説明

ペルオキシレドキシン4の診断的使用

本発明は、対象の疾患若しくは臨床症状の診断又は予後診断のための方法であって、以下のステップ:(i)対象の体液のサンプルを提供し、(ii)前記サンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)、又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片のレベルを測定し、(iii)PRX4又はその断片のレベルと疾患若しくは臨床症状と関連づけることを含む、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臨床診断の分野である。特に本発明は、体液からのサンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)の濃度の測定、及びペルオキシレドキシン4の診断的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
好気性生物の主な問題は、活性酸素種(ROS)に曝露されることである。しかしながら、細胞内に、ROSの除去を促進する多数の生物学的機構が存在する。多数の疾患、例えば、心臓病、癌、感染症、及び神経変性疾患は、一方のROSを発生するプロセス、及びもう一方の保護のプロセスの不均衡に関連することが示唆されている[Dalle- Donne, I. et al (2006) Clin. Chem. 52, 601-623, Valko, M. et al (2007) Int. J. Biochem. Cell Biol. 39, 44-84]。いくつかのROSはまた有益な効果を有し、例えば、貪食免疫細胞による微生物の貪食の間、H2O2は重要な細胞毒性物質である[El-Benna, et al (2005) Arch. Immunol. Ther. Exp. 53, 199-206]。H2O2は、貪食免疫細胞において、NADPHオキシダーゼから産生されたスーパーオキシドアニオン(O2‐)から触媒的に発生する。さらに、哺乳動物のサイトカイン及び成長因子は、NADPHオキシダーゼを介して、セカンドメッセンジャーの信号伝達の目的のために、H2O2産生を刺激することが知られている[Veal, E. A. et al (2007) MoI. Cell 26, 1-14; Valko, M. et al (2007) Int. J. Biochem. Cell Biol. 39, 44-84]。実質的なH2O2は、代謝プロセス、例えば、ミトコンドリアからO2‐を放出する電子伝達「漏出」などの副産物として発生する[Muller, F.L. (2007) J. Biol. Chem. 279, 49064-49073]。H2O2は、直接的に、脂質、タンパク質、及び拡散を修飾することができる。それゆえ、効率的な解毒経路は、ペルオキシドの分解のために存在する。例えば、ペルオキシドは、グルタチオン、ビタミン、及び非酵素の抗酸化物質との反応により、直接的に分解され、又は酵素的に、例えばカタラーゼ(H2O2含まない)、又はグルタチオンペルオキシダーゼ(H2O2及び脂質ヒドロペルオキシド)により、分解される[Valko, M. et al. (2007) Int. J. Biochem. Cell Biol. 39, 44-84]。ペルオキシダーゼの特定のファミリーは、それらのペルオキシダーゼ活性に加えて、細胞においてペルオキシドストレスを情報交換するような他の機能を有する、いわゆるペルオキシレドキシンである。
【0003】
これまで、6のペルオキシレドキシンのアイソフォームが哺乳動物で確認されている[Wood, Z.A. et al (2003) Trends Biochem. Sci. 28, 32-40; Hofman, B. et al. (2002) Biol. Chem. 383, 347-364]。これらの細胞の所在地は、細胞質[PRX1(ペルオキシレドキシン1)、2及び6]、核 (PRX 1)、ミトコンドリア(PRX 3及び6)、及びペルオキシソーム (PRX 5)を含む。全てのペルオキシレドキシンは、ペルオキシドを攻撃する、酸化還元活性の「ペルオキシドの」システイン残基を含む。このプロセスのあいだ、これらのシステインは、システインスルフェン酸に酸化される[Ellis, H.R. (1997) Biochemistry 36, 13349- 133567; Choi, H.J. (1998) Nat. Struct. Biol. 5, 400-406; Montemartini, M. (1998) Eur. J. Biochem. 264, 516-524]。
【0004】
ヒトにおいて、ヒトPRX 1、2、3及び4は、それらのC末端近くにさらなる「還元する」システインを含み、それ故、2-Cysペルオキシレドキシンと呼ばれる。ペルオキシド除去後、ペルオキシドのシステインスルフェン酸は、安定した分子間ジスルフィドを形成するためにそのパートナーの還元するシステインと反応する[Ellis, H.R. (1997) Biochemistry 36, 13349-133567, Hirotsu, S. et al (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96, 12333-12338]。活性部位中のチオールの再生のために、ジスルフィドは、順々に、 細胞特異的なジスルフィド還元酵素により還元される。2-Cysペルオキシレドキシンは、通常はホモ二量体であるが、しかしながら、それらは、ドーナツ型の十量体へ、そして再び戻る、さらに流動的な遷移を経ると見られている[Alphey, M.S. et al (2000) J. MoI. Biol. 300, 903-916; Schroder, E. et al (2000) Structure 8, 605-615; Chauhan, R. et al. (2001) Biochem. J. 354, 209-215; Wood, Z.A. et al (2002) Biochemistry 41, 5493-5504]。活性部位中のジスルフィド形成が複合体を不安定化するのに対し、十量体の形成は、効率的な触媒作用のための活性部位を準備する。スルフィン酸(SO2H)誘導体に対する、ペルオキシドのシステインの過酸化は、高ペルオキシド濃度で起こるとみられており、 [Rabilloud, T. et al (2002) J. Biol. Chem. 277, 19396-19401, Wagner, E. et al (2002) Biochem. J. 366, 777-785]、還元するジスルフィドの形成を防ぐことにより、ペルオキシレドキシン十量体を安定化する[Schroder, E. et al (2000) Structure 8, 605-615]。マウスの肺細胞において、これは、その出現及びそれに続く分解が、細胞周期の停止と最終的な再開と関連する、PRX2十量体の集合を導くことが示された[Phalen, T.J. (2006) J. Cell Biol. 175, 779-789]。PRX2のオリゴマーの状態は、細胞質H2O2の観察に用いられる。
【0005】
ペルオキシレドキシンの他の機能はまた、オリゴマー状態、例えば、ストレスに続く、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevesiae)細胞質ペルオキシレドキシンの高分子量画分[Jang, H.H. et al. (2004) Cell 117, 625- 635]、及びインビトロでの十量体のヒトPRX1[Lee, W. et al (2007) J. Biol. Chem. 282, 22011-22022]、に関連するシャペロン活性、に依存して示される。PRX1の場合、十量体は、二量体−十量体遷移を防ぐ非触媒的ジスルフィドにより、共有結合的に安定化され、それによってペルオキシダーゼ活性を減少させ、シャロン活性の普及を増大させる[Lee, W. et al. (2007) J. Biol. Chem. 282, 22011-22022]。
【0006】
PRX4は、N末端の配列を有し、それは小胞体又は細胞膜への局在のための、又は分泌のための潜在的なシグナルである。PRX4は、10年前に同定され、しかしながら、哺乳動物細胞におけるPRX4の真の役割について、いくつかの混同が存在する。研究は、PRX4は、NF-κB(核因子κB)の活性を減衰させる細胞質タンパク質であると示している[Jin, D.Y. et al. (1997) J. Biol. Chem. 272, 30952-30961]。他の研究からの結果は、PRX4は、NF-κBを活性化する分泌タンパク質であることを示す[Haridas, V. et al. (1998) J. Immunol. 161, 1- 6]。この考察は、PRX4が、ジャーカット細胞、及びHL-60細胞の培養上清におけるウェスタンブロットによって同定された発見に基づく。しかしながら、これは、PRX4が、細胞培養プロセスによって人為的に誘導された、細胞損傷又は壊死に起因して、単純に上清に漏れた、細胞質にもともと位置していた可能性を排除できない。他の研究では、アフリカグリーンモンキー細胞で一時的に過剰発現されたラットPRX4は、移行し、細胞表面に結合した [Matsumoto A. et al. (1999) FEBS Lett. 443, 246-250, kado-Matsumoto, A. et al. (2000) J. Biochem. (Tokyo) 127, 493-501]。これらの研究の間の唯一の一貫した発見は、インビトロでペルオキダーゼとして作用するPRX4の能力である。
【0007】
最近の文献は、ヒトPRX4は、細胞質タンパク質ではなく、分泌されないことを教示している[Tavender, TJ. et al. (2008) Biochem. J. (2008) 411, 191-199]:それは、シグナル配列の切断を伴って小胞体(ER)を横断し、しかし、その後、重要なことに、ERに留まり、分泌されない。加えて、HT1080、HeLa、HEK-293細胞(ヒト胚腎臓細胞)のタンパク質沈殿物、及びHepG2 培養上清のウェスタンブロット分析は、検出可能なPRX IVの分泌は示されなかった。著者らは、「PRX4がヒトER内に存在するというこの発見は、ここ10年間不透明なままであった論点を明らかにした」と結論付ける。一見したところ、この記述と一致して、PRX4は、血液循環中で、生理学的に又は病態生理学的に検出可能であるという証拠は少しも存在しない。それゆえ、分泌されるかどうかというPRX4の論点は、決着されたようにみえる。
【0008】
しかしながら、PRX4の分泌能に取り組む全ての発表された実験はこれまで、細胞株に基づくものであり、これらの結果が自然の状態を反映しているのかどうかは不明である。さらに、PRX4の発現は、特定の癌の組織において、変化することは知られている;WO 2004/055519 A2参照。PRX4、別名NKEF Cは、ナチュラルキラー細胞のエンハンサーとなることが知られている;US 5,985,612 A1参照。
【0009】
チャンらは(J. Rheumatology 2009; 36(5), 872-80)、プロテオミクスの手法で、滑膜組織からのサンプル中で、多くのタンパク質、中でもPRX4の変化した濃度を観察した。加えて、チャンらは、上昇したPRX4濃度は、初期の関節リウマチを罹患した患者の血漿サンプルにおいて観察されたことを主張する。しかしながら、当業者は、チャンらによって用いられた分析条件下で作為の測定を予期する。
【発明の概要】
【0010】
発明の説明
本発明は、PRX4が、生理学的又は病態生理学的の双方の条件下で、血液循環中で検出されるという、発明者らの驚くべき発見に基づく。それ故、本発明は、PRX4の診断的使用に関する。
【0011】
本発明は、対象の疾患若しくは臨床症状の診断又は予後診断のための、あるいは対象のリスク層別化、又は治療モニタリング又は治療ガイダンスのための、方法であって、以下のステップ:
(i)対象の体液のサンプルを提供し、
(ii)前記サンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片のレベルを測定し、
(iii)PRX4又はその断片のレベルを疾患又は臨床症状と関連づけること、
を含む、方法に関する。
【0012】
より特には、本発明は、対象の疾患若しくは臨床症状の診断又は予後診断のための方法であって、以下のステップ:
(i)対象の体液のサンプルを提供し、
(ii)前記サンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片のレベルを測定し、
(iii)PRX4又はその断片のレベルを疾患又は臨床症状と関連づけること、
を含む、方法に関する。
【0013】
特に、本発明は、対象の疾患又は臨床症状の診断のための方法であって、以下のステップ:
(i)対象の体液のサンプルを提供し、
(ii)前記サンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片のレベルを測定し、
(iii)PRX4又はその断片のレベルを疾患又は臨床症状と関連づけること、
を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、ヒトペルオキシレドキシンタンパク質ファミリーのメンバーの配列アライメントを示す。配列アライメントは、www.uniprot.org.のBLASTプログラムを用いて行われた。
【図2】図2は、PRX免疫反応性の用量反応曲線を示す。パネルの双方では、アッセイA.1が用いられた。ブタ肝臓抽出物の希釈物は、パネルAで測定され、ペプチドPEE27の希釈物はパネルBで測定された。
【図3】図3は、均一系サンドイッチアッセイ、及び不均一系サンドイッチアッセイを用いてヒト血清中で測定されたPRX4免疫反応性の相関性を示す。アッセイA.1(X軸)及びB(Y軸)が用いられた。
【図4】図4は、サイズ排除HPLCによって分画されたヒト血清プール(A)又は、ブタ肝臓抽出物(B)のPRX4免疫反応性特性を示す。サイズキャリブレーターの溶出時間は示された。
【図5】図5は、検出可能なPRX4免疫反応性に対するDTTの効果を示す。パネルAは、アッセイA.1の最初のインキュベーションステップにおいて、アッセイバッファで用いられるDTT濃度に依存した、ブタ肝臓抽出物の希釈物の用量反応曲線を示す。パネルBは、最初のインキュベーションステップにおいて、3mM DTTを含む又は含まないアッセイA.1を用いたヒト血清サンプルで測定されたPRX4免疫反応性の相関関係を示す。
【図6】図6は、検出可能なPRX4免疫反応性のエクスビボ安定性に対するDTTの効果を示す。5つのサンプルで得られた平均値は示された。
【図7】図7は、臨床サンプルにおいて測定されたPRX免疫反応性を示す。サンプルは、それぞれの患者の疾患の種類に従って分類された。それぞれの群の中央値は示された。
【図8】図8は、敗血症、重症敗血症、及び敗血性ショックに罹患した患者からのサンプルにおける、PRX4のレベルと、プロカルシトニン(PCT)との相関関係を示す(スペアマンr-0.33)。PCTのレベルは、敗血症、重症敗血症、及び敗血性ショックのマーカーである。
【図9】図9は、1500 g、2000 g、2500 g、及び3000 gで遠心分離後の血清及び血漿サンプルからのPRX4回収の比較を示す。値は、3000 gの値(=100%)に標準化された。
【図10】図10は、入院後の連続した日数について、敗血症に罹患した患者におけるPRXを示す。
【図11】図11は、重症の急性膵炎に罹患した患者におけるPRXを示す。
【図12】図12は、脳卒中に罹患した患者におけるPRXを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明との関連において、「診断」は、対象における疾患又は臨床症状の認識及び(早期の)発見に関し、鑑別診断もまた含む。また、疾患又は臨床症状の重症度の評価は、特定の実施形態において、用語「診断」によって含まれる。
【0016】
「予後」は、特定の疾患又は臨床症状に罹患している患者の転帰、又は特定のリスクの予測に関する。
【0017】
本発明との関連において、「リスク層別化」は、対象の、それらのさらなる予後診断に従って異なるリスク群への分類に関する。リスク層別化はまた、患者の予防手段及び/又は治療手段及び/又は管理の適用のための層別化に関する。
【0018】
PRX4、又はその断片は、ホモ多量体又は他のタンパク質、例えば、他のペルオキシレドキシン、又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片など、とのヘテロ多量体を含む。それ故、本発明との関連において、PRX4の単量体のレベル、及び/又はホモ多量体及び/又はヘテロ多量体複合体に含まれるPRX4のレベル、が測定される。言い換えれば、好適な実施形態では、PRX4又はその断片は、ホモ多量体又はヘテロ多量体複合体で存在し、ホモ多量体又はヘテロ多量体複合体のレベルが測定される。
【0019】
PRX4のアミノ酸配列は、配列番号1に示す。
【0020】
「サンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片のレベルを測定すること」は、PRX4及び/又はそれぞれの断片が、単量体として、又は多量体複合体、それがホモ多量体、又はヘテロ多量体複合体であろうと、において存在するかどうかと無関係に、サンプル中のPRX4又はそのそれぞれの断片の測定に関する。言い換えれば、PRX4又はその断片の測定は、それぞれのそのホモ−又はヘテロ多量体の測定を含む。
【0021】
本発明との関連において、「対象」は、ヒト又は人でない哺乳動物である。例えば、対象は、酸化的ストレスに関連する又は引き起こされる疾患又は臨床症状に罹患していると疑わしい、又はそのような疾患又は臨床症状と診断された、患者である。特に後者の場合では、方法は、疾患又は臨床症状の診断、鑑別診断、リスク層別化、予後診断、予防手段及び/又は治療手段の適用の層別化、及び/又は患者の管理、治療モニタリング、及び治療ガイダンス、のために用いられる。
【0022】
本明細書で用いられる用語「患者」は、疾患のために、医療を受ける又は医療を受けるべき、生きているヒト、又はヒトでない哺乳動物をいう。これは、定義された疾患には罹患していないが、病理学の兆候のために検査されている個人を含む。従って、本明細書で記述されたこの方法及びアッセイは、ヒト及び家畜の疾患の双方に適用される。
【0023】
本発明の方法で診断された疾患又は臨床症状は、好ましくは酸化ストレスに関連する。本発明により診断されるだろう疾患又は臨床症状は、好適な実施形態では、感染症、心臓疾患、敗血症(重症敗血症、敗血性ショックを含む)、膵炎、消化管の疾患、癌、糖尿病、関節リウマチ、腎臓疾患、及び神経変性疾患からなる群から選択される。他の実施形態では、疾患又は臨床症状は、感染症、心臓疾患、敗血症、膵炎、消化管の疾患、癌、糖尿病、腎臓疾患、及び神経変性疾患からなる群から選択される。他の実施形態では、疾患又は臨床症状は、感染症、心臓疾患、敗血症、膵炎、消化管の疾患、糖尿病、腎臓疾患、及び神経変性疾患からなる群から選択される。
【0024】
本発明の他の特定の実施形態では、疾患又は臨床症状は、関節リウマチではない。
【0025】
それ故、この特定の実施形態では、本発明は、対象の疾患若しくは臨床症状の診断又は予後診断のための、あるいは対象のリスク層別化、又は治療モニタリング又は治療ガイダンスのための、方法であって、以下のステップ:
(i)対象の体液のサンプルを提供し、
(ii)前記サンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)、又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片のレベルを測定し、
(iii)PRX4又はその断片のレベルを、間接リウマチではない疾患又は臨床症状と相関づけること、
を含む、方法に関する。
【0026】
本発明のさらに他の特定の実施形態では、疾患又は臨床症状は、間接リウマチ、変形性関節症、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される疾患又は臨床症状ではない。
それ故、この特定の実施形態では、本発明は、対象の疾患若しくは臨床症状の診断又は予後診断のための、あるいは対象のリスク層別化、又は治療モニタリング又は治療ガイダンスのための、方法であって、以下のステップ:
(i)対象の体液のサンプルを提供し、
(ii)前記サンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)、又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片のレベルを測定し、
(iii)PRX4又はその断片のレベルが、間接リウマチ、変形性関節症、及び強直性脊椎炎ではない疾患又は臨床症状と相互に関連する、
を含む、方法に関する。
【0027】
心臓血管疾患又は心臓疾患は、例えば、急性冠症候群、アテローム性動脈硬化、高血圧、脳卒中、及び一過性脳虚血発作からなる群から選択される。消化管の疾患は、例えば、潰瘍性大腸炎又はクローン病である。癌は、例えば、結腸、乳、又はすい臓癌である。腎臓疾患は、例えば、慢性又は急性腎臓疾患である。神経変性疾患は、例えば、アルツハイマー病、軽度認知傷害、及びパーキンソン病からなる群から選択される。
【0028】
上記の概略として、PRX4は、単量体の又は多量体の形態で存在し、それ故、ホモ多量体のレベルによる方法の特定の実施形態では、PRX4の特にホモ十量体又はホモ五量体は測定される。他の特定の実施形態では、PRX4のヘテロ多量体の存在、又は不在、又はレベルが測定される。多量体は‐それがホモ‐又はヘテロ‐多量体であろうと、好ましくは、非変性条件下でゲル濾過カラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより決定されるように、約158 kDa〜約660 kDa、好ましくは330 kDa+/- 50 kDaの範囲で見かけの分子量を有する。
【0029】
PRX4又はその断片の存在は、例えば、サンプルと、少なくとも一つのPRX4結合剤とを接触することによって測定される。少なくとも一つの結合剤は、例えば、抗体である。少なくとも一つの結合剤は、他のタンパク質、具体的には他のペルオキレドキシン、例えばPRX1、PRX2、PRX3、PRX5、及びPRX6など、との20%未満の交差反応性であることが望ましい。より好ましくは、少なくとも一つの結合剤は、他のタンパク質、具体的には他のペルオキレドキシン、例えばPRX1、PRX2、PRX3、PRX5、及びPRX6、との2%未満の交差反応性である。特定の実施形態では、少なくとも一つの結合剤が、配列番号1のPRX4の位置1−73に含まれるエピトープと結合する。他の特定の実施形態では、少なくとも一つの結合剤が、配列番号1のPRX4の位置39−65に含まれるエピトープと結合する。
【0030】
Prxファミリーの他のメンバーと交差反応性を示す抗-PRX4抗体を得る可能性を最小限にするために、免疫原の供給源としてPRX4のN末端部分から選択され、それについては、対応する領域がPrxファミリーのいくつかの他のメンバー(Prx1及び2)に存在しない(図1)。従って、Prx1及び2に対する交差反応性は、設計により既に排除された。PRX3のみは、N末端的にPrx1及び2を伸長し、それ故PRX4のN末端部分に相当する可能性のある領域を有する(図1)。双方の対応する配列は下記で強調される。これらの二つの配列の間の相同性の程度は無視できる。それ故、PRX4配列に対する抗体を開発することにより、この大変低い配列相同性のために、これらの抗体がPRX3と交差反応しないことはすでに予想されるに違いない。実験的に、交差反応性は、PRX4及びPRX3のそれぞれのN末端部分を代表するそれぞれ化学的に合成されたペプチドの等モル量に対して試験される抗体の結合を定量化することによって評価される。正確には、試験される抗体は、記載されるように標識される。ペプチドは、記述されるように合成される。ペプチドは、「ペプチドのコーティング」で記載されるようにコートされる。標識抗体の結合は、サンプルを除外することにより、「イムノアッセイA.2」で記述するようにペプチドコートされたチューブ上で行われる。交差反応性(%)は、PRX4ペプチドと結合する抗体の量(信号)を介して、PRX3ペプチドと結合する抗体の量(信号)を割ることにより計算される。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
PRX4及び/又はその断片は、例えば、イムノアッセイ、好ましくは、サンドイッチアッセイで測定される。特定の実施形態では、そのようなサンドイッチアッセイは、PRX4の同じエピトープ又は重複するエピトープに結合する、少なくとも二つの結合剤を含む。この場合、結合剤のこのエピトープ又はこれらのエピトープは、好ましくは配列番号1に対応するPRX4の位置39〜65を含む。
【0036】
他の好適な実施形態では、サンドイッチアッセイは、PRX4の異なるエピトープに結合する、少なくとも二つの結合剤を含む。好ましくは、一つの結合剤は、配列番号1に対応するPRX4の位置39〜65を含むエピトープに結合し、二つ目の結合剤は、配列番号1に対応するPRX4の位置51〜65を含むエピトープに結合する。
【0037】
サンドイッチイムノアッセイは、例えば、一段階アッセイ又は二段階アッセイとして設計される。
【0038】
本発明による方法では、PRX4の測定の前に又は間に、サンプルは、その測定に関してPRX4及び/又はその安定した断片のエクスビボでの安定性の向上、及び/又はアッセイの分析的検出限界、及び/又は分析的検出限界、例えば機能的なアッセイ感度、ノイズに対するシグナルの割合などに関する他の方法、の改良を導く試薬と接触させる。「エクスビボ安定性の向上」は、免疫活性が好ましく維持され、測定までに、著しく増加又は減少しないことを意味する。当該試薬は、好ましくは、還元剤、例えばジチオスレイトール(DTT)、βメルカプトエタノール、アスコルビン酸、又はCu2+イオンなどである。DTTが好ましい。この場合、サンプル中のDTTの最終濃度は、好ましくは1〜10 mMの間である。
【0039】
体液のサンプルは、好ましくは、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液サンプル、唾液サンプル、可溶化された組織サンプル、及び尿サンプル、又は任意の前述のサンプルの抽出物、からなる群から選択される。当該サンプルは、滑膜組織由来であることが好ましい。好ましくは、当該サンプルは、血清サンプル又は血漿サンプルである。最も好ましくは、当該サンプルは、測定されるたべき全ての疾患の血清サンプルである。
【0040】
一つ非常に特定の実施形態ではあるが、当該サンプルは、血清サンプルであり、疾患又は診療症状は、間接リウマチ、変形性関節症、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される。
【0041】
他の非常に特定の実施形態では、疾患又は臨床症状は、関節リウマチでなく、当該サンプルは、血清又は血漿サンプルではない。
【0042】
血漿、又は血清サンプルは、PRX4を潜在的に含む血液細胞が血漿又は血清から定量的に分離されることによる方法で得られることが好ましい。血液サンプルの溶血は、本発明との関連明細書において、避けられるべきである。
【0043】
本発明との関連において、「血漿」は、遠心分離後に得られる抗凝血剤を含む血液の実質的に細胞を含まない上清である。典型的な抗凝血剤は、カルシウムイオン結合化合物、例えば、EDTA又はクエン酸など、及びトロンビン阻害剤、例えば、ヘパリナート又はヒルジンなどを含む。細胞を含まない血漿は、抗凝固処理された血液(例えば、クエン酸、EDTA又はヘパリン化された血液)の2000〜3000 gで少なくとも15分での遠心分離により得られる。
【0044】
それゆえ、本発明の関連において用いられる血漿サンプルは、1500 g、30分以上の遠心分離にかけられており、好ましくは、少なくとも2000 gで少なくとも30分、より好ましくは、少なくとも3000 gで少なくとも20分、最も好ましくは、少なくとも3000 gで少なくとも30分、遠心分離にかけられる。
【0045】
本発明の一つの特定の実施形態では、血漿サンプルは、クエン酸処理された血漿サンプルではない。
【0046】
本発明の関連において、「血清」は、希釈されていない、十分な凝固が完了した後の血液の細胞外部分である。凝固は、通常30分後に完了する。血清は、凝固したサンプルの、1500 gの最低速度で、少なくとも10分の遠心分離により得られる。
【0047】
それゆえ、本発明の関連において用いられる血清サンプルは、少なくとも1500 gで、少なくとも10分、好ましくは、少なくとも15分、より好ましくは、少なくとも20分、遠心分離にかけられることが好ましい。最も好ましくは、血漿サンプルは、少なくとも3000 gで少なくとも20分遠心分離にかけられる。
【0048】
血清又は血漿を分離するとき、温度は、15℃未満に下がる、又は24℃を超えるべきではない。
【0049】
本発明の方法及びアッセイの関連において、対象のサンプル中のPRX4の測定に加えて、他のマーカー又は臨床的又は実験室パラメータの測定は行われ、疾患又は臨床症状との相関によって説明される。これは、さらなる情報は、診断、予後診断、リスク層別化、治療モニタリング、又は治療ガイダンスに含まれることを意味する。
【0050】
実験室パラメータは、例えば、サンプル中の他の指標的のマーカー、例えばペプチドマーカーのレベルである。
【0051】
これは、暗示ではなく、除外するものではないが、そのような測定は、技術的に組み合わせられる。さらなる情報の使用は、対象の診断、予後診断、リスク層別化、治療モニタリング又は治療ガイダンスを生み出す、パラメータ−それが実験室及び/又は臨床的パラメータであっても−の任意の種類の数学的組み合わせで行われる。そのような数学的組み合わせの一つの例は、特定の転帰を経験する対象のリスクがそれに由来する、Cox比例危険分析であるが、しかし、他の方法もまたよく用いられる。
【0052】
本発明はまた、個々のPRX4のレベルを所定の値と比較することを含む。所定の値は、様々な形態がとられる。それは、シングルカットオフ値、例えば、中央値又は平均又は集団の75、90、95、又は99%などである。それは、比較群、例えばひとつの定義された群におけるリスクが、他の定義された群において2倍のリスクを有するなど、に基づいて、確立される。例えば、試験された集団が、均等に(又は不均等に) 群 (例えば、低いリスクの群、中程度のリスクの群、及び高いリスク群など)に、又は4分位数(最も低いリスクを有する個人である最も低い4分位数、及び最も高いリスクを有する個人である最も高い4分位数)に、分けられた場合、それは範囲であり得る。
【0053】
所定の値は、選択された特定の集団の間で変更することができ、それらの習慣、民族性、遺伝学的などによって決まる。例えば、一見したところ健康で、非喫煙者の集団(発見可能な疾患がなく、酸化的ストレスに関連するストレスの病歴がこれまでにない)は、喫煙者集団又は酸化的ストレスに関連する病歴を有するメンバーの集団に比べて、マーカーの異なる「正常の」範囲を有するだろう。それに応じて、選択された所定の値は、個人が収まるカテゴリーを考慮に入れる。適切な範囲及びカテゴリーは、当業者による単なるルーチンの実験で選択される。
【0054】
PRX4のレベル及び他のマーカーは、任意の認識されている技術の方法により得られる。そのレベルは、イムノアッセイ、又は他のマーカーのレベルを測定するための従来の技術により測定される。認識されている方法は、測定のための商業的な研究所に患者の体液のサンプルを送ることを含み、しかし、ポイントオブケアで測定を行うこともまた含まれる。
【0055】
好適なマーカーは、バイオマーカー、例えばペプチドホルモン又はその断片、又は前駆体、又はペプチドホルモンの前駆体の断片を含むが、これに限定されない。
【0056】
代わりに、又は追加して、規定されたPRX4又はその断片のレベルは、臨床的パラメータと組み合わされる。それ故、本発明の他の好適な実施形態では、対象のための診断、予後診断、リスク層別化、治療モニタリング、又は治療ガイダンスは、臨床的パラメータ:PRX4に加えて、年齢、性別、収縮期血圧、拡張期血圧、抗高血圧治療、体格指数、糖尿病の存在、現在の喫煙、の群から選択されるがこれらに限定されない、を測定し、用いることにより改良される。
【0057】
対象のサンプル中のPRX4及び任意の一つ又はそれ以上のさらなる他のマーカーペプチド(又はその断片、又は前駆体又はその断片)のレベル、すなわち濃度は、例えば、患者の診断、又は転帰の予後診断に、患者のリスク評価、鑑別診断、リスク層別化、予防手段、及び/又は治療手段の適用のための層別化、及び/又は患者の管理、疾患又は臨床症状の治療モニタリング、及び治療ガイダンスに起因すると考えられた。特に、特定の閾値を越えるPRX4の濃度は、患者のための、特定の転帰又は予後診断又は鑑別診断の指標となる。
【0058】
本発明によるアッセイの方法又は使用により得られるPRX4を含むマーカーのレベルは、当業者によく知られる種類のメンバーで分析される。例えば、得られたそれぞれのアッセイの結果は、「正常な」値、又は特定の診断、予後診断、又は転帰を示す値と比較される。特定の診断/予後診断はそれぞれのアッセイの結果と、診断又は予後診断の「閾値」として言及されるそのような値、との比較に依存する。ある実施形態では、一つ又はそれ以上の診断又は予後診断の指標のためのアッセイは、ただ単にアッセイ中の指標(複数)の存在、又は不在により症状、又は疾患と関連付けられる。例えば、アッセイは、目的の特定の閾値の濃度を越えたときにのみ、正の信号が生じ、その濃度が下回ったときに、アッセイがバックグラウンド以上の信号を提供しないように、設計される。
【0059】
診断、及び/又は予後診断試験の感度及び特異性は、単なる試験の分析的「質」以上のものに依存し、それらはまた、異常な結果を構成するものの定義に依存する。実際には、受信者操作特性曲線(ROC曲線)は、一般的に、「正常」(すなわち、見かけには健康)及び「疾患」集団におけるその相対頻度に対するその変数の値をプロットすることにより、計算される。任意の特定のマーカーについて、疾患に罹患した及び罹患していない対象のマーカーレベルの分布は、恐らく重複する。そのような条件下で、試験は、100%正確性で、疾患から正常を完全に識別することはできず、重複する領域は、試験は疾患から正常を識別できないことを指し示す。閾値は選択され、その上で、(又はその下で、疾患に伴いマーカーがどのように変化するかに依存する)試験は異常であると見なされ、その下で試験は正常であると見なされる。ROC曲線の下の領域は、把握された測定が症状の正確な識別を許容する可能性の限界である。ROC曲線は、試験結果は必ずしも精密な数を与えないときにさえ、用いられる。一つが結果をランク付けする限りは、一つはROC曲線をつくることができる。例えば、「疾患」サンプルに関する試験の結果は、程度(例えば、1=低い、2=正常、及び3=高い)に従って、ランク付けられる。このランキングは、「正常」集団における結果、及びつくられたROC曲線と相関性がある。これらの方法は、当該技術でよく知られている。例えば、Hanky et al. 1982. Radiology 143: 29-36を参照。好ましくは、閾値は、約0.5超、より好ましくは約0.7超、さらにより好ましくは約0.8超、より好ましくは約0.85超、もっとも好ましくは約0.9超のROC曲線領域を提供することから選択される。本発明との関連において、用語「約」は、得られた測定値の±5%を意味する。
【0060】
ROC曲線の横軸は、偽陽性の割合とともに増加する(1-特異度)を表す。曲線の縦軸は、真陽性の割合とともに増加する感度を表す。それ故、選択された特定のカットオフのために、(1-特異度)の値は、決定され、対応する感度が得られる。ROC曲線の下の領域は、測定されたマーカーレベルが疾患又は症状の正確な識別を許容する可能性の限界である。それ故、ROC曲線の下の領域は、試験の有効性の決定するために用いられる。
【0061】
ある実施形態では、パネルにおいて一つ又はそれ以上のマーカーの特定の閾値は、対象から得られたマーカーレベルの特性が、特定の診断/予後診断の指標となるかどうかを決定することによらない。それどころか、本発明は、単位全体としてマーカーパネル「特性」の評価を利用する。そのようなマーカーのパネル中の変化の特定の「指紋」パターンは、事実上、特異的な診断又は予後診断指標として働く。本明細書で議論されているように、変化のパターンは、単独のサンプル、又は一つ又はそれ以上のメンバーのパネル(又はパネル反応値)の一時的な変化から得られる。本明細書でパネルは、1セットのマーカーを意味する。
【0062】
本明細書で後に記述するように、パネル反応値は、好ましくは、様々なカットオフでのパネルの1- (特異度)(すなわち、偽陽性)に対して、マーカーの特定のパネルの感度の(すなわち、真陽性)ROC曲線をプロットすることにより決定される。これらの方法では、対象からのマーカー測定の特性は、診断又は予後診断の幅広い可能性(数値スコアとして、又はリスクの百分率として表される)を提供することが共に考えられる。そのような実施形態では、マーカーの特定の対象の増加は、一人の患者における特定の診断/予後診断を指し示すのに十分であり、一方で、マーカーの異なる一部の集団の増加は、他の患者における同じ又は異なる診断/予後診断を指し示すのに十分である。重み付け係数はまた、パネル中の一つ又はそれ以上のマーカーに適用され、例えば、マーカーが、特定の診断/予後診断の識別において、特に高い有用性を有するときに、それは、一定のレベルで、それ単独が、正の結果の信号を送るのに十分であるように、重み付けられる。同様に、重み付け係数は、特定のマーカーの一定のレベルが正の結果の信号を送るのに十分でないが、しかし他のマーカーもまた分析に寄与するときに、結果の信号のみを送ることを提供することができる。
【0063】
ある実施形態では、PRX4を含むマーカーパネルは、少なくとも約70%の感度、より好ましくは少なくとも約80%の感度、さらにより好ましくは少なくとも約85%の感度、なおさらに好ましくは少なくとも約90%の感度、もっとも好ましくは少なくとも約95%の感度を示すことが選択され、少なくとも約70%の特異度、より好ましくは少なくとも約80%の特異度、さらにより好ましくは少なくとも約85%の特異度、なおさらに好ましくは少なくとも約90%の特異度、もっとも好ましくは少なくとも約95%の特異度と組み合わされる。特に好適な実施形態では、感度及び特異度の双方が、少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約85%、なおさらに好ましくは少なくとも約90%、及びもっとも好ましくは少なくとも約95%である。この関連において、用語「約」は、所定の測定値の±5%を意味する。
【0064】
他の実施形態では、陽性尤度比、陰性尤度比、オッズ比、又はハザード比は、リスクを予測する、又は疾患を診断する試験の能力の測定として用いられる。陽性尤度比の場合、1の値は、陽性の結果が、「疾患に罹患した」及び「対照」群の双方の対象の間で等しく起こりうることを意味し;1を超える値は、陽性の結果が疾患に罹患した群においてより起こりうることを意味し;1を下回る値は、陽性の結果が対照の群においてより起こりうることを意味する。陰性尤度比の場合、1の値は、陰性の結果が、「疾患に罹患した」及び「対照」群の双方の対象の間で等しく起こりうることを意味し;1を超える値は、陰性の結果が疾患に罹患した群においてより起こりうることを意味し;1を下回る値は、陰性の結果が対照の群においてより起こりうることを意味する。ある好適な実施形態では、PRX4を含むマーカーパネルは、少なくとも約1.5又はそれ以上又は約0.67又はそれ以下、より好ましくは少なくとも約2又はそれ以上、又は約0.5又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約5又はそれ以上、又は約0.2又はそれ以下、なおさらに好ましくは少なくとも約10又はそれ以上、又は約0.1又はそれ以下、及びもっとも好ましくは少なくとも約20又はそれ以上、又は約0.05又はそれ以下、の陽性尤度比又は陰性尤度比を示すことが好ましくは選択される。この関連において、用語「約」は、所定の測定値の±5%を意味する。
【0065】
オッズ比の場合、1の値は、陽性の結果は、「疾患に罹患した」及び「対照」群の双方の対象の間で等しく起こりうることを意味し;1を超える値は、陽性の結果が疾患に罹患した群においてより起こりうることを意味し;1を下回る値は、陽性の結果が対照の群においてより起こりうることを意味する。ある好適な実施形態では、マーカー及びマーカーパネルは、少なくとも約2又はそれ以上又は約0.5又はそれ以下、より好ましくは少なくとも約3又はそれ以上、又は約0.33又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約4又はそれ以上、又は約0.25又はそれ以下、なおさらに好ましくは少なくとも約5又はそれ以上、又は約0.2又はそれ以下、及びもっとも好ましくは少なくとも約10又はそれ以上、又は約0.1又はそれ以下、のオッズ比を示すことが好ましくは選択される。この関連において、用語「約」は、所定の測定値の±5%を意味する。
【0066】
ハザード比の場合、1の値は、終点(例えば死亡)の相対リスクが、「疾患に罹患した」及び「対照」群の双方で等しいことを意味し;1を超える値は、そのリスクが疾患に罹患した群においてより大きいことを意味し;1を下回る値は、そのリスクが対照の群においてより大きいことを意味する。ある好適な実施形態では、マーカーパネルは、少なくとも約1.1又はそれ以上又は約0.91又はそれ以下、より好ましくは少なくとも約1.25又はそれ以上、又は約0.8又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約1.5又はそれ以上、又は約0.67又はそれ以下、なおさらに好ましくは少なくとも約2又はそれ以上、又は約0.5又はそれ以下、及びもっとも好ましくは少なくとも約2.5又はそれ以上、又は約0.4又はそれ以下、のハザード比を示すことが好ましくは選択される。この関連において、用語「約」は、所定の測定値の±5%を意味する。
【0067】
当業者は、診断の又は予後診断の指標が、診断と、又は将来の予後診断リスクと、関連することは、統計的分析であることを理解するだろう。例えば、Xを超えるマーカーレベルは、統計的有意性のレベルにより測定されるように、患者が、Xを下回る、又は同じレベルを有する患者より、有害転帰に罹患することがより起こりやすいことを示唆する。さらに、ベースラインレベルからのマーカー濃度の変化は、患者の予後診断を反映し、マーカーレベルの変化の程度は、転帰の重症度に関する。統計的有意性は、しばしば二つ又はそれ以上の集団を比較することにより決定され、信頼区間及び/又はp値は決定する。例えば、Dowdy and Wear den, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York, 1983を参照。本発明の好適な信頼区間は、90%、95%、97.5%、98%、99%、99.5%、99.9%、及び99.99%であり、一方で、好適なp値は、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001、及び0.0001である。
【0068】
さらに他の実施形態では、PRX4及び任意のさらなるマーカーの多重測定は行われ、マーカーにおける一時的な変化は、疾患又は臨床症状の診断又は予後診断、又は疾患又は臨床症状に罹患する対象における、リスク層別化、又は治療モニタリング、又は治療ガイダンスを決定するために用いられる。例えば、対象サンプルにおけるPRX4レベルは、初回に、及び2度目の対象サンプルからは再び2度目に測定される。そのような実施形態では、初回から二度目までのレベルの増加は、特定の診断、又は特定の予後診断の指標となる。同様に、初回から二度目までのレベルの減少は、特定の診断、又は特定の予後診断の指標となる。
【0069】
本明細書で用いられる用語「サンプル」は、目的の対象、例えば患者などの診断、予後診断、又は評価の目的で得られた体液のサンプルを意味する。好適な試験サンプルは、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、及び胸水を含む。加えて、当業者は、いくつかの試験サンプルは、分画又は精製手順、例えば、全血の血清又は血漿要素への分離など、に続いて、より容易に分析されることを理解するだろう。
【0070】
本明細書で用いられる用語「相関する」は、診断の及び予後診断オマーカーの使用に関して、患者におけるマーカー(複数)の存在又は量を、特定の症状に罹患していることを知っている、又はそのリスクがあることを知っている人;又は特定の症状に罹患していないことを知っている人、におけるその存在又は量と比較することを意味する。上記で議論したように、患者サンプル中のマーカーレベルは、特定の診断又は予後診断と関連することが知れているレベルと比較される。サンプルのマーカーレベルは、診断と相関しているといわれており;すなわち、当業者は、患者が特定の種類の診断に罹患しているかどうかの決定のためにマーカーレベルを使用し、それに応じて応答することができる。あるいは、サンプルのマーカーレベルは、良好な転帰(疾患の不在など)に関連すると知られているマーカーレベルと比較される。好ましい実施形態では、マーカーレベルのパネルは、幅広い可能性又は特定の転帰に相関する。
【0071】
異なる群(カテゴリー)への対象の層別化のための好適な閾値レベルは、PRX4レベル、さらなるマーカー、及び/又はパラメータ、薬剤、及び疾患のそれぞれの特定の組み合わせで決定されるべきである。これは、例えば、患者の参照集団を、PRX4のそれらのレベルによって、特定の変位値、例えば、四分位、五分位、又は好適な百分率によってさえに分類することによって行われる。特定の百分率を超える及び下回わる変位値又は群のそれぞれのために、ハザード比は、有害転帰、すなわち、「好ましくない結果」、例えば、ある薬剤を服用したそれらの患者と服用していないそれらとの間の生存率に関して、のリスクと比較して計算される。そのような状況では、1を超えるハザード比(HR)は、処置を受けていない患者より、受けている患者の有害転帰のより高いリスクを意味する。1未満のHRは、患者の群における一定の処置の有益な効果を意味する。1前後(例えば、±0.1)のHRは、患者の特定の群において、上昇したリスクもないが、またの薬剤からの恩恵もないことを意味する。お互いに患者の一定の変位値の間のHRの、患者の全体の集団のHRとの比較により、上昇したリスクを有する患者、及び薬剤から恩恵をうける彼らのこれらの変位値を識別することができ、それによって、本発明により対象を分類することが可能である。
【0072】
本明細書で、PRX4のレベルの決定(又は測定、又は検出)は、下記で説明されるような検出方法及び/又は診断的アッセイを用いて行われる。
【0073】
本明細書で述べたとおり、「アッセイ」、又は「診断的アッセイ」は、診断の分野で適用される任意の種類でよい。そのようなアッセイは、検出されるための分析物の、特定の親和性を有する一つ又はそれ以上の捕捉プローブとの結合に基づく。捕捉分子(本明細書で「結合剤」ともよばれる)と標的分子、又は対象の分子との相互作用に関して、親和定数は、好ましくは108M-1超である。本発明の関連において、「捕捉分子」は、標的分子、または対象の分子、すなわち、サンプルからの分析物(すなわち、本発明の関連においてPRX4及び任意の他のマーカー)と結合するために用いられる分子である。捕捉分子は、従って、標的分子又は対象の分子と特異的に結合するために、空間的に、及び表面特徴、例えば表面電荷、疎水性、親水性、ルイスドナーの存在又は非存在、及び/又は受容体などの点の双方から、適切に形づくられなければならない。これによって、結合は、例えば、イオンの、ファンデルワールス、パイ-パイ、シグマ-パイ、疎水性の、又は水素結合相互作用、又は捕捉分子と標的分子又は対象の分子の間の前述の相互作用の二つ又はそれ以上の組み合わせ、に仲介される。本発明の関連において、捕捉分子は例えば、核酸分子、糖質分子、RNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド、又は糖タンパク質からなる群から選択される。好ましくは、捕捉分子が抗体であり、標的または対象の分子との十分な親和性を有するその断片を含み、組み換え抗体、又は組み換え抗体断片、及び化学的及び/又は生物学的に修飾された前記抗体の派生物、又はその少なくとも12アミノ酸長、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基長を有する可変鎖由来の断片、をさらに含む。
【0074】
好ましい検出方法は、様々な形態、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光-及び蛍光-イムノアッセイ、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、ルミネックスに基づくビーズアレイ、タンパク質マイクロアレイ、及び迅速試験形態、例えばイムノクロマトグラフィックストリップ試験など、のイムノアッセイを含む。
【0075】
アッセイは、均一系又は不均一系アッセイ、競合的及び非競合的サンドイッチアッセイでよい。特に好ましい実施形態では、アッセイは、サンドイッチアッセイの形態であり、それは非競合的イムノアッセイであって、ここで検出される及び/又は定量される分子は第一の抗体及び第二の抗体と結合する。第一の抗体は、固相例えば、ビーズ、ウェル又は他の容器の表面、チップ、又はストリップなど、と結合され、第二の抗体は、例えば、色素で、放射性同位体で、又は反応性又は触媒活性部分で標識された抗体である。分析物と結合した標識抗体の量は、その後、適切な方法によって測定される。「サンドイッチアッセイ」に関連する一般的な組成物及び手順は、確立されており、当業者によく知られている(The Immunoassay Handbook, Ed. David Wild, Elsevier LTD, Oxford; 3rd ed. (May 2005), ISBN-13: 978-0080445267; Hultschig C et al., Curr Opin Chem Biol. 2006 Feb;10(l):4-10. PMlD: 16376134), 参考として本明細書に組み込まれる)。
【0076】
特に好ましい実施形態では、アッセイは、二つの捕捉分子、好ましくは液体反応混合物中に分散物として双方が存在する抗体であって、双方の捕捉分子の分析物との結合のときに、サンプルを含む溶液中で形成されたサンドイッチ複合体の検出を許容する測定可能な信号が発生するように、第一の標識要素が第一の捕捉分子と結合され、前記第一標識要素が、蛍光-又は化学発光-消光又は増幅に基づく標識系の一部であり、前記標識系の第二の標識要素が第二の捕捉分子と結合される。
【0077】
さらにより好ましくは、前記標識系は、蛍光色素、又は化学発光色素、特にシアン型の色素と組み合わせて、希土類クリプタート又は希土類キレートを含む。
【0078】
本発明の関連において、蛍光色素に基づくアッセイは、例えば、FAM (5-又は6- カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD- 700/800、シアン色素類、例えば、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7、キサンテン、6-カルボキシ- 2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'- ジメトキシフルオレセイン(dimethodyfluorescein) (JOE)、N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6- カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、5-カルボキシローダミン-6G (R6G5)、6-カルボキシローダミン-6G (RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY色素類、例えば、BODIPY TMR、オレゴングリーン、クマリン類、例えばウンベリフェロン、ベンズイミド類、例えばヘキストHoechst 33258;フェナントリジン類、例えばテキサスレッド、ヤキマイエロー、アレクサフルオロ、PET、エチジウムブロマイド、アクリジニウム色素類、カルバゾール色素類、フェノキサジン色素類、ポルフィリン色素類、ポリメチン色素類等、からなる群から選択される色素の使用を含む。
【0079】
本発明の関連において、化学発光に基づくアッセイは色素の使用を含み、参考のため本明細書中に引用される、Kirk- Othmer, Encyclopedia of chemical technology, 4th ed., executive editor, J. I. Kroschwitz; editor, M. Howe-Grant, John Wiley & Sons, 1993, vol.15, p. 518-562で、化学発光材料について記載された物理的原理に基づき、551-562頁の引用を含む。好適な化学発光色素は、アクリジニウムエステルである。
【0080】
本発明はまた、配列番号1のPRX4の位置1〜73に含まれるエピトープと結合し、PRX4関連タンパク質と20%未満の交差反応性である抗体に関する。好ましくは、抗体は、PRX4関連タンパク質と2%未満の交差反応性である。
【0081】
特定の実施形態では、抗体は、配列番号1のPRX4の位置39〜65に含まれるエピトープと結合する。好ましい実施形態では、抗体は、配列番号1のPRX4の位置51〜65に含まれるエピトープと結合する。なおさらに好ましい実施形態では、抗体は、配列番号1のPRX4の位置39〜65に含まれるエピトープと結合する。
【0082】
好ましい実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。あるいは、抗体はポリクローナル抗体である。
【0083】
本発明はまた、少なくとも一つの本発明による抗体を含む診断キットに関する。
【0084】
さらに、本発明は、PRX4及び/又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片の測定に用いられる、キャリブレーター及び/又は対照サンプルを提供するための供給源として、PRX4及び/又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片を含む、臓器-又は組織-抽出物、及び/又は濃縮された、又は精製されたその画分の使用に関する。本明細書の上記のように、PRX4又はその断片は、単量体であり、又はヘテロ多量体、又はホモ多量体で存在する。
【0085】
臓器抽出物は、PRX4を含む任意の臓器の抽出物である。しかしながら。当該臓器抽出物は、肝臓抽出物であることが好ましい。当該臓器は、好ましくは、ヒトの臓器ではなく、例えば、ブタ又はウシの臓器である。
【0086】
本発明はまた、例えば、感染症、心臓疾患、敗血症(重症敗血症、敗血性ショックを含む)、膵炎、消化管の疾患、癌、糖尿病、関節リウマチ、腎疾患、又は神経変性疾患などの酸化的ストレスに関連する疾患、又は臨床症状の、診断、鑑別診断、リスク層別化、予後診断、予防手段及び/又は治療手段の適用のための層別化、及び/又は患者の管理、治療モニタリング、及び/又は治療ガイダンスのための本発明による方法、抗体、キットの使用に関する。
【0087】
【表5】

【実施例】
【0088】
実施例
実施例1:臨床サンプルの分析
材料と方法
ペプチド
ヒトペルオキシレドキシン4の既知のアミノ酸配列(配列番号1を参照)から、二つの領域が選択され、それは標準的な手順により化学的に合成された(JPT GmbH, Berlin, Germany)。これらのペプチドは:PEC 13 (配列番号2:配列:ETEERPRTREEEC、すなわち、PRX4及び配列番号1の残基39〜51)、PCS15 (配列番号3:配列:CHFYAGGQVYPGEAS、すなわち、PRX4及び配列番号の残基151〜65)、及びPEE27 (配列番号4:配列:ETEERPRTREEEGGGETEERPRTREEE、すなわち、配列番号1の残基39〜50に続いてGGG、続いて配列番号1の残基39〜50)。
【0089】
モノクローナル抗体
PEC13、及びPCS15に対するモノクローナル抗体は、標準的な手順により産生された(Harlow E, Lane D. Antibodies - A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor: Cold Spring Harbor Laboratory, 1988; Lane RD. A short-duration polyethylene glycol fusion technique for increasing production of monoclonal antibody-secreting hybridomas. J Immunol Methods 1985;81 :223-8):手短に言えば、ペプチドは、スルフォ-MBS(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)を用いることによりBSAと結合させた。これらの結合体で、Balb/cマウスは、免疫化、及び追加免疫され、脾臓細胞は、ハイブリドーマ細胞株をつくるために、SP2/0骨髄腫細胞と融合された。細胞株は、固体ポリスチレンにコートされた免疫原性のペプチドと結合する抗体を分泌するそれらの能力で選別された。この手法で、モノクローナル抗体340/4F2及び340/3F1 (PECl 3に対する)、及び357/3B6 (PCS 15に対する)を分泌する細胞株はつくられた。さらなる実験のために、モノクローナル抗体は、Gタンパク質アフィニティクロマトグラフィーにより培養上清から精製された。
【0090】
ポリクローナル抗体
PEC13に対するポリクローナル抗体は、標準的な手順によりつくられた(EP 1488209 A1、EP 1738178 A1参照)。手短に言えば、ペプチドPEC13は、MBS(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)を用いて担体タンパク質KLH(キーホールリンペットヘモシニアン) (PIERCE, Rockford, IL, USA)と結合させた。この複合体を用いて、ヒツジは下記のスキームに従って免疫化された:ヒツジは、最初に100μg複合体(質量は複合体のペプチド部分を意味する)で免疫化され、その後4週間の間隔で毎回50μgの複合体で追加免疫された。最初の免疫化後から4ヵ月後、ヒツジから300mlの抗血清が得られた。抗原特異的抗体は、下記のように抗血清から精製された:5 mgのペプチドPEC13は、5 mlのSulfoLink-ゲル (PIERCE, Rockford, IL, USA)と結合させた。50 mlの抗血清は、周囲温度で4時間、バッチ式で、ゲルとインキュベートされた。原料はカラム(空のNAP25カラム、Pharmacia)に移された。流出物は廃棄され、ゲルは100 mlの洗浄バッファ(100 mM リン酸カリウム、0.1% Tween 20、pH 6.8)で洗浄され、特異的に結合した抗体は、pH 2.7の50 mMクエン酸で溶出された。溶出物は、50 mMのリン酸ナトリウム、100 mM NaCl、pH 8.0で透析された。抗体の収量は、36.6 mgであった。
【0091】
抗体の標識
標識は、標準的な手順により行われた(EP 1488209 A1, EP 1738178 A1参照):精製された抗体の濃度は、1 g/Lに調整され、抗体は、化学発光標識MACN- アクリジニウム-NHS-エステル(1 g/L;InVent GmbH, Hennigsdorf, Germany)と、モル比1:5で周囲温度で30分のインキュベーションにより標識された。反応は、周囲温度で、10分、1 mol/LのTrisの1/10体積の添加により止められた。標識された抗体は、NAP-5カラム(GE Healthcare, Freiburg, Germany)とBio-Sil(登録商標) SEC-400-5 HPLC カラム (BIO-RAD)でのサイズ排除クロマトグラフィーにより、標識されていないものから分離された。
【0092】
抗体のコーティング
コーティングは、標準的な手順により行われた(EP 1488209 A1、EP 1738178 A1参照):ポリスチレンチューブ(Greiner)は、22℃で一晩、精製された抗体(チューブあたり、300μLの10 mmol/L Tris、10 mmol/L NaCl、pH 7.8中の2μgの抗体)でコートされた。チューブは、その後、Karion FP (Merck)、0.5% BSA プロテアーゼフリー (Sigma)を含む10 mmol/Lリン酸ナトリウム(pH 6.5)でブロックされ、凍結乾燥された。
【0093】
標準マトリックスの作製
健康なヒト対象からの血清のプールから、PRX4免疫活性は下記のようなアフィニティクロマトグラフィーにより枯渇させた:5 mg 抗体340/3F1は、5 ml CarboLink(登録商標)結合ゲル(PIERCE, Rockford, IL, USA)と結合され、血清プール(全容量200 ml;10人の個人のそれぞれの20 mlのプール)は、連続的に4回カラムに通された。
【0094】
標準
イムノアッセイのための標準は、アッセイの種類に応じて(詳細は後で記載される)、標準マトリックス中で、ペプチドPEE27、又はブタ肝臓からの全可溶性タンパク質の抽出物(SCIPAC, UK)の段階希釈を行うことにより調製された。標準は、使用まで、−30℃で保管された。PEE27標準のために、標準濃度は、ペプチド材料の質量に従って割り当てられた。肝臓抽出物標準のために、任意のPRX4濃度は、割り当てられた[任意 U/l]。どのくらいのUが免疫反応性PRX4のその質量に対応するかは、標準濃度を確定することによって概略で見積もられ、それは、抗-PEC13モノクローナル抗体の規定された量(2μg/チューブ)でコートされたチューブの結合能力を飽和するために要求される、飽和は、50μlの標準が使用されたときに、おおよそ達成され、それは300任意U/lのPRX4濃度を有した。
【0095】
イムノアッセイ
いくつかのサンドイッチイムノアッセイは、上述の構成要素を用いて組み立てられた。
A.1)モノクローナル抗体/2段階型を用いた均一系イムノアッセイ
抗-PEC13抗体340/4F2は、固相抗体として用いられた。抗-PEC13抗体340/3F1は、標識抗体として用いられた。最初のインキュベーションステップのためのアッセイバッファは、300 mMリン酸カリウム、pH 7.0、100 mM NaCl、10 mM EDTA、0.09%アジ化ナトリウム、0.5% BSA、0.1%非特異的ウシIgG、0.1%非特異的ヒツジIgG、0.1%非特異的マウスIgGであった。DTTは、示された場合、異なることが示されない限りは、3 mMの濃度で、アッセイバッファに加えられた。二番目のインキュベーションステップのためのアッセイバッファは、300 mMリン酸カリウム、pH 7.0、250 mM NaCl、10 mM EDTA、0.09%アジ化ナトリウム、0.5% BSA、0.1%非特異的ウシIgG、0.1%非特異的ヒツジIgG、0.1%非特異的マウスIgGであり、100μlあたりMACN標識抗体の106相対光単位(RLU)を含む。最初のインキュベーションステップで、100μlの標準又はサンプル、及び100μlのアッセイバッファは、コートされたチューブでピペッティングされた。チューブは、撹拌下、22℃で20時間インキュベートされた。その後、チューブは、1 mLのB.R.A.H.M.S 洗浄溶液(B.R.A.H.M.S AG, Hennigsdorf, Germany)で4回洗浄された。その後、100μlのMACN-標識抗体を含むバッファが加えられ、チューブは撹拌下、22℃で2時間インキュベートされた。その後、チューブは1 mLのB.R.A.H.M.S 洗浄溶液(B.R.A.H.M.S AG, Hennigsdorf, Germany) で4回洗浄され、LB952Tルミノメータ(Berthold)で、チューブあたり1秒、結合化学発光が測定された。サンプルの濃度は、ソフトウェアMultiCalc (Spline Fit)を用いて計算された。
【0096】
A.2)モノクローナル抗体/1段階型を用いた均一系イムノアッセイ
アッセイA.1に関して同じアッセイ構成要素が用いられた。100μl標準又はサンプル、及び100μlのMACN-標識抗体を含むバッファは、コートされたチューブでピペッティングされ、チューブは、撹拌下、22℃で2時間インキュベートされた。その後、チューブは、1 mLのB.R.A.H.M.S 洗浄溶液(B.R.A.H.M.S AG, Hennigsdorf, Germany)で4回洗浄され、結合化学発光は、LB952Tルミノメータ(Berthold)で、チューブあたり1秒、測定された。サンプルの濃度は、ソフトウェアMultiCalc (Spline Fit)を用いて計算された。
【0097】
B)モノクローナル抗体/2段階型を用いた不均一系イムノアッセイ
抗- PCS15抗体357/3B6が、固相抗体として用いられた。抗-PEC13抗体340/3F2は、標識抗体として用いられた。ブタ肝臓からの可溶性タンパク質の抽出物は、標準物質に用いられた(上記参照)。全ての他の条件及び手順は、アッセイA.1で記述した通りである。
【0098】
C)ポリクローナル抗体/2段階型を用いた均一系イムノアッセイ
精製されたヒツジ抗- PEC13抗体は、固相抗体として、及び標識抗体として双方に用いられた。全ての他の条件及び手順は、アッセイA.1で記述した通りである。
【0099】
サイズ排除クロマトグラフィー
内因性PRX4免疫反応性を含むヒト血清プール、及び可溶性ブタ肝臓タンパク質の抽出物は、Bio-Sil(登録商標) SEC-400-5 HPLCカラム(BIO-RAD)を用いて分画された。サンプル容量は、100μlであった。送液バッファは、50 mMリン酸カリウム、pH 7.4、150 mM NaCl、0.09% アジ化ナトリウムであった。流速は、0.8 mL/分であった。0.4 mLの画分は、回収され、PRX4免疫反応性は、アッセイA.1を用いて測定された。
【0100】
臨床サンプルの測定
PRX4は、様々な疾患に罹患した患者からの血清サンプルで測定された。これらは、慢性及び急性心不全、急性冠不全症候群、アテローム性動脈硬化、高血圧、心不全、一過性脳虚血発作を含む心臓血管疾患(心臓疾患として要約される)、感染症、敗血症、重症敗血症、敗血性ショック(敗血症として要約される)、膵炎、潰瘍性大腸炎、クローン病を含む消化管の他の疾患、結腸、乳、及び膵臓癌を含む癌、糖尿病、関節リウマチ、慢性及び急性腎疾患(腎疾患として要約される)、アルツハイマー病、軽度の認知症、パーキンソン病(神経変性疾患として要約される)である。健康な対象からのサンプルもまた測定された。
【0101】
結果
抗体の設計
PRX4は、いくつかの関連するタンパク質のファミリーに属する。組織の外側でのこれらの存在について何も知られていないが、我々は、この関係性を産生された抗-PRX4抗体のエピトープ特異性の設計の考慮に入れ、我々は、免疫化のための、PRX4のN末端部分、すなわちアミノ酸の位置73の上流に位置する領域に対応する、ペプチドを合成した。そのような領域は、PRXタンパク質ファミリーの他のメンバーに存在せず、PRX4との配列相同性を欠いている(図1)。
【0102】
用量反応曲線
PRX4免疫反応性の測定のために設計された均一系サンドイッチアッセイ(A.1)を用いて、用量反応曲線は、ブタ肝臓抽出物の形態の天然分析物、又は用いられた抗体の二つのエピトープを含む合成ペプチドを用いてつくられた(図2)。
同様の結果は、アッセイ様式C、すなわち、モノクローナル抗体の代わりにポリクローナル抗体が用いられる、を用いて得られた(データは示されない)。アッセイで、PRX4免疫反応性は、患者サンプル中で検出された(下記に示す)。
【0103】
測定された分析物の性質
多量体分析物の測定のための均一系サンドイッチイムノアッセイ、すなわち、同じエピトープ特異性を有する二つの抗体を用いるサンドイッチアッセイは、競合イムノアッセイと同様に、異なるエピトープ特異性を有する二つの抗体、及び典型的に著しく高い分析物特異性を与える状況を用いる不均一系サンドイッチイムノアッセイと比べて、意図している標的分子より他の分子と非特異的な交差反応をしがちである。複合サンプル、例えば、PRX4免疫反応性を加えた血清など、において、均一系PRX4アッセイA.1はまた、他の分子を検出するかどうかを評価するために、PRX4免疫反応性を含む患者サンプルは、均一系アッセイA.1及び不均一系アッセイBで測定された。二つのアッセイの測定された結果は、高い相関性を有し(r=0.9;図3)、均一系アッセイA.1はPRX4免疫反応性を著しく特異的に検出することが示された。
血清原液(敗血症患者からの血清のプールが用いられた)、及び肝臓抽出物中のPRX4免疫反応性の見かけの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーで分析され、続いて、アッセイA.1を用いて、得られた画分の測定がされた。この分析では、血清原液及び肝臓抽出物の双方で検出されたPRX4免疫反応性は、158から660 kDaの間の見かけの分子量を有し、より具体的に言えば、約330 kDa(図4)である。この発見は、PRX4の一つの分子が、一つ又はそれ以上の同種又は異種(例えば、PRX1など)のタンパク質と関連して、PRX4がホモ多量体として、より具体的には、ホモ十量体、又はホモ五量体、及び/又はヘテロ多量体として存在する可能性と適合する。
【0104】
還元剤の効果
例えばDTTなどの還元剤が、アッセイA.1の最初のインキュベーションステップに用いられるアッセイバッファに添加されたときに、ブタ肝臓抽出物及びヒト血清サンプルの双方において、驚くべきことに、検出されたPRX4免疫反応性は、著しく増加した(図5)。その効果は、2 mM超のDTT濃度で顕著であり、基本的には、2〜5 mMの間で水平状態に達した。好適なDTT濃度は、それ故、3 mMであり、それはさらなる分析に用いられた。ヒト血清サンプル中のPRX4免疫反応性は、サンプルがDTTの存在又は不在中で測定されたときに、得られた理想的な相関関係によって実証されるように、ブタ肝臓抽出物からのPRX4のように振舞った(図5、スピアマンr=0.98)。アッセイA.1の機能的なアッセイ感度(+ 3 mM DTT)は、分析法間のCVが20%である濃度と定義され、0.7任意U/Iと測定された。観察された効果に関与する推定できる機構は、より小さいPRX4多量体、及びこれまで近づくことのできなかったエピトープの付随する露出を導く、PRX4多量体内のジスルフィド結合の部分的な還元である。
DTTのアッセイバッファへの添加によって得られたさらなる効果は、明らかなPRX4免疫反応性のエクスビボ安定性の向上である:DTTが、A.1の最初のインキュベーションステップに用いられるアッセイバッファから除かれたときに、ヒト血清又は血漿中において検出可能なPRX4免疫反応性は、サンプルのエクスビボ保管時間に応じて増加し(図6)、その増加は、4℃よりも22℃でより顕著であった。驚くべきことに、アッセイA.1の最初のインキュベーションステップに用いられるアッセイバッファへの3 mM DTTの添加は、PRX4免疫反応性の見かけの増加を防いだ。これは、サンプルの保管のときに、内因性のPRX4多量体は、そうでなければ近づけない、又は近づきにくいエピトープの部分的な露出を導く構造変化(タンパク質分解酵素又は他のエフェクターによって潜在的に仲介される)を経ることが推測される。DTTの添加によって仲介されるPRX4多量体の構造変化は、その後、サンプル保管により誘導される増加よりも、PRX4免疫反応性のより強力な増加を導き、サンプルをDTTのような還元剤と接触させる限り、サンプルが保管されるか又はされないかどうかは、最終的に重要ではない。DTTのような還元剤の観察された有益な効果は、任意の段階でのサンプルを接触することにより得られ、すなわち、還元剤は、アッセイの前に直接サンプルに添加される、又はそれはサンプルとのアッセイインキュベーションに含まれる。
PRX免疫反応性を測定するための不均一系サンドイッチアッセイが使用されたときに(アッセイB)、均一系アッセイ(アッセイA)で得られたDTTのような還元剤の有益な効果に類似して、分析的感度、及びエクスビボ安定性に相当するDTTのような還元剤の同様の有益な効果はまた観察された。アッセイAのように、ヒト血清サンプル中の測定されたPRX4濃度は、DTTの添加によって、アッセイBにおいて、影響をうけない(アッセイの最初のインキュベーションステップに用いられるアッセイバッファ中の3 mM DTTの不在、又は存在でのアッセイBを用いて、サンプルが測定されたときに;DTTの存在又は不在の測定された値は、強く相関性付けられた(スピアマン r= 0.96))。双方ともにDTTの存在下で、不均一系アッセイBが均一系アッセイA.1と比較されたときに、その相関はまた強い(スピアマンr = 0.85)。
【0105】
臨床サンプルの測定
PRX4が血液細胞中で発現されることが示唆されているので、我々は、血漿サンプル中の測定された免疫反応性に対する溶血の効果を評価した。PRX4免疫反応性は、激しい溶血が起こったとき、すなわち、サンプルが目に見えるほどに赤いとき(400 g/dL及びそれ以上のヘモグロビン濃度)、にだけ検出されることが観察された。溶血のそのような程度のサンプルは、日常の実験室で任意の種類の分析から一般的には控えられる。それ故、PRX4測定の正確性に関する溶血の潜在的な負の効果は、実際には重要ではない。
PRX4は、様々な疾患に罹患した患者からの血清サンプルで測定される(図7)。これらは、慢性及び急性心不全、急性冠不全症候群、アテローム性動脈硬化、高血圧、心不全、一過性脳虚血発作を含む心臓血管疾患(心臓疾患として要約される)、感染症、敗血症、重症敗血症、敗血性ショック(敗血症として要約される)、膵炎、潰瘍性大腸炎、クローン病を含む消化管の他の疾患、結腸、乳、及び膵臓癌を含む癌、糖尿病、関節リウマチ、慢性及び急性腎疾患(腎疾患として要約される)、アルツハイマー病、軽度の認知症、パーキンソン病(神経変性疾患として要約される)である。健康な対象からのサンプルはまた、測定される。健康な対象からのPRX4のレベルは、アッセイの機能的感度より大部分は越えているが、しかし調査された患者の全ての他の群と比較して、一番低い。一番高いレベルは、敗血症、膵炎、及び消化管の他の疾患に罹患した患者で測定される。PRX4の上昇は、疾患の多くの種類で観察されるので、PRX4測定の診断的使用の可能性は、一見すると低い。しかしながら、これは、たいがい過小評価であり、なぜなら、これらの全ての患者は、同じ症状及び臨床的疾患を呈さないので、一般な任意の実験室測定の値は、症状及び疾患の関連して見られるにちがいない。酸化的ストレスの制御に関与する酵素としてのPRX4は、酸化的ストレスのレベル、及びそれ故、疾患プロセスの進行度及び/又は重症度の程度を反映すると仮定するべきである。
【0106】
敗血症、重症敗血症、敗血性ショックに罹患した患者では、PRX4は、PCTと相関する(スピアマン r=0.33) (図8参照)。そのようなPCTレベルが増加する患者集団は、疾患の増加する重症度に関連することが知られている[Muller B, et al. (2000) Crit Care Med. 28(4):977-83]。
【0107】
実施例2:血漿及び血清サンプルの比較
血清及びEDTA血漿は、いくつかの一定量で10人の個人から得られた。この一定量は、それぞれ固体血液複合物(血液細胞など)から、血清と血漿に分離するために、異なる遠心力(それぞれ、1500、2000、2500、及び3000 g)で15分遠心分離された。PRX4は、血清及び血漿中で測定され、それぞれの個人及びサンプルマトリックスの1500、2000、2500 gで得られたPRX4濃度は、3000 gで遠心分離後に得られたそれぞれの値(機能的アッセイ感度を超える値のみが含まれる)により割られた。結果を図9に示す。それらの計算された値の平均及び標準偏差は示される。図9に示された実験は、血清の値は適用された遠心力に依存しなかったのに対し、平均の血漿の値は、遠心力が減少するとともに増加することを示した。加えて、血漿の値の正確さは、血清の値に対するよりもより悪くなる。
【0108】
結論として、血漿は、血清とは対照的に、非可溶性PRX4免疫反応性を含み、極度な遠心分離条件は、これらを取り除くのに要求される。遠心分離が不十分に行われる場合、偽って上昇した、精度の低いPRX4値の検出が結果として得られる。
【0109】
【表6】

【0110】
血清及び血漿サンプルはまた、平行して150人の健康な個人から、血液モノヴェットを下記のように遠心分離することによって、得られた:血清:15分、2000 g;血漿 15分 3000 g。PRX4は、2重に測定された。血漿について、より多くのサンプル(n=139)は、血清についてより(n=114)、機能的アッセイ感度(FAS)を上回る値が与えられた。FASを超える全ての値の繰り返し測定からの変動係数(CV)の平均は、計算された、表1参照。血漿サンプルについて、CVは、血清サンプル(4.0%)についてより、著しく高かった(5.8%)。
【0111】
結論として、強い遠心分離力(例えば、3000 g)が得られた血漿に適用されたときでさえ、PRX4値の正確さは、対応する血清サンプルについてより、悪くなる。加えて、血清サンプルより多くの血漿サンプルが、FASを上回るPRX4値が与えられるという発見は、強い遠心分離条件下でさえも、より偽って上昇したPRX値が、潜在的に、血清中よりも血漿中で得られることを、指し示めした。
【0112】
実施例3
PEX4は、入院後、連日して敗血症を罹患している患者で測定された。図10は、敗血症に罹患した16人の患者のPRX4値を示す(中央値 9.9任意U/I;範囲0.62〜50.7任意U/I)。
死亡した患者及び生存している患者からの全ての値のPRX4平均値の間には有意な差(P < 0.0001)があった(それぞれ16.2対7.7任意U/I)。
死亡した患者は、生存者より高いPRX4値を示した。
【0113】
実施例4
膵炎に罹患した患者のサンプルは測定された。膵炎に罹患した368人の患者のPRX4濃度は、0.378任意U/Iと80.6任意U/Iの間であり、中央値は4.53任意U/Iであった。
重症急性膵炎(SAP)に罹患した患者は、少なくとも兆候の出現から3日後、軽症急性膵炎(MAP)に罹患した患者よりも高いPRX4値を示した。
【0114】
実施例5
サンプル中のPRX4値は、脳卒中に罹患した患者で測定された。
脳卒中に罹患した24人の患者のサンプルは、測定された[中央値5.5任意U/I;範囲6.674〜22.9任意U/I]。脳卒中に罹患した患者は、対照群の対象よりも高いPRX4値を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疾患若しくは臨床症状の診断又は鑑別診断、又は予後診断のための、あるいは対象のリスク層別化、又は治療モニタリング又は治療ガイダンスのため、の方法であって、以下:
(i)対象の体液のサンプルを提供し、
(ii)前記サンプル中のペルオキシレドキシン4(PRX4)、又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片のレベルを測定し、
(iii)PRX4又はその断片のレベルを疾患又は臨床症状と関連づけること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記疾患又は臨床症状が、関節リウマチ、変形性関節症、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される疾患又は臨床症状ではないことを条件とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患又は臨床症状が、酸化的ストレスに関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患又は臨床症状が、感染症、心臓疾患、敗血症、膵炎、消化管の疾患、癌、糖尿病、関節リウマチ、腎疾患、及び神経変性疾患からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患又は臨床症状が、感染症、心臓疾患、敗血症、膵炎、消化管の疾患、癌、糖尿病、腎疾患、及び神経変性疾患からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプル中のPRX4又はその断片のレベルが、前記サンプルを少なくとも一つのPRX4結合剤と接触させることにより測定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記の少なくとも一つの結合剤が、抗体、好ましくはモノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
PRX4又はその断片が、サンドイッチイムノアッセイによって測定される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
PRX4又はその断片の測定の前に又は間に、前記サンプルを例えばジチオスレイトール(DTT)などの還元剤と接触させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記体液のサンプルが、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液サンプル、唾液サンプル、可溶化された組織サンプル、及び尿サンプル、又は前述のサンプルの任意の抽出物からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが血清サンプルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、年齢、性別、収縮期血圧、拡張期血圧、抗高血圧治療、体格指数、糖尿病の存在、及び現在の喫煙からなる群から選択される臨床的パラメータ、及び/又はさらなる実験室的パラメータが測定される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
配列番号1のPRX4の位置1〜73に含まれるエピトープと結合し、PRX4関連タンパク質と20%未満の交差反応性を有する抗体が用いられる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
配列番号1のPRX4の位置1〜73に含まれるエピトープと結合し、PRX4関連タンパク質と20%未満の交差反応性を有する抗体。
【請求項15】
配列番号1のPRX4の位置39〜65に含まれるエピトープと結合する、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の抗体を少なくとも一つ含むキット。
【請求項17】
PRX4及び/又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片の測定に用いられる、キャリブレーター及び/又は対照サンプルを提供するための供給源として、PRX4及び/又は少なくとも20個のアミノ酸残基長を有するその断片を含む、臓器-又は組織-抽出物、及び/又は濃縮された又は精製されたその画分の使用。
【請求項18】
酸化的ストレス、例えば感染症、心臓疾患、敗血症、膵炎、消化管の疾患、癌、糖尿病、間接リウマチ、腎疾患、又は神経変性疾患に関連した疾患、又は臨床症状の、診断、鑑別診断、リスク層別化、予後診断、予防手段及び/又は治療手段を適用するための層別化、及び/又は患者の管理、治療モニタリング、及び/又は治療ガイダンスのための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法、請求項14又は15に記載の抗体、あるいは請求項16に記載のキット、の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−530253(P2012−530253A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515467(P2012−515467)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058414
【国際公開番号】WO2010/146064
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(508093584)ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (27)
【Fターム(参考)】