ベーマイトナノロッドおよびその製造方法、アルミナナノロッドおよびその製造方法、並びに、CuAlO2膜およびその製造方法
【課題】分散性と、粒子の形状およびサイズの均一性とがさらに向上した、ベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドを提供する。
【解決手段】本発明のベーマイトナノロッドの製造方法は、(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理する工程と、を含む。本発明のアルミナナノロッドの製造方法は、前記工程(I)および(II)の後に、前記工程(I)および(II)によって得られたベーマイトナノロッドを450〜700℃の温度で焼成する工程をさらに含む。
【解決手段】本発明のベーマイトナノロッドの製造方法は、(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理する工程と、を含む。本発明のアルミナナノロッドの製造方法は、前記工程(I)および(II)の後に、前記工程(I)および(II)によって得られたベーマイトナノロッドを450〜700℃の温度で焼成する工程をさらに含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベーマイトナノロッドおよびその製造方法、アルミナナノロッドおよびその製造方法、並びに、CuAlO2膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナは、高い熱伝導性および高い機械的強度等の優れた特性を有しているので、様々な用途に利用されている。また、アルミナの原料として有用なベーマイトも、アルミナと同様に、様々な用途に利用され得る。例えば、アルミナおよびベーマイトは、樹脂材料に熱伝導性および機械的強度等の特性を付与するためのフィラーとして、広く用いられている。また、高い比表面積と優れた耐熱性を有するアルミナおよびベーマイトは、各種用途の触媒担体としても利用されている。
【0003】
アルミナおよびベーマイトに求められる形状は、用途に応じて異なる。例えば、これらが樹脂材料のフィラーとして用いられる場合は、高い補強効果および放熱効果を得る目的で、高いアスペクト比を有する形状、すなわちロッド状または繊維状を有するアルミナおよびベーマイトが好適に用いられる。従来、高いアスペクト比を有するアルミナおよびベーマイトと、それらの製造方法が、数多く提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0004】
特許文献1および2では、角柱状アルミナとその製造方法が提案されている。この角柱状アルミナは、角柱状塩基性硝酸アルミニウムを焼成することによって製造される。ここで用いられる角柱状塩基性硝酸アルミニウムは、塩基性アルミニウム塩溶液に可溶性の硝酸塩を添加することによって製造される。
【0005】
特許文献3では、単分散性に富む繊維状のベーマイトとその製造方法が提案されている。このベーマイトは、ρ−およびχ−結晶構造を示すアルミナにベーマイトよりも溶解度の高いアルミナを混合したものを原料として用い、これに少なくとも1種類の酸を含有させて、水分の存在下で水熱処理を行うことによって製造される。
【0006】
特許文献4では、フィラーに適したベーマイト粒子およびアルミナ粒子として、アスペクト比が5〜80のベーマイト粒子およびアルミナ粒子が提案されている。このベーマイト粒子は、アルミニウム金属塩水溶液にアルカリ水溶液を添加してゲル状物質を生成し、このゲル状物質を含む反応混合物に熱処理を施すことによって製造される。また、このベーマイト粒子を焼成することによって、アルミナ粒子が製造される。
【0007】
微粒子化、均一性および高分散性を同時に実現するフィラーに適したアルミナ微粒子として、低アスペクト比の板状または球状のアルミナ微粒子も提案されている。例えば特許文献5では、粒子サイズが0.05〜5μmで、アスペクト比が3以下の、板状または球状のアルミナ微粒子が提案されている。このアルミナ微粒子の製造方法は、次のとおりである。まず、アルミニウム塩水溶液にアルカリ水溶液を添加して、アルミニウム水酸化物含有水溶液(pH10.5〜13.5)を調製する。この水溶液を水熱反応させて、アルミナ水和物(ベーマイト)を得る。このアルミナ水和物を焼成することによって、アルミナ微粒子が製造される。
【0008】
フィラーではなく、高強度アルミナ多孔質自立膜を形成するために用いられる、高アスペクト比を有する繊維状のベーマイト粒子またはアルミナ粒子も提案されている。特許文献6では、高アスペクト比を有する繊維状のベーマイト粒子またはアルミナ粒子を分散質とする、アルミナゾルが開示されている。このアルミナゾルは、出発原料であるアルミニウムアルコキシドを酸水溶液中で加水分解することによって作製される。
【0009】
以上のように、ベーマイト粒子およびアルミナ粒子に関し、優れた特性を有するベーマイト粒子およびアルミナ粒子と、その優れた特性を実現するための製造方法とが、数多く提案されている。
【0010】
ベーマイト粒子およびアルミナ粒子がどのような用途に使用される場合であっても、粒子の形状およびサイズの均一性と、分散性とは、非常に重要な特性である。したがって、従来のベーマイト粒子およびアルミナ粒子の分散性および粒子の均一性は、未だ十分とはいえず、さらなる向上が求められている。
【0011】
一方、ベーマイト粒子およびアルミナ粒子は、フィラー等の上記用途に限らず、銅アルミネート(CuAlO2)の製造に利用される場合もある。例えば、CuO、Cu2O、AlおよびAl2O3の混合物からCuAlO2微結晶を製造する方法が報告されている(非特許文献1)。
【0012】
デラフォサイト構造を有するCuAlO2は、近年、p型の透明酸化物半導体として見出された。このようなp型半導体は、表示素子、太陽電池およびタッチパネル等の用途に使用でき、非常に有用である。したがって、CuAlO2は、今後大いに期待される材料である。CuAlO2のp型半導体としての特性は、その結晶構造に起因する。したがって、p型半導体として機能するCuAlO2を合成するためには、優れた結晶性を実現する必要がある。従来、このような優れた結晶性を有するCuAlO2の合成には、通常、スパッタリングおよび電子ビーム蒸着のような、高真空物理的気相成長法が用いられている。しかし、より高い生産性を実現するためには、より簡便である湿式法によってCuAlO2を製造することが望ましい。
【0013】
湿式法を利用したCuAlO2の合成方法も、報告されている(例えば、特許文献7参照)。しかし、CuAlO2をより優れたp型半導体として機能させるためには、CuAlO2の結晶性をさらに改善し、好ましくは単相のCuAlO2を得ることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭58−161920号公報
【特許文献2】特開昭58−161921号公報
【特許文献3】国際公開第97/32817号パンフレット
【特許文献4】特開2006−62905号公報
【特許文献5】特開2008−195569号公報
【特許文献6】特開2010−132519号公報
【特許文献7】特開2007−31202号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Dean Y. Shahriari et al., “A High-Yield Hydrothermal Preparation of CuAlO2”, Inorganic Chemistry, 2001, 40, pp. 5734-5735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、分散性と、粒子の形状およびサイズの均一性とがさらに向上した、ロッド状のベーマイト粒子(ベーマイトナノロッド)およびアルミナ粒子(アルミナナノロッド)を提供することを課題とする。
【0017】
本発明は、さらに、湿式法を利用して、優れたp型半導体として使用可能な、優れた結晶性を有するCuAlO2を合成する方法を提供することも、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理する工程と、
を含む、ベーマイトナノロッドの製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、上記のベーマイトナノロッドの製造方法によって製造された、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない、ベーマイトナノロッドを提供する。
【0020】
本発明は、
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理して、ベーマイトナノロッドを形成する工程と、
(III)前記ベーマイトナノロッドを450〜700℃の温度で焼成する工程と、
を含む、γ型の結晶構造を有するアルミナナノロッドの製造方法を提供する。
【0021】
本発明は、上記のアルミナナノロッドの製造方法によって製造された、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を含有しない、アルミナナノロッドを提供する。
【0022】
本発明は、
(I)上記のベーマイトナノロッドの製造方法によって得られたベーマイトナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記ベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程と、
を含む、デラフォサイト構造を有するCuAlO2膜の第1の製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、
(I)上記のアルミナナノロッドの製造方法によって得られたアルミナナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記アルミナナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程と、
を含む、デラフォサイト構造を有するCuAlO2膜の第2の製造方法を提供する。
【0024】
本発明は、上記のCuAlO2膜の第1および第2の製造方法によって製造されたCuAlO2膜も提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のベーマイトナノロッドの製造方法では、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体を原料として含み、かつ、アルカリ成分(アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素)を実質的に含有しない反応溶液を用いて、ベーマイトナノロッドを水熱合成する。本発明の方法によって得られるベーマイトナノロッドは、従来の方法で製造されるベーマイトナノロッドに比べて、非常に優れた分散性を有する。さらに、本発明の方法では、反応溶液にアルカリ成分が含まれないので、ベーマイトがa軸方向に成長しやすい。その結果、得られるベーマイトナノロッドの短軸長さおよび長軸長さのばらつきが非常に小さく、粒子の形状およびサイズの高い均一性が得られる。
【0026】
本発明のアルミナナノロッドの製造方法では、本発明のベーマイトナノロッドの製造方法で得られたベーマイトナノロッドを焼成することによって、アルミナナノロッドが得られる。本発明の焼成条件によってベーマイトナノロッドを焼成すると、ナノロッドの形状を維持したまま水が抜けて、γ型の結晶構造を有するアルミナナノロッドが得られる。したがって、ベーマイトナノロッドと同様に、短軸長さおよび長軸長さのばらつきが非常に小さく、粒子の形状およびサイズの均一性が高い、アルミナナノロッドとなる。さらに、本発明の方法によって得られるアルミナナノロッドは、従来の方法で製造されるアルミナナノロッドに比べて、非常に優れた分散性を有する。
【0027】
本発明のCuAlO2膜の第1および第2の製造方法は、本発明で得られたベーマイトナノロッドまたはアルミナナノロッドに銅化合物を担持させたものを前駆体として用いて、湿式法によってCuAlO2膜を製造する方法である。本発明の方法によれば、デラフォサイト構造を有する、優れた結晶性を有するCuAlO2膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1で得られたベーマイトナノロッドのX線回折パターンである。
【図2】実施例1で得られたベーマイトナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図3】実施例2で得られたアルミナナノロッドのX線回折パターンである。
【図4】実施例2で得られたアルミナナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図5】実施例3において、ベーマイトナノロッドに酢酸銅を担持させた前駆体を、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図6】(a)〜(d)は、実施例3において、ベーマイトナノロッドに酢酸銅を担持させた前駆体を焼成して得られた物質を、透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図7】実施例3において、ベーマイトナノロッドに酢酸銅を担持させた前駆体を焼成して得られた物質のX線回折パターンである。
【図8】実施例4で得られたベーマイトナノロッドのX線回折パターンである。
【図9】実施例4で得られたベーマイトナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図10】実施例5で得られたアルミナナノロッドのX線回折パターンである。
【図11】実施例5で得られたアルミナナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図12】(a)〜(e)は、それぞれ、実施例6で得られたベーマイトナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態1)
本発明のベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドの製造方法と、当該方法によって製造されるベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドについて、具体的に説明する。
【0030】
まず、ベーマイトナノロッドの製造方法について説明する。本実施の形態のベーマイトナノロッドの製造方法は、以下の工程(I)および(II)を含む。
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程。
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理する工程。
【0031】
出発原料として、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体が用いられる。アルミニウムのカルボン酸塩としては、例えば、ギ酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム(Al(OH)(OCOCH3)2)、トリス酢酸アルミニウム、塩基性2−エチルヘキサン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウム等を用いることができる。アルミニウムのβ−ジケトン錯体としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート(Al(acac)3)、ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジケトアルミニウム、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジケトアルミニウム等を用いることができる。これらの中でも、塩基性酢酸アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトナートが好適に用いられる。
【0032】
工程(I)において、出発原料および水を用いて溶液(反応溶液)を調製する。この反応溶液は、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素(アルカリ成分)を実質的に含まない。なお、ここでいう、「反応溶液がアルカリ成分を実質的に含まない」とは、反応溶液にアルカリ成分を添加しないという意味であり、不純物としてアルカリ成分が含まれる場合はその含有量が1重量%以下(望ましくは0.1重量%以下)であるという意味である。従来、アルミニウム塩を原料としてベーマイトを水熱合成によって作製する場合、反応溶液にアルカリ成分が添加されることが一般的であった。反応溶液にアルカリ成分を添加する理由は、アルミニウム塩から水酸化アルミニウムを生成し、生成した水酸化アルミニウム(中性では水に不溶)の溶解度を上げるためと考えられる。しかし、反応溶液がアルカリ成分を含んでいる場合、合成されるベーマイトのa軸方向への成長が阻害されるので、アスペクト比が高いベーマイトナノロッドを得ることが困難となる。これに対し、本実施の形態の方法では、原料としてアルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体を用いることにより、反応溶液にアルカリ成分を添加しなくても、ベーマイトを水熱合成することができる。このように、本実施の形態の方法では、反応溶液にアルカリ成分が含まれないので、ベーマイトがa軸方向に成長しやすい。その結果、得られるベーマイトナノロッドの短軸長さおよび長軸長さのばらつきが非常に小さく、粒子の形状およびサイズの高い均一性が得られる。さらに、本実施の形態の方法で合成されたベーマイトナノロッドは、従来の方法で合成されるベーマイトナノロッドと比較して、非常に優れた分散性を有する。これは、反応溶液にアルカリ成分が含まれないことにより、得られるベーマイトナノロッドの表面に不純物であるアルカリ成分が存在しないことも、理由の一つとして考えられる。
【0033】
反応溶液には、原料および水以外に、メタノール及びエタノール等のアルコール類等が含まれていてもよい。しかし、より優れた分散性と、粒子の形状およびサイズのより高い均一性とを実現するためには、原料および水以外の成分(不純物)は、極力含まないことが望ましい。したがって、本実施の形態の方法では、前記工程(I)で調製される反応溶液が、実質的に、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とからなっていてもよい。その場合でも、本実施の形態の方法によれば、ベーマイトナノロッドを水熱合成することができる。なお、「反応溶液が、実質的に、原料と水とからなる」とは、反応溶液に含まれる原料および水以外の成分の含有量が、5重量%以下(好ましくは1重量%以下)であることを意味する。
【0034】
工程(II)では、工程(I)で調製した反応溶液を、100〜300℃の温度で水熱処理する。水熱処理の時間は、用いる原料および水熱処理の温度等によって適宜決定すればよいが、例えば1〜24時間である。
【0035】
水熱処理後、反応生成物を遠心分離器で分離して、これを繰り返し水洗して、さらに乾燥させることによって、ベーマイトナノロッドを得ることができる。本実施の形態の方法によって合成されるベーマイトナノロッドは、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない。「ベーマイトナノロッドがアルカリ成分を実質的に含有しない」とは、ベーマイトナノロッドに含まれるアルカリ成分の含有量が、1重量%以下(好ましくは0.1重量%以下)であることを意味する。
【0036】
次に、アルミナナノロッドの製造方法について説明する。本実施の形態のアルミナナノロッドの製造方法は、以下の工程(I)〜(II)を含む。
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程。
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理して、ベーマイトナノロッドを形成する工程。
(III)前記ベーマイトナノロッドを450〜700℃の温度で焼成する工程。
【0037】
本実施の形態では、アルミナナノロッドは、上述の方法で製造されたベーマイトナノロッドを利用して製造される。したがって、上記のアルミナナノロッドの製造方法における工程(I)および(II)の詳細は、ベーマイトナノロッドの製造方法における工程(I)および(II)とそれぞれ同じである。
【0038】
工程(II)の後、450〜700℃の温度でベーマイトナノロッドを焼成して、アルミナナノロッドを得る(工程(III))。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜決定すればよいが、例えば1〜5時間である。この焼成条件によってベーマイトナノロッドを焼成すると、ナノロッドの形状を維持したまま水が抜けて、γ型の結晶構造を有するアルミナナノロッドが得られる。したがって、ベーマイトナノロッドと同様に、短軸長さおよび長軸長さのばらつきが非常に小さく、粒子の形状およびサイズの均一性が高い、アルミナナノロッドとなる。さらに、本発明の方法によって得られるアルミナナノロッドは、従来の方法で製造されるアルミナナノロッドに比べて、非常に優れた分散性を有する。例えば、焼成後のアルミナナノロッドの粉体を水に入れた場合、同様のサイズの従来のアルミナナノロッドであれば水中で凝集してしまうのに対し、本実施の形態で製造されるアルミナナノロッドは再分散させることができる。このような良好な分散性は、ベーマイトナノロッドと同様に、得られるアルミナナノロッドの表面に不純物であるアルカリ成分が存在しないことも、理由の一つとして考えられる。
【0039】
本実施の形態の方法によって製造されるアルミナナノロッドは、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を含有しない。
【0040】
本実施の形態の方法によって得られるベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドは、優れた分散性と、粒子の形状およびサイズの高い均一性とを有する。したがって、これらの粒子は、フィラーとして使用された場合に、樹脂材料等の分散媒と容易に混合される。それゆえ、これらの粒子をフィラーとして樹脂に分散させれば、樹脂材料に補強効果および放熱特性等を効果的に付与できる。さらに、これらの粒子はa軸方向に結晶が成長したロッド状であるため、高い放熱特性を有する。したがって、これらの粒子をフィラーとして含む樹脂材料は、優れた放熱材料としての利用が可能である。
【0041】
また、本実施の形態の方法によって得られるベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドは、金属イオンを均一に分散して担持することができ、さらに特定の結晶面が多く露出している。したがって、このベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドは、触媒を担持する担体としても有用である。
【0042】
(実施の形態2)
本発明のCuAlO2膜の製造方法と、当該方法によって製造されるCuAlO2膜について、具体的に説明する。
【0043】
本実施の形態のCuAlO2膜の製造方法は、以下の工程(I)〜(III)を含む。
(I)実施の形態1で説明したベーマイトナノロッドの製造方法によって得られたベーマイトナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記ベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程。
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程。
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程。
【0044】
本実施の形態によれば、デラフォサイト構造を有する、優れた結晶性を有するCuAlO2膜が得られる。また、この方法によれば、単相のCuAlO2膜を得ることも可能である。
【0045】
工程(I)では、ベーマイトナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、銅化合物がベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する。銅化合物としては、例えば、ギ酸銅、酢酸銅(I)(Cu(OCOCH3))、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等が使用できる。これらの中でも、酢酸銅(I)が好適に使用できる。溶剤には、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n―ブチル、トルエン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が使用できる。
【0046】
工程(I)で得られた前駆体を、CuAlO2膜を形成する基板上に塗布して、所望の厚さの塗膜を形成する(工程(II))。塗布方法は、特に限定されない。スクリーン印刷、インクジェット印刷およびスピンコーティング等の公知の方法が使用できる。
【0047】
その後、塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成して、CuAlO2膜を得る(工程(III))。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜決定すればよいが、例えば1〜5時間である。
【0048】
実施の形態1で説明した方法によって得られたベーマイトナノロッドは、その表面に銅化合物を均一に担持することができる。さらに、ベーマイトナノロッドに銅化合物が担持されている前駆体は、銅化合物の疎水的相互作用により自己集合する。その結果、前駆体間の固相反応が効果的に起こるので、優れた結晶性を有する、デラフォサイト構造のCuAlO2膜が得られる。ここで得られるCuAlO2膜は、p型半導体として使用できる、優れた特性を有する。本実施の形態で得られるCuAlO2膜は、非常に高いゼーベック係数を有することができ、例えば200μV/Kよりも高いゼーベック係数を実現できる。
【0049】
なお、工程(I)で担体として用いられるベーマイトナノロッドの代わりに、実施の形態1で説明したアルミナナノロッドの製造方法によって得られたアルミナナノロッドを用いても、同様の効果が得られる。すなわち、アルミナナノロッドを用いる場合でも、優れた結晶性を有する、デラフォサイト構造のCuAlO2膜が得られる。このCuAlO2膜も、p型半導体として使用できる、優れた特性を有する。
【実施例】
【0050】
次に、本発明について、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
3.5mmolの塩基性酢酸アルミニウム(シグマアルドリッチ社製)を、70mLの蒸留水に溶解させて、反応溶液を調製した。この反応溶液をオートクレーブに入れて、200℃、12時間で水熱処理を行った。その後、オートクレーブを室温まで冷却し、反応生成物をオートクレーブから取り出した。次に、反応生成物を遠心分離器で分離して、これを繰り返し水洗した。次に、得られた物質を60℃で一晩乾燥させて、白色粉体を得た。
【0052】
図1は、本実施例で得られた白色粉体のX線回折パターンを示す。X線回折パターンから、この白色粉体は、(200)結晶面に特異的に配向しており、ベーマイトの結晶で構成されている(ベーマイト単相)であることが確認された。
【0053】
図2は、本実施例で得られたベーマイトナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)の画像である。この画像から、本実施例で得られたベーマイトナノロッドは、短軸長さが10〜30nm、長軸長さが60〜400nmであり、均一な形状およびサイズを有していることが確認された。また、このベーマイトナノロッドを、水に高濃度で分散させたところ、非常に優れた分散性を確認できた。さらにこの分散液を2週間放置したところ、粒子の沈殿および凝集は確認されなかった。
【0054】
本実施例で起こった反応は、以下の式(1)および(2)で表すことができる。
Al(OH)(OCOCH3)2+2H2O→Al(OH)3+2CH3COOH (1)
Al(OH)3→AlOOH+H2O (2)
【0055】
(実施例2)
実施例1で得られたベーマイトナノロッドを用いて、アルミナナノロッドを作製した。実施例1で得られたベーマイトナノロッドを、空気中で、600℃で1時間焼成することによって、白色の固体物質が得られた。
【0056】
図3は、本実施例で得られた白色の固体物質のX線回折パターンを示す。X線回折パターンから、この固体物質は、γ型の結晶構造を有するアルミナからなることが確認された。このX線回折パターンによれば、このγ−アルミナが(400)結晶面に特異的に配向していることがわかる。これにより、形状の大きな変化を起こすことなく、ベーマイトからγ−アルミナへの相転移が完全に行われたことがわかる。
【0057】
図4は、本実施例で得られたアルミナナノロッドのTEM画像である。この画像から、本実施例で得られたアルミナナノロッドは、短軸長さが10〜20nm、長軸長さが40〜300nmであり、均一な形状およびサイズを有していることが確認された。また、このアルミナナノロッドを、水に高濃度で分散させたところ、非常に優れた分散性を確認できた。
【0058】
本実施例で起こった反応は、以下の式(3)で表すことができる。
2AlOOH→Al2O3+H2O (3)
【0059】
(実施例3)
実施例1で得られたベーマイトナノロッドを用いて、CuAlO2膜を作製した。まず、0.12g(2mmol)のベーマイトナノロッドと、0.245g(2mmol)の酢酸銅(I)(シグマアルドリッチ社製)とを、2mLのピリジンに溶解させて、酢酸銅がベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製した。図5は、この前駆体のTEM画像を示す。この画像では、粒子状のものがベーマイトナノロッドの表面に均一に担持されていることが確認できる。すなわち、酢酸銅がベーマイトナノロッドの表面に均一に担持された前駆体が作製されていることがわかる。
【0060】
次に、作製された前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成した。この塗膜を乾燥させた後、異なる温度(400℃、600℃、800℃、1000℃および1150℃)で、それぞれ、この塗膜を2時間焼成した。焼成は空気中で行われた。
【0061】
焼成によって得られた物質の状態を、TEM画像および走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)の画像で確認した。図6(a)〜(d)は、それぞれ、400℃、600℃、1000℃および1150℃の焼成で得られた物質の、TEM画像(右)およびSEM画像(左)を示す。さらに、図7は、400℃、600℃、800℃、1000℃および1150℃の焼成で得られた物質のX線回折パターンを示す。その結果、次のことが確認された。
【0062】
(1)焼成温度が400℃の場合、酢酸銅は酸化銅(CuO)に変化したが、白色のベーマイトナノロッドは変化せずに残っていた。
(2)焼成温度が600℃の場合、ベーマイトナノロッドはγ−アルミナナノロッドに変化しはじめた。同時に、CuOとγ−アルミナナノロッドとが反応して、CuAl2O4相が形成されはじめた。
(3)焼成温度が800℃の場合、CuOと、CuOとγ−アルミナナノロッドとが反応して生じたCuAl2O4相とが共に存在していた。
(4)焼成温度が1000℃の場合、CuOと、CuOとγ−アルミナナノロッドとが反応して生じたCuAl2O4相とが共に存在していた。800℃で得られた物質よりも、CuAl2O4相のピーク強度が高かった。
(5)焼成温度が1150℃の場合、X線回折では、CuAl2O4相に起因する弱いピークが少しだけ確認されたものの、前駆体の形態変換による物質は確認されず、CuAlO2の結晶が生成したことが確認された。
【0063】
以上より、1150℃の焼成によって単相のCuAlO2膜が得られた。
【0064】
次に、本実施例で得られたCuAlO2の電気/熱特性を評価した。具体的には、CuAlO2のゼーベック係数、熱伝導率および電気伝導率を測定した。測定用サンプルは、次のように作製した。まず、本実施例で準備した前駆体を乾燥させ、この乾燥させた前駆体を40MPaでプレスしてペレット化した後、これを空気中で1150℃で4時間焼成した。得られたペレットをさらに40MPaでプレスして、空気中で1150℃で4時間焼成した。得られたペレットを測定用サンプル(約3mm角、厚さ約1mm)とした。測定用サンプルの充填率は約85%であった。ゼーベック係数、熱伝導性および電気伝導性は、物理特性測定装置(カンタム・デザイン社製、「PPMS」)を用いて測定された。その結果、温度300Kで、ゼーベック係数は560μV/K、電気伝導率は1.3Ω・m、熱伝導率は19.4W/(K.m)であった。このCuAlO2のゼーベック係数は非常に高く、得られたCuAlO2はp型半導体と認められた。
【0065】
(実施例4)
3.5mmolのアセチルアセトナートと70mLの蒸留水とを混合して、10分間攪拌することによって、白色沈殿を得た。これをオートクレーブに入れて、窒素雰囲気下で、200℃、12時間の水熱処理を行った。その後、オートクレーブを室温まで冷却し、反応生成物をオートクレーブから取り出した。次に、反応生成物を遠心分離器で分離して、これを繰り返し水洗した。次に、得られた物質を蒸発装置を用いて乾燥させて、白色粉体を得た。
【0066】
図8は、本実施例で得られた白色粉体のX線回折パターンを示す。X線回折パターンから、この白色粉体はベーマイトの結晶で構成されている(ベーマイト単相)であることが確認された。
【0067】
図9は、本実施例で得られたベーマイトナノロッドのTEM画像である。この画像から、本実施例で得られたベーマイトナノロッドは、短軸長さが6〜30nm、長軸長さが14〜68nmであり、均一な形状およびサイズを有していることが確認された。このベーマイトナノロッドを、水に高濃度で分散させたところ、非常に優れた分散性を確認できた。さらにこの分散液を2週間放置したところ、粒子の沈殿および凝集は確認されなかった。
【0068】
(実施例5)
実施例4で得られたベーマイトナノロッドを用いて、アルミナナノロッドを作製した。実施例4で得られたベーマイトナノロッドを、空気中で、600℃で5時間焼成することによって、白色の固体物質が得られた。
【0069】
図10は、本実施例で得られた白色の固体物質のX線回折パターンを示す。X線回折パターンから、この固体物質は、γ型の結晶構造を有するアルミナからなることが確認された。これにより、形状の大きな変化を起こすことなく、ベーマイトからγ−アルミナへの相転移が完全に行われたことがわかる。
【0070】
図11は、本実施例で得られたアルミナナノロッドのTEM画像である。この画像から、本実施例で得られたアルミナナノロッドは、短軸長さが14〜26nm、長軸長さが20〜150nmであり、均一な形状およびサイズを有していることが確認された。このアルミナナノロッドを、水に高濃度で分散させたところ、非常に優れた分散性を確認できた。
【0071】
(実施例6)
水熱処理の時間を変更した点以外は、実施例1と同様の方法でベーマイトナノロッドの合成を行った。本実施例では、水熱処理の時間を、10分、30分、1時間、4時間、12時間(実施例1と同じ)とした。得られたベーマイトナノロッドのTEM画像が、図12(a)〜(e)に示されている。その結果、水熱処理10分後からナノロッドが形成されていること、12時間反応させた後のナノロッドは、10分〜4時間反応させた後のナノロッドと比較すると凝集しにくいこと(より高い分散性を有すること)、が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドの製造方法によって得られるベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドは、優れた分散性と、粒子の形状およびサイズの高い均一性とを有する。したがって、樹脂材料のフィラー、特に放熱フィラーとして有用であり、さらに触媒を担持する担体としても有用である。
【0073】
本発明のCuAlO2膜の製造方法によって得られるCuAlO2膜は、優れた結晶性を有するので、p型半導体として機能できる。したがって、このCuAlO2膜は、表示素子、太陽電池およびタッチパネル等の用途に使用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明はベーマイトナノロッドおよびその製造方法、アルミナナノロッドおよびその製造方法、並びに、CuAlO2膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナは、高い熱伝導性および高い機械的強度等の優れた特性を有しているので、様々な用途に利用されている。また、アルミナの原料として有用なベーマイトも、アルミナと同様に、様々な用途に利用され得る。例えば、アルミナおよびベーマイトは、樹脂材料に熱伝導性および機械的強度等の特性を付与するためのフィラーとして、広く用いられている。また、高い比表面積と優れた耐熱性を有するアルミナおよびベーマイトは、各種用途の触媒担体としても利用されている。
【0003】
アルミナおよびベーマイトに求められる形状は、用途に応じて異なる。例えば、これらが樹脂材料のフィラーとして用いられる場合は、高い補強効果および放熱効果を得る目的で、高いアスペクト比を有する形状、すなわちロッド状または繊維状を有するアルミナおよびベーマイトが好適に用いられる。従来、高いアスペクト比を有するアルミナおよびベーマイトと、それらの製造方法が、数多く提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0004】
特許文献1および2では、角柱状アルミナとその製造方法が提案されている。この角柱状アルミナは、角柱状塩基性硝酸アルミニウムを焼成することによって製造される。ここで用いられる角柱状塩基性硝酸アルミニウムは、塩基性アルミニウム塩溶液に可溶性の硝酸塩を添加することによって製造される。
【0005】
特許文献3では、単分散性に富む繊維状のベーマイトとその製造方法が提案されている。このベーマイトは、ρ−およびχ−結晶構造を示すアルミナにベーマイトよりも溶解度の高いアルミナを混合したものを原料として用い、これに少なくとも1種類の酸を含有させて、水分の存在下で水熱処理を行うことによって製造される。
【0006】
特許文献4では、フィラーに適したベーマイト粒子およびアルミナ粒子として、アスペクト比が5〜80のベーマイト粒子およびアルミナ粒子が提案されている。このベーマイト粒子は、アルミニウム金属塩水溶液にアルカリ水溶液を添加してゲル状物質を生成し、このゲル状物質を含む反応混合物に熱処理を施すことによって製造される。また、このベーマイト粒子を焼成することによって、アルミナ粒子が製造される。
【0007】
微粒子化、均一性および高分散性を同時に実現するフィラーに適したアルミナ微粒子として、低アスペクト比の板状または球状のアルミナ微粒子も提案されている。例えば特許文献5では、粒子サイズが0.05〜5μmで、アスペクト比が3以下の、板状または球状のアルミナ微粒子が提案されている。このアルミナ微粒子の製造方法は、次のとおりである。まず、アルミニウム塩水溶液にアルカリ水溶液を添加して、アルミニウム水酸化物含有水溶液(pH10.5〜13.5)を調製する。この水溶液を水熱反応させて、アルミナ水和物(ベーマイト)を得る。このアルミナ水和物を焼成することによって、アルミナ微粒子が製造される。
【0008】
フィラーではなく、高強度アルミナ多孔質自立膜を形成するために用いられる、高アスペクト比を有する繊維状のベーマイト粒子またはアルミナ粒子も提案されている。特許文献6では、高アスペクト比を有する繊維状のベーマイト粒子またはアルミナ粒子を分散質とする、アルミナゾルが開示されている。このアルミナゾルは、出発原料であるアルミニウムアルコキシドを酸水溶液中で加水分解することによって作製される。
【0009】
以上のように、ベーマイト粒子およびアルミナ粒子に関し、優れた特性を有するベーマイト粒子およびアルミナ粒子と、その優れた特性を実現するための製造方法とが、数多く提案されている。
【0010】
ベーマイト粒子およびアルミナ粒子がどのような用途に使用される場合であっても、粒子の形状およびサイズの均一性と、分散性とは、非常に重要な特性である。したがって、従来のベーマイト粒子およびアルミナ粒子の分散性および粒子の均一性は、未だ十分とはいえず、さらなる向上が求められている。
【0011】
一方、ベーマイト粒子およびアルミナ粒子は、フィラー等の上記用途に限らず、銅アルミネート(CuAlO2)の製造に利用される場合もある。例えば、CuO、Cu2O、AlおよびAl2O3の混合物からCuAlO2微結晶を製造する方法が報告されている(非特許文献1)。
【0012】
デラフォサイト構造を有するCuAlO2は、近年、p型の透明酸化物半導体として見出された。このようなp型半導体は、表示素子、太陽電池およびタッチパネル等の用途に使用でき、非常に有用である。したがって、CuAlO2は、今後大いに期待される材料である。CuAlO2のp型半導体としての特性は、その結晶構造に起因する。したがって、p型半導体として機能するCuAlO2を合成するためには、優れた結晶性を実現する必要がある。従来、このような優れた結晶性を有するCuAlO2の合成には、通常、スパッタリングおよび電子ビーム蒸着のような、高真空物理的気相成長法が用いられている。しかし、より高い生産性を実現するためには、より簡便である湿式法によってCuAlO2を製造することが望ましい。
【0013】
湿式法を利用したCuAlO2の合成方法も、報告されている(例えば、特許文献7参照)。しかし、CuAlO2をより優れたp型半導体として機能させるためには、CuAlO2の結晶性をさらに改善し、好ましくは単相のCuAlO2を得ることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭58−161920号公報
【特許文献2】特開昭58−161921号公報
【特許文献3】国際公開第97/32817号パンフレット
【特許文献4】特開2006−62905号公報
【特許文献5】特開2008−195569号公報
【特許文献6】特開2010−132519号公報
【特許文献7】特開2007−31202号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Dean Y. Shahriari et al., “A High-Yield Hydrothermal Preparation of CuAlO2”, Inorganic Chemistry, 2001, 40, pp. 5734-5735
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、分散性と、粒子の形状およびサイズの均一性とがさらに向上した、ロッド状のベーマイト粒子(ベーマイトナノロッド)およびアルミナ粒子(アルミナナノロッド)を提供することを課題とする。
【0017】
本発明は、さらに、湿式法を利用して、優れたp型半導体として使用可能な、優れた結晶性を有するCuAlO2を合成する方法を提供することも、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理する工程と、
を含む、ベーマイトナノロッドの製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、上記のベーマイトナノロッドの製造方法によって製造された、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない、ベーマイトナノロッドを提供する。
【0020】
本発明は、
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理して、ベーマイトナノロッドを形成する工程と、
(III)前記ベーマイトナノロッドを450〜700℃の温度で焼成する工程と、
を含む、γ型の結晶構造を有するアルミナナノロッドの製造方法を提供する。
【0021】
本発明は、上記のアルミナナノロッドの製造方法によって製造された、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を含有しない、アルミナナノロッドを提供する。
【0022】
本発明は、
(I)上記のベーマイトナノロッドの製造方法によって得られたベーマイトナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記ベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程と、
を含む、デラフォサイト構造を有するCuAlO2膜の第1の製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、
(I)上記のアルミナナノロッドの製造方法によって得られたアルミナナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記アルミナナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程と、
を含む、デラフォサイト構造を有するCuAlO2膜の第2の製造方法を提供する。
【0024】
本発明は、上記のCuAlO2膜の第1および第2の製造方法によって製造されたCuAlO2膜も提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のベーマイトナノロッドの製造方法では、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体を原料として含み、かつ、アルカリ成分(アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素)を実質的に含有しない反応溶液を用いて、ベーマイトナノロッドを水熱合成する。本発明の方法によって得られるベーマイトナノロッドは、従来の方法で製造されるベーマイトナノロッドに比べて、非常に優れた分散性を有する。さらに、本発明の方法では、反応溶液にアルカリ成分が含まれないので、ベーマイトがa軸方向に成長しやすい。その結果、得られるベーマイトナノロッドの短軸長さおよび長軸長さのばらつきが非常に小さく、粒子の形状およびサイズの高い均一性が得られる。
【0026】
本発明のアルミナナノロッドの製造方法では、本発明のベーマイトナノロッドの製造方法で得られたベーマイトナノロッドを焼成することによって、アルミナナノロッドが得られる。本発明の焼成条件によってベーマイトナノロッドを焼成すると、ナノロッドの形状を維持したまま水が抜けて、γ型の結晶構造を有するアルミナナノロッドが得られる。したがって、ベーマイトナノロッドと同様に、短軸長さおよび長軸長さのばらつきが非常に小さく、粒子の形状およびサイズの均一性が高い、アルミナナノロッドとなる。さらに、本発明の方法によって得られるアルミナナノロッドは、従来の方法で製造されるアルミナナノロッドに比べて、非常に優れた分散性を有する。
【0027】
本発明のCuAlO2膜の第1および第2の製造方法は、本発明で得られたベーマイトナノロッドまたはアルミナナノロッドに銅化合物を担持させたものを前駆体として用いて、湿式法によってCuAlO2膜を製造する方法である。本発明の方法によれば、デラフォサイト構造を有する、優れた結晶性を有するCuAlO2膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1で得られたベーマイトナノロッドのX線回折パターンである。
【図2】実施例1で得られたベーマイトナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図3】実施例2で得られたアルミナナノロッドのX線回折パターンである。
【図4】実施例2で得られたアルミナナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図5】実施例3において、ベーマイトナノロッドに酢酸銅を担持させた前駆体を、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図6】(a)〜(d)は、実施例3において、ベーマイトナノロッドに酢酸銅を担持させた前駆体を焼成して得られた物質を、透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図7】実施例3において、ベーマイトナノロッドに酢酸銅を担持させた前駆体を焼成して得られた物質のX線回折パターンである。
【図8】実施例4で得られたベーマイトナノロッドのX線回折パターンである。
【図9】実施例4で得られたベーマイトナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図10】実施例5で得られたアルミナナノロッドのX線回折パターンである。
【図11】実施例5で得られたアルミナナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図12】(a)〜(e)は、それぞれ、実施例6で得られたベーマイトナノロッドを、透過型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態1)
本発明のベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドの製造方法と、当該方法によって製造されるベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドについて、具体的に説明する。
【0030】
まず、ベーマイトナノロッドの製造方法について説明する。本実施の形態のベーマイトナノロッドの製造方法は、以下の工程(I)および(II)を含む。
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程。
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理する工程。
【0031】
出発原料として、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体が用いられる。アルミニウムのカルボン酸塩としては、例えば、ギ酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム(Al(OH)(OCOCH3)2)、トリス酢酸アルミニウム、塩基性2−エチルヘキサン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ナフテン酸アルミニウム等を用いることができる。アルミニウムのβ−ジケトン錯体としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート(Al(acac)3)、ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジケトアルミニウム、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジケトアルミニウム等を用いることができる。これらの中でも、塩基性酢酸アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトナートが好適に用いられる。
【0032】
工程(I)において、出発原料および水を用いて溶液(反応溶液)を調製する。この反応溶液は、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素(アルカリ成分)を実質的に含まない。なお、ここでいう、「反応溶液がアルカリ成分を実質的に含まない」とは、反応溶液にアルカリ成分を添加しないという意味であり、不純物としてアルカリ成分が含まれる場合はその含有量が1重量%以下(望ましくは0.1重量%以下)であるという意味である。従来、アルミニウム塩を原料としてベーマイトを水熱合成によって作製する場合、反応溶液にアルカリ成分が添加されることが一般的であった。反応溶液にアルカリ成分を添加する理由は、アルミニウム塩から水酸化アルミニウムを生成し、生成した水酸化アルミニウム(中性では水に不溶)の溶解度を上げるためと考えられる。しかし、反応溶液がアルカリ成分を含んでいる場合、合成されるベーマイトのa軸方向への成長が阻害されるので、アスペクト比が高いベーマイトナノロッドを得ることが困難となる。これに対し、本実施の形態の方法では、原料としてアルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体を用いることにより、反応溶液にアルカリ成分を添加しなくても、ベーマイトを水熱合成することができる。このように、本実施の形態の方法では、反応溶液にアルカリ成分が含まれないので、ベーマイトがa軸方向に成長しやすい。その結果、得られるベーマイトナノロッドの短軸長さおよび長軸長さのばらつきが非常に小さく、粒子の形状およびサイズの高い均一性が得られる。さらに、本実施の形態の方法で合成されたベーマイトナノロッドは、従来の方法で合成されるベーマイトナノロッドと比較して、非常に優れた分散性を有する。これは、反応溶液にアルカリ成分が含まれないことにより、得られるベーマイトナノロッドの表面に不純物であるアルカリ成分が存在しないことも、理由の一つとして考えられる。
【0033】
反応溶液には、原料および水以外に、メタノール及びエタノール等のアルコール類等が含まれていてもよい。しかし、より優れた分散性と、粒子の形状およびサイズのより高い均一性とを実現するためには、原料および水以外の成分(不純物)は、極力含まないことが望ましい。したがって、本実施の形態の方法では、前記工程(I)で調製される反応溶液が、実質的に、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とからなっていてもよい。その場合でも、本実施の形態の方法によれば、ベーマイトナノロッドを水熱合成することができる。なお、「反応溶液が、実質的に、原料と水とからなる」とは、反応溶液に含まれる原料および水以外の成分の含有量が、5重量%以下(好ましくは1重量%以下)であることを意味する。
【0034】
工程(II)では、工程(I)で調製した反応溶液を、100〜300℃の温度で水熱処理する。水熱処理の時間は、用いる原料および水熱処理の温度等によって適宜決定すればよいが、例えば1〜24時間である。
【0035】
水熱処理後、反応生成物を遠心分離器で分離して、これを繰り返し水洗して、さらに乾燥させることによって、ベーマイトナノロッドを得ることができる。本実施の形態の方法によって合成されるベーマイトナノロッドは、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない。「ベーマイトナノロッドがアルカリ成分を実質的に含有しない」とは、ベーマイトナノロッドに含まれるアルカリ成分の含有量が、1重量%以下(好ましくは0.1重量%以下)であることを意味する。
【0036】
次に、アルミナナノロッドの製造方法について説明する。本実施の形態のアルミナナノロッドの製造方法は、以下の工程(I)〜(II)を含む。
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程。
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理して、ベーマイトナノロッドを形成する工程。
(III)前記ベーマイトナノロッドを450〜700℃の温度で焼成する工程。
【0037】
本実施の形態では、アルミナナノロッドは、上述の方法で製造されたベーマイトナノロッドを利用して製造される。したがって、上記のアルミナナノロッドの製造方法における工程(I)および(II)の詳細は、ベーマイトナノロッドの製造方法における工程(I)および(II)とそれぞれ同じである。
【0038】
工程(II)の後、450〜700℃の温度でベーマイトナノロッドを焼成して、アルミナナノロッドを得る(工程(III))。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜決定すればよいが、例えば1〜5時間である。この焼成条件によってベーマイトナノロッドを焼成すると、ナノロッドの形状を維持したまま水が抜けて、γ型の結晶構造を有するアルミナナノロッドが得られる。したがって、ベーマイトナノロッドと同様に、短軸長さおよび長軸長さのばらつきが非常に小さく、粒子の形状およびサイズの均一性が高い、アルミナナノロッドとなる。さらに、本発明の方法によって得られるアルミナナノロッドは、従来の方法で製造されるアルミナナノロッドに比べて、非常に優れた分散性を有する。例えば、焼成後のアルミナナノロッドの粉体を水に入れた場合、同様のサイズの従来のアルミナナノロッドであれば水中で凝集してしまうのに対し、本実施の形態で製造されるアルミナナノロッドは再分散させることができる。このような良好な分散性は、ベーマイトナノロッドと同様に、得られるアルミナナノロッドの表面に不純物であるアルカリ成分が存在しないことも、理由の一つとして考えられる。
【0039】
本実施の形態の方法によって製造されるアルミナナノロッドは、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を含有しない。
【0040】
本実施の形態の方法によって得られるベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドは、優れた分散性と、粒子の形状およびサイズの高い均一性とを有する。したがって、これらの粒子は、フィラーとして使用された場合に、樹脂材料等の分散媒と容易に混合される。それゆえ、これらの粒子をフィラーとして樹脂に分散させれば、樹脂材料に補強効果および放熱特性等を効果的に付与できる。さらに、これらの粒子はa軸方向に結晶が成長したロッド状であるため、高い放熱特性を有する。したがって、これらの粒子をフィラーとして含む樹脂材料は、優れた放熱材料としての利用が可能である。
【0041】
また、本実施の形態の方法によって得られるベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドは、金属イオンを均一に分散して担持することができ、さらに特定の結晶面が多く露出している。したがって、このベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドは、触媒を担持する担体としても有用である。
【0042】
(実施の形態2)
本発明のCuAlO2膜の製造方法と、当該方法によって製造されるCuAlO2膜について、具体的に説明する。
【0043】
本実施の形態のCuAlO2膜の製造方法は、以下の工程(I)〜(III)を含む。
(I)実施の形態1で説明したベーマイトナノロッドの製造方法によって得られたベーマイトナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記ベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程。
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程。
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程。
【0044】
本実施の形態によれば、デラフォサイト構造を有する、優れた結晶性を有するCuAlO2膜が得られる。また、この方法によれば、単相のCuAlO2膜を得ることも可能である。
【0045】
工程(I)では、ベーマイトナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、銅化合物がベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する。銅化合物としては、例えば、ギ酸銅、酢酸銅(I)(Cu(OCOCH3))、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等が使用できる。これらの中でも、酢酸銅(I)が好適に使用できる。溶剤には、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n―ブチル、トルエン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が使用できる。
【0046】
工程(I)で得られた前駆体を、CuAlO2膜を形成する基板上に塗布して、所望の厚さの塗膜を形成する(工程(II))。塗布方法は、特に限定されない。スクリーン印刷、インクジェット印刷およびスピンコーティング等の公知の方法が使用できる。
【0047】
その後、塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成して、CuAlO2膜を得る(工程(III))。焼成時間は、焼成温度等に応じて適宜決定すればよいが、例えば1〜5時間である。
【0048】
実施の形態1で説明した方法によって得られたベーマイトナノロッドは、その表面に銅化合物を均一に担持することができる。さらに、ベーマイトナノロッドに銅化合物が担持されている前駆体は、銅化合物の疎水的相互作用により自己集合する。その結果、前駆体間の固相反応が効果的に起こるので、優れた結晶性を有する、デラフォサイト構造のCuAlO2膜が得られる。ここで得られるCuAlO2膜は、p型半導体として使用できる、優れた特性を有する。本実施の形態で得られるCuAlO2膜は、非常に高いゼーベック係数を有することができ、例えば200μV/Kよりも高いゼーベック係数を実現できる。
【0049】
なお、工程(I)で担体として用いられるベーマイトナノロッドの代わりに、実施の形態1で説明したアルミナナノロッドの製造方法によって得られたアルミナナノロッドを用いても、同様の効果が得られる。すなわち、アルミナナノロッドを用いる場合でも、優れた結晶性を有する、デラフォサイト構造のCuAlO2膜が得られる。このCuAlO2膜も、p型半導体として使用できる、優れた特性を有する。
【実施例】
【0050】
次に、本発明について、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
3.5mmolの塩基性酢酸アルミニウム(シグマアルドリッチ社製)を、70mLの蒸留水に溶解させて、反応溶液を調製した。この反応溶液をオートクレーブに入れて、200℃、12時間で水熱処理を行った。その後、オートクレーブを室温まで冷却し、反応生成物をオートクレーブから取り出した。次に、反応生成物を遠心分離器で分離して、これを繰り返し水洗した。次に、得られた物質を60℃で一晩乾燥させて、白色粉体を得た。
【0052】
図1は、本実施例で得られた白色粉体のX線回折パターンを示す。X線回折パターンから、この白色粉体は、(200)結晶面に特異的に配向しており、ベーマイトの結晶で構成されている(ベーマイト単相)であることが確認された。
【0053】
図2は、本実施例で得られたベーマイトナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)の画像である。この画像から、本実施例で得られたベーマイトナノロッドは、短軸長さが10〜30nm、長軸長さが60〜400nmであり、均一な形状およびサイズを有していることが確認された。また、このベーマイトナノロッドを、水に高濃度で分散させたところ、非常に優れた分散性を確認できた。さらにこの分散液を2週間放置したところ、粒子の沈殿および凝集は確認されなかった。
【0054】
本実施例で起こった反応は、以下の式(1)および(2)で表すことができる。
Al(OH)(OCOCH3)2+2H2O→Al(OH)3+2CH3COOH (1)
Al(OH)3→AlOOH+H2O (2)
【0055】
(実施例2)
実施例1で得られたベーマイトナノロッドを用いて、アルミナナノロッドを作製した。実施例1で得られたベーマイトナノロッドを、空気中で、600℃で1時間焼成することによって、白色の固体物質が得られた。
【0056】
図3は、本実施例で得られた白色の固体物質のX線回折パターンを示す。X線回折パターンから、この固体物質は、γ型の結晶構造を有するアルミナからなることが確認された。このX線回折パターンによれば、このγ−アルミナが(400)結晶面に特異的に配向していることがわかる。これにより、形状の大きな変化を起こすことなく、ベーマイトからγ−アルミナへの相転移が完全に行われたことがわかる。
【0057】
図4は、本実施例で得られたアルミナナノロッドのTEM画像である。この画像から、本実施例で得られたアルミナナノロッドは、短軸長さが10〜20nm、長軸長さが40〜300nmであり、均一な形状およびサイズを有していることが確認された。また、このアルミナナノロッドを、水に高濃度で分散させたところ、非常に優れた分散性を確認できた。
【0058】
本実施例で起こった反応は、以下の式(3)で表すことができる。
2AlOOH→Al2O3+H2O (3)
【0059】
(実施例3)
実施例1で得られたベーマイトナノロッドを用いて、CuAlO2膜を作製した。まず、0.12g(2mmol)のベーマイトナノロッドと、0.245g(2mmol)の酢酸銅(I)(シグマアルドリッチ社製)とを、2mLのピリジンに溶解させて、酢酸銅がベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製した。図5は、この前駆体のTEM画像を示す。この画像では、粒子状のものがベーマイトナノロッドの表面に均一に担持されていることが確認できる。すなわち、酢酸銅がベーマイトナノロッドの表面に均一に担持された前駆体が作製されていることがわかる。
【0060】
次に、作製された前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成した。この塗膜を乾燥させた後、異なる温度(400℃、600℃、800℃、1000℃および1150℃)で、それぞれ、この塗膜を2時間焼成した。焼成は空気中で行われた。
【0061】
焼成によって得られた物質の状態を、TEM画像および走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)の画像で確認した。図6(a)〜(d)は、それぞれ、400℃、600℃、1000℃および1150℃の焼成で得られた物質の、TEM画像(右)およびSEM画像(左)を示す。さらに、図7は、400℃、600℃、800℃、1000℃および1150℃の焼成で得られた物質のX線回折パターンを示す。その結果、次のことが確認された。
【0062】
(1)焼成温度が400℃の場合、酢酸銅は酸化銅(CuO)に変化したが、白色のベーマイトナノロッドは変化せずに残っていた。
(2)焼成温度が600℃の場合、ベーマイトナノロッドはγ−アルミナナノロッドに変化しはじめた。同時に、CuOとγ−アルミナナノロッドとが反応して、CuAl2O4相が形成されはじめた。
(3)焼成温度が800℃の場合、CuOと、CuOとγ−アルミナナノロッドとが反応して生じたCuAl2O4相とが共に存在していた。
(4)焼成温度が1000℃の場合、CuOと、CuOとγ−アルミナナノロッドとが反応して生じたCuAl2O4相とが共に存在していた。800℃で得られた物質よりも、CuAl2O4相のピーク強度が高かった。
(5)焼成温度が1150℃の場合、X線回折では、CuAl2O4相に起因する弱いピークが少しだけ確認されたものの、前駆体の形態変換による物質は確認されず、CuAlO2の結晶が生成したことが確認された。
【0063】
以上より、1150℃の焼成によって単相のCuAlO2膜が得られた。
【0064】
次に、本実施例で得られたCuAlO2の電気/熱特性を評価した。具体的には、CuAlO2のゼーベック係数、熱伝導率および電気伝導率を測定した。測定用サンプルは、次のように作製した。まず、本実施例で準備した前駆体を乾燥させ、この乾燥させた前駆体を40MPaでプレスしてペレット化した後、これを空気中で1150℃で4時間焼成した。得られたペレットをさらに40MPaでプレスして、空気中で1150℃で4時間焼成した。得られたペレットを測定用サンプル(約3mm角、厚さ約1mm)とした。測定用サンプルの充填率は約85%であった。ゼーベック係数、熱伝導性および電気伝導性は、物理特性測定装置(カンタム・デザイン社製、「PPMS」)を用いて測定された。その結果、温度300Kで、ゼーベック係数は560μV/K、電気伝導率は1.3Ω・m、熱伝導率は19.4W/(K.m)であった。このCuAlO2のゼーベック係数は非常に高く、得られたCuAlO2はp型半導体と認められた。
【0065】
(実施例4)
3.5mmolのアセチルアセトナートと70mLの蒸留水とを混合して、10分間攪拌することによって、白色沈殿を得た。これをオートクレーブに入れて、窒素雰囲気下で、200℃、12時間の水熱処理を行った。その後、オートクレーブを室温まで冷却し、反応生成物をオートクレーブから取り出した。次に、反応生成物を遠心分離器で分離して、これを繰り返し水洗した。次に、得られた物質を蒸発装置を用いて乾燥させて、白色粉体を得た。
【0066】
図8は、本実施例で得られた白色粉体のX線回折パターンを示す。X線回折パターンから、この白色粉体はベーマイトの結晶で構成されている(ベーマイト単相)であることが確認された。
【0067】
図9は、本実施例で得られたベーマイトナノロッドのTEM画像である。この画像から、本実施例で得られたベーマイトナノロッドは、短軸長さが6〜30nm、長軸長さが14〜68nmであり、均一な形状およびサイズを有していることが確認された。このベーマイトナノロッドを、水に高濃度で分散させたところ、非常に優れた分散性を確認できた。さらにこの分散液を2週間放置したところ、粒子の沈殿および凝集は確認されなかった。
【0068】
(実施例5)
実施例4で得られたベーマイトナノロッドを用いて、アルミナナノロッドを作製した。実施例4で得られたベーマイトナノロッドを、空気中で、600℃で5時間焼成することによって、白色の固体物質が得られた。
【0069】
図10は、本実施例で得られた白色の固体物質のX線回折パターンを示す。X線回折パターンから、この固体物質は、γ型の結晶構造を有するアルミナからなることが確認された。これにより、形状の大きな変化を起こすことなく、ベーマイトからγ−アルミナへの相転移が完全に行われたことがわかる。
【0070】
図11は、本実施例で得られたアルミナナノロッドのTEM画像である。この画像から、本実施例で得られたアルミナナノロッドは、短軸長さが14〜26nm、長軸長さが20〜150nmであり、均一な形状およびサイズを有していることが確認された。このアルミナナノロッドを、水に高濃度で分散させたところ、非常に優れた分散性を確認できた。
【0071】
(実施例6)
水熱処理の時間を変更した点以外は、実施例1と同様の方法でベーマイトナノロッドの合成を行った。本実施例では、水熱処理の時間を、10分、30分、1時間、4時間、12時間(実施例1と同じ)とした。得られたベーマイトナノロッドのTEM画像が、図12(a)〜(e)に示されている。その結果、水熱処理10分後からナノロッドが形成されていること、12時間反応させた後のナノロッドは、10分〜4時間反応させた後のナノロッドと比較すると凝集しにくいこと(より高い分散性を有すること)、が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドの製造方法によって得られるベーマイトナノロッドおよびアルミナナノロッドは、優れた分散性と、粒子の形状およびサイズの高い均一性とを有する。したがって、樹脂材料のフィラー、特に放熱フィラーとして有用であり、さらに触媒を担持する担体としても有用である。
【0073】
本発明のCuAlO2膜の製造方法によって得られるCuAlO2膜は、優れた結晶性を有するので、p型半導体として機能できる。したがって、このCuAlO2膜は、表示素子、太陽電池およびタッチパネル等の用途に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理する工程と、
を含む、ベーマイトナノロッドの製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)で調製される前記溶液が、実質的に、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とからなる、
請求項1に記載のベーマイトナノロッドの製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)において、前記溶液が、塩基性酢酸アルミニウムまたはアルミニウムアセチルアセトナートを含む、
請求項1または2に記載のベーマイトナノロッドの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の方法によって製造された、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない、ベーマイトナノロッド。
【請求項5】
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理して、ベーマイトナノロッドを形成する工程と、
(III)前記ベーマイトナノロッドを450〜700℃の温度で焼成する工程と、
を含む、γ型の結晶構造を有するアルミナナノロッドの製造方法。
【請求項6】
前記工程(I)で調製される前記溶液が、実質的に、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とからなる、
請求項5に記載のアルミナナノロッドの製造方法。
【請求項7】
前記工程(I)において、前記溶液が、塩基性酢酸アルミニウムまたはアルミニウムアセチルアセトナートを含む、
請求項5または6に記載のアルミナナノロッドの製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか1項に記載の方法によって製造された、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない、アルミナナノロッド。
【請求項9】
(I)請求項1〜3の何れか1項に記載の方法によって得られたベーマイトナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記ベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程と、
を含む、デラフォサイト構造を有するCuAlO2膜の製造方法。
【請求項10】
(I)請求項5〜7の何れか1項に記載の方法によって得られたアルミナナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記アルミナナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程と、
を含む、デラフォサイト構造を有するCuAlO2膜の製造方法。
【請求項11】
前記銅化合物が酢酸銅(I)である、
請求項9または10に記載のCuAlO2膜の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11の何れか1項に記載の方法によって作製された、CuAlO2膜。
【請求項1】
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理する工程と、
を含む、ベーマイトナノロッドの製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)で調製される前記溶液が、実質的に、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とからなる、
請求項1に記載のベーマイトナノロッドの製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)において、前記溶液が、塩基性酢酸アルミニウムまたはアルミニウムアセチルアセトナートを含む、
請求項1または2に記載のベーマイトナノロッドの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の方法によって製造された、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない、ベーマイトナノロッド。
【請求項5】
(I)アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とを含み、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含まない溶液を調製する工程と、
(II)前記溶液を100〜300℃の温度で水熱処理して、ベーマイトナノロッドを形成する工程と、
(III)前記ベーマイトナノロッドを450〜700℃の温度で焼成する工程と、
を含む、γ型の結晶構造を有するアルミナナノロッドの製造方法。
【請求項6】
前記工程(I)で調製される前記溶液が、実質的に、アルミニウムのカルボン酸塩またはアルミニウムのβ−ジケトン錯体と、水とからなる、
請求項5に記載のアルミナナノロッドの製造方法。
【請求項7】
前記工程(I)において、前記溶液が、塩基性酢酸アルミニウムまたはアルミニウムアセチルアセトナートを含む、
請求項5または6に記載のアルミナナノロッドの製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか1項に記載の方法によって製造された、短軸長さ5〜30nm、長軸長さ20〜1000nm、アスペクト比2〜200であり、かつ、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を実質的に含有しない、アルミナナノロッド。
【請求項9】
(I)請求項1〜3の何れか1項に記載の方法によって得られたベーマイトナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記ベーマイトナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程と、
を含む、デラフォサイト構造を有するCuAlO2膜の製造方法。
【請求項10】
(I)請求項5〜7の何れか1項に記載の方法によって得られたアルミナナノロッドと、銅化合物とを溶剤に溶解させて、前記銅化合物が前記アルミナナノロッドの表面に担持された前駆体を作製する工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前駆体を基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
(III)前記塗膜を1050〜1300℃の温度で焼成する工程と、
を含む、デラフォサイト構造を有するCuAlO2膜の製造方法。
【請求項11】
前記銅化合物が酢酸銅(I)である、
請求項9または10に記載のCuAlO2膜の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11の何れか1項に記載の方法によって作製された、CuAlO2膜。
【図1】
【図3】
【図7】
【図8】
【図10】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図12】
【図3】
【図7】
【図8】
【図10】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−23419(P2013−23419A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161270(P2011−161270)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
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