説明

ホログラフィックディスプレイ装置

【課題】 光学系の面からSLMの性能不足を補うアプローチを採り、現実的なホログラフィックディスプレイとしての実装方式を提案する。
【解決手段】 実施形態によれば、光源と、集光光学素子と、空間光変調器と、集光位置の切替装置と、遮光部とを具備するホログラフィックディスプレイ装置が提供される。集光光学素子は、光源から出力された参照光を集光する。空間光変調器は、2次元配列構造を持ち、集光光学素子から出力された参照光の少なくとも強度及び位相のいずれか一方を画素毎に変調する。切替装置は、集光光学素子から出力された参照光の集光位置を、複数の集光位置におけるいずれかの集光位置に切り替える。遮光部は、複数の集光位置における不要光を除去するために配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ホログラフィックディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムの原理が1940年代に考案されて以来、数十年に渡り研究が続けられてきたホログラフィックディスプレイであるが、その実現には複数の課題が障害として存在している。残念ながら今日に到るまで、書き換え可能なCGH(Computer Generated Hologram;計算機合成ホログラム)ディスプレイは、実用的な形では提供されていない。
【0003】
その理由としては、干渉縞表示のための必要計算量が膨大であること、ホログラム表示用の空間光変調器(以下、「SLM(Spatial Light Modulator)」と呼称)の画面サイズ拡大が困難であること、再生像の観察可能な範囲(視域)が極端に狭いことなどが挙げられる。ここで、必要計算量はSLMの総画素数に比例し、画面サイズはSLMの画素ピッチと画素数で規定され、視域の広さは画素ピッチに対し負の相関を持つことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−513964号公報
【特許文献2】特表2007−518113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記課題の一部はSLMの性能向上(画素ピッチ縮小、画素数増加)により、ある程度の改善は見込まれる。しかし、再生像が観察可能な範囲や画面サイズなどの点で現状の一般的なディスプレイと同等程度の性能を達成するためには、画素サイズは1[μm]以下とし、総画素数は数十億〜数百億画素以上とすることが必要となる。このため、SLMの性能向上を主な拠り所として問題の解決手段とするには、要求されるスペックと現状のスペックとの乖離が余りに大きすぎるというのが実情である。
【0006】
したがって、光学系の面からもSLMの性能不足を補うアプローチを採り、現実的なホログラフィックディスプレイとしての実装方式を提案することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、光源と、集光光学素子と、空間光変調器と、集光位置の切替装置と、遮光部とを具備するホログラフィックディスプレイ装置が提供される。集光光学素子は、光源から出力された参照光を集光する。空間光変調器は、2次元配列構造を持ち、集光光学素子から出力された参照光の少なくとも強度及び位相のいずれか一方を画素毎に変調する。切替装置は、集光光学素子から出力された参照光の集光位置を、複数の集光位置におけるいずれかの集光位置に切り替える。遮光部は、複数の集光位置における不要光を除去するために配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るホログラフィックディスプレイ装置を示す図
【図2】切替装置の具体例を角度可変ミラーとした場合を示す図
【図3】切替装置の具体例を複数の遮光シャッターとした場合を示す図
【図4】再生参照光の視域について説明するための図
【図5】再生参照光の集光について説明するための図
【図6】再生参照光集光位置の切替について説明するための図
【図7】再生参照光集光位置への遮光部の配置を説明するための図
【図8】光学系にハーフミラーを適用した場合を示す図
【図9】遮光部の設計条件を説明するための図
【図10】遮光部の面積を広く確保する場合を説明するための図
【図11】遮光部をメガネのフレーム状に形成する場合を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、光学系の面からもSLMの性能不足を補うアプローチを採り、現実的なホログラフィックディスプレイとしての実装方式を提案する。具体的には、本実施形態は、ホログラフィックディスプレイにおける画面サイズの拡大と、視域の向上、及びそれに伴う不要光の除去に関する。
【0010】
ホログラフィックディスプレイにおいて、画面サイズは、単純には干渉縞表示のためのSLMの画素ピッチ×画素数で規定される。視域の大きさは、SLMからの回折角に相当する。SLMの画素ピッチが縮小すれば回折角、すなわち視域範囲は拡大する。現状のSLMでは視域が極端に狭いことから、観察者から見た見掛け上の画面サイズを拡大するには、画素ピッチを縮小して視域を広げると同時に、画面ピッチの縮小を画素数で補う必要がある。この場合、SLMに必要な画素数が飛躍的に増大することになり、画面のサイズによっては数100k×数100kものSLM画素数が要求されることにもなりかねない。しがたがって、実際の画面サイズの拡大には困難が伴う。
【0011】
極端な画素数の増加無しに観察者から見た画面サイズの拡大は、観察者位置、またはその近傍に集光するような再生参照光によりホログラムの再生を行うことで達成される。つまり、再生のための参照光が観察者の瞳位置、もしくはその近傍に向かって集光するような再生参照光を用いてホログラムを再生するという手法である。この手法を採用した場合、ホログラムからの再生光を観察可能な領域(視域)は観察者の瞳近傍に限定されるものの、SLMの画素ピッチが大きいまま画面サイズを拡大することが可能になる。これは結果として必要画素数の減少に寄与する。
【0012】
この手法単体では観察者から見た画面サイズは大きくなる一方で、集光位置近傍以外での観察は不可能である。また、再生参照光が観察者近傍に照射される場合、不要光である0次光が観察者の目に飛び込み、再生像の観察が困難になる事態が容易に想定される。不要0次光に関して、位相SLM等を使用すれば理想的には不要光は生じないはずであるが、現実には光源波長との間で波面の乱れや波長シフト等により位相ズレが生じることもあり、完全な不要光の除去は難しい場合も多い。
【0013】
そこで本実施形態では、極端な画素数の増加を避けつつ観察者から見た画面サイズの拡大を達成し、それに伴う狭い視域を補い、かつ不要0次光の除去が容易に可能になるようなホログラフィックディスプレイ装置を提供する。
【0014】
狭い視域を拡張するためには、再生参照光の集光位置を時間的に切り替える時分割再生を行うことにより、再生像が観察可能な領域、すなわち視域範囲を増加させる手法が有効である。本実施形態では、再生参照光の照射位置はあらかじめ空間上の固定された位置に複数点定めておき、照射位置を時分割によって切り替えることで視域を拡大する。それと同時に、あらかじめ定められた再生参照光の照射位置に光を反射、吸収、もしくは散乱させるような遮光部を形成することで、不要0次光の除去を容易にする。
【0015】
以下、本実施形態に係るホログラムディスプレイ装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るホログラムディスプレイ装置をその上面から見た図である。同図に示すように、本実施形態に係るホログラムディスプレイ装置において、光源1、参照光の集光装置2、参照光集光位置の切替装置3、空間光変調器(SLM)5、遮光部6が、光軸に沿ってこの順序で配置されている。
【0017】
なお、ディスプレイ装置の構成によっては、光源1、参照光の集光装置2、参照光集光位置の切替装置3、空間光変調器5、遮光部6がそれぞれ複数個配置され、これらの前後関係が入れ替わっても構わない。
【0018】
本実施形態に係るホログラムディスプレイ装置は、図1に示した構成要素に加え、図示していないが、これらが互いに適切なタイミングで連動するよう制御を行うための制御部を備える。この制御部は、選択された参照光集光位置に対応するSLM表示画像を出力するようにSLM5と集光位置の切替装置3との間での切り替え周期を一致させる等、適切な制御を行う。
【0019】
参照光を出力する光源1としては、ホログラムの再生条件から、基本的に波長幅が狭くコヒーレンスの良好な光、すなわちHe−Neレーザーや半導体レーザ(LD)に代表される各種レーザー光源の使用が好ましいが、低価格化、スペックルの抑制効果を目的としてLEDの使用も可能である他、色フィルターとしてダイクロイックミラー等を追加することでハロゲンランプ等の広帯域光を光源1として使用することも可能である。
【0020】
参照光を集光する集光装置2としては、凸レンズやフレネルレンズ等の一般的な集光作用を持つ集光光学素子の他、プリズムや液晶GRIN(Graded IndexあるいはGradient Index)レンズ等が挙げられる。
【0021】
参照光集光位置の切替装置3としては、例えば複数のミラーや液晶シャッターを組み合わせた構成例を想定することができる。同切替装置3は、集光装置2から出力された参照光の集光位置を、複数の集光位置におけるいずれかの集光位置に切り替える。
【0022】
図2に示す構成例は、レンズ等を透過し収束光となった再生参照光を角度可変のミラー4が反射し、これにより任意の位置に集光位置をシフトさせるものである。これには、レンズ等の集光光学素子を減数可能であるという利点が得られる。
【0023】
図3に示す構成例は、複数の再生参照光がSLM5に各々異なる入射角度で入射するような光学系を事前に構築しておき、機械的なシャッター、もしくは液晶シャッターを利用して目的の参照光以外を遮光することで参照光集光位置の選択を行うというものである。光源1aからの光は、参照光の集光装置2aによって集光されて参照光集光位置の切替装置3a(第1の遮光シャッター)に入射する。光源1bからの光は、参照光の集光装置2bによって集光されて参照光集光位置の切替装置3b(第2の遮光シャッター)に入射する。光源1cからの光は、参照光の集光装置2cによって集光されて参照光集光位置の切替装置3c(第3の遮光シャッター)に入射する。参照光集光位置の切替装置3a〜3cからの再生参照光は、各々異なる入射角度でSLM5に入射する。これには、特に液晶シャッターを利用する場合に、機械駆動部を減らせることから長寿命かつ安定した動作が期待できる。
【0024】
SLM5は、2次元配列構造を持ち、集光装置2から出力された参照光の少なくとも強度及び位相のいずれか一方を画素毎に変調する空間光変調器である。遮光部6は、複数の集光位置における不要光を除去するために設けられる。
【0025】
以下、再生参照光の集光による視域の拡大と、これに伴う不要光の問題を遮光部6により解決することについて詳細に説明する。
【0026】
図4は再生参照光と観察可能領域との関係を示している。SLM5の各点から再生された物体光は、それぞれの点における再生参照光の光軸方向を基準として張られる一定の角度範囲、すなわちSLM5による回折角内でのみ観察が可能である。図4において実線は再生参照光の光軸方向を、破線は各点からの再生光の観察できる範囲を示している。
【0027】
すなわち、ある点から出た再生光は観察者1には見えるが、観察者2からは観察することができないということが起こり得る。回折角は光源の波長とSLM5の画素ピッチにより規定されるパラメータであり、平行光を用いて再生を行った場合には、観察者はSLM5から十分に離れた位置から観察しないとSLM5の全面に渡って再生像を観察することができない。この性質のために、画素ピッチが一定の条件下では、SLM5の画面サイズを大きくすればするほど観察者はSLM5から距離を取ることが要求され、観察者から見たSLM5の見掛け上の画面サイズを大きくすることは困難である。
【0028】
この問題を解消する手法として、図5に示すように参照光の集光装置2によって観察者近傍に再生参照光を偏向させることで、SLM5から近距離に位置する観察者からもSLM5の全面に渡る再生像を観察することが可能になる。
【0029】
この場合、視域は参照光集光位置の近傍に限定されるが、参照光集光位置の切替装置3を用いて参照光の集光位置を切り替えることで視域の拡張を図ることが可能である。この場合、集光位置の変化に合わせてSLM5に表示する干渉縞画像を適切なものに切り替えることが必要である。短時間で集光位置及びSLM5の表示画像を繰り返し切り替える時分割再生を行うことで、図6のように複数の視点から同時に大きなサイズの再生像を観察することが可能となる。
【0030】
また、参照光集光位置は、事前に適切に設定される空間上の離散的な複数の固定点とする。これにより後述する0次光の除去が容易になり、また初めに観察者の視点位置が定まるため、必要な視点位置に対応する再生像の干渉縞を事前に計算しておき必要に応じて読みだす、すなわち観察者位置に合わせたリアルタイムでのSLM5の表示画像(干渉縞)の計算処理が不要になる効果も期待できる。
【0031】
なお、この時、観察者位置及び人数を検出することは行わず、あらかじめ設定された複数の集光位置近傍から観察者が再生像を常に観察できるよう、複数の集光位置に時分割で再生参照光を照射しつづけるものとする。後述するが、本開示における参照光の集光位置は数ミリ精度での制御が求められるため、観察者の瞳位置を同精度で検出して参照光集光位置を決定する手法には困難が伴うことが予想される。そのため、あえて観察者位置の検出を用いずに確実な視域の拡大を行うメリットは少なくない。具体的には、観察者位置の検出失敗による再生像の観察不能状態を防止できる他、装置構成及び制御方法の簡素化が期待できる。
【0032】
以下、0次光に関する説明とその対策を述べる。観察者近傍に集光された再生のための参照光自身は一般に「0次光」と呼ばれ、目的とする再生像とは異なる成分であるため、観察者にとっては不要なノイズとなる。この問題を解決するため、図7に示すようにあらかじめ定められた参照光集光位置に0次光の反射、散乱、もしくは吸収を行うための遮光部6を設置し、確実に0次光を除去した上で観察者は参照光集光位置の近傍から再生像を観察する。
【0033】
この遮光部6として使用できる材料には、多様な金属膜(アルミ蒸着膜、クロム蒸着膜など)、誘電体多層膜、不透明な金属板もしくは樹脂プレート、十分な拡散効果を持つ拡散板、液体状もしくは固体状の不透明物体の他、調光ガラスなどに利用される透明電極付きポリマーフィルムなどが候補として挙げられる。特に調光ガラス方式を用いた場合は、参照光の遮光と透過を電気的に切り替え可能な遮光部6を形成することができる。なお、調光ガラス方式に限らず電気的に遮光と透過を切り替え可能な遮光部6を利用すれば、AR(Augmented Reality:拡張現実感)のような実空間と再生像との融合がより自然に行える可能性がある。
【0034】
図8のようにハーフミラー7を利用した光学系を想定した時、遮光部6が透過状態にある時には再生参照光を照射せず、実空間像全体を遮光されること無く直接観察することができる。
【0035】
逆に、再生参照光を照射する場合は遮光部6を遮光状態に切り替え、立体再生像を実空間背景に重畳させて表示する。これを短時間で切り替えて時分割表示することにより、遮光部6が観察者の視界を一部覆うような場合でも常時、実空間像全体を観察することができる。このような違和感の少ない実空間との重ね合わせを実現できるホログラフィックディスプレイ光学系は、ヘッドマウントディスプレイ等にも応用できると考えられる。
【0036】
また、図9に示すように、視域は集光位置、すなわち遮光部6に相当する位置を中心として形成される。参照光照射位置と観察者瞳位置との間の距離が離れると、視域範囲8をより広く取る必要が生じる。視域範囲8はSLM5の回折角に相当し、SLM5の画素ピッチに対して負の相関を持つため、SLM5の画素ピッチを大きく保つ、すなわち画素数一定の条件下で画面サイズを大きく保つためには、可能な限り参照光照射位置に対応する遮光部6の位置が観察者の瞳に近接するよう、遮光部6は各光学系に合わせて適切に配置又は設計されることが必要となる。
【0037】
逆に言えば、集光位置の位置決め精度が充分で無い場合やレンズ収差等により集光スポット径が広がる場合は、画素ピッチの縮小が必要になるが、図10のように遮光部6の面積を広く確保し、集光位置と瞳位置の距離を充分離すことで、より確実に0次光を遮光する手法も有効である。
【0038】
遮光部6の形状に関しては観察者の瞳位置は集光位置近傍に位置する必要があり、また人の瞳の直径がおよそ7[mm]程度であることから、人の視野をできるだけ妨げず、かつ視聴可能な領域を広くとるために、隣接する遮光部6の間隔は瞳径に近く、またその大きさは可能な限り小さくなることが好ましい。そのため、両眼中心を結ぶ線分方向を水平方向と規定すると、少なくとも視野を全て遮光することが無いよう、遮光部6の水平方向長さは7[mm]以下となることが好ましい。
【0039】
またこれらの遮光部6の形成方法は、透明なガラス板、もしくは透明な樹脂板の上に蒸着などで金属膜、誘電体膜を形成する方法、直接調光ガラスを設置する方法、不透明な金属板や樹脂板などを加工して開口部を持つ遮光版を作製する方法、顕微鏡の接眼レンズやメガネなど既存の器具・装置上に、その一部として形成する方法が考えられる。その場合、接眼レンズ、メガネ等に形成された遮光部6の空間上の位置も固定とし、観察者の位置等によって変化することは無い。
【0040】
具体的な使用状況の一例としては、映画館などの観察者位置が比較的固定された条件下で、あらかじめ設置されたメガネ、もしくはゴーグル状の機器を装着して立体再生像を鑑賞もしくは観察するといった状況が想定される。例えば図11の場合では、遮光部6はメガネのフレーム状に形成される。視域範囲は、観察者の片側の瞳径程度まで縮小されていることから、0次光を安定的に遮光しつつ画面サイズを充分に拡大できる効果が見込まれる。また、図11の例において参照光集光位置の位置決め精度が十分で無い場合は、前述した通り遮光部6の面積を拡大することが望ましい。すなわち、遮光部6であるフレームの幅を大きく取り、集光位置と観察者瞳との距離を充分離すといった対策が考えられる。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、再生参照光、すなわち不要0次光の集光位置と遮光部6の位置とを容易に一致させることができ、観察者は集光位置近傍から不要0次光が除去された再生像を観察することが可能になる。
【0042】
したがって、本開示のように参照光の集光装置2によって画面サイズを拡大し、参照光集光位置の切替装置3を用いた時分割再生によって視域の拡張を実現し、参照光集光位置を固定点とする方式を採用し、上述したように遮光部を設ける本実施形態によれば、確実かつ容易に0次光を除去可能なホログラフィックディスプレイ装置を実現することができる。
【0043】
[実施形態の変形例]
(再生参照光の集光装置2と、切替装置3が同一の場合)
上述した実施形態では、参照光の集光装置2と参照光集光位置の切替装置3を別個の装置であることを想定していたが、上記実施形態において、液晶GRINレンズやエレクトロウェッティングセル構造を持つ集光装置のように、参照光の集光装置2自身が参照光集光位置の切り替えを行うための機能を具備しているような素子を使用しても構わない。これにより、装置全体の小型化、コスト低減効果、メカレス機構による装置の簡易化などの諸効果が期待できる。
【0044】
(ヘッドトラッキング機構)
観察者位置を検出するためのセンサー、もしくはカメラによって観察者の瞳位置に最も近い参照光集光位置を選択して照射領域を切り替える。これにより、観察者のいない位置への再生光照射を抑制することができ、光利用効率が向上する。
【0045】
(遮光部6のサイズ)
参照光照射位置に関して、上記実施形態では、これを「観察者近傍」として説明したが、具体的には観察者の瞳端より1[mm]程度の位置に参照光を集光させてもよい。この場合、集光位置を中心とする直径2[mm]程度の円形の遮光部6を設けることにより遮光を行うことが可能である。観察者の瞳位置と参照光集光位置の間の距離と、SLM5の必要画素ピッチとの間には負の相関があるため、SLM5の画素数を変えずに画面サイズを保つ観点からも可能な限り観察者の瞳位置と集光位置の間の距離は短くすることが求められる。
【0046】
なお、遮光部6の形状としては、円形に限らず、矩形に代表される多角形状、もしくは帯状であってもよい。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…光源;
2…参照光の集光装置(集光光学素子);
3…参照光集光位置の切替装置;
4…角度可変のミラー;
5…空間光変調器(SLM);
6…遮光部;
7…ハーフミラー;
8…視域範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照光を出力する光源と、
前記参照光を集光する集光光学素子と、
2次元配列構造を持ち、前記集光光学素子から出力された参照光の少なくとも強度及び位相のいずれか一方を画素毎に変調する空間光変調器と、
前記集光光学素子から出力された参照光の集光位置を、複数の集光位置におけるいずれかの集光位置に切り替える切替装置と、
前記複数の集光位置における不要光を除去するための遮光部と、
を具備するホログラフィックディスプレイ装置。
【請求項2】
前記遮光部は、前記参照光の透過と遮光を電気的に切り替え可能なように構成される請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記遮光部が、金属膜、誘電体多層膜、又は不透明な金属板もしくは樹脂プレートである請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記遮光部の形状が、円形、矩形に代表される多角形状、もしくは帯状である請求項1記載の装置。
【請求項5】
観察者の両眼中心を結ぶ線分方向を水平方向と規定した時、前記遮光部の水平方向の長さが7[mm]以下である請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記遮光部は、適切な観察可能領域を持つように空間上の固定のかつ離散的な点として一つもしくは複数配置される請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記遮光部が複数配置される場合、隣接する遮光部間の距離が、観察者瞳の直径に基づいて定められる請求項6記載の装置。
【請求項8】
観察者位置を検出する検出手段をさらに具備し、
前記切替装置は、検出された観察者の位置に最も近い集光位置への切り替えを行う請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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