説明

ベーストレッド用ゴム組成物

【課題】補強性の高いシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンをブタジエンゴムに微分散させることによって、補強力を向上させ、従来から用いられている補強剤の配合量を減量し、ヒステリシスの低減とゴムの破断伸びを向上したベーストレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】平均1次粒子径が20〜100nmであるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンが分散されたブタジエンゴムをゴム成分中に30〜70重量%含むゴム成分100重量部に対して、チッ素吸着比表面積が35〜85m2/gのカーボンブラックを25〜45重量部含有するベーストレッド用ゴム組成物に関である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーストレッド用ゴム組成物および該ゴム組成物をベーストレッドに用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年石油価格の上昇とともにタイヤの低燃費化技術が注目されており、種々の取り組みがなされている。一般的には、ポリマーを拘束している補強剤を減量させることによってゴムのヒステリシスを低減させ(粘弾性のtanδが小さくなる)、タイヤの低燃費化を行っているが、補強性も低下する、硬さが低下するという問題があった。また、架橋剤を増量させてヒステリシスを低減させる手法もあるが、ゴムが脆くなる傾向があり、走行によって亀裂が成長しやすくなるという問題があった。
【0003】
これらの問題点を解決するためには、補強剤を減量しても補強性が低下しないようにポリマー自身の補強性を向上させることが必要となってくる。特許文献1には、ブタジエンゴムを補強性の高いシンジオタクチック構造を有するブタジエンゴムに変更することが記載されている。しかしながら、シンジオタクチック構造を有するブタジエンゴムを用いた場合、目標とする低燃費性と破断伸び・硬さのバランスを両立させることは困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−124503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、補強性の高いシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンをブタジエンゴムに微分散させることによって、補強力を向上させ、従来から用いられている補強剤の配合量を減量し、ヒステリシスの低減とゴムの破断伸びを向上したベーストレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平均1次粒子径が20〜100nmであるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンが分散されたブタジエンゴムをゴム成分中に30〜70重量%含むゴム成分100重量部に対して、チッ素吸着比表面積が35〜85m2/gのカーボンブラックを30〜45重量部含有するベーストレッド用ゴム組成物に関する。
【0007】
JIS A硬さが60〜70、70℃歪み2%における粘弾性の正接損失が0.08以下および引張り試験における破断伸びが350%以上であることが好ましい。
【0008】
さらに、天然ゴムをゴム成分中に30重量%以上含有することが好ましい。
【0009】
さらに、ワックスを含有することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記のベーストレッド用ゴム組成物からなるベーストレッドを有するタイヤにも関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平均1次粒子径の小さいシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンをブタジエンゴムに微分散させることにより、補強力を向上させることができる。そのため、従来から用いられている補強剤の配合量を減量させることができ、ヒステリシスの低減とゴムの破断伸びを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンが分散されたブタジエンゴム(SPB含有BR)を含有するベーストレッド用ゴム組成物に関する。
【0013】
SPB含有BRにおいて、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(SPB)は、マトリックスとなるBR中に充分に微分散されており、BR中におけるSPBの平均1次粒子径は非常に小さいものである。
【0014】
SPB含有BRにおいて、BR中におけるSPBの平均1次粒子径は100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下である。SPBの平均1次粒子径が100nmをこえると、例えば、平均1次粒子径が250nmであるVCR412やVCR617のように、BR中にSPBを含有することによる物性の充分な改善効果が得られない。また、BR中におけるSPBの平均1次粒子径は、20nm以上であり、好ましくは25nm以上、より好ましくは30nm以上である。SPBの平均1次粒子径が20nm未満であると、製造することが困難であり、コストが多大となり現実的でない。なお、BR中におけるSPBの平均1次粒子径は、透過型電子顕微鏡写真の画像解析処理による絶対最大長の平均値として測定したものである。
【0015】
SPB含有BRの含有率は、ゴム成分中に30重量%以上であり、35重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。SPB含有BRの含有率が30重量%未満であると、充分な硬さが得られない傾向がある。また、SPB含有BRの含有率は、ゴム成分中に70重量%以下であり、65重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。SPB含有BRの含有率が70重量%をこえると、充分な伸びが得られない傾向がある。
【0016】
SPB含有BR中におけるSPBの含有率(SPB非含有BRを併用している場合はそれも含める)は、7重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。含有率が7重量%未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、SPB含有BR中におけるSPBの含有率は30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、15重量%以下がさらに好ましい。含有率が30重量%をこえると、加工性が悪くなる傾向がある。なお、SPB含有BR中におけるSPBの含有率は、沸騰n−ヘキサン不溶物量により示される。
【0017】
SPB含有BR中におけるSPBは、常温からタイヤ使用温度領域での補強性を与えるという観点より、結晶であることが好ましい。
【0018】
前記条件を満たすSPB含有BRの製造方法としては、とくに限定されないが、特開2005−247899号公報に開示されている製造方法などで製造することができる。
【0019】
さらに、ゴム成分として天然ゴム(以下、「NR」ということもある)を併用することが好ましい。
【0020】
ゴム成分中のNRの含有率は、30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。含有率が30重量%未満では、破断伸びが低下する傾向がある。また、NRの含有率は、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。含有率が70重量%をこえると、耐亀裂成長性の効果が充分に得られない、充分な硬さが得られない傾向がある。
【0021】
ゴム成分としては、前記したシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを含むブタジエンゴム、NRのほかに、ゴム成分として、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを含まない一般的なブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなどをともに配合してもよい。
【0022】
また、前記ゴム成分とともに、補強用充填剤としてカーボンブラックを含有することが好ましい。
【0023】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(以下、N2SAともいう)は、35m2/g以上であり、40m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましい。N2SAが35m2/g未満では、硬さ、破断伸びが低下する傾向がある。また、N2SAは、85m2/g以下であり、80m2/g以下が好ましく、75m2/gがより好ましい。N2SAが85m2/gをこえると、低発熱性を損ない、タイヤの損傷に対して不利になるなどの傾向がある。
【0024】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100重量部に対して25重量部以上であり、30重量部以上が好ましく、35重量部以上がより好ましい。カーボンブラックの含有量が25重量部未満では、硬さおよび破断伸びが低下する傾向がある。また、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100重量部に対して45重量部以下である。カーボンブラックの含有量が45重量部をこえると、ベーストレッドとして必要な低発熱性が得られにくい傾向がある。
【0025】
本発明においては、ゴム成分中に、前記SPB含有BRと特定のチッ素吸着比表面積を有するカーボンブラックを含有することにより、低発熱性と耐破壊特性の両立という優れた効果が得られる。
【0026】
また、補強用充填剤として、さらにシリカを併用してもよい。シリカとしては、VN3のような一般的なシリカを用いることができ、とくに制限はない。
【0027】
シリカの含有量は、ゴム成分100重量部に対して10〜50重量部が好ましい。含有量が10重量部未満では、シリカの配合効果が充分に得られない傾向がある。
【0028】
低燃費タイヤではトレッド部におけるキャップとベースの比率においてベーストレッドの割合を多く配合して低燃費性を向上させる場合が多く、その場合キャップトレッドパターン溝底にはキャップトレッドがほとんど残らない。よって、溝底の耐オゾンクラック性を保持させるためにベーストレッド用ゴム組成物中にさらにワックスを配合することが好ましい。ワックスの含有量は、耐オゾンクラック性が良好であるという点からゴム成分100重量部に対して0.5重量部以上が好ましく、0.8重量部以上がより好ましく、1.0重量部以上がさらに好ましい。また、ワックスの含有量は、耐ワックスブルーミング性が良好であるという点からゴム成分100重量部に対して5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましく、2重量部以下がさらに好ましい。ワックスの具体例としては、日本精鑞(株)製のオゾエースワックス、大内新興化学工業(株)製のサンノックなどがあげられる。
【0029】
ベーストレッド用ゴム組成物には、前記のほかに、ゴム工業において一般的に使用されるステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを配合することができる。
【0030】
ベーストレッド用ゴム組成物の硬さは、JIS−K6253の「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準拠する、スプリング式タイプAにより測定することができる。ベーストレッド用ゴム組成物の硬さは、60以上が好ましく、63以上がより好ましい。ベーストレッド用ゴム組成物の硬さが60未満であると、操縦安定性が不安定になる傾向がある。また、ベーストレッド用ゴム組成物の硬さは、70以下が好ましく、67以下がより好ましい。ベーストレッド用ゴム組成物の硬さが70をこえると、破断伸びが低下する傾向がある。
【0031】
ベーストレッド用ゴム組成物の引張伸びは、JIS K6521に準拠することにより測定することができる。ベーストレッド用ゴム組成物の引張伸びは、350%以上が好ましく、380%以上がより好ましく、400%以上がさらに好ましい。ベーストレッド用ゴム組成物の引張伸びが350%未満であると、タイヤ溝底のクラックが成長しやすくなる傾向がある。なお、ベーストレッド用ゴム組成物の引張伸びの上限は特に限定されないが、600%以下が好ましく、570%以下がより好ましく、550%以下がさらに好ましい。ベーストレッド用ゴム組成物の引張伸びが600%をこえると、目的とする低発熱性を得ることが困難となる。
【0032】
ベーストレッド用ゴム組成物の70℃歪み2%における粘弾性の正接損失(tanδ)は、0.08以下が好ましい。tanδが0.08をこえると、低燃費性を損なう傾向がある。なお、tanδの下限は特に限定されないが、0.03以上が好ましく、0.04以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。tanδが0.03未満であると、目的とする破断伸びを達成することが難しくなる。
【0033】
本発明のベーストレッド用ゴム組成物は、通常の方法によりタイヤの製造に使用される。
【0034】
本発明のタイヤにおけるタイヤトレッドは、キャップトレッドおよび前記ベーストレッド用ゴム組成物を用いたベーストレッドの二層構造を有することが好ましい。本発明のタイヤが、前記ベーストレッド用ゴム組成物を用いて製造されるベーストレッドを含むタイヤトレッドの構造を有することで、操縦安定性を低下させることなく、転がり抵抗を低減させることができる。
【0035】
本発明のタイヤは、前記タイヤトレッドの全厚に占めるベーストレッドの厚さは、17〜50%であることが好ましい。
【0036】
キャップトレッドは、キャップトレッド用ゴム組成物を用いて製造される。
【0037】
本発明のタイヤにおいて、タイヤトレッドを構成するキャップトレッドに用いられるキャップトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、カーボンブラックおよびオイルを含むことができる。
【0038】
キャップトレッド用ゴム組成物におけるゴム成分、カーボンブラックは、ベーストレッド用ゴム組成物におけるゴム成分およびカーボンブラックと同等以上のものを使用することができる。
【0039】
本発明のタイヤにおいて、キャップトレッド用ゴム組成物には、シリカとともにシランカップリング剤を併用することが好ましい。
【0040】
キャップトレッド用ゴム組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、シリカ100重量部に対して4重量部以上が好ましく、6重量部以上がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が4重量部未満では、シランカップリング剤を含有することによるシリカの疎水化への寄与が低下し、粘度の低減効果が不充分である傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は16重量部以下が好ましく、14重量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が16重量部をこえると、シランカップリング剤を含有することによる改善効果がみられず、コストが増大してしまう傾向がある。
【0041】
キャップトレッド用ゴム組成物におけるカーボンブラックのN2SAは、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましい。カーボンブラックのN2SAが50m2/g未満では、カーボンブラックを含有することによる補強効果が低下し、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、カーボンブラックのN2SAは280m2/g以下が好ましく、250m2/g以下がより好ましい。カーボンブラックのN2SAが280m2/gをこえると、加工性が悪化し、さらに、分散不良を引き起こし、耐久性が悪化する傾向がある。
【0042】
本発明のタイヤにおいて、キャップトレッド用ゴム組成物には、オイルを配合することが好ましい。
【0043】
キャップトレッド用ゴム組成物におけるオイルとしては、たとえば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどのプロセスオイル、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などの植物油などがあげられる。
【0044】
オイルの含有量は、キャップトレッド用ゴム組成物に含まれるゴム成分100重量部に対して20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましい。オイルの含有量が20重量部をこえると、熱老化によりオイルが移行した結果、ゴムの硬度が増大する傾向がある。
【0045】
本発明のタイヤにおいて、タイヤトレッドを構成するキャップトレッドに用いられるキャップトレッド用ゴム組成物は、前記ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、カーボンブラックおよびオイル以外にも、ゴム工業で一般的に使用されるワックス、各種老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄などの加硫剤、各種加硫促進剤などを適宜含有することができる。
【0046】
本発明のタイヤにおいて、キャップトレッド用ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、たとえば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練することが好ましい。
【0047】
本発明のタイヤは、通常の方法により製造される。すなわち、前記ベーストレッド用ゴム組成物およびキャップトレッド用ゴム組成物を、それぞれ通常のタイヤトレッドの加工方法、たとえば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混練りする。得られたベーストレッド用ゴム組成物およびキャップトレッド用ゴム組成物を、ベーストレッドおよびキャップトレッドからなる2層のトレッドの形状に押し出し加工し、タイヤ成形機上で、他の部材とともに通常の方法により貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して本発明のタイヤを得る。
【0048】
本発明のタイヤは、構成するタイヤトレッドにおいて、タイヤトレッドの全厚に占めるベーストレッドの厚さ(ベース比率)は17%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。ベース比率が17%未満では、転がり抵抗を低減させることができない。また、タイヤトレッドの全厚に占めるベーストレッドの厚さ(ベース比率)は50%以下、好ましくは40%以下である。ベース比率が50%をこえると、操縦安定性が悪化する。
【0049】
また、本発明のタイヤにおいて、タイヤトレッドの全厚に占めるキャップトレッドの厚さ(キャップ比率)は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。また、タイヤトレッドの全厚に占めるキャップトレッドの厚さ(キャップ比率)は83%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0050】
本発明のベーストレッド用ゴム組成物を用いたベーストレッドを有するタイヤとしては、バス、トラックなどの重荷重用タイヤ、ライトトラックタイヤ、ランフラットタイヤ、乗用車用タイヤなどが好適である。
【実施例】
【0051】
実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0052】
以下に、本発明において使用した各種配合剤を示す。
天然ゴム:TSR20
BR VCR412:宇部興産(株)製(分散させたシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶を有するBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン量:12重量%、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶の平均1次粒子径:250nm)
BR VCR617:宇部興産(株)製(分散させたシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶を有するBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン量:17重量%、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶の平均1次粒子径:250nm)
BR VCR試作品A:宇部興産(株)製の試作品(分散させたシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶を有するBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン量:12重量%、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶の平均1次粒子径:43nm)
BR VCR試作品B:宇部興産(株)製の試作品(分散させたシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶を有するBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン量:12重量%、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶の平均1次粒子径:90nm)
BR VCR試作品C:宇部興産(株)製の試作品(分散させたシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶を有するBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン量:12重量%、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶の平均1次粒子径:110nm)
BR VCR試作品D:宇部興産(株)製の試作品(分散させたシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶を有するBR、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン量:12重量%、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶の平均1次粒子径:150nm)
カーボンN351:東海カーボン(株)製のシーストNH(N2SA:74m2/g)
カーボンN339:キャボットジャパン(株)製のショウブラック(N339(N2SA:88m2/g)
HAFカーボン:三菱化学(株)製のダイアブラックHA(N2SA:74m2/g)
酸化亜鉛:三井金属(株)製
ステアリン酸:日本油脂(株)製
老化防止剤:フレキシス社製の6C
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエースワックス
不溶性硫黄:四国化成工業(株)製のミュークロンOT20
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のTBBS
【0053】
なお、VCR412、VCR617およびVCR試作品A〜Dの平均1次粒子径は、透過型電子顕微鏡写真の画像解析処理による絶対最大長の平均値として測定した。
【0054】
また、カーボンN351、カーボンN339およびHAFカーボンのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K 6217−2の窒素吸着法の比表面積の求め方にしたがって測定した。
【0055】
<VCR試作品Aの製造方法>
1,3−ブタジエン32重量%濃度かつシス−2−ブテンを主成分として含有するC4留分を68重量%濃度で含み、所定量の水分を溶解した混合物(水分:2.09mmol/L)を毎時12.5L(二硫化炭素20mg/Lを含有)で20℃に保持された容量2Lの撹拌機付きステンレス製熟成槽に供給すると共にジエチルアルミニウムクロライド(10重量%のn−ヘキサン溶液、3.13mmol/L)を供給し、この反応槽溶液におけるジエチルアルミニウムクロライド/水モル比を1.5に調製する。得られた熟成液を40℃に保持された容量5Lの撹拌機付きステンレス製シス重合槽に供給する。このシス重合槽にはコバルトオクトエート(コバルトオクトエート0.0117mmol/L、n−ヘキサン溶液)と分子量調節剤1,2−ブタジエン(1,2−ブタジエン8.2mmol/L、1.535mol/Lのn−ヘキサン溶液)が供給される。得られたシス重合液を内容5Lのリボン型撹拌機付きステンレス製1,2−ポリブタジエン重合槽に供給し、35℃で10時間連続重合した。この1,2−ポリブタジエン重合槽にはトリエチルアルミニウム(10重量%のn−ヘキサン溶液、4.09mmol/L)を連続的に供給した。得られた重合液を撹拌機付き混合槽に供給し、これに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールをゴム100重量部に対して1重量部加え、さらに、メタノールを少量加え、重合を停止した後、未反応1,3−ブタジエンおよびC4留分を蒸発除去し、常温で真空乾燥してVCR試作品8.3kgを得た。
【0056】
<VCR試作品B〜Dの製造方法>
(VCR試作品Bの製造方法)
VCR試作品Aの製造方法において、混合物におけるC4留分を58重量%濃度とし、かつシクロヘキサンを10重量%濃度に変更した以外は、VCR試作品Aの製造方法と同様にして製造した。
【0057】
(VCR試作品Cの製造方法)
VCR試作品Aの製造方法において、混合物におけるC4留分を50重量%濃度とし、かつシクロヘキサンを18重量%濃度に変更した以外は、VCR試作品Aの製造方法と同様にして製造した。
【0058】
(VCR試作品Dの製造方法)
VCR試作品Aの製造方法において、混合物におけるC4留分を38重量%濃度とし、かつシクロヘキサンを30重量%濃度に変更した以外は、VCR試作品Aの製造方法と同様にして製造した。
【0059】
実施例1〜4および比較例1〜16
表1および2の工程(1)の配合内容にしたがい、BP型バンバリーミキサーにて、150℃の条件下で3分間混練りし、さらに、硫黄および加硫促進剤NSを、表1の工程(2)の配合内容にしたがって配合し、オープンロールで50℃の条件下で5分間混練りし、未加硫ゴムシートを作製した。
【0060】
さらに、未加硫ゴムシートを150℃の条件下で30分間プレス加硫し、実施例1〜5および比較例1〜12のJIS 6251 引張り試験用2mmシート厚の加硫ゴムシートを作製した。得られたゴムシートの硬さ、破断伸びおよび70℃tanδを以下の測定方法により評価した。
【0061】
<硬さ>
JIS−K6253「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じて、スプリング式タイプAにて硬度を測定した。
【0062】
<破断伸び>
JIS K6521に準拠することにより、引張破断伸びを測定した。
【0063】
<70℃tanδ>
引張り試験用2mmシート厚の加硫ゴムシートを幅4mm、長さ40mmに打抜き、表面をバフして酸化被膜を除去したのちに、(株)岩本製作所製のVES−F−3を用いて、周波数10Hz、初期歪み10%、動振幅±1%で70℃における損失正接(tanδ)を測定した。このtanδ値が小さいほど、低燃費性が優れたゴムと判断した。
【0064】
各評価結果を表1および2に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均1次粒子径が20〜100nmであるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンが分散されたブタジエンゴムをゴム成分中に30〜70重量%含むゴム成分100重量部に対して、チッ素吸着比表面積が35〜85m2/gのカーボンブラックを25〜45重量部含有するベーストレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
JIS A硬さが60〜70、70℃歪み2%における粘弾性の正接損失が0.08以下および引張り試験における破断伸びが350%以上である請求項1記載のベーストレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
さらに、天然ゴムをゴム成分中に30重量%以上含有する請求項1または2記載のベーストレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
さらに、ワックスを含有する請求項1、2または3記載のベーストレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のベーストレッド用ゴム組成物からなるベーストレッドを有するタイヤ。

【公開番号】特開2009−127001(P2009−127001A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305919(P2007−305919)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】