説明

ホック具

【課題】製作が容易で、信頼牲が高く、衣服やカバン類の開閉部の係止用として、操作が容易で、係止時の確実性の高いホック具を提供する。
【解決手段】 雌ホック(F)は、中空ハウジング(5)と、この中空ハウジングの係合表面に形成された長孔(31)と、この中空ハウジング内に設定されるバネ(7)からなる。バネ(7)は、円弧部分(71)及びこの円弧部分の両端から平行に延びる2本の直線部分(72)を有し、円弧部分と直線部分の接点において内側に伸長するくびれ部(73)が形成されている。バネ(7)は、前記長孔(31)に対して、前記円弧部分(71)において固着されている。長孔(31)と針金(7)の重なりにより、係合側から見ると、長孔(31)は直径に大小のあるだるま孔(31a,31b)となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズボン・スカートなどの被服、カバン・袋物類等の開閉部分を閉鎖するための止め具として使用可能なホック具に関する。
【背景技術】
【0002】
ズボンやスカートの腰部の開閉部分を構成する分離した生地の両端には雌雄一対のホック具(例えば、ホック・アンド・バーやスナップボタン)が取り付けられているのが普通である。
【0003】
この種のホック具を使用した被服には、着用者の腹圧のためにホック具の左右方向に強いが、逆方向には弱く外れやすいという欠点がある。
【0004】
この欠点を解消するため、下記特許文献1では、雌ホックをだるま孔形状にしている。これによると、雄ホックをだるま孔の大径部に挿入し、ついで小径部に移動させることで、抜け止めされる。
【0005】
雌ホックには両脚部を略「く」字状に対向内方に折曲した略U字状の線細工バネが内蔵され雄ホックをだるま孔の小径部に移動する際にはだるま孔の連接位置において前記バネの最小隙間部分を弾性拡開させつつ移動し、かつ雄ホックが小径部側に到達した段階では前記バネの最小隙間部分は弾性復帰し、雄ホックの大軽部側への戻りが防止されるため、ホック同士を完全にはめ合い状態に保持することになる。
【0006】
ホックをはずす際には、バネのバネ圧に抗して雄部を大径部側に移動させることで、簡単に取りはずすことができる、とされている。
【特許文献1】実開昭53−1403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1におけるホック雌部の構造は、だるま孔が形成されたプレートと、もう一つのプレートをカシメ加工などのプレス成形により内部中空形状の扇平箱形に成形するとともに、その内側に予め前記バネを内蔵させておき、かつ前記バネの両側を内部壁面に沿って支持することで、弾性を付与している。
【0008】
従って、その構造は複雑であり、組立工数も多くかかり、飛出そうとするバネ圧に抗してバネを内側に保持しつつ、成形を行うなど、安全性を確保するために、製造上も一般的なホック具に比べて極めて面倒であった。
【0009】
また、だるま孔の大径孔からバネが露出しているため、雄ホックを挿入するとき、バネを押し開くために強い力が必要となる。
【0010】
その他、バネが変形し易いこと、雌ホックを糸付けすること、など信頼性の点でも問題があった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、その目的とするところは、製作が容易で、信頼牲が高く、衣服やカバン類の開閉部の係止用として、操作が容易で、係止時の確実性の高いホック具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、雄ホックと雌ホックからなるホック具であって、前記雌ホックは、中空ハウジングと、この中空ハウジングの係合表面に形成された長孔と、この中空ハウジング内に設定されるバネからなり、前記バネは、円弧部分及びこの円弧部分の両端から延びる2本の直線部分からなり、前記円弧部分と前記直線部分の接点において内側に伸長するくびれ部が形成されており、前記バネは、前記長孔に対して、前記円弧部分において固着されており、前記長孔と前記バネの重なりにより、係合側から見ると、直径に大小のある長孔(だるま孔)が形成されていることを特徴とする(第1項)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、雌ホックはだるま孔を有するため、雄ホックをだるま孔の大径部に挿入し、ついでくびれ部を経由して小径部に移動させることで、しっかりと抜け止めされる。そのため、雄ホックが嵌めやすく、嵌った後では外れにくいという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
好ましくは、前記長孔と前記バネの重なったとき、係合側から見ると、前記長孔から、前記バネの前記くびれ部と、前記2本の直線部分だけが露出するものとする(第2項)。この構成により、雌雄ホック具の最初の係合にバネの抵抗が少なくなり、係合がスムーズなものとなる。
【0015】
好ましくは、前記雌ホック及び前記雄ホックの双方とも、生地の裏側から打ち込まれる支持材によって生地に固定される(第3項)。この構成により、雌雄ホツク具を糸付けしなくても済むようになり、作業性が向上すると共に、ホック具の動作が安定したものとなる。
【0016】
別な構成では、前記雌ホック及び前記雄ホックの双方を生地に固定させるため、これらのホックから爪を生地に突き立て、生地の裏側で、穴あき金属板を介して、爪を倒伏させてもよい。
【0017】
好ましくは、前記雌ホックの回転防止のため、前記中空ハウジングの生地側に回転防止手段を設ける(第4項)。回転防止手段は、例えば小突起である。この構成により、雌ホックの自由回転が阻止され、ホック具の動作が安定したものとなる。
【0018】
好ましくは、前記バネの円弧部分は、前記長孔の縁部を起立させた爪部によって前記長孔に固着され、前記バネの2本の直線部分は、自由端となっている(第5項)。この構成により、バネの位置がしっかり固定され、ホック具の動作が安定したものとなる。
【実施例1】
【0019】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。
【0020】
図1は、雌雄のホック具を部品毎に展開して示した斜視図である。図2は、各部品の位置関係を示す断面図である。図3は、雌ホック下部(係合側)であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は底面図である。図4は、雌ホック上部(生地側)であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は底面図である。図5は、雄ホック本体であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。図6は、雌ホック支持材又は雄ホック支持材であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。図7は、使用状態を示す断面図である。
【0021】
図1及び2に示すように、このホック具は雌ホックFと雄ホックMからなり、それぞれ生地1,2に固着されている。
【0022】
雌ホックFは、図1〜4に示すように、円筒状下皿3と円筒状蓋4が相互にかしめられて形成される中空ハウジング5(図2)であり、生地1を介して裏側から支持材6を打ち込むことによって生地1に固着されている。
【0023】
図1及び図4に最もよく示されるように、円筒状蓋4の表面(生地との接触面)には、支持材6を受容するための中心孔41が1個と、不用意に回転しないようにするための、回転防止用の突起42が複数個(図1では8個)設定されている。
【0024】
円筒状下皿3の表面(係合表面)には、図3(a)(c)に示すように、雄ホックMを受容するため、長孔31が形成されている。長孔31の縁部のナイフエッジを避けるために縁部は内側に向けてカール加工しておくことが好ましい。後記するように、この長孔31とバネ7により、直径に大小のあるだるま孔が形成されるが、この長孔31単独でも、直径に大小のあるだるま孔としておくことが好ましい。
【0025】
その長孔31に沿って、円筒状下皿の中にバネ7が設定されている。バネ7は、円弧部分71と、この円弧部分の両端から平行に延びる2本の直線部分72からなり、円弧部分71と直線部分72の接点において内側に伸長するくびれ部73が形成されている。このバネ7は、前記長孔31から起立して形成された爪32を倒伏させることにより円弧部分71において固定されている。
【0026】
長孔31とバネ7の重なりにより、係合側から見ると、図3(c)に示すように、直径に大小のあるだるま孔31a,31bが形成されている。このとき、長孔31から、バネ7の前記くびれ部73と、前記2本の直線部分72だけが露出する。
【0027】
雄ホックMは従来のものと同様であり、図5に示すような、雄ホック本体8は、円柱状の突起81と裾部82を有する。雌ホック本体8は、図6に示すように支持材9を打ち込むことによって生地2の裏側から固定される。支持材9は、脚部91と裾部92からなる。図6の支持材9は、雌ホックFを固定するのにも使用可能である(図1及び図2参照)。
【0028】
この雌雄ホックF,Mを使用して衣服等の開閉部分を閉鎖するには、図7に示すように、だるま孔の大径孔31aに雄ホックMの突起81を挿入し、小径孔31bへずらすだけでよい。開閉部分を開放するにはその逆の手順による。この移動に際して、必ずバネ7のくびれ部73を経由するため、雄ホックMの進入時及び後退時にはくびれ部73が抵抗を与え、そこを越えると安定する。この操作において、大径孔31aには障害物がないため、雄ホックMの挿入・離脱が容易である。
【0029】
上記説明から明らかなように、雌ホックFの取付方向は重要であり、不用意に自由回転してはならない。前記した回転防止用の突起42はこの目的で設けられたものである。図示しないが、同じ目的で、雌ホックから爪を生地に突き立て、生地の裏側で、穴あき金属板を介して、爪を倒伏させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】雌雄のホック具を部品毎に展開して示した斜視図である。
【図2】各部品の位置関係を示す断面図である。
【図3】雌ホック下部(係合側)であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は底面図である。
【図4】雌ホック上部(生地側)であり、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は底面図である。
【図5】雄ホック本体であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図6】雌ホック支持材又は雄ホック支持材であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図7】使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
F 雌ホック
M 雄ホック
1,2 生地
3 円筒状下皿
31 長孔
31a 大径孔
31b 小径孔
32 爪
4 円筒状蓋
41 中心孔
42 突起
5 中空ハウジング
6 支持材
7 バネ
71 円弧部分
72 直線部分
73 くびれ部
9 支持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ホック(F)と雄ホック(M)とからなるホック具であって、
前記雌ホック(F)は、中空ハウジング(5)と、この中空ハウジングの係合表面に形成された長孔(31)と、この中空ハウジング内に設定されるバネ(7)からなり、
前記バネ(7)は、円弧部分(71)及びこの円弧部分の両端から延びる2本の直線部分(72)を有し、前記円弧部分と前記直線部分の接点において内側に伸長するくびれ部(73)が形成されており、
前記バネ(7)は、前記長孔(31)に対して、前記円弧部分(71)において固着されており、
前記長孔(31)と前記バネ(7)の重なりにより、係合側から見ると、前記長孔(31)は直径に大小のあるだるま孔(31a,31b)となっていること
を特徴とするホック具。
【請求項2】
前記長孔(31)と前記バネ(7)が重なったとき、係合側から見ると、前記長孔(31)から、前記バネの前記くびれ部(73)と、前記2本の直線部分(72)だけが露出している請求項1記載のホック具。
【請求項3】
前記雌ホック(F)及び前記雄ホック(M)の双方とも、生地の裏側から打ち込まれる支持材(6,9)によって生地(1,2)に固定されている請求項1又は2記載のホック具。
【請求項4】
前記雌ホック(F)の前記中空ハウジング(5)の生地側に回転防止手段(42)を設けた請求項1ないし3のいずれかに記載のホック具。
【請求項5】
前記バネの円弧部分(71)は、前記長孔の縁部を起立させた爪部(32)によって前記長孔(31)に固着され、前記バネの2本の直線部分(72)は、自由端となっている請求項1ないし4のいずれかに記載のホック具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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