説明

ペットと共生する居住用集合住宅の住居内設備装置。

【課題】 集合住宅内において、ペットを飼っている住居者がペットと共生する快適な住居設備装置。
【解決手段】 集合住宅をバリアフリー設計施工とし、居住部分について居住者とペットが共生できる居室の設備装置と、集合住宅内の共用部分にペットのための設備装置を設ける。実施例としてペットのくぐり抜けドア、温水シャワーシャンプー台、ペット用の汚物流し台と足洗い場、リードフックの取付、ペットの飛び出し防止ゲート、その他である。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、一般にマンション、コープ等と云われている集合住宅において、居住者が犬、猫、その他のペットとして飼育している動物と共生する住居内設備装置に関するものである。
【0002】
【従来の集合住宅における居住者とペットの住宅環境】
現在、日本においても動物に対する理解、意識が深まりつつあるが、欧米に比べるとまだ遅れた環境にある。人と動物が共生し調和を保つことによって私達の社会生活と環境に潤いと喜びをもたらしていることも疑がない。しかし現在の集合住宅は、ペットを飼うことを禁止している所が多く、しかもペットの飼育が認められている集合住宅でも、きちんとした住宅、設備のもとにペットと共生する住宅環境が整備され設計されているところは数少ないのが現状である。その原因は、主としてペット類の悪臭、毛の飛散、ふん等による住宅設備の汚染とペットによる破損、むだ吠えによる生活環境の騒音等の問題が解決されず、住民間の苦情の要因となっているケースが多く挙げられる。
【0003】
【本考案の解決すべき課題】
本考案は上記の問題点に鑑み、これを解決する手段として、ペットと共生する集合住宅の住居内設備装置を提供することを目的としたもので、これを解決する課題としては、集合住宅に生活する居住者によるペットと共生したいという要望と同時にペット飼育に適した住宅設計において、居住者もペットも快適な住宅設備装置を確保するため、第1に集合住宅建物内に居住者とペットが共生できる個々の住居の設備装置、第2に集合住宅建物内の共用部分の設備装置について、居住者とペットに適合する快適な居住設備装置を技術的に解決することを課題とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する手段としては、集合住宅内におけるペットと共生する住居設備において、集合住宅をバリアフリー設計施工によるハンドレール、ハイポジションコンセントによる居住空間とし、居室にペットゲート、温水シャワーシャンプー台、及びキッチンの一部にペット用の床暖房部分を設け、居住部分と接続する共用部分にはコミニケーションスペース、ペット専用汚物流し台、ペット用足洗い場を設け、かつ前記各スペース内にリードフックを設けたことを要旨とするものである。
【0005】
【考案の実施の形態】
【実施例】 以下本考案設備装置の実施例について図示説明する。まづ集合住宅全体としては居住者の住居設備について、パートナーペットと共生する集合住宅を基本システムとし、その為にペットと一緒に住む為の集合住宅だけでなく人間にもペットにもやさしい居住空間をテーマとして、(1)コンパニオン・アニマル(犬、猫などが人生の伴侶)
(2)アニマル・セラピー(老人医療、心理療法など心の健康づくり)
(3)サポート・ドック(心身障害のある方)
と様々な形でのペットと共生できる集合住宅としたものである。特にサポート・ドックとして盲導犬、介護犬を必要とする居住者へも配慮した設計とする。特にバリアフリーも居住者の高齢化対応による集合住宅の一つの設備装置として組み入れる。その実施例としては、(a)バリアフリー施工。
図1でその実施例を示せば、エントランスから玄関まではスロープ式で車椅子使用の居住者、目の不自由な障害者も通れる居住設備として設計する。室内への通路1は通常の廊下より約巾5cm程広くとり約85cm〜87cmとし、室内はすべて床の段差がない(バリアフリー)ように設計する、しかも傷がつきにくく表面の固いプラスチックタイル(30cm角のもの)を使用し、またトイレへの移動も車椅子で入れるように設計し、便器に座ったり立ち上がったりする時に身体の安定を保ってくれるポールの手すりをつけ、立ち上がりのサポートをする様に配慮した設計とする。
(b)ハンドレール通路1の壁2はすべて床面3から約80cm程の位置に簡易的な手摺(ハンドレール)4を約9cm巾、2.5cmの厚みの木を壁に設置し、場合によってポールの手摺をつけるようにしてもよい。
(c)ハイポジション・コンセント室内では車椅子の使用者、視力障害者、あるいは小さな子供が配線等に引っかからない様にハイポジションコンセント5の配置を床上120cm程の所にアップして取付ける。これは犬、猫が配線で遊んだり、かじることによって感電しないための設計でもある。
(d)ペットゲート及びペット専用くぐり抜けドアー床はすべてバリアフリーで玄関からLDKに入るくぐり抜けドア6は犬、猫が自由に出入りができるようにドアの下の方に30cm四方の透明アクリルパネル7を取付ける。又来客が来た時に、玄関のチャイムが鳴ると吠えて玄関10から飛び出す性向がある犬対策として廊下、又はベランダ17にペット飛び出し防止ゲート11を設け、必要のない時は壁側に折り止めることが出来る設計とする。このペット専用くぐり抜けドア6は、猫又は中型犬位まで対応出来るようになっている。
(e)温水シャワー付きシャンプー台(ドラムトラップ式)
図2に示すようにベランダ17に犬、猫専用の温水シャワー付きシャンプー台8を設置する。犬、猫のシャンプーは通常では美容室、又は室内の風呂場で洗うことが多いが、風呂場で洗う場合は毛のつまり等の問題があり、詰まったときに作業が困難であり、これを取り除くことは集合住宅の場合避ける必要がある。又人間も同じお風呂に入るため動物特有の菌が人間の体内に入る可能性もある。本願はベランダに犬、猫専用の温水シャワー付きシャンプー台8を設置する。従来のシャンプー台は小さく深いため使用しづらいので殆ど利用されず機能性にも欠ける難点があったのでこれを改良した。シャンプー台は約床上70cmの高さに設置し作業しやすい程度のもので中型犬位まで使えるように台の深さを約15cm、奥行き約50cm前後とした。底面が平坦で、かつ浅い構造の為ペットのシャンプーが容易である。シャンプーをする際には、台が陶器のため滑り易いので交換しやすいスノコ、あるいは人工芝をセットして使用すれば犬が滑らずに作業できる。10は温水シャワーでベランダの床より約130cm程のシャンプー台8の上に乗せた犬にぶつからないように設置し、蛇口はつけずシャワーの混合栓とする。又犬、猫のシャンプーはかなり毛が抜ける。通常の集合住宅の場合にも人の毛と油、洗剤等だけでもかなり詰まりの原因となる。その予防策として流し台の下の排水管にドラムトラップ9を設置する。ドラムトラップは工業用の流し用器具を利用し一般個人用のものより大型で流し台から排水された毛はドラムトラップの中にある網枠26のところで水だけろ過され残る。作業後にドラムトラップの上蓋をはずし中の網枠に付着した細かい毛をとり捨てることによって排水管の詰まりをなくすという問題点がかなり解決できる。
(f)キッチンの床面の一部に床暖房とした仕切り床面を設け(図示省略)、犬、猫等のペットを冬期その暖房床面に乗せれば余分に動き回ることはなく、暖房器具を倒したりする火災事故の防止や、普段家族の目の届く範囲や、外出時の留守の際にペットを床面に乗せておくようにする。
【0006】
次に集合住宅の建物の居住部分と併せて共用部分の設備装置として、(a)ペット専用汚物流しを設ける。
ペットを飼う際に一番問題となるのは犬のフンの処理の仕方である。この大きな問題点を、集合住宅の共用の施工として図5の実施例として組み込む。このペット専用汚物流し15の設備は周囲から目立たぬ様に、例えば集合住宅の建物の側面、又は裏面の壁面に附設し、しかも扉等は一切つけずオープンすることで常に空気の流通を促すため、衛生的にも清掃のあとの水処理が簡単で乾燥しやすい設備装置とする。また流し口が万一詰まった時の事を考えすぐに取り出せる様に掃除口16付の便器構造とする。
(b)ペット用足洗い場飼い主は通常玄関の入口で抱きかかえ洗面所、風呂場で足を洗っているケースが多いが雨あがりのあと、雪のあとの動物の足は泥で奥の方まで汚れており、室内の汚れにもつながる。そこで建物内に設けた共用のペット用汚物流しの共用スペース12に連設して、図5に示すコンクリート仕切り24のペット用足洗い場13を設け、泥を落として足を清潔にしてから入室するように設置した。足洗い場は温水シャワー25を設けゴムチップ弾性舗装仕上げで足洗い場床14を粗面にし泥が落としやすい様にすべりにくくブラシ代わりになっている。犬は足場の悪い凹凸を嫌う為、室内に直接入りにくくしてある。なお共用スペース12は出入りの多い建物のエントランス入口に設置し、解放された犬がこのサークルを介して室内に自由に入りにくい様に設ける。
【0007】
(a)コミニケーションスペース建物屋上、又は建物に附設してコミニケーションスペース19を図6のように附設し、スペース内にテーブル20、ベンチ21、又は椅子とドック台22を設置する。23はリードフックである。
(b)リードフック飼い主のモラルとして犬の放し飼いは他人の迷惑となる。このペットを繋留するリードフック23はアパートの敷地内でもトラブルが生じないように又、飼い主が犬のことを気にせず安全に荷物等の出入れ等の作業がしやすい様に室内に必ず2ヶ所敷地内の駐車場、共用廊下スペース、コミニケーションスペース19、ペット用汚物流し15、ペット用足の洗い場13など必要とするすべての所に複数のリードフック23を付けることによって安全性を計る。
【0008】
【効果】
以上本考案はペットと共生する居住用集合住宅の住居設備装置として考案したもので居住者にとってもペットにとっても良好な居住設備と、住宅環境を提供する設備装置として極めて有効である。なお、図面に示した実施例はその1例を示したもので、集合住宅の規模、設備によって請求範囲内において又住民間の協議によって適宜設計変更して実施できることはいう迄もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】居住スペース内に設けたペットとの共生に対応したバリアフリー施工の実施例である。
【図2】ペット飛び出し防止ゲート斜視図である。
【図3】カウンター付き温水シャワー台の斜視図である。
【図4】ドラムトラップの組立図である。
【図5】シャワー付き足洗い場にこれに接続したペット用汚物流し場の斜視図である。
【図6】屋上又は集合住宅に附設したコミニケーションスペースの斜視図である。
【符号の説明】
1 室内通路
2 壁
3 床面
4 手摺
5 コンセント
6 くぐり抜けドア
7 アクリルパネル
8 シャンプー台
9 ドラムトラップ
10 温水シャワー
11 ペット飛び出し防止ゲート
12 共用スペース
13 ペット用足洗い場
14 足洗い場床
15 ペット用汚物流し
16 掃除口
17 ベランダ
18 網枠
19 コミニケーションスペース
20 テーブル
21 ベンチ
22 ドック台
23 リードフック
24 コンクリート仕切り
25 温水シャワー

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 集合住宅内でペットと共生する住居設備において、集合住宅をバリアフリー設計施工によるハンドレール、ハイポジションコンセントによる居住設備とし、居室にペットゲート、温水シャワーシャンプー台、キッチンの一部にセットしたペット用床暖房と、居住部分と接続する共用部分にコミニケーションスペース、ペット専用汚物流し台、ペット用足洗い場を設け、前記各スペース内にリードフックを設けたことを特徴とするペットと共生する居住用集合住宅の住居内設備装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【登録番号】第3046215号
【登録日】平成9年(1997)12月3日
【発行日】平成10年(1998)3月6日
【考案の名称】ペットと共生する居住用集合住宅の住居内設備装置。
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−7589
【出願日】平成9年(1997)8月12日
【出願人】(597121658)株式会社ムサシシステム (1)
【出願人】(597121669)株式会社アスク (1)