説明

ベンド管

【課題】粉粒体の衝突によるピンホールの発生を抑制し、長寿命化を図ることができるベンド管を提供する。
【解決手段】ベンド管31は、管本体33と、同管本体33の内周面に密着されてなる第1補助管32と、同管本体33の外周面に密着されてなる第2補助管34とから構成されている。そして、管本体33は、高分子材料(合成樹脂、ゴム類等)により形成されている。これにより、ベンド管31の内域を流通する金属屑の衝突による衝撃が、管本体33に吸収されて弱められるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、NC旋盤を用いた金属製品の加工により生じた金属屑や、鋳造用の鋳型に使用された鋳物砂等の粉粒体を輸送する粉粒体輸送管として用いられるベンド管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、この種の粉粒体輸送管は、湾曲されてなるベンド管の両端に直状配管が接続されて構成される。そして、この粉粒体輸送管においては、輸送される粉粒体が同輸送管の内周面へ衝突することによって輸送管自体が摩耗したり損傷したりする可能性がある。特に、NC旋盤を用いた金属製品の加工により生じた金属屑や、鋳造用の鋳型に使用された鋳物砂等の硬質な粉粒体を輸送する場合には、輸送管の摩耗や損傷は顕著なものとなる。こうした摩耗及び損傷は、輸送管の中でもベンド管において特に顕著なものとなる。なぜならば、直状配管内を直進してきた粉粒体が、ベンド管の内部において流れ方向を変換する際に同ベンド管の内周面(特に、曲がり部分の内周面)において集中的に衝突するからである。
【0003】
そこで、特許文献1に開示のベンド管においては、金属材料より形成されてなる管本体の外周側の少なくとも一部、つまり、この管本体の外側(曲がりの曲率半径が大きくなる側)の外周面全体に、鋼板よりなる当て板が溶接法により接合されている。ちなみに、この当て板は、管本体の外側の外周面全体に密着して沿うように曲げ成形されたものである。また、この特許文献1においては、管本体の外側に、上記当て板に代えて充填材(耐摩耗セメント)が充填されたベンド管も開示されている。より詳しくは、管本体の外側の外周面全体にわたって、断面コ字状をなすチャンネル部材が固着されており、このチャンネル部材と管本体とで画成された空間に充填材が充填されている。
【0004】
このように、当て板又は充填材を管本体の外側に設けることにより、管内を流れる粉粒体が衝突して流れ方向を変換する曲がり部分、及びその周辺の領域の厚みが、当て板又は充填材の厚み分だけ実質的に増大する。その結果、管本体の摩耗寿命が高められるのである。
【特許文献1】特開2005−60021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のベンド管においては、粉粒体の集中的な衝突により摩耗が生じやすい所定箇所の厚みを増大させることで、摩耗寿命はたしかに高められる。しかしながら、上記従来のベンド管をさらに長期にわたって使用する場合には、金属材料より形成された管本体にあっては、その摩耗及び損傷は着実に進行して避けられないものとなる。ひいては、管本体に次いで当て板(充填材)にまでも、ピンホール等の損傷が生じる可能性がある。すなわち、上記従来のベンド管によれば、摩耗寿命は高められるものの、ベンド管をさらに長期にわたって使用すると何れかの時点で摩耗寿命に達し、管本体及び当て板(充填材)においてベンド管の内外を連通するようなピンホールが生じる可能性がある。仮に、管本体及び当て板(充填材)にこうしたピンホールが生じた場合、輸送管内に供給された気体により粉粒体を圧送する圧送方式にあっては、輸送管内の粉粒体がピンホールを通じて外部に漏れる可能性がある。また、輸送管内を負圧にすることで粉粒体を搬送する吸引方式にあっては、輸送管内に異物が混入する可能性がある。したがって、上記従来のベンド管においては、硬質な粉粒体を輸送する場合、ピンホールの生成によって寿命が短縮されるといった問題が生じていた。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、粉粒体の衝突によるピンホールの発生を抑制し、長寿命化を図ることができるベンド管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のベンド管は、輸送気体により粉粒体が輸送される輸送管のうち、前記粉粒体の輸送方向を変更する所定部位に配設されるベンド管であって、管内域を前記粉粒体が流通する管本体を有してなり、同管本体は高分子材料により形成されてなることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、内域を粉粒体が流通する管本体を高分子材料により形成している。このため、内域を流通する粉粒体の衝突により生じる衝撃が好適に吸収されるようになる。従って、本発明においては、管本体が金属材料により形成されているベンド管と比較して、粉粒体の衝突により生じる衝撃が緩和されることから、同ベンド管の摩耗や損傷を極力抑制することができる。ひいては、粉粒体の衝突によるピンホール等の発生が抑制されることで、ベンド管の長寿命化を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明のベンド管は、請求項1に記載の発明において、前記管本体は、曲率中心に近い内周側と曲率中心から離れた外周側とでは、外周側の方が肉厚に形成されていることを要旨とする。
【0010】
通常、ベンド管の内壁面に粉粒体が衝突する際の衝撃は、同ベンド管の内周側よりも外周側において大きくなる傾向がある。そこで、本発明においては、管本体の外周側の厚みを、内周側の厚みよりも大きく形成している。すなわち、ベンド管において粉粒体の衝突による衝撃が大きくなる箇所ほど肉厚に形成しているのである。これにより、管本体の外周側における衝撃吸収性が特に向上することとなる。その結果、ベンド管のうち損傷及び摩耗が著しくなる箇所(外周側)における、ピンホール等の発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明のベンド管は、請求項2に記載の発明において、前記管本体の外周側のうち前記曲率中心から最も離れた箇所を外周点としたとき、同外周点と前記管本体の中心とを通る仮想線を基準として周方向に±60°の範囲内における管本体の厚みは、同管本体の内周側における厚みの最小値に対して2〜10倍であることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、管本体の外周側のなかでも粉粒体が最も衝突しやすい所定箇所(外周点と管本体の中心とを通る仮想線を基準として周方向に±60°の範囲内)、すなわち、粉粒体の衝突による衝撃が特に大きくなる所定箇所の厚みを、同管本体の内周側における厚みの最小値に対して2〜10倍の範囲内に設定している。これにより、管本体の外周側のなかでも、上記衝撃が特に大きくなる所定箇所における衝撃吸収性が充分に確保されることとなる。その結果、ベンド管のうち損傷及び摩耗が著しくなる箇所(外周側)における、ピンホール等の発生をより一層効果的に抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明のベンド管は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記管本体の内周面及び外周面の少なくとも一方には、金属材料よりなる補助管が密着して設けられていることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、管本体を成形するに際して成形材料を充填するときの成形型として用いた補助管が、管本体の内周面及び外周面の少なくとも一方に密着されてなるベンド管が得られる。すなわち、本発明においては、成形材料を充填するときの成形型として用いた補助管がそのまま残ることとなり、同補助管を離型する作業が省略されるのである。これにより、製造工程の簡略が図られる。
【0015】
また、例えば、管本体の外周面に補助管が密着されたベンド管においては、管本体が外側から補助管によって保護される。すなわち、例えば、ベンド管を搬送したり、同ベンド管を所定箇所に配設したりする際に、管本体に対して外部から加わる種々の衝撃が補助管を介して弱められる。その結果、ベンド管を搬送したり、同ベンド管を所定箇所に配設したりする際に、管本体が損傷を受けることがほとんどない。従って、ベンド管の使用時において、管本体の作用効果を充分に発揮することができる。
【0016】
また、管本体の内周面に補助管が密着されたベンド管においては、この補助管により、管本体が内側から補強される。従って、管本体の充分な形状維持性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のベンド管によれば、粉粒体の衝突によるピンホールの発生を抑制し、長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のベンド管を、例えば、NC旋盤を用いた金属製品の加工により生じた金属屑(粉粒体)を輸送気体に混合させて輸送する粉粒体輸送システムに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、粉粒体を輸送気体に混合させて輸送する粉粒体輸送システムの全体構成を概略的に示している。なお、本実施形態では、前記粉粒体として、NC旋盤11を用いた金属製品の加工により生じた金属屑(金属切粉)を輸送する輸送システムについて説明する。この種の金属屑には水分や油分等が付着している。金属屑は硬質であるとともに、形状が複雑で均一ではなく、例えば螺旋状に渦巻いているものが混じっていたり、長さが数ミリから数十ミリのものを含んだりしている。このような金属屑の種類としては、鉄、鋳鉄、鋳鋼、アルミニウム等が挙げられる。
【0020】
本実施形態の輸送システムは、金属屑が輸送される輸送管12を有している。輸送管12は、金属屑の輸送方向を変更する所定部位に配設されるベンド管31と、同ベンド管31の両端に接続される直状管41とを備えている。輸送管12の最上流側には、供給ブロワー14(気体流提供手段)が配設されている。この供給ブロワー14は、前記輸送気体(気体流)の供給源となっている。
【0021】
輸送管12の途中には、その内部に金属屑を供給する粉粒体供給装置17が配設されている。粉粒体供給装置17の上方には、NC旋盤11により生じた金属屑をホッパー22まで搬送するコンベア18の排出口18aがそれぞれ配置されている。また、輸送管12の最下流側には、輸送されてきた金属屑を処理するための処理手段としての分離装置19がそれぞれ配設されている。分離装置19は、内部にバグフィルター(図示略)を備えており、金属屑に付着した水分や油分等がこのバグフィルターを介して分離されて別途回収される。
【0022】
各分離装置19の下方には、貯蔵手段としての貯蔵タンク20がそれぞれ配設されている。この貯蔵タンク20には、前記分離装置19において水分や油分等が分離及び除去された金属屑が貯蔵される。
【0023】
次に、本実施形態のベンド管31について説明する。図2及び図3に示すように、ベンド管31は、断面円形状をなし、滑らかな湾曲状に形成されている。同ベンド管31は、内側から順に第1補助管32、管本体33、第2補助管34を有している。ここではまず、管本体33について説明する。
【0024】
管本体33は、高分子材料(合成樹脂、ゴム類等)により形成されている。この高分子材料としては、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル系樹脂、ABS系樹脂等の合成樹脂や、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム等といったゴム類の他、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。本実施形態では、これらのなかでも、衝撃吸収性が特に優れているといった観点からポリウレタンが好ましい。
【0025】
管本体33は、JIS K 6253(ISO 7619)に準拠したデュロメータタイプAで測定した硬度(デュロメータA硬度)が70〜90であることが好ましい。管本体33のデュロメータA硬度が70未満の場合には、十分な硬度の管本体33が得られず、種々の衝撃に対する耐久性が低下する可能性が高い。一方、管本体33のデュロメータA硬度が90を超える場合には、過剰な硬度が付与され、充分な衝撃吸収性が発揮されない可能性が高い。
【0026】
図2及び図3に示すように、前記管本体33は、その曲率中心Kに近い内周側33Aと曲率中心Kから離れた外周側33Bとでは、外周側33Bの方が肉厚に形成されている。より詳しくは、管本体33は、内周側33Aから外周側33Bに向かうに連れて徐々に肉厚に形成されている。さらに、図2に示すように、本実施形態においては、管本体33の外周側33Bのうち曲率中心Kから最も離れた箇所を外周点Gとしたとき、同外周点Gにおける管本体33の厚みTは、同管本体33の軸線J方向に沿って同一に形成されている。なお、前記「外周点Gにおける管本体33の厚みT」とは、前記外周点Gと管本体33の中心Pとを通る仮想線Qに沿う、管本体33の厚みを示す。
【0027】
また、図3に示すように、前記外周点Gと管本体33の中心Pとを通る仮想線Qを基準として周方向に±60°の範囲内における、管本体33の厚みは、同管本体33の内周側33Aにおける厚みの最小値tに対して2〜10倍であることが好ましい。ちなみに、「前記外周点Gと管本体の中心Pとを通る仮想線Qを基準として±60°の範囲内」は、管本体33の外周側33Bのなかでも金属屑が最も衝突しやすく、衝撃が特に大きくなる箇所を意味する。さらに、前記「管本体33の内周側33Aにおける厚みの最小値t」とは、管本体33の内周側33Aのうち曲率中心Kから最も近接する箇所を内周点Nとしたとき、この内周点Nと管本体の中心Pとを通る仮想線Xに沿う、管本体33の厚みを示す。
【0028】
上記所定の範囲内における管本体33の厚みが、管本体33の内周側33Aにおける厚みの最小値tに対して2倍未満の場合には、金属屑の衝突による衝撃を充分に吸収することができない可能性がある。一方、10倍を超える場合には、金属屑の衝突による衝撃の吸収性に関してはそれ以上の効果はみられず、成形樹脂の使用量が過剰なものとなり、経済的ではない。
【0029】
第1補助管32は、金属材料より形成されており、管本体33の内周面に密着して設けられている。この種の金属材料としては、例えば、鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、チタン、銅合金等が挙げられる。第1補助管32は、全体にわたって(軸線J方向にわたって)同一の厚みを有している。図2に示すように、第1補助管32の両端部は管本体33の各端部から露出されており、その第1補助管32の両端部にはそれぞれフランジ35が周設されている。そして、第1補助管32の各フランジ35に直状管41側のフランジ42が突き合わされた状態で、直状管41がベンド管31に接続されている。
【0030】
第2補助管34は、上記第1補助管32と同様の金属材料より形成されており、管本体33の外周面に密着して設けられている。第2補助管34は、全体にわたって(軸線J方向にわたって)同一の厚みを有している。
【0031】
本実施形態のベンド管31を製造する場合には、まず、第1補助管32の外周に第2補助管34が被覆された状態で、第1補助管32の外周面と第2補助管34の内周面との間に成形樹脂を充填する。このとき、第1補助管32及び第2補助管34は、それぞれ成形型として機能する。そして、第1補助管32の外周面と第2補助管34の内周面との間に充填された成形樹脂を所定条件で硬化させることにより、本実施形態における所望のベンド管31が得られる。
【0032】
次にベンド管31の作用について説明する。
上述したように本実施形態では、NC旋盤11を用いた金属製品の加工により生じた硬質の金属屑が、分離装置19へ向かって輸送管12内を輸送される。この場合、同金属屑が輸送管12の内壁面へ衝突することによって輸送管12自体が摩耗したり損傷したりする可能性がある。こうした摩耗及び損傷は、輸送管12の中でもベンド管31において特に顕著なものとなる。なぜならば、図4において矢印に示すように、直状管41内を直進してきた金属屑が、ベンド管31の内域において流れ方向を上方へ変換する際に同ベンド管31の内壁面(特に、ベンド管31の外周側内壁面)において集中的に衝突するからである。
【0033】
そこで、本実施形態では、管本体33を高分子材料により形成することで、ベンド管31の内壁面(第1補助管32)に対する金属屑の衝突による衝撃が、その外周に配設された管本体33により吸収される。しかしながら、こうした構成においても、ベンド管31を長期にわたって使用する場合には、その内壁面(第1補助管32)における損傷(ピンホール等の発生)は否めない。これに対し、本実施形態のベンド管31によれば、仮に第1補助管32に損傷(ピンホール)が生じたとしても、同第1補助管32の外周に配設された管本体33においては上述したように金属屑の衝突による衝撃が吸収されて弱められるようになる。これにより、金属屑の衝突による衝撃が第2補助管34にまで達することがほとんどなく、ベンド管31の内外を連通するようなピンホールの生成が好適に抑制される。
【0034】
また、本実施形態のベンド管31においては、管本体33の外周側33Bの厚みを、内周側33Aの厚みよりも大きく形成している。すなわち、ベンド管31の内域において金属屑の衝突による衝撃が大きくなる箇所(ベンド管31の外周側)ほど肉厚に形成されているのである。これにより、ベンド管31の外周側における衝撃吸収性が特に向上することとなり、金属屑の衝突による衝撃が確実に低減する。その結果、ベンド管31におけるピンホールの生成が効果的に抑制され、同ベンド管31の長寿命化を図ることができる。
【0035】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 本実施形態のベンド管31は、高分子材料よりなる管本体33を備えている。このため、ベンド管31の内域を流通する金属屑の衝突による衝撃が、管本体33によって吸収されて弱められるようになる。これにより、ベンド管31の内外を連通するようなピンホールの生成が抑制され、ベンド管31の長寿命化を図ることができる。
【0036】
(2) 本実施形態のベンド管31においては、管本体33の外周側33Bの厚みを、内周側33Aの厚みよりも大きく形成している。さらに、本実施形態においては、前記外周点Gと管本体33の中心Pとを通る仮想線Qを基準として周方向に±60°の範囲内における、管本体33の厚みが、同管本体33の内周側33Aにおける厚みの最小値tに対して2〜10倍であることが好ましい。すなわち、管本体33の外周側33Bのなかでも金属屑が最も衝突しやすく、衝撃が特に大きくなる箇所が肉厚に形成されているのである。これにより、ベンド管31の外周側における衝撃吸収性が特に向上し、金属屑の衝突による衝撃を確実に低減することができる。
【0037】
(3) 本実施形態のベンド管31は、成形材料を充填するときの成形型として用いた補助管32,34が管本体33の内外周に密着して構成されている。このため、補助管32,34を離型する作業が省略されており、その点において製造工程の簡略化を図ることができる。さらに、管本体33の内周面に設けられる第1補助管32により同管本体33の形状維持性を確保することができるとともに、管本体33の外周面に設けられる第2補助管34により同管本体33に対して外部から加わる種々の衝撃を緩和することが可能となる。
【0038】
(4) 本実施形態の管本体33は、JIS K 6253(ISO 7619)に準拠してタイプAデュロメータで測定した硬度が70〜90であることが好ましい。これによれば、金属屑が衝突する際の衝撃を容易且つ確実に吸収し得る硬度が管本体33に付与されることとなり、ひいてはベンド管31における損傷及び摩耗を好適に抑制することができる。
【0039】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図5(a)に示すように第2補助管34を省略してもよく、図5(b)に示すように第1補助管32を省略してもよい。また、第1補助管32及び第2補助管34の双方を省略してもよい。このように、第1補助管32のみを省略した場合、及び両補助管32,34の双方を省略した場合には、金属屑が、管本体33の内壁面に直接衝突するようになることから、その衝突に際して生じる騒音を低減することができる。
【0040】
・ 本実施形態では、管本体33の内周側33Aに対して外周側33Bの厚みを大きく形成したが、同管本体33の内周側33Aと外周側33Bとの厚みを同一に形成してもよい。すなわち、管本体33を周方向にわたって同じ厚みに形成してもよい。
【0041】
・ 本実施形態では、管本体33の外周側33Bの厚み(外周点Gにおける厚みT)を軸線J方向に沿って同一に形成したが、この管本体33の外周側33Bの厚みを軸線J方向に沿って適宜変更してもよい。例えば、図6に示すように、同厚みTが、管本体33の端部33Cよりも中央部分33D(湾曲部分)において大きくなるように形成してもよい。なお、ここでいう「管本体33の端部33C」とは、管本体33のうち軸線Jが直線をなす部位を意味する。また、「管本体33の中央部分33D(湾曲部分)」とは、管本体33のうち軸線Jが曲線をなす部位を意味する。このように構成した場合、ベンド管31のうち金属屑との衝突による衝撃が大きくなる箇所(管本体33の湾曲部分)において、管本体33の厚みが特に大きくなり、ベンド管31の長寿命化を効果的に図ることができる。また、管本体33の中央部分33Dにおいてのみ、内周側33Aに対して外周側33Bの厚みを大きくする構成を採用してもよい。この場合、管本体33の端部33Cに関しては、内周側33Aと外周側33Bとの厚みを同一に形成してもよい。
【0042】
・ 本実施形態では断面円形状を呈する補助管32,34を使用したが、これらの補助管32,34の形状はこれに限定されるものではない。例えば、断面楕円形状、断面四角形状等を呈する補助管32,34を採用してもよい。なお、補助管32,34が断面四角形状を呈する場合には、管本体33も断面四角形状に形成される。この場合においても本実施形態と同様、軸線J方向に沿って、管本体33の外周側33Bの厚みを内周側33Aの厚みよりも大きく形成することが好ましい。
【0043】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記管本体は、JIS K 6253(ISO 7619)に準拠してタイプAデュロメータで測定した硬度が70〜90であることを特徴とするベンド管。この構成によれば、粉粒体が衝突する際の衝撃を容易且つ確実に吸収し得る硬度が管本体に付与されることとなり、ベンド管における損傷及び摩耗を好適に抑制することができる。
【0044】
・ 前記管本体はポリウレタンより形成されてなることを特徴とするベンド管。この構成によれば、ベンド管に良好な衝撃吸収性が付与されることとなり、同ベンド管に対して加わる衝撃をより一層好適に吸収することができる。
【実施例】
【0045】
次に、試験例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
(試験例1及び比較例1)
ここでは、下記の試験例1及び比較例1で示すベンド管をそれぞれ同一条件で所定時間使用した後に、各例のベンド管の外周部を外方から目視し、以下の基準に従って同ベンド管の外周部に損傷(ピンホール)が生じたか否かの評価を行った。なお、試験例1においては、比較例1のベンド管の外周部に損傷(ピンホール)が生じた時間(20日間)をもって試験の終了とみなした。
【0046】
(試験例1)
管本体33がポリウレタンにより形成されてなる本実施形態のベンド管31を用い、1日当たり8時間で合計8tの金属屑を輸送速度40〜50m/sで輸送した。その結果、20日間経過後も損傷(ピンホール)はみられなかった。これは、高分子材料(ポリウレタン)により形成された管本体33において、金属屑の衝突による衝撃が吸収されて弱められるようになり、その結果、ベンド管31の内外を連通するようなピンホールの生成が抑制されたものと考えられる。
【0047】
(比較例1)
ここでは、高分子材料より形成された管本体33が省略されて全体が金属材料(鋼)よりなるとともに、本実施形態のベンド管31と略同一の厚み(略同一形状)を有するベンド管を用い、上記試験例1と同様の条件で金属屑の輸送を行った。その結果、20日間経過後に損傷(ピンホール)がみられた。これは、全体が金属材料(鋼)より形成されてなるベンド管31においては、金属屑の衝突による衝撃が弱められ難く、その結果、そうした衝撃によってピンホールが生成したものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態の粉粒体輸送システムを示す概略図。
【図2】本実施形態のベンド管を示す側断面図。
【図3】図2における2−2線断面図。
【図4】ベンド管に対する粉粒体の衝突を示す概念図。
【図5】(a)及び(b)は、別例のベンド管を示す平断面図。
【図6】別例のベンド管を示す側断面図。
【符号の説明】
【0049】
12…輸送管、31…ベンド管、33…管本体、33A…管本体の内周側、33B…管本体の外周側、32…第1補助管、34…第2補助管、K…曲率中心、G…外周点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送気体により粉粒体が輸送される輸送管のうち、前記粉粒体の輸送方向を変更する所定部位に配設されるベンド管であって、
管内域を前記粉粒体が流通する管本体を有してなり、
同管本体は高分子材料により形成されてなることを特徴とするベンド管。
【請求項2】
前記管本体は、曲率中心に近い内周側と曲率中心から離れた外周側とでは、外周側の方が肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベンド管。
【請求項3】
前記管本体の外周側のうち前記曲率中心から最も離れた箇所を外周点としたとき、同外周点と前記管本体の中心とを通る仮想線を基準として周方向に±60°の範囲内における管本体の厚みは、同管本体の内周側における厚みの最小値に対して2〜10倍であることを特徴とする請求項2に記載のベンド管。
【請求項4】
前記管本体の内周面及び外周面の少なくとも一方には、金属材料よりなる補助管が密着して設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のベンド管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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