説明

ホログラム再生装置及びホログラム再生方法

【課題】デジタル画像のデジタルデータ量を減らさずにデジタル画像の再生精度を向上することができるホログラム再生装置及びホログラム再生方法を提供する。
【解決手段】光検出器26が光記録媒体22を透過してきた、歪み検出用のマーカーを含む光を受光すると、情報取得部28が個々のマーカー32の座標を取得する。この座標は、マーカー32の光記録媒体22の歪みに応じた変形を反映している。また、情報取得部28は、変形前のマーカー32の座標を取得し、変形したマーカー32の座標と比較して差分を算出する。その後、情報取得部28は、算出した差分に基づき、歪み情報として再生像の(x,y)座標ごとの歪み率(x方向及びy方向に何画素ずれているか)を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム再生装置及びホログラム再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラム記録・再生装置において、例えば二値のデジタルデータ「0,1」を例えば「明、暗」としてデジタル画像化した信号光をホログラムとして記録再生することによりデジタルデータの記録再生を行うものがある。フーリエ変換ホログラムの場合、信号光はレンズによりフーリエ変換され、フーリエ変換像が光記録媒体に照射される。また、信号光と干渉して干渉縞を生成する参照光も同時に光記録媒体に照射され、生じた干渉縞がホログラムとして光記録媒体に記録される。
【0003】
このようなホログラム記録・再生装置において、データを再生する際には、参照光を光記録媒体に照射し、回折光を光検出器で受光してデジタル画像を再生し、デジタルデータを取得する。
【0004】
上記ホログラムを生成する際には、レンズの収差、光記録媒体の厚さの変動、ホログラムの多重度等によりホログラムに歪みが生ずる場合が多い。そこで、歪み補正用のマーカーをデジタル画像に組み込むことにより、デジタル画像の再生精度を向上する技術が提案されている(例えば、下記特許文献1)。この場合、歪み補正用のマーカーとデジタルデータを表すデジタル画像とが混在することになり、デジタル画像に含まれるデジタルデータ量が減ることになる。
【特許文献1】特開2005−242304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、デジタル画像のデジタルデータ量を減らさずにデジタル画像の再生精度を向上することができるホログラム再生装置及びホログラム再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載のホログラム再生装置の発明は、歪み検出用画像を生成する画像生成手段と、前記画像生成手段を透過または反射した光が光記録媒体を透過した後に、当該透過光を受光する受光手段と、前記受光手段の受光画像と前記歪み検出用画像とに基づき、歪み情報を取得する歪み情報取得手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記画像生成手段が空間光変調器を含んで構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の発明において、前記歪み情報取得手段が、前記光記録媒体上の複数の位置における歪み情報を取得することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載の発明において、さらに前記光記録媒体の透過光に含まれる信号画像成分を除去するフィルタ手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記フィルタ手段がローパスフィルタであることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載のホログラム再生方法の発明は、歪み検出用画像を生成し、前記歪み検出用画像を含む光が光記録媒体を透過した後に、当該透過光を受光し、前記受光した画像と前記歪み検出用画像とに基づき、歪み情報を取得する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、歪み検出用画像をデジタルデータを表すデジタル画像と混在させる場合に比べて、デジタル画像に含まれるデジタルデータ量の減少を回避できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、ホログラムの記録・再生に使用する空間光変調器を光記録媒体の歪み検出にも使用することができ、装置の構成を簡略化することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、光記録媒体上の位置に応じた歪みのばらつきを適切に検出することができる。
【0015】
請求項4及び請求項5の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、信号画像成分による歪み検出用画像画像の劣化を回避できるので、高い精度で歪み情報を取得することができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、歪み検出用画像をデジタルデータを表すデジタル画像と混在させる場合に比べて、デジタル画像に含まれるデジタルデータ量の減少を回避できるホログラム再生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0018】
図1には、本発明にかかるホログラム再生装置の一実施形態の構成例が示される。図1において、ホログラムの回折光から情報を再生する際には、光源10からのコヒーレント光をレンズ12、14によって口径の広い平行光にし、空間光変調器18に入射させる。空間光変調器18は、例えば液晶パネルにより構成され、コンピュータによって構成される画像制御部16により表示制御されて、入射した光を参照光Rのみとして出射する。本例では、参照光Rが、空間光変調器18の外側領域から出射される。空間光変調器18から出射された光は、フーリエ変換レンズ20によってフーリエ変換され、光記録媒体22に照射される。これにより発生するホログラムからの回折光を逆フーリエ変換レンズ24で平行光とし、光検出器26により受光する。回折光を受光した光検出器26の出力信号は、コンピュータ等により実現される情報取得部28に入力され、ホログラムに含まれている情報を取得する。
【0019】
また、上記光記録媒体22には、ホログラムが2次元的に分布して記録されているので、所望の情報を読み出す際には光記録媒体22上の位置を指定して参照光Rを照射する必要がある。このため、図1に示されたホログラム再生装置では、光記録媒体22上への参照光Rの照射位置を制御するための位置制御部30が設けられている。
【0020】
なお、信号光をホログラムとして光記録媒体22に記録する際には、液晶パネルにより構成された空間光変調器18が画像制御部16により制御されて、2値のデジタルデータ「0,1」を「明、暗」としたデジタル画像(2値画像)を表示する。これによって、空間光変調器18を通過した光は、2値画像の各画素の値に応じて強度変調されて信号光Sとなる。この信号光Sを、フーリエ変換レンズ20によってフーリエ変換し、光記録媒体22に照射する。また、参照光Rは、上記信号光Sと光軸を共通にして、その外側から光記録媒体22に照射される。これにより、光記録媒体22中でフーリエ変換後の信号光Sと参照光Rとが干渉して、光記録媒体22に信号光Sがホログラムとして記録される。
【0021】
なお、上記空間光変調器18は透過型として記載されているが、反射型とすることもできる。
【0022】
また、図1の例は、参照光Rと信号光Sとが同軸光学系により光記録媒体22に照射される、いわゆるコリニア方式であるが、光源10からのコヒーレント光を図示しないビームスプリッタ及び適宜な反射鏡により信号光Sとは別の光路を通過する参照光R’として光記録媒体22に照射する二光波方式としてもよい。
【0023】
図2には、上述したコリニア方式における空間光変調器18の表示パターンの例が示される。図2において、中央領域Aには2値画像が表示される。また、外周領域Bには参照光が透過する。光記録媒体22に記録されたホログラムの回折光から情報を再生する際には、空間光変調器18において、表示パターンの中央領域Aを透過する信号光Sを遮断し、参照光Rのみが外周領域Bを透過するように画像制御部16が制御する。また、画像制御部16は、ホログラムが記録された光記録媒体22の歪みを検出するための歪み検出用画像を空間光変調器18に表示させる制御も行う。
【0024】
図3には、上記空間光変調器18に表示される歪み検出用画像の例が示される。図3において、歪み検出用画像には、十字形のマーカー32が複数配列されている。図3の例では、マーカー32が縦横に等間隔に配列されているが、これに限定されるものではなく、例えば縦または横に1列、斜めに1列または複数列等の配列としてもよい。
【0025】
本実施形態において、光記録媒体22の歪み情報を取得する場合には、空間光変調器18に図3に示される歪み検出用画像を表示させた状態で、光源10からのコヒーレント光をレンズ12、14により平行光として入射させる。この入射光は、歪み検出用画像を含んで空間光変調器18から出射し、フーリエ変換レンズ20を介して光記録媒体22に照射される。このときに光記録媒体22を透過する光は、逆フーリエ変換レンズ24を介して光検出器26に受光される。光検出器26に受光された光には、光記録媒体22の歪みに応じて変形したマーカー32の画像が含まれているので、この変形したマーカー32の画像を情報取得部28が取得し、マーカー32の元の画像と比較することにより光記録媒体22の歪み情報を取得する。
【0026】
図4には、情報取得部28が歪み情報を取得する際の動作例のフローが示される。図4において、光検出器26が光記録媒体22を透過してきた、歪み検出用のマーカー32を含む光を受光すると(S1)、情報取得部28が個々のマーカー32の座標を取得する(S2)。上述したように、このとき光検出器26が受光した光記録媒体22の透過光には、光記録媒体22の歪みに応じて変形したマーカー32の画像が含まれているので、S2で取得する座標は、マーカー32の変形を反映している。
【0027】
次に、情報取得部28は、画像制御部16が空間光変調器18に表示させたマーカー32の座標を取得し、S2で取得した変形したマーカー32の座標と比較して差分(ベクトル)を算出する(S3)。
【0028】
その後、情報取得部28は、S3で算出した差分に基づき、歪み情報として再生像の(x,y)座標ごとの歪み率(x方向及びy方向に何画素ずれているか)を計算する(S4)。この計算結果は、適宜な記憶装置に記憶させておく。
【0029】
なお、上記S1〜S4の工程は、ホログラムの再生処理とは別に行うので、歪み補正用のマーカーとデジタルデータを表すデジタル画像とが混在することにはならない。このため、デジタル画像に含まれるデジタルデータ量を減少させることはない。
【0030】
以上のようにして求めた歪み情報は、光記録媒体22に参照光Rを照射し、デジタル画像を再生する際に、光検出器26が受光したデジタル画像の歪みの補正に使用する。この補正は、例えばx方向及びy方向の画素のずれに応じて、各方向における画素の読み込み間隔(何画素毎に読み込むか)を調整することにより行うことができる。
【0031】
また、光記録媒体22では、光記録媒体22上の位置により厚さ、屈折率、ホログラムの記録量等が異なっている。このため、光記録媒体22上の位置が異なると歪みの大きさも異なっている場合が多い。従って、上述した歪み情報は、光記録媒体22上の複数の位置において取得するのが好適である。
【0032】
本実施形態においては、位置制御部30により光記録媒体22上の位置を移動させながらマーカー32の画像を含む光を照射し、光記録媒体22上の複数の位置において歪み情報を取得する。この場合、光記録媒体22上の位置を移動して、例えば情報画像(所定の情報量を含むデジタル画像の頁)100枚毎に歪み情報を取得する等の方法が好適である。
【0033】
図5には、本発明にかかるホログラム再生装置の他の実施形態の構成例が示され、図1と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。図5において、特徴的な点は、逆フーリエ変換レンズ24と光検出器26との間にリレーレンズ34,36を設け、その間に光記録媒体22からの回折光に含まれる信号画像成分を除去するフィルタ38を配置した点である。これにより、光記録媒体22の歪み情報を取得する際に、マーカー32の画像のみを光検出器26で受光することができる。この結果、不要な回折光(信号画像成分)によるマーカー32の画像の劣化を回避できるので、高い精度で歪み情報を取得することができる。
【0034】
上記フィルタ38は、光記録媒体22からの回折光から信号画像成分を除去できるものであれば限定されない。例えば、マーカー32の画像を信号画像のパターンよりも低周波の成分で表現した場合には、マーカー32の画像のみを透過するローパスフィルタとすればよい。なお、ホログラムの回折光から情報を再生する際には、フィルタ38は光路から除去する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかるホログラム再生装置の一実施形態の構成例を示す図である。
【図2】コリニア方式における空間光変調器の表示パターンの例を示す図である。
【図3】空間光変調器に表示される歪み検出用画像の例を示す図である。
【図4】情報取得部が歪み情報を取得する際の動作例のフロー図である。
【図5】本発明にかかるホログラム再生装置の他の実施形態の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 光源、12,14 レンズ、16 画像制御部、18 空間光変調器、20 フーリエ変換レンズ、22 光記録媒体、24 逆フーリエ変換レンズ、26 光検出器、28 情報取得部、30 位置制御部、32 マーカー、34,36 リレーレンズ、38 フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪み検出用画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段を透過または反射した光が光記録媒体を透過した後に、当該透過光を受光する受光手段と、
前記受光手段の受光画像と前記歪み検出用画像とに基づき、歪み情報を取得する歪み情報取得手段と、
を備えることを特徴とするホログラム再生装置。
【請求項2】
請求項1記載のホログラム再生装置において、前記画像生成手段は空間光変調器を含んで構成されていることを特徴とするホログラム再生装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のホログラム再生装置において、前記歪み情報取得手段は、前記光記録媒体上の複数の位置における歪み情報を取得することを特徴とするホログラム再生装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項記載のホログラム再生装置が、さらに前記光記録媒体の透過光に含まれる信号画像成分を除去するフィルタ手段を備えることを特徴とするホログラム再生装置。
【請求項5】
請求項4記載のホログラム再生装置において、前記フィルタ手段がローパスフィルタであることを特徴とするホログラム再生装置。
【請求項6】
歪み検出用画像を生成し、
前記歪み検出用画像を含む光が光記録媒体を透過した後に、当該透過光を受光し、
前記受光した画像と前記歪み検出用画像とに基づき、歪み情報を取得する、
ことを特徴とするホログラム再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−305458(P2008−305458A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149627(P2007−149627)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】