説明

ペーパジオラマ模型セット

【課題】部品が紛失する虞をなくし、しかも紙材等の資源の無駄を抑制して資源を有効利用するとともに、実際の様子に近い情景を簡便に再現することを実現するペーパジオラマ模型セットを提供すること。
【解決手段】造作シート110は、立体構造物の展開図119を表示した展開図表示シート領域112と該展開図表示シート領域112の立脚部分115を除く輪郭切り取りライン116を介して間歇接合した残余周辺シート領域113とで構成され、ベースシート120の左右両側に配置された造作シート110の一方は、その一方の造作シート110の他の辺に折り畳み自在に連接されて路面電車の背景をその裏面側に表示する背景表示領域114を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体構造物がその背景に配置されるペーパジオラマ模型セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車等の立体構造物とその背景を立体的に表現した縮尺のジオラマ模型セットとして紙材を用いた立体模型組み立てキットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に開示された立体模型組立キットによれば、立体模型を構成する複数の部品を一枚の紙材から相互に分離した後、これら複数の部品を組み立てることによって立体模型が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−272911号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された立体模型組立キットでは、複数の部品を相互に分離することによって部品を紛失する虞があるため、部品不足により模型を完成させることができなくなるという問題があった。
加えて、特許文献1に開示された立体模型組立キットでは、複数の部品を紙シートから分離した際に紙シートのうち部品として利用されない紙片が生じるため、紙シート等の資源の無駄をなくして資源を有効利用することが困難であるという問題があった。
また、電車等の立体構造物がその背景と関係なく存在するため、実際の様子に近い情景を創成することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、部品を紛失することなく、紙シート等の資源の無駄を抑制して資源を有効利用するとともに、実際の様子に近い情景を簡便に再現するペーパジオラマ模型セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、立体構造物を少なくとも造作する造作シートと該造作シートの一辺を谷折れ線として造作シートを折り返して重ね合わせるベースシートとを一体に形成してなるペーパジオラマ模型セットにおいて、造作シートが、立体構造物の展開図を表示した展開図表示シート領域と該展開図表示シート領域の立脚部分を除く輪郭切り取りラインを介して間歇接合した残余周辺シート領域とで構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
また、本請求項2に係る発明は、立体構造物が、造作シートをベースシート側へ折り畳んだ状態で立体構造物の展開図を展開図表示シート領域の裏面側へ折り込んで組み立てられることにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
また、本請求項3に係る発明は、立体構造物の組み立て状態を係止する差し込み舌片と差し込み穴が、立体構造物の展開図の付き合わせ部位に設けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
また、本請求項4に係る発明は、造作シートが、造作シートの他の辺に折り畳み自在に連設されて立体構造物の背景を裏面側に表示する背景表示領域を備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
また、本請求項5に係る発明は、造作シートが、ベースシートの左右両側に配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
また、本請求項6に係る発明は、造作シートとベースシートとが、一枚の紙シートで一体に形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
また、本請求項7に係る発明は、造作シートとベースシートが、少なくとも表裏両面で同質となっていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、立体構造物を少なくとも造作する造作シートと該造作シートの一辺を谷折れ線として造作シートを折り返して重ね合わせるベースシートとを一体に形成してなることにより、造作シートから少なくとも立体構造物を造作することができるばかりでなく、以下の特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0014】
請求項1に係るペーパジオラマ模型セットによれば、造作シートが、立体構造物の展開図を表示した展開図表示シート領域と該展開図表示シート領域の立脚部分を除く輪郭切り取りラインを介して間歇接合した残余周辺シート領域とで構成されていることにより、立体構造物の組み立ての際に立体構造物の展開図が造作シートから切り離されないため、立体構造物の部品を紛失することをなくして立体構造物を完成させることを実現することができる。
加えて、ペーパジオラマ模型セットを組み立てた際に立体構造物から分離されない残余周辺シート領域の裏面が立脚部分を介して立体構造物の配置面となるため、残余周辺シート領域を無駄にすることなく有効利用することを実現することができる。
【0015】
請求項2に係る本発明のペーパジオラマ模型セットによれば、請求項1記載のペーパジオラマ模型セットが奏する効果に加えて、立体構造物が、造作シートをベースシート側へ折り畳んだ状態で立体構造物の展開図を展開図表示シート領域の裏面側へ折り込んで組み立てられることにより、造作シートから切り離されない展開図を折ることで立体構造物が組み立てられるため、部品を紛失しないで立体構造物を簡単に組み立てて確実に完成させることを実現することができる。
【0016】
請求項3に係る本発明のペーパジオラマ模型セットによれば、請求項1または請求項2記載のペーパジオラマ模型セットが奏する効果に加えて、立体構造物の組み立て状態を係止する差し込み舌片と差し込み穴が、立体構造物の展開図の付き合わせ部位に設けられていることにより、立体構造物が差し込み舌片および差し込み穴を介して造作シートに固定されるため、部品を紛失しなで立体構造物を造作シートの所定の位置に位置決めして確実にペーパジオラマ模型セットを組み立てることを実現することができる。
【0017】
請求項4に係る本発明のペーパジオラマ模型セットによれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のペーパジオラマ模型セットが奏する効果に加えて、造作シートが、造作シートの他の辺に折り畳み自在に連設されて立体構造物の背景を裏面側に表示する背景表示領域を備えていることにより、ペーパジオラマ模型セットを組み立てた際に立体構造物の背面側に背景が配置されるため、実際の様子に近い情景を簡便に形成することを実現することができる。
【0018】
請求項5に係る本発明のペーパジオラマ模型セットによれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のペーパジオラマ模型セットが奏する効果に加えて、造作シートが、ベースシートの左右両側に配置されていることにより、左右両側に配置された造作シートのそれぞれから立体構造物が形成されるため、一つの立体構造物では表現しきれない情景を表現することを実現することができる。
【0019】
請求項6に係る本発明のペーパジオラマ模型セットによれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のペーパジオラマ模型セットが奏する効果に加えて、造作シートとベースシートとが一枚の紙シートで一体に形成されていることにより、一枚の紙シートから立体構造物とその土台となるベースが形成されるため、一枚の紙シートについて不要な紙片の発生を抑制することを実現することができる。
【0020】
請求項7に係る本発明のペーパジオラマ模型セットによれば、請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載のペーパジオラマ模型セットが奏する効果に加えて、造作シートとベースシートが、少なくとも表裏両面で同質となっていることにより、組み立てられたペーパジオラマ模型セットの外観に現れる部分について相互に重なった造作シートおよびベースシートの境界が連続的に一様な表面として綺麗に仕上がるため、より一層実際の様子に近い情景を簡便に形成することを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係るペーパジオラマ模型セットを組み立てる前の平面図。
【図2】本実施例に係るペーパジオラマ模型セットを組み立てる前の平面図。
【図3】本実施例に係るペーパジオラマ模型セットを組み立てる前の拡大図。
【図4】本実施例に係るペーパジオラマ模型セットを組み立てる途中の斜視図。
【図5】組み立てられたペーパジオラマ模型セットの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のペーパジオラマ模型セットは、立体構造物を少なくとも造作する造作シートと該造作シートの一辺を谷折れ線として造作シートを折り返して重ね合わせるベースシートとを一体に形成してなるペーパジオラマ模型セットにおいて、造作シートが、立体構造物の展開図を表示した展開図表示シート領域と該展開図表示シート領域の立脚部分を除く輪郭切り取りラインを介して間歇接合した残余周辺シート領域とで構成され、部品を紛失することなく、紙シート等の資源の無駄を抑制して資源を有効利用するとともに、実際の様子に近い情景を簡便に再現するペーパジオラマ模型セットを提供するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
なお、立体構造物は、電車や自動車等の乗り物であってもよいし、ビル、寺社或いは家屋等の建物など如何なるものであってもよいし、造作シートは、枚葉状のシート部材であれば、如何なるものであってもよい。
また、間歇接合とは、ミシン目等のように部分的に複数の部分が繋がった状態で接合され、相互に接合された複数の部分を簡便に切り離すことができるように構成された接合をいう。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の一実施例であるペーパジオラマ模型セット100を図1乃至図5に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例であるペーパジオラマ模型セットを組み立てる前の状態を展開図表示面側から見た平面図であり、図2は、ペーパジオラマ模型セットを組み立てる前の状態を裏面側から見た平面図であり、図3は、ペーパジオラマ模型セットを組み立てる前の状態の拡大図であり、図4は、ペーパジオラマ模型セットを組み立てる途中の状態の斜視図であり、図5は、組み立てられたペーパジオラマ模型セットの斜視図である。
なお、以下では、立体構造物として路面電車を例に挙げている。
【0024】
本実施例のペーパジオラマ模型セット100は、図1乃至図3に示すように、立体構造物を少なくとも造作する造作シート110と、造作シート110の一辺を谷折れ線111として造作シート110を折り返して重ね合わせるベースシート120とを基本的な構成要素として備えている。
【0025】
まず、造作シート110について、図1乃至図5に基づいて説明する。
造作シート110は、立体構造物C1の展開図119を表示した展開図表示シート領域112と展開図表示シート領域112の立脚部分115を除く輪郭切り取りライン116を介して間歇接合した残余周辺シート領域113とで構成されている。
したがって、立体構造物C1の組み立ての際に立体構造物C1の展開図119が造作シート110から切り離されないため、立体構造物C1の部品を紛失しないで立体構造物C1を完成させるようになっている。
【0026】
加えて、ペーパジオラマ模型セット100を組み立てた際に立体構造物C1から分離されない残余周辺シート領域113の裏面が立脚部分115を介して立体構造物C1の配置面となるため、残余周辺シート領域113を無駄にすることなく有効利用するようになっている。
【0027】
また、ペーパジオラマ模型セット100を組み立てる際に、立体構造物C1が、造作シート110をベースシート120側へ折り畳んだ状態で立体構造物C1の展開図119を展開図表示シート領域112の裏面側へ折り込んで組み立てられる。
したがって、造作シート110から切り離されない展開図119を折ることで立体構造物C1が組み立てられるため、部品を紛失しないで立体構造物C1を簡単に組み立てて確実に完成させるようになっている。
【0028】
造作シート110には、立体構造物C1の組み立て状態を係止する差し込み舌片117と差し込み穴118が立体構造物C1の展開図119の付き合わせ部位、すなわち、展開図119を造作シート110の裏面側に折り返して組み立てた際に、立体構造物C1が造作シート110の裏面に付き合わせられる部位に設けられている。
したがって、立体構造物C1が差し込み舌片117および差し込み穴118を介して造作シート110に固定されるため、部品を紛失しないで立体構造物C1を造作シート110の所定の位置に位置決めして確実にペーパジオラマ模型セット100を組み立てるようになっている。
【0029】
ベースシート120の左右両側のそれぞれに配置された造作シート110の一方は、その造作シート110の他の辺に折り畳み自在に連接されて立体構造物C1の背景をその裏面側に表示する背景表示領域114を備えている。
したがって、ペーパジオラマ模型セット100を組み立てた際に立体構造物C1の背面側に背景が配置されるため、実際の様子に近い情景を簡便に形成するようになっている。
【0030】
ペーパジオラマ模型セット100では、造作シート110が、ベースシート120の左右両側に配置されている。
したがって、ベースシート120の左右両側に配置された造作シート110のそれぞれから立体構造物C1およびC2が形成されるため、一つの立体構造物では表現しきれない情景を表現している。
【0031】
そして、造作シート110とベースシート120は、一枚の紙シートで一体に構成されている。
したがって、一枚の紙シートから立体構造物C1およびC2とその土台となるベースが形成されるため、一枚の紙シートについて不要な紙片の発生を抑制している。
【0032】
また、造作シート110とベースシート120が、少なくとも表裏両面で同質となっている。
より具体的には、例えば、造作シート110とベースシート120が、少なくとも表裏両面で相互に等しい光反射率や平滑度を有している。
これにより、組み立てられたペーパジオラマ模型セット100の外観に現れる部分について相互に重なった造作シート110およびベースシート120の境界が連続的に一様な表面として綺麗に仕上がるため、より一層実際の様子に近い情景を簡便に形成している。
【0033】
次に、ペーパジオラマ模型セット100の組み立てについて、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1乃至図5に示すように、立体構造物C1が、一方の造作シート110をベースシート120側へ折り畳んだ状態で立体構造物C1の展開図119を展開図表示シート領域112の裏面側へ折り込んで組み立てられる。
この際、展開図119中の折り線Lに沿って展開図119が折り込まれることによって立体構造物C1の外形が組み立てられるとともに、背景表示領域114がその裏面側に折り畳まれる。
なお、折り線Lに沿って、所定の部分に差込片および差込穴が設けられているため、折り線Lに沿って展開図119を折り込んだ状態で差込片を差込穴に差し込むことで立体構造物C1の外形が固定される。
【0034】
また、立体構造物C1は、組み立て状態を係止する差し込み舌片117を差し込み穴118に差し込むことによって造作シート110に係止される。
さらに、一方の造作シート110の反対側に配置された造作シート110も同様にベースシート120側に折り畳まれる。立体構造物C2は、展開図119を展開図表示シート領域112の裏面側へ折り込んで折り線Lに沿って展開図119が折り込まれることによってその外形が組み立てられ、差し込み舌片117および差し込み穴118によって造作シート110に係止される。
このようにして、立体構造物C1およびC2が、背景表示領域114の前面に配置されたペーパジオラマ模型セット110の一連の組み立てが完了する。
【0035】
このようにして得られた本実施例のペーパジオラマ模型セット100は、造作シート110が、立体構造物C1およびC2の展開図119を表示した展開図表示シート領域112と展開図表示シート領域112の立脚部分115を除く輪郭切り取りライン116を介して間歇接合した残余周辺シート領域113とで構成されていることにより、立体構造物C1およびC2の部品を紛失しないで立体構造物C1およびC2を完成させるとともに、残余周辺シート領域113を無駄にすることなく有効利用することを実現することができる。
【0036】
さらに、立体構造物C1およびC2が、造作シート110をベースシート120側へ折り畳んだ状態で立体構造物C1およびC2の展開図119を展開図表示シート領域112の裏面側へ折り込んで組み立てられることにより、部品を紛失しないで立体構造物C1およびC2を簡単に組み立てて確実に完成させることを実現することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0037】
100・・・ペーパジオラマ模型セット
110・・・造作シート
111・・・谷折れ線
112・・・展開図表示シート領域
113・・・残余周辺シート領域
114・・・背景表示領域
115・・・立脚部分
116・・・輪郭切取ライン
117・・・差し込み舌片
118・・・差し込み穴
119・・・展開図
120・・・ベースシート
C1、C2・・・立体構造物
F・・・組み立て説明図
L・・・折り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体構造物を少なくとも造作する造作シートと該造作シートの一辺を谷折れ線として造作シートを折り返して重ね合わせるベースシートとを一体に形成してなるペーパジオラマ模型セットにおいて、
前記造作シートが、前記立体構造物の展開図を表示した展開図表示シート領域と該展開図表示シート領域の立脚部分を除く輪郭切り取りラインを介して間歇接合した残余周辺シート領域とで構成されていることを特徴とするペーパジオラマ模型セット。
【請求項2】
前記立体構造物が、前記造作シートをベースシート側へ折り畳んだ状態で前記立体構造物の展開図を展開図表示シート領域の裏面側へ折り込んで組み立てられることを特徴とする請求項1記載のペーパジオラマ模型セット。
【請求項3】
前記立体構造物の組み立て状態を係止する差し込み舌片と差し込み穴が、前記立体構造物の展開図の付き合わせ部位に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のペーパジオラマ模型セット。
【請求項4】
前記造作シートが、前記造作シートの他の辺に折り畳み自在に連設されて立体構造物の背景を裏面側に表示する背景表示領域を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載のペーパジオラマ模型セット。
【請求項5】
前記造作シートが、前記ベースシートの左右両側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のペーパジオラマ模型セット。
【請求項6】
前記造作シートとベースシートとが、一枚の紙シートで一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のペーパジオラマ模型セット。
【請求項7】
前記造作シートとベースシートが、少なくとも表裏両面で同質となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のペーパジオラマ模型セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−125490(P2011−125490A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286548(P2009−286548)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(592139854)図書印刷株式会社 (5)
【Fターム(参考)】