説明

ホットメルト付き調整枠材

【課題】製造工程数、工程内作業を簡略化でき、脱落し難く、材料に無駄が発生しない緩衝部材を設けた調整枠材を提供する。
【解決手段】建物の躯体Bに形成された開口部Rに組付けられる枠材10と、その枠材10の外周面部に、先端部が前記枠材10から突出した状態で伸縮自在に埋設され、伸縮して先端面を前記躯体Bに当接することによって前記枠材10と躯体Bとの間隔Gを調整する調整具20と、を備える調整枠材において、前記調整具20の先端部を、ホットメルト30を溶融状態で供給し硬化させることにより被覆し、緩衝材として機能させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の躯体に形成した開口部に、枠材を組付ける際に、躯体との間隔を調節する調整具が用いられ、当該調整具の先端部に緩衝機能を有するホットメルトを設けた調整枠材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、住宅をはじめとする建築物の躯体に形成した開口部に、枠材を組付ける際には、薄い板材を多数準備しておき、枠材を組付けた後に、躯体と枠材との間の隙間に充填することにより、両者の間隔を調整していた。
【0003】
しかし、こうした手法では、ドアの吊り込みによる形状変化や、枠材の経年寸法変化等によって、開口部が変形してドアの開閉に不具合が生じ易いといった問題があり、また、施工も面倒で熟練者による作業を必要としていた。
【0004】
こうした点に鑑み、近年では、薄い板材を使用する代わりに、枠材に伸縮自在の調整具を埋設する手段が考えられている。この調整具は、枠材と分離した状態で建築現場に搬入することもできるが、工場で枠材に調整具を埋設して出荷すれば、建築現場での手間を省くことができるため、通常、そのように行っている。
【0005】
この調整具は、枠材から突出しない状態で工場から出荷することが望ましい。突出していると、輸送中や施工時に他の建材等に衝突して損傷するおそれがあるからである。
しかし、実際には、調整具を完全に埋設するだけの厚みを持たない枠材があり、その場合は、調整具の先端部が突出してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、枠材の全体をポリエチレンフォームのシートで梱包する方法が行われていたが、多くのポリエチレンフォームシートが必要であり、無駄が多かった。
【0007】
また、最近では、図7および図8に示すように、調整具の突出部分だけを被覆するように小型のポリエチレンフォーム製緩衝シート材40を準備し、これを工場出荷時に調整具20の突出している先端面に貼着する方法が採用されている。
この方法は、ポリエチレンフォームの使用量を大幅に減少させ、梱包費の削減を図ることができるものの、次のような問題がある。
【0008】
(1)製造工程数、工程内作業が煩雑でコストが嵩む。
まず、緩衝材製造工場にて、所定厚のポリエチレンフォームのシートを製造し、裏面に粘着材を塗布する。次に、粘着材塗布面に離型紙を貼着し、所定寸法に裁断して、小型で四角形状の緩衝シート材40とする。
それら緩衝シート材40を枠材製造工場に搬送し、一枚づつ離型紙41を剥がして、調整具20の先端面に貼付けるといった面倒な作業を必要とする(図7参照)。
(2)輸送中や取扱い中に脱落し易い。
緩衝シート材40は調整具20の先端面に貼付けるが、この先端面には、通常、複数の組付突起20aが存在しているので密着状態で貼り付けることができず、剥がれて脱落し易い(図8参照)。
(3)緩衝シート材に無駄が発生する。
緩衝シート材40は四角形状であり、調整具20は通常円形状であるため、緩衝シート材40を小さく形成してもその周囲が調整具20の先端外周から突出し、無駄が発生する。
【0009】
(4)緩衝材を除去せずに枠材を組付けると不具合を生じる。
緩衝シート材40を調整具20の先端面から除去し忘れると、調整具の先端面に設けられている複数の組付突起20aが躯体に食い込まないので、数本のネジのみで枠材を保持させる状況となり、強度不足で不具合を生じる。
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、製造工程数、工程内作業を簡略化でき、脱落し難く、材料に無駄が発生しない緩衝部材を設けた調整枠材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のホットメルト付き調整枠材(1)は、建物の躯体(B)に形成された開口部(R)に組付けられる枠材(10)と、その枠材(10)の外周面部に、先端部が前記枠材(10)から突出した状態で伸縮自在に埋設され、伸縮して先端面を前記躯体(B)に当接することによって前記枠材(10)と躯体(B)との間隔(G)を調整する調整具(20)と、を備える調整枠材において、前記調整具(20)の先端部を、ホットメルト(30)を溶融状態で供給し硬化させることにより被覆し、緩衝材として機能させたことを特徴とする。なお、被覆されたホットメルト(30)は、自然冷却または強制冷却によって固化する。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記調整具(20)を、前記枠材(10)の外周面部に埋設して固定され、内周面に螺条を有する略ナット状の固定部材(21)と、前記固定部材(21)に螺合する略ボルト状で、軸方向に沿って、前記枠材(10)を躯体(B)に固定するためのネジ(S)が挿通する挿通孔(23)を有し、先端部が前記枠材(10)の外周面から突出する伸縮部材(22)と、で構成し、前記挿通孔(23)の先端部分を含む前記伸縮部材(22)の先端部を、前記ホットメルト(30)で被覆してなることを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記挿通孔(23)の先端から略中間部分にかけての部分を、前記ネジ(S)の直径より大きい孔部とし、ネジ(S)の外周面と挿通孔(23)との間に隙間を形成してなることを特徴とする。
【0014】
またさらに、請求項4に記載の発明は、前記ホットメルト(30)を、ネジ(S)を前記挿通孔(23)から躯体(B)にねじ込んだ際に発生する熱によって軟化する融点の低いものとしてなることを特徴とする。
【0015】
なお、カッコ内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載のホットメルト付き調整枠材によれば、建物の躯体に形成された開口部に組付けられる枠材と、その枠材の外周面部に、先端部が枠材から突出した状態で伸縮自在に埋設され、伸縮することによって先端面が躯体に当接して枠材と躯体との間隔を調整する調整具と、を備える調整枠材において、調整具の先端部を、ホットメルトを溶融状態で供給し硬化させることにより被覆し、緩衝材として機能させたので、次の作用効果を発揮する。
【0017】
(1)製造工程数、工程内作業を簡略化できコストを削減できる。
従来、緩衝材製造工場に設けていた工程、作業が全て不要となる。
また、枠材製造工場においても、自動化が容易であり、手作業が不要となる。枠材に埋設した調整具の先端部に溶融状態のホットメルトを供給し、当該先端部を被覆する工程のみを設ければ良くなる。
(2)輸送中や取扱中に脱落せず、緩衝効果に優れる。
ホットメルトは溶融状態で供給され、固化するので、調整具の先端部に強固に付着する。この際、当該調整具の先端面に複数の組付突起が存在しても、その間部分に流入して付着する(図6参照)。従って、他の枠材等に接触しても脱落せず、緩衝効果に優れる。
(3)材料に無駄が生じない。
このホットメルトは溶融状態で調整具の先端部に供給されるので、当該先端部の面積に応じた量のみを使用することができる。従って、ホットメルトに無駄が生じない。
【0018】
(4)ホットメルトを除去せずに枠材を組付けても不具合を生じにくい。
ホットメルトを調整具の先端面から除去し忘れても、ホットメルトは、硬化後も軟らかいので調整具の先端面に設けられている複数の組付突起が比較的躯体に食い込みやすく、また、粘度があり躯体に対して滑りづらいため、不具合を生じにくい。
【0019】
また、請求項2に記載のホットメルト付き調整枠材によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、調整具を、枠材の外周面部に埋設して固定され、内周面に螺条を有する略ナット状の固定部材と、その固定部材に螺合する略ボルト状で、軸方向に沿って、枠材を躯体に固定するためのネジが挿通する挿通孔を有し、先端部が枠材の外周面から突出する伸縮部材と、で構成し、挿通孔の先端部分を含む伸縮部材の先端部を、前記ホットメルトで被覆したので、ホットメルトの輸送中等における脱落をより確実に防止することができる。
【0020】
すなわち、溶融したホットメルトは挿通孔の先端部分にも侵入して固化するので、伸縮部材により強固に組付き、よって脱落し難い。
【0021】
さらに、請求項3に記載のホットメルト付き調整枠材によれば、請求項1および2に記載の発明の作用効果に加えて、挿通孔の先端から略中間部分にかけての部分を、前記ネジの直径より大きい孔部とし、ネジの外周面(ネジ山の最高部)と挿通孔(内壁)との間に隙間を形成したので、この挿通孔にネジを挿通して躯体にねじ込む際に、緩衝材を除去せずに枠材を組付けた場合や、伸縮部材の先端部を被覆したホットメルトは除去したが挿通孔の先端部分に充填されているホットメルトが残ってしまった場合にも、挿通孔の先端部分に充填されているホットメルトのうち、不要なものを、ネジの外周面と挿通孔との間に形成された隙間から排出することができる。
【0022】
ちなみに、この隙間を形成しないと、挿通孔に充填されているホットメルトが伸縮部材と躯体との間に移動し易くなり、施工不良が発生する可能性がある。隙間を形成したことによって、施工不良の発生を未然に防ぐことができる。
また、伸縮部材の先端部を被覆したホットメルトを除去した後にも、挿通孔の先端部分に充填されているホットメルトが残るように、ホットメルト、調整具の材質、挿通孔の寸法等の仕様を選択すれば、挿通孔に挿通したネジの緩みを防止する作用を意図して付与することもできる。この調整枠材は、伸縮部材の挿通孔にネジを挿通して躯体にねじ込むが、ねじ込み後は、挿通孔の先端部分に充填されているホットメルトがネジの外周面と挿通孔との間に密に充填された状態となり、ネジの緩みを防止するのである。
【0023】
またさらに、請求項4に記載の調整枠によれば、請求項1乃至3に記載の発明の作用効果に加えて、ホットメルトを、ネジを挿通孔から躯体にねじ込んだ際に発生する熱によって軟化する融点の低いものとしたので、挿通孔に挿通したネジを躯体にねじ込む際に十分に溶融し、不要なものは大径部から容易に排出され、また、ねじ込み完了後は固化してネジと挿通孔との間に密着状態で接着する。これにより、施工不良の発生をより未然に防ぎ、ネジの緩みをさらに効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1乃至図4を参照して、本発明の実施形態に係るホットメルト付き調整枠材1について説明する。
図1は、本実施形態に係る調整枠を躯体Bに組付けた状態を示す正面図である。図2乃至図4は、本実施形態に係る調整枠を示す部分断面図であり、そのうち、図2はネジSを挿通孔23に挿通し始めた状態、図3はネジSを躯体Bにねじ込み始めた状態、図4はネジSを躯体Bにねじ込んだ状態を示す。従来例で示したものと同一部分には同一符合を付した。
【0025】
このホットメルト付き調整枠材1は、主に枠材10、調整具20およびホットメルト30で構成される。この実施形態では三本の調整枠材1を、躯体Bに形成したラフ開口部R(枠材10によって形成される開口部よりやや大きく設定した開口部)の左右両端部および上端部に組付けることによって開口枠を形成する。この調整枠材1は、単体として施工現場に輸送することもできるし、工場で開口枠に組み立てた後、施工現場に輸送することもできる。
枠材10は、調整枠材1の本体部を構成して、建物の開口部を形成する。
【0026】
調整具20は、樹脂製の固定部材21と金属製の伸縮部材22とで構成される。
そのうち、固定部材21は枠材10の外周面部(側面部または上面部)に埋設して固定され、内周面に螺条を有する略ナット状である。この固定部材21の外周面には、枠材10からの抜け出しを防止するための係合突条21aを複数周設し、先端部には枠材10との組付き位置を決定するための鍔片21bを周設している。
【0027】
また、伸縮部材22は、固定部材21に螺合する略ボルト状で、中心部の軸方向に沿って挿通孔23を形成している。この挿通孔23には、枠材10を躯体Bに固定するためのネジ(木ネジ)Sが挿通する。なお、挿通孔23は、先端からそのほぼ中間部分にかけての部分を、ネジSの直径より大きい孔部(小径部)とし、ネジSの外周面と挿通孔23との間に隙間を形成してなる。また、略中間部分から後端にかけての部分を、その小径部より径の大きい大径部23aとしている。また、伸縮部材22の先端面には、躯体Bに滑ることなく強固に組付けるために複数の組付突起20aを突設している。
【0028】
なお、大径部23aの後端部には六角穴23bを形成している。この六角穴23bに六角レンチを差し込んで右回りに回転することによって、伸縮部材22を伸長してその先端面を躯体Bに当接させ、躯体Bと枠材10との間隔Gを調整する。
【0029】
ホットメルト30は、図5に示すように、溶融状態でアプリケーターAから伸縮部材22の先端部に供給され、これにより、図6に示すように、溶融状態のホットメルト30は、当該先端部の外周面を被覆し、また、挿通孔23の先端部分に侵入する。このホットメルト30は、ネジSを、挿通孔23から躯体Bにねじ込んだ際に発生する熱によって軟化する融点の低い樹脂からなり(融点が65〜70℃程度)、軟質である。
【0030】
上記構成とした本実施形態に係る調整枠は、ホットメルト30を、枠材製造工場において、伸縮部材22の先端部に設けることができる。
ホットメルト30は、施工現場では、基本的に、調整具20の先端面から除去されるが、たとえ除去し忘れても、ホットメルト30は、硬化後も軟らかいので調整具20の先端面に設けられている複数の組付突起20aが比較的躯体Bに食い込みやすく、また、粘度があり躯体Bに対して滑りづらいため、不具合を生じにくい。
【0031】
また、ホットメルト30は溶融状態で伸縮部材22の先端部に供給され、その後固化して強固に密着するので、他の枠材10等に接触しても脱落しない。この伸縮部材22の先端面には複数の組付突起20aが設けられているが、溶融状態のホットメルト30はその組付突起20aに密着した状態で当該先端面に密に付着し、また、このホットメルト30は伸縮部材22の挿通孔23にも充填されるため、当該伸縮部材22に強く組付くことができるからである。
【0032】
また、このホットメルト30は溶融状態で調整具20の先端部に供給されるので、当該先端部の面積に応じた量のみを使用することができ、ホットメルト30に無駄が発生しない。
また、このホットメルト30は、ネジSの外周面と挿通孔23との間に密に充填された状態となるので、ネジSの緩みが防止される。
さらに、挿通孔23に、ネジSの直径より大きい孔部(小径部)を形成しているので、ネジSを躯体Bにねじ込む際に、その孔部とネジSの隙間から余分なホットメルト30が排出され(図3参照)、施工不良の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態に係る調整枠を躯体に組付けた状態を示す正面図である。
【図2】本実施形態に係る調整枠を拡大して示す部分断面図である(ネジを挿通孔に挿通し始めた状態)。
【図3】本実施形態に係る調整枠を拡大して示す部分断面図である(ネジを躯体にねじ込み始めた状態)。
【図4】本実施形態に係る調整枠を拡大して示す部分断面図である(ネジを躯体にねじ込んだ状態)。
【図5】本実施形態に係る調整枠において、ホットメルトを供給する状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図6】本実施形態に係る調整枠において、ホットメルトを供給した後の状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図7】従来例において、緩衝シート材を貼り付ける状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図8】従来例において、緩衝シート材を貼り付けた後の状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ホットメルト付き調整枠材
10 枠材
20 調整具
20a 組付突起
21 固定部材
21a 係合突条
21b 鍔片
22 伸縮部材
23 挿通孔
23a 大径部
23b 六角穴
30 ホットメルト
40 緩衝シート材
41 離型紙
A アプリケーター
B 躯体
R ラフ開口部
G 間隔
S ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体に形成された開口部に組付けられる枠材と、
その枠材の外周面部に、先端部が前記枠材から突出した状態で伸縮自在に埋設され、伸縮して先端面を前記躯体に当接することによって前記枠材と躯体との間隔を調整する調整具と、を備える調整枠材において、
前記調整具の先端部を、ホットメルトを溶融状態で供給し硬化させることにより被覆し、緩衝材として機能させたことを特徴とするホットメルト付き調整枠材。
【請求項2】
前記調整具を、
前記枠材の外周面部に埋設して固定され、内周面に螺条を有する略ナット状の固定部材と、
前記固定部材に螺合する略ボルト状で、軸方向に沿って、前記枠材を躯体に固定するためのネジが挿通する挿通孔を有し、先端部が前記枠材の外周面から突出する伸縮部材と、で構成し、
前記挿通孔の先端部分を含む前記伸縮部材の先端部を、前記ホットメルトで被覆してなることを特徴とする請求項1に記載のホットメルト付き調整枠材。
【請求項3】
前記挿通孔の先端から略中間部分にかけての部分を、前記ネジの直径より大きい孔部とし、ネジの外周面と挿通孔との間に隙間を形成してなることを特徴とする請求項2に記載のホットメルト付き調整枠材。
【請求項4】
前記ホットメルトを、前記ネジを前記挿通孔から躯体にねじ込んだ際に発生する熱によって軟化する融点の低いものとしてなることを特徴とする請求項2または3に記載のホットメルト付き調整枠材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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