説明

ホスホネート塩およびホスフェート塩、ならびにそれらの誘導体を含む植物のための組成物

【課題】Phytophthora infestans感染および植物の破壊を防止する組成物および/または方法を有すること。
【解決手段】ホスホネート(PO3)およびホスフェート(PO4)、ならびにそれらの誘導体を含む、植物のための殺真菌組成物が開示される。この組成物は、一定量のホスフェート(PO4)およびホスホネート(PO3)から構成され(これらは、組合された場合、Phytophthora、特に、Phytophthora infestansのよる植物の感染の対する実質的な保護を生じる相乗効果を提供する)、疫病の発生を低下させる際に特に有用であるような組成物の適用を有する。この組成物はまた、植物におけるPhytophthora infestans感染を制御するために使用され得る単一製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の本願は、特許出願第09/109,139号の一部継続出願であり、これは、特許5,800,837の分割出願であり、これは、特許5,736,164の一部継続出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、組成物および使用方法に関し、これらは、植物におけるPhytophthora感染を制御する際に改善された効力を提供する。より具体的に、この組成物は、一定量のホスフェート(PO4)およびホスホネート(PO3)から構成され、疫病の発生を低下させる際に特に有用であるような組成物の適用を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
1845年〜1846年にかけて、アイルランドジャガイモ飢饉が起こり、これは、世界の歴史で最も破壊的な作物不作の1つであった。ジャガイモ飢饉は、収穫されたジャガイモを急速に腐敗させ、それらを消費に不適切にする病害疫病によって引き起こされた。この病害はまた、感染した植物における落葉を引き起こすことが知られている。疫病は、ジャガイモまたはトマト植物に感染するPhytophthora生物によって引き起こされる。収穫され得ると、制御されない場合、Phytophthora生物は、農作物に対する主な経済的損害を引き起こし得、生じた損害は、作物利益において、数百万ドルの損失を生じる。さらに、消費者に対して利用可能なジャガイモおよびトマトの供給の重大な減少の可能性がある。
【0004】
疫病を制御するために、汚染したジャガイモおよび/またはトマトが深い穴で焼却され、そして少なくとも2フィートの土で被覆されることが推奨されている。北緯度地方において、ジャガイモまたはトマトは、土壌表面に広げられ得、そして冬の間冷凍され得る。これらの方法は、一時的に、病害の蔓延を防止するが、Phytophthora infestansによる感染および攻撃を防止しない。植物および作物が破壊された後に、処理が植物および作物に行われるのみである。この理由のために、Phytophthora infestans侵襲の蔓延を積極的に制御および予防するために、ジャガイモおよびトマトの農場に投与され得る組成物または方法を有することが所望される。
【0005】
Phytophthora属のいくつかの種(例えば、Phytophthora parasitica)が、制御され得る。特に、fosetyl−al(ホスホン酸エチル)は、Phytophthora parasiticaによって引き起こされる根腐れのような病害を制御するために、植物に投与され得る。このように、多くのホスホネート(PO3)組成物が、病害である根腐れおよび特にPhytophthora属の種のなかのいくつかと戦う際に非常に有効であることが知られている。不運にも、fosetyl−alおよび他のホスホネートは、単独で、Phytophthora sojae種によって引き起こされる疫病および類似のPhytophthora病害を制御しない。従って、Phytophthora infestansによる感染およびPhytophthora infestansの増殖を容易に阻害する方法または組成物を有することが所望される。
【0006】
リンは、植物栄養において必須な元素である。なぜなら、エネルギー生成反応(酸化的リン酸化的および光リン酸化的である反応を含む)を支配するからである。リンは、アデノシン二リン酸(ADP)およびアデノシン三リン酸(ATP)の生成に必須である。エネルギーリッチなADPおよびATPのリン酸結合は、植物において生じる生理学的反応の多くにエネルギーを提供する。このように、リンの種々の形態が、光合成プロセスの一部として使用のために植物によって吸収される。
【0007】
リン元素は、種々の一般的な形態(ホスホネート(PO3)およびホスフェート(PO4)を含む)で現れる。用語「ホスホネート」(しばしば、「ホスファイト」といわれる)は、ホスホン酸または亜リン酸のいずれかの塩(有機または無機)を意味する。ホスホン酸および亜リン酸は、式H3PO3を有し、そして82.00の分子量を有する。国際純正および応用化学連合からのそれらの構造が以下に示される:
【0008】
【化9】

用語「ホスフェート」は、式H3PO4、98.00の分子量を有し、そして以下の構造を有するリン酸の塩(有機または無機)を意味する:
【0009】
【化10】

過去において、種々のホスホネート化合物は、植物への適用のために、殺真菌組成物および肥料組成物において有用であると提案されている。例えば、Thizyの米国特許第4,075,324号および同第4,119,724号(これは、植物用殺真菌薬としての、亜リン酸、その無機および有機塩を記載する);Dueretの米国特許第4,139,616号(亜リン酸エステルおよびその塩の基づく殺真菌組成物を記載する);Lacroixらの米国特許第4,542,023号(浸透移行性および接触性の静真菌活性および殺真菌活性を有するような有機亜リン酸誘導体を記載する);Horriereらの米国特許第4,698,334号、同第4,806,445号および同第5,169,646号(アルキルホスホネートに基づく殺真菌組成物を記載する);Barletの米国特許第4,935,410号および同第5,070,083号(真菌剤アルミニウムトリスアルキルホスホネート組成物を記載する);およびLovattの米国特許第5,514,200号(植物のための亜リン酸含有酸肥料の調合物を記載する)を参照のこと。(先の米国特許の教示は、本明細書中で参考として援用される。)上記の参考文献(ホスホネート化合物を開示する)は、真菌攻撃に対して、植物、および特にブドウ、柑橘類および果実樹、ならびに熱帯樹を保護するために有効であることが見出されている。
【0010】
ホスホネート(PO3)のみが、代表的に、植物のためのリン(P)の受容可能ではない供給源であると考えられることに注意すべきである。PO3は、植物によって利用されるために、PO4の変換されなくてなならないことが知られている。
【0011】
一旦同化されると、ホスホネート(PO3)は、植物の植物免疫系(phytoimmune system)を増強することが示されている。植物免疫系のホスホネート誘導刺激は、エチレン生成の誘導、次いで、感染部位でのフィトアレキシンの急速な蓄積によって引き起こされる。フィトアレキシンは、抗生物質であり、宿主植物と病原体との間の相互作用から生じる。このフィトアレキシンは、病原体を阻害するために、植物によって合成され、そして植物内に蓄積される。フィトアレキシンは、感染の部位に蓄積して、病害のさらなる蔓延を防止し、それによって病害の症候的な発現を減少させる。
【0012】
過去において、ホスフェート(PO4)は、真菌感染または他の属によってもたらされる感染の病理学的な刺激(acerbation)に対する解答として、見なされていなかった。これは、ホスフェート(PO4)が、主に限定された植物免疫特性のみ、または有害な植物免疫特性を有する肥料としてさえ見られているからである。例えば、米国特許第5,514,200号は、ホスフェート肥料が、植物の根と菌根菌門との間の有益な共生を阻害し、さらに根圏における細菌増殖および真菌増殖(病原性真菌および他の小さな土壌生物の増殖を含む)を促進することを教示する。(第2欄、18〜28行目)。ホスフェート(PO4)はまた、ホスホネート同化作用に対する競合インヒビターであり、従って、真菌攻撃に対して保護するホスホネート(PO3)の能力を阻害すると考えられる。Pegg,K.G.およびdeBoer,R.F.,「Proceedings of the Phosphonic (Phosphorous) Acid Work Shop」Australiasian Plant Pathology,第19巻(4),117および144頁,1990を参照のこと。なおさらに、ホスホネート(PO3)およびホスフェート(PO4)は、「生物学的異物(stranger)」であると考えられ、ホスホネート(PO3)またはホスホネートのエステルの存在が、ホスフェートが関連する酵素反応に対して影響をほとんどまたは全く及ぼさない。Robertson,H.E.およびBoyer,P.D.,「The Biological Inactivity of Glucose 6−phosphonate(PO3),Inorganic Phosphites and Other Phosphites」、Archives of Biochemistry and Biophysics,62,380−395頁(1956)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、首尾よいホスフォネートベースの殺真菌剤についての要求は、真菌または他の属の感染のホスホネート誘導性の病理学的刺激の促進に依存する。より具体的に、Phytophthora infestans感染および植物の破壊を防止する組成物および/または方法を有することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
【0015】
(項目1) Phytophthoraによって引き起こされる、植物における病害を予防および制御するための組成物であって、ここで、該組成物は、有効量の、少なくとも、以下の式を有する第一の塩:
【化1−1】

および以下の式を有する第二の塩:
【化2−1】

を含み、
ここで、R1は、H、K、1〜4の炭素原子を含むアルキル基、ハロゲン置換アルキル基またはニトロ置換アルキル基、アルケニル、ハロゲン置換アルケニル、アルキニル、ハロゲン置換アルキニル、アルコキシ置換アルキル基、アルキル基またはヒドロキシアルキル基によって置換されたアンモニウムからなる群から選択され;
2およびR3は、HおよびKからなる群から選択され;
Meは、K、アルカリ土類金属カチオン、アルミニウム原子、およびアンモニウムカチオンからなる群から選択され;そして
nは、1〜3に等しい整数であり、Meの価数に等しい、
組成物。
(項目2) 前記第一の塩が、K2HPO3、KH2PO3、K3PO3、(NH3)H2PO3および(NH32HPO3からなる群から選択され;そして前記第二の塩が、K2HPO4、KH2PO4、およびK3PO4からなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目3) 前記組成物が、水溶液であり、ここで、前記第一および第二の塩の各々が、約20ミリモルから約5%容積/容積で溶液中に存在する、項目1に記載の組成物。
(項目4) 前記第一の塩が、1重量部に等しく、そして前記第二の塩が0.001重量部と1,000重量部の間に等しい、項目1に記載の組成物。
(項目5) 前記組成物が、Phytophthora infestans種によって引き起こされる病害を予防する、項目1に記載の組成物。
(項目6) 前記植物が、トマトおよびジャガイモ種である、項目1に記載の組成物。
(項目7) 植物において、Phytophthoraによって引き起こされる病害を予防および制御するための方法であって、該方法は、以下:
(a)有効量の、以下の式の第一の塩:
【化3】

および以下の式を有する第二の塩:
【化4】

を含む組成物を形成する工程であって、
ここで、R1は、H、K、1〜4の炭素原子を含むアルキル基、ハロゲン置換アルキル基またはニトロ置換アルキル基、アルケニル、ハロゲン置換アルケニル、アルキニル、ハロゲン置換アルキニル、アルコキシ置換アルキル基、アルキル基またはヒドロキシアルキル基によって置換されたアンモニウムからなる群から選択され;
2およびR3は、HおよびKからなる群から選択され;
Meは、K、アルカリ土類金属カチオン、アルミニウム原子、およびアンモニウムカチオンからなる群から選択され、そして
nは、1と3との間の整数であり、Meの価数に等しい、
工程;および
(b)十分な量の該組成物を、少なくとも1回該植物に適用する工程、
を包含する、方法。
(項目8) 前記第一の塩が、K2HPO3、KH2PO3、K3PO3、(NH3)H2PO3および(NH32HPO3からなる群から選択され;そして前記第二の塩が、K2HPO4、KH2PO4、およびK3PO4からなる群から選択される、項目7に記載の方法。
(項目9) 前記第一の塩が、K2HPO3であり、そして前記第二の塩がK2HPO4である、項目7に記載の方法。
(項目10) 前記組成物が、水溶液を含み、ここで、前記第一および第二の塩の各々が、約20ミリモルから約5%容積/容積で溶液中に存在する、項目7に記載の方法。
(項目11) 前記第一の塩が、1重量部に等しく、そして前記第二の塩が0.001重量部と1,000重量部との間に等しい、項目7に記載の方法。
(項目12) 前記組成物が、Phytophthora生物による感染の前または後に、前記植物に適用され得る、項目7に記載の方法。
(項目13) 前記組成物が、Phytophthora infestansによる感染を予防するために使用される、項目7に記載の方法。
(項目14) Phytophthoraによって引き起こされる、植物における病害を予防および制御するための組成物であって、ここで、該組成物が、有効量の、少なくとも、以下の式を有する第一の塩:
【化5】

および以下の式を有する第二の塩:
【化6】

を含み、
ここで、R1は、H、K、1〜4の炭素原子を含むアルキル基、ハロゲン置換アルキル基またはニトロ置換アルキル基、アルケニル、ハロゲン置換アルケニル、アルキニル、ハロゲン置換アルキニル、アルコキシ置換アルキル基、アルキル基またはヒドロキシアルキル基によって置換されたアンモニウムからなる群から選択され;
2およびR3は、HおよびKからなる群から選択され;
Meは、K、アルカリ土類金属カチオン、アルミニウム原子、およびアンモニウムカチオンからなる群から選択され;そして
nは、1〜3の整数であり、Meの価数に等しい、
組成物。
(項目15) 前記組成物が、水溶液を含み、ここで、前記第一および第二の塩の各々が、約20ミリモルから約5%容積/容積で溶液中に存在する、項目14に記載の組成物。
(項目16) 前記第一の塩が、K2HPO3、KH2PO3、K3PO3、(NH32HPO3および(NH3)H2PO3からなる群から選択され;そして前記第二の塩が、K2HPO4、KH2PO4、K3PO4、(NH32HPO3および(NH3)H2PO3からなる群から選択される、項目14に記載の組成物。
(項目17) 前記第一の塩の量が、1重量部に等しく、そして前記第二の塩の量が0.001重量部と1,000重量部との間に等しい、項目14に記載の組成物。
(項目18) Phytophthora−Phycomycetes、Ascomycetes、および他の真菌病害および細菌病害によって引き起こされる、植物における病害を予防するための組成物であって、該組成物は、有効量の、少なくとも、以下の式を有する第一の塩:
【化7】

および以下の式を有する第二の塩:
【化8】

を含み、
ここで、R1は、H、K、1〜4の炭素原子を含むアルキル基、ハロゲン置換アルキルまたはニトロ置換アルキル基、アルケニル、ハロゲン置換アルケニル、アルキニル、ハロゲン置換アルキニル、アルコキシ置換アルキル基、アルキル基またはヒドロキシアルキル基によって置換されたアンモニウムからなる群から選択され;
2およびR3は、HおよびKからなる群から選択され;
Meは、K、アルカリ土類金属カチオン、アルミニウム原子、およびアンモニウムカチオンからなる群から選択され、そして
nは、1と3との間の整数であり、Meの価数に等しく、
ここで、該第一の塩および該第二の塩が、組み合わされる場合、病害制御が、該組合せた塩の相加効果より、少なくとも100%大きいような相乗効果を有する、
組成物。
【0016】
本発明は、Phytophthora属、より具体的にPhytophthora infestansによる感染およびそれらの徴候を予防する際の使用のための組成物および方法に関する。この組成物は、ホスフェート(PO4)およびホスホネート(PO3)成分から構成され、これらは、組合された場合、Phytophthora、特に、Phytophthora infestansのよる植物の感染の対する実質的な保護を生じる相乗効果を提供する。このようにして、ホスフェートおよびホスホネート成分は、組合されて組成物を形成し得、これは、植物(特に、トマトおよびジャガイモ)へ適用され得、Phytophthora infestansによる感染およびこのような感染による病害を予防する。適用は、乾燥混合物または水溶液のいずれかを使用して達成され得る。
【0017】
Phytophthoraを予防するための好ましい組成物は、ホスホン酸カリウムおよびリン酸カリウムから構成される。なぜなら、これら2つの成分は、組合された場合、Phytophthoraによる感染の実質的な予防を生じる相乗効果を生じることが見出されているからである。感染が予防される比率は、2つの成分が組合された場合、組合された塩の相加効果に比較して、少なくとも100%まで増加される。これら2つの成分は、種々の病害を引き起こす生物による感染および徴候を予防するに十分な量で組合され、この組合された特定の量は、処理される植物の特定の種、処理される特定の病害を引き起こす生物、および組合される特定のホスフェート塩およびホスホネート塩に依存する。
【0018】
この組成物は、少なくとも1回処理されるべき植物に適用されるべきである。1回の適用で十分であるが、複数回の適用をすることが代表的に好ましい。本質的に、Phytophthoraに感染した任意の植物は、最も好ましくはこの組成物をジャガイモ植物およびトマト植物に適用することで処理され得る。この組成物は、Phytophthoraを阻害するだけでなく、環境的に安全で、使用の費用が安く、そして哺乳動物への低い毒性を有することに注意すべきである。
【0019】
好ましくは、この組成物は活性物質として、有効量の、KH2PO3、K2HP03、およびK3PO3からなる群から選択される式の少なくとも第1の塩、ならびにKH2PO4、K2HPO4、およびK3PO4からなる群から選択される第2の塩を農業的に受容可能なキャリアとの混合物で含む。この組成物は、好ましくは水溶液を含み、ここで各塩は、約20ミリモルから約5%容積/容積の溶液で存在する。あるいは、そしてより好ましくは、使用による実際の容積は、21.7重量%のPO4および21.5重量%のPO3に等しい。次いで、このような組成物は2容積%と4容積%との間に希釈され得る。重要なことには、PO3およびPO4は、可溶なままでなければならず、すなわち、多すぎるPO3およびPO4を加えてはならず、そうでなければPO3およびPO4が沈殿する。
【0020】
本発明の実施において有用なリン酸塩はまた、Thizyらへの米国特許第4,075,324号および同第4,119,724号(例えば、第1欄51〜69行から第2欄1〜4行を参照のこと)に教示される有機塩および無機塩を含む。
【0021】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、Phytophthora属により引き起こされる疫病のような病害を予防する際に使用するための組成物および方法に関する。詳細には、本発明は、Phytophthora infestansにより引き起こされる植物の病害の予防における使用のための組成物および方法に関する。この組成物は、ホスフェート(PO4)成分およびホスホネート成分(PO3)成分を含み、最も好ましくはホンスホン酸カリウムおよびリン酸カリウムを含む組成物を使用する。一旦この組成物が形成されると、これは、Phytophthora infestansによる感染およびこの感染に関連する徴候(manifestation)を防止するために植物に適用され得る。この組成物は、乾燥混合物または水溶液のいずれかとして、Phytophthora infestans生物の感染の前に植物に適用され得る。
【0022】
Phytophthora infestansを予防するための組成物を、ホスホネート成分およびホスフェート成分を合わせることにより調製する。任意の種々のホスフェートが使用のために適切であり、これらとしては、K2HPO4、K3PO4、KH2PO4、(NH32HPO4、(NH3)H2PO4、およびこれらの組合せが挙げられる。ホスホネートは、ホスフェートと同様に、任意の種々の組成から選択され、これらとしては、K2HPO3、K2PO3、KH2PO3(NH32HPO3、(NH3)H2PO3およびこれらの組合せが挙げられる。任意のホスフェートおよびホスホネートの成分の組合せは、Phytophthoraの侵襲による感染および徴候が阻害される限り使用され得る。さらに、これらの成分は、キャリア中で適切な溶解度を有する必要があり、そして処理される植物が成長する領域での容易な分布を可能にする成分である必要がある。より好ましくは、ホスホネート成分およびホスフェート成分は、合わされた場合に、Phytophthora infestansを阻害する際に相乗効果を有する。Phytophthora infestans感染の予防に置ける使用のための最も好ましいホスフェート(PO4)成分およびホスホネート(PO3)成分は、K2HPO3およびK2HPO4の組合せである。このように、ホスフェート(PO4)成分およびホスホネート(PO3)成分は、Phytophthora infestansの予防に使用される組成物を形成するために合わせられる。
【0023】
議論された成分は、植物を処理し、そしてPhytophthora生物による感染を予防する際の使用に好ましいが、ホスフェート成分およびホスホネート成分のバリエーションが使用され得る。このように、好ましくは、化合物が殺菌有効量の、少なくとも、以下の式:
【0024】
【化11】

を有する第1の塩、および以下の式:
【0025】
【化12】

を有する第2の塩を含み
ここでR1は、H、K、1〜4の炭素原子を含むアルキル基、ハロゲン置換アルキル基またはニトロ置換アルキル基、アルケニル、ハロゲン置換アルケニル、アルキニル(alkynl)、ハロゲン置換アルキニル(alkynl)、アルコキシ置換アルキル基、アルキルで置換されたアンモニウムおよびヒドロキシアルキルラジカルからなる群から選択され;
2およびR3は、HおよびKからなる群から選択され;
Meは、K、アルカリ土類金属カチオン、アルミニウム原子、およびアンモニウムカチオンからなる群から選択され;そしてnは、1〜3の整数であり、Meの価数に等しい。
【0026】
必要に応じて、この第2の塩は、以下の式:
【0027】
【化13】

であり得、上記の列挙した式の成分がなお適用可能である。
【0028】
これらの成分は、好ましくは適切なキャリアと混合されて処理されるべき植物が成長する領域への分布を促進する。キャリアは、農業的に受容可能であり、水(H2O)が最も好ましい。
【0029】
この組成物の形成方法として、第一にホスホン酸カリウム水溶液を形成することが好ましく、ホスホネート形成は以下の通りである:
3PO3は、反応:PCl3+3H2O > H3PO3 + 3HC1に従って三塩化リンの加水分解により生成される。HClを減圧下のストリッピングにより除去し、そしてホスホン酸(H3PO3)は70%酸溶液として販売される。
【0030】
次いで、ホスホン酸を水酸化ナトリウムにより反応:H3PO3 + KOH > KH2PO3 + H2Oに従って水溶液中で中和して約pH6.5とし、そして11.15lbs./gal.の重量の0−22−21液体を生成する。この溶液は市販されており、そして「Phos−Might」の商品名でFoliar Nutrients,Inc.,Cairo,GA 31728により販売される。
【0031】
ホスフェート(PO4)は、リン酸一カリウム(0−51.5−34)を45%水酸化カリウムと水溶液で反応させて、以下の反応:KH2PO4 + KOH
> K2HPO4 + H2Oに従ってリン酸二カリウムを生成し、これは20℃にて1.394の生成物密度を有し、そして7.6の溶液pHは0−18−20分析を生じる。この溶液は市販されており、そして「K−Phos」の商品名でFoliar Nutrients、Inc.、Cairo、GA 31724から販売される。
【0032】
ホスホン酸カリウム成分およびリン酸カリウム成分、または他のホスホネート成分およびホスフェート成分が形成した後、これらは混合されてホスホン酸カリウムおよびリン酸カリウム組成物を生成し得る。次いでこの組成物を使用して、Phytophthora属、特にPhytophthora infestansによる感染の予防のために植物を処理する。
【0033】
種々の量の水溶液中の各化合物(例えば、K2HPO3、KH2PO3、K2HPO4、またはKH2PO4)を、作物宿主と病原体の複合体および感染のレベルに依存して、20ミリモル〜5%容積/容積までの範囲の比率で組み合わされる。あるいは、第1の塩の量は、1重量部に等しく、そして第2の塩の量は、0.001重量部と1,000重量部との間に等しい。好ましくは、この組成物は、21.7% K2HPO4および21.5% K2HPO3または11.8% PO4-3および10.7% PO3-2を含み、これらは全て可溶性である。
【0034】
一旦形成されると、この組成物は、この組成物は、種々の植物に適用されて、Phytophthora infestans感染を予防する。好ましい適用方法は、地表用器具または空中用器具のいずれかによる葉への適用であるが、この方法のみに限定されない。噴射または土壌適用はまた、例えば、特定の作物および病原体に依存して効果的であり得る。組成物を水溶液で適用することが好ましいが、他の適用形態(粉塵、流動物(flowable)、水分散性顆粒、顆粒および不活性乳濁液、ならびに油状物を含む)も使用され得る。少なくとも1つが適用されるが、組成物の複数の適用がなされ得る。
【0035】
本発明の組成物は、果実作物、栽培作物、鑑賞作物、樹木、牧草、野菜、穀物、および草花栽培作物、ならびにいくつかの水生作物(クレソンを含む)に対する有用性を有する。Phytophthora infestansにより最も感染しそうな作物は、ジャガイモ(Solanum tuberosum)およびトマト(Lycopersicon esculentum)である。このように、本発明の組成物は、ジャガイモおよびトマト植物を処理してPhytophthora感染を予防する際に特に有用である。
【0036】
以下の実施例は、好ましい濃縮物およびその調合のための技術、ならびに適用方法、使用および試験結果を記載し、この結果は、本発明の濃縮物の、Phytophthora infestansによる攻撃に対して植物を保護する際の効力を実証する。しかし、これらの実施例は、単なる例示として示され、そして実施例においてはいずれも本発明の全体の範囲に対する限定と解釈されるべきではないことが理解されるべきである。実施例において試験された特定の成分を調製し、そして以下のように適用した。
【0037】
実施例1および2の各々において、処理を1ガロン溶液として、完全な被覆を達成するのに十分な量の水で約60psiに維持して、バックパック噴霧器により適用した。全ての処理を、4回反復される無作為の完全ブロック(CRB)設計に帰属される適切な数の実験単位に適用した。
【0038】
実施例において使用される場合、「疫病パーセント」は、枯れ病を示す植物のパーセントを意味する。「植物あたりの病変」は、感染性接種物により引き起こされる特定の植物上の病変の数に関する。「感染した葉の数」は、植物あたりの感染した葉の数に関する。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
ジャガイモ(Solanum tuberosum、Atlanticバリエーション)を、病原体(Phytophthora infestans)で感染させて、適切な処理が、病原体を感染植物から排除するため、そしてより重要なことには、この植物の病原体による感染を予防するために開発され得たか否かを決定した。Phytophthora病原体は、感染植物において疫病を引き起こす。これらの植物を、以下に列挙した組成物で、2回、7日間隔を空けた適用で処理した。植物に添加された接種物の組成を、以下の表に列挙する。植物に最後に接種した1週間(7日間)後、これらの植物(ジャガイモ)を病原体Phytophthora infestansで感染させた。感染性接種物は、1ミリメーター(ml)あたり12,000胞子嚢に等しく、植物あたり20mlを投与した。病原体の遺伝子型はUS−8であり、そして交配型はA2であった。病原体の接種後7日目に、結果を表にまとめ、植物における枯れ病の割合および植物あたりの病変の数を決定した。さらに、植物あたりの感染した葉の数を表にまとめた。結果は以下の通りである:
(疫病観察の要約、FNX温室実験)
【0040】
【表1】

試験を、単一の6インチポットで4回CRB設計で行った。
【0041】
示されるように、ホスホネート(PO3)のみの接種は、枯れ病の制御において良好な結果をもたらした。しかし、より良好な結果は、ホスフェート(PO4)およびホスホネート(PO3)組成物を使用して達成された。(PO4)および(PO3)の組合せは、例外的な枯れ病減少を示し、これは、ジャガイモ枯れ病が、(PO3)および(PO4)から構成される組成物を使用してより良好に制御され得ることを示す。このことは、(PO3)および(PO4)の組合せで相乗効果が達成されるということを示す。
【0042】
(実施例2)
トマト(Lycopersicon esculentum, FL 40)を、病原体Phytophthora infestansで感染させ、適切な処理が、病原体による植物の感染を防止するように開発され得たか否かを決定した。Phytophthora病原体は、感染した植物において疫病を引き起こす。これらの植物を、以下に列挙される組成物で、2回、適用の日を7日間隔を空けて処理した。植物に添加された接種物の組成を、以下の表に列挙する。植物に最後に接種した1週間(7日間)後、これらのトマト植物を次いで病原体Phytophthora infestansで感染させた。感染性接種物は、1ミリメーター(ml)あたり12,000胞子嚢に等しく、植物あたり20mlを投与した。病原体の遺伝子型はUS−17であり、そして交配型はA1であった。病原体の接種後7日目に、結果を表にまとめ、植物における枯れ病の割合および植物あたりの病変の数を決定した。さらに、植物あたりの感染した葉の数を表にまとめた。結果は以下の通りである:
(温室トマト疫病試験)
【0043】
【表2】

良好な結果が、ホスフェート(PO4)およびホスホネート(PO3)組成物を使用して達成された。(PO4)および(PO3)の組合せは、例外的な枯れ病減少を示し、これは、枯れ病が、(PO3)および(PO4)から構成される組成物を使用してより良好に制御され得ることを示す。このことは、(PO3)および(PO4)の組合せで相乗効果が達成されるということを示す。
【0044】
上記の実施例は、本発明の組成物が、1種の溶液の適用を用いて、植物をPhytophthora infestans感染による攻撃に対して保護する際に有用であるということを実証する。
【0045】
本明細書中に引用される全ての参考文献における開示は、参考として援用される。
【0046】
あるいは、組成物を使用して、Phycomycetes、Ascomycetes、および他の真菌病原体、ならびに細菌による感染を予防し得る。
【0047】
従って、ホスホネート(PO3)およびホスフェート(PO4)組成物の使用に関する方法が示されそして記載され、この方法は、植物におけるPhytophthora感染を制御する際の改善された効力を提供し、従って求められる目的および利点を全て満たす。しかし、ホスホネート(PO3)およびホスフェート(PO4)組成物の多くの変更、変形、改変ならびに他の使用および適用が可能であること、そしてまた本発明の精神および範囲から逸脱しないこのようなホスホネート(PO3)およびホスフェート(PO4)組成物の変更、変形、改変ならびに他の使用および適用が、本発明により包含されるとみなされ、これは上記の特許請求の範囲にのみ制限されることは、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Phytophthoraによって引き起こされる、植物における病害を予防および制御するための組成物であって、ここで、該組成物は、有効量の、少なくとも、以下の式を有する第一の塩:
【化1】

および以下の式を有する第二の塩:
【化2】

を含み、
ここで、R1は、H、K、1〜4の炭素原子を含むアルキル基、ハロゲン置換アルキル基またはニトロ置換アルキル基、アルケニル、ハロゲン置換アルケニル、アルキニル、ハロゲン置換アルキニル、アルコキシ置換アルキル基、アルキル基またはヒドロキシアルキル基によって置換されたアンモニウムからなる群から選択され;
2およびR3は、HおよびKからなる群から選択され;
Meは、K、アルカリ土類金属カチオン、アルミニウム原子、およびアンモニウムカチオンからなる群から選択され;そして
nは、1〜3に等しい整数であり、Meの価数に等しい、
組成物。

【公開番号】特開2006−83191(P2006−83191A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361119(P2005−361119)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【分割の表示】特願2001−530939(P2001−530939)の分割
【原出願日】平成12年9月28日(2000.9.28)
【出願人】(502130803)フォリア ニュートリエンツ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】