説明

ベースプレート

【課題】垂直材下端部の位置決めが容易で、作業性・生産性及び取付精度の向上を図ることができるベースプレートを提供する。
【解決手段】水平材12上に立設されるリップ溝形鋼よりなる垂直材13の下端部に溶接によって固着されるベースプレートであって、水平材12上から突出するアンカーボルト23が挿通するボルト挿通孔22を有する基板部2と、垂直材13下端部の内周面に沿うように基板部上面2aから所定高さ立ち上がった立上壁部3と、立上壁部3の外周側の複数箇所で基板部2から立上壁部3よりも低く立ち上がっていて、垂直材13の下端部を立上壁部3に外嵌させた状態で垂直材下端面13oと基板部上面2aとをグルーブ溶接するための溶接隙間Sを設定する溶接隙間設定用台座部4,5とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば軽量鉄骨系プレハブ構造建物において、土台の水平材上に立設されるリップ溝形鋼よりなる垂直材の下端部に溶接によって固着されるベースプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7の(a) は、軽量鉄骨系プレハブ構造建物における耐力壁構成枠18を示す。この耐力壁構成枠18は、リップ溝形鋼からなる左右両縦枠材(垂直材)13,13の上端部どうしを上横枠材14で連結し、中間部どうしを中横枠材15で連結し、下端部どうしを下横枠材16で連結すると共に、両縦枠材(垂直材)13,13間に一対の筋交い17,17をX状に配設してなるもので、同図(b) に示すように左右各縦枠材(垂直材)13の下端部に取り付けたベースプレート21のボルト挿通孔22(図8の(a) 〜(c) 参照)に、土台の水平材12上面に突設されたアンカーボルト23(図8の(c) 参照)を挿通して、ナット24(図8の(c) 参照)で締め付けることにより、水平材12上に立設することができる。
【0003】
上記耐力壁構成枠27の縦枠材(垂直材)13の下端部に取り付けられる従来のベースプレート21は、図8の(a) 〜(c) に示すように、矩形厚板状に形成した鋼製のプレート本体20からなるもので、このプレート本体20の所要部にアンカーボルト挿通孔22を上下に貫通するように設け、上面側の3つの稜線に沿って溶接開先用の斜面25を形成している。縦枠材(垂直材)13は(a) 〜(c) に示すようなリップ溝形鋼からなるもので、この縦枠材13の下端部にベースプレート21を取り付けるには、プレート本体20上に縦枠材13の下端面を載置した状態で、縦枠材13の下端面とベースプレート21の溶接開先用斜面25との間に形成される溶接開先に沿ってグルーブ溶接を行うことにより(その溶接部をWで示す)、ベースプレート21を縦枠材13の下端部に固着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のベースプレート21では、このプレート21を垂直材である縦枠材13の下端部に取り付けるのに、図8の(b) に示すようにプレート本体20上面の所定位置に縦枠材13下端面を載置した状態で、ベースプレート21を縦枠材13下端面との間でグルーブ溶接するわけであるが、プレート本体20上面の所定位置に対する縦枠材13下端部の位置決めが非常に困難であることから、これが作業性・生産性を低下させ、ベースプレートの取付精度を悪くする原因となっていた。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、垂直材下端部の位置決めが容易で、作業性・生産性及び溶接強度と取付精度の向上を図ることができるベースプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、水平材12上に立設されるリップ溝形鋼よりなる垂直材13の下端部に溶接によって固着されるベースプレートであって、アンカーボルト挿通孔22を有する基板部2と、垂直材13下端部の内周面に沿うように基板部上面2aから所定高さ立ち上がった立上壁部3と、立上壁部3の外周側の複数箇所で基板部2から立上壁部3よりも低く立ち上がっていて、垂直材13の下端部を立上壁部3に外嵌させた状態で垂直材下端面13oと基板部上面2aとをグルーブ溶接するための溶接隙間Sを設定する溶接隙間設定用台座部4,5とからなることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1に記載のベースプレートにおいて、立上壁部3は、これに外嵌される垂直材13の下端部内周に沿って連続的又は断続的に延びるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1又は2に記載のベースプレートにおいて、立上壁部3は、平面視略コ字形に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4は、請求項1〜3の何れかに記載のベースプレートにおいて、垂直材13の下端部内周に沿って断続的に延びるように形成された立上壁部3は、立上壁部3の所要箇所を横断して基板部2の外へ抜ける溝部6を少なくとも1つ形成したものからなり、その溝部6の底面6aは、基板部2の上面2aと面一であるか、又は基板部2の上面2aより低くなるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5は、請求項1〜4の何れかに記載のベースプレートにおいて、基板部2のアンカーボルト挿通孔22は、その上部側から下部側に亙って漸次径大となるテーパに形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6は、請求項1〜5の何れかに記載のベースプレートにおいて、立上壁部3の立ち上がり高さh1は、リップ溝形鋼よりなる垂直材13の板厚tの約2倍であることを特徴とする。
【0012】
請求項7は、請求項1〜6の何れかに記載のベースプレートにおいて、溶接隙間設定用台座部4,5の立ち上がり高さh2は、リップ溝形鋼よりなる垂直材13の板厚tの約1〜1.5倍であることを特徴とする。
【0013】
請求項8は、請求項1〜7の何れかに記載のベースプレートにおいて、立上壁部3は、外側面の上端部3aが内向き傾斜面状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9は、請求項1〜8の何れかに記載のベースプレートにおいて、ベースプレート1は、溶接構造用鋳鋼によって一体成形されたものからなることを特徴とする。
【0015】
請求項10は、請求項1〜9の何れかに記載のベースプレートにおいて、ベースプレート1全体に溶融亜鉛メッキ又は電気亜鉛メッキが施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明のベースプレート1は、アンカーボルト挿通孔22を有する基板部2と、垂直材13の下端部内周面に沿うように基板部上面2aから所定高さ立ち上がった立上壁部3と、立上壁部3の外周側の複数箇所で基板部2から立上壁部3よりも低く立ち上がって、垂直材13の下端部を立上壁部3に外嵌させた状態で垂直材下端面13oと基板部上面2aとをグルーブ溶接するための溶接隙間Sを設定する溶接隙間設定用台座部4,5とからなるため、ベースプレート1を垂直材13の下端部に溶接するにあたって、ベースプレート1を固定した状態で、垂直材13の下端部を立上壁部3に外嵌させて、垂直材下端面13oを溶接隙間設定用台座部4,5上に載せるだけで、垂直材13の下端部を、ベースプレート1に対する溶接位置に瞬時に位置決めすることができる。この溶接位置において、垂直材13の下端部は、その内周面側がベースプレート1の立上壁部3によって支持され、この立上壁部3により溶接用の裏当て材が形成されると共に、垂直材13の下端面13oとベースプレート1の基板部上面2aとの間に溶接隙間Sが形成されるから、垂直材下端面13oと基板部上面2aとの溶接隙間Sにグルーブ溶接を行うことにより、垂直材13の下端部とベースプレート1の立上壁部3と溶接隙間設定用台座部4,5と基板部2とを一体に接合させて、ベースプレート1を垂直材13の下端部に的確にして且つ強固に固着することができる。従って、この発明のベースプレート1によれば、垂直材13の下端部の位置決めが容易で、垂直材13下端部との安定したのグルーブ溶接が可能となって、作業性・生産性及び溶接強度と取付精度の著しい向上が図られる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、立上壁部3は、垂直材13の下端部内周に沿って連続的に延びるように形成してもよいし、断続的に延びるように形成してもよく、そして立上壁部3の平面視形状は、垂直材13の下端部内周面を支持するようにその内周に沿って延びる形状であれば、平面視コ字形、平面視矩形枠状等どの様な形状でもよい。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、、立上壁部3は、好ましくは平面視が略コ字形に形成するのがよい。即ち、立上壁部3は、例えば四周壁を備えた平面視矩形枠状に形成することもできるが、図2の(a) に示すように、垂直材13のウエッブ部13aに対応する部分と、両フランジ部13b,13bに対応する部分とにより略コ字形に形成すれば、構造が簡素であるため、製作が容易で、コストも低減できる。
【0019】
また、平面視略コ字形の立上壁部3とした場合、垂直材13のウエッブ部13aと両フランジ部13b,13bとの夫々のコーナー部に対応する部分を切除して、立上壁部3を横断するように基板部2の外へ抜ける溝部6を形成した断続的なコ字形とすれば、立上壁部3に対する垂直材13下端部の外嵌が容易となる。つまり、垂直材13としてのリップ溝形鋼は、ウエッブ部13aとフランジ部13bとのコーナー部がアール状であり、しかもそのアールには製作誤差によるバラツキがあるため、立上壁部3が連続形状のコ字形であれば、立上壁部3側のコーナー部に対する垂直材13側コーナー部の嵌め合いが悪く、嵌め込み作業が困難となる。
【0020】
請求項4に係る発明のように、垂直材13の周方向に沿って断続的に延びるように形成された立上壁部3が、立上壁部3の所要箇所を横断して基板部2の外へ抜ける溝部6を少なくとも1つ形成したものからなる場合は、例えば図7に示す耐力壁構成枠18の縦枠材として使用する垂直材13の下端にベースプレート1を取り付けて組み立てた後、枠18全体をメッキ処理又は電着塗装処理する時に、その溝部6からメッキ液又は電着塗装液をスムーズに排出させることができるから、ベースプレート1と垂直材13で囲まれた部分にメッキ液又は電着塗装液が残留せず、メッキ処理又は電着塗装処理が容易となる。またこの場合、溝部6の底面6aを基板部2の上面2aより低くなるように形成すれば、メッキ液又は電着塗装液の排出がより一層容易となる。また、立上壁部3を、垂直材13のウエッブ部13aと両フランジ部13b,13bとの夫々のコーナー部に対応する部分を切除して、立上壁部3を横断するように基板部2の外へ抜ける溝部6を形成した断続的なコ字形とした場合は、立上壁部3に対する垂直材13下端部の外嵌が容易となる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、基板部2のアンカーボルト挿通孔22をその上部側から下部側に亙って漸次径大となるテーパに形成することにより、アンカーボルト23を嵌め込んで挿通させるときに、その嵌め込みが容易となる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、立上壁部3の立ち上がり高さh1は、リップ溝形鋼よりなる垂直材13の板厚tの2〜3倍が好ましい。これは、立上壁部3が、垂直材13の下端部を外嵌させる時の位置決めガイドとして機能すると共に、垂直材下端面13oと基板部上面2aとを所定の溶接隙間Sにてグルーブ溶接する時の裏当て材として機能することから、立ち上がり高さh1が垂直材13の板厚tの2倍以下、例えば1倍〜1.5倍程度では位置決めガイドとして不十分となり、板厚t以下では裏当て材として機能しなくなり、また立ち上がり高さh1を垂直材13の板厚tの3倍以上にしても、位置決めガイドとしての機能及び裏当て材として機能はそれ程変わらないから、材料の無駄となり、製作コストが高くつくことになるからである。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、溶接隙間設定用台座部4,5の立ち上がり高さh2は、リップ溝形鋼よりなる垂直材13の板厚tの1〜1.5倍が好ましい。つまり、立ち上がり高さh2が垂直材13の板厚t以下では、グルーブ溶接するための溶接隙間Sが小さくなって、溶接不十分となり、また立ち上がり高さh2が垂直材13の板厚tの1.5倍以上に高くなると、溶接隙間Sが大きくなって、適正な溶接を行えないからである。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、立上壁部3は、外側面の上端部3aが内向き傾斜面状に形成されているから、この立上壁部3に垂直材13下端部を外嵌する時にその嵌め合わせが容易となる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、ベースプレート1を、溶接構造用鋳鋼によって一体成形される鋳物とすることによって、大量生産が可能で、コストの大幅な低廉化を図ることができると共に、垂直材13との溶接を容易且つ良好に行うことができる。。
【0026】
請求項10に係る発明によれば、ベースプレート1全体に溶融亜鉛メッキ又は電気亜鉛メッキが施されているため、錆の発生を防止し、ベースプレート1を長年月にわたって有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るベースプレートを示す斜視図である。
【図2】(a) は同ベースプレートの平面図、(b) は(a) のA−A線断面図である。
【図3】(a) は図2の(a) のB−B線断面図、(b) は図2の(a) のC−C線断面図、(c) は図2の(a) のD−D線断面図である。
【図4】(a) は垂直材の下端部にベースプレートを溶接した状態を示すもので、図2の(b) に対応する断面図、(b) は同溶接状態を示すもので、図3の(a) に対応する断面図である。
【図5】(a) は本発明の他の実施形態に係るベースプレートの平面図、(b) は(a) のE−E線断面図である。
【図6】(a) は更に他の実施形態に係るベースプレートの平面図、(b) は(a) のF−F線断面図である。
【図7】(a) は耐力壁構成枠の設置状態を示す正面図、(b) は(a) に示す耐力壁構成枠の下部を拡大して示す正面図である。
【図8】(a) は図7に示す耐力壁構成枠の水平材下端部にベースプレートが溶接されている状態の斜視図、(b) は水平材の下端部に取り付けられるベースプレートの平面図、(c) は(a) の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1〜図3に示されるベースプレート1は、図7に示すような水平材12上に立設されるリップ溝形鋼からなる垂直材13(図8参照)の下端部に溶接により固着されるもので、前記水平材12上から突出するアンカーボルト23が挿通するアンカーボルト挿通孔22を有する基板部2と、垂直材13の下端部の内周面に沿うように基板部2の上面2aから所定高さh1立ち上がった立上壁部3と、この立上壁部3の外周側複数箇所で基板部2から立上壁部3よりも低いh2だけ立ち上がっていて、垂直材12の下端部を図2の(b) に仮想線で示すように立上壁部3に外嵌させた状態で垂直材13の下端面13oと基板部2の上面2aとをグルーブ溶接するための溶接隙間Sを設定する溶接隙間設定用台座部4,5とによって構成される。
【0029】
立上壁部3は、基板部上面2aから垂直材13の下端部内周面に沿うように立ち上がって、垂直材13の下端部を外嵌させる時の位置決めガイドとして機能すると共に、垂直材下端面13oと基板部上面2aとを所定の溶接隙間Sにてグルーブ溶接する時の裏当て材として機能するもので、この立上壁部3は、図1及び図2の(a) に示すように、リップ溝形鋼からなる垂直材13のウエッブ部13a及び両フランジ部13b,13bの夫々下端部内側面に沿うように基板部上面2aから立ち上がって、平面視が略コ字形を成しているが、このコ字形に連続的には形成されておらず、垂直材13のウエッブ部13aと両フランジ部13b,13bとの夫々コーナー部に対応する部分が切除されて、立上壁部3を横断するように基板部2の外へ抜ける溝部6を形成した断続的なコ字形となっている。換言すれば、この立上壁部3は、垂直材13のウエッブ部13aに対応する部分と、一方のフランジ部13bに対応する部分と、他方のフランジ部13bに対応する部分との3つに分割された形態となっている。溝部6の底面6aは、基板部2の上面2aと面一状となっている。
【0030】
この立上壁部3の基板部上面2aからの立ち上がり高さh1は、リップ溝形鋼からなる垂直材13の板厚tの2〜3倍が好ましい。これは、立上壁部3が、垂直材13の下端部を外嵌させる時の位置決めガイドとして機能すると共に垂直材下端面13oと基板部上面2aとを所定の溶接隙間Sにてグルーブ溶接する時の裏当て材として機能することから、立ち上がり高さh1が垂直材13の板厚tの2倍以下、例えば1倍〜1.5倍程度では位置決めガイドとして不十分となり、板厚t以下では裏当て材として機能しなくなり、また立ち上がり高さh1を垂直材13の板厚tの3倍以上にしても、位置決めガイドとしての機能及び裏当て材として機能はそれ程変わらないから、材料の無駄となり、製作コストが高くつくことになるからである。
【0031】
また、図2〜図4から分かるように、立上壁部3の上端面は、その外側面の上端部3aが内向き上り傾斜面状に形成されている。このように立上壁部3の外側面上端面が内向き上り傾斜面状に形成されていることによって、立上壁部3に垂直材13下端部を外嵌する時にその嵌め合わせが容易となる。また、傾斜面部を3aを形成する稜線は、角張ることなく、丸く、アール状に形成されている。
【0032】
溶接隙間設定用台座部4,5は、図2の(b) に示すように立上壁部3に垂直材13の下端部を外嵌させて、垂直材13の下端面13oを台座部4,5上に載せた状態とすることにより、垂直材13の下端面13oと基板部2の上面2aとをグルーブ溶接するための溶接隙間Sを設定するものであって、立上壁部3の外周側の複数箇所で基板部2から立上壁部3より低いh2だけ立ち上がるように基板部2と一体に形成されている。即ち、図2の(a) ,(b) に示すように、垂直材13のウエッブ部13aに対応する立上壁部3部分の外側2箇所に溶接隙間設定用台座部4が設けられ、そして垂直材13のリップ部13c,13cが載る箇所に溶接隙間設定用台座部5,5が設けられている。尚、台座部5は、図7(a) ,(b) に示すような耐力壁構成枠18を水平材12に設置する場合に、垂直材13の下端部側面に接合される下横枠材16の端部を載せた状態で溶接できるように十分長く形成されていると共に、その外側縁部には溶接開先用の斜面30が形成されている(図2の(a) 及び図3の(b) 参照)。
【0033】
この溶接隙間設定用台座部4,5の基板部上面2aからの立ち上がり高さh2(図2の(b) ,図3の(b) 参照)は、リップ溝形鋼からなる垂直材13の板厚tの1〜1.5倍が好ましいとされる。これは、立ち上がり高さh2が垂直材13の板厚t以下では、グルーブ溶接するための溶接隙間Sが小さくなって、溶接不十分となり、また立ち上がり高さh2が垂直材13の板厚tの1.5倍以上に高くなると、溶接隙間Sが大きくなって、適正なグルーブ溶接を行うことができないからである。
【0034】
また基板部2のアンカーボルト挿通孔22は、図2の(a) ,(b) 及び図3の(a) ,(b) に示すように、長孔に形成されていると共に、その上部側から下部側に亙って漸次径大となる下広がりテーパに形成されている。このようにアンカーボルト挿通孔22を若干下広がりテーパに形成することにより、アンカーボルト23を嵌め込んで挿通させるときに、その嵌め込みが容易となる。尚、アンカーボルト挿通孔22は、基板部2に複数設けることもできる。
【0035】
上記のように、基板部2にアンカーボルト挿通孔22を形成すると共に、基板部2の上面2aに立上壁部3及び溶接隙間設定用台座部4,5を突設したベースプレート1は、その全体が、溶接性を考慮された炭素鋼からなる溶接構造用鋳鋼によって一体成形された鋳物であり、そして各稜線部分(面と面との境をなす線状部分)はその全てが大なり小なり断面アール状に丸みをもたせて形成されている。このようにベースプレート1を溶接構造用鋳鋼によって鋳造すれば、良好な鋳物製品を得ることができ、また鋳物とすることにより、ベースプレート1の大量生産が可能で、コストの大幅な低廉化を図ることができる。また、ベースプレート1の表面に形成される全ての稜線部分に断面アール状の丸みをもたせることにより、ベースプレート1に防錆塗装や防錆メッキを施すときに、その塗膜や被膜をプレート全体に亘り均一に形成できる。つまり、稜線部分に形成される塗膜や被膜とプレート1の平坦部に形成される塗膜や被膜とを同じ膜厚で均一に形成でき、それにより防錆機能を有効に発揮させることができる。
【0036】
また、上記のように溶接構造用鋳鋼によって一体成形されたベースプレート1は、プレート全体に防錆用の溶融亜鉛メッキ又は電気亜鉛メッキが施されており、従って錆の発生を防止し、ベースプレート1を長年月にわたり有効に使用することができるようになる。ベースプレート1を防錆メッキ処理する場合には、上記したようにベースプレート1の各稜線部分が全て大なり小なり断面アール状に形成されているから、メッキの被膜厚をベースプレート1の全体に亘って均一にすることができると共に、稜線部分が鋭角ではなくて断面アール状となっているために稜線部分での被膜厚が薄くなることがなく、他の平面部分と同じ被膜厚にすることができる。このようにメッキ被膜厚がベースプレート1の全体に亘って均一となるようにメッキできるため、ベースプレート1全体のメッキ被膜厚を薄く形成することが可能となり、それによりベースプレート1をメッキ処理した後に、このベースプレート1を垂直材13の下端部に溶接する場合に、溶接箇所のメッキ被膜部分を溶接が可能な膜厚(例えば8ミクロン)になるまでグラインダー等で削り取る必要がなくメッキ処理したままでそのメッキ被膜の上から溶接することができ、従って余分な作業を行う必要がなくなり、作業の迅速化を図ることができ、結果的に生産工程の短縮化、製品コストの低廉化を図ることができる。
【0037】
図4の(a) ,(b) は、上記のように溶接構造用鋳鋼の鋳造によって一体成形されたベースプレート1をリップ溝形鋼からなる垂直材13の下端部に溶接によって固着した状態を示す。この溶接にあたっては、例えば作業床面上の定位置にベースプレート1を固定し、リップ溝形鋼からなる垂直材13を上方より持ち来し、その下端部を基板部上面2aから平面視略コ字形に立ち上がった立上壁部3に外嵌させて、垂直材下端面13oを溶接隙間設定用台座部4,5上に載せることにより、この立上壁部3が位置決めガイドとなって、垂直材13の下端部を、図2の(b) 及び図3の(a) に示すようにベースプレート1に対する溶接位置に瞬時に位置決めすることができる。この溶接位置では、垂直材13の下端部は、その内周面がベースプレート1の立上壁部3によって支持され、垂直材13の下端面13oとベースプレート1の基板部上面2aとの間に所定の溶接隙間Sが形成される。
【0038】
そして、図2の(b) 及び図3の(a) に示すような垂直材下端面13oと基板部上面2aとの溶接隙間Sにグルーブ溶接を行うことにより、図4の(a) ,(b) に示すように垂直材13の下端部とベースプレート1の立上壁部3と溶接隙間設定用台座部4,5と基板部2とを一体に接合させて、ベースプレート1を垂直材13の下端部に的確に固着することができる。そして、このベースプレート1のボルト挿通孔22に、土台の水平材12上面に突設されたアンカーボルト23を挿通して、ナット31で締め付けることにより、図7に示すような耐力壁構成枠18を水平材12上に立設することができる。
【0039】
図5はベースプレート1の他の実施形態を示すもので、(a) は平面図、(b) は(a) のE−E線断面図である。このベースプレート1の立上壁部3は、図1〜図3に示すものと同様に、垂直材13のウエッブ部13aと両フランジ部13b,13bとの夫々のコーナー部に対応する部分が切除されて、立上壁部3を横断するように基板部2の外へ抜ける溝部6を形成した断続的なコ字形となっているが、溝部6の底面6aが基板部2の上面2aより低く形成されている点が異なっている。
【0040】
図6はベースプレート1の更に他の実施形態を示すもので、(a) は平面図、(b) は(a) のF−F線断面図である。このベースプレート1の立上壁部3は、垂直材13のウエッブ部13aに対応する立上壁部3部分がその幅方向中央部で切除されて、立上壁部3を横断するように基板部2の外へ抜ける溝部6を形成した断続的なコ字形となっており、そしてその溝部6も図5の実施形態と同様に底面6aが基板部2の上面2aより低く形成されている。
【0041】
図5及び図6に示す実施形態のベースプレート1のように、垂直材13の周方向に沿って断続的に延びるように形成された立上壁部3が、立上壁部3の所要箇所を横断して基板部2の外へ抜ける溝部6を少なくとも1つ形成したものからなる場合は、例えば図7に示す耐力壁構成枠18の縦枠材として使用する垂直材13の下端にベースプレート1を取り付けて組み立てた後、枠18全体をメッキ処理又は電着塗装処理する時に、その溝部6からメッキ液又は電着塗装液をスムーズに排出させることができるから、ベースプレート1と垂直材13で囲まれた部分にメッキ液又は電着塗装液が残留せず、メッキ処理又は電着塗装処理が容易となる。またこの場合、溝部6の底面6aを基板部2の上面2aより低くなるように形成すれば、メッキ液又は電着塗装液の排出をより有効に行わせることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ベースプレート
2 基板部
2a 基板部の上面
3 立上壁部
S 溶接隙間
4,5 溶接隙間設定用台座部
6 溝部
6a 溝部の底面
13 垂直材(リップ溝形鋼)
13a 垂直材のウエッブ部
13b 垂直材のフランジ部
13c 垂直材のリップ部
13o 垂直材の下端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平材上に立設されるリップ溝形鋼よりなる垂直材の下端部に溶接によって固着されるベースプレートであって、アンカーボルト挿通孔を有する基板部と、垂直材の下端部内周面に沿うように基板部上面から所定高さ立ち上がった立上壁部と、立上壁部の外周側の複数箇所で基板部から立上壁部よりも低く立ち上がっていて、垂直材の下端部を立上壁部に外嵌させた状態で垂直材下端面と基板部上面とをグルーブ溶接するための溶接隙間を設定する溶接隙間設定用台座部とからなるベースプレート。
【請求項2】
立上壁部は、これに外嵌される垂直材の下端部内周に沿うように連続的又は断続的に延びるように形成されている請求項1に記載のベースプレート。
【請求項3】
立上壁部は、平面視略コ字形に形成されている請求項1又は2に記載のベースプレート。
【請求項4】
垂直材の下端部内周に沿うように断続的に延びるように形成された立上壁部は、立上壁部の所要箇所を横断して基板部の外へ抜ける溝部を少なくとも1つ形成したものからなり、その溝の底面は、基板部の上面と面一であるか、又は基板部の上面より低くなるように形成されている請求項1〜3の何れかに記載のベースプレート。
【請求項5】
基板部のアンカーボルト挿通孔は、その上部側から下部側に亙って漸次径大となるテーパに形成されている請求項1〜4の何れかに記載のベースプレート。
【請求項6】
立上壁部の立ち上がり高さは、リップ溝形鋼よりなる垂直材の板厚の2〜3倍である請求項1〜5の何れかに記載のベースプレート。
【請求項7】
溶接隙間設定用台座部の立ち上がり高さは、リップ溝形鋼よりなる垂直材の板厚の1〜1.5倍である請求項1〜6の何れかに記載のベースプレート。
【請求項8】
立上壁部は、外側面の上端部が内向き傾斜面状に形成されている請求項1〜7の何れかに記載のベースプレート。
【請求項9】
ベースプレートは、溶接構造用鋳鋼によって一体成形されたものからなる請求項1〜8の何れかに記載のベースプレート。
【請求項10】
ベースプレート全体に溶融亜鉛メッキ又は電気亜鉛メッキが施されている請求項1〜9の何れかに記載のベースプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237129(P2012−237129A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106397(P2011−106397)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(592050283)住金物産株式会社 (10)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)