説明

ペットフード

【課題】
アトピー性皮膚炎に対する改善効果があり、肝腎機能等が害されることのない安全性に優れたペットフードを提供することである。
【解決手段】
キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を含む酸性キシロオリゴ糖、澱粉及び油脂を含有してなることを特徴とするペットフードである。
前記酸性キシロオリゴ糖の好適な態様は、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、キシロースの平均重合度が2.0〜20.0である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペットフードに関し、更に詳しくは、犬猫等の動物の皮膚疾患に対して改善効果を有するペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犬や猫等のペットは動物愛好や少子化等の様々な理由で家族の一員として扱われるようになり、コンパニオンアニマルと呼ばれている。ヒトと同様に犬猫等においても、住環境や食生活の変化、大気汚染、水質汚染及び心理的ストレスの増加等によりアトピー性皮膚炎が動物病院の増加症例となってきている。犬猫等のアトピー性皮膚炎の研究も多くの機関でなされているが、未だに解明されていない点が多く、治療による完治は困難な状況で、対症療法による症状緩和が唯一の治療法となっている。
【0003】
ヒトの場合と同様に犬猫のアトピー性皮膚炎の治療に於いても、ステロイド系及び非ステロイド系消炎剤等の外用剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤及びステロイド剤等の内服剤が用いられるが、これらは一時的に症状を改善させることはできても再発することが多く、副作用の問題もある。また、外用剤の場合は看畜が薬剤を舐めてしまうことによる効果低下や副作用も懸念される。更に、犬猫等の皮膚炎の治療はオーナーへの負担が大きく、薬剤の長期投与は容易ではない。このような背景からアトピー性皮膚炎に対する改善効果を有し、犬猫等の嗜好性が良く、安全で投与が容易なペットフードが求められている。
【0004】
アレルギー性皮膚炎を低減するペットフードとしては、アレルゲンであるタンパク質を除去し、アミノ酸を添加したペットフード(特許文献1参照)、炎症アレルギー反応低減作用のあるオメガ−6及びオメガ−3脂肪酸を配合したペットフード(特許文献2参照)、アレルギー反応発症傾向を低下させる乳酸菌を配合したペットフード(特許文献3参照)が提案されているが、効果が十分とは言えない。
【0005】
アトピー性皮膚炎改善作用を有する天然物として、甜菜由来のオリゴ糖であるラフィノース(特許文献4参照)、ブドウ属植物及びイタドリ科植物からなる組成物(特許文献5参照)、おたね人参水抽出物と牡蠣殻を含有する組成物(特許文献6参照)等の内服用途での提案がなされている。しかし、ラフィノースは耐酸性が低く、胃酸により分解される為、経口接取に於ける十分な効果は期待できず、また、他の組成物は価格及び安定供給の問題がある。
【0006】
キシロオリゴ糖には、コーンコブやバガスから酵素処理により製造されるものや、リグノセルロースから酵素処理及びNF膜濃縮により製造されるものがあり、何れも整腸作用については既に開示されている(特許文献7及び8参照)。酸性キシロオリゴ糖(非特許文献1参照)に関しては、内服及び外用におけるアトピー性皮膚炎改善作用(特許文献9及び10参照)、美白作用(特許文献11参照)及び抗脂血症改善作用(特許文献12参照)等の多くの生理作用が提案されているが、ペットフードに関する具体的な記述はない。
【0007】
【特許文献1】特開2005−270100号公報
【特許文献2】特開平8−38063号公報
【特許文献3】特開2004−528034号公報
【特許文献4】特開平11−255656号公報
【特許文献5】特開2002−047193号公報
【特許文献6】特開2002−173434号公報
【特許文献7】特許第2643368号公報
【特許文献8】特開2000−333692号公報
【特許文献9】特開2004−210666号公報
【特許文献10】特開2004−210664号公報
【特許文献11】特開2003-221307号公報
【特許文献12】特開2004−182615号公報
【非特許文献1】石原光朗、セルラーゼ研究会報、セルラーゼ研究会発行、2001年6月14日発行、第16巻、p17−26
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、アトピー性皮膚炎に対する改善効果があり、肝腎機能等が害されることのない安全性に優れたペットフードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決する為、鋭意研究した結果、ウロン酸残基が付加した酸性キシロオリゴ糖を配合することにより、アトピー性皮膚炎改善効果を有し、安全性に優れたペットフードが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の構成を採用する。
【0010】
(1)キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を含む酸性キシロオリゴ糖、澱粉及び油脂を含有してなることを特徴とするペットフード。
(2)前記酸性キシロオリゴ糖が、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、キシロースの平均重合度が2.0〜20.0である前記(1)に記載のペットフード。
(3)前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分解して得たもの」である前記(1)又は(2)に記載のペットフード。
(4)前記ウロン酸が、グルクロン酸、4−O−メチル−グルクロン酸又はヘキセンウロン酸である前記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のペットフード。
(5)前記油脂が、動物性油脂、植物性油脂又は脂肪酸である前記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のペットフード。
(6)前記植物性油脂が、大豆油、菜種油、べに花油、コーン油、綿実油、ごま油、オリーブオイル、やし油、パーム油、ひまわり油又はこめ油である前記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載のペットフード。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、肝腎機能等が害されることのない安全性に優れたペットフード、特に、アトピー性皮膚炎に対する改善効果のあるペットフードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のペットフードは、酸性キシロオリゴ糖を有効成分として含有する。酸性キシロオリゴ糖とは、キシロオリゴ糖1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を有するものをいい、また、キシロオリゴ糖とは、キシロースの2量体であるキシロビオース、3量体であるキシロトリオース、あるいは4量体〜20量体程度のキシロースの重合体を言う。本発明におけるキシロオリゴ糖は、単一組成のキシロオリゴ糖でもよく、また、キシロースの重合度が異なるキシロオリゴ糖の混合組成物であってもよい。一般的には、天然物から製造するために、混合組成物として得られることが多い。
本発明のペットフードは、酸性キシロオリゴ糖を有効成分として含有するので、アトピー性皮膚炎に対する改善効果を有し、かつ、安全性の高いペットフードである。
以下、酸性キシロオリゴ糖組成物について説明する。
【0013】
酸性キシロオリゴ糖組成物は、平均重合度で示す数値は正規分布をとる酸性キシロオリゴ糖のキシロース鎖長の平均値で、2.0〜20.0が好ましく、5.0〜15.0がより好ましい。また、キシロース鎖長の上限と下限との差は15以下が好ましく、10以下がより好ましい。このような構成を有する酸性キシロオリゴ糖は、他のオリゴ糖やキシロオリゴ糖と比較して、長鎖であっても耐酸性、耐熱性及び水溶性が非常に高いという特徴がある。
【0014】
天然のウロン酸としては、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸及びデルタマン硫酸等が知られており、これらを構成成分として有する種々の多糖は、生理活性作用があることが知られている。本発明におけるウロン酸としては特に限定されないが、グルクロン酸、4−O−メチル−グルクロン酸又はヘキセンウロン酸が好ましい。
【0015】
酸性キシロオリゴ糖組成物の製法としては、上記の特徴を有する酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることが出来れば、特に限定されないが、例えば、(1)木材からキシランを抽出し、それを酵素的に分解する方法(非特許文献1参照)、又は(2)リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離する方法が挙げられる。特に、(2)の方法が5〜15量体のように比較的高い重合度のものを大量に安価に製造することが可能である点で好ましい。以下、その概要を示す。
【0016】
酸性キシロオリゴ糖組成物は、化学パルプ由来のリグノセルロース材料を原料とし、加水分解工程、濃縮工程、希酸処理工程、精製工程を経て得ることができる。加水分解工程では、希酸処理、高温高圧の水蒸気(蒸煮・爆砕)処理もしくは、ヘミセルラーゼによってリグノセルロース中のキシランを選択的に加水分解し、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体として得る。濃縮工程では逆浸透膜等により、キシロオリゴ糖−リグニン様物質複合体が濃縮され、低重合度のオリゴ糖や低分子の夾雑物などを除去することができる。濃縮工程は逆浸透膜を用いることが好ましいが、限外濾過膜、塩析、透析などでも可能である。得られた濃縮液の希酸処理工程により、複合体からリグニン様物質が遊離し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖を含む希酸処理液を得ることができる。この時、複合体から切り離されたリグニン様物質は酸性下で縮合し沈殿するのでセラミックフィルターや濾紙などを用いたろ過等により除去することができる。希酸処理工程では、酸による加水分解を用いることが好ましいが、リグニン分解酵素などを用いた酵素分解などでも可能である。
【0017】
精製工程は、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程からなる。一部のリグニン様物質は可溶性高分子として溶液中に残存するが、限外濾過工程で除去され、着色物質等の夾雑物は活性炭を用いた脱色工程によってそのほとんどが取り除かれる。限外濾過工程は限外濾過膜を用いることが好ましいが、逆浸透膜、塩析、透析などでも可能である。こうして得られた糖液中には酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖が溶解している。イオン交換樹脂を用いた吸着工程により、この糖液から酸性キシロオリゴ糖のみを取り出すことができる。糖液をまず強陽イオン交換樹脂にて処理し、糖液中の金属イオンを除去する。ついで強陰イオン交換樹脂を用いて糖液中の硫酸イオンなどを除去する。この工程では、硫酸イオンの除去と同時に弱酸である有機酸の一部と着色成分の除去も同時に行っている。強陰イオン交換樹脂で処理された糖液はもう一度強陽イオン交換樹脂で処理し更に金属イオンを除去する。最後に弱陰イオン交換樹脂で処理し、酸性キシロオリゴ糖を樹脂に吸着させる。樹脂に吸着した酸性オリゴ糖を、低濃度の塩(NaCl、CaCl2、KCl、MgCl2など)によって溶出させることにより、夾雑物を含まない酸性キシロオリゴ糖溶液を得ることができる。この溶液を、例えば、スプレードライや凍結乾燥処理により、白色の酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末を得ることができる。
【0018】
化学パルプ由来のリグノセルロースを原料とし、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体とした酸性キシロオリゴ糖組成物の上記製造法のメリットは、経済性とキシロースの平均重合度の高い酸性キシロオリゴ糖組成物が容易に得られる点にある。平均重合度は、例えば、希酸処理条件を調節するか、再度ヘミセルラーゼで処理することによって変えることが可能である。また、弱陰イオン交換樹脂溶出時に用いる溶出液の塩濃度を変化させることによって、1分子あたりに結合するウロン酸残基の数が異なる酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることもできる。さらに、適当なキシラナーゼ、ヘミセルラーゼを作用させることによってウロン酸結合部位が末端に限定された酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることも可能である。
【0019】
本発明において用いるキシロオリゴ糖は、液状、粉末状のいずれの形態で用いることもできる。また、本発明のペットフード中のキシロオリゴ糖含有量は、目的に応じて適宜調節できるが、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上である。
キシロオリゴ糖含有量が0.1重量%未満であると、本発明が目的とする効果を得ることができない。なお、キシロオリゴ糖含有量が100重量%である場合は、ペット用サプリメントとして用いることができる。
【0020】
本発明のペットフードは、酸性キシロオリゴ糖に加えて、澱粉を含有して成る。
澱粉としては、さつまいも、馬鈴薯又はこんにゃく等から得られる澱粉を挙げることができ、例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ又はタピオカ(キャッサバ)スターチが挙げられる。
本発明のペットフード中の澱粉含有量は、本発明の効果を奏する限り制限はないが、50重量%以下、特に、30重量%以下であるのが好ましい。
【0021】
本発明のペットフードは、酸性キシロオリゴ糖に加えて、油脂を含有して成る。前記油脂としては、動物性油脂、植物性油脂又は脂肪酸を挙げることができる。
【0022】
前記動物性油脂としては、牛脂(タロー)、豚脂(ラード)、鶏脂(チキンオイル)、魚油(フィッシュオイル)、魚肝油又はバター等を挙げることができる。
前記植物性油脂としては、大豆油、菜種油、べに花油、コーン油、綿実油、ごま油、オリーブオイル、やし油、パーム油、ひまわり油又はこめ油を挙げることができる。
前記脂肪酸としては、リノール酸、リノレン酸又は高度不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
本発明のペットフード中の油脂の含有量は、本発明の効果を奏する限り制限はないが、40重量%以下、特に、20重量%以下であるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、澱粉及び油脂の他に、肉類、海産物、アミノ酸、ビタミン、ミネラル類、穀類、糟糠、糖類、種実、豆類、卵、乳製品、野菜、植物たんぱくエキス、果実、きのこ類、藻類又はこれらの加工品等を適宜、所望量添加して、本発明の効果を高めたり、更なる効果を付与したりすることができる。
【0024】
前記肉類としては、牛(ビーフ)、豚(ポーク)、羊(マトンまたはラム)、うさぎ、鶏(チキン)、七面鳥(ターキー)若しくはうずら等の鳥獣類の肉、これらの畜産副生物又はこれらの加工品を挙げることができる。前記加工品としては、ミートミール、ミートボーンミール若しくはチキンミール等を挙げることができる。
【0025】
前記海産物としては、まぐろ、かつお、あじ若しくはいわし等の魚類、エビ若しくはカニ等の甲殻類、タコ若しくはイカ等の軟体動物、ホタテ若しくはサザエ等の貝類又はフィッシュミール(魚粉)若しくはフィッシュエキス等の加工品が挙げられる。
【0026】
前記アミノ酸としては、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン又はタウリン等が挙げられる。
【0027】
前記ビタミンとしては、ビタミンA(レチノール)〔ビタミンAパルミテート、アセテート及びプロピオネート〕、ビタミンD〔D3、コレカルシフェロール、D2、エルゴカルシフェロール〕、ビタミンD3油、ビタミンD粉末、ビタミンE(トコフェロール)〔酢酸dl-α-トコフェロール〕、ビタミンE粉末、ビタミンK(メナジオン)、ビタミンB1(チアミン)〔塩酸チアミン、硝酸チアミン〕、ビタミンB2(リボフラビン)〔リボフラビン酪酸エステル〕、ビタミンB6(ピリドキシン)〔塩酸ピリドキシン〕、ビタミンB12(コパラミン)〔シアノコパラミン〕、ナイアシン(ニコチン酸)〔ニコチン酸アミド〕、パントテン酸(パントテン酸カルシウム)、葉酸(フオラアシン)又はコリン(塩化コリン)等を挙げることができる。
【0028】
前記ミネラル類としては、カルシウム(炭酸カルシウム)、リン(リン酸、リン酸カルシウム)、ナトリウム(塩化ナトリウム、食塩)、鉄、銅、コバルト、マンガン、亜鉛、よう素、骨粉(ボーンミール)、卵殻粉又は牡蠣殻粉等が挙げられる。
【0029】
前記穀類としては、とうもろこし(メイズ、コーン)、マイロ(グレーンソルガム)、小麦、大麦、玄米、エン麦(オート)又は小麦粉等を挙げることができ、これらの加工品としては、パン粉、米粉、コーンフラワー又はオートミール等が挙げられる。
【0030】
前記糟糠としては、米糠、小麦ふすま、小麦胚芽、大麦糠又はグルテンフィード等が挙げられる。前記糖類としては、砂糖、ぶどう糖(グルコース)、果糖(フラクトース)、異性化糖、オリゴ糖類、水飴、シロップ、糖蜜又は蜂蜜等が挙げられる。
【0031】
前記種実としては、アーモンド、栗、ゴマ又は落花生等が挙げられる。前記豆類としては、大豆、そら豆又は小豆等が挙げられ、これらの加工品としては、脱脂大豆、大豆ミール、きなこ、大豆粉(ソイフラワー)又はおから等を挙げることができる。
【0032】
前記卵としては、鶏卵(全卵、乾燥全卵、卵黄・卵白)、あひる卵又はうずら卵等が挙げられる。前記乳製品としては、全脂乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエー、チーズ、バター又はクリーム等が挙げられる。前記野菜としては、にんじん、きゃべつ、グリーンピース又はかぼちゃ等が挙げられる。
【0033】
前記植物たんぱくエキスとしては、大豆たん白、小麦たん白又はグルテンミール等が挙げられる。前記果実としては、アボガド、りんご、バナナ、パイナップル又はパッションフルーツ等が挙げられる。前記きのこ類としては、マッシュルーム、えのき、しいたけ又はしめじ等が挙げられる。前記藻類としては、のり、こんぶ、わかめ、ひじき、クロレラ又はスピルリナ等を挙げることができ、これらの加工品として、寒天又はカラギーナン等が挙げられる。その他、酵母、牧草、セルロース類、フレーバー類、色素類、保存料、調味料、プロピレングリコール、酸類等が挙げられる。
【0034】
本発明のペットフードは、例えば、挽肉機を用いて牛肉を挽肉にし、所定量の挽肉と酸性キシロオリゴ糖、澱粉及び油脂とを十分に混練させて、ウェットタイプのペットフードとして得ることができる。また、本発明のペットフードは、例えば、前記混練物をエクストルーダーにより押出成形して発泡させ、さらに高速カッターで切断し、乾燥器で乾燥させることにより、セミウェットタイプ又はドライタイプのペットフードとして得ることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例により詳説する。本発明はこれにより限定されるものではない。なお、「重量部」及び「%」とは、特に断りのない限り、「重量%」を意味する。
【0036】
<実施例1>
[酸性キシロオリゴ糖の調製]
混合広葉樹チップ(国内産広葉樹70%、ユーカリ30%)を原料として、クラフト蒸解及び酸素脱リグニン工程により、酸素脱リグニンパルプスラリー(カッパー価9.6、パルプ粘度25.1cps)を得た。スラリーからパルプを濾別、洗浄した後、パルプ濃度10%、pH8に調製したパルプスラリーを用いて以下のキシラナーゼによる酵素処理を行った。
バチルスsp.S−2113株(独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター、寄託菌株FERM BP-5264)の生産するキシラナーゼを1単位/パルプgとなるように添加した後、60℃で120分間処理した。その後、濾過によりパルプ残渣を除去し、酵素処理液1050Lを得た。
次に、得られた酵素処理液を濃縮工程、希酸処理工程、精製工程の順に供した。
濃縮工程では、逆浸透膜(日東電工(株)製、RO NTR−7410)を用いて濃縮液(40倍濃縮)を調製した。希酸処理工程では、得られた濃縮液のpHを3.5に調整した後、121℃で60分間加熱処理し、リグニンなどの高分子夾雑物の沈殿を形成させた。さらに、この沈殿をセラミックフィルター濾過で取り除くことにより、希酸処理溶液を得た。
精製工程では、限外濾過・脱色工程、吸着工程の順に供した。限外濾過・脱色工程では、希酸処理溶液を限外濾過膜(オスモニクス社製、分画分子量8000)を通過させた後、活性炭(和光純薬(株)製)770gの添加及びセラミックフィルター濾過により脱色処理液を得た。吸着工程では、脱色処理液を強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)、強陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PA408)各100kgを充填したカラムに順次通過させた後、弱陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製WA30)100kgを充填したカラムに供した。この弱陰イオン交換樹脂充填カラムから75mM NaCl溶液によって溶出した溶液をスプレードライ処理することによって、酸性キシロオリゴ糖の粉末(全糖量353g、回収率13.1%)を得た。
得られた酸性キシロオリゴ糖は、以下の「平均重合度の決定法」及び「オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法」に従って測定した結果、平均重合度10.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は10、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
(1) 平均重合度の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15,000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液の全糖量を還元糖量(共にキシロース換算)で割って平均重合度を求めた。
(2) オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15,000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液のウロン酸量(D−グルクロン酸換算)を還元糖量(キシロース換算)で割ってオリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数を求めた。
【0037】
[ペットフードの作成]
表1に示すようにして、コーンスターチ15重量部、糖類45重量部、アミノ酸8重量部、大豆油17重量部、ビタミン及びミネラル類を合わせて8重量部並びに酸性キシロオリゴ糖7重量部を混練し、エクストルーダーにより押出成形して発泡させた後、高速カッターで切断し、乾燥させてドライタイプのペットフードを作成した。
【0038】
【表1】

【0039】
[投与実験]
慢性、または再発性の皮膚炎が1年以上継続しており、Willemseの診断法-Prelaudによる改良法によりアトピー性皮膚炎と診断され、なおかつ血中抗原特異的IgE測定(Heska社)により感作抗原が確定された犬21頭に対して、ペットフードを体重1kg当り50g/日の割合で8週間投与した。尚、投与期間の摂取物は水と本ペットフードのみとした。投与終了後、獣医師による皮膚症状の所見を「著明改善(劇的に改善)、改善(明らかに改善)、やや改善(何らかの改善)、不変、悪化」をもとに、分布数を測定した。結果を表3に示す。
【0040】
<比較例1>
[ペットフードの作成]
表2に示すようにして、コーンスターチ15重量部、糖類45重量部、アミノ酸8重量部、大豆油17重量部、ビタミン及びミネラル類を合わせて8重量部並びにデキストリン7重量部を、実施例1と同様にして、ペットフードを作成した。
【0041】
【表2】

【0042】
[投与実験]
慢性、または再発性の皮膚炎が1年以上継続しており、Willemseの診断法-Prelaudによる改良法によりアトピー性皮膚炎と診断され、なおかつ血中抗原特異的IgE測定(Heska社)により感作抗原が確定された犬21頭に対して、酸性キシロオリゴ糖を含まないペットフードを作製し、体重1kg当り50g/日の割合で8週間投与を行った。尚、投与期間の摂取物は水と本ペットフードのみとした。投与終了後、実施例1と同様に皮膚症状を評価した。結果を表3に示す。
【0043】
実施例1において、21例中14例の犬で著明改善、3例の犬で改善が認められた。一方、比較例1では著明改善及び改善は認めらず、また、19例の犬で変化は見られなかった。
なお、実施例1及び比較例1に用いた全ての犬の血液の生化学検査を実施した結果、特に肝腎機能等の異常な数値を示した犬は認められないことから、本発明のペットフードの安全性が確認された。
【0044】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により、アトピー性皮膚炎に対する改善効果があり、肝腎機能等が害されることのない安全性の高いペットフードを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を含む酸性キシロオリゴ糖、澱粉及び油脂を含有してなることを特徴とするペットフード。
【請求項2】
前記酸性キシロオリゴ糖が、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、キシロースの平均重合度が2.0〜20.0である前記請求項1に記載のペットフード。
【請求項3】
前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分解して得たもの」である前記請求項1又は2に記載のペットフード。
【請求項4】
前記ウロン酸が、グルクロン酸、4−O−メチル−グルクロン酸又はヘキセンウロン酸である前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペットフード。
【請求項5】
前記油脂が、動物性油脂、植物性油脂又は脂肪酸である前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載のペットフード。
【請求項6】
前記植物性油脂が、大豆油、菜種油、べに花油、コーン油、綿実油、ごま油、オリーブオイル、やし油、パーム油、ひまわり油又はこめ油である前記請求項1乃至5のいずれか1項に記載のペットフード。