説明

ペット用食品

【課題】 犬、猫等のペット類に薬剤を飲ませるために使用するペット用食品、特に、ペット類が好んで口にすることができ、かつ薬剤がこぼれ落ちたりすることのないペット用食品を提供する。
【解決手段】 固形チーズと寒天との組み合わせからなる丈の低い円柱形のペット用食品である。固形チーズ1に、一面を開口しその開口より奥部に向かって漸次径大となるくり抜き部2が設けられている。該くり抜き部2に充填された寒天10の露出面に錠剤嵌入用切目11が設けられている。ペット用食品A全体の大きさが、ペットが一口で飲み込める大きさに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は犬、猫等のペット類に使用されるペット用食品、特にそれらのペット類に薬を与えるために好適なペット用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、一般家庭では犬、猫等のペットが、人間の子供と同様にあるいはそれ以上に大切に扱われ、その健康管理にも気を配られており、ペットの体調がおもわしくないと、ペットはすぐさまいわゆる犬猫病院に連れて行かれる。
【0003】
犬猫病院においては、体調の悪いペットに、その症状に応じた投薬を行うが、人間と同様に、病院では注射を行い、家庭内では薬を服用させるものとして、飼い主に薬剤が渡される。
【0004】
ところが、嗅覚に優れた犬、猫は、飼い主が与えた薬をそう簡単には飲んでくれないので、犬、猫が違和感を感じることなく薬を飲んでくれるように、種々の提案がなされている(特許文献1、2参照)。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3042830号公報(図1)
【特許文献2】特公平7−80752号公報(第1図)
【0006】
特許文献1に記載のペット類用医療薬剤は、ペットフードの中に固形薬剤が嵌入されたものであり、特許文献2に記載の動物用の餌は、ゼラチンの中に薬剤が封入されているものである。
【0007】
しかしながら、ペットフードの中に薬剤が嵌入されたものは、ペットフードの材質によっては、薬剤を嵌入し難いものがあって、無理矢理嵌入すると表面にひび割れが生じ、そのひびから薬剤の臭いがペットフードの外部に漏れ出したり、薬剤がこぼれ落ちたりすることがある。
【0008】
また、ゼラチンの中に薬剤が封入されたものは、犬、猫がそもそもゼラチンのような硬度の低いゲル状の食品を好まないので、あまり効果的ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、犬、猫等が好んで口にすることができかつ薬剤がこぼれ落ちたりすることのないペット用食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のペット用食品は、ペットが食して問題のないゲル状物質が、その一部を除いて固形チーズにくるまれており、前記固形チーズがペットが一口で飲み込める大きさに設定されると共に、前記ゲル状物質の露出面に錠剤嵌入用切目が設けられた構成を採用する。
【0011】
ペットに投薬すべき錠剤を、ゲル状物質の露出面の切目からゲル状物質内に押し込むと、錠剤がゲル状物質内に埋め込まれる。錠剤嵌入時に広げられた切目は、錠剤の埋め込みを容易にすると共に、ゲル状物質の弾力により錠剤嵌入後、ほぼ閉じ合わされることにより、前記錠剤をその形状に関係なく、前記固形チーズ内に確実に保持固定し得る。そして、ペット類は固形チーズを特に好み、しかも、そのような固形物を余り噛まずに丸飲みする習性がある。この習性を利用し、前記固形チーズを一口で飲み込める大きさにすることにより、ペットは内部の錠剤に気付くことなく固形チーズを丸飲みし、錠剤を確実に飲み込むことになる。
【0012】
固形チーズに関しては、固形チーズに、一面を開口しその開口より奥部に向かって漸次径大となるくり抜き部を設け、該くり抜き部に前記ゲル状物質を充填すると共に、前記開口に露出するゲル状物質の露出面に錠剤嵌入用切目を設ける構成が好ましい。固形チーズのくり抜き部に充填されたゲル状物質は、くり抜き部の形状と同様に露出面から奥部に向かって漸次径大となっているので、露出面が下に、奥部が上となる状態のときに、ゲル状物質の外面とくり抜き部の内面とは特に強く圧接する。
【0013】
前記ゲル状物質に関しては、食品として安全で、かつ無味無臭である寒天またはゼリーが好ましいが、なかでも特に寒天が好ましい。なぜなら、寒天は常温でゲル化し、気温が上がってもゾルに戻らないため、取り扱いなどが特に容易であるからである。
【0014】
固形チーズの全体形状は、円柱形であることが好ましい。犬、猫等のペットがより一層食しやすいからである。固形チーズの種類としては、犬猫用チーズが好ましい。犬猫用チーズは、犬猫が好む硬さであり、かつ犬猫にとって好ましくない物質が除去されているからである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のペット用食品は、固形チーズの中にゲル状物質が充填されているが、全体がペットが一口で飲み込める大きさに形成されているので、ペットはゲル状物質の食感に違和感を感じることなく食し、その違和感ゆえに吐き出したりすることがない。また、固形チーズは飼い主にとっても扱いやすい。従って、ペット類への薬剤投与が極めて行いやすくなる。
【0016】
ゲル状物質の露出面に切目が設けられているので、ゲル状物質内への錠剤の嵌入も行いやすく、しかも嵌入後は、ゲル状物質の弾力性により錠剤嵌入時に拡張された切目が閉じ合わされるので、いったん嵌入された錠剤が寒天から抜け出すこともない。
【0017】
固形チーズに、その開口より奥部に向かって漸次径大のくり抜き部を設けた場合には、該くり抜き部に充填されたゲル状物質はそのくり抜き部内面に対応する形状となる。このため、くり抜き部の開口が下向きに位置した場合であっても、ゲル状物質そのものがくり抜き部から脱落するおそれがなく、ゲル状物質内の錠剤もゲル状物質から脱落するおそれもない。
【0018】
また、ゲル状物質が寒天の場合には、その取り扱いが容易であると共に、元々が安全性の高い物質である上に、固形チーズ内に保持される量が僅かであるため、ペットの健康に悪影響を与えるおそれがない。
【0019】
固形チーズの全体形状が円柱形である場合には、ペットがより一層食しやすく、ころころ転がったりすることも可能で、ペットの興味を惹くこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のペット用食品の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1はペット用食品の全体斜視図、図2は図1のII−II線断面図、図3はペット用食品の製作工程を示す説明図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態のぺット用食品(A)は、全体が丈の低い円柱形をしており、固形チーズ(1)の中に設けられたくり抜き部(2)に寒天(10)が充填されているものである。固形チーズ(1)はペットショップで市販されている犬猫用チーズである。
【0022】
ぺット用食品(A)の全体の大きさは、ペットが好んで丸飲みするようペットの種類に応じて変えるのがよく、例えば小型犬や猫を対象とする場合は高さ11mm、直径16mm程度に、また中型犬用の場合は高さ14mm、直径19mm程度に設定される。このように対象に応じて大きさを変えることにより、たいていのペットが一口でこれを食することができる。この全体の大きさは特に限定されるものではないが、余り大きすぎると一口で食することができなくなるし、余り小さすぎると錠剤を嵌入できなくなるので、この程度の大きさが好ましい。
【0023】
くり抜き部(2)は、図1及び図2の上面に開口(3)を有し、開口(3)の径より奥部(底部)に向かって漸次径大に形成されている。該くり抜き部(2)に充填された寒天(10)もそのくり抜き部内面に対応する形状をしており、くり抜き部の開口(3)が下向きに位置した場合であっても、寒天(10)そのものがくり抜き部(3)から脱落するおそれがない。
【0024】
寒天(10)の露出面には、錠剤嵌入用切目(11)が十字状に刻設されている。
【0025】
本実施形態のペット用食品(A)は、例えば次のようにして製作される。
【0026】
図3(イ)に示すような、丈の低い円柱形の固形チーズを、同図(ロ)に示すように、底部(1b)と本体(1a)とに切断分離する。
【0027】
次に、本体(1a)を上面から下面を貫通してくり抜き、同図(ハ)に示すように上面開口から下面開口に向かって、その内径が漸次径大となるくり抜き部(2)とする。
【0028】
そして、同図(ニ)に示すように、同図(ハ)の上下関係を異にすることなく、底部(1b)の上に本体(1a)をきっちり重ね合わせる。
【0029】
最後に、本体(1a)の開口(3)から、溶融状態の寒天(10)を固まらない間に素早くくり抜き部(2)に注ぎ込む。そして、その寒天(10)が固まって、このペット用食品(A)が完成する。固形チーズ(1)内の寒天(10)は、固形チーズ(1)の本体(1a)と底部(1b)の接着剤としても機能し、本体(1a)と底部(1b)を強固に一体化する。
【0030】
このペット用食品(A)に、図1に鎖線で示すように、寒天(10)上面の錠剤嵌入用切目(11)から錠剤(J)を寒天(10)に押し込むと、錠剤(J)はその形状に関係なく、すなわち如何なる形の錠剤(J)も、寒天(10)内に入る大きさである限りは、寒天(10)内に埋め込まれた状態となる。埋め込み後は、寒天(10)の弾性により錠剤嵌入用切目(11)が自動的に塞がれる。
【0031】
このペット用食品(A)を犬、猫等のペットに与えると、外側の大部分が犬、猫等の大好物である固形チーズ(1)から形成され、かつその大きさも一口で丸飲みできる大きさに形成されていることから、犬、猫等が喜んで食することになる。
【0032】
その結果、くり抜き部の寒天(10)に埋め込まれた錠剤(J)が自動的にペットに供与されるので、ペットの抵抗を受けることなく、スムーズかつ確実に投薬を行うことが可能となる。
【0033】
また、このペット用食品(A)は、固形チーズ(1)を犬猫が好むために、通常時のおやつとしても使用することができる。このため常備しやすく、これを常備することにより、実際に投薬が必要になったときにも慌てることがない。また、おやつとして常日頃から与えておくことにより、肝心の投薬が必要になったときに犬猫が嫌うという事態が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係るペット用食品の全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】同ペット用食品の製作工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
A ペット用食品
J 錠剤
1 固形チーズ
2 くり抜き部
3 開口
10 寒天
11 錠剤嵌入用切目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
犬、猫等のペット類が食して問題のないゲル状物質が、その一部を除いて固形チーズにくるまれており、前記固形チーズがペットが一口で飲み込める大きさに設定されると共に、前記ゲル状物質の露出面に錠剤嵌入用切目が設けられていることを特徴とするペット用食品。
【請求項2】
前記固形チーズに、一面を開口しその開口より奥部に向かって漸次径大となるくり抜き部が設けられており、該くり抜き部に前記ゲル状物質が充填されると共に、前記開口に露出するゲル状物質の露出面に錠剤嵌入用切目が設けられている請求項1に記載のペット用食品。
【請求項3】
前記ゲル状物質は寒天である請求項1又は2に記載のペット用食品。
【請求項4】
固形チーズの全体形状が円柱形である請求項1〜3の何れかに記載のペット用食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−136413(P2008−136413A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325440(P2006−325440)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【特許番号】特許第4025352号(P4025352)
【特許公報発行日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(506401200)
【Fターム(参考)】