説明

ホイールキャップの取付構造

【課題】ホイールキャップの設計工数の省力化を可能とし、かつ、ホイールキャップの回転を抑止することができるホイールキャップの取付構造を提供する。
【解決手段】本発明のホイールキャップの取付構造1では、ホイールキャップを異なる部品である意匠部品30と取付部品20とで構成する。意匠部品30は、円周上において突出する複数の突起部34を有し、取付部品20は、意匠部品30の突起部34を固定するための複数の固定部22を有する。また、取付部品20は、複数の係止爪26を有し、ホイール50は、取付部品20の係止爪26を係止するための係止部52を有する。係止部52には、係止された係止爪26の回転を抑止するために半径方向の中心向きに突出した凸部54が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールキャップをホイールに取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホイールには、タイヤがホイールの内側へ落ち込むことを防ぐためのハンプが形成されている。ハンプは、ホイールの半径方向外側に向けた隆起部として設けられ、従来より、このハンプを用いてホイールキャップを取り付ける種々の取付構造が提案されている。これらのホイールキャップは、円盤状の意匠部と、ホイールキャップをホイールのハンプと係止するために突出した爪部を有して構成され、ホイールキャップ全体が一体成形により形成されている。
【0003】
一方、意匠部と爪部とを異なる部品とする自動車用ホイールキャップが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。意匠部においては、爪部に必要な強度および耐熱性が要求されないため、意匠部に爪部と同一の材料を使用する必要がなく、種々の材料を使用することが可能となる。
【特許文献1】特開平6−247101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
意匠部と爪部とを一体成形したホイールキャップは、意匠部のデザインに応じて形成可能な爪部の数および配置位置が定まるため、意匠部のデザインを変更するたびに、爪部を含めたホイールキャップ全体を新たに設計する必要がある。
【0005】
意匠部と爪部とを異なる部品としたホイールキャップにおいても事情は同様である。意匠部品と爪部品とを固定するためには、両部品を固定する構造を意匠部品のデザインに応じて設計する必要がある。そのため、意匠部品のデザインを変更すると、その意匠部品専用の爪部品を設計する必要が生じる。意匠部と爪部とを異なる部品とすることで、それぞれを異なる材料で形成することが可能となるが、意匠部品と爪部品との双方を設計する必要があることから、設計工数の省力化は困難である。
【0006】
また、タイヤの回転による影響を受けて、ホイールに係止したホイールキャップの爪部がホイールの円周方向に回転すると、爪部がタイヤに空気を充填するバルブと接触し、バルブが損傷することで、タイヤ内の圧力が低下する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、ホイールキャップの設計工数の省力化を可能とし、かつ、ホイールキャップの回転を抑止することができるホイールキャップの取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のホイールキャップ取付構造は、異なる部品である意匠部品と取付部品とを備えるホイールキャップをホイールに取り付ける取付構造であって、意匠部品は、所定の半径により特定される円周上において突出する複数の突起部を有し、取付部品は、意匠部品の突起部を固定するための複数の固定部と、半径方向の外向きに突出する複数の係止爪とを有し、ホイールは、取付部品の係止爪を係止するための係止部を有し、係止部には、係止された係止爪の回転を抑止するために半径方向の中心向きに突出した凸部が設けられている。
【0009】
この態様によるホイールキャップは、異なる部品である意匠部品と取付部品とから構成されている。ホイールキャップを意匠部品と取付部品との2つのパーツで構成することにより、たとえば、取付部品の標準構造を定めて、設計者が意匠部品だけを設計すればよい環境を実現することもできる。この環境下において設計者は、意匠部品を取付部品に固定する構造の設計さえ行えば、比較的高い自由度で意匠部のデザインを作成することができるため、ホイールキャップの設計工数を省力化できる。また、ホイールの係止部に凸部を設けることにより、タイヤの回転による影響を受けてホイールキャップの係止爪が回転することを抑止できる。
【0010】
また、複数の固定部は、取付部品において、所定の半径と同一の半径により特定される円周に沿って所定の基準間隔で設けられることが好ましい。さらに、意匠部品において、円周上で隣り合う突起部の間隔が、基準間隔の整数倍にされることが好ましい。
【0011】
この態様によれば、取付部品の固定部を円周上に沿って所定の基準間隔で設け、一方、意匠部品においても同一径の円周上に設ける突起部の間隔を基準間隔の整数倍に設定することで、意匠部品の突起部を取付部品の固定部に固定することが可能となる。
【0012】
また、係止部の凸部は、プレス加工により形成されることが好ましい。この態様によれば、ホイールキャップの回転を抑止するための構造を、簡易に形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホイールキャップの設計工数の省力化を実現することが可能となる。また、本発明によれば、タイヤの回転による影響を受けてホイールキャップの係止爪が回転することを抑止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施例にかかるホイールキャップの取付構造1を示す要部断面図である。この取付構造1では、ホイールキャップが、異なる部品である円盤状の意匠部品30と、環状の取付部品20とから構成される。ホイールキャップの取付部品20が、ホイール50の係止部52に係止されることで、ホイールキャップがホイール50に取り付けられる。ホイール50には、タイヤ10が装着される。
【0016】
取付部品20は、ホイール50に接触して取り付けられるため、高い強度および耐熱性が要求される。一方、意匠部品30には取付部品20に必要な強度および耐熱性は要求されない。そのため、意匠部品30を取付部品20と異なる安価な材料で製造することも可能となり、ホイールキャップの低コスト化を実現できる。
【0017】
意匠部品30は、円盤状の意匠部32と、取付部品20に固定するための突起部34を有している。意匠部32の表面には、デザイン面が形成される。突起部34は複数設けられ、所定の半径により特定される円周上において意匠部32の裏面から突出している。取付部品20は、意匠部品30の突起部34を固定するための複数の固定部22と、ホイール50の係止部52に係止するための複数の係止爪26とを有する。
【0018】
固定部22は、意匠部品30において突起部34が設けられた円周と同一の半径により特定される円周に沿って設けられている。突起部34と固定部22とを同一径の円周に沿って設けることで、突起部34と固定部22とを固定させることが可能となる。全ての固定部22が同一の構造を有し、また全ての突起部34が同一の形状を有することが好ましい。これにより、任意の固定部22と任意の突起部34とを固定する構造を実現できる。
【0019】
係止爪26は、半径方向外向きに突出しており、ホイール50に設けられた係止部52に係止される。なお、係止部52は半径方向外向きに凹んだ形状を有している。ワイヤーリング28が、半径方向外向きに係止爪26を押圧することにより、係止爪26が係止部52に安定して係止される。
【0020】
本実施例の取付構造1において、取付部品20は、標準構造として同一径のホイールに対して共通に製造されることが好ましい。そのため、ホイールキャップの設計者は、取付部品20を設計する必要はなく、また意匠部品30については、取付部品20の固定部22に固定できるように突起部34の配置さえ設計すればよいため、デザイン面の設計に注力できる。これにより、設計者の設計工数を軽減することができ、設計コストを低減できる。
【0021】
ホイール50の係止部52には、係止された係止爪26の回転を抑止するために半径方向の中心向きに突出した凸部54が設けられている。凸部54は、係止爪26と接触することによって、タイヤの回転による影響を受けて係止爪26が回転することを抑止している。
【0022】
図2は、取付部品20の要部斜視図である。固定部22は、異なる円周上に形成される二つの直立部23a、23bに挟まれた溝部25を有して構成され、直立部23a、23bのそれぞれには、意匠部品30の突起部34を固定するための孔24が設けられている。孔24の周方向幅は、突起部34の周方向幅よりも僅かに大きく形成されることが好ましい。これにより、突起部34の爪を孔24に挿入して固定したときに、突起部34の周方向の移動を抑制できる。
【0023】
固定部22は、意匠部品30において突起部34が設けられた円周と同一の半径により特定される円周に沿って所定の基準間隔(以下「基準ピッチ」という)で設けられている。なお、基準ピッチは、隣り合う固定部22の中心と中心とをその円周に沿って結んだ間隔をいい、図2においてPで示される間隔である。
【0024】
図3は、取付部品20における固定部22の位置関係を模式的に示す図である。固定部22は、円周に沿って基準ピッチで等間隔に設けられている。意匠部品30の突起部34は、いずれの固定部22にも固定されることができる。
【0025】
図4は、意匠部品30の要部斜視図である。突起部34の先端には、固定部22に挿入して固定できるように、半径方向中心側と外側の双方に張り出した爪が設けられている。意匠部品30において突起部34の数および配置位置は、意匠部32のデザインにより異なってもよいが、隣り合う突起部34の間隔は、基準ピッチの整数倍となる。例えば、図5に示すような非対称なデザインを持つ意匠部品30aにおいて、開口部36a〜36eの位置に突起部34を設けることは困難であり、突起部34a〜34eは意匠部32aの開口していない部分に設けられる。隣り合う突起部34同士の間隔を基準ピッチの整数倍に設定することで、突起部34a〜34eを固定部22に固定することが可能となる。
【0026】
図6は、図5の意匠部品30aと図3の取付部品20とを固定した場合の取付部品20における突起部34a〜34eの位置関係を模式的に示す図である。意匠部品30aは、非対称にデザインされているため、突起部34a〜34eは円周上に沿って等間隔で設けられていない。しかしながら、突起部34a〜34eは、基準ピッチの整数倍となる間隔で設けられているため、それぞれ対応する固定部22に固定される。
【0027】
図7は、ホイールの要部斜視図である。凸部54は、係止部52を半径方向の中心向きにプレス加工することにより形成される。凸部54を形成することで、タイヤの回転による影響を受けて取付部品20の係止爪26が回転する事態を回避することが可能となる。係止爪26の回転を抑止するためには、係止部52に溶接などにより別の部品を結合することも可能である。しかしながら、溶接工程などは作業負担が大きく、プレス加工により係止部52に凸部54を形成することで、凸部の形成工程を簡易に実現できる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、突起部34と固定部22とを固定するための形状は任意であり、ネジなどを利用して固定してもよい。また、本実施例では、半径方向の中心向きに外側から係止部52をプレス加工することにより凸部54を形成しているが、凸部54は、他の方法により形成されてもよい。たとえば、半径方向の外向きに内側から係止部52をプレス加工することにより窪みを形成し、窪ませない部分を凸部54としてもよい。この窪ませた領域に取付部品20の係止爪26を係止させることで、窪みを形成していない係止部52を凸部54として、係止爪26の移動を抑止してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例にかかるホイールキャップの取付構造を示す要部断面図である。
【図2】取付部品の要部斜視図である。
【図3】取付部品における固定部の位置関係を模式的に示す図である。
【図4】意匠部品の要部斜視図である。
【図5】意匠部が非対称のデザインである意匠部品の裏面図である。
【図6】図5の意匠部品と図3の取付部品とを固定した場合の取付部品における突起部の位置関係を模式的に示す図である。
【図7】ホイールの要部斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 取付構造、 10 タイヤ、 20 取付部品、 22 固定部、 23 直立部、 24 孔、 25 溝部、 26 係止爪、 28 ワイヤーリング、 30 意匠部品、 32 意匠部、 34 突起部、 36 開口部、 50 ホイール、 52 係止部、 54 凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる部品である意匠部品と取付部品とを備えるホイールキャップをホイールに取り付ける取付構造であって、
前記意匠部品は、所定の半径により特定される円周上において突出する複数の突起部を有し、
前記取付部品は、前記意匠部品の突起部を固定するための複数の固定部と、半径方向の外向きに突出する複数の係止爪とを有し、
前記ホイールは、前記取付部品の係止爪を係止するための係止部を有し、
前記係止部には、係止された係止爪の回転を抑止するために半径方向の中心向きに突出した凸部が設けられていることを特徴とするホイールキャップの取付構造。
【請求項2】
前記複数の固定部は、前記取付部品において、前記所定の半径と同一の半径により特定される円周に沿って所定の基準間隔で設けられていることを特徴とする請求項1記載のホイールキャップの取付構造。
【請求項3】
前記意匠部品において、前記円周上で隣り合う突起部の間隔は、前記基準間隔の整数倍であることを特徴とする請求項2記載のホイールキャップの取付構造。
【請求項4】
前記係止部の凸部は、プレス加工により形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホイールキャップの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−191021(P2007−191021A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10520(P2006−10520)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)