説明

ホログラフィビデオ顕微鏡観察を伴う自動的リアルタイム粒子特徴付け及び三次元速度測定

インラインホログラフィ顕微鏡を使用して、ビデオストリームをフレームごとに分析し、個々のコロイド状粒子の三次元の動きを追跡することができる。システム及び方法は、リアルタイムナノメータ解像度を与えることができると共に、粒子サイズ及び屈折率を同時に測定することができる。ローレンツ・ミー分析と、選択されたハードウェア及びソフトウェア方法との組み合わせを適用することにより、この分析をほぼリアルタイムで実行することができる。効率的な粒子識別方法は、無人ホログラフィ追跡及び特徴付けを実行できるに充分な精度で初期位置推定を自動的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィビデオ顕微鏡観察を伴う自動的リアルタイム粒子特徴付け及び三次元速度測定に係る。
【0002】
この研究は、ナショナルサイエンスファウンデーションによりグラントナンバーDMR−0606415を通してサポートされたものである。米国政府は、このナショナルサイエンスファウンデーショングラントに従う幾つかの権利を所有している。
【0003】
関連特許出願の相互参照:本出願は、2009年1月16日に出願された米国プロビジョナル特許出願第61/145,402号、2008年6月19日に出願された米国プロビジョナル特許出願第61/073,959号、2007年10月30日に出願された米国プロビジョナル特許出願第61/001,023号、及び2008年10月30日に出願されたPCT出願第PCT/US2008/081794号の優先権を主張するものである。これら特許出願の内容は、参考としてここにそのまま援用する。
【背景技術】
【0004】
特に球形のコロイド状粒子のこのような特徴付けは、工業化学、物理及び生物医学分野の多くの観点において重要で且つ蔓延した問題である。次のことを含む種々の特徴付けを遂行するために種々の重要な機能が求められている。1)ビードに基づく分子結合の分析評価、2)フローフィールド測定、3)ホログラムにおける自動粒子画像検出、及び4)粒子特徴のリアルタイム分析。例えば、コヒレントな照明は、それにより生じるホログラフィック画像を量的に解釈することが困難であるために、粒子画像速度測定には慣習的に広く使用されていない。その結果、蛍光収率の測定を使用し、1つの色でのホログラフィ画像を使用してビードに基づく分子結合の分析評価が行われている。しかしながら、このような方法は、非特定の蛍光体結合及び意図しない脱色に対するアーティファクトを排除するために数万個のビードを必要とする従来の分析評価での蛍光ラベリングを要求する。粒子が光学軸に沿って互いに閉塞するときでも、コロイド状粒子のホログラフィビデオ顕微鏡観察画像を使用して、三次元における粒子の中心を位置決めできることが最近立証された。観察された散乱パターンに対する現象モデルを使用する初期の立証では、従来の粒子画像形成方法で得られるものに匹敵する追跡解像度が達成された。これらの研究におけるコヒレントな照明の主たる利益は、従来の画像形成方法に比して作用距離及び焦点深度が著しく拡張されたことである。しかしながら、これらの方法は、不充分であり、リアルタイム分析を遂行できず、多数の特徴付け(上述した4つのような)を遂行することもできない。その結果、上述した特徴付けは、これまで可能にされず、商業的に実現されておらず、又、明確な解決策がなくて問題が続いている。
【発明の概要】
【0005】
それ故、本発明の目的は、ホログラフィビデオ顕微鏡観察を使用して自動的にリアルタイムで球のようなコロイド状粒子を分析するための種々の特徴付け方法及びシステムを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】インラインホログラフィビデオ顕微鏡の一例を示す。
【図1B】サンプルの周りの図1Aの拡大部分である。
【図1C(1)】干渉パターンを示す。
【図1C(2)】種々の測定値を得るためにローレンツ・ミー理論の予想に図1C(1)を適合したところを示す。
【図2】一次元ルックアップテーブル(方形)及び単一精度のGPU加速適合(円)を使用して2.2μm直径のシリカ球の測定されたホログラフィ画像への本発明により遂行される適合に対する処理速度及び相対的エラー(zp)を示すもので、挿入画像は、典型的な201x201ピクセルホログラムを示し、CPU(中央処理ユニット)の単一スレッドで得られた二重精度結果に対してエラーが計算され、その処理速度は、破線で示され、そして滑らかな曲線は、目に対する案内である。
【図3A】3つのコロイド球のオリジナルのホログラフィ画像を示し、重畳された線セグメントは、3つの代表的なピクセルにより投じられる「票(vote)」を示す。
【図3B】3つのコロイド球の変換されたホログラフィ画像を示し、その強度は、票数でスケーリングされ、黒は0を表し、白は800票を表し、重畳される表面プロットは、中間球の変換を示す(スケールバーは、10μmを示す)。
【図4】水中の1.5μm直径のシリカ球に対して推定されるホログラムの平方根エラーを、半径Δαp、屈折率Δnp及び軸方向位置Δzpの関数として示し、曲線は、Δzpによりパラメータ化された最小エラーの経路を指示する。
【図5A】圧力駆動流においてマイクロ流体チャンネルを下流へ移動する500個のコロイド球の次元軌道を通して測定されたホログラフィ粒子画像の速度測定を示し、各球は、ホログラフィスナップショットの1つのフィールドにおける粒子位置を表し、フィールドシーケンスからの特徴は、軌道にリンクされ、グレースケールは、粒子測定速度の範囲を示す。
【図5B】チャンネルの上部及び下部ガラス壁との相互作用により陰影付けされた領域から粒子が除外されるようにして図5Aのデータから得られる垂直方向に沿ったポアズイユ流れプロフィールを示す(破線の曲線は、予想される放物線流れプロフィールへの適合である)。
【図6A(1)】ストリーミング粒子の分布を、水中のサンプルであり続ける商業的ポリスチレン球状粒子に対する観察サイズ及び屈折率の関数として示す。
【図6A(2)】粒子サイズについての図6A(1)からの2D断面図で、他のパラメータの平均値におけるものである。
【図6A(3)】屈折率についての断面図で、他のパラメータの平均値におけるものである。
【図6B(1)】軌道平均半径及び屈折率を平均速度の関数として示す。
【図6B(2)】軌道平均半径及び屈折率を平均速度の関数として示す。
【図7A】ビオチン化ポリスチレン球へのアビジン結合の検出を示すもので、明るい円は、在庫球における測定された粒子半径の確率分布であり、暗い円は、ニュートラアビジンでの培養の後の球のサンプルに対する対応する分布である。
【図7B】粒子の屈折率に対する等価分布であり、矢印は、在庫球の低密度テールから被覆サンプルのピークまでの確率の再分布を指示する。
【図8】本発明の方法を実施するコンピュータシステムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明を実施するために構成されたホログラフィ顕微鏡100が図1Aに概略的に示されている。サンプル110は、真空波長λ=632.8nmで動作するHeNeレーザー(ユニフェーズ5mW)からのコリメートされた線型偏光ビーム120で照明される。又、λ=537のような他のレーザ波長を使用することもできる(5Wのコヒレントベルディ)。サンプル110で散乱された光130は、照明ビーム120の非散乱部分と干渉して、顕微鏡100の焦点又は画像形成平面125にインラインホログラムを形成する。それにより生じるヘテロダイン散乱パターン(図1C(1)を参照)は、顕微鏡の対物レンズ145(Zeiss S Plan Apo 100x油浸漬、開口数1.4)によって拡大され、そして1xビデオ接眼レンズでビデオカメラ135(又はある実施形態では複数のカメラ)(NECTI−324AII)に投影され、これは、101μm/ピクセルのシステム倍率で33msごとに1ms露出を記録する。以下に述べるように、この散乱又は干渉パターンは、ローレンツ・ミー理論(図1C(2)を参照)の予想に適合する。
【0008】
このビデオ信号は、オフライン分析のために30フレーム/秒の非圧縮デジタルビデオストリームとして商業用デジタルビデオレコーダ(Pioneer H520S)に記録することもできるし、又はArvoo Picasso PCI-2SQフレームグラバーで直接デジタル化して、8ビット画像A(r)を発生することもできる。以前に記録されたバクグランド画像B(r)により各画像を正規化すると、光学的列における反射及び欠陥によるスプリアスな干渉縞が排除され、分析のための真の値のアレイa(r)=a(r)/B(r)が与えられる。本発明の実施形態において、640/480アレイの各ピクセルは、ほぼ5ビットの情報を含む。
【0009】
一般化されたローレンツ・ミー散乱理論の結果を使用してa(r)のデータを解釈する。顕微鏡の焦点平面における電界は、入射平面波

と、rpを中心とする球による散乱パターン

との重畳である。そこで、k=2πnm/λは、屈折率nmの媒体における光の波数である。正規化の後に、次のようになる。

散乱関数は、ベクトル球状高調波の級数において拡張される。

一般化されたローレンツ・ミー拡張係数an及びbnは、照明フィールドにおける散乱粒子のサイズ、形状、組成及び配向に依存する。波数kの平面波によって照明される半径aの均質な等方性球については、これらの係数が次数nで急速に減少し、その級数は、多数の項

の後に収斂することが分かる。水中のマイクロメータ規模のラテックス球については、nc≦30である。個々の球の正規化画像は、球の位置rp、その半径a、及びその屈折率nmについて式(1)に適合することができる。
【0010】
散乱係数は、非常に慎重に計算しなければならないが[10、11]、式(2)により表される数字的挑戦は、rpの試行値ごとにa(r)の各ピクセルにおいてベクトル球高調波

及び

を評価する。各球画像は、数万個のピクセルを抱くことができ、関数は、典型的に、各非線型適合の間に数百回評価されねばならない。関連球関数の最も計算効率の良い従来の公式化でも、完全に収斂する適合は、単一のプロセッサでは数秒を要する。
【0011】
本発明の1つの最も好ましい形態は、特定のプログラミングステップに組み合わせてローレンツ・ミー技術を使用してこれらの適合を加速するための方法に関する。以下に示すように、この方法は、問題に対する解決策を明らかにし、これらの解決策がこれまで利用できなかったところで商業的に有効な特徴付けを可能にする。本発明の基準システムの1つは、室温において水中に自由に拡散するマイクロメータ規模のラテックス球より成り、その正規化されたホログラムが図1C(1)に示されている。ここでは、レベンベルグ・マルカンの非線型最小2乗適合ルーチンのMPFIT組の利点を取り入れて、IDLプログラミング言語(ITTビジュアルインフォメーションソルーション、ボールダー、CO)で開発されたソフトウェアでこのような画像を分析する。これら適合は、典型的に、粒子の平面内位置を3nm以内で、その軸方向位置を10nm以内で、その半径を1nm以内で、そしてその屈折率を104の1パーツ以内で生じさせる。適合パラメータの不確実性から得られるエラー推定値は、動的な測定により独立して確認される。
【0012】
正規化されたホログラフィ画像に式(1)を適合させる計算負担の多くは、線セグメント

に沿ってfs(kR)を評価し、次いで、

を得るように補間することにより、緩和することができる。この解決策は、粒子の中心の周りのa(r)のおおよその半径方向対称性を利用する。図2のデータは、このようにして得られる処理時間の著しい減少を立証する。好都合ではあるが、一次元のルックアップテーブルは、球の画像における若干の偏光依存非対称性を考慮せず、a(r)における急速に変化する特徴を捕獲することができない。その結果、補間型適合から得られる粒子の位置及び特性についての結果は、二次元適合で得られる基準値とは若干異なる。速度のために精度を犠牲にできる環境の下では、一次元適合及び二次元適合の両方に対する収斂公差を緩和して、より少ない最適化サイクルで結果を得るようにすることができる。例えば、平面における5nm及び軸方向における20nmの追跡エラーを受け容れると、図2に示すように、3.2GHzのIntel Core 2 Duoプロセッサにおいて2フレーム/sの201x201ピクセル画像に対する追跡速度が得られる。
【0013】
ローレンツ・ミー形式を、ハイエンドコンピュータグラフィックカードに典型的に使用されるグラフィック処理ユニット(GPU)の並列処理能力の利用と結合することにより更に相当の利得を得ることができる。GPUに関する更なる詳細は、図8及びコンピュータ200を参照して説明する。従来のCPUベースの具現化は、シーケンスにおける各ピクセルに対して動作するが、GPUイネーブル型アルゴリズムは、全てのピクセルに対して同時に動作する。本発明では、ホストコンピュータにインストールされたnVidia 280 GTXグラフィックカード(カリフォルニア州サンタクララのnVidia Corp)のIDLへのGPUlib(コロラド州ボールダのTech-X Corp)拡張を使用して、fs(kr)のGPUイネーブル型計算を実施した。GPUlibは、GPUにおいて数学計算を実施するのに典型的に必要とされる精巧なプログラミング技術を要求せずにGPUにおける数学計算のための基礎的なCUDAフレームワークへのアクセスを与える。これらの向上に伴い、二次元の適合は、ほぼ3フレーム/sの全精度で実行され、これは、CPUベースの分析より20倍も高速である。5nmの平面内解像度及び50nmの軸方向解像度を受け容れることで、図2に示すように、5フレーム/sより速く粒子追跡及び特徴付けデータを生じさせる。マルチコアCPUによりサポートされるときには、これは、多数の分析を並列に行うことができ、全処理速度の比例的増加を生じることを意味する。これは、ある用途では、リアルタイム性能と考えることができる。「リアルタイム」の意味は、画像データの各フレームスナップショットからの画像データが、次のフレームスナップショットが到着する前に、処理及び使用のために得られることである。以下に述べるように、これは、例えば、サンプルの位置、半径及び屈折率のようなサンプルの粒子のリアルタイム特徴付け、並びにビードに基づく分子結合特徴のような分子レベル被覆のリアルタイム特徴付けを行えるようにする。これらパラメータの少なくとも2つを一度に決定することができると共に、全てを同時に決定することもできる。最適化されコンパイルされたプログラミング言語において同じ適合アルゴリズムを実施することにより実質的な更なる加速を得ることができる。
【0014】
粒子の画像への適合がリアルタイム用途にとって充分迅速に進行する場合でも、スナップショットを分析するのに、視野内のサンプル110の粒子を事前に識別し、そして全体的に最適な解決策へ収斂するための適合として充分に正確な粒子位置、サイズ及び屈折率を推定し始めることが要求される。このブートストラッププロセスは、ホログラフィ分析が無人自動処理に対して有用であるべき場合には、高速で且つ信頼性の高いものでなければならない。
【0015】
各球は、図3Aの例のようなスナップショットにおいて、同心的な明るいリング及び暗いリングのように見える。それ故、各ピクセルにおける強度の勾配は、画像形成平面における線セグメントを定義し、それに沿って球の中心が存在する。このような線の交点は、焦点平面における粒子の重心の推定値を定義する。最も好ましい実施形態では、粒子が球である。本発明では、オリジナル画像の各ピクセルが、重心となる変換画像のピクセルに対して「票」を投じる円形ハフ変換の簡単な変形でこのような交点を識別する。図3Aは、オリジナル画像における3つの代表的なピクセルにより投じられる票を示す。単一ピクセルの票が、図3Bの例のように、変換画像に累積される。このケースでは、変換画像は、オリジナルと同じ解像度、即ち適度な精度及び速度の両方を生じる選択を有する。ほとんどの票を伴う変換画像のピクセルは、重心の候補であるとみなされ、それらの位置は、適合を初期化するための平面内座標として使用される。挿入表面プロットは、2つ以上の球のホログラフィ画像が重畳する場合でも、単一の球による拡張された干渉パターンが、どのようにして、鮮明に画成されたピークへと変換されるかを示す。この方法は、付加的なリソースを使用して各潜在的な円形領域の半径に関する情報を記録する従来の円形ハフ変換より計算効率が良い。変換画像の各特徴に対する輝度の輝度重み付け中心を計算することにより重心推定を定義することで、典型的に、粒子の重心を1ピクセルの数十分の1以内で、又は数十ナノメータで識別する。
【0016】
粒子又は球を平面内座標で推定すると、レイリー・ゾンマフェルドプロパゲータを使用して測定された光フィールドを逆方向伝播することによりその軸方向座標を推定する。再構成された軸方向強度のピークは、粒子が光学軸に沿って互いに閉塞するときでも、粒子の位置に100nm内で対応する。この逆方向伝播は、粒子の位置を中心とする画像データの一次元スライスで遂行することができ、それ故、非常に迅速に遂行することができる。
【0017】
未知の粒子のサイズ及び屈折率を正確に推定することは、実質的により困難である。好都合にも、非線型適合のエラー表面は、ap、np及びzpにより画成されたパラメータスペースにおける非常に大きな集水域にわたる全体的に最適な値に向かって円滑に且つ単調に傾斜する。図4は、zp=20mmにおいて水中の1.5mm直径のシリカ球に対して計算された局部的画像強度の平方根エラーを、Δap、Δnp及びΔzp、各々、粒子の半径、屈折率及び軸方向位置のエラーとして示す。これらのデータは、初期の推定に屈折率で0.1、半径で0.5mm、軸方向位置で2mm以上のエラーがあっても、このような粒子の画像への適合が最適な値へと収斂しなければならないことを示す。エラー表面は、より高度に構造化され、従って、推定された平面内重心に百ナノメータ以上のエラーがある場合には、寛大さが少なくなる。好都合にも、投票アルゴリズムは、日常、頑健な収斂さを保証するに充分な正確な結果を生じる。一連の画像を通して粒子を追跡することは、1つの適合からの結果を次のための初期推定として使用することにより更に加速することができる。このケースでは、付加的な事前適合が必要とされない。
【0018】
迅速な重心識別と加速画像適合との結合は、上述したリアルタイム又はほぼリアルタイムでコロイド球位置及び特性の正確且つ非常に精密な測定を生じさせる。無人のホログラフィ粒子追跡及び特徴付けは、プロセス制御及び品質保証、並びに高スループット及び組み合わせ分析評価に多数の用途がある。エキゾチックなハードウェア解決策に頼らずに、より積極的なソフトウェア最適化及びパラレル化を通して実質的なそれ以上の加速が可能となる。
【0019】
ホログラフィ粒子追跡は、三次元粒子画像速度測定のための直接的用途を有する。図5Aは、巾100μm、深さ17μm、長さ2cmのマイクロ流体チャンネルを下流へ移動する各々1マイクロメータ直径の500個のポリスチレン球(Duke Scientific、カタログナンバー5100A)の重畳軌道の形態の一例を示す。これらの球は、10-5の体積分率で水中に分散され、そして重力に対して貯留器を上昇させることで形成される圧力駆動流により移流された。焦点面を下部のガラス/水界面よりほぼ5μm下にセットした状態でチャンネルの中央付近の50x70μm2において画像が得られた。各スナップショットにおける球の位置が、1/60間隔でサンプルされる単一粒子軌道rp(t)への最大見込み形式論的解決策とリンクされる。各粒子トレースにおいてそのたびにステップが表されるのではない。というのは、流れの中間面付近の高速移動粒子が壁付近の低速移動粒子を時々覆い隠すからである。図5Aは、明確に識別された粒子位置のみを示す。このような不完全な時間粒子を使用しても、粒子の瞬時速度を推定することができる。図5Aのトレースは、軌道平均化速度に基づくグレースケールのものである。
【0020】
又、これらの軌道は、三次元流れフィールドをマップするのにも有用である。図5Bの各点は、1つの粒子の速度を、マイクロ流体チャンネルにおけるその平均高さzの関数として表す。1000個のこのような軌道を重畳した結果は、チャンネルを下るポアズイユの流れに対して予想される放物線流プロフィール、即ちチャンネルの長い水平軸にわたる空間的な変動を反映するデータのクラスターの巾を明確に示す。垂直軸の範囲は、チャンネルの上部壁及び下部壁の位置を指示し、高さは、顕微鏡の焦点面に対して報告される。水平の破線は、ガラス壁との激しい球相互作用のために粒子が放浪できない流れの領域を表す。適合放物線は、チャンネルの境界で消滅する流れを示す。
【0021】
又、各軌道は、各粒子の半径及び屈折率の軌道平均化測定値を個々に生じさせる。単一の粒子に関する複数の測定値を合成することで、照明における必然的な位置従属変動による系統的エラーを最小にする。図6A(1)−A(3)の結果は、水中に分散されたポリスチレンマイクロ球の商業的サンプルにおける球の半径及び屈折率を示す。図6A(2)及びA(3)は、図6A(1)から得られた2Dヒストグラムを示す。ap=0.4995μmの平均半径は、半径について測定された2.5%の多分散性のように、従来の光散乱により得られる製造者の仕様に適合する。np=1.595の平均屈折率は、ポリスチレン球についての独立した測定値と一貫したものである。
【0022】
単一粒子の特徴付けは、粒子分散を分析するための通常の基礎であるバルク光散乱測定に比して、ホログラフィ特徴付けの実質的な利益である。単一粒子測定から図6A(1)−A(3)の例のような分布を構築することで、母集団方法の必要性が排除され、従って、サンプルの組成に対するより一般的な洞察が与えられる。例えば、図6A(1)−A(3)において明白な粒子サイズと屈折率との間の反相関は、光散乱データには見えない。均質な流体小滴のホログラフィ分析ではこのような反相関が見えない。この観察の1つの解釈として、エマルジョンポリマー化サンプルにおける大きな球は、より多孔性であり、従って、屈折率が低い。
【0023】
個々の粒子を同時に(且つ上述したように、リアルタイムで)追跡及び特徴付けすることで、動きに基づくアーティファクトが結果からなくなることを確認できる。コロイド状粒子の画像は、カメラのシャッターが開いている期間中にそれが動いた場合には、ぼけた状態になる。このぼけは、従来の明フィールドビデオ顕微鏡データに実質的なアーティファクトを導入する。しかしながら、図6B(1)及びB(2)の結果が示すように、500μm/sのような高い速度では、動きのぼけは、ホログラフィ分析により得られる平均速度の関数として半径及び屈折率の値に対して認知し得る影響を及ぼさない。付加的な測定は、ピーク流れ速度が700μm/sを越える場合だけ母集団平均値からの偏差を露呈する。
【0024】
数百マイクロメータ/秒で移動する粒子は、1msのシャッター周期の間に多数のカメラピクセルを横断するので、この頑健さは意外である。しかしながら、それにより得られる振動散乱パターンのインコヒレントな平均は、主として、動きの方向においてコントラストを減少するように働き、従って、ローレンツ・ミー適合にはほとんど影響を及ぼさない。このような量のぼけでも、高速シャッター又は照明用パルスレーザーの使用によって減少することができる。
【0025】
個々のコロイド状粒子がマイクロ流体チャンネルを下流へ移動するときにそれらを特徴付けできることで、機能化されたビードの分子規模被覆を検出するための有効な基礎が与えられる。個々の球の半径がナノメータ程度であることが知られている場合には、同様の屈折率の分子被覆の存在は、半径の見掛け上の増加として認知できる。より一般的には、処理されたサンプルの特性を、未処理の球の制御測定と比較することができる。
【0026】
図7A及び7Bは、ニュートラアビジンで培養する前後の、2μm直径のビオチン化ポリスチレン球の1つのそのような比較例の調査を示す。この調査に使用したビオチン化ポリスチレン球は、Polysciences Inc(ペンシルバニア州ウォリントン)(カタログナンバー24172)から得られたものである。ニュートラアビジンは、Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)(カタログナンバーA2666)から得られたものである。1mgのニュートラアビジンを1mLのリン酸緩衝含塩水(PBS)(50mM、[NaCl]=50mM)に添加することにより、濃度1mg/mLのニュートラアビジン溶液が調製された。納入時分散の10μLをPBSの990μLに添加することによりビードの在庫サンプルを得た。又、納入時分散の10μLをニュートラアビジン溶液990μLに添加することによりビードの被覆サンプルを得た。粒子を室温で培養し震動した後に、毛管作用によりマイクロ流体チャンネルへ導入した。吸収紙片をチャンネルの一端に導入することにより流れを誘起し、そして各サンプルから1000個の球に対する結果が得られるまで画像を記録した。各データセットは、ほぼ5分の工程にわたって得られたほぼ5000個のホログラフィ測定値で構成された。
【0027】
これらの測定値から、未処理のサンプルは、製造者の仕様に一致する母集団平均化半径0:996±0:015μm(図7Aを参照)を有すると決定された。培養された母集団は、見掛け上、6nm程度大きく、平均半径1:002±0.015μmである。図7Aにプロットされた2つのサイズ分布が実質的に重畳しても、Wilcoxonのランク和テストは、それらの平均が99%より高い確実性で相違することを示している。これは、分子規模の被覆の存在に合理的に帰する処理されたサンプルの半径の変化の統計学的に顕著な検出を構成する。被覆の厚みは、この場合、複数ドメインのアビジン導関数のサイズに一致する。
【0028】
又、2つのサンプル間の顕著な相違が、図7Bにプロットされた屈折率の測定分布において明らかである。培養されたサンプルの分布は、著しく鮮明である。というのは、おそらく、屈折率がポリスチレンと同様のタンパク質が球の多孔性表面の水を押し退け、それらの有効屈折率を上昇させるからである。これは、屈折率分布の低い側のより多孔性の粒子に、その高い側のより濃密な粒子より影響を及ぼし、これにより、分布を先鋭にする。図7Bの矢印は、この再分布を指示する。
【0029】
2つのデータセットのランダムなサンプルの同様の分析により、未処理サンプルの粒子は、全て、サイズ及び屈折率が製造者の仕様に一致する同じ母集団から到来することが更に確認される。対照的に、処理されたサンプルは、より大きなサイズ変化を示す。というのは、おそらく、結合されたアビジン層の厚み及び均一性が球ごとに変化するからである。
【0030】
これらの結果は、機能化されたコロイド状球の分子規模被覆をリアルタイムで検出するためのハードウェア加速デジタルビデオマイクロ顕微鏡の有用性を示すものである。従来の分子規模分析評価とは異なり、ホログラフィ分析は、蛍光又は放射線マーカーを必要とせず、従って、ビードに結合された分子にラベル付けするのに通常必要とされる努力及び費用を排除する。
【0031】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、図8に示すコンピュータシステムを使用することにより当該パラメータ及び特徴を決定するように実施することができる。図8のシステムは、コンピュータ200(ローレンツ・ミー分析に関連してここに述べる最も好ましい実施形態ではCPU及び/又はGPUを含むことができる)を備え、これは、例えば、コンピュータアドレス可能な記憶媒体210に埋め込まれるインストラクションでコンピュータソフトウェアモジュールのようなコンピュータ読み取り可能なメディアを実行することができる。従って、コンピュータ200のGPUを使用すると、分子被覆のようなパラメータ、及び/又は粒子の位置、半径及び屈折率のリアルタイム分析及び同時評価を行うことができる。データを書き込むことのできるこの記憶メディア210は、読み取り/書き込み可能である。この特徴は、その後の静的又は動的データ分析を行えるようにし、その分析結果で、ユーザは、好都合な用途に対してその情報に対して行動することができる。コンピュータ200は、上述した本発明の方法により発生されるデータを分析するようにコンピュータソフトウェアのモジュールインストラクションを実行する。このようなデータは、記憶メディア210から得られ、装置220を経て入力することができる。出力装置230(例えば、ディスプレイ、プリンタ及び/又は記憶メディア)のような他の従来の装置は、データを見たり更に分析したりできるようにする。このような分析は、粒子の位置及び特性に関する情報をリアルタイム又は遅延時間で発生することができる。
【0032】
上述したある実施形態は、単一波長でホログラフィビデオ顕微鏡を使用し、マイクロメータ直径の絶縁性コロイド状球の分子規模被覆を検出する。この検出は、被覆分子へ露出された球の母集団を分析し、そしてその結果を、露出されない球の同等の母集団を分析することにより得られた結果と比較することによって行われる。各母集団における個々の球のホログラフィスナップショットが、光散乱のローレンツ・ミー理論で分析されて、球の半径及び複素数屈折率の推定値を得る。ローレンツ・ミー分析は、各球の半径をナノメータ解像度で生じると共に、その屈折率を1000のパーツ内で生じる。これらのプロパティの母集団分布における系統的な相違が、分子を検出するための基礎を構成する。被覆された球は、被覆の厚みに一致する量だけ系統的に大きく見える。
【0033】
別の実施形態では、ローレンツ・ミー分析は、2色又は多色ホログラムを使用し、球の母集団ではなく単一の球のみを使用して同等の検出解像度を与えることができる。従って、図1Aの入力ビーム120は、多色ホログラムの出力を与える。この実施形態は、同時のホログラフィ画像を2つ以上の波長で形成する。これらの多色ホログラムは、画像を分離するためのフィルタを使用して個別のビデオカメラ135(図1Aを参照)に記録することができる。或いは又、それらをカラーカメラ135に記録することができ、記録されたカラーチャンネルから個別の画像を得ることができる。
【0034】
これら形式の測定に使用される球は、使用する波長に同等の光学的プロパティを有していなければならない。しかしながら、被覆は、少なくとも2つの波長に著しく異なるプロパティを有していなければならない。例えば、被覆は、1つの波長では純粋な絶縁体であり、別の波長では強力な吸収体である。被覆が存在しないときには、複数波長で得られるホログラムは、粒子の位置及びサイズに対して同じ結果を生じなければならない。被覆された球のホログラムは、推定サイズ、及び各波長から得られる推定屈折率の質的特徴が著しく相違しなければならない。このような相違は、分子規模被覆の検出を構成する。波長、球サイズ及び球組成の適当な選択は、被覆の厚み又は完全性に関する量的情報を与えねばならない。
【0035】
本発明の実施形態の以上の説明は、例示の目的でなされたものである。これは、余すところのないものでもないし、本発明を、ここに開示する正確な形態に限定するものでもなく、以上の教示に鑑み修正や変更が考えられるし、又、本発明の実施からも修正や変更が考えられる。以上の実施形態は、本発明の原理及びその実際的な応用を説明売るために選択され記述されたもので、当業者であれば、本発明を種々の形態で、及び意図された特定の使用に適するように種々変更して、利用することができるであろう。
【符号の説明】
【0036】
100:ホログラフィ顕微鏡
110:サンプル
120:コリメートされた線型偏光ビーム
125:焦点面又は画像形成面
135:カメラ
145:顕微鏡の対物レンズ
200:コンピュータ
210:記憶メディア
230:出力装置
【図1A−B】

【図1C(1)−(2)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィ顕微鏡観察によりサンプルのパラメータを特徴付ける方法において、
記憶メディアからサンプルの画像データを与える段階と、
前記サンプルの画像データにローレンツ・ミー分析を適用して、サンプルのプロパティを特徴付けると共に、サンプルのパラメータの情報特性を発生する段階と、
サンプルの粒子のサイズ、位置及び屈折率をリアルタイムで同時に決定する段階と、
を備えた方法。
【請求項2】
前記画像データを与える段階は、偏光ビームを発生し、そしてその光ビームをサンプルから散乱させて、ホログラムを発生することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ローレンツ・ミー分析は、画像データのパラレル処理によりローレンツ・ミー分析を実行するためにグラフィック処理ユニットを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記画像データを変換して、前記画像データにおける物体の数の第1推定値、及び平面における物体のおおよそのx、y位置を決定する段階と、その変換されたデータを使用して、各物体の軸方向位置(z)の第1推定値を、各物体のサイズ及び組成の第1推定値と共に決定する段階とを更に備え、前記ローレンツ・ミー分析は、サンプルの位置、サイズ及び屈折率の第2推定値を決定し、この第2推定値は、記憶メディアを結果で更新しそして結果を表示及びユーザアクションのために出力する少なくとも1つの段階で、前記第1推定値より精度が高い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルは、少なくとも1つの粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パラメータの特徴付けは、ビードに基づく分子結合特徴を決定する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パラメータの特徴付けは、自動粒子検出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ローレンツ・ミー分析は、線セグメントR=/r−rp/に沿ったローレンツ・ミー機能散乱関数fs(kr)を決定し、そして関数fs(k(r−rp))を得るための補間を行って、処理時間を短縮すると共に、サンプルのリアルタイム分析を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルは、粒子を含み、前記ローレンツ・ミー分析方法は、その粒子のサイズ、形状、組成及び配向の少なくとも1つをリアルタイムで決定する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子は、球を含み、粒子半径の迅速に変化する特徴をリアルタイムで決定できるようにする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記偏光ビームは、光の単一波長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記光ビームは、コヒレント光の複数の波長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ローレンツ・ミー分析及び画像データ間の比較を遂行する段階を更に備え、ある粒子は未処理状態にあり、別の粒子は処理を受けており、これにより、処理された粒子に存在する分子層を未処理粒子に存在する分子層に対してリアルタイムで特徴付けすることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記リアルタイム特徴付けは、屈折率及び粒子半径のグループから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
関連する複数のホログラムが、サンプル間の相互作用と、コヒレント光の複数の波長とによって形成され、これにより、コヒレント光の異なる波長に対するサンプルの異なる応答を決定できると共に、その異なる応答を分析して、サンプルのパラメータを識別する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
物体のホログラフィ顕微鏡観察のためのパラメータを特徴付ける方法において、
記憶メディアから画像データを受け取る段階と、
前記画像データを変換して前記画像データにおける物体の数の第1推定値、及び平面における物体のおおよそのx、y位置を決定する段階と、
前記変換されたデータを使用して、各物体の軸方向位置(z)の第1推定値を、各物体のサイズ及び組成の第1推定値と共に決定する段階と、
各物体の画像データのローレンツ・ミー分析を適用して、各物体の解像度位置、サイズ及び組成の第2推定値を決定する段階と、
を備え、前記第2推定値は、前記記憶メディアを結果で更新しそして結果を表示してユーザにより解釈させるために与える少なくとも1つの段階で、前記第1推定値より精度が高いようにした、方法。
【請求項17】
ホログラフィ顕微鏡観察によりサンプルのパラメータを特徴付けるシステムにおいて、
レーザビーム源及び対物レンズを含むホログラフィ顕微鏡であって、レーザビームがサンプルから散乱し、レーザビームの非散乱部分と相互作用して、ホログラフィ散乱パターンを与えるようなホログラフィ顕微鏡と、
前記ホログラフィ顕微鏡からの散乱パターンの画像データ特性を収集するための画像収集装置と、
コンピュータ及び該コンピュータにより実行されて画像データを分析するコンピュータソフトウェアを含むコンピュータシステムであって、このコンピュータソフトウェアは、グラフィック処理ユニットにより実行されてサンプルのパラメータ特性の実質的にリアルタイム出力与えるローレンツ・ミー方法を含むものであるコンピュータシステムと、
を備えたシステム。
【請求項18】
前記パラメータは、サンプルに対して、サンプル粒子サイズ、サンプル粒子位置、サンプル粒子の屈折率、及びサンプル粒子のビードに基づく分子結合特徴、のうちの少なくとも2つを同時に含む、請求項17に記載のシステム。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5(A)】
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【図5B】
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【図6(A)(1)−(3)】
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【図6(B)(1)−(2)】
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【図7(A)】
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【図7(B)】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−515351(P2012−515351A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546331(P2011−546331)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/021045
【国際公開番号】WO2010/101671
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(303008264)ニューヨーク ユニバーシティー (4)