説明

ベントプラグ圧抜き工具

【課題】 導圧管や発信器に取付けられるベントプラグの緩め操作による圧抜きを安全に行うことができる工具を提供する。
【解決手段】 本工具11は、ベントプラグのスクリューバルブの六角形の頭部を緩め方向に回動操作して頭部頂面の圧抜き孔より圧抜きを行うものであり、筒状本体12と、筒状本体12の一端部側に取付けられて六角形の頭部に係合するソケット13と、筒状本体12に取付けられた回動操作用のハンドル15と、を含んで構成される。ここで、ソケット13は、前記圧抜き孔からの噴出流体を筒状本体12内に導く連通路13c、13bを有し、筒状本体12の他端部が前記噴出流体の放出口をなす。また、筒状本体12の他端部側にもサイズの異なるソケット14が取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導圧管や発信器に取付けられたベントプラグを緩め操作して圧抜きを行う際に使用するベントプラグ圧抜き工具に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プラントにおいては、その運転を適切に管理するため、各所の圧力を測定する必要があり、被測定箇所から引出された導圧管の先に圧力発信器を設置している。これら導圧管及び発信器の点検を行う際は脱圧する必要がある。
ベントプラグは、導圧管や発信器に取付けられており、実液又は実ガスを脱圧するためのプラグ(栓)である。
【0003】
従来、ベントプラグを開放して導圧管及び発信器内を大気圧にするには、モンキーレンチ又はソケットレンチ等を使用している。
また、特許文献1には、ソケットレンチにその係合部を覆うペットボトル型のカバー部材を設け、ドレンキャップなどの開放時に吹出す液体や気体をカバー部材の内面で受け止めて防護するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−125434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベントプラグを開放して導圧管及び発信器内を大気圧にするのに、モンキーレンチ又はソケットレンチ等を使用すると、作業姿勢によっては、顔等の露出している箇所に、実液又は実ガスが飛散する恐れがある。
【0006】
また、特許文献1に記載されているように、吹出す液体や気体をカバー部材で受け止めて反射させるようにすると、カバー部材によって向きを変えられた液体や気体が思わぬ方向へ飛散する恐れがある。しかも、カバー部材の分、工具が大型化し、持ち運びや取り扱い等に不便となる。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑み、ベントプラグの緩め操作による圧抜きを安全に行うことができる、ベントプラグ圧抜き工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、ベントプラグのスクリューバルブの六角形の頭部を緩め方向に回動操作して頭部頂面の圧抜き孔より圧抜きを行うベントプラグ圧抜き工具を提供するものであり、
そのベントプラグ圧抜き工具は、筒状本体と、前記筒状本体の一端部に取付けられて前記六角形の頭部に係合するソケットと、前記筒状本体に取付けられた回動操作用のハンドルと、を含んで構成され、
前記ソケットは、前記圧抜き孔からの噴出流体(実液又は実ガス)を前記筒状本体内に導く連通路を有し、
前記筒状本体の他端部が前記噴出流体の放出口をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筒状本体の一端部のソケットをベントプラグにあてがい、ハンドルにより筒状本体を回動操作することで、ベントプラグを緩め、脱圧を行うことができ、このとき、実液又は実ガスは筒状本体に案内されて、筒状本体の他端部より噴出する。従って、筒状本体は、脱圧時の実液や実ガスの噴出方向を変えることなく単に案内して作業者のいないところへ噴出させることができる。このため、実液や実ガスを作業者の顔等の露出している箇所に飛散させることなく、安全に脱圧することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示すベントプラグ圧抜き工具の断面図
【図2】同上のベントプラグ圧抜き工具の左側面図
【図3】図1中の第1ソケットの正面図及び左右の側面図
【図4】図1中の第2ソケットの正面図及び左右の側面図
【図5】ベントプラグの断面図
【図6】同上のベントプラグの右側面図
【図7】ベントプラグ圧抜き工具の使用状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るベントプラグ圧抜き工具を図1及び図2に示すが、その説明に先立って、本実施形態での操作対象のベントプラグについて、図5及び図6により説明する。
【0012】
図5はベントプラグの断面図、図6はその右側面図である。
ベントプラグ1は、導圧管や発信器(図示せず)に取付けられるもので、プラグボディ2と、スクリューバルブ6とから構成される。
【0013】
プラグボディ2は、一端部で導圧管や発信器(図示せず)と連通し、他端部が開口する連通路3を有する。そして、連通路3の中間部には、小径部として形成した弁座部4を有し、連通路3の開口側(大径部側)には、めねじ部5を有する。
【0014】
スクリューバルブ6は、プラグボディ2のめねじ部5に螺合されるネジ部7と、ネジ部7の先端側に設けられて弁座部4と相対するニードル部8と、ネジ部7の基端側に設けられる六角形の頭部9と、ニードル部8の基端側の側部からネジ部7内を通って頭部9の頂面に開口する圧抜き孔10とを有する。
【0015】
従って、スクリューバルブ6を締付け方向に回動操作して、ニードル部8をプラグボディ2の弁座部4に押付けることにより、連通路3を閉止することができる。
逆に、スクリューバルブ6を緩め方向に回動操作して、ニードル部8を弁座部4より離間させることにより、連通路3内の実液又は実ガスを弁座部4とニードル部8との間を通して圧抜き孔10から流出させることができる。
【0016】
尚、ベントプラグ1のスクリュープラグ6の六角形の頭部9のサイズ(図6中の二面幅S)については、例えば、8mm、14mm、19mmと、数種類ある。
【0017】
本実施形態において、図5及び図6のベントプラグの圧抜き作業に用いるベントプラグ圧抜き工具について、図1及び図2により説明する。
図1はベントプラグ圧抜き工具の断面図、図2はその左側面図である。
【0018】
ベントプラグ圧抜き工具11は、筒状本体12と、筒状本体12の一端部に取付けられた第1ソケット13と、筒状本体12の他端部に取付けられた第2ソケット14と、筒状本体12の半径方向外方に取付けられた回動操作用のハンドル15と、を含んで構成される。
【0019】
筒状本体12は、例えば、外径27mm、肉厚2mm、長さ150mm程度のSUS製の円筒(パイプ)である。
【0020】
第1ソケット13及び第2ソケット14は、前記ベントプラグ1のスクリューバルブ6の六角形の頭部9に係合させるソケットである。
ここで、第1ソケット13及び第2ソケット14としては、図3及び図4に示すような、市販のソケットレンチ用の十二角のソケット(差込角12.7mm)を用いている。尚、第1ソケット13と第2ソケット14は、サイズ(二面幅)が異なり、例えば、第1ソケット13がS1=14mm、第2ソケット14がS2=8mmである。
【0021】
従って、第1ソケット13は、一端側に六角形の頭部に係合する十二角の係合部13aを有し、他端部に差込角と呼ばれる矩形断面の凹部13bを有し、係合部13aと凹部13bとは連通部13cによりつながっている(図3参照)。
第2ソケット14も同様であり、一端側に六角形の頭部に係合する十二角の係合部14aを有し、他端部に差込角と呼ばれる矩形断面の凹部14bを有し、係合部14aと凹部14bとは連通部14cによりつながっている(図4参照)。
【0022】
筒状本体12への第1ソケット13の取付けは、筒状本体12の一端部内に第1ソケット13を挿入配置して、図1中の黒塗り部を全周溶接することで、固着してある。筒状本体12への第2ソケット14の取付けも同様であり、筒状本体12の他端部内に第2ソケット14を挿入配置して、図1中の黒塗り部を全周溶接することで、固着してある。ここで、筒状本体12の両端部は、第1及び第2ソケット13、14より軸方向に突出しており(突出長さd=15mm程度)、その突出部はベントプラグ1のプラグボディ2外周を包覆する(図7参照)。
【0023】
ハンドル15は、筒状本体12の外周部に半径方向外方に突出させた丸棒で、先端側をL字状に屈曲してある。尚、筒状本体12とハンドル15とは、図1及び図2中の黒塗り部分を全周溶接することにより固着してある。尚、ハンドル15については筒状本体12をその軸線回りに回動するのが容易であれば、形状は問わない。
【0024】
次に本実施形態のベントプラグ圧抜き工具11の使用方法について説明する。
圧抜き作業を行うベントプラグ1のスクリュープラグ6の頭部9のサイズ(二面幅S)にあったソケット、例えば第1ソケット13を選択した上で、作業を行う。
【0025】
図7に示すように、ベントプラグ1のプラグボディ2に、ベントプラグ圧抜き工具11の筒状本体12を被せ、ベントプラグ1のスクリューバルブ6の頭部9に、ベントプラグ圧抜き工具11の筒状本体12内の第1ソケット13を係合させる。
【0026】
この状態から、ハンドル15を持って、筒状本体12をその軸線回りに回動することで、第1ソケット13を介して、ベントプラグ1のスクリュープラグ6を緩め方向に回動する。
【0027】
これにより、スクリューバルブ6のニードル部8を弁座部4より離間させることができ、連通路3内の実液又は実ガスを弁座部4とニードル部8との間を通して圧抜き孔10から噴出させることができる。
【0028】
そして、ベントプラグ1の圧抜き孔10から噴出する実液又は実ガスは、第1ソケット13の連通部13c及び凹部13bを介して筒状本体12内に流入し、この後、第2ソケット14の凹部14b、連通部14c及び係合部14a内を経て、筒状本体12の他端部から流出する。すなわち、第1ソケット13(及び第2ソケット14)は、前記圧抜き孔10からの噴出流体を筒状本体12内に導く連通路(連通路13c、凹部13b等)を有し、筒状本体12の反対側の端部が噴出流体の放出口をなす。
【0029】
従って、筒状本体12は、脱圧時の実液や実ガスの噴出方向を変えることなく単に案内して作業者のいないところへ噴出させるため、実液や実ガスを作業者の顔等の露出している箇所に飛散させることなく、安全に脱圧することができる。
また、筒状本体12がトルク伝達の役目とカバーの役目とを兼ねるので、工具をコンパクトに構成でき、持ち運びや取り扱いにも便利で、作業性もよい。
【0030】
また、本実施形態によれば、筒状本体12の両端部にサイズの異なる第1及び第2のソケット13,14を設けるようにしたため、サイズの異なるベントプラグに対し、方向を変えるだけで対応でき、作業が容易となる。
【0031】
また、本実施形態によれば、筒状本体12は第1及び第2ソケット13、14より軸方向に突出しており、その突出部は、ベントプラグ1のプラグボディ2外周を包覆するので、筒状本体12の筒方向以外の方向への洩れ防止を図ることができる。但し、筒状本体12より一部を突出させて第1及び第2ソケット13、14を設けるようにしてもよい。
【0032】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
例えば、ソケット(係合部13a)としては、十二角のものを示したが、六角のものを用いてもよいことは言うまでもない。
【0033】
また、筒状本体12の両端部のソケットのサイズの組み合わせについても同様であり、各種の組み合わせに変更することができる。
また、筒状本体12についてトルク伝達に支障のない範囲で一部を透明化して係合状態等を確認できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ベントプラグ
2 プラグボディ
3 連通路
4 弁座部
5 めねじ部
6 スクリューバルブ
7 ネジ部
8 ニードル部
9 頭部
10 圧抜き孔
11 ベントプラグ圧抜き工具
12 筒状本体
13 第1ソケット
13a 係合部
13b 凹部(差込角)
13c 連通部
14 第2ソケット
14a 係合部
14b 凹部(差込角)
14c 連通部
15 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントプラグのスクリューバルブの六角形の頭部を緩め方向に回動操作して頭部頂面の圧抜き孔より圧抜きを行うベントプラグ圧抜き工具であって、
筒状本体と、
前記筒状本体の一端部に取付けられて前記六角形の頭部に係合するソケットと、
前記筒状本体に取付けられた回動操作用のハンドルと、
を含んで構成され、
前記ソケットは、前記圧抜き孔からの噴出流体を前記筒状本体内に導く連通路を有し、
前記筒状本体の他端部が前記噴出流体の放出口をなすことを特徴とする、ベントプラグ圧抜き工具。
【請求項2】
前記ソケットは、前記筒状本体の両端部にそれぞれ設けられ、互いにサイズが異なることを特徴とする、請求項1記載のベントプラグ圧抜き工具。
【請求項3】
前記筒状本体は、前記ソケットより軸方向に突出しており、その突出部は、ベントプラグのプラグボディ外周を包覆することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のベントプラグ圧抜き工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91241(P2012−91241A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238128(P2010−238128)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)