説明

ホスホロジアミダイト生産方法

極性溶媒中において、三ハロゲン化リンをジアルキルアミンと反応させ、中間体化合物を形成させるステップを含む、ホスホロジアミダイト生産方法。この中間体化合物は次いで、非極性共溶媒の存在下に、ヒドロキシアルキル化合物およびジアルキルアミンと反応させられる。次いで濾過し、固体の副生成物を除去すると、これら2種の溶媒は分離した層を形成する。これは、その上層である非極性溶媒層が高純度ホスホロジアミダイト生成物を含有するので、有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホロジアミダイト生産のための改良方法、このような方法により生産されたホスホロジアミダイト、およびこのようなホスホロジアミダイトの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホロジアミダイト生産は、バイオテクノロジー産業において、益々重要になってきている。ホスホロジアミダイトは、新規抗新生物剤製造において、中間体として使用される。
【0003】
このような産業における使用に適したものであるためには、ホスホロジアミダイトは、高純度でなければならない。このようなホスホロジアミダイトはまた、低濃度のビス(2−シアノエチル)ホスホロジアミダイト(いわゆる「ジエステル」)しか含有してはならない。
【0004】
この不純物は、オリゴヌクレオチド合成における商業的に重要な中間体である2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト合成における重大な副生成物であることが知られている。
【0005】
ホスホロジアミダイトは非常に空気に敏感であり、熱に不安定であり、その精製は今のところ、複雑かつ高コストである。今まで、ホスホロジアミダイトの抽出および精製プロセスはしばしば多段階な合成手順を要し、これは、中間体材料の化学的な単離を要し、高純度ホスホロジアミダイト生成物の単離前に、更なる精製手順を要する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ホスホロジアミダイト生産の前記した短所を改良することを狙いとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、ホスホロジアミダイト生産方法を提供し、本方法は、極性溶媒中において、三ハロゲン化リンをジアルキルアミンと反応させ、中間体化合物を形成させ、次いで、非極性共溶媒の存在下に、ヒドロキシアルキル化合物およびジアルキルアミンと、該中間体化合物を反応させるステップを含む。
【0008】
次いで濾過し、固体の前記副生成物を除去すると、これら2種の溶媒は分離した層を形成する。これは、その上層である非極性溶媒層が高純度ホスホロジアミダイト生成物を含有するので、有利である。その下層である極性溶媒層は、「ジエステル」および他の欲されない副生成物が混入した純粋でない生成物を含有する。該上層は次いで真空に付され、該溶媒を除去し、96%より高い純度を有する所望の生成物が残り、1%未満の「ジエステル」不純物しか含有しない。該生成物の収率は、更なる量の非極性溶媒を用いて該極性溶媒層を再度任意に洗浄することにより、更に上昇され得、純粋な生成物を含有する非極性溶媒溶液を与え、これからは次いで、高純度ホスホロジアミダイトが単離され得る。
【0009】
有利なことには、他に条件がなければ商業的使用には不適であろう「ジエステル」および他の不純物が混入した純粋でない生成物は、前記した溶媒による精製手順により、抽出および精製され得る。ホスホロジアミダイト生成物は好ましくは該非極性共溶媒に可溶である一方、「ジエステル」および他の欲されない極性副生成物は不溶であり、該極性溶媒層中に留まる。
【0010】
好ましくは、前記三ハロゲン化リンは三塩化リンである。あるいは、該三ハロゲン化リンは三臭化リンである。
【0011】
前記ジアルキルアミンは、好ましくはジイソプロピルアミンである。あるいは、該ジアルキルアミンは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、またはジ−tert−ブチルアミンであってもよい。
【0012】
前記極性溶媒は、好ましくはニトリル化合物であり、特にアセトニトリルである。あるいは、該極性溶媒は、プロピオニトリルまたはベンゾニトリルであってもよい。
【0013】
前記ヒドロキシアルキル化合物は、好ましくはヒドロキシプロピオニトリルである。あるいは、該ヒドロキシアルキル化合物は、メタノール、tert−ブチルアルコール、またはホスホロジアミダイト製造に適切であることが知られる他の適切なヒドロキシアルキル化合物であってもよい。
【0014】
アルカンである前記共溶媒は、好ましくはヘプタンまたはヘキサンである。他の適切なC〜C脂肪族炭化水素には、ペンタンが包含される。適切な脂環式炭化水素には、例えばシクロヘキサンが包含される。
【0015】
極性溶媒の非極性溶媒に対する比は、適切には約1:1である。本発明による方法は、式I:
(RN)−P−O(CH−CN (I)
のホスホロジアミダイト化合物を提供し、式中、Rは、C〜Cアルキル、ヒドロキシアルキル、またはオキシアルキル基;nは、1〜4の整数である。
【0016】
式Iの化合物は、好ましくは2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイトであり、式中、Rはイソプロピル、n=2である。
【0017】
本発明はまた、オリゴヌクレオチド合成における、式Iの化合物の使用をも提供する。
【0018】
本発明は今から、以下のように、例示のためのみ記述される。
【実施例】
【0019】
[実施例1]
[共溶媒としてヘキサンを使用した、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイトの製造]
常温において、三塩化リン27.5gを、アセトニトリル(200g)およびジイソプロピルアミン(121g)の攪拌されている混合物へ、1時間に亘って加えた。ヘキサン200gが次いで加えられ、ヒドロキシプロピオニトリル14gが次いで常温において、30分に亘って加えられた。得られた反応混合物が次いで1時間攪拌され、次いで濾過され、生じた固体の副生成物を除去した。濾過された該反応混合物の上層であるヘキサン層が分離され、真空に付され、該ヘキサン溶媒を除去した。これにより、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト20gが残り、これは、31P−NMRにより測定されると、純度96.9%を持つものである。下層であるアセトニトリル層が2時間、更なるヘキサン200gと共に、攪拌された。この再抽出からの上層であるヘキサン層は、31P−NMRにより測定されると、純度98%の生成物を含有する。真空に付した後、更に11gの高純度2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイトが単離された。
【0020】
[実施例2]
[共溶媒としてヘプタンを使用した、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイトの製造]
常温において、三塩化リン27.5gを、アセトニトリル200gおよびジイソプロピルアミン121gの攪拌されている混合物へ加えた。次いで、ヘプタン200gがこの混合物へ加えられ、次いで、ヒドロキシプロピオニトリル14.3gが常温において、30分に亘って加えられた。得られた反応混合物は次いで1時間攪拌され、次いで濾過され、生じた固体の副生成物を除去した。上層であるヘプタン層が次いで分離され、真空に付され、該ヘプタン溶媒を除去し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト22gが残り、これは、31P−NMRにより測定されると、純度96.7%を持つものである。
【0021】
[実施例3]
[低純度2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイトの精製]
低純度2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト60g(31P−NMRにより測定されると、「ジエステル」1.3%を含有し、純度92%)を、アセトニトリル200gおよびヘプタン200gの混合物へ加え、10分間攪拌後、上層であるヘプタン層を分離し、下層であるアセトニトリル層を、更なるヘプタン200gと共に、更に10分間攪拌した。この第2のヘプタン分画を次いで分離し、これら2つのヘプタン分画を次いで一緒にして、真空に付し、ヘプタン溶媒を除去した。2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト30gが、31P−NMRにより測定したところ純度98.3%にて得られた。この抽出されたホスホロジアミダイト化合物は、0.1%未満の「ジエステル」不純物を含有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒中において、三ハロゲン化リンをジアルキルアミンと反応させて中間体化合物を形成させ、次いで該中間体化合物を、非極性共溶媒の存在下に、ヒドロキシアルキル化合物およびジアルキルアミンと反応させるステップを含む、ホスホロジアミダイト生産方法。
【請求項2】
前記三ハロゲン化リンが三塩化リンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三ハロゲン化リンが三臭化リンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ジアルキルアミンがジイソプロピルアミンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ジアルキルアミンが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、またはジ−tert−ブチルアミンからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記極性溶媒がニトリル化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ニトリル化合物がアセトニトリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記極性溶媒がプロピオニトリルまたはベンゾニトリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシアルキル化合物がヒドロキシプロピオニトリルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロキシアルキル化合物がメタノールまたはtert−ブチルアルコールである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記共溶媒がアルカンでありC〜C脂肪族炭化水素である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記共溶媒がアルカンであり脂環式炭化水素である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記極性溶媒の前記非極性溶媒に対する比が1:1である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法により生産され、一般式(I):
(RN)−P−O(CH−CN (I)
を持ち、式中、Rは、C〜Cアルキル、ヒドロキシアルキル、またはオキシアルキル基であり、nは、1〜4の整数である、ホスホロジアミダイト化合物。
【請求項15】
2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイトである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
オリゴヌクレオチド合成における、請求項1に記載の方法により生産された請求項14または15に記載の化合物の使用。
【請求項17】
実施例に関連して実質的に記載される、ホスホロジアミダイト化合物。
【請求項18】
実施例に関連して実質的に記載される、ホスホロジアミダイト生産方法。
【請求項19】
実施例に関連して実質的に記載される、ホスホロジアミダイト化合物の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒中において、三ハロゲン化リンをジアルキルアミンと反応させて中間体化合物を形成させ、次いで該中間体化合物を、非極性共溶媒の存在下に、ヒドロキシアルキル化合物およびジアルキルアミンと反応させるステップを含む、ホスホロジアミダイト生産方法。
【請求項2】
前記三ハロゲン化リンが三塩化リンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記三ハロゲン化リンが三臭化リンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ジアルキルアミンがジイソプロピルアミンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ジアルキルアミンが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、またはジ−tert−ブチルアミンからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記極性溶媒がニトリル化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ニトリル化合物がアセトニトリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記極性溶媒がプロピオニトリルまたはベンゾニトリルである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシアルキル化合物がヒドロキシプロピオニトリルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロキシアルキル化合物がメタノールまたはtert−ブチルアルコールである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記共溶媒がアルカンでありC5〜C9脂肪族炭化水素である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記共溶媒がアルカンであり脂環式炭化水素である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記極性溶媒の前記非極性溶媒に対する比が1:1である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
実施例に関連して実質的に記載される、ホスホロジアミダイト生産方法。

【公表番号】特表2006−512386(P2006−512386A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563342(P2004−563342)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005544
【国際公開番号】WO2004/058779
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(502326923)ローディア コンシューマー スペシャルティーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】