説明

ペット用歯ブラシ

【課題】容易にブラッシングできると共に、効果的に歯垢を除去することができ、低コストで製造することが可能なペット用歯ブラシを提供する。
【解決手段】本発明のペット用歯ブラシ10は、握り部12と、握り部12の先端に設けられ、多数本のブラシ毛16を植毛したブラシ部14とを有する。そして、ブラシ部14に植毛されるブラシ毛16は、側面視した際、凹状に窪むように、1つ又は2つの凹部16aを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの歯をブラッシングする際に用いられるペット用歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間と同様、ペット(ここでのペットとは、犬及び猫を意味する)も、健康で長生きするためには、歯磨きが重要であることが認識されつつある。犬の場合、人間と口腔内の環境が異なり、摂取する食物も異なることから、虫歯になることはないものの、歯周病になることが多く、このような歯周病は、痛みや口臭の原因になるばかりでなく、血流を介して細菌が腎臓、肝臓、心臓など、全身の臓器に運ばれて悪影響を及ぼす。
【0003】
このため、歯磨き(ブラッシング)することが推奨されているが、犬や猫に対して歯磨きすることは非常に難しく、褒美を与えながら習慣付けする必要がある。また、歯磨きを実施するに際しては、通常の人間用の歯ブラシを用いることは適切ではない。これは、人間の歯の形状と、犬や猫の歯の形状とは根本的に大きく異なっており、人間の歯並びを考慮して作られた歯ブラシでは、犬や猫の歯に対する十分なブラッシング効果は期待できない。
【0004】
そこで、特許文献1には、犬専用の歯ブラシが提案されている。この歯ブラシは、柄の先に形成されたブラシ部に、長手方向に隣接して3列のブラシ毛を植毛しており、両サイドのブラシ毛の先端を互いに接近する方向に湾曲させた構造となっている。このような構造の歯ブラシによれば、柄の部分を手で把持してブラシ部を犬の口腔内に差し込むと、両サイドのブラシ毛が、臼歯の内側面及び外側面に接触するため、把持し易く、手首の疲労が軽減できる、という作用、効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−151882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に開示されている歯ブラシは、犬の口を開けさせて(上顎と下顎を広げる)ブラシ部を口腔内に差し込み、歯の噛み合わせ面に沿ってブラシ部を長手方向に往復動させることを考慮した構造となっている。
しかし、通常、犬は、口を開けた状態で異物を口腔内に差し込まれることを極端に嫌がる性質があり、このような形態の歯ブラシは、余程、犬を慣らさないと使用することはできない。また、両サイドのブラシ部の先端を、互いに近接するように湾曲させるのは困難であり、コストが高くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、容易にブラッシングできると共に、効果的に歯垢を除去することができ、低コストで製造することが可能なペット用歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般的に、犬や猫であっても、人間と同様、歯周病を効果的に予防するためには、歯磨きをするに際して、歯と歯茎の間に溜まった歯垢を取ることが最も重要であることが知られている。この場合、歯の内側は、舌の動きによって比較的歯垢が付きにくく、外側のみをブラッシングするだけでも、かなりの効果が得られることが分かっている。特に、第4前臼歯の表面側(露出面側)の領域は、この部位の頬粘膜に唾液腺の開口部があり、唾液に含まれるカルシウムを成分として、付着した歯垢が歯石に変化し易いことから、この領域を適切にブラッシングする必要がある。
【0009】
ここで、図1を参照しながら、犬の歯の配列について具体的に説明する。なお、図1を説明するに際しては、上顎5側について説明し、下顎6側については説明を省略する。また、符号Pで示すラインは、略歯茎に沿うラインとなっている。
【0010】
犬の歯は、側面から見ると、犬歯(牙)1から後方側に沿って4本の前臼歯2a〜2dがあり、第4前臼歯2dの後方に、2本の後臼歯3a,3bが存在している。この場合、歯茎Pから突出するそれぞれの歯は、歯と歯の隙間が大きくなっており、しかも、各歯の表面は、人間の歯のように平坦ではなく、多少湾曲した面となっている(模式的には、略錐状乃至は円柱状の曲面となっている)。このような歯の並び、及び表面形状において、通常の人間用歯ブラシを用いてブラッシングすると、図の網掛けで示す部分に磨き残しができてしまう。特に、上記のように、第4前臼歯2dの表面側の前後、後臼歯3a,3bの表面側、更には犬歯1の前後面において、磨き残しが顕著に現れる。
【0011】
この原因としては、上記したように、各歯の表面が湾曲した面となっていることから、人間用の歯ブラシで表面を隈なく磨くには、柄の部分を長手方向に往復させることに加え、湾曲した領域にブラシ毛が密着できるように、横方向にも大きく振る必要があり、このような歯ブラシ操作は、犬が嫌がってしまうことに起因する。また、上記したように、犬や猫は、強制的に口を開けられて、内部に異物を差し込まれることを極端に嫌がる、という性質がある。
【0012】
本発明は、上記したような実情に基づき、以下のような歯ブラシ構造によって、図1で示すような磨き残し部分が生じ難くなるようにしている。
すなわち、上記した目的を達成するために、本発明に係るペット用歯ブラシは、握り部と、握り部先端に設けられ、多数本のブラシ毛を植毛したブラシ部と、を有しており、前記ブラシ部に植毛されるブラシ毛は、側面視した際、凹状に窪むように、1つ又は2つの凹部を有することを特徴とする。
【0013】
上記した構成によれば、ブラシ毛に形成される1つの凹部を、臼歯や犬歯の湾曲した表面に沿わせるように当て付けることが可能となる(2つの凹部の場合、連続する2つの歯の表面に沿わせることが可能となる)。すなわち、このような構造のペット用歯ブラシによれば、犬や猫の上下の顎を開いてブラシ部を差し込むのではなく、単に唇をめくり上げるようにして歯の表面を露出させ、その状態で側面側からブラシ毛を臼歯や犬歯に押し当てて、横方向に振ることなく、握り部を長手方向に往復動させるだけで、その表面を磨き残しすることなく、磨き上げることが可能となる。
また、ブラシ毛は、特許文献1のように、先端を湾曲させるものではなく、単に凹部が形成されるように高さを変えるだけであるため、容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易にブラッシングできると共に、効果的に歯垢を除去することができ、低コストで製造することが可能なペット用歯ブラシが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】犬の歯の構造を示す概略側面図。
【図2】本発明に係るペット用歯ブラシの第1の実施形態を示す側面図。
【図3】図2に示すペット用歯ブラシの斜視図。
【図4】犬の歯に対してブラッシングする状態を模式的に示す平面図。
【図5】第1実施形態の変形例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図。
【図6】本発明に係るペット用歯ブラシの第2の実施形態を示す側面図。
【図7】第2実施形態の変形例を示す側面図。
【図8】(a)から(c)は、それぞれ植毛されるブラシ毛の各種変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るペット用歯ブラシの実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図2から図4は、本発明に係るペット用歯ブラシの第1の実施形態を示す図であり、図2は側面図、図3は斜視図、そして、図4は犬の歯に対してブラッシングする状態を模式的に示す平面図である。
【0017】
本実施形態のペット用歯ブラシ10は、棒状に形成された握り部12と、この握り部12の先端に設けられ、略長方形の板状のブラシ部14とを備えている。この場合、握り部12とブラシ部14は、合成樹脂材によって一体形成することが可能であり、ブラシ部14の一方の表面には、多数本のブラシ毛16が植毛されている。
【0018】
ブラシ毛16は、ナイロン、動物の毛等によって形成することが可能であり(軟らかい素材を用いることでペットに対する不快感を和らげることができる)、ブラシ部14の表面に略矩形状の凹所14aを形成しておき、この凹所14a内に隙間なく均一に多数本、植毛されている。多数本植毛されたブラシ毛16は、その表面(先端)が略均一の高さにカットされると共に、側面視した際、凹状に窪むように1つの凹部16aを有するようにカットされている。
【0019】
前記凹部16aは、使用されるペットの歯の大きさ(飼育している犬、猫の臼歯や犬歯の歯茎領域の径)に応じて特定され、それらの歯が入り込んで、その湾曲面に当て付く程度の幅Lを有するものであれば良い。すなわち、凹部16aは、図2に示すように、側面視した際、長手方向に亘って凹状に窪んでおり、その幅Lについては、使用されるペットの大きさ(歯の大きさ)によって設定される。具体的には、レトリバーのような大型犬であれば、口(歯)が大きいことから、ブラシ部14は大きくなり、それに応じて凹部16aの幅Lも大きく設定される。また、チワワのような小型犬であれば、大型犬と比較して口(歯)も小さいことから、ブラシ部14も小さくなり、それに応じて凹部16aの幅Lも小さく設定される(このような凹部は、表面が平坦な人間の歯に適した人間用歯ブラシの山切りカットとは全く異なる構造となる)。なお、上記した凹部16aの幅Lについては、ペットの歯の大きさ(歯茎領域の径)に依存するが、小型のものから大型のものを含めて、3mm〜12mm程度の範囲で形成されていれば良い。
【0020】
本実施形態の凹部16aは、その表面が、側面視した際、湾曲面(弧状の面)で構成されており、曲面状になっている犬や猫の歯の表面と略一致するように形成されている。また、このように形成される凹部16aについては、あまり深くし過ぎると、その部分のブラシ毛が短くなって歯の表面に当たらなくなり、逆に浅くし過ぎると、凹部の両サイドが湾曲する歯の両端(前後領域)まで行き届かなくなり、いずれの場合も磨き残しが多くなってしまう。このため、凹部16aの深さ(最も深い部分)をD、ブラシ毛の長さをHとした場合、D=(1/2)H〜(1/3)Hの範囲に設定しておくことが好ましい。
【0021】
なお、上記したような凹部16aを有するブラシ毛16については、ブラシ部14の凹所14aに対して、均一長さのブラシ毛16を一度に植毛した後、凹部16aが形成されるようにカットしても良いし、予め凹部16aが形成されたブラシ毛16をブラシ部14の凹所14aに植毛しても良い。
【0022】
さらに、本実施形態では、手によって把持される握り部12は棒状に延びており、その延出方向は、図2に示すように、ブラシ部14の長手方向Xに対して、ブラシ毛が植毛されていない側に曲げられている。このように握り部12をブラシ毛側と反対側に曲げておくことで、実際にブラッシングする操作が容易に行えるようになる。
【0023】
実際に、犬を対象として、上記したペット用歯ブラシを用いてブラッシング操作する場合、唇部分をめくり上げ、歯を露出させる。このとき、犬の頭部を脇に抱え込んでも良いし、頭部を押さえ付けても良く、或いは、十分な躾がされていれば、頭部を押えることなく、唇を単にめくり上げるだけでも良い。そして、この状態で、側面側からブラシ部14を歯に接近させ(図4矢印参照)、ブラシ毛16を歯の表面に当て付ける。
【0024】
図4は、図1に示す上顎5の第4前臼歯2dの表面にブラシ毛16を押し付けた状態を示しており、このように押し付けると、その凹部16aが第4前臼歯2dと略一致するようになり、磨き残しが生じ易かった第4前臼歯2dの前後の領域2d´,2d´´部分に凹部16aの両サイドのブラシ毛を当て付けることが可能となる。すなわち、歯と歯の隙間が大きく、表面が湾曲した前臼歯や後臼歯の表面に対して効果的にブラシ毛を当て付けることができ、この状態で、握り部12を長手方向に動かすことで、通常の人間用歯ブラシでは除去しきれなかった歯垢を効果的に除去することが可能となる。また、握り部12は、主に長手方向に動かすだけで良く、横方向に動かす必要もない。
【0025】
以上のように、ブラシ毛16に凹部16aを形成したことで、湾曲状(錐状乃至は円柱状)の歯を包み込むようにしてブラッシングすることができるため、今まで磨き残しの多かった臼歯の前側及び後側、特に、後臼歯の後側についてもブラシ毛を押し付けることが可能となる。また、握り部12を湾曲させたことで、図4に示すように、握り部12を握った手を前後方向に移動させてブラッシング操作する際、犬の頭部に干渉することがなくなり、ブラッシング操作が容易に行えると共に、犬に不快感を与えることもない。
【0026】
なお、前記ブラシ部14は、小さくする(具体的には、人間の幼児用の歯ブラシのブラシ部のサイズより小さくする)ことで、臼歯にアプローチし易くなると共に、犬に対する違和感を軽減することが可能となる。
【0027】
図5は、上記した実施形態の変形例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
この変形例では、ブラシ部24の表面に、多数の円形凹所24aを形成し、各凹所24a内にブラシ毛26,26´を植毛した構成(点状に多数植毛した構成)となっている。前記凹所24aは、長手方向に3行、幅方向に11列形成(3×11)されており、各凹所24aに、それぞれ、まとまった本数のブラシ毛26,26´が植毛されている。この場合、幅方向の中間領域(ブラシ部24の先端側から4〜8列全て)に植毛されるブラシ毛は、短いブラシ毛26´が、それ以外は長いブラシ毛26が用いられており、図5に示すように、中間領域に、短いブラシ毛26´による凹部26aが形成された構成となっている。
【0028】
このような構成によれば、中間領域に植毛されるブラシ毛に短いもの(ブラシ毛26´)を用いるだけで良く、歯ブラシそのものを容易に製造することが可能となる。なお、ブラシ部24の各凹所24aに植毛されるブラシ毛26,26´の本数、色、硬さ等は適宜、変形することが可能であり、凹所24aについては、例えば、ブラシ部の先端の1列目を2行にする等、その配列についても適宜変形することが可能である。また、図に示す構成では、長手方向に11列配設したが、ブラシ部24を小さくするのであれば、5列程度にしても良い。この場合、例えば3列目をカットして凹部を形成すれば、小型犬や猫に適した構造となる。さらに、前記凹部26aの深さDについても、ブラシ毛の高さHとの関係で、図2に示した構成と同様にすることが望ましい。
【0029】
図6は、本発明に係るペット用歯ブラシの第2の実施形態を示す側面図である。
この実施形態のブラシ毛16は、第1の実施形態と同様、ブラシ部16の表面に凹所を形成しておき、この凹所内に隙間なく均一に多数本、植毛されている。そして、多数本植毛されたブラシ毛16は、側面視した際、凹状に窪むように、連続した2つの凹部16a,16bを有するようにカットされている。
【0030】
このような構成によれば、ブラシ毛16を歯に押し付けた際、連続する2つの臼歯を包み込むことが可能となり、効率的にブラッシングすることが可能となる。
【0031】
図7は、上記した実施形態の変形例を示す側面図である。
この変形例では、図5に示した変形例と同様、ブラシ部24の表面に、多数の凹所24aを形成し、各凹所24a内にブラシ毛26,26´を植毛した構成となっている。前記凹所24aは、長手方向に3行、幅方向に13列形成(3×13)されており、各凹所24aに、それぞれ、まとまった本数のブラシ毛26,26´が植毛されている。そして、ブラシ部には、長手方向に連続して2つの凹部26a,26bが形成されている(ブラシ部24の先端側から3〜5列、及び9〜11列全てに短いブラシ毛26´が用いられている)。
【0032】
このように、点状に植毛されるブラシ毛についても、第2実施形態と同様、2つの凹部を容易に形成することが可能となる。また、図に示す構成では、長手方向に13列配設したが、ブラシ部24を小さくするのであれば、図5に示した構成と同様、5列程度にしても良い。この場合、2列目及び4列目をカットして2つの凹部を形成すれば、小型犬や猫に適した構造となる。
【0033】
図8(a)から(c)は、上記した点状に植毛されるブラシ毛の各種変形例を示す図である。これらの図に示すように、ブラシ毛に形成される凹部26a,26b内には、部分的に、凹部を形成するブラシ毛26´よりも長いブラシ毛26´´が植毛されていても良い。このように構成しても、ブラシ毛を臼歯に密着させ易くすることが可能となる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明におけるブラシ毛の凹部は、ブラシ毛に対して、長手方向に沿って、1箇所又は2か所形成されたものであれば良い。この場合、3箇所以上形成すると、各臼歯の周囲にブラシ毛が届くようにするためには、ブラシ部を大きく形成する必要があるため好ましくない。また、握り部12は、ブラシ部14側を屈曲して長手方向Xと交差するように直線状に延出する構造であっても良い。
【符号の説明】
【0035】
10 ペット用歯ブラシ
12 握り部
14,24 ブラシ部
16,26 ブラシ毛
16a,16b、26a,26b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
握り部と、握り部先端に設けられ、多数本のブラシ毛を植毛したブラシ部と、を有し、ペットの歯をブラッシングするペット用歯ブラシにおいて、
前記ブラシ部に植毛されるブラシ毛は、側面視した際、凹状に窪むように、1つ又は2つの凹部を有することを特徴とするペット用歯ブラシ
【請求項2】
前記凹部は、湾曲面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のペット用歯ブラシ。
【請求項3】
前記凹部の深さをD、前記ブラシ毛の長さをHとした場合、D=(1/2)H〜(1/3)Hに設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のペット用歯ブラシ。
【請求項4】
前記握り部は、長手方向に延びると共に、前記ブラシ部の長手方向に対して、ブラシ毛が植毛されていない側に曲げられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のペット用歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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