説明

ベーパライザの電熱器

【課題】エンジンに液体LPG燃料を所定圧力の気化ガスにして供給するベーパライザの電熱器について、簡易な構成で高い熱交換効率を実現できるようにする。
【解決手段】液体状態のLPG燃料を減圧・気化するベーパライザ1に設けられ、内部のLPG燃料の熱交換路に配置した複数の電気ヒータ101,102,103でLPGを電気的に加熱するための電熱器10において、その複数の電気ヒータ101,102,103を、燃料の進行方向に対して並列する数が縦列する数よりも多い配置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーパライザの電熱器に関し、殊に、液体のLPG(液化石油ガス)を減圧・気化するベーパライザに設けられ、内部に複数の電気ヒータを配置した電熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体のLPGを減圧し、所定圧力の気化ガスにしてエンジンに送出するベーパライザでは、内部通路に高温のエンジン冷却水を循環させてLPGと熱交換させることにより、気化の促進をはかっている。しかし、エンジン冷却水の温度が低い低温始動時等では、LPGの気化が不充分となりやすいため、液体燃料の混入により混合気過濃となってエンジン不調を引き起こすことがある。
【0003】
この問題に対し、特開平5−223014号公報や特開平11−324813号公報に記載されているもののように、PTCヒータ等の電気ヒータを内装した電熱的加熱手段である電熱器をベーパライザに設けて熱源を補強することにより、エンジン冷却水温度が低い状況でもLPGの気化を可能としたベーパライザが普及している。
【0004】
このようにベーパライザに設ける電熱器としては、LPGを加熱する部分となるLPG熱交換路の長さの確保と完全な気化の達成のために、図5に示すようなヒータユニット110内のLPG熱交換路に沿って電気ヒータ111,112,113を直列に配置した構成の電熱器11が一般に用いられている。
【0005】
ところが、この電気ヒータを直列配置した電熱器11の場合、上流側の電気ヒータ113(A)ではほぼ液体の状態のLPGと熱交換を行って高い熱交換効率を実現しているが、下流側の電気ヒータ111(C)では既に上流側でLPGが気化された気化ガスが混じった状態で熱交換を行うために熱交換効率が極めて低くなることから、充分な熱交換機能を発揮しない電気ヒータが存在するとともに無駄な電力消費を伴う結果となってしまう。
【0006】
図6は、このように電気ヒータを直列に配置した電熱器でLPG燃料を加熱・気化させた場合における、ヒータ電流と燃料流量の関係をヒータ毎に表した関係図である。この関係図より、下流側の電気ヒータ(C)では前述のように気体混じりのLPGと熱交換を行っている関係で、電気ヒータに流れる電流値が低く熱交換効率が低い状態であることが分かる。
【特許文献1】特開平5−223014号公報
【特許文献2】特開平11−324813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、エンジンにLPGを所定圧力の気化ガスにして供給するために用いられるベーパライザの電熱器について、簡易な構成で高い熱交換効率を実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、内部に設置される熱交換路に配置した複数の電気ヒータにより前記熱交換路を進行するLPG燃料を電気的に加熱することにより低温始動時に燃料タンクから供給されるLPG燃料を減圧・気化するために用いられるベーパライザの電熱器であって、前記複数の電気ヒータが前記熱交換路におけるLPG燃料の進行方向に対して並列に配置される数を縦列に配置される数よりも多くした。
【0009】
ベーパライザに設ける電熱器について、このように電気ヒータを並列的に配置したことにより、気体混じりのLPGと熱交換を行う無駄を回避しやすいものとなり、電気ヒータを縦列的に配置した従来例と比べて高い熱交換効率を実現することができる。
【0010】
また、この場合、電熱器における複数の電気ヒータを、LPG燃料の熱交換路に沿って縦列しない配置として、1つのLPG燃料の熱交換路内で複数縦列した電気ヒータによる連続的な加熱を行わないことにすれば、縦列的な連続加熱を行わないことにより総ての電気ヒータが液体の状態のLPG燃料と熱交換を行うことができる。
【0011】
さらに、上述したベーパライザの電熱器において、電気ヒータを、2枚の放熱板で挟まれてヒータユニットの1単位を構成しており、このヒータユニットが複数並列して間にLPG熱交換路を形成しているものとすれば、大きな熱交換面積を確保しやすいものとなるため、より効率的な熱交換を実現しやすい。
【0012】
さらにまた、上述した電熱器において内装する電気ヒータを、平板状のPTCヒータとして、2枚の導電板兼放熱板で挟まれて1枚の平板状ヒータユニットを構成しているものとすれば、小さな容積でも高い熱交換能力を発揮しやすいものとなる。
【0013】
加えて、上述した電熱器において、並列した複数の電気ヒータで形成されて並列するLPG燃料の熱交換路の上流側に、LPGを各LPG熱交換路に均等に分配するための分岐板が設けられたことを特徴とするものとすれば、総てのLPG熱交換路で均一な熱交換が行われてLPGの加熱が一層効率的に行えるものとなる。
【発明の効果】
【0014】
複数の電気ヒータを電燃の進行方向に対して並列する数が縦列する数よりも多い並列的な配置にした本発明によると、簡易な構成で高い熱交換効率を実現することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態の電熱器10を設けたベーパライザ1の構成を説明するための簡略図を示すものであり、ベーパライザ1は、燃料接手20から液体状態のLPG燃料を導入し、高温のエンジン冷却水を用いてLPG燃料との間で熱交換を行うことにより気化ガスの状態にして圧力制御弁23で所定の圧力に調整しエンジンに送出するものであるが、そのエンジン冷却水による加熱部分は従来例と共通するため、詳細な図示及び説明は省略する。
【0017】
また、上述したように、低温始動時等においてはエンジン冷却水による熱交換だけでは充分な加熱・気化が行えないことから、電気的加熱手段としての電熱器10を、LPGを導入する燃料継手20のすぐ下流側に設けた構成としてある。その電熱器10の内部にはLPG燃料の熱交換路が形成されており、内蔵した電気ヒータ101,102,103に通電することによりLPG燃料を電気的に加熱して気化を促進するようになっている。
【0018】
そして、図5に示した従来の電熱器11において電気ヒータ111,112,113が直列に配置されていたのに対し、本実施の形態においては、その電熱器10に内蔵した電気ヒータ101,102,103が並列に配置された状態としてヒータユニット100を構成しており、電気ヒータ101,102,103の側方を通って並列する各LPG熱交換路においては、電気ヒータの縦列による連続的な加熱を行わないものとしている。
【0019】
このように構成したことにより、電気ヒータを縦列的に配置した従来例において下流側の電気ヒータが上流側で気化された気体混じりのLPG燃料を再度加熱することにより熱交換効率を悪化させていたのに対し、本実施の形態では、総ての電気ヒータ101,102,103において液体の状態のLPG燃料と熱交換を行って均一に気化させるようになっているため、高い熱交換効率を実現することができる。
【0020】
さらに、本実施の形態の電熱器10には、並列する各LPG燃料の熱交換路にLPG燃料を均等に分配するための分岐板21,22が、ヒータユニット10の上流側に設けられている。これにより、並列する総てのLPG燃料の熱交換路で均一な燃料流量が確保されて均一な熱交換が行われるようになるため、一層効率的なLPG燃料の加熱を可能としている。
【0021】
図2は、本実施の形態の電熱器10と同様の構成により実際に作成した電熱器を設けたベーパライザで行った実験結果に基づくヒータ電流と燃料流量との関係図である。この関係図から分かるように、総ての電気ヒータ(A,B,C)間で電流値が均等となっており、総ての電気ヒータにおいても均一で効率的な熱交換が行われていたことが分かる。尚、エンジンの要求燃料流量によっては、電気ヒータの個数削減も可能であることが推察された。
【0022】
図3(A)は、上述した実施の形態の応用例としての電熱器12の縦断面図を示しており、図3(B)はそのX−X線に沿う縦断面図を示している。この電熱器12の場合は、内装する各ヒータユニット120が、円盤状のPTCヒータである電気ヒータ114,115の両平面側を2枚の導電板兼放熱板で挟み込むことにより薄型方形の平板状(短冊状)に形成してなるものである。
【0023】
このような平板状のヒータユニット120の複数枚が、その電気ヒータ114,115を横向きの並列としながら互いに並列に配置されており、複数並列したLPG燃料の熱交換路を形成している。そのため、図4に示す従来例の電熱器13において電気ヒータ116,117を挟み込んだヒータユニット130がその電気ヒータ116,117が直列するように縦向きに配置されLPG燃料の熱交換路に沿って連続した加熱を行う配置と比べて、先述と同様に熱交換効率が大きく改善されるものとなっている。
【0024】
以上、述べたように、エンジンにLPG燃料を所定圧力の気化ガスにして供給するベーパライザの電熱器について、本発明により、簡易な構成で高い熱交換効率を実現できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明における実施の形態の電熱器を設けたベーパライザの構成を説明するための簡略図。
【図2】図1のベーパライザによる実験結果に基づくヒータ電流と燃料流量との関係図。
【図3】(A)は図1の電熱器の応用例を示す縦断面図、(B)は(A)のX−X線に沿う断面図。
【図4】(A)は従来例の電熱器の縦断面図、(B)は(A)のY−Y線に沿う断面図。
【図5】従来例の電熱器を設けたベーパライザの構成を説明するための簡略図。
【図6】図3のベーパライザによる実験結果に基づくヒータ電流と燃料流量の関係をヒータ毎に表した関係図。
【符号の説明】
【0026】
1 ベーパライザ、10,12 電熱器、21,22 分岐板、23 圧力制御弁、100,120 ヒータユニット、101,102,103、114,115 電気ヒータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に設置される熱交換路に配置した複数の電気ヒータにより前記熱交換路を進行するLPG燃料を電気的に加熱することにより低温始動時に燃料タンクから供給されるLPG燃料を減圧・気化するために用いられるベーパライザの電熱器であって、前記複数の電気ヒータが前記熱交換路におけるLPG燃料の進行方向に対して並列に配置される数よりも縦列に配置される数が多いことを特徴とするベーパライザの電熱器。
【請求項2】
前記複数の電気ヒータを1つの前記熱交換路に沿って縦列して配置しないことにして各熱交換路について複数の前記電気ヒータによる連続的な加熱を行わないことを特徴とする請求項1に記載したベーパライザの電熱器。
【請求項3】
前記電気ヒータは、両側に放熱板が配置されてヒータユニットの1単位を構成しており、複数配置される前記LPG熱交換路の両側に前記ヒータユニットが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載したベーパライザの電熱器。
【請求項4】
前記電気ヒータは、平板状のPTCヒータの両側に導電板兼放熱板が配置されてヒータユニットの1単位を構成していることを特徴とする請求項1,2または3に記載したベーパライザの電熱器。
【請求項5】
前記熱交換路の上流側に、LPG燃料を各熱交換路に均等に分配するための分岐板が設けられていることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載したベーパライザの電熱器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−281162(P2009−281162A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131446(P2008−131446)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)