ペルチェモジュール
【課題】 冷却効率の低下を大幅に抑制するとともに、信頼性を高める。
【解決手段】 複数個のP型熱電素子1、N型熱電素子2を交互に、かつ並列に配列しているとともに、これらのP型熱電素子1、N型熱電素子2の両端部をプリント基板3の配線パターン3aと半田3bにより接合し、プリント基板3の所定位置に形成したスルーホール3cに放熱部材4の基部を収容するとともに、放熱部材4の基部を配線パターン3aと半田3bにより接合している。
【解決手段】 複数個のP型熱電素子1、N型熱電素子2を交互に、かつ並列に配列しているとともに、これらのP型熱電素子1、N型熱電素子2の両端部をプリント基板3の配線パターン3aと半田3bにより接合し、プリント基板3の所定位置に形成したスルーホール3cに放熱部材4の基部を収容するとともに、放熱部材4の基部を配線パターン3aと半田3bにより接合している。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、P型熱電素子とN型熱電素子とを並列状に配列し、これらの熱電素子を直列に接続して熱電素子群の一方の側を放熱側、他方の側を吸熱側としてなるとともに、少なくとも放熱側に放熱部材を設けてなるペルチェモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、熱電素子を用いて電気エネルギーと熱エネルギーとの間の変換を行えることが知られており、この変換処理を効率よく行わせるため、および十分な剛性、熱電素子間の確実な絶縁確保を実現するために、熱電素子の両面(発熱面および吸熱面)をセラミックで挟んでなる構成のペルチェモジュールを採用し、しかも、熱電素子の発熱面および吸熱面における熱交換を効率よく行わせるために、各面にシリコングリスを塗布して、放熱部材(ヒートシンク、水冷ジャケットなど)を接合した構成を採用することが提案され、実用化されている。
【0003】具体的には、図13、図14に示すように、P型熱電素子とN型熱電素子とを交互に並列に配列し、これらの熱電素子を直列に接続すべく電極板を設け、熱電素子の両側の電極板に接するようにセラミック板を設け、図15から図18に示すように、セラミック板の外面にシリコングリスを塗布してヒートヒートシンク、水冷ジャケットを接合した構成を採用している。
【0004】この構成のペルチェモジュールを採用すれば、熱電素子に通電することにより達成される発熱および吸熱を、放熱部材により外部に対して有効に作用させることができ、例えば冷却装置として機能させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の構成のペルチェモジュールを採用した場合には、熱電素子の吸熱面および/または放熱面と放熱部材との間にセラミックおよびシリコングリスが介在しているので熱抵抗が大きくなり、熱的ロスが多くなるという不都合がある。さらに詳細に説明すると、ペルチェモジュールの駆動時に熱電素子の両端の温度差がΔTj(=Thj−Tcj)であっても、ペルチェモジュールの両面(セラミックの外面)の温度差はΔT(=Th−Tc<ΔTj)となる。ここで、ペルチェモジュールの冷却性能は温度差ΔTによって定まる。したがって、必要以上に温度差ΔTjを大きくしなければならず、温度差ΔTjを大きくしようとすれば、図19に示すように、熱電素子への通電電流を増加させなければならず、この結果、大幅な冷却効率(COP)の低下を招いてしまう。
【0006】また、熱電素子群はセラミックで両側から強固に固定されているのであるから、セラミックと熱電素子との線膨張率が異なることに起因して、温度変化が生じた場合に両者の接合部に機械的ストレス(熱応力)がかかり、信頼性が低下するという不都合もある。
【0007】
【発明の目的】この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、冷却効率の低下を大幅に抑制するとともに、信頼性を高めることができるペルチェモジュールを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1のペルチェモジュールは、P型熱電素子とN型熱電素子とを並列状に配列してなる熱電素子群の一方の側、および他方の側をそれぞれプリント基板の配線パターンと電気的に接合してあるとともに、該当するプリント基板の配線パターンと放熱部材とを熱的に接合してあるものである。
【0009】請求項2のペルチェモジュールは、前記プリント基板の基材には放熱部材の基部を受け入れるスルーホールが形成されてあり、スルーホールに基部が受け入れられた放熱部材とプリント基板の配線パターンとが半田によって接合されたものである。
【0010】請求項3のペルチェモジュールは、前記プリント基板の基材には配線パターンと対応させて複数個のサーマルビアが形成されてあり、放熱部材の基部と対応するサーマルビアとが半田によって接合されたものである。
【0011】請求項4のペルチェモジュールは、前記放熱部材が熱電素子群の電極を兼ねているものである。
【0012】請求項5のペルチェモジュールは、前記放熱部材の先端部と熱的に結合された水冷ジャケットをさらに有しているものである。
【0013】
【作用】請求項1のペルチェモジュールであれば、P型熱電素子とN型熱電素子とを並列状に配列してなる熱電素子群の一方の側、および他方の側をそれぞれプリント基板の配線パターンと電気的に接合してあるとともに、該当するプリント基板の配線パターンと放熱部材とを熱的に接合してあるので、熱抵抗を小さくして熱交換効率を高めることができ、熱応力を小さくして信頼性を高めることができ、しかも、加工性が高いので簡単に任意の形状のものを製造することができるとともに、コストを低減することができる。
【0014】請求項2のペルチェモジュールであれば、前記プリント基板の基材には放熱部材の基部を受け入れるスルーホールが形成されてあり、スルーホールに基部が受け入れられた放熱部材とプリント基板の配線パターンとが半田によって接合されているので、請求項1の作用に加え、スルーホールによって放熱部材の基部の固定を補助することができる。
【0015】請求項3のペルチェモジュールであれば、前記プリント基板の基材には配線パターンと対応させて複数個のサーマルビアが形成されてあり、放熱部材の基部と対応するサーマルビアとが半田によって接合されているので、請求項1の作用に加え、放熱部材の形状の自由度を高めることができる。
【0016】請求項4のペルチェモジュールであれば、前記放熱部材が熱電素子群の電極を兼ねているので、請求項3の作用に加え、電極を特別に設ける必要がなくなるので構成を簡素化できる。
【0017】請求項5のペルチェモジュールであれば、前記放熱部材の先端部と熱的に結合された水冷ジャケットをさらに有しているので、請求項1から請求項4の何れかの作用に加え、熱交換効率をさらに高めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、この発明のペルチェモジュールの実施の態様を詳細に説明する。
【0019】図1はこの発明のペルチェモジュールの一実施態様を示す斜視図、図2は要部縦断面図、図3は透視斜視図である。
【0020】このペルチェモジュールは、複数個のP型熱電素子1、N型熱電素子2を交互に、かつ並列に配列しているとともに、これらのP型熱電素子1、N型熱電素子2の両端部をプリント基板3の配線パターン3aと半田3bにより接合している。そして、プリント基板3の所定位置に形成したスルーホール3cに放熱部材(吸熱フィン、または放熱フィン)4の基部を収容するとともに、放熱部材4の基部を配線パターン3aと半田3bにより接合している。
【0021】ここで、プリント基板3の配線パターン3aは、図4に示すように、隣り合う1つずつのP型熱電素子1、N型熱電素子2の一方の端部を電気的に接続するように形成されている。そして、一方のプリント基板3の配線パターン3aと、他方のプリント基板3の配線パターン3aとが熱電素子1個分だけずれた位置に形成されている(図4中実線および破線参照)。また、スルーホール3cは配線パターン3aの幅よりも小さく設定している。さらに、プリント基板3としては、ガラス布基材エポキシ樹脂積層板(GE材)(FR−4、FR−5など)、紙フェノール(PP材)、紙エポキシ(PE材)などが例示できる。
【0022】上記の構成のペルチェモジュールの作用は次の通りである。
【0023】複数個のP型熱電素子1、N型熱電素子2は、両プリント基板3の配線パターン3aによって互いに直列接続されているとともに、電流の流れる方向が互いに逆に設定されているのであるから、熱電素子群の一方の側が放熱側、他方の側が吸熱側になる。
【0024】そして、この実施態様においては、セラミック板、シリコングリスが存在しなくなるので、熱抵抗が小さくなり、熱交換の効率がよくなる。したがって、従来のペルチェモジュールと同じ吸熱量を得るのに必要な温度差ΔTjが小さくなり、電流が少なくなり、冷却効率(COP)が大幅に改善される。熱抵抗等価回路を示す図14を参照してさらに詳細に説明する。
【0025】従来のペルチェモジュールで10Wの吸熱量を得たい時に吸熱側温度を30℃、放熱側温度を30℃とするには、熱電素子の低温側温度を20℃、高温側温度を50℃に設定しなければならないと仮定する{図13中(b)参照}。この時のCOPは、図20から分かるように0.4である。この実施態様において吸熱側温度を30℃、放熱側温度を30℃とするには、熱電素子の低温側温度を21℃、高温側温度を42℃に設定すればよく{図13中(a)参照}、この時のCOPは、図20から分かるように0.8である。したがって、熱抵抗によるロスが小さくなった上に、効率も大幅に改善されていることが分かる。
【0026】また、熱電素子の材質であるBiTeの線膨張率が18ppm/℃であるのに対して、GE材の線膨張率が10〜13ppm/℃、PP材の線膨張率が17〜35ppm/℃、PE材の線膨張率が12〜24ppm/℃であり、セラミック(線膨張率が5.4ppm/℃)よりも線膨張率の差が小さく、しかも、従来のペルチェモジュールほどは強固に熱電素子を固定しないのであるから、接合部の熱応力が減少し、信頼性を高めることができる。ここで、ppmは10-6を示している。
【0027】さらに、プリント基板3を用いているので、加工が簡単であり、しかも、放熱部材4も自動実装できるので、低コスト化が可能である。
【0028】さらにまた、全体として長方形状(図9参照)など、任意の形状を採用することが可能である。
【0029】図5はこの発明のペルチェモジュールの他の実施態様を示す斜視図、図6は要部縦断面図である。
【0030】このペルチェモジュールが前記のペルチェモジュールと異なる点は、各側の放熱部材4の先端部を一体的に保持する補強板5をさらに設けた点のみである。
【0031】したがって、この構成を採用した場合には、全ての放熱部材4を、その基部および先端部において安定に支持することができる。
【0032】図7はこの発明のペルチェモジュールの他の実施態様を示す斜視図、図8は要部縦断面図である。
【0033】このペルチェモジュールが図1、図2のペルチェモジュールと異なる点は、放熱側の放熱部材4の先端部を水冷ジャケット6に侵入させた点のみである。ただし、水冷ジャケット6は電気絶縁性材質で形成しておく。
【0034】この構成を採用した場合には、放熱部材4の先端部を液体と接触させることにより熱交換をより高効率化することができる。また、液体の流路に放熱部材4が流れを妨げるように配置されているので、乱流促進による熱伝達の促進をはかることができる。
【0035】なお、前記各ペルチェモジュールにおいて、P型熱電素子1、N型熱電素子2、および放熱部材4を角柱状に設定することが可能(図10参照)であるほか、P型熱電素子1、N型熱電素子2、および放熱部材4を円柱状に設定することが可能(図11参照)である。また、プリント基板3の各配線パターン3aに対応させて複数個のサーマルビア3d(小径のスルーホールに金属を埋め込んでなるもの)を形成し、これらのサーマルビア3dに対してコ字状の放熱部材4を半田により接合する構成を採用することが可能(図12参照)である。
【0036】
【発明の効果】請求項1の発明は、熱抵抗を小さくして熱交換効率を高めることができ、熱応力を小さくして信頼性を高めることができ、しかも、加工性が高いので簡単に任意の形状のものを製造することができるとともに、コストを低減することができるという特有の効果を奏する。
【0037】請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、スルーホールによって放熱部材の基部の固定を補助することができるという特有の効果を奏する。
【0038】請求項3の発明は、請求項1の効果に加え、放熱部材の形状の自由度を高めることができるという特有の効果を奏する。
【0039】請求項4の発明は、請求項3の効果に加え、電極を特別に設ける必要がなくなるので構成を簡素化できるという特有の効果を奏する。
【0040】請求項5の発明は、請求項1から請求項4の何れかの効果に加え、熱交換効率をさらに高めることができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のペルチェモジュールの一実施態様を示す斜視図である。
【図2】同上の要部縦断面図である。
【図3】同上の透視斜視図である。
【図4】配線パターンどうしの関係およびスルーホールの関係を示す概略図である。
【図5】この発明のペルチェモジュールの他の実施態様を示す斜視図である。
【図6】同上の要部縦断面図である。
【図7】この発明のペルチェモジュールのさらに他の実施態様を示す斜視図である。
【図8】同上の要部縦断面図である。
【図9】この発明のペルチェモジュールのさらに他の実施態様を示す斜視図である。
【図10】変形例の要部を示す斜視図である。
【図11】他の変形例の要部を示す斜視図である。
【図12】さらに他の変形例の要部を示す斜視図である。
【図13】熱抵抗等価回路を示す図である。
【図14】従来のペルチェモジュールの要部の構成を示す斜視図である。
【図15】同上の側面図である。
【図16】従来のペルチェモジュールの構成を示す斜視図である。
【図17】同上の側面図である。
【図18】従来のペルチェモジュールの構成を示す斜視図である。
【図19】同上の側面図である。
【図20】ペルチェ特性を示す図である。
【符号の説明】
1 P型熱電素子 2 N型熱電素子
3 プリント基板 3a 配線パターン
3b 半田 3c スルーホール
3d サーマルビア 4 放熱部材
6 水冷ジャケット
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、P型熱電素子とN型熱電素子とを並列状に配列し、これらの熱電素子を直列に接続して熱電素子群の一方の側を放熱側、他方の側を吸熱側としてなるとともに、少なくとも放熱側に放熱部材を設けてなるペルチェモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、熱電素子を用いて電気エネルギーと熱エネルギーとの間の変換を行えることが知られており、この変換処理を効率よく行わせるため、および十分な剛性、熱電素子間の確実な絶縁確保を実現するために、熱電素子の両面(発熱面および吸熱面)をセラミックで挟んでなる構成のペルチェモジュールを採用し、しかも、熱電素子の発熱面および吸熱面における熱交換を効率よく行わせるために、各面にシリコングリスを塗布して、放熱部材(ヒートシンク、水冷ジャケットなど)を接合した構成を採用することが提案され、実用化されている。
【0003】具体的には、図13、図14に示すように、P型熱電素子とN型熱電素子とを交互に並列に配列し、これらの熱電素子を直列に接続すべく電極板を設け、熱電素子の両側の電極板に接するようにセラミック板を設け、図15から図18に示すように、セラミック板の外面にシリコングリスを塗布してヒートヒートシンク、水冷ジャケットを接合した構成を採用している。
【0004】この構成のペルチェモジュールを採用すれば、熱電素子に通電することにより達成される発熱および吸熱を、放熱部材により外部に対して有効に作用させることができ、例えば冷却装置として機能させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の構成のペルチェモジュールを採用した場合には、熱電素子の吸熱面および/または放熱面と放熱部材との間にセラミックおよびシリコングリスが介在しているので熱抵抗が大きくなり、熱的ロスが多くなるという不都合がある。さらに詳細に説明すると、ペルチェモジュールの駆動時に熱電素子の両端の温度差がΔTj(=Thj−Tcj)であっても、ペルチェモジュールの両面(セラミックの外面)の温度差はΔT(=Th−Tc<ΔTj)となる。ここで、ペルチェモジュールの冷却性能は温度差ΔTによって定まる。したがって、必要以上に温度差ΔTjを大きくしなければならず、温度差ΔTjを大きくしようとすれば、図19に示すように、熱電素子への通電電流を増加させなければならず、この結果、大幅な冷却効率(COP)の低下を招いてしまう。
【0006】また、熱電素子群はセラミックで両側から強固に固定されているのであるから、セラミックと熱電素子との線膨張率が異なることに起因して、温度変化が生じた場合に両者の接合部に機械的ストレス(熱応力)がかかり、信頼性が低下するという不都合もある。
【0007】
【発明の目的】この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、冷却効率の低下を大幅に抑制するとともに、信頼性を高めることができるペルチェモジュールを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1のペルチェモジュールは、P型熱電素子とN型熱電素子とを並列状に配列してなる熱電素子群の一方の側、および他方の側をそれぞれプリント基板の配線パターンと電気的に接合してあるとともに、該当するプリント基板の配線パターンと放熱部材とを熱的に接合してあるものである。
【0009】請求項2のペルチェモジュールは、前記プリント基板の基材には放熱部材の基部を受け入れるスルーホールが形成されてあり、スルーホールに基部が受け入れられた放熱部材とプリント基板の配線パターンとが半田によって接合されたものである。
【0010】請求項3のペルチェモジュールは、前記プリント基板の基材には配線パターンと対応させて複数個のサーマルビアが形成されてあり、放熱部材の基部と対応するサーマルビアとが半田によって接合されたものである。
【0011】請求項4のペルチェモジュールは、前記放熱部材が熱電素子群の電極を兼ねているものである。
【0012】請求項5のペルチェモジュールは、前記放熱部材の先端部と熱的に結合された水冷ジャケットをさらに有しているものである。
【0013】
【作用】請求項1のペルチェモジュールであれば、P型熱電素子とN型熱電素子とを並列状に配列してなる熱電素子群の一方の側、および他方の側をそれぞれプリント基板の配線パターンと電気的に接合してあるとともに、該当するプリント基板の配線パターンと放熱部材とを熱的に接合してあるので、熱抵抗を小さくして熱交換効率を高めることができ、熱応力を小さくして信頼性を高めることができ、しかも、加工性が高いので簡単に任意の形状のものを製造することができるとともに、コストを低減することができる。
【0014】請求項2のペルチェモジュールであれば、前記プリント基板の基材には放熱部材の基部を受け入れるスルーホールが形成されてあり、スルーホールに基部が受け入れられた放熱部材とプリント基板の配線パターンとが半田によって接合されているので、請求項1の作用に加え、スルーホールによって放熱部材の基部の固定を補助することができる。
【0015】請求項3のペルチェモジュールであれば、前記プリント基板の基材には配線パターンと対応させて複数個のサーマルビアが形成されてあり、放熱部材の基部と対応するサーマルビアとが半田によって接合されているので、請求項1の作用に加え、放熱部材の形状の自由度を高めることができる。
【0016】請求項4のペルチェモジュールであれば、前記放熱部材が熱電素子群の電極を兼ねているので、請求項3の作用に加え、電極を特別に設ける必要がなくなるので構成を簡素化できる。
【0017】請求項5のペルチェモジュールであれば、前記放熱部材の先端部と熱的に結合された水冷ジャケットをさらに有しているので、請求項1から請求項4の何れかの作用に加え、熱交換効率をさらに高めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、この発明のペルチェモジュールの実施の態様を詳細に説明する。
【0019】図1はこの発明のペルチェモジュールの一実施態様を示す斜視図、図2は要部縦断面図、図3は透視斜視図である。
【0020】このペルチェモジュールは、複数個のP型熱電素子1、N型熱電素子2を交互に、かつ並列に配列しているとともに、これらのP型熱電素子1、N型熱電素子2の両端部をプリント基板3の配線パターン3aと半田3bにより接合している。そして、プリント基板3の所定位置に形成したスルーホール3cに放熱部材(吸熱フィン、または放熱フィン)4の基部を収容するとともに、放熱部材4の基部を配線パターン3aと半田3bにより接合している。
【0021】ここで、プリント基板3の配線パターン3aは、図4に示すように、隣り合う1つずつのP型熱電素子1、N型熱電素子2の一方の端部を電気的に接続するように形成されている。そして、一方のプリント基板3の配線パターン3aと、他方のプリント基板3の配線パターン3aとが熱電素子1個分だけずれた位置に形成されている(図4中実線および破線参照)。また、スルーホール3cは配線パターン3aの幅よりも小さく設定している。さらに、プリント基板3としては、ガラス布基材エポキシ樹脂積層板(GE材)(FR−4、FR−5など)、紙フェノール(PP材)、紙エポキシ(PE材)などが例示できる。
【0022】上記の構成のペルチェモジュールの作用は次の通りである。
【0023】複数個のP型熱電素子1、N型熱電素子2は、両プリント基板3の配線パターン3aによって互いに直列接続されているとともに、電流の流れる方向が互いに逆に設定されているのであるから、熱電素子群の一方の側が放熱側、他方の側が吸熱側になる。
【0024】そして、この実施態様においては、セラミック板、シリコングリスが存在しなくなるので、熱抵抗が小さくなり、熱交換の効率がよくなる。したがって、従来のペルチェモジュールと同じ吸熱量を得るのに必要な温度差ΔTjが小さくなり、電流が少なくなり、冷却効率(COP)が大幅に改善される。熱抵抗等価回路を示す図14を参照してさらに詳細に説明する。
【0025】従来のペルチェモジュールで10Wの吸熱量を得たい時に吸熱側温度を30℃、放熱側温度を30℃とするには、熱電素子の低温側温度を20℃、高温側温度を50℃に設定しなければならないと仮定する{図13中(b)参照}。この時のCOPは、図20から分かるように0.4である。この実施態様において吸熱側温度を30℃、放熱側温度を30℃とするには、熱電素子の低温側温度を21℃、高温側温度を42℃に設定すればよく{図13中(a)参照}、この時のCOPは、図20から分かるように0.8である。したがって、熱抵抗によるロスが小さくなった上に、効率も大幅に改善されていることが分かる。
【0026】また、熱電素子の材質であるBiTeの線膨張率が18ppm/℃であるのに対して、GE材の線膨張率が10〜13ppm/℃、PP材の線膨張率が17〜35ppm/℃、PE材の線膨張率が12〜24ppm/℃であり、セラミック(線膨張率が5.4ppm/℃)よりも線膨張率の差が小さく、しかも、従来のペルチェモジュールほどは強固に熱電素子を固定しないのであるから、接合部の熱応力が減少し、信頼性を高めることができる。ここで、ppmは10-6を示している。
【0027】さらに、プリント基板3を用いているので、加工が簡単であり、しかも、放熱部材4も自動実装できるので、低コスト化が可能である。
【0028】さらにまた、全体として長方形状(図9参照)など、任意の形状を採用することが可能である。
【0029】図5はこの発明のペルチェモジュールの他の実施態様を示す斜視図、図6は要部縦断面図である。
【0030】このペルチェモジュールが前記のペルチェモジュールと異なる点は、各側の放熱部材4の先端部を一体的に保持する補強板5をさらに設けた点のみである。
【0031】したがって、この構成を採用した場合には、全ての放熱部材4を、その基部および先端部において安定に支持することができる。
【0032】図7はこの発明のペルチェモジュールの他の実施態様を示す斜視図、図8は要部縦断面図である。
【0033】このペルチェモジュールが図1、図2のペルチェモジュールと異なる点は、放熱側の放熱部材4の先端部を水冷ジャケット6に侵入させた点のみである。ただし、水冷ジャケット6は電気絶縁性材質で形成しておく。
【0034】この構成を採用した場合には、放熱部材4の先端部を液体と接触させることにより熱交換をより高効率化することができる。また、液体の流路に放熱部材4が流れを妨げるように配置されているので、乱流促進による熱伝達の促進をはかることができる。
【0035】なお、前記各ペルチェモジュールにおいて、P型熱電素子1、N型熱電素子2、および放熱部材4を角柱状に設定することが可能(図10参照)であるほか、P型熱電素子1、N型熱電素子2、および放熱部材4を円柱状に設定することが可能(図11参照)である。また、プリント基板3の各配線パターン3aに対応させて複数個のサーマルビア3d(小径のスルーホールに金属を埋め込んでなるもの)を形成し、これらのサーマルビア3dに対してコ字状の放熱部材4を半田により接合する構成を採用することが可能(図12参照)である。
【0036】
【発明の効果】請求項1の発明は、熱抵抗を小さくして熱交換効率を高めることができ、熱応力を小さくして信頼性を高めることができ、しかも、加工性が高いので簡単に任意の形状のものを製造することができるとともに、コストを低減することができるという特有の効果を奏する。
【0037】請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、スルーホールによって放熱部材の基部の固定を補助することができるという特有の効果を奏する。
【0038】請求項3の発明は、請求項1の効果に加え、放熱部材の形状の自由度を高めることができるという特有の効果を奏する。
【0039】請求項4の発明は、請求項3の効果に加え、電極を特別に設ける必要がなくなるので構成を簡素化できるという特有の効果を奏する。
【0040】請求項5の発明は、請求項1から請求項4の何れかの効果に加え、熱交換効率をさらに高めることができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のペルチェモジュールの一実施態様を示す斜視図である。
【図2】同上の要部縦断面図である。
【図3】同上の透視斜視図である。
【図4】配線パターンどうしの関係およびスルーホールの関係を示す概略図である。
【図5】この発明のペルチェモジュールの他の実施態様を示す斜視図である。
【図6】同上の要部縦断面図である。
【図7】この発明のペルチェモジュールのさらに他の実施態様を示す斜視図である。
【図8】同上の要部縦断面図である。
【図9】この発明のペルチェモジュールのさらに他の実施態様を示す斜視図である。
【図10】変形例の要部を示す斜視図である。
【図11】他の変形例の要部を示す斜視図である。
【図12】さらに他の変形例の要部を示す斜視図である。
【図13】熱抵抗等価回路を示す図である。
【図14】従来のペルチェモジュールの要部の構成を示す斜視図である。
【図15】同上の側面図である。
【図16】従来のペルチェモジュールの構成を示す斜視図である。
【図17】同上の側面図である。
【図18】従来のペルチェモジュールの構成を示す斜視図である。
【図19】同上の側面図である。
【図20】ペルチェ特性を示す図である。
【符号の説明】
1 P型熱電素子 2 N型熱電素子
3 プリント基板 3a 配線パターン
3b 半田 3c スルーホール
3d サーマルビア 4 放熱部材
6 水冷ジャケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】 P型熱電素子(1)とN型熱電素子(2)とを並列状に配列し、これらの熱電素子(1)(2)を直列に接続して熱電素子群の一方の側を放熱側、他方の側を吸熱側としてなるとともに、少なくとも放熱側に放熱部材(4)を設けてなるペルチェモジュールであって、熱電素子群の一方の側、および他方の側をそれぞれプリント基板(3)の配線パターン(3a)と電気的に接合してあるとともに、該当するプリント基板(3)の配線パターン(3a)と放熱部材(4)とを熱的に接合してあることを特徴とするペルチェモジュール。
【請求項2】 前記プリント基板(3)の基材には放熱部材(4)の基部を受け入れるスルーホール(3c)が形成されてあり、スルーホール(3c)に基部が受け入れられた放熱部材(4)とプリント基板(3)の配線パターン(3a)とが半田(3b)によって接合されてある請求項1に記載のペルチェモジュール。
【請求項3】 前記プリント基板(3)の基材には配線パターン(3a)と対応させて複数個のサーマルビア(3d)が形成されてあり、放熱部材(4)の基部と対応するサーマルビア(3d)とが半田(3b)によって接合されてある請求項1に記載のペルチェモジュール。
【請求項4】 前記放熱部材(4)は熱電素子群の電極を兼ねている請求項3に記載のペルチェモジュール。
【請求項5】 前記放熱部材(4)の先端部と熱的に結合された水冷ジャケット(6)をさらに有している請求項1から請求項3の何れかに記載のペルチェモジュール。
【請求項1】 P型熱電素子(1)とN型熱電素子(2)とを並列状に配列し、これらの熱電素子(1)(2)を直列に接続して熱電素子群の一方の側を放熱側、他方の側を吸熱側としてなるとともに、少なくとも放熱側に放熱部材(4)を設けてなるペルチェモジュールであって、熱電素子群の一方の側、および他方の側をそれぞれプリント基板(3)の配線パターン(3a)と電気的に接合してあるとともに、該当するプリント基板(3)の配線パターン(3a)と放熱部材(4)とを熱的に接合してあることを特徴とするペルチェモジュール。
【請求項2】 前記プリント基板(3)の基材には放熱部材(4)の基部を受け入れるスルーホール(3c)が形成されてあり、スルーホール(3c)に基部が受け入れられた放熱部材(4)とプリント基板(3)の配線パターン(3a)とが半田(3b)によって接合されてある請求項1に記載のペルチェモジュール。
【請求項3】 前記プリント基板(3)の基材には配線パターン(3a)と対応させて複数個のサーマルビア(3d)が形成されてあり、放熱部材(4)の基部と対応するサーマルビア(3d)とが半田(3b)によって接合されてある請求項1に記載のペルチェモジュール。
【請求項4】 前記放熱部材(4)は熱電素子群の電極を兼ねている請求項3に記載のペルチェモジュール。
【請求項5】 前記放熱部材(4)の先端部と熱的に結合された水冷ジャケット(6)をさらに有している請求項1から請求項3の何れかに記載のペルチェモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図17】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図19】
【図14】
【図16】
【図18】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図17】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図19】
【図14】
【図16】
【図18】
【図20】
【公開番号】特開2000−91648(P2000−91648A)
【公開日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−256972
【出願日】平成10年9月10日(1998.9.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【公開日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年9月10日(1998.9.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
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