説明

ペダル装置

【課題】金属プレートを表面に取り付けるパッドにおいて、金属プレートとパッドとの一体性を高めることができるペダル装置を提供する。
【解決手段】表面に金属プレート18が取り付けられた軟質性パッドが、ペダルプレートの表面に被せられており、金属プレート18に軟質性パッド内へと伸びる部分が設けられ、該部分に貫通孔18hが形成され、該貫通孔18h内を軟質性パッドの材料が通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のペダル装置としては、特許文献1に記載されたものがある。
【特許文献1】特開平6−51854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる公報に記載されたものは、ペダルプレートの表面にパッドを被せており、ペダルプレートの手前部分を他の部分よりも低く形成して、パッドの手前部分を肉厚に形成することにより、パッドの耐久性を上げるようにしているが、該パッドが単なるゴムパッドであるため、デザイン上、スポーティには見えないという課題がある。そこで、近年、よりペダル装置をスポーティに見せるために、ペダルパッドの表面に金属プレートを取り付けたものが見うけられる。しかしながら、そのようなペダル装置では、金属プレートとパッドとの一体性についての問題がある。
【0004】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、請求項1ないし3記載の発明は、金属プレートを表面に取り付けるパッドにおいて、金属プレートとパッドとの一体性を高め金属プレートに抜け制限機能を持たせることができるペダル装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、表面に金属プレートが取り付けられた軟質性パッドを、ペダルプレートの表面に被せてなるペダル装置において、
前記金属プレートに前記軟質性パッド内へと伸びる部分が設けられ、該部分に貫通孔が形成され、該貫通孔内を軟質性パッドの材料が通過していることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記金属プレートにその外縁部から裏面側に折曲された爪部が形成されており、該爪部に前記貫通孔が形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記軟質性パッドに、該軟質性パッドの表面にある金属プレートの外縁部の外周を囲むようにした土手部が設けられ、該土手部の下方に前記爪部が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属プレートに形成された貫通孔内を軟質性パッドの材料が通過していることにより、金属プレートと軟質性パッドとの一体性を高め金属プレートに軟質性パッドからの抜け制限機能を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1ないし図3は、本発明にかかるペダル装置の実施形態を表す図である。
【0011】
図において、10はペダル装置であり、その基端が揺動可能に図示していない車体に取り付けられるペダルアーム14と、ペダルアーム14の先端に設けられるペダルプレート12と、を有している。ペダルプレート12の表面には、ゴム等からなる軟質性パッド16が被されている。そして、さらにパッド16の表面には、金属プレート18が取り付けられている。金属プレート18には、複数の開口18aが形成されており、この開口18aからは、パッド16の表面から突出部16aが突出している。さらに、パッド16には、パッド16の表面にある金属プレート18の外縁部の外周を所定の肉厚で囲むようにして、金属プレート18の外縁部よりも盛り上がった土手部16bが設けられている。パッド16をペダルプレート12に被せるべく、パッド16の外縁部には、下方に伸びた後、内側に折曲された係止部16dが形成されている。
【0012】
略矩形平面形状を持つパッド16の外周囲を構成する4辺の各中点部分付近で、かつパッド16の外周から所定の肉厚分内側の部分には、前記辺に沿うようにパッド16の表裏を貫通するスリット状の貫通孔16eが形成されており、対応して略矩形平面形状を持つ金属プレート18の外周囲を構成する4辺の各中点部分付近には、裏面側に折曲された爪部18bが形成されており、この爪部18bが貫通孔16eを貫通している。さらに、爪部18bの先端部は、バッド16の裏面16fに沿って折曲された裏面折曲部(係止部)18cとなっており、パッド16の裏面16fには該裏面折曲部18cを収容する凹部16cが形成されている。
【0013】
かかる金属プレート18が取り付けられたパッド16を組み立てる参考例としては、図4に示したように、裏面折曲部18cが形成されていない状態の金属プレート18の爪部18bをパッド16の貫通孔16eに差し込む(矢印A)。このときに、パッド16の係止部16dをめくって(矢印B)、貫通孔16eに爪部18bを貫通させる。次いで、貫通した爪部18bの先端部を折曲して(矢印C)、裏面折曲部18cを形成し、該裏面折曲部18cをパッド16の凹部16cに収める。貫通孔16eが、パッド16の外周囲を構成する辺の各中点部分付近にそれぞれ形成されているため、作業の際に貫通孔16eを露出させるべく係止部16dを大きく捲ることができ、作業性を向上させることができる。
【0014】
こうして、金属プレート18が一体的に組み付けられたパッド16をペダルプレート12に被せて、パッド16の係止部16dをペダルプレート12の裏面の外縁部に係止して、パッド16をペダルプレート12の表面に被着する。この装着作業の際に、爪部18bは土手部16bの内側にあるので、爪部18bが、係止部16dの撓みを阻害することがない。
【0015】
このようにして、被着されたパッド16には、金属プレート18が取り付けられており、見栄えを向上させることができると共に、パッド16の表面にある金属プレート18の外縁部の外周を囲むようにして金属プレート18よりも盛り上がった土手部16bが設けられることにより、土手部16bによってペダルプレート12を踏む靴などが金属プレート18の端部に直接当たることなく、靴などが傷付くことを防ぐことができる。
【0016】
金属プレート18は、その裏面折曲部18cがパッド16とペダルプレート12との間に挟持されるため、金属プレート18が簡単に外れることはない。また、裏面折曲部18cは、パッド16とペダルプレート12との間にあって、その端部は、全く隠されているため、裏面折曲部18cによっても靴などが傷付けられるおそれはない。
【0017】
図6及び図2の仮想線で示すように、パッド16の凹部16cが形成されている部分以外の裏面16fは、金属プレート18の裏面折曲部18cの裏面よりもペダルプレート12側へと突出するようにして予め形成されていると良く、これにより、パッド16がペダルプレート12に装着されたときに、パッド16の裏面16fの弾力をペダルプレート12に確実に伝達することができるようになっている。
【0018】
図8は、パッド16に対して後から金属プレート18の爪部18bを差し込むことによってパッド16を製造するのではなく、インサート成形によってパッド16成形時に金属プレート18と一体化することができる本発明の実施形態によるペダル装置のためのパッド製造装置を表す断面図である。
【0019】
このパッド製造装置30は、上型32と下型34とを備えており、上型32がパッド16の表面側にある突出部16a及び土手部16bを主に成形する一方で、下型34がパッド16の裏面側にある係止部16dや凹部16cを成形するものである。下型34はさらに、係止部16d及び凹部16c等の部分を成形するための型構成を取るために、複数の下型部材から構成されている。
【0020】
図7は、インサートとなる金属プレート18を示しており、該金属プレート18の爪部18bの先端部には、内側に折曲された裏面折曲部18cが形成されている。さらに、爪部18bの中央部分には、貫通孔18hが形成されている。
【0021】
下型34には、金属プレート18の爪部18bの先端部の一部に当接する小さな位置決め突起34aが設けられる。図9に示したように、この位置決め突起34aは、金属プレート18の4つの爪部18bに対応して4つ形成されている。爪部18bの先端部の内側に折れ曲がった裏面折曲部18cに対応して、各位置決め突起34aが内側から裏面折曲部18cに当接することで、インサート成形する際の金属プレート18の型内での位置決めを行っている。こうして、金属プレート18の爪部18bを位置決めのための手段として、利用することができる。金属プレート18がセットされた型内に、パッド16を構成する樹脂の溶融材料を充填することにより、パッド16及び金属プレート18とを簡単に一体化することができる。そして、位置決め突起34aは、裏面折曲部18cに比べ小さなものなので、成形後の製品のパッド16本来の弾性力・可撓性に殆ど影響を与えない。
【0022】
下型34の位置決め突起34aの周りの部分は、金属プレート18の裏面折曲部18cが載置されている部分よりも低くなっており、これにより、金属プレート18の裏面折曲部18cをパッド16の裏面16fに設けられた凹部16cに収容すると共に、パッド16の凹部16c以外の一般部の裏面16fを、金属プレート18の裏面折曲部18cの裏面よりもペダルプレート12側へ突出するようにして、パッド16をペダルプレート12に被せた際に、該パッド16の裏面16fからの弾力をペダルプレート12に与えることができる。さらに、貫通孔18hで、土手部16b(外)とパッド16の本体部分(内)とが繋がっているので、爪部18bがある部分の土手部16bが外方に捲れてしまうのを制限できる。また、貫通孔18hにパッド16の材料が通っていれば、爪部18bに裏面折曲部18cを特段設けなくとも、金属プレート18の抜け制限機能を果たすことが可能となる。この場合、下型34の位置決め突起34aは、後述する図10の実施形態の位置決め突起44aのように下型34の端部近傍に設定することもでき、爪部18bの下縁で位置決めが可能となる。
【0023】
図10は、インサート成形によってパッド16成形時に金属プレート18−1と一体化することができる本発明の実施形態によるペダル装置のためのパッド製造装置の他の例を表す断面図である。
【0024】
このパッド製造装置40は、上型42と下型44とを備えており、上型42がパッド16の表面側にある突出部16a及び土手部16bを主に成形する一方で、下型44がパッド16の裏面側にある係止部16dや凹部16cを成形するものである。下型44は、係止部16d及び凹部16c等の部分を成形するための型構成を取るために、複数の下型部材から構成されている。
【0025】
この例において、インサートとなる金属プレート18−1は、略矩形平面状の金属プレート18−1の各辺から爪部を形成する代わりに、対向する2辺から裏面側に折曲された爪部18−1bが形成されている。この爪部18−1bの先端部は、2つに分割され、それぞれが、内側に折曲された裏面折曲部18−1c、18−1cとなっている。分割された裏面折曲部18−1c、18−1cの間には、スリット18−1fが形成されている。
【0026】
下型44には、金属プレート18のスリット18−1fの中に挿入されて、爪部18bに当接する位置決め突起44aが設けられる。図11に示したように、この位置決め突起44aは、金属プレート18−1の2つのスリット18−1f、18−1fに対応して2つ形成されており、それぞれスリット18−1f、18−1f内で、裏面折曲部18−1c、18−1cに挟まれている。これにより、位置決め突起44aは、インサート成形する際の金属プレート18−1の型内での位置決めを行っており、こうして、金属プレート18−1の爪部18−1bを位置決めのための手段として、利用することができる。金属プレート18−1がセットされた型内に、パッド16を構成する樹脂の溶融材料を充填することにより、パッド16及び金属プレート18−1とを簡単に一体化することができる。
【0027】
下型44の位置決め突起44aの周りの部分は、金属プレート18−1の裏面折曲部18−1cが載置されている部分よりも低くなっており、これにより、図8の例と同様に、金属プレート18−1の裏面折曲部18−1cをパッド16の裏面16fに設けられた凹部16cに収容すると共に、パッド16の凹部16c以外の一般部の裏面16fは、金属プレート18−1の裏面折曲部18−1cの裏面よりもペダルプレート12側へ突出するようにして、パッド16をペダルプレート12に被せた際に、該パッド16の裏面16fからの弾力をペダルプレート12に与えることができる。パッド16をペダルプレート12に被せた際に、該パッド16の裏面16fからの弾力をペダルプレート12に与えることができる。
【0028】
図12は、図8のパッド製造装置のさらなる変形例であり、パッド製造装置50が、上型52と下型54とを備えており、上型52と下型54とのそれぞれの斜面52b、54b同士を斜めに突き当てるようにして、この突き当て面の端部が、係止部16dの裏面角部にくるようにする。これにより、成形後には、係止部16dの可撓性を利用して、パッドを型から取り出すことができ、少ない部品点数でパッド製造装置を構成することができる。下型54の位置決め突起54aは、図8の位置決め突起34aと同じものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかるペダル装置の実施形態を表す斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って見た断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿って見た断面図である。
【図4】金属プレートをパッドに取り付ける際の参考例を示す説明断面図である。
【図5】金属プレートが取り付けられたパッドの、ペダルプレートに被せる前の、底面図である。
【図6】図5の6−6線に沿って見た断面図である。
【図7】図1の金属プレートの斜視図である。
【図8】インサート成形によってパッド成形時に金属プレートと一体化することができる本発明の実施形態によるペダル装置のためのパッド製造装置を表す断面図である。
【図9】図8の9−9線に沿って見た断面図である。
【図10】インサート成形によってパッド成形時に金属プレートと一体化することができる本発明の実施形態によるペダル装置のためのパッド製造装置の他の例を表す断面図である。
【図11】図10の11−11線に沿って見た断面図である。
【図12】インサート成形によってパッド成形時に金属プレートと一体化することができる本発明の実施形態によるペダル装置のためのパッド製造装置のさらなる変形例を表す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 ペダル装置
12 ペダルプレート
14 ペダルアーム
16 パッド
16b 土手部
18、18−1 金属プレート
18b、18−1b 爪部
18h 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に金属プレートが取り付けられた軟質性パッドを、ペダルプレートの表面に被せてなるペダル装置において、
前記金属プレートに前記軟質性パッド内へと伸びる部分が設けられ、該部分に貫通孔が形成され、該貫通孔内を軟質性パッドの材料が通過していることを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
前記金属プレートにはその外縁部から裏面側に折曲された爪部が形成されており、該爪部に前記貫通孔が形成されることを特徴とする請求項1記載のペダル装置。
【請求項3】
前記軟質性パッドに、該軟質性パッドの表面にある金属プレートの外縁部の外周を囲むようにした土手部が設けられ、該土手部の下方に前記爪部が設けられることを特徴とする請求項2記載のペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−294057(P2006−294057A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175457(P2006−175457)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【分割の表示】特願平11−259517の分割
【原出願日】平成11年9月13日(1999.9.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】