説明

ホットメルト接着剤

【課題】主に衛生材料等で使用されるポリエチレンフィルムやポリプロピレン不織布等の
弾性体を、低塗布量でも充分に固定できるホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】メルトインデックスが10g/10min以上かつスチレン含有量が25%
以上である分岐型スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体と、アニリン点が1
05℃以下である粘着付与樹脂と、アニリン点が110℃以下かつ環分析によるパラフィ
ン含有率が60%以下である可塑化オイルとを含有するホットメルト接着剤であって、動
的粘弾性(剪断法)で測定した30℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率(G’)が5×1
Pa以下であることを特徴とするホットメルト接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に衛生材料等で使用されるポリエチレンフィルムやポリプロピレン不織布等
の弾性体を、低塗布量でも充分に固定できるホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料用部材として用いられるポリエチレンフィ
ルムやポリプロピレン不織布の接着には、特許文献1で開示されているように、熱可塑性
ブロックポリマーを主成分としたゴム系ホットメルト接着剤や、エチレン−プロピレン−
ブテン共重合体等の合成オレフィンを主成分としたオレフィン系ホットメルト接着剤が用
いられてきた。
【0003】
なかでも、ポリオレフィン系材料に対して優れた接着性を有することや、強粘着、高凝集
力と耐クリープ性が高いことから、ゴム系ホットメルト接着剤が好適に用いられている。
特に紙おむつや生理用ナプキンの中でギャザーと呼ばれる漏れ防止の部位には、素材とし
て、伸縮性を有する弾性体が用いられ、この部位の接着には高い耐クリープ性が要求され
るため、ゴム系ホットメルト接着剤を用いることが多い。
【0004】
しかしながら、ホットメルト接着剤では、たとえゴム系ホットメルト接着剤を用いたとし
ても、充分に高い耐クリープ性を得るためには大量に塗布しなければならなかった。大量
のホットメルト接着剤を塗布すると、高い耐クリープ性でもって弾性体を固定できるもの
の、風合いが硬くなってしまい、紙おむつや生理用ナプキン等の製品にした際にゴワゴワ
とした感触が残る等の問題や、通気性に影響を与える等の問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平4−351689
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、主に衛生材料等で使用されるポリエチレンフィルムやポリプロピレン不織布等
の弾性体を、低塗布量でも充分に固定できるホットメルト接着剤を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、メルトインデックス(以下、MIともいう)が10g/10min以上かつス
チレン含有量が25%以上である分岐型スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合
体(以下、分岐型SBSともいう)と、アニリン点が105℃以下である粘着付与樹脂と
、アニリン点が110℃以下かつ環分析によるパラフィン含有率が60%以下である可塑
化オイルとを含有するホットメルト接着剤であって、動的粘弾性(剪断法)で測定した3
0℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率(G’)が5×10Pa以下であることを特徴と
するホットメルト接着剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、接着剤の成分である、分岐型SBSのMI及びスチレン
含有量;粘着付与樹脂のアニリン点、可塑化オイルのアニリン点及びパラフィン含有率;
を一定の範囲にすることにより、低塗布量でも高い耐クリープ性でもって弾性体を固定で
きることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
上記分岐型SBSは、下記式(1)で示される構造を有するものである。
ただし、(2)、(3)の構造成分を含んでいてもよい。
(1) (S−B)
(2) (S−B)
(3) S−B
式(1)〜(3)においてnは3以上の自然数、Sはポリスチレンブロック、Bはポリブ
タジエンブロック(又はポリイソプレンブロック)、Mは重合鎖が結合している多官能性
化合物残渣又は残基(カップリング剤)である。
【0010】
上記分岐型SBSは、MIの下限が10g/10minである。10g/10min未満
であると、ポリマーの分子量が大きくなるため、カーテンスプレーやスロットスプレー、
スパイラルスプレー、サミットスプレー等の弾性体固定によく使用される塗工方式での塗
工適正が悪くなり、低塗布量で均一に塗布することができない。
【0011】
上記分岐型SBSは、スチレン含有量の下限が25%である。25%未満であると、ポリ
スチレンブロックの凝集力が低すぎて、耐クリープ性が低下し、弾性体固定の性能を充分
発揮できない。ただし、上記分岐型熱可塑性ブロック共重合体が、2種以上のポリマーか
らなる混合物である場合は、スチレン含有量の平均値が25%以上であればよい。
【0012】
また、本発明におけるホットメルト接着剤は、上記分岐型SBSにメルトインデックスが
10g/10min以上かつスチレン含有量が25%以上である分岐型スチレン−イソプ
レン−スチレンブロック共重合体(以下、分岐型SISともいう)を併用してもよい。こ
こで分岐型SISとは、上記分岐型SBSの場合と同様の意味である。
【0013】
上記粘着付与樹脂とは、分岐型SBS又は分岐型SBSと分岐型SISとの混合樹脂(以
下、単に混合樹脂ともいう)に粘着力を付与する性質を有する樹脂を意味する。本発明に
おける粘着付与樹脂は、アニリン点の上限が105℃である。105℃を超えると、分岐
型SBS及び混合樹脂との相溶性が悪くなり、粘着付与性が発現しにくくなる。
上記粘着付与樹脂としては特に限定されず、例えば、(安定化)ロジン、(水添)石油樹
脂、(水添)テルペン樹脂、(水添)テルペン−石油樹脂の共重合物の樹脂等が挙げられ
る。接着剤の凝集力低下抑制、熱安定性、臭気、色調を考慮すると、水添された粘着付与
樹脂が好ましい。
【0014】
上記粘着付与樹脂の含有量は、分岐型SBS又は混合樹脂100重量部に対して、好まし
い下限が100重量部、好ましい上限が400重量部である。含有量が100重量部未満
であると、粘着性が不足し、被着体への濡れ性が悪くなり、400重量部を超えると、ホ
ットメルト接着剤が硬くなりすぎ、接着し難くなる。
【0015】
なお、本明細書においてアニリン点とは、等容積のアニリンと炭化水素又は炭化水素混合
物とが均一な溶液として存在する最低温度を意味し、JIS K 2256(1998)
「石油製品−アニリン点及び混合アニリン点試験方法」に準拠した方法により測定するこ
とができる。
【0016】
上記可塑化オイルとは、分岐型SBS又は混合樹脂の塑性を向上させる性質を有するオイ
ルを意味する。本発明における可塑化オイルは、アニリン点の上限が110℃、かつ、環
分析によるパラフィン含有物の上限が60%である。アニリン点が110℃を超えるか、
又は、パラフィン含有率が60%を超えると、分岐型SBS又は混合樹脂との相溶性が悪
くなり充分な可塑効果が得られなくなったり、オイルが経時でブリードアウトしたりする
ことがある。上記可塑化オイルとしては特に限定されず、例えば、パラフィン分、ナフテ
ン分、アロマ分からなるプロセスオイルが挙げられる。
【0017】
なお、本明細書において環分析とは、石油高沸点留分の組成分析に用いられる構造分析の
一種で、Watermanの環分析として知られている分析方法である。
【0018】
上記可塑化オイルの含有量は、分岐型SBS又は混合樹脂100重量部に対して、好まし
い下限が30重量部、好ましい上限が200重量部である。含有量が30重量部未満であ
ると、分岐型SBS又は混合樹脂を充分に可塑化することができず、被着体への濡れ性が
悪くなり、200重量部を超えると、凝集力が低下して充分な耐クリープ性が発現できな
くなる。
【0019】
本発明のホットメルト接着剤は、必要に応じて上記成分の他に、フェノール系やリン系、
硫黄系等の各種熱安定剤;老化防止剤、紫外線吸収剤等の従来公知の添加剤を含有しても
よい。
【0020】
本発明のホットメルト接着剤は、動的粘弾性(剪断法)で測定した30℃、周波数10H
zでの貯蔵弾性率(G’)が5×10Pa以下である。5×10Paを超えると、塗
布や貼り合わせ時の被着材の漏れ性が低下し、本発明の目的とする低塗布量での弾性体固
定機能性能の発現が難しくなる。
【0021】
本発明のホットメルト接着剤を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記熱可
塑性ブロック共重合体、粘着付与樹脂、可塑化オイル及び必要に応じて添加する添加剤を
容器内で加熱撹拌したり、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押し出し機等を用い
て混合したりする方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、主に衛生材料等で使用されるポリエチレンフィルムやポリプロピレン不
織布等の弾性体を、低塗布量でも充分に固定できるホットメルト接着剤を提供することが
できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定
されるものではない。
【0024】
(実施例1〜2及び比較例1〜2)
分岐型SBS又は分岐型SBSと分岐型SISとの混合樹脂、粘着性付与樹脂、及び、可
塑化オイルを表1に示す比率で配合し、バンバリーミキサーで撹拌することにより実施例
1〜2及び比較例1〜2のホットメルト接着剤を製造した。
【0025】
<評価>
紙おむつに主として用いられている天然ゴムと不織布とを得られたホットメルト接着剤を
用いて接着した。
接着方法は、不織布上に140℃カーテンスプレーにてホットメルト接着剤を5g/m
となるように塗布し、オープンタイム(放置時間)3秒後、2倍に延伸させた天然ゴムを
貼り合わせた。これを塗工サンプルとした。
【0026】
得られた塗工サンプルを1日放置した後、20℃の雰囲気下で、不織布にしわやたるみが
できない状態で、作製した塗工サンプルの両端を固定した。次いで、天然ゴムの長さが2
0cmとなるような任意の2点に油性ペンで印をつけて、この印のところで天然ゴムをカ
ットし、塗工サンプルを1時間放置した後、天然ゴムの長さを測定した。この場合、天然
ゴムと不織布との接着性が不充分であると、天然ゴムが縮んで延伸前の長さに近づく。
測定した値について以下の式より保持率を算出し、下記の評価基準で判定した。
保持率(%)=(1時間放置後の長さ−10)cm×100/(20−10)cm
評価基準:○・・・保持率70%〜100%
△・・・保持率50%〜70%
×・・・保持率0%〜50%
【0027】
【表1】

【0028】
表1より、熱可塑性ブロック共重合体として、分岐型SBS又は混合樹脂を用いた実施例
1〜2で調整したホットメルト接着剤により固定した場合には、充分な保持力が得られた

一方、直線型SBSを用いた比較例1で調整したホットメルト接着剤により固定した場合
には、充分な保持力が得られないことが分かった。
また、アニリン点が105℃以上の粘性付与樹脂、及び、アニリン点が110℃以上かつ
パラフィン成分が60%以上の可塑化オイルを用いた比較例2で調整したホットメルト接
着剤により固定した場合には、貯蔵弾性率が大きな値となり、保持力がほとんど得られな
いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、主に衛生材料等で使用されるポリエチレンフィルムやポリプロピレン不
織布等の弾性体を、低塗布量でも充分に固定できるホットメルト接着剤を提供することが
できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトインデックスが10g/10min以上かつスチレン含有量が25%以上である分
岐型スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体と、アニリン点が105℃以下で
ある粘着付与樹脂と、アニリン点が110℃以下かつ環分析によるパラフィン含有率が6
0%以下である可塑化オイルとを含有するホットメルト接着剤であって、動的粘弾性(剪
断法)で測定した30℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率(G’)が5×10Pa以下
であることを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項2】
メルトインデックスが10g/10min以上かつスチレン含有量が25%以上である分
岐型スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有することを特徴とする請求
項1記載のホットメルト接着剤。

【公開番号】特開2006−8947(P2006−8947A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191621(P2004−191621)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】