ホログラム複製方法およびホログラム作成方法
【課題】薄い厚みのホログラム積層体を実現し、さらに、光学密着液を使用せずに複製を行う。
【解決手段】ホログラム積層体は、感光性材料からなるホログラム記録層1と、ホログラム記録層1の上面に被着されたハードコート2と、ホログラム記録層1の下面に被着されたハードコート3とからなる。ハードコート2および3は、エネルギー線硬化樹脂によって形成される。ハードコート2および3のエネルギー線硬化樹脂は、完全硬化および半硬化の何れの状態でも良い。シールとしてホログラム積層体を構成する場合には、ハードコート3の下面に接着剤層4を介してセパレータ層(PET等の樹脂からなる剥離フィルム)5が存在する。ホログラム積層体の厚みを50μm以下とできる。
【解決手段】ホログラム積層体は、感光性材料からなるホログラム記録層1と、ホログラム記録層1の上面に被着されたハードコート2と、ホログラム記録層1の下面に被着されたハードコート3とからなる。ハードコート2および3は、エネルギー線硬化樹脂によって形成される。ハードコート2および3のエネルギー線硬化樹脂は、完全硬化および半硬化の何れの状態でも良い。シールとしてホログラム積層体を構成する場合には、ハードコート3の下面に接着剤層4を介してセパレータ層(PET等の樹脂からなる剥離フィルム)5が存在する。ホログラム積層体の厚みを50μm以下とできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リップマンホログラムに適用されるホログラム複製方法およびホログラム作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示が可能なホログラムは、クレジットカードの真贋判定のために使用されている。現状では、干渉膜を表面の凹凸として記録したエンボス型ホログラムが多く使用されている。しかしながら、エンボス型ホログラムは、偽造されやすい問題があった。これに対して、干渉膜を膜内部の屈折率の差として記録するリップマン型ホログラムは、偽造が極めて困難である。その理由は、記録画像を制作するのに高度な技術が必要とされ、また、記録材料が入手困難なことによる。
【0003】
リップマン型ホログラムを制作する過程は、概略的には、画像の撮像、またはコンピュータグラフィックスによる画像の取得と、取得した画像の編集等の処理からなるコンテンツ製作工程と、ホログラム原版作成工程と、複製(量産)工程とからなる。画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば円筒状レンズによって短冊状の画像に変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が短冊状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。原版に対してホログラム記録媒体が密着され、レーザ光が照射され、ホログラムが複製される。
【0004】
このホログラムでは、例えば横方向の異なる観察点から順次撮影することにより得られた画像情報が短冊状の要素ホログラムとして横方向に順次記録されているので、このホログラムを観察者が両目で見たとき、その左右の目にそれぞれ写る2次元画像は若干異なるものとなる。これにより、観察者は視差を感じることとなり、3次元画像が再生されることとなる。
【0005】
上述したように、短冊状の要素ホログラムを順次記録する場合には、水平方向のみに視差を持つHPO(Horizontal Parallax Only)ホログラムが作成される。HPO型は、プリントにかかる時間が短く、高画質記録が実現できる。さらに、記録方式において上下視差も入れることもできる。水平方向および垂直方向の両方向に視差を持つホログラムは、FP(Full Parallax)型のホログラムと称される。
【0006】
上述した複製に使用されるホログラム記録媒体(以下、ホログラム積層体と称する)として、下記の特許文献1に記載のものを図13に示す。但し、特許文献1に記載されている構造は、ブロッキング層106および表面保護層108を有しない構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−090857号公報
【0008】
図13において、最も下側の2点鎖線で示すセパレータ層(剥離紙、剥離フィルム、カバーシート等とも称される)101に対して、接着層102、黒色シート103、接着層104、感光性材料例えばフォトポリマーからなるホログラム記録層105、ブロッキング層(ハードコート等)106、支持体フィルム107および表面保護層(ハードコート)108が順に積層されている。セパレータ層101は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
支持体フィルム107は、PET、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等が使用される。支持体フィルム107の表面硬度は低く傷がつきやすいので、その表面にハードコート処理をし、ハードコート108を形成する必要がある。また、支持体フィルム107は、数μmから十数μm程度に薄く製造することは困難である。
【0010】
ホログラム記録層105に記録された画像の画質を維持するには、支持体フィルム107の複屈折が十分に小さい必要があり、且つ支持体フィルム107の屈折率とホログラム記録層105の感光性材料の屈折率とが同一であることが望ましい。
【0011】
感光性材料の成分により支持体フィルム107が化学的にダメージを受けるので(ケミカルアタック)、ホログラム記録層105と支持体フィルム107との間にブロッキング層(ハードコート等)106を配する必要がある。
【0012】
ホログラム記録層105の表面に接着層104を塗布するのは感光性材料が完全にポリマー化された後に行う必要があり、未露光およびモノマー成分が残留している状況での接着層の形成が困難である。
【0013】
上述した理由によって、実際に実現可能な構成が図13に示すものとなる。かかるホログラム積層体は、セパレータ層101を除いても100μm以上と厚くなる。商品そのものにホログラム積層体を貼り付けて使用する場合には、その総厚はできるだけ薄くしたい要望が多い。また、製造工程が複雑となり、製造コストが高くなる問題があった。さらに、レーザー露光で複製を作成する際に、ホログラム原版およびホログラム積層体の間に空気層が入ると屈折率の変化が起こり安定した複製ができない。そのため通常は、光学密着液を原版およびホログラム積層体の界面に塗布して、空気を除去して密着させる工程が必要となる。しかしながら、完全に空気が入らないようにすることは困難で、また、光学密着液が人体に有害な影響を与えるので、光学密着液を使用することは、問題である。
【0014】
したがって、この発明の目的は、これらの問題点が解決されたホログラム複製方法およびホログラム作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、この発明は、エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料が塗布され、
感光性材料が記録済のホログラム記録層を有する原版と対向配置され、
原版に対して感光性材料が密着され、
レーザ光がエネルギー線硬化樹脂側から密着状態の感光性材料および原版に対して照射するホログラム複製方法である。
【0016】
エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料を一定の厚みで塗布する塗布工程と、
感光性材料を記録済のホログラム記録層を有する原版と密着させ、レーザ光をエネルギー線硬化樹脂側から密着状態の感光性材料および原版に対して照射する複製工程と、
感光性材料に被着されたエネルギー線硬化樹脂を硬化させる硬化工程と
からなるホログラム作成方法である。
【0017】
好ましくは、塗布工程を行う第1の位置と複製工程を行う第2の位置と硬化工程を行う第3の位置とが、それぞれ搬送手段によってインライン接続されている。
【0018】
この発明は、第1のエネルギー線硬化樹脂上に感光性材料を一定の厚みで塗布する塗布工程と、
感光性材料を記録済のホログラム記録層を有する原版と密着させ、レーザ光を第1のエネルギー線硬化樹脂側から密着状態の感光性材料および原版に対して照射する複製工程と、
感光性材料と第2のエネルギー線硬化樹脂とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
感光性材料の両面に被着された第1および第2のエネルギー線硬化樹脂を硬化させる硬化工程と
からなるホログラム作成方法である。
【0019】
好ましくは、塗布工程を行う第1の位置と複製工程を行う第2の位置と貼り合わせ工程を行う第3の位置と硬化工程を行う第4の位置とが、それぞれ搬送手段によってインライン接続されている。
【発明の効果】
【0020】
この発明では、ホログラム記録層の感光性材料をエネルギー線硬化樹脂からなる支持体に塗布して形成される。支持体は、エネルギー線硬化樹脂を薄く塗布して作成することが可能であり、厚みを薄くできる。この感光性材料が塗布される支持体自体がハードコートの機能を有し、表面保護層として形成される。
【0021】
この発明では、ホログラム記録層に被着される表面保護層が剥離紙の上にエネルギー線硬化樹脂を薄く塗布して作成される。接着剤層も同様に塗布して形成される。ホログラム積層体を商品に貼り付ける際に、背景によって画像が見にくくなることを防止するために、接着剤層自体が黒色とされるので、黒色シートを用いる必要がない。
【0022】
エネルギー線硬化樹脂で形成される表面保護層およびブロッキング層は、複屈折がゼロに近く、また感光性材料の屈折率と同じ樹脂材料を用いることは容易である。一般的な樹脂フィルムの代わりにエネルギー線硬化樹脂の層を支持体として用いることによって、ホログラム積層体の総厚の低減、コストの低減、各構成層の屈折率の均一化が可能となる。
【0023】
レーザー露光による複製時に光学密着液を用いず、ウェット状態の感光性材料をホログラム原版表面に密着させることで、ホログラム原版およびホログラム積層体間の空気を除去することができる。
【0024】
ホログラム積層体の構成要素中に樹脂フィルムを使用しないことにより、ホログラム積層体が商品に貼り付けられた後に剥がす場合において、強度的に脆いエネルギー線硬化樹脂層自体が破壊されホログラム積層体の再貼り付けが不可能となる。このことによって、セキュリティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ホログラフィックステレオグラム作成時の画像処理の一例の説明に用いる略線図である。
【図2】ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置の光学系の一例を示す略線図である。
【図3】光重合型フォトポリマの感光プロセスを示す略線図である。
【図4】この発明によるホログラム積層体の一実施の形態の断面図である。
【図5】この発明によるホログラム積層体の一実施の形態の変形例断面図である。
【図6】この発明の一実施の形態のホログラム作成方法において、各工程の積層構造を示す断面図である。
【図7】ホログラム作成方法における感光性材料の塗布、乾燥および膜圧制御工程を示す略線図である。
【図8】ホログラム作成方法における複製、貼り合わせ、紫外線硬化樹脂硬化工程を示す略線図である。
【図9】ホログラム作成方法における外観検査、型抜き、巻き取り工程を示す略線図である。
【図10】複製装置の複製工程の説明に用いる略線図である。
【図11】ホログラム積層体をラミネート処理した構造の一例の説明に用いる略線図である。
【図12】ホログラム積層体をラミネート処理した構造の他の例の説明に用いる略線図である。
【図13】従来のホログラム積層体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.一実施の形態
2.他の実施の形態(変形例)
【0027】
1.一実施の形態
[ホログラム原版作成システム]
先ず、ホログラムが記録された原版が作成される。原版は、例えば水平方向の視差情報を有する多数の短冊状の複数の要素ホログラムを1つのホログラム記録媒体上に順次記録することで作成される。すなわち、図1に示すように、視差情報を含む複数の画像データD1のそれぞれを視差方向、すなわち、横(幅)方向にスリット状に分割し、分割後のスライスを寄せ集めて処理後の画像D5を再構成するものである。
【0028】
かかる原版を作成するプリンタ装置の光学系について、図2を参照してより詳細に説明する。なお、図2Aは、プリンタ装置全体の光学系を上方から見た図であり、図2Bは、プリンタ装置全体の光学系を横から見た図である。
【0029】
プリンタ装置は、図2に示すように、所定の波長のレーザ光を出射するレーザ光源31と、レーザ光源31からのレーザ光L1の光軸上に配されたシャッタ32、ミラー38およびハーフミラー33とを備えている。ここで、レーザ光源31には、波長が514.5nm、出力200mWのアルゴンレーザを用いた。
【0030】
シャッタ32は、制御用コンピュータによって制御され、ホログラム記録媒体30を露光しないときには閉じられ、ホログラム記録媒体30を露光するときに開放される。また、ハーフミラー33は、シャッタ32を通過してきたレーザ光L2を、参照光と物体光とに分離するためのものであり、ハーフミラー33によって反射された光L3が参照光となり、ハーフミラー33を透過した光L4が物体光となる。
【0031】
なお、この光学系において、ハーフミラー33によって反射され、ホログラム記録媒体30に入射する参照光の光路長と、ハーフミラー33を透過しホログラム記録媒体30に入射する物体光の光路長とは、ほぼ同じ長さとする。これにより、参照光と物体光との干渉性が高まり、より鮮明な再生像が得られるホログラムを作成することが可能となる。
【0032】
ハーフミラー33によって反射された光L3の光軸上には、参照光用の光学系として、シリンドリカルレンズ34と、参照光を平行光とするためのコリメータレンズ35と、コリメータレンズ35からの平行光を反射する全反射ミラー36とがこの順に配置されている。
【0033】
そして、ハーフミラー33によって反射された光は、先ず、シリンドリカルレンズ34によって発散光とされる。次に、コリメータレンズ35によって平行光とされる。その後、全反射ミラー36によって反射され、ホログラム記録媒体30の裏面側に入射する。
【0034】
一方、ハーフミラー33を透過した光L4の光軸上には、物体光用の光学系として、ハーフミラー33からの透過光を反射する全反射ミラー38、凸レンズとピンホールを組み合わせたスペーシャルフィルタ39、物体光を平行光とするためのコリメータレンズ40、記録対象の画像を表示する表示装置41、表示装置41を透過してきた光を要素ホログラムの幅方向に拡散させる一次元拡散板42、一次元拡散板42を透過した物体光をホログラム記録媒体30上に集光するシリンドリカルレンズ43、一次元拡散機能をもつ光学機能板45がこの順に配置されている。
【0035】
シリンドリカルレンズ43が視差方向(要素ホログラム短手方向または観察時水平方向)に物体光を集光する。光学機能板45は、集光された物体光を短冊状の要素ホログラムの長手方向に一次元的に拡散するもので、長手方向での視点の移動に対応するためのものである。例えばピッチが微細なレンチキュラーレンズを光学機能板45として使用することができる。
【0036】
そして、ハーフミラー33を透過した光L4は、全反射ミラー38によって反射された後、スペーシャルフィルタ39によって点光源からの発散光とされる。次に、コリメータレンズ40によって平行光とされ、その後、表示装置41に入射する。表示装置41は、例えば液晶ディスプレイからなる投影型の画像表示装置であり、制御用コンピュータによって制御され、制御用コンピュータから送られた画像データD5に基づく画像を表示する。
【0037】
そして、表示装置41を透過した光は、表示装置41に表示された画像によって変調された光となり、一次元拡散板42によって拡散される。ここで、一次元拡散板42は、表示装置41からの透過光を要素ホログラム幅方向に若干拡散させることにより、要素ホログラム内に光を分散させることで、作成されるホログラムの画質の向上に寄与する。
【0038】
このとき、拡散板42には、拡散板移動手段(図示は省略する)を設け、各要素ホログラムを形成する毎にこれをランダムに移動し、その位置を要素ホログラム毎に変えるようにする。これにより、ホログラムを観察したときに無限遠に定位するノイズを低減することができる。
【0039】
[ホログラム記録媒体]
ここで、上述したホログラム原版作成システムにおいて使用されるホログラム記録媒体30について説明する。このホログラム記録媒体30は、ガラス板によってフォトポリマー層が挟まれた構成、またはフィルム上にフォトポリマーが塗布された構成を有している。
【0040】
例えば光重合型フォトポリマーは、初期状態では、図3Aに示すように、モノマMがマトリクスポリマに均一に分散している。これに対して、図3Bに示すように、10〜400mJ/cm2程度のパワーの光LAを照射すると、露光部においてモノマMが重合する。そして、ポリマ化するにつれて周囲からモノマMが移動してモノマMの濃度が場所によって変化し、これにより、屈折率変調が生じる。この後、図3Cに示すように、1000mJ/cm2程度のパワーの紫外線または可視光LBを全面に照射することにより、モノマMの重合が完了する。このように、光重合型フォトポリマーは、入射された光に応じて屈折率が変化するので、参照光と物体光との干渉によって生じる干渉縞(明暗)を、屈折率の変化として記録することができる。
【0041】
[ホログラム積層体]
上述したプリンタ装置によって原版が作成され、原版に対してこの発明によるホログラム積層体が密着され、レーザ光が照射されることによって、原版が複製される。この発明によるホログラム積層体は、図4に示す構成を有している。
【0042】
この発明によるホログラム積層体は、感光性材料からなるホログラム記録層1と、ホログラム記録層1の上面に被着された表面保護層(ハードコートと適宜称する)2と、ホログラム記録層1の下面に被着されたブロッキング層(ハードコートと適宜称する)3とからなる。ハードコート2および3は、エネルギー線硬化樹脂例えば紫外線硬化樹脂によって形成される。ハードコート2および3の紫外線硬化樹脂は、完全硬化および半硬化の何れの状態でも良い。シールとしてホログラム積層体を構成する場合には、ハードコート3の下面に接着剤層(粘着層とも呼ばれる)4を介してセパレータ層(PET等の樹脂からなる剥離フィルム)5が存在する。
【0043】
ホログラム記録層1は、感光性材料として例えば屈折率Nが1.52のフォトポリマーを使用し、入射される光の明暗を屈折率の差として記録することができる。ホログラム記録層1として要求される特性は、下記のものである。
高回折効率(例えば90%以上)、回折波長半値幅:5〜30nm、高感度(例えば20mJ/cm2以下)、収縮率が低いこと
【0044】
ハードコート2は、傷の防止、帯電防止、フィルム形状形成、並びにホログラム形状の安定化のために設けられている。ハードコート2に要求される特性は、下記のものである。
高い表面硬度(傷つき防止のため)、低い表面抵抗、耐熱性(例えば100〜120°C)、低い吸湿性、良好な接着性および材料密着性、感光性材料にほぼ等しい光学屈折率(例えば1.52)、低い複屈折性(例えば±15nm(波長が633nmに対して))、低いヘイズ(表面または内部の不明瞭なくもり(外観上)の度合いのことをヘイズという)、高い透明性、表面の平滑性が良好なこと、薄い膜厚とできること(例えば20μm以下)
【0045】
ハードコート3は、材料透過防止とホログラム形状の安定化のために設けられている。感光性材料がセパレータ層5の樹脂フィルムに対して化学反応を起こすために、ブロッキング層としてのハードコート3が設けられる。ハードコート3に要求される特性は、下記のものである。
耐溶剤性(感光性材料を液状とするための溶剤によって化学的ダメージを受けない)、耐熱性(例えば100〜120°C)、低い吸湿性、良好な接着性および材料密着性、薄い膜厚とできること(例えば20μm以下)
【0046】
接着剤層4は、良好な接着性が要求される。黒色とするのは、商品等に貼り付けた場合に、背景が透けて見えると、ホログラムの画像が見にくくなることを防止するためである。
【0047】
各層の厚みの一例を下記に示す。
ホログラム記録層:12μm、ハードコート2:10μm、ハードコート3:10μm、接着剤層4:17μm
ホログラム積層体の全体の厚みt:49μm
【0048】
この発明の一実施の形態では、従来では100μm以上であったホログラム積層体の厚みを50μm以下とできる。
【0049】
なお、図4に示すこの発明によるホログラム積層体の構成において、ハードコート3はホログラム記録層1の感光材料が接着剤層4に対して化学反応を生じる可能性がある場合には必要であるが、その可能性がない場合には、ハードコート3を省略してもよい。すなわち、図5示すように、ホログラム積層体を、ホログラム記録層1と、ホログラム記録層1の上面に被着されたハードコート2とからなる構成としてもよい。この構成にすることによって、ホログラム積層体の厚みをさらに薄くできる。
【0050】
図5に示すホログラム積層体の各層の厚みの一例を下記に示す。
ホログラム記録層:12μm、ハードコート2:10μm、接着剤層17μm、
ホログラム積層体の全体の厚みt:39μm
【0051】
[ホログラム積層体の製造方法]
次に、上述したホログラム積層体の製造工程について、図6、図7、図8および図9を参照して説明する。図6は、各工程の積層構造を示すものである。また、図7、図8および図9は、一連の製造工程を示すものであるが、図面の作成スペースの制約から一連の製造工程が工程毎に分割されたものである。
【0052】
図7は、感光性材料の塗布、乾燥および膜厚制御工程を示す。図6Aに示すように、例えばPETからなる剥離フィルム11a上にハードコート2を構成するエネルギー線硬化樹脂例えば紫外線硬化樹脂11bが塗布されたフィルム11がロール状に巻かれている。紫外線硬化樹脂11bは、未硬化または半硬化状態(この状態をウエット状態と称する)である。剥離フィルム11aは、紫外線硬化樹脂11bの引っ張り強度を補強するためのもので、後述するように、完成時には、剥離されて破棄される。
【0053】
繰り出されたフィルム11が矢印方向に走行され、ローラ12の周面に巻き付けられる。フィルムの紫外線硬化樹脂11b上に感光性材料例えばフォトポリマー13がスリットダイヘッド14によって一定の膜厚となるように塗布される。スリットダイヘッド14は、有機溶剤を溶媒とする液状のフォトポリマーが図示しないタンクから供給され、スリットの幅でもってフォトポリマーを塗布するものである。スリットの開閉および開口の幅は、図示しない制御部によって制御可能とされている。
【0054】
フォトポリマー13が塗布されたフィルムが乾燥部15に導入され、乾燥される。この乾燥によって、有機溶剤の除去等がなされる。乾燥部15は、遠赤外線、温風等をフォトポリマー13に当ててフォトポリマー13を乾燥させる。乾燥は、塗布されたフォトポリマー13がたれることを防止するために行われ、乾燥後において、フォトポリマー13は、ウエット状態である。
【0055】
乾燥後に膜厚測定装置16によってフォトポリマー13の厚みが測定され、測定結果によってスリットダイヘッド14のスリットの開口量等が制御されてフォトポリマー13の厚みが一定に制御される。フォトポリマー13の塗布が終了した段階の積層構造を図6Bに示す。
【0056】
次に、図8に示す構成によって、複製、貼り合わせ、紫外線硬化樹脂の硬化が行われる。剥離フィルム11aおよび紫外線硬化樹脂11bが積層されたフィルム11上にフォトポリマー13が塗布された3層構造のフィルムが複製装置17に導入される。複製装置17において、フィルムが停止された状態において原版18に対してフォトポリマー13が密着され、レーザ光が照射される。図3を参照して説明した原理と同様に、原版18の干渉縞が屈折率の変化としてフォトポリマー13に複製される。複製装置17については、後でより詳細に説明する。
【0057】
複製後のフォトポリマー13を有するフィルムが転接するローラ19aおよび19bの間に導入される。一方、ロール状のフィルム20が繰り出され、フィルム20がローラ21を介してローラ19aおよび19bの間に導入される。このフィルム20は、図6Cに示すように、例えばPETのセパレータ層20a(図1におけるセパレータ層5に対応する)上に黒色の接着剤層20b(図1における接着剤層4に対応する)を介してハードコート3に対応する紫外線硬化樹脂20cが積層された構造を有する。紫外線硬化樹脂20cは、ウエット状態である。なお、図5に示すホログラム積層体を作製する場合には、フィルム20は紫外線硬化樹脂20cを省略した構成となる。
【0058】
ローラ19aおよび19bによってフォトポリマー13と紫外線硬化樹脂20cとが対向して圧着され、二つのフィルムが貼り合わされる。貼り合わされた後のフィルムに対して参照符号22を付す。貼り合わせ後に、必要に応じて乾燥部23によって乾燥がなされる。乾燥部23を通過したフィルム22に対して紫外線照射装置24によって紫外線が照射される。フィルム22は、図6Dに示す積層構造を有する。
【0059】
紫外線の照射によって、紫外線硬化樹脂11bおよび20cが半硬化状態または完全硬化状態となり、それぞれが上述したような要求される特性を満たすハードコート2および3を構成する。図6Dに示される積層構造は、剥離フィルム11aを除いて図1に示すこの発明によるホログラム積層体の構成を基本的に有する。
【0060】
図9に示す外観検査、型抜きおよび巻き取り工程に対してフィルム22が移送される。欠陥検査カメラ25によって欠陥の有無が検査される。互いに転接するローラ26aおよび26b間にフィルム22が挿入され、剥離フィルム11aが剥離され、ロール状に巻き取られる。剥離フィルム11aが除去されたフィルム27は、基本的にホログラム積層体を構成する。
【0061】
互いに転接するローラ26aおよび型抜き用ロールカッター26c間にフィルム27が挿入され、フィルム27に対して型抜きがなされる。表面保護のハードコート2に対応する紫外線硬化樹脂11bから例えばセパレータ層20aの表面までの深さの切り込みが形成される。フィルムの幅を横切るように切り込みを形成したり、矩形の切り込みを形成することによって、所望の平面形状の切り込みがロールカッター26cによって形成される。なお、フィルム27において、型抜きの結果生じた不要な部分を破棄しても良い。
【0062】
型抜き工程が終了したフィルム27が製品巻き取りロール28によって巻き取られる。一つのロール毎に所定長のフィルム27(フィルム状ホログラム積層体)が巻かれる。以上の工程によって、ホログラム積層体の製造が完了する。図7、図8および図9を参照して説明した一連の製造工程は、上述のようにインラインで行われる。インラインで上記一連の製造工程を行うことによって、感光性材料の劣化及び異物付着等による歩留りの低下が防止できる。また、未露光材料を保管するための暗室構造保管スペースも不要となる。
【0063】
上述した複製装置17(図8参照)について、図10を参照してより詳細に説明する。複製装置17は、原版18を含む複製エリアを密閉するチャンバ(二点鎖線で示す)と、チャンバ全体を真空環境とする排気装置(図示しない)と、原版18の幅以上の周面の幅を有するローラ51,52,53,54とを有する。原版18は、例えば2枚のガラス板の間に記録済のホログラム記録層18aが存在するものである。原版18として、この発明によるホログラム積層体と同様の構成のフィルム状のものを使用しても良い。フィルム22のフォトポリマー13の露出面が上側の原版18と対向するようになされる。ローラ51〜54がフィルム22の下面側に配置される。
【0064】
ローラ51および54は、複製装置17の入り口側および出口側にそれぞれ設置されており、設置位置は、固定である。ローラ52および53は、複製装置17の内部で出口側の近傍に設置されている。ローラ52は、原版18の出口側のエッジの下方に位置している。ローラ52および53は、垂直方向に位置が可変可能とされている。さらに、ローラ52および53は、フィルム22の移送方向(図10に向って見て左から右への方向)と逆方向にスライド可能とされている。
【0065】
図10Aに示すように、原版18の下方にフィルム22の複製領域が位置すると、フィルム22の移送が停止され、チャンバ内が真空とされる。真空とするのは、原版18とフィルム22のフォトポリマー13との間に空気が入り込むのを防止するためである。但し、真空化の工程を行わないでも良い。
【0066】
次に、図10Bに示すように、ローラ52および53が上昇され、フィルム22が上に持ち上げられる。フィルム22が原版18のエッジに接触する位置よりやや上方にローラ52、53が上昇される。したがって、フィルム22のフォトポリマー13が原版18のエッジに押し当てられる。
【0067】
次に、図10Cに示すように、ローラ52および53がスライドし、ローラ53によってフィルム22が原版18の出口側エッジに押し付けられると共に、ローラ52が入り口側に向って原版18の入り口側のエッジの下方の位置までスライドされる。スライド時にローラ52の加圧力によってフィルム22のフォトポリマー13が原版18に圧着される。上述したように、フォトポリマー13は、ウエット状態であるので、別個に密着液を使用しないでもフォトポリマー13と原版18との間に空気が入らないで、両者が全面で密着する。フォトポリマー13と原版18とが密着した状態で下方からレーザ光55が照射される。レーザ光の波長は、原版18の記録時と同一である。
【0068】
所定光量のレーザ光55を所定時間照射すると、原版18のホログラム記録層18aからの反射光(物体光)とレーザ光55(参照光)の干渉による明暗が屈折率の変化としてフォトポリマー13に記録される。レーザ光55の照射の後に、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を完全硬化させても良い。
【0069】
次に、図10Dに示すように、大気が導入されると共に、出口側ローラ53が下降され、フィルム22が原版18の出口側エッジにおいて原版18から剥離される。フィルム22が原版18から剥離されると、ローラ52および53がスライドすると共に下降し、ローラ52および53が図10Aに示す初期位置に位置する。そして、フィルム22が移送され、次の記録領域が原版18の下面に位置する状態でフィルム22が停止される。そして、上述したのと同様の複製工程がなされる。
【0070】
上述したこの発明の一実施の形態は、ホログラム積層体がセパレータ層5上に接着剤層4を介して被着される構成である。しかしながら、カード状ホログラムの場合では、ラミネート処理されるために、セパレータ層5を使用しない場合がある。図11および図12は、ラミネート処理される場合の構成例をそれぞれ示す。
【0071】
図11において、参照符号61がこの発明によるホログラム積層体を示す。すなわち、ホログラム積層体61は、画像情報が記録されたホログラム記録層1と、ホログラム記録層1の両面にハードコート2および3が被着された積層構造を有する。ホログラム積層体61の両面にPET等の透明樹脂フィルム62および63が配される。
【0072】
さらに、透明樹脂フィルム63の下面にプリントフィルム64が配される。プリントフィルム64は、枠に対して印刷が施されると共に、裏面が黒色に印刷された樹脂フィルムである。これらのホログラム積層体61、透明樹脂フィルム62および63、プリントフィルム64は、ほぼ同一の形状を有し、熱溶着等の方法で互いに接着される。
【0073】
図12に示す他の例は、ホログラム積層体71の上面に透明樹脂フィルム72およびプリントフィルム73が順に積層され、下面に白色の樹脂(PET)フィルム74が配された積層構造を有する。プリントフィルム73は、枠に対する印刷がされると共に、枠内が透明とされている。樹脂フィルム74は、ホログラム積層体71と接する面が黒色印刷面とされ、反対面、すなわち、裏面に文字等が印刷されたものである。印刷される文字は、例えば当該ホログラムの鑑賞方法の説明文とされる。
【0074】
2.他の実施の形態
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えばエネルギー線硬化樹脂に対して感光性材料を塗布する場合に、エネルギー線硬化樹脂の表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことによって、エネルギー線硬化樹脂と感光性材料との密着性がより高くなるようにしても良い。さらに、上述した説明では、紫外線硬化樹脂を使用したが、電子線硬化樹脂や可視光線硬化樹脂、熱硬化樹脂等を使用しても良い。
【符号の説明】
【0075】
1・・・ホログラム記録層
2・・・表面保護層としてのハードコート
3・・・ブロッキング層としてのハードコート
4・・・接着剤層
5・・・セパレータ層
11a・・・剥離フィルム
11b・・・紫外線硬化樹脂
13・・・フォトポリマー
14・・・スリットダイヘッド
17・・・複製装置
18・・・原版
20a・・・セパレータ層としての紫外線硬化樹脂
20b・・・接着剤層
20c・・・紫外線硬化樹脂
30・・・ホログラム記録媒体
31・・・レーザ光源
41・・・表示装置
L3・・・参照光
L4・・・物体光
【技術分野】
【0001】
この発明は、リップマンホログラムに適用されるホログラム複製方法およびホログラム作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示が可能なホログラムは、クレジットカードの真贋判定のために使用されている。現状では、干渉膜を表面の凹凸として記録したエンボス型ホログラムが多く使用されている。しかしながら、エンボス型ホログラムは、偽造されやすい問題があった。これに対して、干渉膜を膜内部の屈折率の差として記録するリップマン型ホログラムは、偽造が極めて困難である。その理由は、記録画像を制作するのに高度な技術が必要とされ、また、記録材料が入手困難なことによる。
【0003】
リップマン型ホログラムを制作する過程は、概略的には、画像の撮像、またはコンピュータグラフィックスによる画像の取得と、取得した画像の編集等の処理からなるコンテンツ製作工程と、ホログラム原版作成工程と、複製(量産)工程とからなる。画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば円筒状レンズによって短冊状の画像に変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が短冊状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。原版に対してホログラム記録媒体が密着され、レーザ光が照射され、ホログラムが複製される。
【0004】
このホログラムでは、例えば横方向の異なる観察点から順次撮影することにより得られた画像情報が短冊状の要素ホログラムとして横方向に順次記録されているので、このホログラムを観察者が両目で見たとき、その左右の目にそれぞれ写る2次元画像は若干異なるものとなる。これにより、観察者は視差を感じることとなり、3次元画像が再生されることとなる。
【0005】
上述したように、短冊状の要素ホログラムを順次記録する場合には、水平方向のみに視差を持つHPO(Horizontal Parallax Only)ホログラムが作成される。HPO型は、プリントにかかる時間が短く、高画質記録が実現できる。さらに、記録方式において上下視差も入れることもできる。水平方向および垂直方向の両方向に視差を持つホログラムは、FP(Full Parallax)型のホログラムと称される。
【0006】
上述した複製に使用されるホログラム記録媒体(以下、ホログラム積層体と称する)として、下記の特許文献1に記載のものを図13に示す。但し、特許文献1に記載されている構造は、ブロッキング層106および表面保護層108を有しない構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−090857号公報
【0008】
図13において、最も下側の2点鎖線で示すセパレータ層(剥離紙、剥離フィルム、カバーシート等とも称される)101に対して、接着層102、黒色シート103、接着層104、感光性材料例えばフォトポリマーからなるホログラム記録層105、ブロッキング層(ハードコート等)106、支持体フィルム107および表面保護層(ハードコート)108が順に積層されている。セパレータ層101は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
支持体フィルム107は、PET、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等が使用される。支持体フィルム107の表面硬度は低く傷がつきやすいので、その表面にハードコート処理をし、ハードコート108を形成する必要がある。また、支持体フィルム107は、数μmから十数μm程度に薄く製造することは困難である。
【0010】
ホログラム記録層105に記録された画像の画質を維持するには、支持体フィルム107の複屈折が十分に小さい必要があり、且つ支持体フィルム107の屈折率とホログラム記録層105の感光性材料の屈折率とが同一であることが望ましい。
【0011】
感光性材料の成分により支持体フィルム107が化学的にダメージを受けるので(ケミカルアタック)、ホログラム記録層105と支持体フィルム107との間にブロッキング層(ハードコート等)106を配する必要がある。
【0012】
ホログラム記録層105の表面に接着層104を塗布するのは感光性材料が完全にポリマー化された後に行う必要があり、未露光およびモノマー成分が残留している状況での接着層の形成が困難である。
【0013】
上述した理由によって、実際に実現可能な構成が図13に示すものとなる。かかるホログラム積層体は、セパレータ層101を除いても100μm以上と厚くなる。商品そのものにホログラム積層体を貼り付けて使用する場合には、その総厚はできるだけ薄くしたい要望が多い。また、製造工程が複雑となり、製造コストが高くなる問題があった。さらに、レーザー露光で複製を作成する際に、ホログラム原版およびホログラム積層体の間に空気層が入ると屈折率の変化が起こり安定した複製ができない。そのため通常は、光学密着液を原版およびホログラム積層体の界面に塗布して、空気を除去して密着させる工程が必要となる。しかしながら、完全に空気が入らないようにすることは困難で、また、光学密着液が人体に有害な影響を与えるので、光学密着液を使用することは、問題である。
【0014】
したがって、この発明の目的は、これらの問題点が解決されたホログラム複製方法およびホログラム作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、この発明は、エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料が塗布され、
感光性材料が記録済のホログラム記録層を有する原版と対向配置され、
原版に対して感光性材料が密着され、
レーザ光がエネルギー線硬化樹脂側から密着状態の感光性材料および原版に対して照射するホログラム複製方法である。
【0016】
エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料を一定の厚みで塗布する塗布工程と、
感光性材料を記録済のホログラム記録層を有する原版と密着させ、レーザ光をエネルギー線硬化樹脂側から密着状態の感光性材料および原版に対して照射する複製工程と、
感光性材料に被着されたエネルギー線硬化樹脂を硬化させる硬化工程と
からなるホログラム作成方法である。
【0017】
好ましくは、塗布工程を行う第1の位置と複製工程を行う第2の位置と硬化工程を行う第3の位置とが、それぞれ搬送手段によってインライン接続されている。
【0018】
この発明は、第1のエネルギー線硬化樹脂上に感光性材料を一定の厚みで塗布する塗布工程と、
感光性材料を記録済のホログラム記録層を有する原版と密着させ、レーザ光を第1のエネルギー線硬化樹脂側から密着状態の感光性材料および原版に対して照射する複製工程と、
感光性材料と第2のエネルギー線硬化樹脂とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
感光性材料の両面に被着された第1および第2のエネルギー線硬化樹脂を硬化させる硬化工程と
からなるホログラム作成方法である。
【0019】
好ましくは、塗布工程を行う第1の位置と複製工程を行う第2の位置と貼り合わせ工程を行う第3の位置と硬化工程を行う第4の位置とが、それぞれ搬送手段によってインライン接続されている。
【発明の効果】
【0020】
この発明では、ホログラム記録層の感光性材料をエネルギー線硬化樹脂からなる支持体に塗布して形成される。支持体は、エネルギー線硬化樹脂を薄く塗布して作成することが可能であり、厚みを薄くできる。この感光性材料が塗布される支持体自体がハードコートの機能を有し、表面保護層として形成される。
【0021】
この発明では、ホログラム記録層に被着される表面保護層が剥離紙の上にエネルギー線硬化樹脂を薄く塗布して作成される。接着剤層も同様に塗布して形成される。ホログラム積層体を商品に貼り付ける際に、背景によって画像が見にくくなることを防止するために、接着剤層自体が黒色とされるので、黒色シートを用いる必要がない。
【0022】
エネルギー線硬化樹脂で形成される表面保護層およびブロッキング層は、複屈折がゼロに近く、また感光性材料の屈折率と同じ樹脂材料を用いることは容易である。一般的な樹脂フィルムの代わりにエネルギー線硬化樹脂の層を支持体として用いることによって、ホログラム積層体の総厚の低減、コストの低減、各構成層の屈折率の均一化が可能となる。
【0023】
レーザー露光による複製時に光学密着液を用いず、ウェット状態の感光性材料をホログラム原版表面に密着させることで、ホログラム原版およびホログラム積層体間の空気を除去することができる。
【0024】
ホログラム積層体の構成要素中に樹脂フィルムを使用しないことにより、ホログラム積層体が商品に貼り付けられた後に剥がす場合において、強度的に脆いエネルギー線硬化樹脂層自体が破壊されホログラム積層体の再貼り付けが不可能となる。このことによって、セキュリティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ホログラフィックステレオグラム作成時の画像処理の一例の説明に用いる略線図である。
【図2】ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置の光学系の一例を示す略線図である。
【図3】光重合型フォトポリマの感光プロセスを示す略線図である。
【図4】この発明によるホログラム積層体の一実施の形態の断面図である。
【図5】この発明によるホログラム積層体の一実施の形態の変形例断面図である。
【図6】この発明の一実施の形態のホログラム作成方法において、各工程の積層構造を示す断面図である。
【図7】ホログラム作成方法における感光性材料の塗布、乾燥および膜圧制御工程を示す略線図である。
【図8】ホログラム作成方法における複製、貼り合わせ、紫外線硬化樹脂硬化工程を示す略線図である。
【図9】ホログラム作成方法における外観検査、型抜き、巻き取り工程を示す略線図である。
【図10】複製装置の複製工程の説明に用いる略線図である。
【図11】ホログラム積層体をラミネート処理した構造の一例の説明に用いる略線図である。
【図12】ホログラム積層体をラミネート処理した構造の他の例の説明に用いる略線図である。
【図13】従来のホログラム積層体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.一実施の形態
2.他の実施の形態(変形例)
【0027】
1.一実施の形態
[ホログラム原版作成システム]
先ず、ホログラムが記録された原版が作成される。原版は、例えば水平方向の視差情報を有する多数の短冊状の複数の要素ホログラムを1つのホログラム記録媒体上に順次記録することで作成される。すなわち、図1に示すように、視差情報を含む複数の画像データD1のそれぞれを視差方向、すなわち、横(幅)方向にスリット状に分割し、分割後のスライスを寄せ集めて処理後の画像D5を再構成するものである。
【0028】
かかる原版を作成するプリンタ装置の光学系について、図2を参照してより詳細に説明する。なお、図2Aは、プリンタ装置全体の光学系を上方から見た図であり、図2Bは、プリンタ装置全体の光学系を横から見た図である。
【0029】
プリンタ装置は、図2に示すように、所定の波長のレーザ光を出射するレーザ光源31と、レーザ光源31からのレーザ光L1の光軸上に配されたシャッタ32、ミラー38およびハーフミラー33とを備えている。ここで、レーザ光源31には、波長が514.5nm、出力200mWのアルゴンレーザを用いた。
【0030】
シャッタ32は、制御用コンピュータによって制御され、ホログラム記録媒体30を露光しないときには閉じられ、ホログラム記録媒体30を露光するときに開放される。また、ハーフミラー33は、シャッタ32を通過してきたレーザ光L2を、参照光と物体光とに分離するためのものであり、ハーフミラー33によって反射された光L3が参照光となり、ハーフミラー33を透過した光L4が物体光となる。
【0031】
なお、この光学系において、ハーフミラー33によって反射され、ホログラム記録媒体30に入射する参照光の光路長と、ハーフミラー33を透過しホログラム記録媒体30に入射する物体光の光路長とは、ほぼ同じ長さとする。これにより、参照光と物体光との干渉性が高まり、より鮮明な再生像が得られるホログラムを作成することが可能となる。
【0032】
ハーフミラー33によって反射された光L3の光軸上には、参照光用の光学系として、シリンドリカルレンズ34と、参照光を平行光とするためのコリメータレンズ35と、コリメータレンズ35からの平行光を反射する全反射ミラー36とがこの順に配置されている。
【0033】
そして、ハーフミラー33によって反射された光は、先ず、シリンドリカルレンズ34によって発散光とされる。次に、コリメータレンズ35によって平行光とされる。その後、全反射ミラー36によって反射され、ホログラム記録媒体30の裏面側に入射する。
【0034】
一方、ハーフミラー33を透過した光L4の光軸上には、物体光用の光学系として、ハーフミラー33からの透過光を反射する全反射ミラー38、凸レンズとピンホールを組み合わせたスペーシャルフィルタ39、物体光を平行光とするためのコリメータレンズ40、記録対象の画像を表示する表示装置41、表示装置41を透過してきた光を要素ホログラムの幅方向に拡散させる一次元拡散板42、一次元拡散板42を透過した物体光をホログラム記録媒体30上に集光するシリンドリカルレンズ43、一次元拡散機能をもつ光学機能板45がこの順に配置されている。
【0035】
シリンドリカルレンズ43が視差方向(要素ホログラム短手方向または観察時水平方向)に物体光を集光する。光学機能板45は、集光された物体光を短冊状の要素ホログラムの長手方向に一次元的に拡散するもので、長手方向での視点の移動に対応するためのものである。例えばピッチが微細なレンチキュラーレンズを光学機能板45として使用することができる。
【0036】
そして、ハーフミラー33を透過した光L4は、全反射ミラー38によって反射された後、スペーシャルフィルタ39によって点光源からの発散光とされる。次に、コリメータレンズ40によって平行光とされ、その後、表示装置41に入射する。表示装置41は、例えば液晶ディスプレイからなる投影型の画像表示装置であり、制御用コンピュータによって制御され、制御用コンピュータから送られた画像データD5に基づく画像を表示する。
【0037】
そして、表示装置41を透過した光は、表示装置41に表示された画像によって変調された光となり、一次元拡散板42によって拡散される。ここで、一次元拡散板42は、表示装置41からの透過光を要素ホログラム幅方向に若干拡散させることにより、要素ホログラム内に光を分散させることで、作成されるホログラムの画質の向上に寄与する。
【0038】
このとき、拡散板42には、拡散板移動手段(図示は省略する)を設け、各要素ホログラムを形成する毎にこれをランダムに移動し、その位置を要素ホログラム毎に変えるようにする。これにより、ホログラムを観察したときに無限遠に定位するノイズを低減することができる。
【0039】
[ホログラム記録媒体]
ここで、上述したホログラム原版作成システムにおいて使用されるホログラム記録媒体30について説明する。このホログラム記録媒体30は、ガラス板によってフォトポリマー層が挟まれた構成、またはフィルム上にフォトポリマーが塗布された構成を有している。
【0040】
例えば光重合型フォトポリマーは、初期状態では、図3Aに示すように、モノマMがマトリクスポリマに均一に分散している。これに対して、図3Bに示すように、10〜400mJ/cm2程度のパワーの光LAを照射すると、露光部においてモノマMが重合する。そして、ポリマ化するにつれて周囲からモノマMが移動してモノマMの濃度が場所によって変化し、これにより、屈折率変調が生じる。この後、図3Cに示すように、1000mJ/cm2程度のパワーの紫外線または可視光LBを全面に照射することにより、モノマMの重合が完了する。このように、光重合型フォトポリマーは、入射された光に応じて屈折率が変化するので、参照光と物体光との干渉によって生じる干渉縞(明暗)を、屈折率の変化として記録することができる。
【0041】
[ホログラム積層体]
上述したプリンタ装置によって原版が作成され、原版に対してこの発明によるホログラム積層体が密着され、レーザ光が照射されることによって、原版が複製される。この発明によるホログラム積層体は、図4に示す構成を有している。
【0042】
この発明によるホログラム積層体は、感光性材料からなるホログラム記録層1と、ホログラム記録層1の上面に被着された表面保護層(ハードコートと適宜称する)2と、ホログラム記録層1の下面に被着されたブロッキング層(ハードコートと適宜称する)3とからなる。ハードコート2および3は、エネルギー線硬化樹脂例えば紫外線硬化樹脂によって形成される。ハードコート2および3の紫外線硬化樹脂は、完全硬化および半硬化の何れの状態でも良い。シールとしてホログラム積層体を構成する場合には、ハードコート3の下面に接着剤層(粘着層とも呼ばれる)4を介してセパレータ層(PET等の樹脂からなる剥離フィルム)5が存在する。
【0043】
ホログラム記録層1は、感光性材料として例えば屈折率Nが1.52のフォトポリマーを使用し、入射される光の明暗を屈折率の差として記録することができる。ホログラム記録層1として要求される特性は、下記のものである。
高回折効率(例えば90%以上)、回折波長半値幅:5〜30nm、高感度(例えば20mJ/cm2以下)、収縮率が低いこと
【0044】
ハードコート2は、傷の防止、帯電防止、フィルム形状形成、並びにホログラム形状の安定化のために設けられている。ハードコート2に要求される特性は、下記のものである。
高い表面硬度(傷つき防止のため)、低い表面抵抗、耐熱性(例えば100〜120°C)、低い吸湿性、良好な接着性および材料密着性、感光性材料にほぼ等しい光学屈折率(例えば1.52)、低い複屈折性(例えば±15nm(波長が633nmに対して))、低いヘイズ(表面または内部の不明瞭なくもり(外観上)の度合いのことをヘイズという)、高い透明性、表面の平滑性が良好なこと、薄い膜厚とできること(例えば20μm以下)
【0045】
ハードコート3は、材料透過防止とホログラム形状の安定化のために設けられている。感光性材料がセパレータ層5の樹脂フィルムに対して化学反応を起こすために、ブロッキング層としてのハードコート3が設けられる。ハードコート3に要求される特性は、下記のものである。
耐溶剤性(感光性材料を液状とするための溶剤によって化学的ダメージを受けない)、耐熱性(例えば100〜120°C)、低い吸湿性、良好な接着性および材料密着性、薄い膜厚とできること(例えば20μm以下)
【0046】
接着剤層4は、良好な接着性が要求される。黒色とするのは、商品等に貼り付けた場合に、背景が透けて見えると、ホログラムの画像が見にくくなることを防止するためである。
【0047】
各層の厚みの一例を下記に示す。
ホログラム記録層:12μm、ハードコート2:10μm、ハードコート3:10μm、接着剤層4:17μm
ホログラム積層体の全体の厚みt:49μm
【0048】
この発明の一実施の形態では、従来では100μm以上であったホログラム積層体の厚みを50μm以下とできる。
【0049】
なお、図4に示すこの発明によるホログラム積層体の構成において、ハードコート3はホログラム記録層1の感光材料が接着剤層4に対して化学反応を生じる可能性がある場合には必要であるが、その可能性がない場合には、ハードコート3を省略してもよい。すなわち、図5示すように、ホログラム積層体を、ホログラム記録層1と、ホログラム記録層1の上面に被着されたハードコート2とからなる構成としてもよい。この構成にすることによって、ホログラム積層体の厚みをさらに薄くできる。
【0050】
図5に示すホログラム積層体の各層の厚みの一例を下記に示す。
ホログラム記録層:12μm、ハードコート2:10μm、接着剤層17μm、
ホログラム積層体の全体の厚みt:39μm
【0051】
[ホログラム積層体の製造方法]
次に、上述したホログラム積層体の製造工程について、図6、図7、図8および図9を参照して説明する。図6は、各工程の積層構造を示すものである。また、図7、図8および図9は、一連の製造工程を示すものであるが、図面の作成スペースの制約から一連の製造工程が工程毎に分割されたものである。
【0052】
図7は、感光性材料の塗布、乾燥および膜厚制御工程を示す。図6Aに示すように、例えばPETからなる剥離フィルム11a上にハードコート2を構成するエネルギー線硬化樹脂例えば紫外線硬化樹脂11bが塗布されたフィルム11がロール状に巻かれている。紫外線硬化樹脂11bは、未硬化または半硬化状態(この状態をウエット状態と称する)である。剥離フィルム11aは、紫外線硬化樹脂11bの引っ張り強度を補強するためのもので、後述するように、完成時には、剥離されて破棄される。
【0053】
繰り出されたフィルム11が矢印方向に走行され、ローラ12の周面に巻き付けられる。フィルムの紫外線硬化樹脂11b上に感光性材料例えばフォトポリマー13がスリットダイヘッド14によって一定の膜厚となるように塗布される。スリットダイヘッド14は、有機溶剤を溶媒とする液状のフォトポリマーが図示しないタンクから供給され、スリットの幅でもってフォトポリマーを塗布するものである。スリットの開閉および開口の幅は、図示しない制御部によって制御可能とされている。
【0054】
フォトポリマー13が塗布されたフィルムが乾燥部15に導入され、乾燥される。この乾燥によって、有機溶剤の除去等がなされる。乾燥部15は、遠赤外線、温風等をフォトポリマー13に当ててフォトポリマー13を乾燥させる。乾燥は、塗布されたフォトポリマー13がたれることを防止するために行われ、乾燥後において、フォトポリマー13は、ウエット状態である。
【0055】
乾燥後に膜厚測定装置16によってフォトポリマー13の厚みが測定され、測定結果によってスリットダイヘッド14のスリットの開口量等が制御されてフォトポリマー13の厚みが一定に制御される。フォトポリマー13の塗布が終了した段階の積層構造を図6Bに示す。
【0056】
次に、図8に示す構成によって、複製、貼り合わせ、紫外線硬化樹脂の硬化が行われる。剥離フィルム11aおよび紫外線硬化樹脂11bが積層されたフィルム11上にフォトポリマー13が塗布された3層構造のフィルムが複製装置17に導入される。複製装置17において、フィルムが停止された状態において原版18に対してフォトポリマー13が密着され、レーザ光が照射される。図3を参照して説明した原理と同様に、原版18の干渉縞が屈折率の変化としてフォトポリマー13に複製される。複製装置17については、後でより詳細に説明する。
【0057】
複製後のフォトポリマー13を有するフィルムが転接するローラ19aおよび19bの間に導入される。一方、ロール状のフィルム20が繰り出され、フィルム20がローラ21を介してローラ19aおよび19bの間に導入される。このフィルム20は、図6Cに示すように、例えばPETのセパレータ層20a(図1におけるセパレータ層5に対応する)上に黒色の接着剤層20b(図1における接着剤層4に対応する)を介してハードコート3に対応する紫外線硬化樹脂20cが積層された構造を有する。紫外線硬化樹脂20cは、ウエット状態である。なお、図5に示すホログラム積層体を作製する場合には、フィルム20は紫外線硬化樹脂20cを省略した構成となる。
【0058】
ローラ19aおよび19bによってフォトポリマー13と紫外線硬化樹脂20cとが対向して圧着され、二つのフィルムが貼り合わされる。貼り合わされた後のフィルムに対して参照符号22を付す。貼り合わせ後に、必要に応じて乾燥部23によって乾燥がなされる。乾燥部23を通過したフィルム22に対して紫外線照射装置24によって紫外線が照射される。フィルム22は、図6Dに示す積層構造を有する。
【0059】
紫外線の照射によって、紫外線硬化樹脂11bおよび20cが半硬化状態または完全硬化状態となり、それぞれが上述したような要求される特性を満たすハードコート2および3を構成する。図6Dに示される積層構造は、剥離フィルム11aを除いて図1に示すこの発明によるホログラム積層体の構成を基本的に有する。
【0060】
図9に示す外観検査、型抜きおよび巻き取り工程に対してフィルム22が移送される。欠陥検査カメラ25によって欠陥の有無が検査される。互いに転接するローラ26aおよび26b間にフィルム22が挿入され、剥離フィルム11aが剥離され、ロール状に巻き取られる。剥離フィルム11aが除去されたフィルム27は、基本的にホログラム積層体を構成する。
【0061】
互いに転接するローラ26aおよび型抜き用ロールカッター26c間にフィルム27が挿入され、フィルム27に対して型抜きがなされる。表面保護のハードコート2に対応する紫外線硬化樹脂11bから例えばセパレータ層20aの表面までの深さの切り込みが形成される。フィルムの幅を横切るように切り込みを形成したり、矩形の切り込みを形成することによって、所望の平面形状の切り込みがロールカッター26cによって形成される。なお、フィルム27において、型抜きの結果生じた不要な部分を破棄しても良い。
【0062】
型抜き工程が終了したフィルム27が製品巻き取りロール28によって巻き取られる。一つのロール毎に所定長のフィルム27(フィルム状ホログラム積層体)が巻かれる。以上の工程によって、ホログラム積層体の製造が完了する。図7、図8および図9を参照して説明した一連の製造工程は、上述のようにインラインで行われる。インラインで上記一連の製造工程を行うことによって、感光性材料の劣化及び異物付着等による歩留りの低下が防止できる。また、未露光材料を保管するための暗室構造保管スペースも不要となる。
【0063】
上述した複製装置17(図8参照)について、図10を参照してより詳細に説明する。複製装置17は、原版18を含む複製エリアを密閉するチャンバ(二点鎖線で示す)と、チャンバ全体を真空環境とする排気装置(図示しない)と、原版18の幅以上の周面の幅を有するローラ51,52,53,54とを有する。原版18は、例えば2枚のガラス板の間に記録済のホログラム記録層18aが存在するものである。原版18として、この発明によるホログラム積層体と同様の構成のフィルム状のものを使用しても良い。フィルム22のフォトポリマー13の露出面が上側の原版18と対向するようになされる。ローラ51〜54がフィルム22の下面側に配置される。
【0064】
ローラ51および54は、複製装置17の入り口側および出口側にそれぞれ設置されており、設置位置は、固定である。ローラ52および53は、複製装置17の内部で出口側の近傍に設置されている。ローラ52は、原版18の出口側のエッジの下方に位置している。ローラ52および53は、垂直方向に位置が可変可能とされている。さらに、ローラ52および53は、フィルム22の移送方向(図10に向って見て左から右への方向)と逆方向にスライド可能とされている。
【0065】
図10Aに示すように、原版18の下方にフィルム22の複製領域が位置すると、フィルム22の移送が停止され、チャンバ内が真空とされる。真空とするのは、原版18とフィルム22のフォトポリマー13との間に空気が入り込むのを防止するためである。但し、真空化の工程を行わないでも良い。
【0066】
次に、図10Bに示すように、ローラ52および53が上昇され、フィルム22が上に持ち上げられる。フィルム22が原版18のエッジに接触する位置よりやや上方にローラ52、53が上昇される。したがって、フィルム22のフォトポリマー13が原版18のエッジに押し当てられる。
【0067】
次に、図10Cに示すように、ローラ52および53がスライドし、ローラ53によってフィルム22が原版18の出口側エッジに押し付けられると共に、ローラ52が入り口側に向って原版18の入り口側のエッジの下方の位置までスライドされる。スライド時にローラ52の加圧力によってフィルム22のフォトポリマー13が原版18に圧着される。上述したように、フォトポリマー13は、ウエット状態であるので、別個に密着液を使用しないでもフォトポリマー13と原版18との間に空気が入らないで、両者が全面で密着する。フォトポリマー13と原版18とが密着した状態で下方からレーザ光55が照射される。レーザ光の波長は、原版18の記録時と同一である。
【0068】
所定光量のレーザ光55を所定時間照射すると、原版18のホログラム記録層18aからの反射光(物体光)とレーザ光55(参照光)の干渉による明暗が屈折率の変化としてフォトポリマー13に記録される。レーザ光55の照射の後に、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を完全硬化させても良い。
【0069】
次に、図10Dに示すように、大気が導入されると共に、出口側ローラ53が下降され、フィルム22が原版18の出口側エッジにおいて原版18から剥離される。フィルム22が原版18から剥離されると、ローラ52および53がスライドすると共に下降し、ローラ52および53が図10Aに示す初期位置に位置する。そして、フィルム22が移送され、次の記録領域が原版18の下面に位置する状態でフィルム22が停止される。そして、上述したのと同様の複製工程がなされる。
【0070】
上述したこの発明の一実施の形態は、ホログラム積層体がセパレータ層5上に接着剤層4を介して被着される構成である。しかしながら、カード状ホログラムの場合では、ラミネート処理されるために、セパレータ層5を使用しない場合がある。図11および図12は、ラミネート処理される場合の構成例をそれぞれ示す。
【0071】
図11において、参照符号61がこの発明によるホログラム積層体を示す。すなわち、ホログラム積層体61は、画像情報が記録されたホログラム記録層1と、ホログラム記録層1の両面にハードコート2および3が被着された積層構造を有する。ホログラム積層体61の両面にPET等の透明樹脂フィルム62および63が配される。
【0072】
さらに、透明樹脂フィルム63の下面にプリントフィルム64が配される。プリントフィルム64は、枠に対して印刷が施されると共に、裏面が黒色に印刷された樹脂フィルムである。これらのホログラム積層体61、透明樹脂フィルム62および63、プリントフィルム64は、ほぼ同一の形状を有し、熱溶着等の方法で互いに接着される。
【0073】
図12に示す他の例は、ホログラム積層体71の上面に透明樹脂フィルム72およびプリントフィルム73が順に積層され、下面に白色の樹脂(PET)フィルム74が配された積層構造を有する。プリントフィルム73は、枠に対する印刷がされると共に、枠内が透明とされている。樹脂フィルム74は、ホログラム積層体71と接する面が黒色印刷面とされ、反対面、すなわち、裏面に文字等が印刷されたものである。印刷される文字は、例えば当該ホログラムの鑑賞方法の説明文とされる。
【0074】
2.他の実施の形態
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えばエネルギー線硬化樹脂に対して感光性材料を塗布する場合に、エネルギー線硬化樹脂の表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことによって、エネルギー線硬化樹脂と感光性材料との密着性がより高くなるようにしても良い。さらに、上述した説明では、紫外線硬化樹脂を使用したが、電子線硬化樹脂や可視光線硬化樹脂、熱硬化樹脂等を使用しても良い。
【符号の説明】
【0075】
1・・・ホログラム記録層
2・・・表面保護層としてのハードコート
3・・・ブロッキング層としてのハードコート
4・・・接着剤層
5・・・セパレータ層
11a・・・剥離フィルム
11b・・・紫外線硬化樹脂
13・・・フォトポリマー
14・・・スリットダイヘッド
17・・・複製装置
18・・・原版
20a・・・セパレータ層としての紫外線硬化樹脂
20b・・・接着剤層
20c・・・紫外線硬化樹脂
30・・・ホログラム記録媒体
31・・・レーザ光源
41・・・表示装置
L3・・・参照光
L4・・・物体光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料が塗布され、
上記感光性材料が記録済のホログラム記録層を有する原版と対向配置され、
上記原版に対して上記感光性材料が密着され、
レーザ光が上記エネルギー線硬化樹脂側から密着状態の上記感光性材料および上記原版に対して照射するホログラム複製方法。
【請求項2】
エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料を一定の厚みで塗布する塗布工程と、
上記感光性材料を記録済のホログラム記録層を有する原版と密着させ、レーザ光を上記エネルギー線硬化樹脂側から密着状態の上記感光性材料および上記原版に対して照射する複製工程と、
上記感光性材料に被着された上記エネルギー線硬化樹脂を硬化させる硬化工程と
からなるホログラム作成方法。
【請求項3】
上記塗布工程を行う第1の位置と上記複製工程を行う第2の位置と上記硬化工程を行う第3の位置とが、それぞれ搬送手段によってインライン接続されている請求項2記載のホログラム作成方法。
【請求項4】
エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料を一定の厚みで塗布する塗布工程と、
上記感光性材料を記録済のホログラム記録層を有する原版と密着させ、レーザ光を上記第1のエネルギー線硬化樹脂側から密着状態の上記感光性材料および上記原版に対して照射する複製工程と、
上記感光性材料と第2のエネルギー線硬化樹脂とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
上記感光性材料の両面に被着された上記第1および第2の紫外線硬化樹脂を硬化させる硬化工程と
からなるホログラム作成方法。
【請求項5】
上記塗布工程を行う第1の位置と上記複製工程を行う第2の位置と上記貼り合せ工程を行う第3の位置と上記硬化工程を行う第4の位置とが、それぞれ搬送手段によってインライン接続されている請求項4記載のホログラム作成方法。
【請求項1】
エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料が塗布され、
上記感光性材料が記録済のホログラム記録層を有する原版と対向配置され、
上記原版に対して上記感光性材料が密着され、
レーザ光が上記エネルギー線硬化樹脂側から密着状態の上記感光性材料および上記原版に対して照射するホログラム複製方法。
【請求項2】
エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料を一定の厚みで塗布する塗布工程と、
上記感光性材料を記録済のホログラム記録層を有する原版と密着させ、レーザ光を上記エネルギー線硬化樹脂側から密着状態の上記感光性材料および上記原版に対して照射する複製工程と、
上記感光性材料に被着された上記エネルギー線硬化樹脂を硬化させる硬化工程と
からなるホログラム作成方法。
【請求項3】
上記塗布工程を行う第1の位置と上記複製工程を行う第2の位置と上記硬化工程を行う第3の位置とが、それぞれ搬送手段によってインライン接続されている請求項2記載のホログラム作成方法。
【請求項4】
エネルギー線硬化樹脂上に感光性材料を一定の厚みで塗布する塗布工程と、
上記感光性材料を記録済のホログラム記録層を有する原版と密着させ、レーザ光を上記第1のエネルギー線硬化樹脂側から密着状態の上記感光性材料および上記原版に対して照射する複製工程と、
上記感光性材料と第2のエネルギー線硬化樹脂とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
上記感光性材料の両面に被着された上記第1および第2の紫外線硬化樹脂を硬化させる硬化工程と
からなるホログラム作成方法。
【請求項5】
上記塗布工程を行う第1の位置と上記複製工程を行う第2の位置と上記貼り合せ工程を行う第3の位置と上記硬化工程を行う第4の位置とが、それぞれ搬送手段によってインライン接続されている請求項4記載のホログラム作成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−237707(P2010−237707A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146474(P2010−146474)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【分割の表示】特願2008−268193(P2008−268193)の分割
【原出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【分割の表示】特願2008−268193(P2008−268193)の分割
【原出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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