説明

ホログラフィック記録装置及び要素ホログラム記録方法

【課題】簡単な光学系で要素ホログラムを形成するホログラフィック記録装置及び要素ホログラム記録方法を提供する。
【解決手段】ホログラフィック記録媒体14の記録層15に対して、その一方の面側から斜めに平面波である参照光を入射し、記録層15を透過した参照光を空間変調して信号光とし、この信号光をフーリエ変換レンズ38により記録層15と参照光との交差する位置に合焦する球面波として、ホログラフィック記録媒体14の他方の面側から記録層15に入射して、参照光と干渉させ、要素ホログラムを記録する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック記録媒体に要素ホログラムを記録するためのホログラフィック記録装置及び要素ホログラム記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、要素ホログラムを用いて3次元画像を表示する技術は良く知られている。この際に、要素ホログラムを記録する技術としては、例えば特許文献1に開示されるように、画像情報を有する物体光の集束光と、参照光の平面波とを、ホログラフィック記録媒体における記録層中で干渉させ、要素ホログラムを形成することが知られている。
【0003】
この特許文献1記載の要素ホログラム形成方法では、レーザ光源から出射した光をビームスプリッタにより、物体光と参照光とに分離し、これらを、ホログラフィック記録媒体の両側から入射して、記録層中で干渉させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−249686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された技術では、ビームスプリッタで分離した物体光と参照光の2光束を、ホログラフィック記録媒体の上下に配置された物体光学系及び参照光学系により記録層の両側から入射させる構成であるために、光学系が複雑になり、且つそれぞれの装置容積も大きくなってしまうという問題点がある。更に、光学系が複雑であるために、光軸のアライメントが容易ではなく、結果として要素ホログラムによる3次元画像の形成が高コストとなってしまうという問題点がある。
【0006】
本発明は、簡単な光学系で、装置容積を大きくすることなく、且つ低コストで要素ホログラムを形成することができるホログラフィック記録装置及び要素ホログラム記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の実施例により上記課題を解決することができる。
【0008】
(1)ホログラフィック記録媒体の記録層に対して、一方の面側から平面波である参照光を斜めに入射させる参照光学系と、前記記録層を透過した参照光を空間変調して信号光とする空間光変調器、及び、前記信号光を、前記記録層と前記参照光とが交差する位置に合焦する球面波とするフーリエ変換レンズを備えた情報光学系と、を有してなり、前記参照光学系と前記情報光学系とは、前記ホログラフィック記録媒体を間にして配置され、平面波である前記参照光と球面波である前記信号光とを前記記録層中で干渉させて要素ホログラムを形成するホログラフィック記録装置。
【0009】
(2)前記情報光学系は、前記記録層を透過した参照光を発散光として反射する凹面鏡と、この凹面鏡により反射された前記発散光を平行光とするレンズとを有し、前記空間光変調器は、前記平行光の光路に配置され、該平行光を信号光に変調するようにされたことを特徴とする(1)に記載のホログラフィック記録装置。
【0010】
(3)前記情報光学系は、前記記録層を透過した参照光を発散光として反射する凹面鏡と、この凹面鏡により反射された前記発散光又はこの発散光から形成された平行光のいずれかを反射するとき空間変調して信号光とする反射型空間光変調器と、を有することを特徴とする(1)に記載のホログラフィック記録装置。
【0011】
(4)ホログラフィック記録媒体の記録層に対して、その一方の面側から斜めに平面波である参照光を入射する過程と、前記ホログラフィック記録媒体を透過した前記参照光を空間変調して信号光とする過程と、前記信号光を、フーリエ変換レンズにより、前記記録層と前記参照光との交差する位置に合焦する球面波として、前記ホログラフィック記録媒体の他方の面側から前記記録層に入射して、前記参照光と干渉させる過程と、を有することを特徴とする要素ホログラム記録方法。
【0012】
(5)前記ホログラフィック記録媒体を透過した前記参照光を空間変調して信号光とする過程は、前記ホログラフィック記録媒体を透過した参照光を、凹面鏡により反射して発散光とする過程と、前記発散光を、前記ホログラフィック記録媒体の他方の面側に向けて反射し、且つ、この反射光を平行光として、空間変調器を透過させて信号光とする過程と、を有してなることを特徴とする(4)に記載の要素ホログラム記録方法。
【0013】
(6)前記ホログラフィック記録媒体を透過した前記参照光を空間変調して信号光とする過程は、前記ホログラフィック記録媒体を透過した参照光を、凹面鏡により反射して発散光とする過程と、前記発散光又はこの発散光から形成された平行光のいずれかを、前記ホログラフィック記録媒体の他方の面側に向けて、反射型空間光変調器により反射して信号光とする過程と、を有してなることを特徴とする(4)に記載の要素ホログラム記録方法。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、光分離素子を用いたりすることなく、簡単に、要素ホログラムを形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係るホログラフィック記録装置を示す光学系統図
【図2】本発明の実施例1に係るホログラフィック記録装置における制御系を示すブロック図
【図3】同実施例1のホログラフィック記録装置の要部を拡大して示す断面図
【図4】本発明の実施例2に係るホログラフィック記録装置の要部を拡大して示す図3と同様の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係るホログラフィック記録装置10は、図1に示されるように、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)のレーザ光を出射するレーザダイオード12R、12G、及び12Bを含むレーザユニット12と、ホログラフィック記録媒体14と、前記3色のレーザダイオード12R、12G、12Bからのレーザ光を参照光として記録層15にその一方の面側(図1において上面側)から入射させ、この入射光の他方の面側(下面側)への透過光を情報が付与された信号光とし、これをホログラフィック記録媒体14の他方の面側(下面側)から記録層15に入射させて参照光との干渉を生じるようにした光学ユニット16と、レーザユニット12及び光学ユニット16を制御するための制御ユニット18と、を備えて構成されている。
【0018】
光学ユニット16は、参照光学系ユニット20と情報光学系ユニット22とから構成されている。参照光学系ユニット20は、レーザダイオード12R、12G、12Bからの出射光の光路上に、これらに対応して配置された参照光学系20R、20G、20Bから構成されている。
【0019】
参照光学系20R、20G、20Bは、それぞれ、レーザダイオード12R、12G、12Bからのレーザ光に対応してレーザダイオード側から、1/2波長板24R、24G、24Bと、偏光フィルタ26R、26G、26Bとを備えて構成されている。
【0020】
又、これら参照光学系20R、20G、20Bは、図1に示されるように、ホログラフィック記録媒体14の記録層15に対して、該ホログラフィック記録媒体14の一方の面側から、斜めに、レーザダイオード12R、12G、12BからのR、G、Bの三色のレーザ光を、平面波の参照光として入射するように構成されている。
【0021】
1/2波長板24R、24G、24Bはそれぞれ、タイミングコントローラ28(説明後述)により駆動されるようになっている。ホログラフィック記録媒体14は、基板14A上にB、R、Gの三色のレーザ光に対応して、B層15B、G層15G、R層15Rをこの順で積層した記録層15を設けたものである。
【0022】
情報光学系ユニット22は、R、G、Bのレーザ光に対応する、情報光学系22R、22G、22Bから構成されている、又、情報光学系22Rは、レーザダイオード12Rから出射して、記録層15を透過した参照光を図1において斜め下向きに反射させる凹面鏡30Rと、この凹面鏡30Rによって反射されて形成された拡散光を図1において上向きに反射する平面鏡32Rと、平面鏡32Rで反射された拡散光を平行光とするコリメータレンズ34Rと、このコリメータレンズ34Rにより形成された平行光の光路中に配置され、該平行光に情報を付与して信号光とする空間光変調器(以下SLM)36Rと、この信号光を、参照光学系20Rにより導かれたレーザダイオード12Rの出射光とR層15Rとの交点に合焦する球面波とするフーリエ変換レンズである対物レンズ38Rとを備えて構成されている。
【0023】
他の情報光学系22G及び22Bは、情報光学系22Rとほぼ同一の構成であり、情報光学系22Rの構成要素である符号30R、32R、34R、36R、38RのそれぞれのRをG又はBに変えて記載し、説明を省略するものとする。
【0024】
ホログラフィック記録媒体14は、X/Yステージ40によって同一平面内で、光学ユニット16に対してX/Y方向に駆動されるようになっている。
【0025】
次に、図1及び図2を参照して、制御ユニット18について説明する。
【0026】
制御ユニット18は、図1に示されるように、システムコントローラ42と、タイミングコントローラ28とから構成されている。
【0027】
レーザユニット12のレーザダイオード12R、12G、12Bに対してレーザパルスコントロール信号を出力して、R、G、Bのレーザ光の発光タイミング、パルス数制御による記録パワーの制御をするようにされている。
【0028】
又、タイミングコントローラ28は、X/Yステージ40に、ホログラフィック記録媒体14のXY平面(上面又は下面と平行な平面)における位置を制御するステージコントロール信号を出力するようにされ、且つ、1/2波長板24R、24G、24Bに対して、これを駆動することによって、レーザ光の記録パワーを設定するパワーセッティング信号を出力するようにされている。
【0029】
システムコントローラ42は、SLM36R、36G、36Bに対して、表示するイメージの信号、即ち、イメージデータ信号を出力するためのシグナルプロセッサ42Aと、このシグナルプロセッサ42A、タイミングコントローラ28及びレーザユニット12を制御するための制御ソフトを有する制御ソフトウェア格納部42Bと、この制御ソフトウェア格納部42Bに対して出力するイメージ信号を格納するイメージファイル42Cと、を備えている。
【0030】
次に、図1、図3を参照して、レーザダイオード12Rから出力されたレーザ光により、R層15Rに要素ホログラムを形成する過程について説明する。
【0031】
レーザダイオード12Rから出力された赤色のレーザ光は、1/2波長板24R及び偏光フィルタ26Rを経て、平面波である参照光となり、ホログラフィック記録媒体14の上面側から記録層15におけるR層15R、更に、G層15G、B層15B、基板14Aを透過して、下面側に出射する。
【0032】
下面側に出射した参照光は、凹面鏡30Rで反射されて、斜め下向きの発散光となり、これが、平面鏡32Rで反射されて、更にビーム径が拡大した状態で、コリメータレンズ34Rにおいて平行光に変換される。
【0033】
この平行光は、SLM36Rにおいて、シグナルプロセッサ42Aからのイメージデータ信号に基づいて、赤色のイメージを形成し、このSLM36Rを通過することによって、前記平行光は情報が付与されて、赤色の信号光となり、この信号光は、フーリエ変換レンズである対物レンズ38Rによって球面波となり、前記参照光がR層15Rを透過する又はR層15Rと交差する点において合焦され、これにより平面波である参照光と、R層15R内で干渉し、ここで要素ホログラムを形成する。
【0034】
レーザダイオード12Gから出力される緑色のレーザ光により、G層15Gに要素ホログラムを形成する過程及びレーザダイオード12Bから出力される青色のレーザ光によってB層15Bに要素ホログラムを形成する過程は、上記R層15Rに要素ホログラムを形成する過程と同一であるので、説明は省略する。
【0035】
R層15R、G層15G及びB層15Bに要素ホログラムを形成した後は、X/Yステージ40により、ホログラフィック記録媒体14をXY平面に沿って移動させ、次の記録ポイントで、前記と同様に順次又は同時にR、G、Bの色の要素ホログラムをR層15R、G層15G及びB層15Bにそれぞれ記録していく。
【0036】
上記ホログラフィック記録媒体14に記録されたホログラム画像を再生する場合は、参照光学系20R、20G、20Bの光路に沿って再生用の白色レーザ光を、記録層15に入射する。
【0037】
白色光は、R、G、Bの3色の光を含む擬似的な平行光であるので、記録時の平面波である参照光の波面に近く、良好なホログラム画像を再生することができる。
【0038】
この実施例1に係るホログラフィック記録装置及び要素ホログラム形成方法では、2光束を用いることなく、1本の光束をホログラフィック記録媒体の一方の面側及び他方の面側から入射させているので、光学系が簡単になり、従って装置容積も小さくすることができる。
【0039】
特に、実施例1では、凹面鏡30R、30G、30Bを用いているので、光路長を長くすることなく、参照光を発散光にすることができる。又、凹面鏡をSLMやフーリエ変換レンズに接近して設けることができ、これによって装置容積を更に小さくすることができる。
【0040】
なお、実施例1では、凹面鏡30R、30G、30Bにより発散光を形成しているが、凹面鏡に代えて、ビームエキスパンダにより参照光のビーム径を拡大してもよい。
【0041】
更に又、実施例1では、1本の光束のみを用いているので、レーザダイオードから出射されたレーザ光は、すべて参照光として記録層15に入射し、記録層15を透過した参照光も、記録層15での減衰の残り全てが信号光として利用できるので、光の利用効率が高い。
【0042】
次に、図4を参照して、本発明の実施例2に係るホログラフィック記録装置50について説明する。
【0043】
このホログラフィック記録装置50は、前記ホログラフィック記録装置10の平面鏡32Rを反射型SLM52Rとし、情報光学系22RにおけるSLM36R及びコリメータレンズ34Rを取り除き、且つ、コリメータレンズ54Rを、凹面鏡30Rと反射型SLM52Rとの間の位置の光路に配置した構成の情報光学系56Rを設けたものである。
【0044】
他の構成は、ホログラフィック記録装置10と同一であるので、同一部分に同一符号を付することにより説明を省略する。なお、図4には、赤色レーザ光に関する情報光学系56Rのみを示しているが、この構成は、緑色レーザ光および青色レーザ光の情報光学系にも適用されるものである。
【0045】
この実施例2では、凹面鏡30Rにより反射された発散光は、コリメータレンズ54Rにより平行光とされてから、反射型SLM52Rに入射し、ここで、ホログラフィック記録媒体14方向に垂直に入射するように反射され、且つ反射の際に、シグナルプロセッサ42Aから入力されたイメージデータによる画像情報が付与されて、平行光は信号光となり、前記実施例1の場合と同様に、記録層15におけるR層15Rに入射して、ここで参照光と干渉し、要素ホログラムを形成する。
【符号の説明】
【0046】
10、50…ホログラフィック記録装置
12…レーザユニット
12R、12G、12B…レーザダイオード
14…ホログラフィック記録媒体
15…記録層
16…光学ユニット
18…制御ユニット
20…参照光学系ユニット
20R、20G、20B…参照光学系
22…情報光学系ユニット
22R、22G、22B、56R…情報光学系
24R、24G、24B…1/2波長板
26R、26G、26B…偏光フィルタ
28…タイミングコントローラ
30R、30G、30B…凹面鏡
32R、32G、32B…平面鏡
34R、34G、34B、54R…コリメータレンズ
36R、36G、36B、52R…空間光変調器(SLM)
38R、38G、38B…対物レンズ(フーリエ変換レンズ)
40…X/Yステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィック記録媒体の記録層に対して、一方の面側から平面波である参照光を斜めに入射させる参照光学系と、
前記記録層を透過した参照光を空間変調して信号光とする空間光変調器、及び、前記信号光を、前記記録層と前記参照光とが交差する位置に合焦する球面波とするフーリエ変換レンズを備えた情報光学系と、を有してなり、
前記参照光学系と前記情報光学系とは、前記ホログラフィック記録媒体を間にして配置され、平面波である前記参照光と球面波である前記信号光とを前記記録層中で干渉させて要素ホログラムを形成するホログラフィック記録装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記情報光学系は、前記記録層を透過した参照光を発散光として反射する凹面鏡と、この凹面鏡により反射された前記発散光を平行光とするレンズとを有し、前記空間光変調器は、前記平行光の光路に配置され、該平行光を信号光に変調するようにされたことを特徴とするホログラフィック記録装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記情報光学系は、前記記録層を透過した参照光を発散光として反射する凹面鏡と、この凹面鏡により反射された前記発散光又はこの発散光から形成された平行光のいずれかを反射するとき空間変調して信号光とする反射型空間光変調器と、を有することを特徴とするホログラフィック記録装置。
【請求項4】
ホログラフィック記録媒体の記録層に対して、その一方の面側から斜めに平面波である参照光を入射する過程と、
前記ホログラフィック記録媒体を透過した前記参照光を空間変調して信号光とする過程と、
前記信号光を、フーリエ変換レンズにより、前記記録層と前記参照光との交差する位置に合焦する球面波として、前記ホログラフィック記録媒体の他方の面側から前記記録層に入射して、前記参照光と干渉させる過程と、を有することを特徴とする要素ホログラム記録方法。
【請求項5】
請求項4において、前記ホログラフィック記録媒体を透過した前記参照光を空間変調して信号光とする過程は、
前記ホログラフィック記録媒体を透過した参照光を、凹面鏡により反射して発散光とする過程と、
前記発散光を、前記ホログラフィック記録媒体の他方の面側に向けて反射し、且つ、この反射光を平行光として、空間変調器を透過させて信号光とする過程と、を有してなることを特徴とする要素ホログラム記録方法。
【請求項6】
請求項4において、前記ホログラフィック記録媒体を透過した前記参照光を空間変調して信号光とする過程は、
前記ホログラフィック記録媒体を透過した参照光を、凹面鏡により反射して発散光とする過程と、
前記発散光又はこの発散光から形成された平行光のいずれかを、前記ホログラフィック記録媒体の他方の面側に向けて、反射型空間光変調器により反射して信号光とする過程と、
を有してなることを特徴とする要素ホログラム記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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