説明

ペットフード及びその製造方法

【課題】獣医療技術の向上により犬や猫等のペットの寿命は延びており、高齢化したペットが増加しており、さらに運動不足や栄養過多等により、成人病、代謝異常に基づく皮膚疾患や毛艶の悪化、歩行障害、便秘や下痢,軟便、歯槽膿漏等の体調不良のペットが増加しているが、このような体調不良や高齢のペットに対し、咬断することなく摂取することができ食べ易く、食付きが良く、また皮膚を整えて毛艶を改善するとともに整腸作用を有し、便秘や下痢,軟便を抑え、さらに歩行障害の改善や歯槽膿漏による口臭も抑制でき優れた体調改善効果を有するペットフードを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のペットフード1は、細分化した鶏冠の乾燥物2で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏冠を利用したペットフード及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
獣医療技術の向上により犬や猫等のペットの寿命は延びており、高齢化したペットが増加している。さらに運動不足や栄養過多等により、成人病、代謝異常に基づく皮膚疾患や毛艶の悪化、歩行障害、便秘や下痢,軟便、歯槽膿漏等の体調不良のペットが増加している。
このような状況にあるペットに対し、体調不良を改善するためのペットフードが数多く開発されている。このような技術として、例えば、(特許文献1)には「マルトオリゴ糖及び乳酸菌を含むペットフード」が開示されている。また、(特許文献2)には「ドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸及び/又はビオチンと整腸剤とを含有するペットフード」が開示されている。
【特許文献1】特開2007−135586号公報
【特許文献2】特開平6−217710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)にはペットの毛艶を改善する効果が得られることが記載され、(特許文献2)にはペットの皮膚疾患の予防や治療、下痢や軟便を改善できることが記載されている。しかしながら、これらのペットフードは食付きが悪いという課題を有していた。
(2)高齢化や関節の変形による歩行障害の改善効果が無く、また歯槽膿漏の症状の一つである口臭も抑制できないという課題を有していた。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、咬断する力の弱ったペットでも食べ易く、食付きが良く、また皮膚を整えて毛艶を改善するとともに整腸作用を有し便秘や下痢,軟便を抑え、さらに歩行障害の改善や歯槽膿漏による口臭も抑制でき優れた体調改善効果を有するペットフードを提供することを目的とする。
また、本発明は皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、便秘や下痢,軟便、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できるペットフードを、特定成分を抽出したり精製したりする煩雑な操作が不要なため、生産性良く製造できるペットフードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために本発明のペットフード及びその製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のペットフードは、細分化した鶏冠の乾燥物で形成された構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)鶏冠は、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体とコラーゲンとを含有している。これらの酸性多糖体は、生体内では蛋白質と結合し細胞間隙に存在し、その高い保水性によってゼリー状のマトリックスを形成して細胞の代謝を円滑にし、バクテリアの侵入に対する防御、細胞の増殖や分化の制御等の重要な機能を果たしている。特にヒアルロン酸は、網膜剥離、関節炎、皮膚炎に対する治療効果が認められている。鶏冠のミンチを乾燥した乾燥物で形成されているので、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができる。
(2)鶏冠は動物由来の天然の結合組織なので、ペットの食付きが良い。また、鶏冠を単に乾燥したものはチューインガムのようになるため、子供や高齢、病気等の顎の力の弱いペットでは咬断できず咀嚼できないが、細分化した鶏冠の乾燥物で形成されているので、顎の力の弱いペットであっても咬断せずに嚥下することができ、鶏冠の有効成分を全て摂取することができる。
(3)ペットに与えたところ、下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭を改善できた。この理由は不明だが、鶏冠から特定成分だけを抽出したものではなく、鶏冠に含まれる酸性多糖体やコラーゲン、その他の有効成分を全て含有しているので、これらの複数成分の相互作用だと推察している。
【0006】
ここで、細分化した鶏冠の乾燥物としては、(1)鶏冠を乾燥した後に粉砕する方法、(2)鶏冠をミンチにして粒状に成形した後に乾燥する方法、又は、(3)鶏冠をミンチにして板状等に成形した後に乾燥し、次いで粉砕する方法によって製造することができる。
乾燥物は、全乾品、半乾品のいずれでもよいが、全乾品が好適である。保存性に優れるからである。
【0007】
細分化した鶏冠の乾燥物の長辺の平均長さとしては、1〜5mmが好適である。長辺の平均長さが5mmより長くなるにつれ、高齢や体調不良で顎の力が弱ったペットが咀嚼し難いため摂取し難くなる傾向がみられ、1mmより短くなるにつれ、粉砕効率や成形効率が低下し生産性が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
なお、さらに細かく粉砕して、平均粒径が1mm以下、好ましくは1〜500μmの粉末にすることもできる。これにより、水やミルク等の液体やゲルに分散させて、咀嚼も困難なペットに流動食として与えることができる。
【0008】
本発明のペットフードを摂取させるペットとしては、犬、猫等の家庭で飼育可能な小動物が挙げられる。
本発明のペットフードは、通常のドッグフードやキャットフード等の餌に、家庭でふりかけて、ふりかけタイプの栄養補助剤のようにしてペットに与えることができる。また、チキンミール,グルテン等のペットフード原料に混ぜて、ドライタイプ,ウェットタイプ,セミモイストタイプ,ジャーキータイプ等のペットフードの原料として用いることもできる。また、微粉末にしたものは、ミルク等の液体やゲルに分散させた飲料の原料として用いることもできる。
【0009】
本発明の請求項2に記載のペットフードの製造方法は、鶏冠を乾燥して乾燥鶏冠を得る乾燥工程と、前記乾燥鶏冠を粉砕する乾燥鶏冠粉砕工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)鶏冠を乾燥させ、次いで粉砕するので、鶏冠から特定成分を抽出したり精製したりする煩雑な操作が不要で、生産性に優れる。
(2)得られたペットフードは細分化された鶏冠の乾燥物で形成されているので、ペットはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できる。
(3)得られたペットフードは、鶏冠が細分化されているため、ペットの食付きが良く、さらに顎の力の弱いペットでも咬断せずに嚥下することができ、鶏冠の有効成分を全て摂取することができる。
【0010】
ここで、鶏冠は、鶏の頭部から切断し分離したものを用いることができる。分離後の新鮮なものを洗浄して使用することができる。
また、分離した後、冷凍し凍結状態にして保存したものを、解凍して用いることができる。解凍する場合は、静止空気解凍,流動空気解凍等の空気解凍、静止水中解凍,流動水中解凍等の水解凍により、常温以下の温度で解凍するものが好適に用いられる。また、鶏冠は脱脂や加熱等の変性処理は行わないのが好ましい。鶏冠に含まれる酸性多糖類を分解・変性させないためである。
【0011】
乾燥工程としては、鶏冠に含まれるヒアルロン酸等の変質を避けるため、乾燥方法は凍結乾燥又は冷風乾燥を用いるのが好ましい。また、夏季を除き、春季,秋季等の気温が比較的低い時期は、直射日光をあてない陰干しによって乾燥させることもできる。
鶏冠は、姿干しにすることができる。また、適当な大きさに切断してから乾燥してもよい。
【0012】
乾燥鶏冠粉砕工程においては、カッタミル,シュレッダ等の剪断粗砕機、ボールミル、ローラミル、回転ミル、ジェット粉砕機等の粉砕機を用いることができる。
【0013】
本発明の請求項3に記載のペットフードの製造方法は、鶏冠を挽いてミンチにするミンチ化工程と、前記ミンチを成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、前記乾燥物を粉砕する粉砕工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)鶏冠を挽いてミンチにした後、成形し、次いで乾燥し、これを粉砕するので、鶏冠から特定成分を抽出したり精製したりする煩雑な操作が不要で、生産性に優れる。
(2)得られたペットフードは細分化された鶏冠の乾燥物で形成されているので、ペットはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できる。
(3)得られたペットフードは、鶏冠のミンチを乾燥し粉砕しているため、ペットの食付きが良く、さらに顎の力の弱いペットでも咬断せずに嚥下することができ、鶏冠の有効成分を全て摂取することができる。
(4)ミンチの成形体を粉砕するので、乾燥鶏冠を粉砕する場合と比較して粉砕し易く、粉砕効率が高く生産性に優れる。
(5)ミンチの成形体を乾燥するので、鶏冠を姿干しで乾燥する場合と比較して乾燥時間を短縮化でき生産性に優れる。
【0014】
ミンチ化工程は、鶏冠を挽き肉機で細かくする工程である。
得られたミンチは、成形工程において、引き伸ばして板状や小判状,短冊状等に成形する。成形体は2mm以下の厚さに成形するのが好ましい。乾燥工程において、成形体の内部まで比較的短時間で乾燥させることができるとともに、粉砕を容易にするためである。
【0015】
乾燥工程、粉砕工程としては、請求項2で説明した乾燥工程、乾燥鶏冠粉砕工程と同様なので、説明を省略する。
【0016】
本発明の請求項4に記載のペットフードの製造方法は、鶏冠を挽いてミンチにするミンチ化工程と、前記ミンチを粒状に成形して粒状成形物を得る粒状成形工程と、前記粒状成形物を乾燥して粒状乾燥物を得る乾燥工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)鶏冠を挽いてミンチにした後、粒状に成形し、次いで乾燥するので、鶏冠から特定成分を抽出したり精製したりする煩雑な操作が不要で、生産性に優れる。
(2)得られたペットフードは細分化された鶏冠の乾燥物で形成されているので、ペットはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できる。
(3)得られたペットフードは、鶏冠のミンチを粒状に成形して乾燥しているため、ペットの食付きが良く、さらに顎の力の弱いペットでも咬断せずに嚥下でき、鶏冠の有効成分を全て摂取することができる。
(4)ミンチの粒状成形体を乾燥するので、鶏冠を姿干しで乾燥する場合と比較して乾燥時間を短縮化でき生産性に優れる。
【0017】
ミンチ化工程、乾燥工程としては、請求項2で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0018】
粒状成形工程において、ミンチは粒状に成形される。成形には、押出し造粒機等を用いることができる。スクリュー型又はバスケット型の押出し造粒機のスクリーンより、ミンチを押し出して、粒状成形体を得ることができる。
成形された粒状成形体の長辺の平均長さは、1〜5mmが好適である。長辺の平均長さが5mmより長くなるにつれ、高齢や体調不良で顎の力が弱ったペットが咀嚼し難いため摂取し難くなる傾向がみられ、1mmより短くなるにつれ、粉砕効率や成形効率が低下し生産性が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0019】
粒状成形体は、流動乾燥するのが望ましい。乾燥工程中に粒状成形体同士が結着してしまうのを防止するためである。
得られた粒状乾燥物を細かく粉砕して、平均粒径が1mm以下の粉末にすることもできる。これにより、水やミルク等の液体やゲルに分散させて、咀嚼も困難なペットに流動食として与えることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の内いずれか1に記載のペットフードの製造方法であって、前記乾燥工程における乾燥方法が、凍結乾燥又は冷風乾燥である構成を有している。
この構成により、請求項2乃至4の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)乾燥方法が凍結乾燥又は冷風乾燥であるため、分子量の大きなヒアルロン酸を加熱によって変質させることがなく、ヒアルロン酸が有する保水性等の特性を劣化させることがない。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明のペットフード及びその製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)細分化した鶏冠の乾燥物で形成されているので、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、さらに下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭を改善できるペットフードを提供できる。
(2)鶏冠は動物由来の天然の結合組織なので、ペットの食付きが良く、また鶏冠が細分化されているので、咀嚼力の弱いペットでも咬断せずに嚥下でき、鶏冠の有効成分を全て摂取させることができるペットフードを提供できる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、
(1)鶏冠から特定成分を抽出したり精製したりする煩雑な操作が不要で、生産性に優れたペットフードの製造方法を提供できる。
(2)得られたペットフードは細分化した鶏冠の乾燥物で形成されているので、ペットはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できるペットフードを製造することができる。
(3)得られたペットフードは、細分化した鶏冠で形成されているため、ペットの食付きが良く、さらに顎の力の弱いペットが咬断しなくても嚥下できるため、鶏冠の有効成分を全て摂取させることができるペットフードを製造することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、
(1)鶏冠から特定成分を抽出したり精製したりする煩雑な操作が不要で、生産性に優れたペットフードの製造方法を提供できる。
(2)得られたペットフードは細分化した鶏冠で形成されているので、ペットはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できるペットフードを製造することができる。
(3)得られたペットフードは、細分化した鶏冠で形成されているため、ペットの食付きが良く、さらに顎の力の弱いペットが咬断しなくても嚥下できるため、鶏冠の有効成分を全て摂取させることができるペットフードを製造することができる。
(4)ミンチの成形体を粉砕するので、乾燥鶏冠を粉砕する場合と比較して粉砕し易く、粉砕効率が高く生産性に優れたペットフードの製造方法を提供できる。
(5)ミンチの成形体を乾燥するので、鶏冠を姿干しで乾燥する場合と比較して乾燥時間を短縮化でき生産性に優れたペットフードの製造方法を提供できる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、
(1)鶏冠から特定成分を抽出したり精製したりする煩雑な操作が不要で、生産性に優れたペットフードの製造方法を提供できる。
(2)得られたペットフードは細分化した鶏冠で形成されているので、ペットはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できるペットフードを製造することができる。
(3)得られたペットフードは、細分化した鶏冠で形成されているため、ペットの食付きが良く、さらに顎の力の弱いペットが咬断しなくても嚥下できるため、鶏冠の有効成分を全て摂取させることができるペットフードを製造することができる。
(4)ミンチの粒状成形体を乾燥するので、鶏冠を姿干しで乾燥する場合と比較して乾燥時間を短縮化でき生産性に優れたペットフードの製造方法を提供できる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2乃至4の内いずれか1の効果に加え、
(1)乾燥方法が凍結乾燥又は冷風乾燥のため、分子量の大きなヒアルロン酸を加熱によって変質させることがなく、ヒアルロン酸が有する保水性等の特性を劣化させないペットフードを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるペットフードの平面図である。
図中、1は本発明の実施の形態1におけるペットフード、2は細分化した鶏冠の乾燥物、3は合成樹脂製等で形成され乾燥物2を収容した袋体である。
【0027】
以上のように構成された本発明の実施の形態1におけるペットフードについて、以下その製造方法を説明する。
まず、鶏の頭部から切断し分離した鶏冠を、ミンチ化工程において、挽き肉機で細かくして鶏冠のミンチを製造する。次に、成形工程において、ミンチを薄板状に薄く成形して成形体を得る。次いで、乾燥工程において、成形体を冷風乾燥又は凍結乾燥によって乾燥させて板状の乾燥物を得る。次に、粉砕工程において、板状の乾燥物を破砕して細分化した乾燥物2を得た後、小分けして袋体3に詰めることにより実施の形態1におけるペットフード1を製造することができる。
【0028】
以上のように、本発明の実施の形態1におけるペットフードは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)鶏冠のミンチを乾燥し細分化した乾燥物2で形成されているので、鶏冠が含有するヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、また下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭を改善できる。
(2)鶏冠は動物由来の天然の結合組織なので、ペットの食付きが良い。また、鶏冠のミンチを乾燥し細分化しているので、咀嚼力の弱いペットでも咬断せずに嚥下することができ、鶏冠の有効成分を全て摂取することができる。
【0029】
また、実施の形態1におけるペットフードの製造方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)鶏冠を挽いてミンチにした後、板状に成形し、乾燥して乾燥物を得た後、粉砕しているので、鶏冠から特定成分を抽出したり精製したりする煩雑な操作が不要で、生産性に優れる。
(2)得られたペットフードは鶏冠のミンチを乾燥した乾燥物で形成されているので、ペットはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の酸性多糖体及びコラーゲンを摂取できるため、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、下痢や軟便、便秘、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できる。
(3)得られたペットフードは、鶏冠のミンチを乾燥した後、粉砕しているため、ペットの食付きが良く、さらに顎の力の弱いペットでも咬断せずに嚥下することができ、鶏冠の有効成分を全て摂取することができる。
(4)成形体を凍結乾燥又は冷風乾燥しているため、分子量の大きなヒアルロン酸を加熱によって変質させることがなく、ヒアルロン酸が有する保水性等の特性を劣化させることがない。
【0030】
ここで、本実施の形態においては、鶏冠を挽いてミンチにするミンチ化工程と、ミンチを成形した成形体を得る成形工程と、成形体を乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、を備えたペットフードの製造方法について説明したが、鶏冠を乾燥して乾燥鶏冠を得た後、該乾燥鶏冠を粉砕してペットフードを製造する場合もある。また、鶏冠を挽いてミンチにした後、ミンチを粒状に成形して粒状成形体を得て、該粒状成形体を乾燥してペットフードを製造する場合もある。これらの製造方法の場合も、本実施の形態で説明したものと同様の作用が得られる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
凍結保存した鶏冠を、5℃の流動空気により12時間かけて解凍した。解凍した鶏冠を挽き肉機でミンチにした後、約1mmの厚さに引き伸ばして板状の成形体を得た。この成形体を30℃で24時間、冷風乾燥して乾燥物を得た。乾燥物を粉砕して実施例1のペットフードを得た。なお、実施例1のペットフードの長辺の平均長さは2mmであった。
(実施例2)
凍結保存した鶏冠を20℃の静止水中で2時間かけて解凍した。解凍した鶏冠を30℃で36時間、冷風乾燥して乾燥物(乾燥鶏冠)を得た。乾燥物(乾燥鶏冠)を粉砕して、実施例2のペットフードを得た。実施例2のペットフードの長辺の平均長さは3mmであった。
(実施例3)
凍結保存した鶏冠を、5℃の流動空気により12時間かけて解凍した。解凍した鶏冠を挽き肉機でミンチにした後、押出し造粒機を用いてスクリーンから押し出し、長さ約2mmで太さ約1mmの粒状成形体を得た。この粒状成形体を30℃で24時間、流動乾燥機で冷風乾燥して粒状乾燥物を得た。これを実施例3のペットフードとした。
【0032】
実施例1のペットフードについて、ヒアルロニダーゼ処理により生成する不飽和四糖及び六糖を指標として、高速液体クロマトグラフ法によりヒアルロン酸の定量分析を行ったところ、3.6%であった。また、水分活性は0.52(コンウェイユニット法による)であった。すべての微生物が繁殖できない乾燥状態であり、保存性に著しく優れていることがわかった。実施例2及び3のペットフードのヒアルロン酸の含有量、水分活性も、ほぼ同様の値を示した。
【0033】
(比較例1)
凍結保存した鶏冠を、5℃の流動空気により12時間かけて解凍した。解凍した鶏冠を、その姿のまま30℃で36時間、冷風乾燥することにより、姿干しの状態の比較例1のペットフードを得た。
(比較例2)
凍結保存した鶏冠5kgを20℃の静止水中で2時間かけて解凍した。解凍した鶏冠を80℃の熱水中に30分間浸漬した後、取り出し、細断機にて厚さ2mmに切断した。
切断した鶏冠に清水15Lを加え、ホモゲナイザにて20分間、鶏冠組織を破砕・微粒子化して鶏冠のペースト20kgを得た。
このペーストにプロテアーゼ(天野エンザイム製)を1.5g加え、40℃で5時間酵素処理を行った後、ペーストを濾過して濾液18kgを得た。
この濾液に10%塩化セチルピリジニウム水溶液900mLを添加して沈殿物を生じさせ、沈殿物を炉別した。得られた沈殿物を0.4Mの食塩水15L中に入れて溶解させた後、さらにこの食塩水にエタノール23Lを加えて再び沈殿物を生じさせた。
この沈殿物を炉別、エタノール洗浄、風乾した結果、粗製のヒアルロン酸120gが得られた。このヒアルロン酸100gに清水10Lを加えてヒアルロン酸を溶解させ、さらにエタノール15Lを加えて、遠心分離機にて30分間遠心分離した後、上澄液20Lを採取した。
この上澄液に3Mの食塩水1Lを加えて沈殿物を生じさせ、この沈殿物を炉別、エタノール洗浄、風乾した結果、精製ヒアルロン酸43gが得られた。この精製ヒアルロン酸を比較例2のペットフードとした。
【0034】
(実験例1)
12歳のパグ(小型犬)は歯槽膿漏の症状がみられており、強い口臭があり、喉の周辺の皮膚が荒れていた。
通常のドッグフードに、実施例1のペットフードを2〜3gふりかけて、朝と夕方の一日2回与えた。
ペットフードを与えて7日目頃から口臭が弱くなり、20日目頃には口臭はほとんど無くなった。また、ペットフードを与えて11日目頃から喉の周辺の皮膚の荒れが治まり、被毛も生えてきた。
【0035】
(実験例2)
14歳のマルチーズは軟便が続いていた。また、被毛が絡み合い毛玉が何箇所かに生じていた。また、足腰がふらつき、散歩の途中によく転んでいた。また、階段の上がり下がりが不自由であった。
通常のドッグフードに、実施例2のペットフードを4gふりかけて、朝と夕方の一日2回与えた。
ペットフードを与えて3日目から軟便が正常になるとともに、被毛の絡み合いが少なくなり、徐々に毛玉が少なくなった。また、ペットフードを与えて6日目から散歩で転ぶ回数が減り、20日目頃からは階段の上がり下がりも不自由なくできるようになった。
【0036】
(実験例3)
3歳の猫は食欲がなく、被毛の艶が乏しかった。
通常のキャットフードに、実施例3のペットフードを1〜2gふりかけて、一日1回、夕方に与えた。
ペットフードを与えて3日目から、被毛に艶が現れだし、毛玉も少なくなった。以前は夕方に与えた餌が翌朝まで残っていたが、食欲が旺盛になってその日のうちに全て食べつくし、朝から餌をねだるようになった。
【0037】
(実験例4)
14歳のダックスフンドは後ろ足(後肢)が内向しており、ふらついて歩いていた。また、便秘気味で便は硬くコロコロしていた。
通常のドッグフードに、実施例1のペットフードを2gふりかけて、朝と夕方の一日2回与えた。
ペットフードを与えて4日目頃から硬い便が正常になった。また、ペットフードを与えて15日目頃から歩き方に変化がみられ、後肢のふらつきが減ってきた。
【0038】
(実験例5)
実験例1のパグに実施例1のペットフードを与えるのを中止し、その代わりに、比較例1のペットフード(鶏冠の姿干し)を与えた。初めは興味を示し口に含んでいたが、しばらくすると吐き出していた。咬断できないからではないかと推察された。
実施例1のペットフードを与えるのを中止してから2日経過後、再び口臭が現れ始めた。
【0039】
(実験例6)
実験例5の後、パグから比較例1のペットフードを取り上げた。実施例1のペットフードを与える代わりに、通常のドッグフードに、比較例2のペットフード(精製ヒアルロン酸)を0.2gふりかけて、朝と夕方の一日2回与えた。
なお、比較例2のペットフードは精製ヒアルロン酸であり、実施例1のペットフードのヒアルロン酸の含有率は3.6%であるから、比較例2のペットフードによって一日に与えられるヒアルロン酸の量は、実施例1のペットフードによって一日に与えられるヒアルロン酸の量の約2倍である。
比較例2のペットフードを20日間与えたが、口臭は消えなかった。
【0040】
以上の実験例によれば、本実施例のペットフードは、咬断する力の弱ったペットでも食べ易く、食付きが良く、また皮膚を整えて毛艶を改善するとともに整腸作用を有し下痢や軟便、便秘を改善し、さらに歩行障害の改善や歯槽膿漏による口臭も抑制でき優れた体調改善効果を有することが明らかになった。この理由は不明だが、鶏冠からヒアルロン酸だけを抽出したものではなく、鶏冠に含まれる酸性多糖体やコラーゲン、その他の有効成分を全て含有しているので、これらの複数成分の相互作用によるものだと推察している。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は鶏冠を利用したペットフード及びその製造方法に関し、咬断する力の弱ったペットでも食べ易く、食付きが良く、また皮膚を整えて毛艶を改善するとともに整腸作用を有し下痢や軟便、便秘を改善し、さらに歩行障害の改善や歯槽膿漏による口臭も抑制でき優れた体調改善効果を有するペットフードを提供することができ、また、皮膚の保水性を改善し毛艶を良くすることができ、下痢や軟便、歩行障害、歯槽膿漏による口臭も改善できるペットフードを生産性よく製造できるペットフードの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態1におけるペットフードの平面図
【符号の説明】
【0043】
1 ペットフード
2 乾燥物
3 袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細分化した鶏冠の乾燥物で形成されていることを特徴とするペットフード。
【請求項2】
鶏冠を乾燥して乾燥鶏冠を得る乾燥工程と、前記乾燥鶏冠を粉砕する乾燥鶏冠粉砕工程と、を備えていることを特徴とするペットフードの製造方法。
【請求項3】
鶏冠を挽いてミンチにするミンチ化工程と、前記ミンチを成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、前記乾燥物を粉砕する粉砕工程と、を備えていることを特徴とするペットフードの製造方法。
【請求項4】
鶏冠を挽いてミンチにするミンチ化工程と、前記ミンチを粒状に成形して粒状成形物を得る粒状成形工程と、前記粒状成形物を乾燥して粒状乾燥物を得る乾燥工程と、を備えていることを特徴とするペットフードの製造方法。
【請求項5】
前記乾燥工程における乾燥方法が、凍結乾燥又は冷風乾燥であることを特徴とする請求項2乃至4の内いずれか1に記載のペットフードの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−212141(P2008−212141A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−273191(P2007−273191)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(507332206)株式会社水町食品 (1)
【Fターム(参考)】