下から丁寧な洗浄が必要であり、洗浄不十分の場合、目詰まりが進行する恐れがある。そして、一般的に金網の寿命はろ布よりも長いが、ろ布に比べるとコストは高い。また重量が重いためベルト幅が広くなると重機を用いた作業が必要となる。ヘリボン網の金網は、ネットコンベア用に開発された編み方なので屈曲柔軟性もよくベルト駆動に好適である。
(4)不織布
不織布は毛細管吸水性能は極めて高いが、逆に排水機能は無く、目詰まりや洗浄性の問題は致命的な欠点である。
(5)ウェッジワイヤー
ウェッジワイヤーは、ろ材スリットが排水側に拡開しており根本的に排出水切り機能が優れた形状であり、一般的に洗浄性のよいスクリーンとして採用される。目巾を狭くすれば毛細管吸水性能も向上するが、開口率が少なくなり、排出機能が低下して実用上の処理量を満足しない。目巾を比較的広くすれば排出水切り機能が優れている反面、毛細管吸水性能が劣るので高濃度の濃縮が困難であり且つろ液に汚泥が多量に抜けるため回収率が悪化し実用に耐えない。屈曲性がなくベルト走行はできない。
(6)パンチングメタル
パンチングメタルは極薄板にすれば屈曲ベルト状での使用は可能であるが、小孔径の丸孔は表面張力により毛細管吸水および排出性能とも他のろ材よりかなり劣る。
(7)パンチングメタルとろ布の複合ろ材
下部固定ろ材にパンチングメタル、上部走行ろ材にろ布を組み合わせると、パンチングメタルの毛細管吸水機能および排出性能機能とも他のろ材よりかなり劣る欠点が障害となって、ろ布の長所の毛細管吸水機能は発揮されない。
(8)ウェッジワイヤーとろ布の複合ろ材
下部固定ろ材にウェッジワイヤー、上部走行ろ材にろ布を組み合わせると、ろ布の毛細管吸水機能とウェッジワイヤーの排水機能の相乗効果により、ろ布の弱点であった排水性能がウェッジワイヤーで解消され、ウェッジワイヤーの弱点であつた回収率が、ろ布の毛細管吸水作用で解消される。強力な毛細管吸水作用と水切り作用が発揮され、良好な濃縮性能が確保され、高い回収率が得られた。ウェッジワイヤーは固定仕様とすれば屈曲性は必要がなく、屈曲柔軟性の良いろ布だけを走行させれば、剥離性に優れたろ材であり、洗浄性も良い。ウェッジワイヤーとろ布を組合せれば、欠点のないろ材が導き出せることが基礎試験より確認された。
【0029】
基礎試験の結果から水平な姿勢におけるウェッジワイヤーとろ布の組み合せにより、毛細管吸水作用と排水作用の欠点はなくなるが、更に登り勾配を加えると濃縮性能が大幅に向上することが判明した。それは、登り勾配により各作用が相乗的に増大するためであり、小さくてもよいが明らかな流れ勾配は極めて有効である。水が自然に流れ出す最小限の緩やかな勾配を水勾配と言うが、経験的に出来るだけ傾斜を抑え、且つ水溜りが出来ないようにする必要がある。これらの経験値と、一般的な計算式から角度と水勾配、ろ過面のレベル差が導き出せる。その結果を表2に表記する。
【0030】
【表2】
【0031】
そこで、某浄化センターで、ベルトの傾斜角度の有無と濃縮濃度の関係についてベルト型ろ過濃縮機を使用して実証試験を行った。ベルト型ろ過濃縮機は、500mm巾×有効長さ3000mmのろ布とウェッジワイヤーを組み合せた複合ろ材を使用して、ろ材走行速度を10m/minに設定した。供給汚泥は、TS濃度0.72%、SS濃度0.46%の余剰汚泥に高分子凝集剤を0.25%(対TS)添加して、この凝集汚泥を250L/minで供給し、ベルトの傾斜角が0度の場合と2度の場合について、濃縮汚泥濃度を調査した。試験結果の複合ろ材のベルトの傾斜角度の有無と濃縮濃度の関係を表3に表記する。
【0032】
【表3】
【0033】
ベルトプレス脱水機前段の濃縮ゾーンでは、ろ布単独のベルト濃縮が採用されるが、傾斜角を大きくすると濃縮濃度が上昇するという知見がある。これはろ布走行方向に登り勾配の傾斜角度をつけることによって、ろ液がろ材に同伴するのを防止し、濃縮汚泥排出側に搬送され難くなるものである。この作用はベルト速度が1m/分程度のベルトプレスの場合は5度程度の比較的小さな傾斜角度で効果を発揮するが、ベルト濃縮では一般的にベルト速度が10〜40m/分と高速になるので、10〜15度のかなり大きな傾斜角度をつけないとその効果は小さい。しかし、10度以上の大きな角度をつけると濃縮汚泥排出側のレベルが高くなり、装置の全高が高くなり好ましくない。例えば、ろ布ベルトの駆動ロールと緊張ロール間が3000mmの場合、傾斜角10〜15度で約500〜800mm高くなる。さらに、10度以上の大きな傾斜角度をつけると、ろ布走行の駆動動力も増加するため好ましくない。
【0034】
装置の全高を低くし、ろ布走行の駆動動力を小さくするには、傾斜角度はできるかぎり小さい方がよい。表2に示した一般的な水勾配角度では、できるだけ傾斜を抑え、且つ水溜りが発生しないように風呂場やバルコニーの床は通常1/100〜1/50、車庫の床等流れ難い泥水の排水で、且つ傾斜がさほど問題とならない場合は1/20程度まで勾配を大きくしている。また、ウェッジワイヤー等の固定ろ材面にも僅かながらうねりがあり、局部的に登り勾配を減じることとなることも考慮して、傾斜角度2度程度、勾配1/30程度とした。一例として、ろ布ベルトの駆動ロールと緊張ロール間が3000mmの場合、ろ布ベルトの傾斜角度が2度であれば全高は約100mm程度しか高くならない。
【0035】
登り勾配2度の傾斜角に設定した時の毛細管吸水機能と水切り機能(排水機能)、及び回収率と目詰まり洗浄性についてろ材種別ごとに比較基礎試験を行った。その実験結果を表4に表記する。登り勾配の傾斜をつけることにより、ウェッジワイヤーとろ布の組合せによる複合ろ材は、毛細管吸水機能と排水水切り機能が他のろ材を上回り、毛細管吸水作用と排水水切り作用が相乗的に増大して強力な濃縮機能を発現する。尚、単独ろ材は、ウェッジワイヤーの水切り機能(排水機能)が増加した。他のろ材も傾斜効果で濃縮性能の向上が見られるが、これらは小幅であった。ウェッジワイヤー+ろ布+傾斜の場合は他のろ材の傾斜効果より上昇幅の大きな効果が得られた。ウェッジワイヤーとろ布の複合ろ材では下部固定ろ材は走行しないので走行ろ材の速度に関係なく、僅かの傾斜角度があればろ液の同伴防止が図れる。ベルト速度によって傾斜の効果が左右される従来の傾斜付きベルト型濃縮機と異なり、下部固定ろ材はベルト速度に関係なく傾斜を独立して設定できる。
【0036】
【表4】
【0037】
図11及び図12はろ布とウェッジワイヤーを組み合わせた複合ろ材のろ液排出状況を示す概念図であって、ろ液の流れを観察すると、傾斜させたワイヤー間隙を流れるろ液は流速が速い。ろ液排出量が多い投入濃縮ゾーンでは、ウェッジワイヤーのワイヤーを支えるロッドに堰き止められてろ液が落下している。ワイヤー間隙を流れるろ液がろ布に負圧を与え、排出機能を高めているものと推測される。図13は各種ろ材の比較基礎試験のデータから、最善のウェッジワイヤーとろ布の組合せによる複合ろ材の濃縮メカニズムであって、ろ布側では、上部汚泥から毛細管作用によって吸水したろ液がろ布を貫通してウェッジワイヤー側へ排水されるルート[a]と、ろ布とウェッジワイヤーの間隙の毛細管作用によって吸水したろ液がウェッジワイヤー側へ排水されるルート[b]が発生する。いずれも毛細管吸水作用は大きいが排水作用は若干劣る。尚、[b]のルートはろ布単独では発現しない。ウェッジワイヤー側では、ろ液がウェッジワイヤーのワイヤー長手方向に沿って傾斜下流方向に流れるルート[c]と、ワイヤーの側面に沿って重力方向に流れるルート[
d]を発生する。[c]のルートは勾配を有する障害物がない直線溝状の流路であり、過分のろ液はワイヤーの側面に沿って重力方向に流れる[d]のルートで排出される。[d]はワイヤー間隔が拡開する方向に流れるので抵抗がなく、ワイヤー幅は最下端が鋭角になっているのでろ液の表面張力が解除されて滴下する。ろ液量が少なくなってもウェッジワイヤー間にろ液を表面張力で保持することがない。いずれも排水作用は大きいが毛細管吸水作用は若干劣る。単にろ布の毛細管吸水機能とウェッジワイヤーの排水機能を合体させただけでなく、[c][d]のルートで発現するウェッジワイヤーの高い排水作用によって、[a][b]のルートのろ布の毛細管吸水機能および排水機能をさらに増幅するため、単独ろ材では成し得なかった高い濃縮性能が発現する。上記のウェッジワイヤーとろ布を組合せた複合ろ材のろ液の流出ルートと毛細管吸水機能と排水機能を表5に表記する。
【0038】
【表5】
【0039】
次に、従来の金網及びろ布の単独ろ材と、ろ布とウェッジワイヤーを組み合せた複合ろ材について濃縮性能を調査した。テストに使用するベルト型ろ過濃縮機は、500mm巾×有効長さ3000mmの試験機を使用して、某下水処理場から採集した汚泥濃度0.5%の下水余剰汚泥に、高分子凝集剤を0.2%添加して、ろ材種別ごとに10m/minのろ材走行速度で濃縮性能を調査した。そのベルト型ろ過濃縮機の運転条件を表6に示す。
【0040】
【表6】
【0041】
表6の運転条件に基づき、複合ろ材と単独ろ材ごとの処理量(m3/m・h)に対する濃縮濃度(%)、固形物回収率(%)、ろ液濁度(mg/L)の性能を調査した。そのろ材種別毎の濃縮性能の実験結果を表7に表記する。なお、括弧内の数値は傾斜角度0度の場合を示す。下水汚泥に複合ろ材ベルト型ろ過濃縮機を適用する場合、初沈汚泥は沈降濃縮度がよいので従来の重力濃縮法で濃縮し、沈降性のよくない余剰汚泥を強制濃縮する処理に適用する。時間・ベルト巾当り20m3程度が金網やろ布を使用した従来機の標準的性能であるが、ろ布+ウェッジワイヤーの処理量を50%増加の時間・ベルト巾当り30m3としても、濃縮濃度が0.5〜0.6ポイント程度向上している。表8は、傾斜角度2度と傾斜角度0度の種別毎の濃縮濃度実験結果の対比表である。ろ液濁度と固形物回収率については金網からの改善度が大きくろ布よりも若干良い結果となっている。傾斜角度0度(水平姿勢)でも複合ろ材なら処理量30m3/m・hは可能であるが、到達濃度は処理量20m3/m・hで傾斜角度2度のろ布単独と同一の4.4%であり、傾斜角度2度で複合ろ材の4.9%よりも0.5ポイント劣っている。表9は、傾斜角度2度と傾斜角度0度の種別毎の回収率の実験結果の対比表である。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明に係るベルト型ろ過濃縮機は、毛細管吸水機能を有する上部走行ろ材と、排水機能に優れた下部固定ろ材を組み合わせて複合ろ材とし、ろ過面を上部走行ろ材の走行方向に僅かに上り勾配としたので、毛細管吸水作用と排水作用の相乗効果により、大量のろ液の排出が可能となり、濃縮濃度と処理量の向上が図れ、ろ液の良好な回収性と洗浄性を維持しつつ、濃縮機能を発揮するベルト型ろ過濃縮機となる。そして、ベルト型ろ過濃縮機の性能向上を高分子凝集剤の添加量の削減や濃縮機の機長短縮に転化することも可能となる。従って、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、或いは、OD余剰汚泥などの汚泥を濃縮するベルト型ろ過濃縮機に使用して最適となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明に係るベルト型ろ過濃縮機の側面図である。
【図2】同じく、ベルト型ろ過濃縮機の平面図である。
【図3】同じく、下部固定ろ材の構造を示す概念図である。
【図4】同じく、下部固定ろ材の要部拡大図である。
【図5】同じく、ウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材の他の実施例の概念図である。
【図6】同じく、ウェッジワイヤーで構成した下部固定ろ材の要部拡大図である。
【図7】同じく、上部走行ろ材と下部固定ろ材を配置したベルト型ろ過濃縮機の概念図である。
【図8】同じく、下部固定ろ材を分割する他の実施例の概念図である。
【図9】同じく、下部固定ろ材の他の実施例の概念図である。
【図10】同じく、複合ろ材を用いたベルト型濃縮機のフローチャートである。
【図11】同じく、ろ布とウェッジワイヤーを組み合わせた複合ろ材のろ液排出の状況を示す概念図である。
【図12】同じく、ろ布とウェッジワイヤーを組み合わせた複合ろ材のろ液排出状況を示す概念図である。
【図13】同じく、ウェッジワイヤーとろ布の組合せによる複合ろ材の濃縮メカニズムである。
【符号の説明】
【0047】
1 上部走行ろ材
1a ろ過面
14、17 下部固定ろ材
14a、14b、14c、17a、17b、17c 分割固定ろ材
15 細長孔構成部材
18 ワイヤー
16、19 連結支持部材
20 洗浄装置
A 投入濃縮ゾーン
B 濃縮ゾーン
L 細長孔
La ワイヤー孔
B1 濃縮前期
B2 濃縮中期
B3 濃縮後期
D、Da 間隙
α 傾斜角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール間に無端ベルトを走行自在に掛け回し、無端ベルトのろ過面に汚泥を供給して固液分離を行なう濃縮装置において、毛細管吸水機能を有する織布状の上部走行ろ材(1)を張設し、上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を下部固定ろ材(14、17)に摺接支架させると共に、下部固定ろ材(14、17)に排水機能を有する深溝の細長孔(L、La)を上部走行ろ材(1)の走行方向に形成したことを特徴とするベルト型ろ過濃縮機。
【請求項2】
上記上部走行ろ材(1)をろ布又はネットコンベアベルト金網で構成し、下部固定ろ材(14、17)をウェッジワイヤー又は平行金網で構成したことを特徴とする請求項1に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項3】
上記上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)と上部走行ろ材(1)を摺接支架する下部固定ろ材(14、17)に、登り勾配の傾斜角(α)を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項4】
上記下部固定ろ材(14、17)を分割し、分割固定ろ材(14a、14b、14c、17a、17b、17c)の細長孔(L、La・・・)を上部走行ろ材(1)の走行方向に順次縮小開口したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項5】
上記上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を摺接支架させる複数の分割固定ろ材(14a、14b、14c、17a、17b、17c)の細長孔幅(S)、ワイヤー間隔(Sa)を、上部走行ろ材(1)の走行方向に0.2〜20mmの範囲で順次縮小開口したことを特徴とする請求項4に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項6】
上記上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を、給泥直後の投入濃縮ゾーン(A)と汚泥濃縮を行う濃縮ゾーン(B)に設定し、複数の分割固定ろ材(14a、14b、14c、17a、17b、17c)を濃縮ゾーン(B)に配列したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項7】
上記下部固定ろ材(14、17)の細長孔構成部材(15、18)の裏面に、上部走行ろ材(1)を横切る方向に堰板状の連結支持部材(16、19)を配設したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項8】
上記上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を摺接支架させる前後の分割固定ろ材(14a、14b、14c、17a、17b、17c)の間に、所定の間隙(D、Da)を設けたことを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項9】
上記下部固定ろ材(14、17)の裏面に洗浄装置(20)を配設したことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項1】
ロール間に無端ベルトを走行自在に掛け回し、無端ベルトのろ過面に汚泥を供給して固液分離を行なう濃縮装置において、毛細管吸水機能を有する織布状の上部走行ろ材(1)を張設し、上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を下部固定ろ材(14、17)に摺接支架させると共に、下部固定ろ材(14、17)に排水機能を有する深溝の細長孔(L、La)を上部走行ろ材(1)の走行方向に形成したことを特徴とするベルト型ろ過濃縮機。
【請求項2】
上記上部走行ろ材(1)をろ布又はネットコンベアベルト金網で構成し、下部固定ろ材(14、17)をウェッジワイヤー又は平行金網で構成したことを特徴とする請求項1に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項3】
上記上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)と上部走行ろ材(1)を摺接支架する下部固定ろ材(14、17)に、登り勾配の傾斜角(α)を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項4】
上記下部固定ろ材(14、17)を分割し、分割固定ろ材(14a、14b、14c、17a、17b、17c)の細長孔(L、La・・・)を上部走行ろ材(1)の走行方向に順次縮小開口したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項5】
上記上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を摺接支架させる複数の分割固定ろ材(14a、14b、14c、17a、17b、17c)の細長孔幅(S)、ワイヤー間隔(Sa)を、上部走行ろ材(1)の走行方向に0.2〜20mmの範囲で順次縮小開口したことを特徴とする請求項4に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項6】
上記上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を、給泥直後の投入濃縮ゾーン(A)と汚泥濃縮を行う濃縮ゾーン(B)に設定し、複数の分割固定ろ材(14a、14b、14c、17a、17b、17c)を濃縮ゾーン(B)に配列したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項7】
上記下部固定ろ材(14、17)の細長孔構成部材(15、18)の裏面に、上部走行ろ材(1)を横切る方向に堰板状の連結支持部材(16、19)を配設したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項8】
上記上部走行ろ材(1)のろ過面(1a)を摺接支架させる前後の分割固定ろ材(14a、14b、14c、17a、17b、17c)の間に、所定の間隙(D、Da)を設けたことを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【請求項9】
上記下部固定ろ材(14、17)の裏面に洗浄装置(20)を配設したことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のベルト型ろ過濃縮機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−6430(P2008−6430A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130381(P2007−130381)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】
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