説明

ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸およびその中間体の製造方法

式(I)のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸またはその塩、およびゾニサミドの製造における中間体として有用なその中間体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾニサミドおよびその中間体の製造のための中間体として有用な、ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸またはその塩の製造方法に関する。
【0002】
背景技術
ゾニサミド、すなわち3−(スルファミルメチル)−ベンゾ[d]イソキサゾールは、抗てんかん活性、抗けいれん活性および抗神経毒性活性を有する公知の薬物で、スルホンアミド化合物の分類に属し、以下の式の構造を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
ゾニサミドの製造方法は、US4,172,896に開示されており、3−ブロモメチル−ベンゾ[d]イソキサゾール(1)を亜硫酸ナトリウムでスルホン化してベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸ナトリウム塩(2)を得、次いでオキシ塩化リンで処理して対応する塩化スルホニル体(3)に変換することからなる。後者の塩化スルホニル体(3)をアンモニアガスで反応して、以下に報告するように、ゾニサミド(4)が得られる。
【0005】
【化2】

【0006】
出発化合物(1)は市販品として入手できない。その製造については、文献[BE624463;Chem.Pharm.Bull.24(1976)p.632;およびChim.Ter.7(1972)p.127]に記載されており、4−ヒドロキシクマリン(5)から出発して以下の反応式に従う。
【0007】
【化3】

【0008】
ヒドロキシクマリン(5)をヒドロキシルアミンで処理してベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−酢酸(6)を得、α位でブロム化してベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−ブロモ酢酸(7)を得、それから脱炭酸して3−ブロモメチル−ベンゾ[d]イソキサゾール(8)を得る。出発中間体(1)が市販品として入手できず、したがってゾニサミドの製造が非常に複雑であるという点で、この方法の展開は制限される。実際、酸化合物(6)を製造するためのポスナー反応(Posner reaction)には、金属ナトリウムの使用が要求される。更に、金属ナトリウムをアルコール系溶液中で用いる場合、酸化合物(6)の他にも副生成物として顕著な量のO−ヒドロキシ−アセトフェノン−オキシムが得られる。更に、化合物(8)を得る脱炭酸反応には、激しい条件、すなわち大過剰の50%硫酸の存在および還流温度が要求されるため、生じた生成物は単離するのが困難である。
【0009】
ゾニサミド製造の多くの別法が知られている。例えば、JP53077057は、ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−酢酸(6)をクロロスルホン酸/ジオキサンで直接スルホン化することによる、中間体(9)であるベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸の製造を開示する。
【0010】
【化4】

【0011】
クロロ硫酸およびジオキサンの使用は、これらの生成物が高毒性であり且つ取り扱いが困難であるので、不都合である。
【0012】
JP54163510には、2−(2−ヒドロキシ−フェニル)−2−オキソ−エタンスルホンアミド(10)から出発し、対応する2−ヒドロキシイミノ−2−(2−ヒドロキシ−フェニル)エタンスルホンアミド(11)を形成し、続いて熱環化反応するゾニサミド(4)の合成を開示する。
【0013】
【化5】

【0014】
本合成経路の主な欠点は出発物質(10)が市販品として入手できないこと、および収率が低いこと(最終工程で計算すると約6%)である。従って、高純度、好収率で、工業スケールの製造に適しているゾニサミドの製造の別法の必要性がある。
【0015】
発明の詳細な説明
式(III):
【0016】
【化6】

のオキシム化合物を塩基性試薬と反応させることを含む、式(I):
【0017】
【化7】

のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸またはその塩の製造方法に関する。
【0018】
好適な式(I)のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸塩は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩で、特にナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムまたはバリウム塩、好ましくはナトリウムまたはリチウム塩であり;または有機塩基との塩で、例えば、第二もしくは第三アミン、典型的にはトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−4−ウンデセンまたは1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンで、好ましくはトリエチルアミンまたは1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−4−ウンデセンとの塩である。
【0019】
本発明はまた、ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸リチウム塩、およびベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸の有機塩基との塩、例えば、第二もしくは第三アミン、典型的にはトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−4−ウンデセンまたは1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、好ましくはトリエチルアミンまたは1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−4−ウンデセンとの塩の両方に関するもので、これらは新規な化合物である。
【0020】
式(III)のオキシム化合物は、塩基性試薬の処理によって対応する式(I)のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸塩に自動的に変換される。塩基性試薬は好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム、特にリチウムまたはナトリウムの水酸化物であり;または有機塩基、例えば、第二または第三アミン、典型的にはトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−4−ウンデセンまたは1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、好ましくはトリエチルアミンまたは1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−4−ウンデセンである。
【0021】
塩基性試薬は、オキシムの量に関して約1〜2当量の反応比、好ましくは化学量論量で用い得る。
【0022】
変換反応は塩基次第で実施され得、例えば、水;エーテル類、特にテトラヒドロフラン;C−Cアルカノール類、特にメタノールまたはエタノール;アセトニトリル;塩素化溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタンまたはトリクロロエタン;カルボン酸アルキルエステル、例えば酢酸エチル;非極性非プロトン性溶媒、例えばトルエンまたはシクロヘキサン;またはその混合物、例えばテトラヒドロフラン/水、アセトニトリル/水、酢酸エチル/メタノールまたはアセトニトリル/メタノールからなる群から選択される溶媒の不存在または存在下実施され得る。反応は好ましくは、水、アセトニトリル/メタノールまたはジクロロメタン中実施される。反応は好ましくは、約−20℃〜溶媒または混合溶媒の還流温度の範囲の温度、特に約30〜50℃の温度で実施される。式(I)の化合物の生じた塩は、直接に回収され得るか、または所望により公知の方法で遊離酸に変換され得る。本発明の工程により、US4,172,896に開示の方法によるよりも純度が高く、より好収率で、より周囲の影響が小さく、ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸塩またはその塩を得ることができる。これは、式(III)のオキシムが水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウム、トリエチルアミンまたはジアザビシクロウンデセンで処理される場合、特に用いられる。これらの特定の塩基性試薬で処理して、実際、他の塩基性試薬を用いる場合よりも高純度で、高収率でベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸が得られる。
【0023】
式(III)のオキシム化合物およびその異性体は、約5〜約100℃、好ましくは約15〜約40℃の範囲の温度で、式(II):
【0024】
【化8】

のケトスルトンのヒドロキシルアミンとの反応で得ることができる。反応は水中、有機溶媒中またはその混合液中で実施される。当該有機溶媒は、有機プロトン性溶媒であり得、例えば、C1−C6アルカノール類、特にメタノール、エタノールまたはイソプロパノール;ハロ炭化水素、例えばクロロホルムまたはジクロロメタン;芳香族炭化水素、例えばベンゼンまたはトルエン;エーテル類、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン;またはカルボン酸アルキルエステル、例えば酢酸エチルである。
【0025】
ヒドロキシルアミンは、水溶液として用いられるか、またはその塩、例えば、硫酸塩、硝酸塩または塩酸塩から、反応系中でそのまま適当な塩基性試薬、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、または有機塩基、例えばトリエチルアミンと反応させて得られる。得られた式(III)のオキシム化合物は、所望により、例えばC1−C4アルカノール類、特にイソプロパノール、C1−C4アルカノール類の水混合液、特にイソプロパノール/水、トルエンもしくはジクロロメタン/水混液から結晶化し得る。式(III)の結晶性オキシム化合物およびその異性体は、特に表1に挙げた粉末X線パターンからのピーク位置を有し、新規であり、本発明の更なる目的でもある。
【0026】
【表1】

【0027】
式(II)のケトスルトン化合物は公知であり、公知で、むしろ安価な方法で、例えば、Int.J.Sulfur.Chem.,Part A,(1992),2(4),249-255;またはArch.Pharm,313,1980.p.249に従い、少量得られる。その中に記載されている合成経路は以下のとおりである。
【0028】
【化9】

【0029】
当該工程は、サリチルアルデヒド(12)のメシル化、続く誘導体(13)の水酸化カリウムを用いた環化からなる。得られた化合物(14)は、重クロム酸カリウムおよび硫酸を用いて、目的化合物(II)に酸化される。しかしながら、この工程は、発癌性、催奇性および環境への強い毒性があると知られている重クロム酸カリウムの使用を含むので、ケトスルトン(II)を得るのに工業的な量では用いることはできない。
【0030】
他の合成経路は、Heterocycles,vol.22,No.10,1984,p.2293から公知であり、当該文献中、開環体はサリチル酸メチルメシレート(16)をジメチルホルムアミド(DMF)中の水素化ナトリウムで処理して得る。
【0031】
【化10】

一方、水素化ナトリウム−DMF混合物が潜在的に危険であり、室温でさえ制御できない爆発性の反応を容易に起こることは、文献(例えば、Bretherick's Handbook of reactive chemical hazards,VI Ed.,p1181)から公知である。従って、この方法は工業スケールに用いることはできない。
【0032】
式(II)のケトスルトン化合物、すなわち2,2−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−2λ−ベンゾ[e][1,2]オキサチイン−4−オンは、式(V):
【0033】
【化11】

の化合物の塩基性試薬との反応を含む方法によって、工業スケールで好都合に製造できることが今回わかった。
【0034】
適切な塩基性試薬は典型的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のC1−C8アルコキシド、または第三アミンまたはその触媒量からなる群から選択される薬剤である。
【0035】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属C1−C8アルコキシドは、直鎖または分枝鎖のC1−C5アルカノール、典型的にはメタノール、エタノール、tert−ブタノールおよびイソアミルアルコール、好ましくはナトリウム tert−ブチレートを伴ったナトリウムまたはカリウム塩であり得る。
【0036】
第三アミンは、式(V)の化合物の式(II)のケトスルトンへの変換を引き起こすような塩基性度を有するアミンである。かかる第三アミン類の例は、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−4−ウンデセンまたは1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンであり、特に1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−4−ウンデセンである。式(V)の化合物に対する第三アミンのモル比は、例えば約10/1〜2/1、好ましくは約2.2/1〜2.1/1の範囲であり得る。
【0037】
式(V)の化合物および塩基性試薬との間の反応は好ましくは、例えば、塩素化溶媒、例えばC1−C4アルキル炭化水素のモノ−、ジ−、トリ−およびテトラ−クロリド、典型的にはジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタンまたはテトラクロロエタン、特にジクロロエタン;エーテル類、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン、好ましくはテトラヒドロフラン;非極性非プロトン性溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、好ましくはトルエン;双極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリドン;およびアセトニトリルから選択される有機溶媒中実施される。より好ましい溶媒はテトラヒドロフランである。
【0038】
あるいは、式(II)のケトスルトンへの変換は、上記で例示されるように第三アミンの触媒量、例えば、約10〜20%モル濃度を用い、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩または水酸化物、好ましくは炭酸カリウムの存在下、有機溶媒中式(V)の化合物を反応させることで得ることができる。
【0039】
反応は塩基性試薬に依存して、0℃〜反応混合物の還流温度範囲の温度で、好ましくは室温〜40℃で、1時間〜18時間の時間実施される。式(V)の化合物は式(VI):
【0040】
【化12】

の化合物を式CH3SO2X(Xはハロゲン、例えば塩素または臭素、好ましくは塩素)のアシル化剤でアシル化して製造され得る。式(VI)の化合物のアシル化は、以下の実験項で説明されているような、特に上記で例示されているような非極性非プロトン溶媒中で実施され得る。
【0041】
この方法は、更なる本発明の目的であり、取扱者または環境への有害物を含まず、一方で工業的生成物によく適している中間体を用いて、50〜80%の範囲の収率で式(II)のケトスルトンが製造できる。結局、ケトスルトン(II)は、酸でワークアップして容易に単離できる。
【0042】
式(I)のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸またはその塩の製造に用いられる式(II)のケトスルトンは、好ましくは本発明の方法に従って製造される。
【0043】
式(I)のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸もしくはその塩、および式(II)および(III)の中間体の両方の本発明の製造方法で、US4,172,896に開示されている方法よりも、より低コストで、より高純度に、ゾニサミドを得ることができる。
【0044】
従って、本発明の更なる目的は、式(I):
【0045】
【化13】

のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸およびその塩をハロゲン化剤で処理して、式(IV):
【0046】
【化14】

[式中、Xはハロゲンで、好ましくは塩素または臭素である]
のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホニルハライドを得、続くアンモニアを用いた(IV)の処理を含む、ゾニサミドの製造方法であり、その中で式(I)のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸またはその塩は式(III):
【0047】
【化15】

のオキシム化合物の上記に定義されるような塩基性試薬との処理を含む方法で得られる。
【0048】
塩基性試薬は、好ましくは水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウム、トリエチルアミンまたはジアザビシクロウンデセンである。適切なハロゲン化剤は、例えば、オキシ塩化リンまたはオキシ臭化リンである。
【0049】
式(I)の化合物またはその塩の式(IV)の化合物への変換、および次いでゾニサミドへの変換の過程は、US4,172,896に開示されているように実施され得る。
【0050】
本発明の好ましい面に従い、式(III):
【0051】
【化16】

のオキシム化合物およびその異性体は、結晶形の場合なら、式(V):
【0052】
【化17】

の化合物の上記に定義されるような塩基性試薬との反応で、式(II):
【0053】
【化18】

のケトスルトンを得る反応と、化合物(II)のヒドロキシルアミンとの反応で、所望なら続くこのように得られた生成物の結晶化を含む方法で製造される。
【0054】
以下の実施例で更に本発明が説明される。
実施例1:式(III)のオキシム化合物の製造
ケトスルトン(II)(50.0g;252.5mmol)のメタノール(150mL)溶液に、室温でヒドロキシルアミン塩酸塩(18.0g;252.5mmol)を加える。当該懸濁液に約1時間滴下してトリエチルアミン(25.5g;252.5mmol)を加える。得られた溶液を1〜2時間攪拌し、次いで水(300mL)で希釈する。対応するオキシム化合物(III)が沈澱し、これを濾過し、水で洗浄する(50.3g;収率:95%)。
【0055】
実施例2:結晶形の式(III)のオキシム化合物の製造
ケトスルトン(II)(50.0g;252.5mmol)のジクロロメタン(500mL)溶液に、室温でヒドロキシルアミン塩酸塩(18.0g;252.5mmol)を加える。当該懸濁液に約1時間滴下してトリエチルアミン(25.5g;252.5mmol)を加える。得られた溶液を1〜2時間攪拌し、次いで水(300mL)で洗浄する。溶媒を蒸発して除き、残渣をトルエン(650mL)から再結晶し、対応する結晶性のオキシム化合物(III)を得る(40.2g;収率:76%)。関連の粉末X線パターンを上記表1に示す。
1H-NMR−300MHz(DMSO-d6):δ5.06(s,2H);7.33(m,2H);7.55(dd,1H);8.0(d,1H).
マススペクトル:E.I.−m/e:M+213
【0056】
実施例3:ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸 リチウム塩(I)の製造
オキシム体(III)(50g;265.7mmol)の水(250mL)懸濁液に、2M水酸化リチウム水溶液(134ml;265.7mmol)を滴下して加える。3時間室温で反応後、当該溶液を蒸発させて残渣を得、次いでトルエンを加え、残留する水分は共沸して除く。生成物は次いで濾過し、真空下乾燥し、それによりベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸リチウム塩を得る(48g、収率:85%)。
【0057】
実施例4:ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸,ナトリウム塩(I)の製造
オキシム体(III)(50g;265.7mmol)の水(250mL)懸濁液に、2M水酸化ナトリウム水溶液(134ml;265.7mmol)を滴下して加える。室温で3時間反応後、当該溶液を蒸発させて残渣を得、次いでトルエンを加え、残留する水分は共沸して除く。生成物は次いで濾過し、真空下乾燥し、それによりベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸ナトリウム塩を得る(43g、収率:70%)。
【0058】
実施例5:2,2−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−2λ−ベンゾ[e][1,2]オキサチイン−4−オン;式(II)のケトスルトンの製造
メシレート体(V)(5.0g;17.1mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−4−ウンデセン(5.5g、35.9mmol)を加える。反応混合物を室温(約20〜25℃)で約12時間攪拌する。当該溶液を次いで約2時間35℃に加熱し、次いで水(20mL)で希釈する。テトラヒドロフランを次いで真空下蒸留して除く。残渣をpH<3の酸性にすることで、生成物が結晶し始める。当該混合物を約0〜5℃に冷却し、生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下乾燥し、それによりケトスルトン(II)を得る(2.8g、収率:80%)。
1H NMR:(CDCl3):δppm:4.4ppm(s,2H);7.3ppm(d,1H);7.4ppm(t,1H);7.7(t,1H);8.1(d,1H).
【0059】
実施例6:2,2−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−2λ−ベンゾ[e][1,2]オキサチイン−4−オン;式(II)のケトスルトンの製造
メシレート体(V)(5.0g;17.1mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−4−ウンデセン(0.5g、3.59mmol)、炭酸カリウム(5.0g、36.2mmol)および水(5.0g)を加える。当該混合物を10〜14時間約30〜35℃で攪拌し、その後水(20mL)で希釈し、THFを真空下蒸留して除く。残渣をpH<3に酸性にすることで、生成物が結晶し始める。当該混合物を約0〜5℃に冷却し、生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下乾燥し、それによりケトスルトン(II)を得る(2.2g、収率:65%)。
【0060】
実施例7:式(V)のメシレート化合物の製造
サリチル酸フェニル(VI)(100g、467mmol)およびメタンスルホニルクロリド(54.5g、476mmol)を、攪拌下トルエン(500mL)中反応する。当該溶液を約0〜5℃に冷却し、トリエチルアミン(48.7g、481mmol)を約15分かけてその中に滴下する。反応温度を約37℃に昇温する。その後、当該混合物を10〜14時間約20〜25℃で攪拌し、NMRおよび/またはHPLCで反応をモニターする。結局、当該溶液を水(500mL)で希釈する。形成した沈殿物を濾過する。当該有機濾液を分液し、減圧下蒸発させる。残渣を沈殿物と合わせて、約3時間60℃で真空下乾燥し、それにより生成物を得る(130g)。
1H NMR:(CDCl3):δppm:3.3ppm(s,3H);7.2ppm(m,3H);7.4ppm(m,4H);7.6(t,1H);8.2(d,1H).
【0061】
実施例8:ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸トリエチルアンモニウム塩(I)の製造
オキシム体(III)(50g;265.7mmol)のメタノール(25mL)溶液に、トリエチルアミン(26.7g;265.7mmol)水溶液を滴下して加える。約40℃で8時間反応後、当該溶液を蒸発させて、残渣を得、それによりベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸 トリエチルアンモニウム塩を得る(57g、収率:70%)。
【0062】
実施例9:2,2−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−2λ−ベンゾ[e][1,2]オキサチイン−4−オン;式(II)のケトスルトンの製造
メシレート体(V)(5.0g;17.1mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ナトリウムtert−ブトキシド(3.45g、35.9mmol)を加える。反応混合物を室温(約20〜25℃)で約12時間攪拌する。当該溶液を次いで約2時間約35℃に加温し、次いで水(20mL)で希釈する。テトラヒドロフランを次いで真空下蒸留して除く。残渣をpH<3に酸性にすることで、生成物が結晶し始める。当該混合物を約0〜5℃に冷却し、生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下乾燥し、それによりケトスルトン(II)を得る(2.4g、収率:70%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III):
【化1】

のオキシム化合物を塩基性試薬と反応させることを含む、式(I):
【化2】

のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸またはその塩の製造方法。
【請求項2】
上記塩基性試薬が有機塩基またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物である、請求項1の方法。
【請求項3】
上記塩基性試薬がリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムの水酸化物、または第二もしくは第三アミン化合物である、請求項2の方法。
【請求項4】
リチウム塩または有機塩基との塩である、ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸塩。
【請求項5】
上記有機塩基が第二または第三アミン化合物である、請求項4の塩。
【請求項6】
式(III):
【化3】

の結晶性化合物またはその異性体。
【請求項7】
式(I):
【化4】

のベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホン酸またはその塩を、
式(III):
【化5】

のオキシム化合物を塩基性試薬で処理する方法で得て、
ハロゲン化剤で処理して、式(IV):
【化6】

[式中、Xはハロゲンである]
のハロゲン化ベンゾ[d]イソキサゾール−3−イル−メタンスルホニルを得て、
化合物(IV)をアンモニアで処理することを含む、ゾニサミドの製造方法。
【請求項8】
上記塩基性試薬が有機塩基またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物である、請求項7の方法。
【請求項9】
適宜結晶形である式(III)のオキシム化合物またはその異性体が、
式(V):
【化7】

の化合物を塩基性試薬と反応させて式(II):
【化8】

のケトスルトン化合物を得て、
化合物(II)をヒドロキシルアミンと反応させ、および
所望により結晶化させることを含む工程によって製造される、請求項1または7の方法。
【請求項10】
式(V):
【化9】

の化合物を塩基性試薬と反応させることを含む、式(II)のケトスルトン化合物である2,2−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−2λ−ベンゾ[e][1,2]オキサチイン−4−オンの製造方法。

【公表番号】特表2006−515322(P2006−515322A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512865(P2005−512865)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014919
【国際公開番号】WO2004/063173
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(504348563)ディファルマ・ソシエタ・ペル・アチオニ (6)
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA S.p.A.
【Fターム(参考)】