説明

ホログラムシート、ホログラムラベル及び、ホログラム転写シート

【課題】真正性の判定が必要な物品に用いるホログラムの真正性を識別できるホログラムシートは、特別な判定具を用いて判定するため、予め、その判定具を全ての判定場所に準備する負荷が大きく、また、物品保持者の目の前で判定をしていると判る識別動作を行うため、物品保持者の心証を著しく損ねるという課題があった。
【解決手段】ホログラムシート内に、判定者の体温に対応して速やかに色調変化する感温液晶を向けたことにより、媒体保持者が気づくことなく真正性判定ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正な意図に基づく偽造や改ざん等により得られたものと真正なものとの区別を容易にした真正性識別に用いられるホログラムシートに関するものである。また、本発明は、そのようなホログラムシートを物品に適用するのに適するラベルの形態や転写シートの形態に加工したものにも関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明のホログラムシートの主なる用途としては、偽造防止分野に使用されるホログラムシートであって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
【0004】
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録媒体であり、偽造による損害を防止する目的で、媒体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0005】
また、これら情報記録媒体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
【0006】
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶媒体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0007】
(背景技術)
従来、情報記録媒体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
【0008】
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写シート形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
【0009】
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層を有する真正性識別媒体が提案された。(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
しかし、この真正性識別媒体を施した真正性識別対象物の真正性を識別するためには、その光選択反射性を判定するための特別な判定具、即ち、「直線偏光子」を備えた判定具を予め準備する必要があり、且つ、その真正性識別対象物を提示した人物の目の前で明らかに真正性識別動作と判る作業をすることになり、その人物の心証を著しく害する等の欠点がある。
【0011】
この問題に対応するため、真正性識別対象物を提示した人物の目の前で真正性識別作業を実施しても、その人物にはその作業をしていることを悟られない方法でこの作業を実施する方法として、真正性識別対象物に触るだけで色調が変わる示温インキを、ホログラムに施す方法を想定することができる。示温インキの代表例には重金属を使用するものがあるが、人体への影響を考慮する必要がある等、衛生面を配慮した上で温度を示す用途には、重金属を用いない示温性材料である、感温液晶を用いることが提案されている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
但し、ここで提案された用途は、内容物の温度を目視化するための一種の温度計であり、温度表示のための数字と組み合わせ、色調の変化とその数字とを見比べて内容物の温度を推し量るものである。すなわち、液晶の存在そのものを明示的に利用しているものであって、液晶の存在そのものを秘匿し、密かに判定に使用するなどの真正性識別用途等を想定していない。
【0013】
【特許文献1】特開2005−301093号公報
【特許文献2】特開平10−213493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、真正性識別対象物に設けられたホログラムが真正であることを、特別な判定具を必要とせず、且つ、その識別対象物を提示した人物に悟られること無く、真正性の識別が可能となる真正性識別媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明のホログラムシートの第1の態様は、透明基材の一方の面にホログラムレリーフを有するホログラム形成層が形成され、前記ホログラムレリーフに接してその一部または全部に反射性薄膜が形成され、さらに前記ホログラムレリーフ及び/または前記反射性薄膜の上に、感温液晶が形成されていることを特徴とホログラムシートである。
【0016】
また、ホログラムシートの当該感温液晶形成側に、さらに粘着剤が形成されていることを特徴とするホログラムラベルである。
また、ホログラムシートの当該感温液晶形成側に、さらに接着剤が形成されていることを特徴とするホログラム転写シートである。
【0017】
上記第1の態様のホログラムシートによれば、そのホログラムシートが真正性識別対象物上に設けられていて、その識別対象物を、例えばクレジットカードの提示のように、カード携帯者が、その真正性を確認する人物(以下判定者とする)に提示する。この時、判定者は、その識別対象物を受け取り、目視にてホログラムを確認し本物と判断するが、その後速やかに、そのホログラムを指で押さえ、ホログラムの一部分のみを体温により加温する。
【0018】
この操作によりホログラム下に設けられている感温液晶がその色調を変えることで、このホログラムが真正であると判断する。その後、判定者は、例えばクレジットカードでは、カードに記録されている磁気データをクレジット会社に問い合わせる等の確認作業を行い、確認後、カード携帯者へカードを返却する。この時、既に、感温液晶の色調は元に戻っている必要がある。この一連の作業の時間は、数十秒である。
【0019】
判定者が、そのカードより、指を離すと、感温液晶の温度が下がり始めるものの、室温と体温との温度差は小さく(10〜15℃程度)、自然冷却による温度降下には時間が掛かりやすい。しかしながら、上記判定作業中に、カードを冷却するなどの通常行わない動作を実施することはできないため、数十秒で下がる温度は、数度にとどまる。
【0020】
このため、設定された温度近傍の僅かな温度変化で、速やかに色調を変化し、且つ、その設定温度(変化すべき温度)に対するぶれがほとんどみられない感温液晶を使用する。短時間、数℃の温度降下で、色調が元に戻ることにより、識別対象物提示者、例えばカード携帯者が気づくことなく、ホログラムの真正性を判定できる。
【0021】
また、ホログラムシートに粘着剤を形成することで、真正性識別対象物上へホログラムを貼着することができる。さらに、ホログラムシートに接着剤を形成して、ホログラム転写シートとすることで、真正性識別対象物上へホログラムを転写することもができる。
【0022】
この転写シートを識別対象物上へ転写した後、透明基材を剥離することで、ホログラム形成層以下の層のみを識別対象物上に残すことができ、これによって、加温する指と感温液晶との距離を数μm程度まで近づけることができる。すなわち、加温・冷却を瞬時に行うことができ、判定動作をより短時間にできることになる。
【0023】
さらに、本発明のホログラムシートの第2、第3の態様は、その感温液晶が、25度〜35度のいずれかの温度において色調が変わるコレステリック液晶、もしくは、カイラルネマチック液晶であることを特徴とするホログラムシートである。
【0024】
上記第2、第3の態様のホログラムシートによれば、感温液晶を、25度〜35度の範囲のいずれかの設定温度で色調変化を生じるコレステリック液晶、カイラルネマチック液晶とすることで、その真正性判定をより速やかに、より精度よく行うことができるホログラムシートを提供できる。例えば、設定温度を28℃とした時、真正性判定時、20℃程度の真正性識別対象物上のホログラムシートが、36℃程度の体温を持つ判定者の指の温度よって、瞬時に25℃を越え、数秒で28℃となり、感温液晶の色調が変化する。
【0025】
この色調変化確認後、指を離すと同時にホログラムシートの自然冷却が始まるが、冷却速度は遅く、1度下がるために数秒以上かかる。しかしながら、設定温度28℃のコレステリック液晶や、カイラルネマチック液晶は、この僅かな温度変化に十分反応し、27℃では既に色調が元に戻っている状態となる。判定者は、この確認後、カード携帯者の磁気データ照合等の本人確認作業を実施し、その後、カードをカード携帯者へ返却する。
【0026】
すなわち、指による加温により色調を変化させ、指を離すと同時に速やかに元の色調に戻って、真正性識別対象物携帯者にその判定動作を気づかれずに判定可能なホログラムシートが提供されることになる。
さらに、本発明のホログラムシートの第4、第5の態様は、上記第1〜3の態様に、粘着剤層を加え、ラベル形態としたもの、及び、接着剤層を加え、転写シート形態としたものである。粘着剤及び接着剤は一般的なものが用いられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のホログラムシートの第1の態様によれば、真正性識別対象物に設けられたホログラムが真正であることを、特別な判定具を必要とせず、且つ、その識別対象物を提示した人物に悟られることなく上で、真正性の識別が可能となる真正性識別媒体が提供されるという効果がある。
【0028】
また、本発明のホログラムシートの第2、第3の態様によれば、所定の環境下において、真正性識別対象物に設けられたホログラムが真正であることを、特別な判定具を必要とせず、且つ、その識別対象物を提示した人物に、より悟られ難くした上で、精度よくその真正性の識別が可能となる真正性識別媒体が提供されるという効果がある。
また、本発明のホログラムシートの第4、第5の態様によれば、ホログラムラベル、ホログラム転写シート形態にて上記特徴を有する真正性識別媒体が提供されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の1例を示すホログラムシートAの断面図である。
図2は、本発明の実施形態の別の例を示すホログラムラベルA´の断面図である。
図3は、本発明の実施形態のさらに別の例を示すホログラム転写シートA´´の断面図である。
【0030】
(透明基材)本発明のホログラムシート等で使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、真偽判定用媒体であるホログラムシートA、ホログラムラベルA´、及びホログラム転写シートA´´を製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。
【0031】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
【0032】
真正性判定のために指で押さえるなどした際、人体の体温を速やかに感温液晶に伝達し、色調変化(光散乱を含む)をさせ、その変化を確認後、感温液晶を冷却する時は速やかに熱放出する必要があるため、透明基材は、熱伝導性の高いものが望ましい。透明基材の厚さは、同様の配慮から、5〜50μm、特に5〜15μmとすることが望ましい。
【0033】
但し、透明基材が、転写シートの基材である場合は、この透明基材は、真正性識別媒体上にホログラム転写後、剥離して、真正性識別媒体上に残らないため、このような熱伝導性や、厚さの制限は必要とならない。ホログラム転写後は、ホログラム形成層のみを通して感温液晶へ熱が伝わるため、上記判定が、より精度よく実施できることになる。
また、転写シートを形成する際、透明基材1に、通常用いられる酢酸セルロース樹脂やメタクリル樹脂等からなる剥離層を設けても良い。
【0034】
(ホログラム形成層)本発明のホログラム形成層2を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。
【0035】
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
【0036】
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
【0037】
上記の樹脂材料を用いてホログラム形成層2を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
【0038】
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
【0039】
ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
【0040】
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
【0041】
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
さらに、透明金属化合物薄膜の場合は、その薄膜の上下の面が、同一レリーフ形状であり且つ、その面と面の距離(すなわち膜厚さ)が均一であればあるほど、再現もしくは再生強度が大きくなる。また、レリーフ面にホログラム画像の凹凸とは異なる周期、形状の凹凸が存在すると、それはホログラムもしくは回折格子の再現もしくは再生時のノイズとなり、画像を不鮮明にする要因となる。
【0042】
レリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記透明基材1及び反射性薄膜2上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。
【0043】
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
【0044】
複製方式は、平板式もしくは、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、複製温度は、通常60℃〜200℃とする。
【0045】
(反射性薄膜)本発明のホログラムシート等では、ホログラム形成層のホログラムレリーフ面に、一部または全面に反射性薄膜層3を形成する。この薄膜は、入射した光を反射する必要があるため、ホログラム形成層2よりも高い屈折率を有する薄膜であれば、特に限定されない。
反射性薄膜としては、真空薄膜法などにより形成される金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層を部分的に設けたり、透明反射層を設けた場合は、その反射層に接して設けた感温液晶の変化をこの透明反射層を通して確認できるので好ましい。
【0046】
透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム形成層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できることから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム形成層(本発明では、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1に該当する)よりも光屈折率の高い薄膜、例として、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITOなどがある。
【0047】
好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Auなどの酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したものなどが例示できる。またアルミニウムなどの一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが20nm以下になると、透明性が出てきて透明反射層として使用できる。
【0048】
透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などにより設ければよい。
【0049】
(感温液晶)本発明に用いられる感温液晶4は、温度によって、固相→液晶相→液相と変化し、液晶相において物理的に液体と同様の流動性を持つ一方、光学的には固体結晶と同様の強い異方性を持ち、ある一定の温度条件下で棒状分子の結晶格子の秩序が失われて液状になるにも拘らず、分子の配向秩序は固体結晶と同様に維持されていて、融点の手前でこの現象が現れるサーモトロピック液晶であれば、いずれも使用できる。
【0050】
この液晶は、その分子配列の特徴によって、スメクチック液晶、ネマチック液晶、コレステリック液晶に分けられる。これらの液晶はそれぞれ単体で用いられるが、混合して用いてもよい。さらには、高分子系サーモトロピック液晶も用いられる。代表例として、p−アゾキシアニソール骨格、N―(p−メトキシベンジリデン)−p−ブシルアニリン骨格、4−シアノー4´―べンチルビフェニル骨格を有し、側鎖長で液晶発現温度を調整するが、不斉分子導入により光学活性をも合わせもつものもある。いずれにしても分子配列が層構造をなし、屈折率変化を生じる。この層構造をなす各層の層間隔が温度により変化することで、色調が変化する。
【0051】
高分子系では、メソゲンとして芳香環単位を有するポリエステル系主鎖型、メチレン鎖混在単位を有するポリエステル系主鎖型、光学活性ジオールやジカルボン酸混在単位を有するポリエステル系主鎖型、ポリイミド、ポリカルバナート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド主鎖型のサーモトロピックポリマー他、液晶ポリマーを熱可塑性樹脂にブレンドしたポリマーブレンド等がある。もちろん、ヒドロキシプロピルセルロースと
水にポリオキシプロピレン2−エーテル−2−ヒドロキシメチル−1,1,3−プロパニドールから成る水和ゲルも使用可能であり、種々の高分子分散型液晶も用いることができる。
【0052】
コレステリック液晶としては、コレステロールのハロゲン化物、モノカルボン酸コレステロールエステル、モノカルボン酸シトステロールエステル、安息香酸誘導体のコレスタノールエステル、二塩基酸ジコレステリルエステル、主鎖型液晶高分子化合物、側鎖型液晶高分子化合物、剛直主鎖型液晶高分子化合物などが挙げられる。
【0053】
より具体的には、例えばコレステリルクロライド、コレステリルアセテート、コレステリルノナノエート、炭酸メチルコレステロール、炭酸エチルコレステロール、コレステリルp−メトキシベンゾエート、シトステロイルベンゾエート、シトステロイルp−メチルベンゾエート、コレスタニルベンゾエート、10、12−ドコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、8、12−エイコサジカルボン酸ジコレステリルエステル、10、12−ペンタコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、ドデカジカルボン酸ジコレステリルエステル、12、14−ヘキサコサジインジカルボン酸ジコレステリルエステル、4−(7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルオキシ)フェノキシオクタン酸コレステリルエステル、L−グルタミン酸−γ−ベンジル/L−グルタミン酸−γ−ドデシル共重合体などがある。
【0054】
さらに、コレステリルホルメート、コレステリルアセテート、コレステリルプロピオネート、コレステリルブチレート、コレステリルペンタネート、コレステリルヘキサネート、コレステリルヘプタネート、コレステリルオクタネート、コレステリルノナノエート、コレステリルデカネート、コレステリルドデカネート(コレステリルラウレート)、コレステリルミリステート、コレステリルパルミテート、コレステリルステアレート、コレステリルオレエート、コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルリノレート、コレステリル12−ヒドロキシステアレート、コレステリルメルカプタン、コレステロールクロライド、コレステリルフルオライド、コレステリルブロマイド、コレステリルアイオダイド等を挙げることができる。
【0055】
好ましくは、アルキルコレステロール(例えばコレステロールナノエート)およびコレステリルハライド(例えばコレステロールクロライド)コレステリルオレイルカーボネート3種の混合物が挙げられ、これらの3つのタイプの液晶は常温で使用できるように混合して用いられるのが一般的である。
【0056】
なおここに示す化合物に限定されるものではなく、またこれらのコレステリック液晶化合物は、1種または2種以上混合して用いることができる。更にはこれらのコレステリック液晶化合物にカイラル成分を有さないネマチック液晶やスメクチック液晶など他の液晶性化合物を添加しても良い。
【0057】
カイラルネマチック液晶としては、液晶化合物として、4−置換安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸4’−置換ビフェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキシ)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−置換フェニルエステル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4’−置換シクロヘキシルエステル、4−置換4’−置換ビフェニル、4−置換フェニル4’−置換シクロヘキサン、4’−置換シクロヘキサン、2−(4−置換フェニル)−5−置換ピリジン等が用いられる。
【0058】
特に好ましくは、少なくとも分子の一方の末端にシアノ基又はフッ素原子を有する液晶化合物を用い、これらの液晶化合物にそれぞれ好適な各種のカイラル剤を加えたものが用いられる。カイラル化合物としては、「CB−15」、「C−15」(以上、BDH社製)、「CM−21」、「CM−22」、「CM−19」、「CM−20」、「CM」(以上、チッソ社製)、「S1082」、「S−811」、「R−811」(以上、メルク社製)等を挙げることができる。
【0059】
また、有機合成によって得られるネマチック液晶の末端基に不斉炭素を有する基を導入したコレステロール基を持たないコレステリック液晶や、コレステロール誘導体にシッフ系ネマチック液晶を加えた混合液晶も用いられる。さらには、天然コレステロールのハロゲン置換物、エステル化物(コレステリルベンゾエート、コレステリルクロライド、コレステリルオリエート、コレステリルノナノエート等も好適である。
【0060】
これらの感温液晶の中で、特に、人体の体温(36℃程度)に反応してその色調等(光散乱も含む)変化を生じるものが好適であり、さらには、25℃〜35℃で変化するものが好適である。その変化する精度は、±3℃さらには、±0.5℃であることが望ましい。また、その変化速度は、変化温度に達したときは、瞬時に(数秒程度)変化し、その変化温度より温度が下がったときに瞬時に元に戻るものが好適である。
【0061】
これらの感温液晶を設ける方法としては、溶剤系、水系、無溶剤系として、通常のコーティング方式を用いて形成することができるが、感温液晶をゼラチン他樹脂膜等でカプセル化したインキを用いて形成してもよい。カプセル化したものは、その製造時の作業性だけでなく、物理特性(強靭性、耐摩耗性、耐熱性等)に優れるとともに、液晶の染み出し等の不具合を防止し、本発明に特に要求される衛生面で特に好適である。
【0062】
形成する厚さは、真正性判定を実施するために十分な色調変化(光散乱も含む)を生じる厚さとするが、感温液晶の存在を秘匿するため、その厚さは、薄い方が望ましい。すなわち、5〜50μm、好ましくは、5〜20μmとする。さらに秘匿性を高めるため、感温液晶を部分形成したり、ホログラムレリーフもしくは反射性薄膜層を部分形成し、その部分形成した反射性薄膜の形状にあわせて感温液晶を形成したり、その形成部分より小さく感温液晶を形成することもできる。また、感温液晶を部分形成した場合、余白部分を別の樹脂で埋めて段差や色調差を目立たなくすることも好適である。
【0063】
反射性薄膜が金属の場合は、反射性薄膜と全く同一形状として、指や手のひらで暖めたとき、その反射性薄膜の輪郭部分の色調変化を確認するという手段をとることが望ましい。さらには、真正性判定をより判定しやすくするため、特定の文字、記号形状としたり、ホログラムデザインに同調させるなどの工夫をしてもよい。
【0064】
上記感温液晶を設ける際、予め以下の配向膜を設ける等の配向処理を施しても良い。配向膜は、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリイミド樹脂等の一般に配向膜として使用し得るものであれば、いずれでもよい。配向膜は、これらの樹脂の溶剤溶液を、上記のような反射性薄膜層3の表面に適宜な塗布法により塗布し、乾燥させた後に、布、ブラシ等を用いて摩擦するラビングを行なって形成する。
【0065】
(粘着剤)本発明のホログラムラベルに用いられる粘着剤5としては、従来公知の溶剤系及び水系のいずれの粘着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系樹脂などが挙げられる。自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス、それを変性したもの、特に天然ゴムにスチレン特にメタクリルさんメチルとをグラフト重合させて得た天然ゴムラテックス等の天然素材から作製されたものを用いても良い。
【0066】
粘着剤5の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、塗布し乾燥して粘着剤層を形成する。また、粘着剤の粘着力は、感温液晶4と粘着剤5との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、500〜1,000g程度の範囲にすることが望ましい。以上の如き粘着剤の種類や、塗工量は、感温液晶4上に粘着剤5を形成する際に、その剥離強度が前記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。
特に、感温液晶4への接着性を5,00g〜1,000gとするためには、多官能イソシアネート:HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等を0.1%〜1%添加し、粘着力の安定性と、感温液晶4への高い接着力を得る方法もある。
【0067】
(接着剤)本発明のホログラム転写シートに用いられる接着剤5としては、種々の物品に対する接着性を確保するためのものであるので、感温液晶4との接着性がよく、被着体と強固に接着できるものが好ましい。具体的には、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム変性物などが挙げられ、これらの中から適するものを適宜選択して使用でき、また、これらは単体、もしくは2種以上の混合系で、更に必要に応じてハードレジンや可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができる。
【0068】
接着剤5の塗工量は、約3〜10g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、塗布し乾燥して接着剤層を形成する。また、接着剤の接着力は、感温液晶4と接着剤5もしくは、接着剤5と物品との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、500〜1,000g程度の範囲にすることが望ましい。以上の如き接着剤の種類や、塗工量は、感温液晶4上に接着剤5を形成する際に、その剥離強度が前記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。
特に、感温液晶4への接着性を5,00g〜1,000gとするためには、多官能イソシアネート:HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等を0.1%〜1%添加し、背接着力の安定性と、感温液晶4への高い接着力を得る方法もある。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
厚さが12μmのPETフィルムの表面に透明紫外線硬化性樹脂組成物を3μm塗布し、レリーフホログラムの複製用型の型面を接触させたまま紫外線を照射して、透明紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、レリーフホログラムの形成を行ない、その後、レリーフホログラムの賦型された面にZnSを真空蒸着して、厚みが200nmの透明型の反射性層を形成して、その上に、コレステリック液晶を20μm程度の大きさのカプセル化に含めた感温液晶インキ(株式会社日本カプセルプロダクツRW−ELC赤色:発色温度30℃)を塗布し、乾燥後厚さを20μmとし、ホログラムシートAを得た。
【0071】
このホログラムシートを、室温20℃の部屋に放置した後、その透明基材面に親指を強く5秒押し当てたところ、ホログラム画像の下で赤色を呈していた感温液晶が、指の形状にて緑色を呈した。この色調確認を行った後、室温にて10秒放置したところ、緑色が速やかに変化し、元の赤色に戻った。結果として、判定動作実施前と同一の状態となり、判定動作も5秒指で押さえただけであるため、これら判定動作が行われたことを第三者が気づくことはないと推察された。
【0072】
(実施例2)
実施例1のホログラムシートの感温液晶の上に、次の組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着剤5を形成し、実施例2のホログラムラベルA´を得た。
・<粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
トルエン 40質量部
酢酸ビニル 40質量部
【0073】
このホログラムラベルを、ホログラム画像に合わせて、8mm径に切り出し、カード会社名が印刷されているクレジットカードのその社名上に貼付し、20℃の室温に放置した。その後、その透明基材面に親指を強く5秒押し当てたところ、ホログラム画像の下で赤色を呈していた感温液晶が、全面緑色を呈した。この色調確認を行った後、室温にて10秒放置したところ、緑色が速やかに変化し、元の赤色に戻った。
【0074】
結果として、判定動作実施前と同一の状態となり、判定動作もカードを取り扱う動作として、ホログラムラベル上を5秒指で押さえただけであるため、これら判定動作が行われたことを第三者が気づくことはないと推察された。
【0075】
(実施例3)
厚さが25μmのPETフィルムの表面に透明紫外線硬化性樹脂組成物を3μm塗布し、レリーフホログラムの複製用型の型面を接触させたまま紫外線を照射して、透明紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、レリーフホログラムの形成を行ない、その後、レリーフホログラムの賦型された面にALを真空蒸着して、厚みが100nmの反射性金属層を形成して、その上に、コレステリック液晶を20μm程度の大きさのカプセル化に含めた感温液晶インキ(株式会社日本カプセルプロダクツRW−ELC赤色:発色温度30℃)を塗布し、乾燥後厚さを20μmとし、ホログラムシートを得た。
【0076】
このホログラムシートの感温液晶の上に、次の組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が5μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、接着剤5を形成し、実施例3のホログラム転写シートA´´を得た。
・<接着剤組成物>
塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体 30質量部
トルエン 40質量部
酢酸ビニル 40質量部
【0077】
このホログラムラベルを、ホログラム画像に合わせて、8mm径に切り出し、カード会社名が印刷されているクレジットカードのその社名上に乗せ、150℃10分間プレスしてカード基材に転写し、その後、透明基材を剥離した。結果、感温液晶はカード最表面より3μm下に埋め込まれ、カード表面からは、ホログラムデザインとその輪郭部がわずか赤色であることを確認することができた。
【0078】
このカードを20℃の室温に放置し、その後、そのホログラム面に親指を強く3秒押し当てたところ、ホログラム画像の輪郭部で赤色を呈していた感温液晶が、緑色を呈した。この色調確認を行った後、室温にて10秒放置したところ、緑色が速やかに変化し、元の赤色に戻った。
【0079】
結果として、判定動作実施前と同一の状態となり、判定動作もカードを取り扱う動作として、ホログラム上を3秒指で押さえただけであるため、これら判定動作が行われたことを第三者が気づくことはないと推察された。また、感温液晶がホログラムの下に隠れており、その存在すら気づかないものと推察された。
【0080】
(実施例4)
厚さが12μmのPETフィルムの表面に透明紫外線硬化性樹脂組成物を3μm塗布し、レリーフホログラムの複製用型の型面を接触させたまま紫外線を照射して、透明紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、レリーフホログラムの形成を行ない、その後、レリーフホログラムの賦型された面にZnSを真空蒸着して、厚みが200nmの透明型の反射性層を形成して、その上に、カイラルネマチック液晶を20μm程度の大きさのカプセル化に含めた感温液晶インキ(株式会社日本カプセルプロダクツKX−ELC赤色:発色温度35℃)を塗布し、乾燥後厚さを20μmとし、ホログラムシートAを得た。
【0081】
このホログラムシートを、室温20℃の部屋に放置した後、その透明基材面に親指を強く10秒押し当てたところ、ホログラム画像の下で赤色を呈していた感温液晶が、指の形状にて緑色を呈した。この色調確認を行った後、室温にて3秒放置したところ、緑色が速やかに変化し、元の赤色に戻った。結果として、速やかに判定動作実施前と同一の状態となり、これら判定動作が行われたことを第三者が気づくことはないと推察された。
【0082】
(比較例1)
実施例1において、感温液晶の代わりに、H.W.SANDS社製TCP63-31(オレンジのサーモクロミック顔料33℃→35℃消色)を用いた以外は、同一とし、比較例1のホログラムシートを得た。
このホログラムシートを、室温20℃の部屋に放置した後、その透明基材面に親指を強く5秒押し当てたところ、ホログラム画像の下でオレンジ色を呈していた感温液晶が、指の形状にて少し薄いオレンジ色を呈した。この色調確認を行った後、室温にて10秒放置しただけでは、色調にあまり変化が見られなかった。
【0083】
結果として、判定そのものを実施することができなかった。従って、第三者に気づかれることなく判定動作をすることは難しいと推察された。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態の1例を示すホログラムシートの断面図である。
【図2】本発明の実施形態の別の例を示すホログラムシートの断面図である。
【図3】本発明の実施形態のさらに別の例を示すホログラムシートの断面図である。
【符号の説明】
【0085】
A ホログラムシート
A´ ホログラムラベル
A´´ ホログラム転写シート
1 透明基材
2 ホログラム形成層
3 反射性薄膜層
4 感温液晶
5 粘着剤もしくは接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真正性識別に用いられるホログラムシートであって、透明基材の一方の面にホログラムレリーフを有するホログラム形成層が形成され、前記ホログラムレリーフに接してその一部または全部に反射性薄膜が形成され、さらに前記ホログラムレリーフ及び/または前記反射性薄膜の上に、感温液晶が形成されていることを特徴とするホログラムシート。
【請求項2】
当該感温液晶が、25度〜35度のいずれかの温度おいて色調が変わるコレステリック液晶であることを特徴とする請求項1記載のホログラムシート。
【請求項3】
当該感温液晶が、25度〜35度のいずれかの温度おいて色調が変わるカイラルネマチック液晶であることを特徴とする請求項1記載のホログラムシート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のホログラムシートの当該感温液晶形成側に、さらに粘着剤が形成されていることを特徴とするホログラムラベル。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載のホログラムシートの当該感温液晶形成側に、さらに接着剤が形成されていることを特徴とするホログラム転写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−294583(P2009−294583A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150406(P2008−150406)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】