説明

ホログラム作製方法および作製装置

【課題】低出力でホログラムを安定して描画でき、画点毎の階調表現が可能なホログラムの作製方法、ホログラム作製装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、アゾベンゼンを含む感光材料に光を入射することにより直接描画法でホログラムを作製する方法であって、前記感光材料上の特定の大きさの領域を1ドットとして、ホログラムの再生条件に応じて前記1ドットを回折格子で形成し、再生時に観察される画像のデータに基づいて前記1ドットを前記感光材料上に並べて形成することにより、ホログラムを作製するホログラム作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、ホログラムを描画するホログラム作製方法、および作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感光材料にあるパターンのホログラム(回折格子)を記録する際には、以下の方法が取られている。まず、レーザーなどのコヒーレントな光をハーフミラーやビームスプリッターを用いて分岐し、ミラー等でその光の進行方向を変え、分岐した光の一方を記録したい物体(以下OBJとする)に照射し、そのOBJの反射光あるいは透過光を感光材料に当てる。また、分岐したもう一方の光を同一箇所に当て露光する。感光材料上で同一箇所を露光した二光束が干渉し、その干渉縞がホログラムとして記録される。
【0003】
この方法では、OBJの画像を感光材料に記録するためには、レンズ等を用いて、光源からの光の径をOBJの大きさに合わせて拡張あるいは縮小する必要がある。また、感光材料に記録されるパターンの大きさを拡大または縮小して記録したい場合も同様に、光の拡張または縮小が必要である。そのため、感光材料に記録できる閾値を超える光を照射するには、高出力の光源と長い描画時間を必要とする。描画時間が長い場合、記録されるパターンが振動などの影響を受けやすく、安定しない可能性がある。
【0004】
その他、短軸が1μm、長軸が100μm程の楕円台の大きさの回折格子を並べることで、その集合体を一つのホログラムとする方法が提案されている。また、電子銃やイオンビームの強度などを変え、材料表面を削ることで材料表面にレリーフを作り、ホロログラムとする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−6220号公報
【特許文献2】特開平11−52115号公報
【特許文献3】特開2006−113429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、光の照射によりレリーフ(凹凸)を生じることで、ホログラムを作製する方法では、画点一つ一つに階調性を持たせることはできない。すなわち、回折率の違いによって階調を表現することができない。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その課題は、低出力でホログラムを安定して描画でき、画点毎の階調表現が可能なホログラムの作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、ホログラム作製方法は、アゾベンゼンを含む感光材料に光を入射することにより直接描画法でホログラムを作製する方法であって、前記感光材料上の特定の大きさの領域を1ドットとして、ホログラムの再生条件に応じて前記1ドットを回折格子で形成し、再生時に観察される画像のデータに基づいて前記1ドットを前記感光材料上に並べて形成することにより、ホログラムを作製する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るホログラム作製装置を概略的に示す図。
【図2】図2は、光源の出力を一定にした時の露光時間と回折率の関係を表すグラフ。
【図3】図3は、前記ホログラム作製装置の光束伝播状態を示す平面図。
【図4A】図4Aは、光源の出力を一定にした時の装置の動作を示すフローチャート。
【図4B】図4Bは、図4Aのフローチャートの一部を詳細に示すフローチャート。
【図5】図5は、アゾベンゼンに含まれる構造式を示す図。
【図6】図6は、5階調を表現する際の露光時間と回折率との関係を示す図。
【図7】図7は、直線近似できる範囲で5階調を表現する露光時間と回折率との関係を示す図。
【図8】図8は、反射ミラーと集光用のレンズの代わりに凹面鏡9を用いた第1変形例に係るホログラム作製装置を概略的に示す平面図。
【図9A】図9Aは、集光用のレンズの後にレンズを入れ平行光にして露光する第2変形例に係るホログラム作製装置を概略的に示す平面図。
【図9B】図9Bは、凹面鏡を用いて集光後、レンズを入れ平行光を露光する第3変形例に係るホログラム作製装置を概略的に示す平面図。
【図10】図10は、ポリゴンミラーで描画位置を変更する機構を備える第4変形例に係るホログラム作製装置を概略的に示す平面図。
【図11】図11は、複数のビームスプリッターまたはハーフミラーで分岐を増やした第5変形例に係るホログラム作製装置を概略的に示す平面図。
【図12】図12は、複数のビームスプリッターまたはハーフミラーで分岐を増やした第6変形例に係るホログラム作製装置を概略的に示す平面図。
【図13】図13は、複数の光源とビームスプリッターまたはハーフミラーを用いた第7変形例に係るホログラム作製装置を概略的に示す平面図。
【図14】図14は、複数の光源とビームスプリッターまたはハーフミラーを用いた第8変形例に係るホログラム作製装置を概略的に示す平面図。
【図15】図15は、第9変形例に係るホログラム作製方法を示すフローチャート。
【図16】図16は、図15に示すフローチャートの一部を詳細に示すフローチャート。
【図17】図17は、第2の実施形態に係るホログラム作製装置によるホログラム作製方法を示すフローチャート。
【図18】図18は、図17に示すフローチャートの一部を詳細に示すフローチャート。
【図19】図19は、露光時間を一定にした時の光のパワー密度と回折率の関係を表すグラフ。
【図20】図20は、5階調を表現する際の光のパワー密度と回折率との関係を示す図。
【図21】図21は、直線近似できる範囲で5階調を表現するパワー密度と回折率との関係を示す図。
【図22】図22は、ステージがレンズの焦点に近づく位置関係にする方法の実施形態を概略的に示す図。
【図23】図23は、凹面鏡の焦点にステージが近づく位置関係にする方法の実施形態を概略的に示す図。
【図24】図24は、平行光にするレンズの位置が集光レンズの焦点に近づく位置関係にする方法の実施形態を概略的に示す図。
【図25】図25は、平行光にするレンズの位置が凹面鏡の焦点に近づく位置関係にする方法の実施形態を概略的に示す図。
【図26】図26は、ビーム径を変える実施形態のうち、ポリゴンミラーで描画位置を変更する実施形態を概略的に示す図。
【図27】図27は、ビーム径を変える実施形態のうち、ポリゴンミラーで描画位置を変更する他の実施形態を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るホログラム作製装置を概略的に示し、図2は、階調を表現する際の、光源の出力を一定とした時の露光時間と回折率の関係を示し、図3は、ホログラム作製装置における光の伝播を拡大して示すものである。
【0011】
図1および図3に示すように、表面(レリーフ)ホログラム作製装置100は、コヒーレントな光を出射する光源1と、光源1から発振したコヒーレントな光の進行を制御、すなわち、遮蔽あるいは通過を制御するシャッター2と、シャッター2を通過した光を複数、例えば、2光に分光するビームスプリッターまたはハーフミラー3などの分岐光学部材と、を備えている。ホログラム作製装置は、ホログラムを描写する感光材料16が載置されるステージ6と、分光された2光束の進行方向を変える反射光学部材、例えば、反射ミラー4a、4b、4cと、2光束を所望のビーム径に集光し、ステージ6上の感光材料16上で二光束が重なり合うように入射させる2つのレンズ5a、5bと、を備えている。
【0012】
変更手段として機能するステージ6は、二光束のどちらとも垂直な方向に回転軸を持ち、その回転軸と平行な方向と回転軸に垂直な方向の少なくとも2軸方向に移動できる機構をもったステージである。ステージ6は、描画する面上に二光束の交点があり、かつ描画面がステージ6の回転軸に垂直な方向と平行で、二光束の成す角の二等分線と垂直になるように設置する。
【0013】
更に、ホログラム作製装置100は、光源1、シャッター2の開閉、ステージ6の移動を制御する制御装置7を備え、この制御装置7は、ケーブル8により光源、シャッター、ステージに接続されている。以下の説明では特に断りの無い限り、光源1、シャッター2、ステージ6は制御装置7にケーブル8で接続された状態で存在するものとして図は省略する。
【0014】
上記ホログラム作製装置100では、光源1から発振したコヒーレントな光の進行をシャッター2を開閉することで制御し、進行した光はビームスプリッターまたはハーフミラー3で分岐される。分岐された二光束をそれぞれ、反射ミラー4a、4b、4cで進行方向を変え、2光束のなす角度が10ないし50度、例えば30度となるように、それぞれの光束をレンズ5a、5bを用いて所望のビーム径に集光し、ステージ6上にある感光材料16上で二光束が重なり合うように入射させることで、光の干渉縞を感光材料16に記録する。
【0015】
感光材料16としては、例えばアゾベンゼンのような、少なくとも一定の範囲の露光時間において回折率が単調増加する感光材料、また、少なくとも一定の範囲の光源のパワー密度において回折率が単調増加する感光材料を用いる。図5は、アゾベンゼンとしてもっとも基本的な構造式を示している。アゾベンゼン化合物にはこの構造が必ず含まれ、その中で、左右のベンゼン間の水素部分を置換してできる誘導体でもNの二重結合とNにベンゼン間のついた基本構造を有している。
【0016】
干渉縞で形成されるドット11は、図2に示すような露光時間と回折率のデータに基づいて、制御装置7によって制御されたシャッター2の解放時間すなわち露光時間により回折率を制御することができる。図1に示すように、制御装置7によってステージ6を移動させ、ドット11を複数並べることによってそのドットの集合で所望の画像(ホログラム)20を記録する。すなわち、感光材料16上の特定の大きさの領域を1ドットとして、ホログラムの再生条件に応じて1ドットを回折格子で形成し、再生時に観察される画像のデータに基づいて前記1ドットを感光材料16上に並べることにより、ホログラムを作製する。
【0017】
図4A、4Bは、ホログラム作製装置の動作、すなわち、ホログラム作製方法を示すフローチャートである。図4Aに示すように、描画開始と共にシャッター2を閉じた状態にする(S11)。シャッター2が閉じていた場合はその状態を維持する。描画したい画像を制御装置7に取り込み(S12)、取込んだ画像の解像度を入力された所望の解像度に変換する(S13)。描画するホログラムパターンのパターン指示データは、例えば、ビットマップ形式のデジタル画像データとする。
【0018】
制御装置7により、解像度変更後の画素毎の階調判定および画素毎の露光時間の決定を行う(S14)。より詳しくは、図4Bに示すように、制御装置7により画像の最初の画素の階調(K)を読み取る(S14-1)。続いて、解像度変更前の画像(以下、元画像という)の最高階調数(実質的には最高階調+1)を、表現したい階調(Kw:S12とS13の間に入力された階調)で割った商で、最初の画素の階調(K)を割った商の値をKnに代入する(S14-2)。
【0019】
i=0とし、Kn≦Kw−iの真偽を判定する(S14−3)。偽の場合にはi=i+1を代入し、再度判定し、真の場合にはiの値、すなわち、その画素の階調に合わせて、描画する回折格子の回折率の最高値をDmとし、Dm÷Kw=αとして、回折率がiα(iα≦Dm)となる各露光時間を、図2に示した露光時間と回折率のグラフから読み取った値を露光時間としてセットする(S14-4)。
【0020】
次いで、全画素の階調判定が終了したかどうかを判定し、YESの場合は、描画点への移動情報と描画点での露光時間すなわち、シャッター解放時間を制御装置7に格納(S15)し、NOの場合は次の画素の階調判定(S14-1)へ戻る(S14-5)。
【0021】
続いて、図4Aに示すように、描画点への移動情報と描画点での露光時間情報を制御装置7に格納した後(S15)、この情報に基づいて、ステージ6を移動し、描画点で停止する(S16)。この状態で、制御装置7はシャッター2を開き、光源1から光を出射し、感光材料16の露光(描画)を開始する(S17)。ここでは、光源1からの光出力は一定としている。露光時間経過後、制御装置7はシャッター2を閉じる(S18)。次いで、描画終了の判定(全ての画素を描画したか判定)し(S19)、NOの場合はステージ6の移動(S16)へ戻り、YESの場合は描画を終了する。
【0022】
表現する階調を5とする場合の露光時間の決定方法について説明する。図6に示すように、回折率DがD=α、2α、3α、4α、5α(=Dm)とグラフ上の交点から横軸上に垂線を下ろし、その垂線と横軸との交点t1からt5を各階調の露光時間とする。
【0023】
あるいは、図7に示すように、描画する回折格子の回折率の最高値Dmを回折率と露光時間の関係が線型であるまたは線型として近似できる範囲にすることで、回折率が0から最高値Dmになるまでの時間をTmとして以下の式に従って算出し各階調の露光時間t1ないしt5を決定しても良い。
t=Tm÷Kw×i
階調毎の露光時間がグラフから判断できる方法であれば上記方法に限定されることはない。
【0024】
以上のように構成されたホログラム作製装置100およびホログラム作製方法によれば、アゾベンゼン材料で形成された感光材料にホログラムを描画する際、目的の画像情報を点描し、階調を有するドットを形成し、このドットを並べてホログラムを描画することにより、描画の際の光源出力を低減することが可能となる。分岐した光源の光をレンズを用いて集光後、2方向から重ね合わせ干渉させることで、1ドットを回折格子として描画することができる。レンズ等を用いて集光することにより、パワー密度を上げることで、1ドットの描画時間を短くすることができ、描画中の振動等の影響を軽減し、記録される画像の安定化を図ることができる。描画サイズおよび完成画像の解像度を容易に変更することが可能となる。光源の出力を一定にした場合、露光時間と回折率の関係が単調増加である範囲を利用して、回折率の違いによってホログラムの階調を表現することができる。ドット毎の輝度調整による画像の階調表現が可能となる。感光材料が載置されたステージの走査により、完成した画像のサイズをステージの移動範囲で、任意にかつ簡便に変更することが可能となる。2方向に分岐した光のなす角θを、描画点において10〜50度とすることにより、以下の表1に示すように、完成したホログラムの視認性を良好にすることができる。
【表1】

【0025】
次に、種々の変形例に係るホログラム作製装置およびホログラム作製方法について説明する。なお、以下に説明する変形例において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
【0026】
(第1変形例)
図8は、第1変形例に係るホログラム作製装置100を示している。前述した第1の実施形態では、光源1から発振した光を集光する手段としてレンズ5を用いているが、反射ミラー4a、4cを凹面鏡9a、9bに変更して集光し、レンズ5を取り除く、あるいは、2枚ある反射ミラーの一方のみを凹面鏡に変えるなどして、レンズでの集光と凹面鏡による集光を組み合わせることも可能である。
【0027】
(第2変形例)
図9Aは、第2変形例に係るホログラム作製装置100を示している。前述した第1の実施形態では、レンズ5a、5bで集光した光をそのまま感光材料16に照射しているが、集光後にレンズ10a、10bを入れ、2つの光束を平行光にした後、感光材料16に照射することも可能である。
【0028】
(第3変形例)
図9Bは、第3変形例に係るホログラム作製装置100を示している。前述した第1変形例では、凹面鏡9a、9bで集光した光をそのまま感光材料16に照射しているが、集光後にレンズ10a、10bを入れ、2つの光束を平行光にした後、感光材料16に照射してもよい。
【0029】
(第4変形例)
図10は、第4変形例に係るホログラム作製装置100を示している。前述した第1の実施形態、第1ないし第3変形例では、ステージ6を移動することにより描画点の位置を変えているが、図10(a)、(b)に示すように、集光後に変更手段として機能するポリゴンミラー12などを挿入し、光の進行方向を変えることによって、描画点の位置を変更する構成としてもよい。この際、制御装置7は、ポリゴンミラー12の駆動部に接続され、ポリゴンミラーの回転を制御する。
ポリゴンミラーによる光の走査により、完成した画像のサイズをポリゴンミラーにより光を走査できる範囲で、任意にかつ簡便に変更することができる。
【0030】
(第5変形例)
図11は、第5変形例に係るホログラム作製装置100を示している。前述した第1の実施形態、第1ないし第3変形例では、光源1から発振した光をビームスプリッターまたはハーフミラー3で分岐する回数が1回であるが、図11に示すように、複数のビームスプリッターまたはハーフミラー3を用いて、複数回分岐を行い、感光材料16上に、2画点以上、同時に描画することも可能である。分岐後の光の進行方向を変える際は、1つの反射ミラー4a、4b、4cで複数の光束を反射してもよい。
【0031】
(第6変形例)
図12は、第6変形例に係るホログラム作製装置100を示している。第5変形例のように、複数のビームスプリッターまたはハーフミラー3を用いて、光束を複数回分岐し、感光材料16上に2画点以上、同時に描画する場合、図12に示すように、光束の数に合わせて反射ミラー4a、4b、4cを複数枚ずつ用いても良い。また、シャッター2の位置はそれ以降、分岐を行わない光束上で、描画点で重ね合わせる二光束のうちの一方を遮る機能があれば良い。複数枚の反射ミラー4a、4b、4cと集光レンズ5の代わりに凹面鏡9を用いることも可能である。シャッター2の位置は、ビームスプリッターまたはハーフミラー3の後に置くことは必須ではなく、光源1の直後に置いても、分岐後の一方の光束上に配置することも可能である。
【0032】
(第7変形例)
図13は、第7変形例に係るホログラム作製装置100を示している。前述した第5、第6変形例では、1つの光源1に対して複数のビームスプリッターまたはハーフミラー3を用いて光源1から出射した光を複数回分岐しているが、図14に示すように、複数の光源1を設け、これらの光源から出射した光を1つのビームスプリッターまたはハーフミラー3で1回ずつ分岐する構成としてもよい。分岐後の光の進行方向を変える際は、反射ミラー4a、4b、4cの各々で複数の光束を反射してもよい。
【0033】
(第8変形例)
図14は、第7変形例に係るホログラム作製装置100を示している。第7変形例のように、複数の光源1を用いて、光束を複数に分岐し、感光材料16上に2画点以上、同時に描画する場合、図14に示すように、光束の数に合わせて反射ミラー4a、4b、4cを複数枚ずつ用いても良い。また、シャッター2の位置はそれ以降、分岐を行わない光束上で、描画点で重ね合わせる二光束のうちの一方を遮る機能があれば良い。複数枚の反射ミラー4a、4b、4cと集光レンズ5の代わりに凹面鏡9を用いることも可能である。シャッター2の位置は、ビームスプリッターまたはハーフミラー3の後に置くことは必須ではなく、光源1の直後に置いても、分岐後の一方の光束上に配置することも可能である。
【0034】
(第9変形例)
図15および図16は、第9変形例に係るホログラム作製方法のフローチャートを示している。前述した第1の実施形態では、最初の描画点への移動前に、すべての画素について階調判定および露光時間の決定を行っているが、図15および図16に示すように、移動中に次の画素の階調判定および露光時間の決定を行うことも可能である。
【0035】
次に、他の実施形態に係るホログラム作製方法について説明する。なお、以下に説明する実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
【0036】
(第2の実施形態)
図17および図18は、第2の実施形態に係るホログラム作製装置の動作、すなわち、ホログラム作製方法を示すフローチャート、図19は、階調を表現する際の、露光時間を一定とした時の光源のパワー密度と回折率の関係を示している。ホログラム作製装置は、前述した第1の実施形態と同一の構成を用いることができる。
【0037】
第1の実施形態では、光源の出力を一定とし、露光時間を変えることにより、回折率、すなわち、階調を調整する構成としたが、第2の実施形態では、露光時間を一定とし、光源のパワー密度を変えることにより、描画されるホログラムの階調を表現する。
【0038】
図17および図18に示すように、第2の実施形態において、描画開始と共にシャッター2を閉じた状態にする(S21)。シャッター2が閉じていた場合はその状態を維持する。描画したい画像を制御装置7に取り込み(S22)、取込んだ画像の解像度を入力された所望の解像度に変換する(S23)。描画するホログラムパターンのパターン指示データは、例えば、ビットマップ形式のデジタル画像データとする。
【0039】
制御装置7により、解像度変更後の画素毎の階調判定および画素毎の露光時間の決定を行う(S24)。より詳しくは、図4Bに示すように、制御装置7により画像の最初の画素の階調(K)を読み取る(S24-1)。続いて、解像度変更前の画像(以下、元画像という)の最高階調数(実質的には最高階調+1)を、表現したい階調(Kw:S12とS13の間に入力された階調)で割った商で、最初の画素の階調(K)を割った商の値をKnに代入する(S24-2)。
【0040】
i=0とし、Kn≦Kw−iの真偽を判定する(S24−3)。偽の場合にはi=i+1を代入し、再度判定し、真の場合にはiの値、すなわち、その画素の階調に合わせて、描画する回折格子の回折率の最高値をDmとし、Dm÷Kw=αとして、回折率がiα(iα≦Dm)となる光源1の出力を、図19に示したパワー密度と回折率のグラフから読み取った値にビーム径から算出した露光面積を乗じて光源の出力としてセットする(S24-4)。
【0041】
次いで、全画素の階調判定が終了したかどうかを判定し、YESの場合は、描画点への移動情報と描画点での光源の出力を制御装置7に格納(S25)し、NOの場合は次の画素の階調判定(S24-1)へ戻る(S24-5)。
【0042】
続いて、図4Aに示すように、描画点への移動情報と描画点での露光時間情報を制御装置7に格納した後(S25)、この情報に基づいて、ステージ6を移動し、描画点で停止する(S26)。この状態で、制御装置7はシャッター2を開き、光源1から光を出射し、感光材料16の露光(描画)を開始する(S27)。露光時間経過後、制御装置7はシャッター2を閉じる(S28)。次いで、描画終了の判定(全ての画素を描画したか判定)し(S29)、NOの場合はステージ6の移動(S26)へ戻り、YESの場合は描画を終了する。
【0043】
表現する階調を5とする場合の光源出力の決定方法について説明する。図20に示すように、回折率DがD=α、2α、3α、4α、5α(=Dm)とグラフ上の交点から横軸上に垂線を下ろし、その垂線と横軸との交点P1からP5を各階調のパワー密度とし、これに露光面積を乗じて光源の出力とする。
【0044】
あるいは、図21に示すように、描画する回折格子の回折率の最高値Dmを回折率とパワー密度の関係が線型であるまたは線型として近似できる範囲にすることで、回折率が0から最高値Dmになるまでのパワー密度をPmとして以下の式に従って算出し、パワー密度Pdを決定し、光源の出力Pを決定しても良い。
Pd=Pm÷Kw×i
P=Pd×(描画点でのビーム径)2÷(光源のビーム径)2
なお、階調毎のパワー密度がグラフから判断できる方法であれば上記方法に限定されることはない。
【0045】
以上のように構成されたホログラム作製装置およびホログラム作製方法によれば、アゾベンゼン材料で形成された感光材料にホログラムを描画する際、目的の画像情報を点描し、階調を有するドットを形成し、このドットを並べてホログラムを描画することにより、描画の際の光源出力を低減することが可能となる。描画サイズおよび完成画像の解像度を容易に変更することができるとともに、1ドットの描画時間を短くし記録される画像の安定化を図ることができる。露光時間を一定にした場合、光源のパワー密度と回折率の関係が単調増加である範囲を利用して、回折率の違いによって階調を表現することができる。ドット毎の輝度調整による画像の階調表現が可能となる。
上述した第2の実施形態においても、前述した第1ないし第9変形例を適用することが可能である。また、光源の出力の制御は、制御装置による電子的な制御に限らず、透過率の異なる複数枚のNDフィルターを例えば円状に並べ、回転によりメカニカルに入れ替えることにより、光源の出力を制御することも可能である。
【0046】
次に、描画するホログラムの解像度を変更する方法について図22から図26を参照して説明する。第1の実施形態で示したホログラム作製装置100のレンズ5、凹面鏡9、レンズ10、ステージ6などの位置を調整して解像度を変更する。
完成する画像サイズを変えずに解像度を2倍にする際は、描画する完成ドットの径を半分にして描画することで実現できる。ドット径を半分にする方法は、図22に示すように、ステージ6をレンズ5の焦点に近づく位置に移動する方法、あるいは、レンズ5を移動してその焦点をステージ6に近付ける方法がある。また、図23に示すように、ステージ6を凹面鏡9の焦点に近づく位置に移動する方法、あるいは、凹面鏡9を移動してその焦点をステージ6に近付ける方法がある。図24に示すように、図9Aで示したレンズ10の位置がレンズ5の焦点に近づく位置関係にする方法、また、図25に示すように、図9Bで示したレンズ10の位置が凹面鏡9の焦点に近づく位置関係にする方法がある。
【0047】
上述した方法では、すべて集光した光または集光した光を平行光にしたものをステージ上の描画点に照射しているが、所望の解像度を実現するビーム径で描画点に照射する限りにおいて、図26および図27に示すように、ポリゴンミラー12等で描画位置を変えて描画することも可能である。
【0048】
以上の方法により、感光材料16に入射する光の径を光源のビーム径、またはレンズのフォーカス、または凹面鏡等による集光の度合いを変更することで、記録される画像の解像度を容易に変更できることができる。
【0049】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…光源、2…シャッター、3…ビームスプリッターまたはハーフミラー
4a、4b、4c…反射ミラー、5a、5b…レンズ、6…ステージ、7…制御装置、
8…ケーブル、9…凹面鏡、10…レンズ、11…回折格子のドット、
12…ポリゴンミラー、13…レンズ、14…反射ミラー、
16…感光材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾベンゼンを含む感光材料に光を入射することにより直接描画法でホログラムを作製する方法であって、
前記感光材料上の特定の大きさの領域を1ドットとして、ホログラムの再生条件に応じて前記1ドットを回折格子で形成し、再生時に観察される画像のデータに基づいて前記1ドットを前記感光材料上に並べて形成することにより、ホログラムを作製するホログラム作製方法。
【請求項2】
光源から出射された光を複数の光束に分岐し、分岐した光束を集光して少なくとも2方向から前記感光材料上で重ね合わせ干渉させることで、1ドットを回折格子として描画する請求項1に記載のホログラム作製方法。
【請求項3】
前記感光材料が載置されるステージを移動することにより、前記回折格子のドットを描画する位置を変更する請求項2に記載のホログラム作製方法。
【請求項4】
前記分岐した光束を走査することにより、前記回折格子のドットを描画する位置を変更する請求項2に記載のホログラム作製方法。
【請求項5】
前記1ドットを描画する際、光の出力を一定とし、階調に応じて1ドットの露光時間を変更することにより、描画する前記ドットに階調性を持たせる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のホログラム作製方法。
【請求項6】
描画する元画像の最高階調をKm、表現する階調をKwとする時、以下の式に従って、ある画素の階調Kを表現したい階調Knに変換し、
Kn=K÷{(Km+1)÷Kw}
得られたKnがKn≦Kw−i (ただし、iは0≦i≦Kwを満たす整数)
となるまでiを0から順に増加していき、Kn≦Kw−iを満たす時のiを描画する階調と判定する請求項5に記載のホログラム作製方法。
【請求項7】
前記判定した階調に合わせて、光源の出力を一定にした状態で、描画する回折格子の回折率の最高値をDmとして、Dm÷Kw=αとして、回折率がiα(iα≦Dm)となる各露光時間を、露光時間と回折率の関係グラフから読み取った値として露光時間tを決定する請求項6に記載のホログラム作製方法。
【請求項8】
前記判定した階調に合わせて、光源の出力を一定にした状態で、描画する回折格子の回折率の最高値Dmを回折率と露光時間の関係が線型であるまたは線型として近似できる範囲にすることで、回折率が0から最高値Dmになるまでの時間をTmとして、以下の式
t=Tm÷Kw×i に従って露光時間tを算出する請求項7に記載のホログラム作製方法。
【請求項9】
前記1ドットを描画する際、前記1ドットの露光時間を一定とし、階調に応じて光源のパワー密度を変更することにより、描画する前記ドットに階調性を持たせる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のホログラム作製方法。
【請求項10】
描画する元画像の最高階調をKm、表現する階調をKwとする時、以下の式に従って、ある画素の階調Kを表現したい階調Knに変換し、
Kn=K÷{(Km+1)÷Kw}
得られたKnがKn≦Kw−i (ただし、iは0≦i≦Kwを満たす整数)
となるまでiを0から順に増加していき、Kn≦Kw−iを満たす時のiを描画する階調と判定する請求項9に記載のホログラム作製方法。
【請求項11】
前記判定した階調に合わせて、露光時間を一定にした状態で、描画する回折格子の回折率の最高値をDmとして、Dm÷Kw=αとして、回折率がiα(iα≦Dm)となる各パワー密度P1からPiを、パワー密度と回折率の関係グラフから読み取った値としてパワー密度Pを決定する請求項10に記載のホログラム作製方法。
【請求項12】
前記判定した階調に合わせて、露光時間を一定にした状態で、描画する回折格子の回折率の最高値Dmを回折率と光源のパワー密度の関係が線型であるまたは線型として近似できる範囲にすることで、回折率が0から最高値Dmになるパワー密度をPmとして以下の式 P=Pm÷Kw×i に従って算出する請求項10に記載のホログラム作製方法。
【請求項13】
光を発振する光源と、
光源から光を遮るための開閉自在なシャッターと、
光源から発振された光を2方向に分岐する分岐光学部材と、
光の進行方向を変える反射光学部材と、
光を集光するレンズと、
アドベンゼンを含む感光材料を支持するステージと、
前記ステージを移動あるいは前記光を走査し、前記感光材料上における光の照射位置を変更する変更手段と、
前記シャッターの開閉とその開閉時間及び、前記変更手段の動作を制御する制御部と、
を具備し、分岐した光束を集光して少なくとも2方向から前記感光材料上で重ね合わせ干渉させることで、1ドットを回折格子として前記感光材料に描画するホログラム作製装置。
【請求項14】
前記2方向の光束のなす角が、描画点において10ないし50度である請求項13に記載のホログラム作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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