説明

ホスファチジルエタノールアミン結合多糖類の製造方法

【課題】ホスファチジルエタノールアミン結合多糖類の製造方法を提供する。
【解決手段】カルボン酸基を有する多糖類とホスファチジルエタノールアミン類とをトリアジン系脱水縮合剤の存在下で反応させることを特徴とするカルボン酸基を有する多糖類にホスファチジルエタノールアミン類を結合させた多糖類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスファチジルエタノールアミン結合多糖類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学的に改質された多糖類は、そのハイドロゲル特性から、日用品用途、化粧品用途、医療用途など多岐に渡り使用されている。そのため、多糖類を種々の方法で修飾したり、水不溶化させたりする試みがなされている。
【0003】
例えば、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースとをカルボジイミドで修飾した癒着防止材が提案されている。しかし、ヒアルロン酸を活性化させるために、pHを4.75に調整する必要があり、作業が煩雑である(特許文献1)。
【0004】
また低分子量のカルボキシメチルセルロースとホスファチジルエタノールアミンとを水溶媒中でカルボジイミドを用いて反応させて、ホスホリパーゼA2阻害剤組成物を得る反応が記載されている(特許文献2)。
【0005】
またヒアルロン酸誘導体の合成方法として、カルボジイミド存在下ヒドロキシスクシンイミドを活性化剤として使用することが記載されているが、pHを6.8に保つ必要があった(非特許文献1)。
このように、何れの提案も、反応のpH調整は作業がわずらわしいため、製造方法についてさらなる検討の余地がある。
【0006】
【特許文献1】特表平5−508161号公報
【特許文献2】米国特許第5064817号公報
【非特許文献1】J Biomed Mater Res.1999;47(2):152−169
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、医用材料、とりわけ癒着防止材として有用なホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体の簡便な製造方法を提供することにある。また本発明の目的は、ゲル状にした場合、適度な弾性率および粘性を有するハイドロゲルとして有用なホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体の簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、カルボン酸を有する多糖類の水素原子を生体由来物質であるホスファチジルエタノールアミンで置換した誘導体に一定量のリン脂質を含有する組成物を調製することにより、適度な弾性率および粘性を有し、医療用ゲルとして有用なホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体を得るための簡便な製造方法を見出した。
【0009】
すなわち、本発明はカルボン酸基を有する多糖類とホスファチジルエタノールアミン類とをトリアジン系脱水縮合剤の存在下で反応させることを特徴とするカルボン酸基を有する多糖類にホスファチジルエタノールアミン類を結合させた多糖類の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
特定の縮合剤を用いることを特徴とする本発明の製造方法により、通常の縮合剤を用いる場合よりも、反応性が高く工業的に利用価値が高い。具体的にはpH調整、冷却が不要であること、該縮合剤のみで反応が可能なことなどが挙げられる。これにより、pH調整にかかる手間や装置を省略することができ、工業的な製造方法として利用価値が高い。
【0011】
本発明の製造方法により製造された多糖類誘導体は、生体由来物質のホスファチジルエタノールアミンを含有するので安全である。本発明の製造方法により製造された多糖類誘導体は、高粘弾性のハイドロゲルを形成することができる。本発明の製造方法により製造された多糖類誘導体は癒着防止材として使用可能であり、十分な柔軟性と粘性を有し、取扱い性に優れ、複雑な形状の部位にも適用でき、内視鏡を用いた手術にも適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。なお、これらの実施例などおよび説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り、他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0013】
本発明のカルボン酸基を有する多糖類としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルプルランなどのカルボキシアルキル化多糖類、ヒアルロン酸、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、およびヘパリン硫酸を挙げることができる。その中でも特に、カルボキシメチルセルロースやヒアルロン酸が好ましく、なかでもカルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0014】
ホスファチジルエタノールアミン類としては、動物組織や植物組織から抽出したもの、または合成して製造したものどちらでも使用できる。ホスファチジルエタノールアミンとしては、例えばジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン、ジベヘノイルホスファチジルエタノールアミン、ジリグノセロイルホスファチジルエタノールアミン、ジセロチオイルホスファチジルエタノールアミン、ジモンタノイルホスファチジルエタノールアミン、ラウロオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ミリストオレオイルホスファチジルエタノールアミン、パルミトオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジネルボノイルホスファチジルエタノールアミン、ジキメノイルホスファチジルエタノールアミン、ジリノレノイルホスファチジルエタノールアミン、ジヒラゴノイルホスファチジルエタノールアミン、ジアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン、ジドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミンを挙げることができる。その中でも、合成する際に使用する有機溶媒への溶解性の面からジオレオイルホスファチジルエタノールアミンが好ましい。
【0015】
カルボン酸基を有する多糖類のカルボキシル基100当量に対し、ホスファチジルエタノールアミン0.1〜100当量の割合にて反応させることが好ましい。
カルボン酸基を有する多糖類とホスファチジルエタノールアミン類との反応は、水および水と相溶する有機溶媒(A)とからなり、水が20〜70容量%含まれる混合溶媒に溶解し、縮合剤の存在下で反応させる工程によって製造することができる。
【0016】
トリアジン系脱水縮合剤としては、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド、クロロジメトキシトリアジンを反応場と結合させ3級アミンを形成させたもの、トリアジン類をモノマーとしたポリマー型脱水縮合剤などが挙げられる。この中でも、汎用性の点から、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドが好ましい。
【0017】
縮合剤は多糖類のカルボン酸に対して導入するホスファチジルエタノールアミン類100当量に対し、80〜200当量用いるのが好ましい。より好ましくは、100〜150当量である。
【0018】
有機溶媒(A)として、具体的には、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、モルフォリンなどの環状エーテル結合を有する有機溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド結合を有する有機溶媒、ピリジン、ピペリジン、ピペラジンなどのアミン類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類を挙げることができる。これらの中では環状エーテル類あるいはスルホキシド類が好ましく、なかでもテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
【0019】
水と相溶する有機溶媒(A)と混合する水の含有量が20容量%よりも少ないとカルボン酸を有する多糖類が溶解しにくくなり、また70容量%よりも高いとホスファチジルエタノールアミン類が溶解しにくくなるため反応が進まない。水の含有量は、好ましくは30〜60容量%である。
【0020】
反応温度は、好ましくは0〜60℃である。副生成物の産生を抑制するためには、反応を0〜10℃で行うことがより好ましい。反応環境は弱酸性下が好ましい。さらに好ましくはpH6〜7である。
反応圧力は大気圧下でよく、反応時間は、特に制限を受けないが、30分から一晩攪拌すれば十分である。
【0021】
カルボン酸基を有する多糖類とホスファチジルエタノールアミン類との反応後、有機溶媒(A)を除去する工程を経て、目的とする組成物を得る。有機溶媒(A)を取り除く方法としては特に制限はなく、エバポレーション(減圧濃縮)、凍結乾燥、水中での透析により有機溶媒を除く方法、スプレードライ(噴霧乾燥)、エレクトロスプレーデポジション、風乾、溶解性の低い溶媒を添加し目的物を沈殿させる方法などが利用できるが、これらの中では水中での透析により有機溶媒を除く方法が好ましく、得られた透析物を凍結乾燥により乾燥する方法が好ましい。透析膜には特に制限はないが、市販のヴィスキングチューブ(再生セルロース膜)が好ましく利用しうる。
【0022】
さらに得られたホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体を、実質的にカルボン酸を有する多糖類を溶解しないが水と相溶する有機溶媒(B)を用いてホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体を精製することも好ましい。ここで、実質的にカルボン酸を有する多糖類を溶解しないとは、粉末状あるいは凍結乾燥状態で入手可能なカルボン酸基を有する多糖類に関して、水が存在しない条件下でカルボン酸基を有する多糖類の有機溶媒に対する溶解性を調べたとき、そのほとんどが溶解しない有機溶媒のことをいう。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトンなどのケトン類、フェノールなどの芳香族アルコール類を挙げることができる。これらの中ではメタノール、エタノールが好ましく、生体内で使用することを考慮するとエタノールが好ましい。
【0023】
これらの群からなる有機溶媒(B)を用いて精製する場合、カルボン酸基を有する多糖類が水や有機溶媒(A)の混合液中に存在する状態で有機溶媒(B)を加え、沈殿を形成し、ホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体を取り出す方法を用いることができる。
【0024】
また、上記により得られた沈殿、あるいは乾燥状態にある粉末、あるいは凍結乾燥により得られたスポンジなどの成型体に、有機溶媒(B)を添加し、洗浄する方法などを用いることができる。これらの精製方法により、反応に用いた縮合剤やカルボキシル活性化剤などの触媒類、反応せずに系中に残った未反応のリン脂質などを取り除くことができる。有機溶媒(B)中に懸濁している目的物を得るには、遠心分離、ろ過などの方法が利用される。また、ソックスレー抽出も、有機溶媒(B)による洗浄を行うために利用することができる。
【0025】
上記方法によって得られるホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体はハイドロゲルを形成することができる。このとき、水100重量部に対し、本発明で開示されている誘導体を0.1〜5.0重量部、好ましくは0.2〜2.0重量部、さらに好ましくは0.3〜1.0重量部含むことにより、適度な粘弾性を有するハイドロゲルを得ることができる。
【0026】
通常、いずれのハイドロゲルも、ポリマーの濃度を高めることにより所望のゲル強度を得ることができるが、本発明で開示しているハイドロゲルは、水に対して5重量%以下の低いポリマー濃度においても、十分なゲル粘弾性を得ることができる。具体的に好ましいハイドロゲルの物性としては、水中に占めるポリマーの含量が0.2〜2.0重量%であるときに、ハイドロゲルの入った容器を傾けても流れ落ちない程度の粘弾性を有するものであり、スパテルなどの金属へらで触ると容易に変形することが可能で、患部に塗布することが容易な状態である。また注射器など細管を有する器具で注入することが可能である。
【0027】
ハイドロゲルに含まれる、水およびホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体以外の他の成分としては、触媒として用いた縮合剤、縮合剤が所定の化学反応を経由することで生成するウレアなどの副産物類、カルボキシル活性化剤、未反応のホスファチジルエタノールアミン類、反応の各段階で混入する可能性のある異物、pHの調整に用いたイオン類などが考えられる。触媒として用いた縮合剤、縮合剤が所定の化学反応を経由することで生成するウレアなどの副産物類など、生体内に入れたときに異物反応として認識されない程度の含有量以下の低いレベルに抑えてあることが好ましい。
【0028】
ゲルの好ましい粘弾性としては、水中におけるポリマー濃度が1重量%、温度37℃の条件で、レオメーターと呼ばれる動的粘弾性測定装置を用い、角速度10rad/secで測定したときの複素弾性率が、20〜1000N/mが好ましく、更に好ましくは100〜700N/mであり、この範囲が注入型のゲルとして最も取り扱いやすい範囲であるが、使用目的により随時変更させることができる。
【0029】
また本発明方法で得られるホスファチジルエタノールアミン結合多糖類誘導体およびそのハイドロゲルの用途としては、医用材料を含めた医療用途、ヘアケア製品や肌の保湿剤などの日用品用途、化粧品用途などへの使用が可能である。その中でも特に、本ゲルは注射器を通して注入可能であることから、低侵襲医療用途に用いることが好ましく、再生医療のための細胞の担体、成長因子などの液性因子を保持・徐放する担体、医薬品として利用できる低分子化合物を保持・徐放する担体、癒着防止材やシーラントなどの医用材料として好ましく利用できる。これらの中ではとりわけ注入型の癒着防止材として用いるのがよい。
【実施例】
【0030】
以下の実施例により本発明の詳細をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(1)実施例に使用した材料は以下の通りである。
(i)CMCNa:カルボキシメチルセルロースナトリウム(日本製紙ケミカル(株)製、置換度0.69)、
(ii)テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)、
(iii)0.1M HCl(和光純薬工業(株)製)、
(iv)0.1M NaOH(和光純薬工業(株)製)、
(v)4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)(国産科学(株)製)、
(vi)L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(COATSOME ME−8181、日本油脂(株)製)。
(2)セルロース誘導体中のリン脂質含量の測定
セルロース誘導体中のリン脂質の割合は、バナドモリブデン酸吸光光度法による全リン含量の分析により求めた。
(3)ハイドロゲルの複素弾性率の測定
ハイドロゲルの複素弾性率は、動的粘弾性測定装置であるRheometer RFIII(TA Instrument)を使用し、37℃、角速度10rad/secで測定した。複素弾性率とは弾性体の応力とひずみの比を表す定数のことである。
【0031】
[実施例1]
CMCNa200mgを水40mlに溶解し、さらにテトラヒドロフラン40mlを加えた。この溶液に、L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン189mg(0.000254mol)(CMCNaのカルボキシル基100当量に対し40当量)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)77.3mg(0.0002794mol)を10mlのテトラヒドロフラン/水=1/1に溶解し反応系に添加した後、終夜攪拌を行った。反応中pH調整はしなかった。反応開始時のpHは5.93、反応後のpHは5.91とほとんど変化はなかった。攪拌後、透析処理によりテトラヒドロフランを除去し、凍結乾燥することで、セルロース誘導体を得た。収率は、95%であった。得られたセルロース誘導体10mgをイオン交換水990mgに溶解し、濃度1重量%のハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、635N/mであった。
【0032】
[実施例2]
CMCNa200mgを水40mlに溶解し、さらにテトラヒドロフラン40mlを加えた。この溶液に、L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン94.5mg(0.000127mol)(CMCNaのカルボキシル基100当量に対し40当量)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)38.7mg(0.0001397mol)を10mlのテトラヒドロフラン/水=1/1に溶解し反応系に添加した後、終夜攪拌を行った。反応中pH調整はしなかった。反応開始時のpHは6.31、反応後のpHは6.26とほとんど変化はなかった。攪拌後、透析処理によりテトラヒドロフランを除去し、凍結乾燥することで、セルロース誘導体を得た。収率は、90%であった。得られたセルロース誘導体10mgをイオン交換水990mgに溶解し、濃度1重量%のハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、223N/mであった。
【0033】
[実施例3]
CMCNa200mgを水40mlに溶解し、さらにテトラヒドロフラン40mlを加えた。この溶液に、L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン47.3mg(0.000063mol)(CMCNaのカルボキシル基100当量に対し40当量)、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)19.4mg(0.00007mol)を10mlのテトラヒドロフラン/水=1/1に溶解し反応系に添加した後、終夜攪拌を行った。反応中pH調整はしなかった。反応開始時のpHは6.37、反応後のpHは6.38とほとんど変化はなかった。攪拌後、透析処理によりテトラヒドロフランを除去し、凍結乾燥することで、セルロース誘導体を得た。収率は、92%であった。得られたセルロース誘導体10mgをイオン交換水990mgに溶解し、濃度1重量%のハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、79N/mであった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の製造方法により製造された多糖類誘導体は癒着防止材として使用可能であり、十分な柔軟性と粘性を有し、取扱い性に優れ、複雑な形状の部位にも適用でき、内視鏡を用いた手術にも適用可能である。本発明の製造方法により製造されるゲルは注射器を通して注入可能であることから、低侵襲医療用途に用いることが好ましく、再生医療のための細胞の担体、成長因子などの液性因子を保持・徐放する担体、医薬品として利用できる低分子化合物を保持・徐放する担体、癒着防止材やシーラントなどの医用材料として好ましく利用できる。これらの中ではとりわけ注入型の癒着防止材として用いるのがよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸基を有する多糖類とホスファチジルエタノールアミン類とをトリアジン系脱水縮合剤の存在下で反応させることを特徴とするカルボン酸基を有する多糖類にホスファチジルエタノールアミン類を結合させた多糖類の製造方法。
【請求項2】
反応溶媒が、水と、水と相溶性のある有機溶媒とからなり、水が20〜70容量%である混合溶媒に溶解し、反応させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
トリアジン系脱水縮合剤が、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドであることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
カルボン酸を有する多糖類が、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ホスファチジルエタノールアミン類が、ホスファチジルエタノールアミンジオレオイルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
縮合剤を多糖類のカルボン酸に対して導入するホスファチジルエタノールアミン類100当量に対し、80〜200当量用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセルロース誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2008−189829(P2008−189829A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26516(P2007−26516)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】