説明

ベンジリデンヒダントイン誘導体化合物

【課題】いわゆる青色レーザー用に対応する吸収帯を有し、非結晶化、高い耐光性、高融点のいずれの性能についても満足できる有機色素及び紫外線吸収剤として好適に用いることのできる化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式の構造を有するベンジリデンヒダントイン誘導体化合物とする。


(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基(いずれの位置で枝分かれしているものを含む)などである(ただし、R〜R及びR〜Rにアミノ基またはニトロ基が選ばれる場合、アミノ基またはニトロ基は、いずれか一方が、R〜R及びR〜Rのうち1箇所置換されているものに限る。)。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンジリデンヒダントイン誘導体化合物に関し、また当該新規化合物を含有する有機色素及び紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CD−R/RW、DVD−R/RW、MOなどへの媒体の書き込み、読み取りには、いわゆる赤色レーザーが普及している。これに使用する媒体には、当該赤色レーザーの波長に対応した波長を吸収する色素が表面にコーティングされている。色素には無機色素と有機色素が存在するが、応答速度が速いなどの利点から有機色素が一般に用いられる。
【0003】
一方最近、更なる高密度の記録を可能にすべく、いわゆる青色レーザーを用いた機器の開発が進んでいる。青色レーザー用の媒体に用いる色素は、レーザーの波長に対応すべく、405nm付近の波長を効率的に吸収する色素でなければならない。かかる色素として、現在いくつかの無機色素が実用化に向けて開発されている。
【0004】
しかし、レーザーによる高速度の記録に対応できるものとするためには、媒体に用いる色素として、無機色素ではなく応答の速い有機色素が好ましい。このような波長領域に吸収を持つ化合物としては、例えば、特許文献1〜4に記載されているような有機色素の基本骨格としてピラン化合物の誘導体、ポリアセンジイミド系色素の誘導体、シアニン系有機色素の混合物、メチン基のパラ位に特定のアミノ基を導入したベンゼン誘導体を用いる方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2004−322564号公報
【特許文献2】特開2004−090372号公報
【特許文献3】特開2003−266954号公報
【特許文献4】特開2003−246142号公報
【特許文献5】特開2003−103935号公報
【0005】
これら化合物を有機色素として記録媒体に用いる場合には、スピンコート法など溶媒に溶かして有機色素の薄膜層を形成するのが一般的である。この際、有機色素としてはアモルファス状態を保ったまま、結晶化しないことが求められる。また、記録内容の長期期間保持という点から、耐光性が求められる。さらに、レーザーが当たった際に、有機色素がピットに流れ出ないようにするため、高融点であることが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記材料においては、非結晶化、高い耐光性、高融点のいずれかの性能を満足するものであったとしても、これら全ての性能について十分といえるものではなかった。そこで本発明における課題は、これらの問題がなく、非結晶化、高い耐光性、高融点のいずれの性能についても満足できる有機色素、紫外線吸収剤に好適に用いることのできる化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、下記(化1)に示した一般式(A)で示されるベンジリデンヒダントイン誘導体のうち、(A)式中のR〜Rがそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるベンジリデンヒダントイン誘導体を含有する新規化合物を、有機色素や紫外線吸収剤として用いることを上記課題の主要な解決手段とする。
【化1】

〜R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキル基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルコキシ基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜3のアルキルカルボキシ基、炭素数1〜20のアルキルカルボキシエステル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基のうち、いずれかの官能基または原子である。ただし、R〜R及びR〜Rにアミノ基またはニトロ基が選ばれる場合、アミノ基またはニトロ基は、いずれか一方が、R〜R及びR〜Rのうち1箇所置換されているものに限る。
またRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基(いずれかで枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基のうち、いずれかの官能基または原子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物は、可視光青色領域から紫外光領域に渡って広い吸収帯域を有する化合物であり、有機色素、紫外線吸収剤として好適に用いることができるものである。また広い吸収帯を有するので、耐光性にも優れた化合物である。
【0009】
本発明の化合物は、5−ベンジリデンヒダントイン誘導体と6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノ−ル誘導体との縮合体であるが、単にこれら化合物を混合するのではなく、縮合体として一つの化合物にすることで、混合による融点降下が生じることなく、高い融点を確保できとともに、長期間経過後も結晶化することなく嵩高いアモルファス状態を維持することができる。
【0010】
なかでも、下記構造式で表されるベンゾトリアゾール誘導体とヒダントイン誘導体による縮合体については、有機溶剤が揮発する際にも結晶化しにくいことが実験的にも明らかとなり、有機色素、紫外線吸収剤に好適に用いることができることが明確となった。
化合物(a)
【化3】

化合物(b)
【化4】

【0011】
さらに、本発明の有機色素は、上記キャスティング法のような湿式塗布以外にも蒸着法、スパッタリング法によっても基板上に成膜させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は、有機色素として、下記一般式(A)によって示される有機化合物を用いたものである。以下に前記一般式(A)において表される化合物について説明する。
【0013】
【化1】

【0014】
(A)式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表し、任意の置換基はさらに置換されていても良い。該任意の置換基の例としてR〜R及びR〜Rは、水素原子;フッ素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基、;アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の置換されても良い炭素数1〜4の直鎖または分岐のアミノ基;ニトロ基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルオキシカルボニル基;下記(化7〜化9)の−RCOOHで表されるアルキルカルボキシル基;下記(化10〜化19)の−RCOORで表される下記のアルキルカルボン酸エステル基が挙げられる。
【0015】
アルキルカルボキシル基(−RCOOH)
【化7】

【化8】

【化9】

【0016】
アルキルカルボン酸エステル(−RCOOR
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【0017】
該任意の置換基の例としてRは水素原子;フッ素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ基またはヒドロキシル基;アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の置換されても良い炭素数1〜4の直鎖または分岐のアミノ基;ニトロ基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0018】
一般式(A)で示される本発明化合物は、たとえば下記(化5、化6)に示した反応式を経て合成することができる。
【化5】

【化6】

【0019】
ベンゾトリアゾール誘導体に高沸点溶媒である商品名「ソルベッソ150」(エクソンモービル社製)溶媒下、パラホルムアルデヒドとジエチルアミンを反応させてマンニッヒベースとし、該ヒダントイン誘導体と縮合させることで本発明の上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物を合成できる。反応の溶媒としては上記ソルベッソ150以外に例えばキシレン等の芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、ヘプタン、オクタン等の鎖状炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素を用いることができる。また再結晶の際に用いる再結晶溶媒としてはメチルイソブチルケトン以外に例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の低級エステル類等が挙げられる。
【0020】
本発明の有機色素を製膜して用いる方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法などが一般的であるが、コスト面ではスピンコート法が望ましい。
【0021】
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により塗布する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下に本発明で実施した本発明の有機色素及び紫外線吸収剤に用いる化合物の合成法及び化合物の特性を示す。ただし合成方法はこれに限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
化合物(a);3‐{[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐2‐ヒドロキシ‐5‐tert‐オクチルフェニル]メチル}‐5‐(4‐ヒドロキシベンジリデン)ヒダントイン
【化3】

【0024】
<化合物の合成>
i) 2‐[3‐(ジエチルアミノ)メチル‐2‐ヒドロキシ‐5‐tert‐オクチルフェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾールの合成
【化20】

200mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐tert-オクチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール(シプロ化成(株)製、商品名「SEESORB709」)32.3g(0.10mol)、92%パラホルム9.8g(0.30mol)、ジエチルアミン21.9g(0.30mol)を混合して70〜80℃で11〜12時間撹拌した後、n‐ヘキサン
80mLを加え抽出させた後水洗した。冷却後固体を濾過し取りn‐ヘキサンで洗浄後、60℃の乾燥機にて黄白色の結晶を収率77.7%で31.7g得た。得られた結晶の融点102.4〜103.3℃であった。またHPLC分析を行い、HPLC面百純度を測定したところ、HPLC面百純度は99.4%であった。測定条件は以下の通りである。
<測定条件>
装置:LC−6A((株)島津製作所製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A−212 5μm 6mmφ×15cm
カラム温度:40℃
移動相:メタノ−ル:水=95:5
流速:1.0mL/min
なお、下記ii)のHPLC面百純度も上記と同様の条件で行った。
【0025】
ii) 3‐{[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐2‐ヒドロキシ‐5‐tert‐オクチルフェニル]メチル}‐5‐(4‐ヒドロキシベンジリデン)ヒダントインの合成
100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、2‐{3‐(ジエチルアミノ)メチル‐2‐ヒドロキシ‐5‐tert‐オクチルフェニル}‐2H‐ベンゾトリアゾール8.2g(0.02mol)、4−ヒドロキシベンジリデンヒダントイン4.1g(0.02mol)、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液0.8g(0.004mol)、N,N-ジメチルアセトアミド50mLを混合して115〜125℃で、減圧にして溶媒を回収しつつ10〜12時間撹拌した。4−メチル‐2‐ペンタノン60mL、酢酸0.3mLを追加して冷却後固体を濾過し取った。濾液を減圧下にて溶媒を溜去して2-ペンタノールを100mL追加して晶析した。冷却後固体を濾過し取り、微黄白色の結晶を収率10.4%で1.1g得た。分解点276.7℃、HPLC面百純度94.6%であった。
【0026】
<紫外〜可視吸収スペクトル>
化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは、343nmであり、この時の吸光度εmaxは、46900であった。スペクトルを図1に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV-2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
また以下の実施例も本実施例と同様の測定条件で紫外〜可視吸収スペクトルの測定を行った。
【0027】
<IR吸収スペクトル>
また化合物(a)の赤外線吸収スペクトルも測定した。測定条件は次のとおりである。
装置:FTIR−8400S((株)島津製作所製)
検体:1/200(KBr)
上記条件で測定した化合物(a)の赤外線吸収スペクトルを図2に示す。なお、以下の実施例も本実施例と同様の測定条件で赤外線吸収スペクトル測定を行った。
【0028】
<溶解性評価>
化合物(a)について、2-プロパノール及びエチルセロソルブに溶解させたときの溶解度、及塗布膜とした場合の結晶析出性を調べた。化合物(a)2-プロパノール溶解度は0.1wt%未満、エチルセロソルブ溶解度は2.1wt%であった。
【0029】
<NCH定量分析>
化合物(a)を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定装置>
酸素循環燃焼・TCD検出方式 NCH定量装置
スミグラフ NCH−21型(住化分析センター製)
<測定結果>
3133としての計算値
C(%)69.0;H(%)6.2;N(%)11.9
実測値 C(%)67.8;H(%)6.7;N(%)12.3
【0030】
<NMR分析>
化合物(a)については、更にNMR解析を行った。
<測定条件>
装置:JMM−ECA400
共振周波数:400MHz(H−NMR)
測定温度:室温
溶媒:クロロホルム−d
内部基準物質:TMS(0ppm)
積算回数:16回
得られたスペクトル(拡大図)を図3に示す。スペクトルの内容を表1に整理した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1から推定される化合物の構造を(化22)(化23)に示す。
【化22】

【化23】

以上NMRの結果から、2つの構造の可能性が示されたが、立体障害の観点から、化合物(a)は、(化22)の構造である3‐{[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐2‐ヒドロキシ‐5‐tert‐オクチルフェニル]メチル}‐5‐(4‐ヒドロキシベンジリデンヒダントインであると推察される。
【0033】
<塗布膜としたときの評価>
上記で得られた化合物(a)をエチルセロソルブに対して2.0wt%になるよう調整した。次にガラス板(7.5cmx2.5cm,厚さ約1mm)をポリカーボネート円盤(直径12cm,厚さ約1.2mm)に貼り付け、回転数500〜600rpmで回転させた。回転しているガラス板上にガラス板上に調製した上記化合物(a)のメチルセロソルブ溶液を滴下し、スピナー法により塗布した。塗布後、風乾させることで、化合物(a)が膜化して付着しているガラス板を得た。得られたガラス板上に膜化した化合物(a)の紫外線〜可視光吸収スペクトルの測定を行い、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、380nmであった。
【0034】
(実施例2)
化合物(b);3‐{[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐2‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル]メチル}‐5‐(4‐ヒドロキシベンジリデン)ヒダントイン
【化4】

【0035】
<化合物の合成>
i) 2‐[3‐(ジエチルアミノ)メチル‐2‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの合成
【化21】

200mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール(シプロ化成(株)社製 商品名「SEESORB701」)22.5g(0.10mol)、92%パラホルム9.8g(0.30mol)、ジエチルアミン
21.9g(0.30mol)を混合して70〜80℃で11〜12時間撹拌した後、トルエン100mLを加え抽出させた後水洗した。トルエンを減圧回収して黄色のオイルを収率98.2%で30.5g得た。
【0036】
ii) 3‐{[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐2‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル]メチル}‐5‐(4‐ヒドロキシベンジリデン)ヒダントインの合成
100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、2-[3-(ジエチルアミノ)メチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール6.2g(0.02mol)、4-ヒドロキシベンジリデンヒダントイン4.1g(0.02mol)、28%ナトリウムメチラートメタノール溶液0.8g(0.004mol)、N,N-ジメチルアセトアミド
50mLを混合して115〜125℃で、減圧にして溶媒を回収しつつ10〜12時間撹拌した。4−メチル‐2‐ペンタノン60mL、酢酸0.3mLを追加して冷却後、不溶分を濾過し取った。濾液を減圧下にて溶媒を溜去して2‐ペンタノールを100mL追加して晶析した。冷却後固体を濾過し取り、褐色の結晶を収率14.7%で1.3g得た。得られた化合物のHPLC面百純度は93.4%であった。測定条件は以下の通りである。
<測定条件>
移動相:メタノール:水=90:10
その他の条件は実施例1と同じである。
【0037】
化合物(b)の溶媒への溶解度を調べたところ、2‐プロパノール溶解度は0.1wt%未満、エチルセロソルブ溶解度は0.1wt%未満であった。また紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは、344nmであり、この時の吸光度εmaxは、26000であった。紫外線〜可視光吸収スペクトルを図4に示す。また、実施例1と同様の条件で測定したIRスペクトルを図5に示す。
【0038】
<塗布膜としたときの評価>
上記で得られた化合物(b)をエチルセロソルブに対して0.3wt%になるよう調整した。次にガラス板(7.5cmx2.5cm,厚さ約1mm)をポリカーボネート円盤(直径12cm,厚さ約1.2mm)に貼り付け、回転数500〜600rpmで回転させた。回転しているガラス板上にガラス板上に調製した上記化合物(b)のメチルセロソルブ溶液を滴下し、スピナー法により塗布した。塗布後、風乾させることで、化合物(b)が膜化して付着しているガラス板を得た。得られたガラス板上に膜化した化合物(b)の紫外線〜可視光吸収スペクトルの測定を行い、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、355nmであった。
【0039】
上記化合物(a)及び(b)の特性をまとめて表2に示す。なお、塗布膜としたときの結晶性の有無も併せて示す。評価基準は下記のとおりである。
○:結晶析出が認められない
△:塗布面の縁にわずかに結晶析出が認められる
×:塗布膜の縁に明確に結晶析出が認められるか、または塗布膜の縁以外の部分に(わずかであっても)結晶析出が認められる。
【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の化合物は、可視光低波長領域から紫外領域に吸収を持ち、かつ非結晶性が高いので、有機色素として塗料や写真薬など一般の色材、また紫外線吸収剤として好適に使用できる。なかでも、いわゆる青色レーザーを用いる光記録媒体用に添加する色素として好適に利用できる。また、本発明の化合物は、金属錯体の配位子としても利用でき、本発明の化合物を配位子とした有機金属錯体もまた有機色素として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図2】化合物(a)の赤外吸収スペクトルである。
【図3】化合物(a)のNMRスペクトルである。
【図4】化合物(b)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図5】化合物(b)の赤外吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(A)で示されるベンジリデンヒダントイン誘導体化合物のうち、
(A)式中のR〜Rがそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるベンジリデンヒダントイン誘導体化合物。
【化1】

〜R及びR〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキル基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルコキシ基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜3のアルキルカルボキシ基、炭素数1〜20のアルキルカルボキシエステル基または炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基であり、
(ただし、R〜R及びR〜Rにアミノ基またはニトロ基が選ばれる場合、アミノ基またはニトロ基は、いずれか一方が、R〜R及びR〜Rのうち1箇所置換されているものに限る。)
は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルキル基(いずれかで枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルコキシ基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、カルボキシル基、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基(いずれかの位置で枝分かれしているものを含む)、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分鎖のジ置換アミノ基またはニトロ基である。
【請求項2】
前記一般式(A)におけるR〜Rが、下記(a)〜(b)記載の組み合わせのいずれかであるベンジリデンヒダントイン誘導体化合物。
(a) R,R,R,R=H、R=OH、
【化2】

(b) R,R,R,R=H、R=OH、R=CH
【請求項3】
請求項1記載のベンジリデンヒダントイン誘導体化合物を含有する有機色素。
【請求項4】
請求項1記載のベンジリデンヒダントイン誘導体化合物を含有する紫外線吸収剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−230890(P2007−230890A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52768(P2006−52768)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【Fターム(参考)】