説明

ペット共生用集合住宅

【課題】 共用ゾーンである廊下で、ペットによる潤いを享受できるようにすることにより、全体として潤いのある空間を実現したペット共生用集合住宅を提供する。
【解決手段】 廊下35に沿って複数の住戸31が配置され、廊下35と各住戸31とを区画する仕切壁36の内側にペットのための専用空間33を設け、少なくとも廊下35側からペット専用空間33の内部を視ることが可能な可視隔壁部34を仕切壁36に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット共生用集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
少子化や高齢化が進むなかで、地域社会における人間同士の触合いが減少することにより、孤独感、無気力感、憂鬱感などが満ち溢れている。これを補うため、ペットを飼って癒しを得ようとする人たちや、ペットを家族の一員と考える人たちが増えている。犬や猫等のペットと一緒に住むことを可能にする設備が、一戸建て住宅のみならず、都市部の集合住宅においても求められるようになっている。
このような集合住宅として、特許文献1には、建物の入り口付近にペット用の洗い場が設けられたペット共生用集合住宅が提案されている。これ以外にも、足洗い場、汚物水洗処理装置、リードフック、毛詰まり防止排水溝等が設けられたペット共生用集合住宅は既に実施されている。
【特許文献1】登録実用新案第3082597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ペット共生用集合住宅の課題として、ペットの鳴声による騒音対策、臭いや排泄物対策、ペット同士の威嚇や喧嘩等を原因とするトラブル防止などが挙げられる。多くの場合、トラブル防止対策として、集合住宅の管理組合によりペットに関する規則が定められている。これにより、ペットが単独で共用ゾーンへ出入りすることは禁じられ、ペットは住戸内に閉じ込められた状態になっている。またペットが飼い主と一緒に共用ゾーンに出たときにも、トラブル防止のための規則等により、ペットが他の居住者と触れ合う機会は、極めて限定されたものになっている。
したがって、ペット共生用集合住宅では、各住戸内における飼い主とペットとの触れ合いによる癒しを可能にする一方で、廊下等の共用ゾーンは無味乾燥なままであり、集合住宅全体として潤いのある空間を実現することは依然として困難である。
【0004】
上述したような従来の集合住宅の問題点を鑑みて、本発明では、共用ゾーンである廊下においても、ペットによる潤いを享受できるようにすることにより、建物全体としても潤いのある空間を実現可能とするペット共生用集合住宅を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、廊下に沿って複数の住戸が配置され、廊下と各住戸とを区画する仕切壁の内側にペットのための専用空間を設け、少なくとも廊下側からペット専用空間の内部を視ることが可能な可視隔壁部を前記仕切壁に設けたことを特徴とするペット共生用集合住宅が提供される。
【0006】
本発明では、廊下に沿って複数の住戸が配置され、廊下と各住戸とを区画する仕切壁にペットが出入り可能な開口を形成し、当該開口を挟む廊下側と住戸内側とに連続するペットのための専用空間を設け、廊下側に張り出したペット専用空間は側壁、可視隔壁部及び天井により囲んで形成し、可視隔壁部は少なくとも廊下側からペット専用空間の内部を視ることが可能に形成されたものであるペット共生用集合住宅が提供される。
【0007】
本発明のペット共生用集合住宅では、ガラス又は複数のガラスブロックが嵌められた枠体を、前記仕切壁の所定位置に設けられた開口部に嵌めることにより、前記可視隔壁部を形成することが可能である。
なお、枠体に嵌められるガラスは、遮炎性能を有する網入板ガラス、又は耐熱板ガラスとすることが好ましい。ここで、遮炎性能とは、建築基準法により定められたものであり、屋内で発生する火災と、建築物の周囲で発生する火災との両方に対し、加熱開始後20分間加熱面以外の面に火炎を出さないものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のペット共生用集合住宅では、各住戸内のペット専用空間が可視隔壁部を介して廊下に面しているため、犬等のペットは廊下を歩く住民の動きを察知し易く、これに反応してペット専用空間内で動き出す。一方、廊下を歩く居住者は、他住戸のペットと直接触れ合うことはできないものの、可視隔壁部から他住戸内のペット専用空間で動くペットを視て楽しむことが可能になった。このような可視隔壁部を介したペットとの交流により、飼い主以外の居住者もペットによる潤いや癒しを享受できるようになり、従来は無味乾燥であった廊下空間を潤いのある共用ゾーンへと変えることができる。
【0009】
本発明のペット共生用集合住宅では、前記可視隔壁部を構成するガラス等が嵌められた枠体として様々な意匠のものを準備し、それらのなかから選択可能にすることにより、画一的になりがちな集合住宅の廊下の意匠をバリエーションに富んだものにすることができる。例えば、可視隔壁部を枠体に嵌められたガラスの表面に吹付けタイルを設けることによりガラスの可視面積を調整したり、吹付けタイルによる意匠を施しても良い。また枠体には縦格子、横格子あるいは縦横格子を設けても良く、この場合、ガラスは格子間に嵌めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
図1及び図2は本発明のペット共生用集合住宅10,20における所定階の平面図である。図1のペット共生用集合住宅10は、廊下11の両端に階段12が設けられ、複数の住戸13が廊下11に沿って片側に配置され、廊下11と各住戸13を区画する仕切壁14の内側にペットのための専用空間15が設けられたものである。また図2のペット共生用集合住宅20は、中庭21を囲むように回廊22が設けられ、三方向の廊下22に沿って複数の住戸23が配置され、廊下22と各住戸23とを区画する仕切壁24の内側にペットのための専用空間25が設けられたものである。図1及び図2では、廊下11,22と各住戸13,23を区画する仕切壁14,24に、少なくとも廊下11,22側からペット専用空間15,25の内部を視ることが可能な可視隔壁部(図5(a)〜(d)参照)が設けられる。
なお、ペット専用空間15,25は、図1では各住戸ゾーン13,23の仕切壁14,24の右端に配置し、図2では中央に配置したものを例示したが、特に、これらの配置に限定されるものではない。また図1及び図2の平面図では、仕切壁14,24の廊下側はほぼ平坦に形成されたものを例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、図示はしないが、玄関側へ凹状に引き込んだスペースを廊下に設けるべく、仕切壁に凹凸を付け、この玄関部分にペット専用空間を形成することも可能である。
【0012】
次に、図3(a)(b)の平面図及び断面図を参照し、ペット専用空間について詳細に説明する。図3におけるペット共生用集合住宅30は、各住戸31の玄関32にペット専用空間33を配置したものであり、ペット専用空間33は二つの側面がケージの格子33a、残りの二つの側面がそれぞれ躯体壁33bと可視隔壁部34とにより囲まれて形成される。
ここで、可視隔壁部34は、例えば、廊下35と各住戸31の仕切壁36の躯体に開口36aを形成し、この開口36aに図5(a)〜(d)のユニット41〜44を嵌めて固定することにより形成されたものである。図5(a)は矩形の枠体41aに網入板ガラス41bを嵌めたユニット41、図5(b)は矩形の枠体42aに複数のガラスブロック42bを嵌めたユニット42、図5(c)は矩形の枠体43aに縦格子43bを設け、網入板ガラス43cを嵌めたユニット43、さらに、図5(d)は矩形の枠体44aに網入板ガラス44bを嵌め、網入板ガラス44bの中央に円形部分44cを残して吹付けタイル44dで覆ったユニット44である。
いずれのユニット41〜44もガラスを嵌めたものであるため、図3のペット共生用集合住宅30では、飼い主以外の居住者37であっても、廊下を歩くときに可視隔壁部34を通して内部のペット38を視ることが可能になった。これにより、従来は無味乾燥であった廊下空間にペットによる潤いや賑いが与えられる。
なお、図5(a)(c)(d)のユニット41,43,44では、網入板ガラス41b,43c,44bに代えて、網入ではない耐熱板ガラスを使用することも可能である。またペットを飼わない居住者は、廊下35と各住戸31の仕切壁36の躯体に形成された開口36aに、図5(e)に示したような、枠体45aに複数のレンガ45bを嵌めて内部が視えないようにした不可視隔壁部45を固定しても良い。さらに、ペット専用空間33の上方には、居住者の選択により、図3(b)に示したような収納39を設けても良い。
【0013】
次に、図4(a)(b)は、図3とは異なるペット共生用集合住宅50におけるペット専用空間51周りのそれぞれ平面図及び断面図である。ペット専用空間51は各住戸52の玄関53付近に配置することができる。廊下54と各住戸52の仕切壁55の躯体に開口55aが形成され、ペット専用空間51は、この開口55aを挟む廊下54側に張り出した区分56と住戸内側の区分57とから構成される。廊下54に張り出した区分56は、可視隔壁部58、側壁56a及び躯体壁56bに囲まれ、ここに天井56cが設けられてペット38を収容するために必要な高さ、例えば50cm〜75cm程度の高さに形成される。一方、住戸52の内側の区分57は、二つの側面がケージの格子57a、残りの側面が躯体壁57bにより囲まれて形成される。廊下54側に張り出した区分56と住戸52の内側区分57とを接続する開口55aには、ペット38が自在に出入り可能なように可動扉59が枢着される。また開口55aにはシャッター(図示せず)を取り付けることが好ましく、住戸52内で火災が発生した場合に、シャッターが自動的に閉鎖されて延焼を防止できるように構成する。
なお、可視隔壁部58には、図5(a)〜(d)のユニット41〜44が使用され、必要に応じて可視隔壁部58に代え、図5(e)の不可視隔壁部45を適用しても良い。またペット専用空間51の上方には、居住者の選択により、図5(b)に示したような収納60を設けても良い。
図5(a)(b)のペット共生用集合住宅50では、ペット専用空間51が部分的に共用ゾーンである廊下54側に張り出しているため、プライバシーに対する抑制が少なくなり、飼い主以外の居住者37にとっても、内部のペット38を覗きやすくなり、ペットによる廊下54の潤いや賑いが享受し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のペット共生用集合住宅における所定階の平面図である。
【図2】図1とは異なるペット共生用集合住宅における所定階の平面図である。
【図3】ペット共生用集合住宅におけるペット専用空間周りの図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図4】図3とは異なるペット共生用集合住宅におけるペット専用空間周りの図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】(a)〜(d)は可視隔壁部を構成するユニットの正面図であり、(e)の不可視隔壁部を構成するユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0015】
10 ペット共生用集合住宅
11 廊下
13 住戸
14 仕切壁
15 ペット専用空間
20 ペット共生用集合住宅
22 廊下
23 住戸
24 仕切壁
30 ペット共生用集合住宅
31 住戸
32 玄関
33 ペット専用空間
34 可視隔壁部
35 廊下
36 仕切壁
36a 開口
38 ペット
37 飼い主以外の居住者
41〜44 ユニット
50 ペット共生用集合住宅
51 ペット専用空間
52 住戸
53 玄関
54 廊下
55 仕切壁
55a 開口
56 ペット専用空間の廊下側に張り出した区分
57 ペット専用空間の住戸内側の区分
58 可視隔壁部
59 可動扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廊下に沿って複数の住戸が配置され、廊下と各住戸とを区画する仕切壁の内側にペットのための専用空間を設け、少なくとも廊下側からペット専用空間の内部を視ることが可能な可視隔壁部を前記仕切壁に設けたことを特徴とするペット共生用集合住宅。
【請求項2】
廊下に沿って複数の住戸が配置され、廊下と各住戸とを区画する仕切壁にペットが出入り可能な開口を形成し、当該開口を挟む廊下側と住戸内側とに連続するペットのための専用空間を設け、廊下側に張り出したペット専用空間は側壁、可視隔壁部及び天井により囲んで形成し、可視隔壁部は少なくとも廊下側からペット専用空間の内部を視ることが可能に形成されたものであるペット共生用集合住宅。
【請求項3】
前記可視隔壁部は、ガラス又は複数のガラスブロックが嵌められた枠体を、前記仕切壁の所定位置に設けられた開口部に嵌めて形成したものである請求項1又は請求項2に記載のペット共生用集合住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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