説明

ホログラム記録フィルム及びその製造方法、並びに、画像表示装置

【課題】異なるスラント角(傾斜角)の干渉縞を有する回折格子層が多層化されたホログラム記録フィルムを簡素な方法で製造する。
【解決手段】ホログラム記録フィルムの製造方法は、(A)感光材料から成るM層(但し、M≧2)の感光材料前駆体層11A,11Bの各層と、(M−1)層の樹脂層12Aの各層とを、交互に積層して、積層構造体13を得た後、(B)参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体13に照射することで、M層の感光材料前駆体層から、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層の感光材料層21A,22A,21Bを得、その後、(C)積層構造体23の一方の面側から積層構造体23にエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、感光材料層の表面におけるピッチの値を保持したまま、M層の感光材料層21A,21B相互のスラント角を異ならせる各工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録フィルム及びその製造方法、並びに、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置によって形成された2次元画像を虚像光学系により拡大虚像として観察者に観察させるために、ホログラム回折格子を用いた虚像表示装置(画像表示装置)が、例えば、特開2007−11057から周知である。
【0003】
この画像表示装置100は、例えば、図10の(A)に示すように、画像を形成、表示する画像形成装置111と、コリメート光学系112と、画像形成装置111からの光が入射され、観察者の瞳60へと導く虚像光学系(光学装置120)とを備えている。ここで、光学装置120は、導光板121と、導光板121に配置された第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140を備えている。そして、コリメート光学系112には画像形成装置111の各画素から出射された光が入射され、コリメート光学系112によって導光板121へ入射する角度の異なる複数の平行光が生成され、導光板121に入射される。導光板121の一方の光学面(第1面)122から、平行光が入射され、出射される。また、導光板121の第1面122と平行である導光板121の他方の光学面(第2面)123に、第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140が取り付けられている。
【0004】
導光板121の第1面122から入射した導光板121へ入射した角度の異なる複数の平行光は、第1回折格子部材130に入射し、それぞれの平行光は、平行光のまま、回折反射される。そして、回折反射された平行光は、導光板121の第1面122と第2面123との間で全反射を繰り返しながら進行し、第2回折格子部材140に入射する。第2回折格子部材140に入射した平行光は、回折反射されることで全反射条件から外れ、導光板121から出射され、観察者の瞳60に導かれる。
【0005】
第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140は、内部に干渉縞が形成された反射型体積ホログラム回折格子から構成されている。第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140にあっては、広い回折波長帯域を有する必要がある。即ち、画像形成装置111から出射された赤色光、緑色光、青色光といった3原色の光を回折反射する必要がある。従って、反射型体積ホログラム回折格子の内部に形成された干渉縞は、多重化されており、あるいは又、回折格子層が多層化されている。
【0006】
ここで、回折格子部材において回折反射が生じるためのブラッグ条件は、以下の式(A)にて表される。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔であり、以下、『格子面ピッチ』と呼ぶ)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。尚、干渉縞のスラント角(傾斜角)φとは、回折格子部材の表面と干渉縞の成す角度を意味する。干渉縞は、回折格子部材の内部から表面に亙り、形成されている。以下においても同様である。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の余角Θ、スラント角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりであり、図10の(B)に図示する。更には、回折格子部材の表面における干渉縞のピッチΛは、式(C)のとおりである。以下、この回折格子部材の表面における干渉縞のピッチΛを『表面ピッチ』と呼び、格子面ピッチdと区別する。表面ピッチΛを、図10の(B)に図示する。
【0007】
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°−(φ+ψ) (B)
Λ=d/sin(φ) (C)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−11057
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、異なるスラント角(傾斜角)φの干渉縞を有する回折格子層が多層化された回折格子部材を製造するために、従来、回折中心波長(再生中心波長)の異なる回折格子層(ホログラム記録フィルム)を予め作製しておき、これらの複数の回折格子層をアライメントしながら積層する方法(便宜上、『従来の第1の方法』と呼ぶ)が採用されている。あるいは又、ホログラム記録フィルム材料にレーザ光を用いた露光、定着を施して干渉縞を形成することで1層のホログラム記録フィルムを得た後、係るホログラム記録フィルムにホログラム記録フィルム材料を貼り合わせ、貼り合わされたホログラム記録フィルム材料に露光、定着を施すことで干渉縞を形成して2層構成のホログラム記録フィルムを得るといった作業を繰り返し、所望の層数を有する回折格子部材を得る方法(便宜上、『従来の第2の方法』と呼ぶ)が採用されている。
【0010】
しかしながら、これらの従来の第1の方法及び従来の第2の方法は、工程数が多いため、歩留まりが悪く、生産性が低い。また、従来の第2の方法にあっては、ホログラム記録フィルム材料に、順次、露光、定着を繰り返すが、ホログラム記録フィルム材料への露光時、既に形成された下層のホログラム記録フィルムにおける干渉縞によって、ホログラム記録フィルム材料に不所望の干渉縞が形成されてしまうといった問題がある。更には、従来の第2の方法にあっては、製造工程に依っては、ホログラム記録フィルムにホログラム記録フィルム材料を貼り合わせるとき、気泡等が混入するといった問題もある。
【0011】
また、光源を例えば発光ダイオード(LED)から構成する場合、第2回折格子部材140からの出射光の明るさは、光源の発光スペクトル分布と回折格子部材の回折効率の積によって決まる。回折効率は、回折格子部材に入射する光の波長に大きく依存するので、回折格子部材の回折波長帯域を一層広げることで、画像表示装置の画像の明るさを増加させることに対する強い要請がある。
【0012】
また、複数の平行光は、画像形成装置111からの射出位置に依存して、第1回折格子部材130への入射角が異なるため、第1回折格子部材130の種々の領域でブラッグ条件を満たす回折波長が異なる。その結果、第1回折格子部材130の種々の領域において回折反射された光の回折効率が異なってしまう。このことは、第1回折格子部材130に入射する光が一定の波長帯域を有する場合、画像形成装置111からの射出位置に依存して、最も高い効率で回折する波長が異なり、画像形成装置111の画素の位置によって瞳60に導かれる画素の像における色合いが異なる原因となる。また、第1回折格子部材130に入射する光が単波長の場合、画像形成装置111からの射出位置に依存して回折効率が異なると、輝度ムラが発生するといった問題を内在している。
【0013】
従って、本発明の第1の目的は、異なるスラント角(傾斜角)φの干渉縞を有する回折格子層が多層化されたホログラム記録フィルムを簡素な方法で製造することを可能とするホログラム記録フィルムの製造方法、係る製造方法で得られたホログラム記録フィルム、並びに、係るホログラム記録フィルムを備えた画像表示装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の第2の目的は、入射する平行光の入射角に依存した色ムラや輝度ムラを低減するために、異なるスラント角(傾斜角)φの干渉縞を有する領域が形成されたホログラム記録フィルムを簡素な方法で製造することを可能とするホログラム記録フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法は、
(A)感光材料から成るM層(但し、M≧2)の感光材料前駆体層と、(M−1)層の樹脂層とを、交互に積層して、積層構造体を得た後、
(B)参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、M層の感光材料前駆体層から、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層の感光材料層を得、その後、
(C)積層構造体の一方の面側から積層構造体にエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、感光材料層の表面におけるピッチの値Λを保持したまま、M層の感光材料層(回折格子層)相互のスラント角を異ならせる、
各工程を有する。
【0016】
上記の第1の目的を達成するための本発明のホログラム記録フィルムは、
感光材料から成り、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層(但し、M≧2)の感光材料層と、(M−1)層の樹脂層とが、交互に積層して成る積層構造体から構成されており、
M層の感光材料層(回折格子層)相互において、感光材料層の表面におけるピッチの値Λは同じであり、スラント角が異なっている。
【0017】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る画像表示装置は、
(A)2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する画像形成装置、
(B)画像形成装置の各画素から出射された光を平行光とするコリメート光学系、及び、
(C)コリメート光学系にて平行光とされた光が入射され、導光され、出射される光学装置、
を備えた画像表示装置である。また、上記の第2の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る画像表示装置は、
(A)光源、
(B)光源から出射された光を平行光とするコリメート光学系、
(C)コリメート光学系から出射された平行光を走査する走査手段、
(D)走査手段によって走査された平行光をリレーするリレー光学系、及び、
(E)リレー光学系にて平行光とされた光が入射され、導光され、出射される光学装置、
を備えた画像表示装置である。そして、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置における光学装置は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板、
(b)導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を回折反射する、導光板に配設された第1回折格子部材、及び、
(c)導光板の内部を全反射により伝播した光を回折反射し、導光板から出射する、導光板に配設された第2回折格子部材、
を備えており、
第1回折格子部材及び第2回折格子部材は、ホログラム記録フィルムから成り、
ホログラム記録フィルムは、
感光材料から成り、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層(但し、M≧2)の感光材料層と、(M−1)層の樹脂層とが、交互に積層して成る積層構造体から構成されており、
M層の感光材料層(回折格子層)相互において、感光材料層の表面におけるピッチの値Λは同じであり、スラント角が異なっている。
【0018】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第2の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法は、
(A)感光材料から成る感光材料前駆体層に参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、感光材料前駆体層から、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成された感光材料層を得た後、
(B)感光材料層の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、感光材料層の表面におけるピッチの値Λを保持したまま、感光材料層(回折格子層)の各領域におけるスラント角を異ならせる、
各工程を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法にあっては、参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、感光材料前駆体層を構成する感光材料(フォトポリマー)に屈折率変調に基づき干渉縞を記録する。そして、積層構造体の一方の面側から積層構造体にエネルギー線を照射することで、レーザ照射時に重合せずに残った感光材料中のモノマーを重合させ定着させる。次いで、加熱することで、屈折率変調度が増幅される。この加熱においては、屈折率変調度の増大と同時に、熱応力による干渉縞のスラント角(傾斜角)の変化が伴う。そして、この変化では、感光材料層の表面におけるピッチの値Λは保存されたまま、スラント角だけが変化するので、図6の(A)に示すように、再生中心波長(回折中心波長)が「a」の状態から「b」の状態へとシフトする。このように、積層構造体の一方の面側から積層構造体にエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、感光材料層の表面におけるピッチの値Λを保持したまま、M層の感光材料層相互のスラント角を異ならせるので、工程数の増加を招くことが無く、生産性が高いし、ホログラム記録フィルムに不所望の干渉縞が形成されてしまうといった問題が発生することも無い。更には、ホログラム記録フィルムの製造工程において気泡等が混入するといった問題も発生し難い。また、多層の積層構造体を容易に製造することができるので、回折格子部材の回折波長帯域を一層広げることが可能となり、画像表示装置の画像の明るさを増加させることを容易に達成することができる。尚、予め各感光材料層の再生中心波長のシフト量を見込んだ干渉縞を記録しておけば、所望の再生中心波長(回折中心波長)とそのバンド幅を任意に設計することができる。
【0020】
また、本発明の第2の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法にあっては、感光材料層の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、感光材料層の表面におけるピッチの値Λを保持したまま、感光材料層の各領域におけるスラント角を異ならせるので、工程数の増加を招くことが無く、生産性が高い。そして、感光材料層の各領域におけるスラント角を異ならせることができるので、入射する平行光の入射角に依存した色ムラや輝度ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1の(A)、(B)及び(C)は、実施例1のホログラム記録フィルムの製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な断面図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、実施例2のホログラム記録フィルムの製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な断面図である。
【図3】図3は、図2の(B)に引き続き、実施例2のホログラム記録フィルムの製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な断面図である。
【図4】図4の(A)及び(B)は、実施例3のホログラム記録フィルムの製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な断面図である。
【図5】図5は、図4の(B)に引き続き、実施例2のホログラム記録フィルムの製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な断面図である。
【図6】図6の(A)は、感光材料層にエネルギー線を照射し、次いで、加熱したときの再生中心波長(回折中心波長)が「A」の状態から「B」の状態へとシフトする状態を示すグラフであり、図6の(B)は、エネルギー線の照射量と加熱後のスラント角の変化量の関係を示すグラフである。
【図7】図7は、2層の同じ感光材料層にエネルギー線を照射し、加熱したときの回折波長帯域の変化を示すグラフである。
【図8】図8の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1及び実施例2において、赤色を回折反射する感光材料層による赤色の回折波長帯域のバンド幅を示すグラフである。
【図9】図9は、参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射するための露光装置の概念図である。
【図10】図10は、実施例5の画像表示装置の概念図である。
【図11】図11は、実施例5の画像表示装置を2組、観察者が装着した状態を示す概念図である。
【図12】図12は、実施例6の画像表示装置の概念図である。
【図13】図13は、実施例5での使用に適した画像形成装置の変形例の概念図である。
【図14】図14は、実施例5での使用に適した画像形成装置の別の変形例を示す概念図である。
【図15】図15は、実施例5での使用に適した画像形成装置の更に別の変形例を示す概念図である。
【図16】図16は、実施例5での使用に適した画像形成装置の更に別の変形例を示す概念図である。
【図17】図17は、実施例5での使用に適した画像形成装置の更に別の変形例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、それに先立ち、本発明のホログラム記録フィルム及びその製造方法、並びに、画像表示装置について、より詳しく説明する。尚、感光材料から成る感光材料前駆体層を、以下、第2感光材料前駆体層と峻別するために、『第1感光材料前駆体層』と呼ぶ場合があり、感光材料層を、第2感光材料層と峻別するために、『第1感光材料層』と呼ぶ場合があり、第1感光材料前駆体層を構成する感光材料を『第1感光材料』と呼ぶ場合がある。また、単に感光材料前駆体層と記する場合には、第1感光材料前駆体層及び第2感光材料前駆体層の両方を指し、単に感光材料層と記する場合には、第1感光材料層及び第2感光材料層の両方を指す場合がある。更には、単に「ピッチ」と称する場合、感光材料層の表面におけるピッチを指し、また、感光材料層の表面におけるピッチを『表面ピッチ』と呼ぶ場合がある。
【0023】
本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法によって得られたホログラム記録フィルム、本発明のホログラム記録フィルム、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置におけるホログラム記録フィルムは、M層の感光材料層と(M−1)層の樹脂層とが交互に積層して成る積層構造体から構成されているが、係る積層構造体には、M層の感光材料層とM層の樹脂層とが交互に積層して成る積層構造体、M層の感光材料層と(M+1)層の樹脂層とが交互に積層して成る積層構造体が包含される。
【0024】
本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法(以下、『本発明の第1の態様に係る製造方法』と略称する場合がある)において、積層構造体を形成する方法として、ドライフィルム状の感光材料前駆体層を形成し、係る感光材料前駆体層を積層する方法や、ガラスやプラスチック等から成る支持体に所望の順序で、感光材料を順次コーティングする方法を挙げることができる。感光材料をコーティングする方法として、ダイコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ブレードコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷法等の公知のコーティング方法を挙げることができる。尚、単層コーティング法だけでなく、多層スライドコーティング法等の複数層を同時にコーティングする方法を採用することもできる。必要に応じて、保護層(スペーサー層)を、公知のコーティング手段又はラミネート法により、感光材料前駆体層の間に配置してもよい。感光材料前駆体層と保護層との間には、更に、接着層等を配置してもよい。また、予め形成したドライフィルム状の感光材料前駆体層を支持体に貼り付けて使用する場合には、貼り付ける側の支持体に予め接着層を形成してから感光材料前駆体層を貼り付けてもよい。
【0025】
感光材料前駆体層が保護層によって保護されており、しかも、樹脂層が第2の感光材料から成る第2感光材料前駆体層から構成されている場合、第1感光材料前駆体層と樹脂層とを積層したとき、第1層目の第1感光材料前駆体層/保護層/第1層目の第2感光材料前駆体層/保護層/第2層目の第1感光材料前駆体層/保護層/第2層目の第2感光材料前駆体層/第3層目の第1感光材料前駆体層/保護層・・・といった構成、構造を有する積層構造体が得られる。あるいは又、樹脂層がエネルギー線の一部を吸収するフィルムから構成されている場合、第1層目の第1感光材料前駆体層/保護層/樹脂層/第2層目の第1感光材料前駆体層/保護層/樹脂層/第3層目の第1感光材料前駆体層/保護層・・・といった構成、構造を有する積層構造体が得られる。第1感光材料前駆体層と樹脂層の積層は、これらの材料に適した方法に基づき行えばよい。
【0026】
また、本発明の第1の態様に係る製造方法、本発明の第2の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法にあっては、参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、所望の表面ピッチ及びスラント角を有する干渉縞を形成するが、係る方法は、周知の方法とすることができる。具体的には、例えば、積層構造体あるいは感光材料前駆体層に対して一方の側の第1の所定の方向から物体レーザ光を照射し、同時に、積層構造体あるいは感光材料前駆体層に対して他方の側の第2の所定の方向から参照レーザ光を照射し、物体レーザ光と参照レーザ光とによって形成される干渉縞を積層構造体あるいは感光材料前駆体層の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体レーザ光及び参照レーザ光の波長を適切に選択することで、積層構造体あるいは感光材料前駆体層における干渉縞の所望の表面ピッチ、干渉縞の所望のスラント角(傾斜角)を得ることができる。ここで、干渉縞のスラント角とは、ホログラム記録フィルムの表面と干渉縞の成す角度を意味する。
【0027】
エネルギー線の照射は、使用するエネルギー線照射装置(例えば、紫外線ランプ)に応じて、適切な方法に基づき行えばよい。加熱方法も、加熱ランプを用いたり、ホットプレートを用いたり、加熱オーブンを用いるといった適切な方法で行えばよいし、加熱温度、加熱時間も、感光材料層を構成する材料に応じて、適宜、決定すればよい。尚、一般的に、図6の(B)に示すように、エネルギー線の照射によって感光材料層に与えられるエネルギー量が多い程、加熱後のスラント角の変化量は少ない。
【0028】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法において、エネルギー線として、具体的には、紫外線を挙げることができるし、あるいは又、電子線を挙げることもできる。使用する紫外線の波長、照射エネルギー、照射時間等は、感光材料の特性に依存して、適宜、決定すればよい。
【0029】
上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法、あるいは又、本発明のホログラム記録フィルムにおいて、M層の第1感光材料層(第1回折格子層)における再生中心波長は、Mの値に応じて変化する(例えば、単調に変化する)形態とすることができる。即ち、エネルギー線の照射量を一定としたとき、Mの値が大きくなるほど、エネルギー線の照射前の再生中心波長とエネルギー線の照射後の再生中心波長の差が大きくなる形態とすることができるし、エネルギー線の照射量を変える場合、エネルギー線の照射量が多いほど、エネルギー線の照射前の再生中心波長とエネルギー線の照射後の再生中心波長の差が小さくなる形態とすることができる。
【0030】
上記の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法において、
樹脂層は、第2の感光材料から成る第2感光材料前駆体層から成り、
前記工程(B)において、参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、M層の第1感光材料前駆体層から、所望のピッチ(表面ピッチ)及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層の第1感光材料層を得、併せて、(M−1)層の第2感光材料前駆体層から、所望のピッチ(表面ピッチ)及びスラント角を有する第2の干渉縞が形成された(M−1)層の第2感光材料層を得る構成とすることができる。尚、このような製造方法を、便宜上、『第1の構成の製造方法』と呼ぶ。ここで、(M−1)の値が2以上である場合、前記工程(C)において、積層構造体の第1層目の第1感光材料層側から積層構造体にエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、表面ピッチの値Λを保持したまま、M層の第1感光材料層(第1回折格子層)相互のスラント角を異ならせ、併せて、(M−1)層の第2感光材料層(第2回折格子層)相互のスラント角を異ならせる形態とすることができる。尚、(M−1)層の第2感光材料層(第2回折格子層)における再生中心波長は、Mの値に応じて変化する(例えば、単調に変化する)形態とすることができる。
【0031】
第1の構成の製造方法にあっては、第1感光材料層と第2感光材料層とは、エネルギー線に対して異なる感光特性を有している形態とすることができる。あるいは又、第1感光材料前駆体層と第2感光材料前駆体層とは、参照レーザ光及び物体レーザ光に対して異なる感光特性を有している形態とすることができ、この場合には、前記工程(B)において、第1の参照レーザ光及び第1の物体レーザ光を第1感光材料前駆体層に照射し、第2の参照レーザ光及び第2の物体レーザ光を第2感光材料前駆体層に照射することが好ましい。尚、第1感光材料前駆体層へのレーザ光の照射と第2感光材料前駆体層へのレーザ光の照射とを、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0032】
第1の構成の製造方法において、第1感光材料層と第2感光材料層とはエネルギー線に対して異なる感光特性を有している形態とすることで、第m番目(但し、m=1,2,・・・・,M)の第1感光材料層、及び、第m’番目(但し、m’=1,2,・・・・,M−1)の第2感光材料層における、エネルギー線のエネルギー照射量を変えることができる。その結果、M層の第1感光材料層相互のスラント角を異ならせることができるし、(M−1)層の第2感光材料層相互のスラント角を異ならせることができる。また、第1感光材料前駆体層と第2感光材料前駆体層とは参照レーザ光及び物体レーザ光に対して異なる感光特性を有している形態とすることでも、M層の第1感光材料層相互のスラント角を異ならせることができるし、(M−1)層の第2感光材料層相互のスラント角を異ならせることができる。尚、第1の参照レーザ光及び第1の物体レーザ光を第1感光材料前駆体層に照射し、第2の参照レーザ光及び第2の物体レーザ光を第2感光材料前駆体層に照射することで、第1感光材料前駆体層に形成される干渉縞のピッチ(表面ピッチ)及びスラント角と、第2感光材料前駆体層に形成される干渉縞のピッチ(表面ピッチ)及びスラント角とを異ならせることができる。
【0033】
第1感光材料と第2感光材料とは、主たる組成は同じであるが、エネルギー線透過率あるいはエネルギー線透過量が異なる構成とすることができるし、主たる組成が異なり、その結果として、エネルギー線透過率あるいはエネルギー線透過量が異なる構成とすることができる。主たる組成は同じであるが、エネルギー線透過率あるいはエネルギー線透過量が異なる場合として、第1感光材料及び第2感光材料に含まれるエネルギー線吸収剤(例えば、紫外線吸収剤)の量が異なる場合を挙げることができるし、エネルギー線に基づく反応開始剤(例えば、紫外線反応開始剤)の量が異なる場合を挙げることができる。即ち、エネルギー線に対する化学的反応が異なる場合を挙げることができる。M層の第1感光材料層相互において、第1感光材料の主たる組成が同じである場合、エネルギー線透過率あるいはエネルギー線透過量が若干異なっていてもよい。(M−1)層の第2感光材料層相互においても、第2感光材料の主たる組成が同じである場合、エネルギー線透過率あるいはエネルギー線透過量が若干異なっていてもよい。
【0034】
あるいは又、上記の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法において、樹脂層は、エネルギー線の一部を吸収するフィルムから成る構成とすることができる。尚、このような製造方法を、便宜上、『第2の構成の製造方法』と呼ぶ。ここで、樹脂層は、400nm以下の波長を有する紫外線を5%以上吸収する吸収特性を有することが好ましく、具体的には、エネルギー線の一部を吸収するフィルムとして、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、天然ゴム系樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレングリコール、フェノール系樹脂から成るフィルムを例示することができる。また、これらの樹脂中にエネルギー線を吸収する材料(例えば紫外線吸収剤)を適宜含有させてもよく、このような材料として公知のものを使用することができる。これらのフィルムは、塗布法に基づき形成してもよいし、予め作製したフィルムを貼り付けてもよい。
【0035】
本発明のホログラム記録フィルム、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置において、樹脂層は、第2の感光材料から成り、所望のピッチ(表面ピッチ)及びスラント角を有する干渉縞が形成された(M−1)層の第2感光材料層(第2回折格子層)から成る構成とすることができる。尚、このようなホログラム記録フィルムを、便宜上、『第1の構成のホログラム記録フィルム』と呼ぶ。ここで、(M−1)の値が2以上である場合、(M−1)層の第2感光材料層相互において、表面ピッチは同じであり、スラント角が異なっている形態とすることができる。
【0036】
あるいは又、本発明のホログラム記録フィルム、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置において、樹脂層は、エネルギー線の一部を吸収するフィルムから成る構成とすることができる。尚、このようなホログラム記録フィルムを、便宜上、『第2の構成のホログラム記録フィルム』と呼ぶ。係る樹脂層は、先に説明したとおりである。
【0037】
上記の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法において、感光材料層の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射するが、エネルギー量の変化は連続的な変化であってもよいし、段階的な変化であってもよい。また、再生中心波長は、感光材料層(回折格子層)の各領域において異なっている構成とすることができる。更には、エネルギー線の照射エネルギー量が少ないほど、再生中心波長は長波長側に位置する形態、即ち、エネルギー線の照射量が少ないほど、エネルギー線の照射前の再生中心波長とエネルギー線の照射後の再生中心波長の差が大きくなる形態とすることができる。
【0038】
感光材料前駆体層を構成するフォトポリマー材料は、少なくとも、光重合性化合物、バインダー樹脂、及び、光重合開始剤から構成されていれば、如何なるフォトポリマー材料をも用いることができる。光重合性化合物として、例えば、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、スチレン系モノマー、ブタジエン系モノマー、ビニル系モノマー、エポキシ系モノマー等の公知の光重合性化合物を用いることができる。これらは、共重合体でもよく、1官能又は多官能体でもよい。また、これらのモノマーは、単体で使用してもよいし、複数で使用してもよい。バインダー樹脂も公知の如何なるものも使用可能であり、具体的には、酢酸セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、天然ゴム系樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレングリコール、フェノール系樹脂、又は、これらの共重合体、ゼラチン等を挙げることができる。バインダー樹脂も、単体で使用してもよいし、複数で使用してもよい。光重合開始剤も、公知の如何なるものも使用可能である。光重合開始剤は、単体で使用してもよいし、複数で使用してもよいし、複数又は単体の光増感色素との組み合わせて用いてもよい。感光材料前駆体層には可塑剤、連鎖移動剤、その他の添加剤を適宜加えてもよい。保護層を構成する材料は、透明であれば如何なる材料をも使用することができ、コーティングにより形成しても、予めフィルム化されたものを感光材料前駆体層にラミネートしてもよい。保護層を構成する材料として、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができる。
【0039】
本発明の第1の態様に係る画像表示装置における画像形成装置として、例えば、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;透過型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;有機EL(Electro Luminescence)、無機EL、発光ダイオード(LED)等の発光素子から構成された画像形成装置を挙げることができるが、中でも、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置とすることが好ましい。ここで、空間光変調装置として、ライト・バルブ、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の透過型あるいは反射型の液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を挙げることができ、光源として発光素子を挙げることができる。更には、反射型空間光変調装置は、液晶表示装置、及び、光源からの光の一部を反射して液晶表示装置へと導き、且つ、液晶表示装置によって反射された光の一部を通過させてコリメート光学系へと導く偏光ビームスプリッターから成る構成とすることができる。光源を構成する発光素子として、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができる。また、発光素子として、例えば、半導体レーザ素子やLEDを例示することができる。画素の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080を例示することができる。
【0040】
本発明の第2の態様に係る画像表示装置における画像形成装置にあっては、光源として発光素子を挙げることができ、具体的には、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができる。また、発光素子として、例えば、半導体レーザ素子やLEDを例示することができる。本発明の第2の態様に係る画像表示装置における画素(仮想の画素)の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素(仮想の画素)の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080を例示することができる。また、光源を赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から構成する場合、例えば、クロスプリズムを用いて色合成を行うことが好ましい。走査手段として、光源から出射された光を水平走査及び垂直走査する、例えば、DMDといったMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やガルバノ・ミラーを挙げることができる。リレー光学系は、周知のリレー光学系から構成すればよい。
【0041】
例えば、発光素子とライト・バルブとから構成された画像形成装置あるいは光源として、全体として白色光を発光するバックライトと、赤色発光画素、緑色発光画素、及び、青色発光画素を有する液晶表示装置との組合せ以外にも、以下の構成を例示することができる。
【0042】
[画像形成装置−A]
画像形成装置−Aは、
(α)青色を発光する第1発光素子が2次元マトリクス状に配列された第1発光パネルから成る第1画像形成装置、
(β)緑色を発光する第2発光素子が2次元マトリクス状に配列された第2発光パネルから成る第2画像形成装置、及び、
(γ)赤色を発光する第3発光素子が2次元マトリクス状に配列された第3発光パネルから成る第3画像形成装置、並びに、
(δ)第1画像形成装置、第2画像形成装置及び第3画像形成装置から出射された光を1本の光路に纏めるための手段(例えば、ダイクロイック・プリズムであり、以下の説明においても同様である)、
を備えており、
第1発光素子、第2発光素子及び第3発光素子のそれぞれの発光/非発光状態を制御する。
【0043】
[画像形成装置−B]
画像形成装置−Bは、
(α)青色を発光する第1発光素子、及び、青色を発光する第1発光素子から出射された出射光の通過/非通過を制御するための第1光通過制御装置[一種のライト・バルブであり、例えば、液晶表示装置やデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、LCOSから構成され、以下の説明においても同様である]から成る第1画像形成装置、
(β)緑色を発光する第2発光素子、及び、緑色を発光する第2発光素子から出射された出射光の通過/非通過を制御するための第2光通過制御装置(ライト・バルブ)から成る第2画像形成装置、及び、
(γ)赤色を発光する第3発光素子、及び、赤色を発光する第3発光素子から出射された出射光の通過/非通過を制御するための第3光通過制御装置(ライト・バルブ)から成る第3画像形成装置、並びに、
(δ)第1光通過制御装置、第2光通過制御装置及び第3光通過制御装置を通過した光を1本の光路に纏めるための手段、
を備えており、
光通過制御装置によってこれらの発光素子から出射された出射光の通過/非通過を制御することで画像を表示する。第1発光素子、第2発光素子、第3発光素子から出射された出射光を光通過制御装置へと案内するための手段(光案内部材)として、導光部材、マイクロレンズアレイ、ミラーや反射板、集光レンズを例示することができる。
【0044】
[画像形成装置−C]
画像形成装置−Cは、
(α)青色を発光する第1発光素子が2次元マトリクス状に配列された第1発光パネル、及び、第1発光パネルから出射された出射光の通過/非通過を制御するための青色光通過制御装置(ライト・バルブ)から成る第1画像形成装置、
(β)緑色を発光する第2発光素子が2次元マトリクス状に配列された第2発光パネル、及び、第2発光パネルから出射された出射光の通過/非通過を制御するための緑色光通過制御装置(ライト・バルブ)から成る第2画像形成装置、
(γ)赤色を発光する第3発光素子が2次元マトリクス状に配列された第3発光パネル、及び、第3発光パネルから出射された出射光の通過/非通過を制御するための赤色光通過制御装置(ライト・バルブ)から成る第3画像形成装置、並びに、
(δ)青色光通過制御装置、緑色光通過制御装置及び赤色光通過制御装置を通過した光を1本の光路に纏めるための手段を備えており、
光通過制御装置(ライト・バルブ)によってこれらの第1発光パネル、第2発光パネル及び第3発光パネルから出射された出射光の通過/非通過を制御することで画像を表示する。
【0045】
[画像形成装置−D]
画像形成装置−Dは、フィールドシーケンシャル方式のカラー表示の画像形成装置であり、
(α)青色を発光する第1発光素子を備えた第1画像形成装置、
(β)緑色を発光する第2発光素子を備えた第2画像形成装置、及び、
(γ)赤色を発光する第3発光素子を備えた第3画像形成装置、並びに、
(δ)第1画像形成装置、第2画像形成装置及び第3画像形成装置から出射された光を1本の光路に纏めるための手段、更には、
(ε)1本の光路に纏めるための手段から出射された光の通過/非通過を制御するための光通過制御装置(ライト・バルブ)、
を備えており、
光通過制御装置によってこれらの発光素子から出射された出射光の通過/非通過を制御することで画像を表示する。
【0046】
[画像形成装置−E]
画像形成装置−Eも、フィールドシーケンシャル方式のカラー表示の画像形成装置であり、
(α)青色を発光する第1発光素子が2次元マトリクス状に配列された第1発光パネルから成る第1画像形成装置、
(β)緑色を発光する第2発光素子が2次元マトリクス状に配列された第2発光パネルから成る第2画像形成装置、及び、
(γ)赤色を発光する第3発光素子が2次元マトリクス状に配列された第3発光パネルから成る第3画像形成装置、並びに、
(δ)第1画像形成装置、第2画像形成装置及び第3画像形成装置のそれぞれから出射された光を1本の光路に纏めるための手段、更には、
(ε)1本の光路に纏めるための手段から出射された光の通過/非通過を制御するための光通過制御装置(ライト・バルブ)、
を備えており、
光通過制御装置によってこれらの発光パネルから出射された出射光の通過/非通過を制御することで画像を表示する。
【0047】
[画像形成装置−F]
画像形成装置−Fは、第1発光素子、第2発光素子及び第3発光素子のそれぞれの発光/非発光状態を制御することで画像を表示する、パッシブマトリックスタイプあるいはアクティブマトリックスタイプのカラー表示の画像形成装置である。
【0048】
[画像形成装置−G]
画像形成装置−Gは、2次元マトリクス状に配列された発光素子ユニットからの出射光の通過/非通過を制御するための光通過制御装置(ライト・バルブ)を備えており、発光素子ユニットにおける第1発光素子、第2発光素子及び第3発光素子のそれぞれの発光/非発光状態を時分割制御し、更に、光通過制御装置によって第1発光素子、第2発光素子及び第3発光素子から出射された出射光の通過/非通過を制御することで画像を表示する、フィールドシーケンシャル方式のカラー表示の画像形成装置である。
【0049】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置においては、複数の平行光とされた光を導光板に入射させるが、このような、平行光であることの要請は、これらの光が導光板へ入射したときの光波面情報が、第1回折格子部材と第2回折格子部材を介して導光板から出射された後も保存される必要があることに基づく。尚、複数の平行光を生成させるためには、具体的には、例えば、コリメート光学系における焦点距離の所(位置)に、例えば、画像形成装置を位置させればよい。ここで、コリメート光学系は、画素の位置情報を光学装置の光学系における角度情報に変換する機能を有する。
【0050】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置において、導光板は、導光板の軸線(Y方向)と平行に延びる2つの平行面(第1面及び第2面)を有している。ここで、光が入射する導光板の面を導光板入射面、光が出射する導光板の面を導光板出射面としたとき、第1面によって導光板入射面及び導光板出射面が構成されていてもよいし、第1面によって導光板入射面が構成され、第2面によって導光板出射面が構成されていてもよい。
【0051】
導光板を構成する材料として、石英ガラスやBK7等の光学ガラスを含むガラスや、プラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)を挙げることができる。導光板の形状は、平板に限定するものではなく、湾曲した形状を有していてもよい。
【0052】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置を構成するコリメート光学系として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。
【0053】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る画像表示装置によって、例えば、頭部装着型ディスプレイ(HMD,Head Mounted Display)を構成することができ、装置の軽量化、小型化を図ることができ、装置装着時の不快感を大幅に軽減させることが可能となるし、更には、製造コストダウンを図ることも可能となる。
【実施例1】
【0054】
実施例1は、本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法、より具体的には、第1の構成の製造方法、及び、本発明のホログラム記録フィルム、具体的には、第1の構成のホログラム記録フィルムに関する。
【0055】
実施例1のホログラム記録フィルム30は、図1の(C)に模式的な断面図を示すように、第1の感光材料から成り、所望の表面ピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層(但し、M≧2であり、実施例1にあっては、M=2)の第1感光材料層(第1回折格子層)31A,31Bと、(M−1)層の樹脂層とが、交互に積層して成る積層構造体33から構成されており、
M層の第1感光材料層31A,31Bの相互において、感光材料層の表面におけるピッチ(表面ピッチ)の値は同じであり、スラント角が異なっている。
【0056】
尚、図1の(B)、(C)、あるいは、後述する図2の(B)、図3、図4の(B)、図5において、保護層14に斜線を付すことを省略した。また、図1の(B)及び(C)、あるいは、後述する図2の(B)、図3、図4の(B)、図5において、第1感光材料層31A,31B,31C、第2感光材料層32A,32Bに斜線を付しているが、係る斜線は干渉縞を模式的に示す。
【0057】
ここで、実施例1において、樹脂層は、第2の感光材料から成る第2感光材料前駆体層12Aから成り、更には、所望の表面ピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成された(M−1)層(実施例1にあっては、具体的には、1層)の第2感光材料層(第2回折格子層)32Aから成る。
【0058】
第1層目の第1感光材料層31A、第2層目の第1感光材料層32A、第1層目の第2感光材料層31Bの表面ピッチ、スラント角、及び、再生中心波長(λ)の値を以下の表1に例示する。尚、表1あるいは後述する表3、表5中、スラント角及び再生中心波長の値における「/」の前に記載した値は加熱後の値であり、「/」の後に記載した値は加熱前の値である。図7に示すように、第1層目の第1感光材料層及び第2層目の第1感光材料層は同じ感光材料から構成されているので、加熱前の回折波長帯域は同じであるが(図7の「A」のピークを参照)、加熱後には、第1層目の第1感光材料層及び第2層目の第1感光材料層の回折波長帯域は、図7の「C」及び「B」のピークに示すように、異なる変化を示す。
【0059】
[表1]
表面ピッチ スラント角 再生中心波長(λ)
第1層目の第1感光材料層 0.4μm 31.6度/29.5度 626nm/596nm
第1層目の第2感光材料層 0.3μm 32.2度/29.5度 455nm/427nm
第2層目の第1感光材料層 0.4μm 32.9度/29.5度 644nm/596nm
【0060】
上記のとおり、M層の第1感光材料層31A,31Bにおける表面ピッチと、(M−1)層の第2感光材料層32Aにおける表面ピッチとは、異なっている。また、M層の第1感光材料層31A,31Bにおける再生中心波長は、Mの値が大きくなるほど長波長側に位置する。即ち、エネルギー線の照射量が少ないほど、エネルギー線の照射前の再生中心波長とエネルギー線の照射後の再生中心波長の差が大きくなる。
【0061】
以下、実施例1のホログラム記録フィルムの製造方法、より具体的には、第1の構成の製造方法を説明するが、実施例1にあっては、第1感光材料層と第2感光材料層とは、エネルギー線に対して異なる感光特性を有している。具体的には、第1感光材料層を構成する第1感光材料と、第2感光材料層を構成する第2感光材料の主たる組成は同じであるが、エネルギー線透過量が異なる。より具体的には、各感光材料層はエネルギー線に対して吸収を持つため、各感光材料層を透過するエネルギー線の透過量が異なる。エネルギー線として、具体的には、波長365nmの紫外線を用いる。また、第1感光材料前駆体層と第2感光材料前駆体層とは、参照レーザ光及び物体レーザ光に対して、異なる感光特性を有している。
【0062】
[工程−100]
先ず、第1の感光材料から成るM層(但し、M≧2であり、実施例1にあっては、M=2)の第1感光材料前駆体層11A,11Bと、(M−1)層の樹脂層とを、交互に積層して、積層構造体13を得る(図1の(A)参照)。
【0063】
具体的には、PETの支持フィルムの上にPVA(日本合成化学株式会社製NH−18)を塗布乾燥し、5μm厚さの保護層14を形成した。次いで、保護層14上に、緑色レーザに対して感光性を有するフォトポリマー(Dupont社製HRS700X380−緑色露光用色素含有)を塗布し、10μmの粘着性のある第1感光材料前駆体層11A,11Bを形成した。同様にして、保護層14上に、青色レーザに対して感光性を有するフォトポリマー(Dupont社製HRS700X380−青色露光用色素含有)を塗布し、10μmの粘着性のある第2感光材料前駆体層12Aを形成した。得られた第1感光材料前駆体層11Bをガラス板から成る支持体15上に貼り付け、支持フィルムを取り除いた後、第1感光材料前駆体層11B上の保護層14の上に、第2感光材料前駆体層12Aを貼り付け、支持フィルムを取り除いた後、第2感光材料前駆体層12A上の保護層14の上に、第1感光材料前駆体層11Aを貼り付け、支持フィルムを取り除いた。こうして、図1の(A)に模式的な断面図を示すように、支持体15上に、第2層目の第1感光材料前駆体層11B、保護層14、第1層目の第2感光材料前駆体層12A、保護層14、第1層目の第1感光材料前駆体層11A、保護層14から構成された積層構造体13を得た。
【0064】
[工程−110]
次いで、参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、M層の第1感光材料前駆体層11A,11Bから、所望のピッチ(表面ピッチ)及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層の第1感光材料層21A,21Bを得る。併せて、(M−1)層の第2感光材料前駆体層12Aから、所望のピッチ(表面ピッチ)及びスラント角を有する第2の干渉縞が形成された(M−1)層の第2感光材料層22Aを得る(図1の(B)参照)。
【0065】
具体的には、第1の参照レーザ光及び第1の物体レーザ光を第1感光材料前駆体層11A,11Bに照射し、第2の参照レーザ光及び第2の物体レーザ光を第2感光材料前駆体層12Aに照射する。より具体的には、積層構造体13を露光用のプリズムに屈折率オイルを介して固定した。そして、緑色(波長:532nm)を発光するYAGレーザ(SHG)から構成された第1の参照レーザ光及び第1の物体レーザ光を第1感光材料前駆体層11A,11Bに照射し、同時に、青色(波長457nmnのアルゴン(Ar)レーザから構成された第2の参照レーザ光及び第2の物体レーザ光を第2感光材料前駆体層12Aに照射した。
【0066】
露光装置は、概念図を図9に示すように、所定の波長のレーザ光を出射するレーザ光源(YAGレーザから成るレーザ光源41及びアルゴン(Ar)レーザから成るレーザ光源51)と、レーザ光源41,51からのレーザ光の光軸上に配された可変ビームスプリッタ43,53とを備えている。可変ビームスプリッタ43,53は、レーザ光源41,51から出射されたレーザ光を、参照レーザ光と物体レーザ光とに分離するためのものである。
【0067】
より具体的には、レーザ光源41から出射されたレーザ光は、全反射ミラー42によって全反射され、可変ビームスプリッタ43に入射する。ここで、可変ビームスプリッタ43によって反射されたレーザ光が参照レーザ光となり、可変ビームスプリッタ43を透過したレーザ光が物体レーザ光となる。また、レーザ光源51から出射されたレーザ光は、全反射ミラー52によって全反射され、可変ビームスプリッタ53に入射する。ここで、可変ビームスプリッタ53によって反射されたレーザ光が参照レーザ光となり、可変ビームスプリッタ53を透過したレーザ光が物体レーザ光となる。可変ビームスプリッタ43,53によって分離された各色毎の参照レーザ光は、ダイクロイック・ミラー48によって色合成される。そして色合成された参照レーザ光は、参照レーザ光用のビーム整形光学系50を介して、積層構造体に入射する。尚、この参照レーザ光の光路中には、参照レーザ光の進行方向を変えるための全反射ミラー47,49が配されている。一方、可変ビームスプリッタ43,53によって分離された各色毎の物体レーザ光は、ダイクロイック・ミラー44によって色合成される。そして、色合成された物体レーザ光は、物体レーザ光用のビーム整形光学系46を介して、積層構造体に入射する。尚、これら物体レーザ光の光路中には、物体レーザ光の進行方向を変えるための全反射ミラー45,54が配されている。これにより、参照レーザ光と物体レーザ光とが積層構造体における感光材料前駆体層内部において干渉し、参照レーザ光と物体レーザ光との干渉によって生じる干渉縞が、感光材料前駆体層内部に屈折率の変化として記録される。尚、青色及び緑色の光を色合成して一度に照射して積層構造体を露光する多波長同時露光を例に挙げて説明したが、青色及び緑色の光をそれぞれ単独に、順次、積層構造体を照射して露光する多波長順次露光とすることもできる。ここに説明は省略したが、赤色レーザ光による露光についても全く同様であり、3色の同時露光及び順次露光が可能であることは云うまでもない。
【0068】
[工程−120]
その後、積層構造体23の一方の面側から積層構造体23にエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、表面ピッチの値Λを保持したまま、M層の第1感光材料層31A,31B相互のスラント角を異ならせる。
【0069】
具体的には、第1層目の第1感光材料層21A側から積層構造体23に紫外線を照射した。紫外線の照射量を22ジュールとした。ここで、第1感光材料層21A、第2感光材料層22A、第1感光材料層21Bを通過した紫外線は、第1感光材料層21A、第2感光材料層22A、第1感光材料層21Bのそれぞれによって約50%のエネルギーが吸収される。従って、各感光材料層21A,22A,21Bに対する紫外線照射量は、以下の表2のとおりである。その後、100゜C、80分の加熱を、オーブンを用いて行った。その後、支持体15を除去することで、図1の(C)に示す構造を有する実施例1のホログラム記録フィルム30を得ることができた。
【0070】
[表2]
紫外線照射量(ジュール)
第1層目の第1感光材料層21A 22
第1層目の第2感光材料層22A 11
第2層目の第1感光材料層21B 5.5
【0071】
加熱前後における再生中心波長の値の変化は、表1に示したとおりである。また、図8の(A)に示すように、中心が635nmの赤色の回折波長帯域のバンド幅は、38nmに拡大した。尚、加熱前にあっては、中心が596nmの赤色の回折波長帯域のバンド幅は11nmであった。
【0072】
このように、実施例1のホログラム記録フィルムの製造方法にあっては、積層構造体の一方の面側から積層構造体にエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、表面ピッチの値Λを保持したまま、M層の第1感光材料層相互のスラント角を異ならせる。即ち、M層の第1感光材料層相互において、感光材料層の表面におけるピッチの値は同じであり、スラント角が異なっている。従って、ホログラム記録フィルムの製造工程数の増加を招くことが無く、生産性が高い。また、従来の技術のように、ホログラム記録フィルムに不所望の干渉縞が形成されてしまうといった問題が発生することも無い。更には、ホログラム記録フィルムの製造工程において気泡等が混入するといった問題も発生し難い。また、多層の積層構造体を容易に製造することができるので、回折格子部材の回折波長帯域を一層広げることができ、画像表示装置の画像の明るさを増加させることを容易に達成することができる。
【実施例2】
【0073】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、M=3とした。実施例2において使用した第1感光材料前駆体層11A,11B,11C、第2感光材料前駆体層12A,12Bは、実施例1における第1感光材料前駆体層11A,11B、第2感光材料前駆体層12Aと同じである。但し、参照レーザ光及び物体レーザ光の積層構造体への照射条件は、実施例1と若干異なる。
【0074】
得られた第1層目の第1感光材料層31A、第2層目の第1感光材料層31B、第3層目の第1感光材料層31C、第1層目の第2感光材料層32A、第2層目の第2感光材料層32Bの表面ピッチ、スラント角、及び、再生中心波長(λ)の値を以下の表3に例示する。
【0075】
[表3]
表面ピッチ スラント角 再生中心波長(λ)
第1層目の第1感光材料層 0.4μm 30.3度/28.8度 607nm/585nm
第1層目の第2感光材料層 0.3μm 31.2度/29.3度 445nm/425nm
第2層目の第1感光材料層 0.4μm 31.5度/28.8度 625nm/585nm
第2層目の第2感光材料層 0.3μm 32.7度/29.3度 460nm/425nm
第3層目の第1感光材料層 0.4μm 32.4度/28.8度 638nm/585nm
【0076】
実施例2のホログラム記録フィルム30Aの製造工程における積層構造体等の模式的な断面図を、図2の(A)、(B)及び図3に示すが、図2の(A)は、実施例1の図1の(A)にて示した[工程−100]と同様の工程における積層構造体等の模式的な断面図であり、図2の(B)は、実施例1の図1の(B)にて示した[工程−110]と同様の工程における積層構造体等の模式的な断面図であり、図3は、実施例1の図1の(C)にて示した[工程−120]と同様の工程における積層構造体の模式的な断面図である。また、参照番号21A,21B,21C、参照番号22A,22Bは、干渉縞が形成された後であって、エネルギー線が照射される前の状態の第1感光材料層、第2感光材料層を示す。
【0077】
実施例2にあっては、(M−1)層の第2感光材料層32A,32B相互において、表面ピッチは同じであり、スラント角が異なっている。また、(M−1)層の第2感光材料層32A,32Bにおける再生中心波長は、Mの値が大きくなるほど長波長側に位置する。即ち、エネルギー線の照射量が少ないほど、エネルギー線の照射前の再生中心波長とエネルギー線の照射後の再生中心波長の差が大きくなる。
【0078】
加熱前後における再生中心波長の値の変化は、表3に示したとおりである。また、図8の(B)に示すように、中心が630nmの赤色の回折波長帯域のバンド幅は、51nmに拡大した。尚、加熱前にあっては、中心が585nmの赤色の回折波長帯域のバンド幅は12nmであった。更には、図示しないが、中心が453nmの青色の回折波長帯域のバンド幅は、35nmに拡大した。また、加熱前にあっては、中心が425nmの青色の回折波長帯域のバンド幅は8nmであった。
【0079】
紫外線の照射量を48ジュールとした。ここで、各感光材料層を通過した紫外線は、感光材料層のそれぞれによって約50%のエネルギーが吸収される。従って、各感光材料層に対する紫外線照射量は、以下の表4のとおりである。また、100゜C、80分の加熱を、オーブンを用いて行った。
【0080】
[表4]
紫外線照射量(ジュール)
第1層目の第1感光材料層21A 48
第1層目の第2感光材料層22A 24
第2層目の第1感光材料層21B 12
第2層目の第2感光材料層22B 6
第3層目の第1感光材料層21C 3
【実施例3】
【0081】
実施例3も、実施例1の変形であるが、第2の構成の製造方法に関し、また、第2の構成のホログラム記録フィルム30Bに関する。実施例3にあっては、樹脂層16A,16Bは、エネルギー線の一部を吸収するフィルム、具体的には、厚さ5μmのアクリル系樹脂から成るフィルムから構成されている。このフィルムは、波長365nmの紫外線を15%吸収する。尚、紫外線の吸収率は、浜松ホトニクス株式会社製 Light Power Meter Model C6080-03 を用いて、紫外線透過前後の365nmにおける紫外線強度を測定して求めたものである。実施例3にあっては、M=3とした。実施例3において使用した第1感光材料前駆体層11A,11B,11Cは、実施例1における第1感光材料前駆体層11A,11Bと同じである。但し、参照レーザ光及び物体レーザ光の積層構造体への照射条件は、実施例1と若干異なる。
【0082】
実施例3の製造方法にあっては、前記工程(C)において、積層構造体の第1層目の第1感光材料層側から積層構造体にエネルギー線を照射する。
【0083】
得られた第1層目の第1感光材料層31A、第2層目の第1感光材料層31B、第3層目の第1感光材料層31Cの表面ピッチ、スラント角、及び、再生中心波長(λ)の値を以下の表5に例示する。
【0084】
[表5]
表面ピッチ スラント角 再生中心波長(λ)
第1層目の第1感光材料層 0.4μm 30.3度/29.3度 607nm/592nm
第2層目の第1感光材料層 0.4μm 31.2度/29.3度 621nm/592nm
第3層目の第1感光材料層 0.4μm 32.6度/29.3度 640nm/592nm
【0085】
実施例3のホログラム記録フィルムの製造工程における積層構造体等の模式的な断面図を、図4の(A)、(B)及び図5に示すが、図4の(A)は、実施例1の図1の(A)にて示した[工程−100]と同様の工程における積層構造体等の模式的な断面図であり、図4の(B)は、実施例1の図1の(B)にて示した[工程−110]と同様の工程における積層構造体等の模式的な断面図であり、図5は、実施例1の図1の(C)にて示した[工程−120]と同様の工程における積層構造体の模式的な断面図である。また、参照番号21A,21B,21Cは、干渉縞が形成された後であって、エネルギー線が照射される前の状態の第1感光材料層を示す。
【0086】
加熱前後における再生中心波長の値の変化は、表5に示したとおりである。また、中心が622nmの回折波長帯域のバンド幅は、52nmに拡大した。尚、加熱前にあっては、中心が592nmの回折波長帯域のバンド幅は10nmであった。
【0087】
紫外線の照射量を58ジュールとした。ここで、各感光材料層を通過した紫外線は、感光材料層のそれぞれによって約50%のエネルギーが吸収され、樹脂層のぞれぞれによって約15%のエネルギーが吸収される。従って、各感光材料層に対する紫外線照射量は、以下の表6のとおりである。また、100゜C、80分の加熱を、オーブンを用いて行った。
【0088】
[表6]
紫外線照射量(ジュール)
第1層目の第1感光材料層31A 58
第2層目の第1感光材料層31B 24.7
第3層目の第1感光材料層31C 10.5
【実施例4】
【0089】
実施例4は、本発明の第2の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法に関する。
【0090】
実施例4のホログラム記録フィルムの製造方法は、
(A)感光材料から成る第1感光材料前駆体層に参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、第1感光材料前駆体層から、所望のピッチ(表面ピッチ)及びスラント角を有する干渉縞が形成された感光材料層を得た後、
(B)感光材料層の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、感光材料層の表面におけるピッチ(表面ピッチ)の値Λを保持したまま、感光材料層(回折格子層)の各領域におけるスラント角を異ならせる、
各工程を有する。
【0091】
尚、工程(A)は、実質的に、実施例1の[工程−110]と同様の工程とすればよく、工程(B)は、感光材料層の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射する点を除き、実質的に、実施例1の[工程−120]と同様の工程とすればよい。感光材料層の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射するためには、感光材料層の各領域におけるエネルギー線照射量積分値を変化させるか、単位面積当たりのエネルギー線照射量を変化させればよい。エネルギー量の変化は、ホログラム記録フィルムに要求される仕様に基づき、連続的な変化であってもよいし、段階的な変化であってもよい。
【0092】
実施例4において、得られた感光材料層(回折格子層)における再生中心波長は、感光材料層(回折格子層)の各領域において異なっている。また、エネルギー線の照射エネルギー量が少ないほど、再生中心波長は長波長側に位置する。即ち、エネルギー線の照射量が少ないほど、エネルギー線の照射前の再生中心波長とエネルギー線の照射後の再生中心波長の差が大きくなる。このように、実施例4のホログラム記録フィルムの製造方法にあっては、感光材料層の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、表面ピッチの値Λを保持したまま、感光材料層の各領域におけるスラント角を異ならせるので、工程数の増加を招くことが無く、生産性が高い。尚、実施例4によって得られるホログラム記録フィルムは、例えば、特開2007−094175に開示された光学装置における第1回折格子部材や第2回折格子部材に適用することができる。
【実施例5】
【0093】
実施例5は、本発明の第1の態様に係る画像表示装置に関する。実施例5の画像表示装置100は、図10の(A)に概念図を示すように、
(A)2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する画像形成装置111、
(B)画像形成装置111の各画素から出射された光を平行光とするコリメート光学系112、及び、
(C)コリメート光学系112にて平行光とされた光が入射され、導光され、出射される光学装置120、
を備えている。
【0094】
そして、実施例1において、光学装置120は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板121、
(b)導光板121に入射された光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射された光を回折反射する、導光板121に配設された第1回折格子部材130、及び、
(c)導光板121の内部を全反射により伝播した光を回折反射し、導光板121から出射する、導光板121に配設された第2回折格子部材140、
を備えており、
第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140は、実施例1〜実施例3にて説明したホログラム記録フィルムから成り、反射型体積ホログラム回折格子から構成されている。ここで、反射型体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。
【0095】
即ち、ホログラム記録フィルムは、感光材料から成り、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層(但し、M≧2)の第1感光材料層と、(M−1)層の樹脂層とが、交互に積層して成る積層構造体から構成されており、M層の第1感光材料層相互において、表面ピッチは同じであり、スラント角が異なっている。
【0096】
第1回折格子部材130は、導光板121の第2面123に配設(接着)されており、第1面122から導光板121に入射されたこの平行光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射されたこの平行光を回折反射する。更には、第2回折格子部材140は、導光板121の第2面123に配設(接着)されており、導光板121の内部を全反射により伝播したこの平行光を、複数回、回折反射し、導光板121から平行光のまま第1面122から出射する。但し、これに限定するものではなく、第2面123によって導光板入射面が構成され、第1面122によって導光板出射面が構成されていてもよい。尚、回折格子部材の配設(接着)にあっては、ホログラム記録フィルムの第1層目の第1感光材料層が導光板121の第2面123と面した状態で回折格子部材の配設(接着)してもよいし、ホログラム記録フィルムの第M層目の第1感光材料層が導光板121の第2面123と面した状態で回折格子部材の配設(接着)してもよい。
【0097】
そして、実施例5にあっては、第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140を、異なるP種類(具体的には、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、P層の感光材料層が積層されて成る構成としている。尚、フォトポリマー材料から成る各感光材料層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、実施例1〜実施例3にて説明した方法で作製されている。P種類の感光材料層に形成された干渉縞の表面ピッチはそれぞれの波長帯域で一定であり、干渉縞は直線状であり、Z軸方向に平行である。尚、図10及び図12においては、第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140を1層で示した。このような構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材130及び第2回折格子部材140において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。
【0098】
即ち、導光板121にあっては、赤色、緑色及び青色の3色の平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板121が薄く、導光板121の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材140に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板121に入射する平行光のうち、第2回折格子部材140に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材140から離れる方向の角度をもって導光板121に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材130において回折反射される平行光であって、第2回折格子部材140に近づく方向の角度をもって導光板121に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板121に入射する平行光よりも、導光板121の内部を伝播していく光が導光板121の内面と衝突するときの導光板121の法線と成す角度が小さくなるからである。第2回折格子部材140の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材130の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板121の軸線に垂直な仮想面に対して対称な関係にある。
【0099】
実施例1において、画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されている。より具体的には、反射型空間光変調装置150は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)151、及び、光源153からの光の一部を反射して液晶表示装置151へと導き、且つ、液晶表示装置151によって反射された光の一部を通過させてコリメート光学系112へと導く偏光ビームスプリッター152から構成されている。液晶表示装置151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、320×240個)の画素(液晶セル)を備えている。偏光ビームスプリッター152は、周知の構成、構造を有する。光源153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター152に衝突する。偏光ビームスプリッター152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、液晶表示装置151に入射し、液晶表示装置151の内部で反射され、液晶表示装置151から出射される。ここで、液晶表示装置151から出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置151から出射され、偏光ビームスプリッター152に衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター152を通過し、コリメート光学系112へと導かれる。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、光源153に戻される。液晶表示装置151は、例えば、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、320×240個)の画素(液晶セルの数は画素数の3倍)を備えている。コリメート光学系112は、例えば、凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、コリメート光学系112における焦点距離の所(位置)に画像形成装置111(より具体的には、液晶表示装置151)が配置されている。また、1画素は、赤色を出射する赤色発光副画素、緑色を出射する緑色発光副画素、及び、青色を出射する青色発光副画素から構成されている。
【0100】
ここで、実施例5あるいは後述する実施例6において、光学ガラスやプラスチック材料から成る導光板121は、導光板121の軸線と平行に延びる2つの平行面(第1面122及び第2面123)を有している。第1面122と第2面123とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面122から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面122から出射される。但し、これに限定するものではなく、第2面123によって光入射面が構成され、第1面122によって光出射面が構成されていてもよい。
【0101】
尚、実施例5の画像表示装置を2組、HMDとして、観察者が装着した状態を示す概念図を図11に示す。実施例5の画像表示装置を用いることで、HMDの軽量化、小型化を図ることができ、HMD装着時の不快感を大幅に軽減させることが可能となるし、更には、製造コストダウンを図ることも可能となる。
【実施例6】
【0102】
実施例6は、本発明の第2の態様に係る画像表示装置に関する。実施例6の画像表示装置200は、図12に概念図を示すように、
(A)光源251、
(B)光源251から出射された光を平行光とするコリメート光学系252、
(C)コリメート光学系252から出射された平行光を走査する走査手段253、
(D)走査手段253によって走査された平行光をリレーするリレー光学系254、及び、
(E)リレー光学系254にて平行光とされた光が入射され、導光され、出射される光学装置120、
を備えた画像表示装置である。ここで、光学装置120は、実施例5における光学装置120と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【0103】
光源251は、赤色を発光する赤色発光素子251R、緑色を発光する緑色発光素子251G、青色を発光する青色発光素子251Bから構成されており、各発光素子は半導体レーザ素子から成る。光源251から出射された3原色の光は、クロスプリズム255を通過することで色合成が行われ、光路が一本化され、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系252に入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー256で反射され、マイクロミラーを二次元方向に回転自在とし、入射した平行光を2次元的に走査することができるMEMSから成る走査手段253によって水平走査及び垂直走査が行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系254を通過し、平行光とされた光が光学装置120に入射する。
【0104】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明したホログラム記録フィルム、積層構造体、画像表示装置の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。例えば、実施例5あるいは実施例6において説明した光学装置にあっては、導光板121の第1面122に、第1回折格子部材130の代わりに、透過型ホログラムから成る第1偏向手段を配設し、第2面122に反射型ホログラムから成る第2回折格子部材140を配設するといった構成とすることもできる。このような構成にあっては、第1偏向手段に入射した光は、回折され、導光板121内で全反射条件を満たし、第2回折格子部材140まで伝播される。そして、第2回折格子部材140において回折反射され、導光板121から出射される。あるいは又、第1回折格子部材の代わりに、導光板121の内部に、反射鏡として機能する第1偏向手段を配置してもよい。係る第1偏向手段は、例えば、合金を含む金属から構成され、導光板121に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、導光板121に入射された光を回折させる回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。あるいは又、第2回折格子部材の代わりに、導光板121の内部に、半透過鏡として機能する第2偏向手段を配置してもよい。係る第2偏向手段は、例えば、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体や、ハーフミラー、偏光ビームスプリッター、ホログラム回折格子膜から構成することができる。あるいは又、透過型ホログラムから成る第1偏向手段を、透過型LCDと自由曲面レンズとの組合せに置き換えることもできる。
【0105】
また、本発明の第1の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法に対して、本発明の第2の態様に係るホログラム記録フィルムの製造方法を適用することができる。即ち、工程(C)において、積層構造体の一方の面側から積層構造体にエネルギー線を照射する際、積層構造体の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射してもよく、これによって、表面ピッチの値Λを保持したまま、積層構造体の各領域におけるスラント角を異ならせることができる。また、積層構造体を、第1感光材料前駆体層と第2感光材料前駆体層から構成するだけでなく、第1感光材料前駆体層と第2感光材料前駆体層と第3感光材料前駆体層の積層構造体、第1感光材料前駆体層と第2感光材料前駆体層と第3感光材料前駆体層と第4感光材料前駆体層の積層構造体等とすることもできる。
【0106】
実施例5での使用に適した画像形成装置の変形例として、例えば、図13に概念図を示すような、半導体発光素子から成る発光素子301が2次元マトリクス状に配列された発光パネルから成り、発光素子301のそれぞれの発光/非発光状態を制御することで、発光素子301の発光状態を直接的に視認させることで画像を表示する、アクティブマトリックスタイプの画像形成装置とすることもできる。この画像形成装置から出射された光は、コリメート光学系112を介して導光板121に入射される。
【0107】
あるいは又、図14に概念図を示すように、
(α)赤色を発光する赤色発光素子301Rが2次元マトリクス状に配列された赤色発光パネル311R、
(β)緑色を発光する緑色発光素子301Gが2次元マトリクス状に配列された緑色発光パネル311G、及び、
(γ)青色を発光する青色発光素子301Bが2次元マトリクス状に配列された青色発光パネル311B、並びに、
(δ)赤色発光パネル311R、緑色発光パネル311G及び青色発光パネル311Bから出射された光を1本の光路に纏めるための手段(例えば、ダイクロイック・プリズム303)、
を備えており、
赤色発光素子301R、緑色発光素子301G及び青色発光素子301Bのそれぞれの発光/非発光状態を制御するカラー表示の画像形成装置とすることもできる。この画像形成装置から出射された光も、コリメート光学系112を介して導光板121に入射される。尚、参照番号312は、発光素子から出射された光を集光するためのマイクロレンズである。
【0108】
あるいは又、発光素子301R,301G,301Bが2次元マトリクス状に配列された発光パネル311R,311G,311B等から成る画像形成装置の概念図を図15に示すが、発光パネル311R,311G,311Bから出射された光は、光通過制御装置304R,304G,304Bによって通過/非通過が制御され、ダイクロイック・プリズム303に入射し、これらの光の光路は1本の光路に纏められ、コリメート光学系112を介して導光板121に入射される。
【0109】
あるいは又、発光素子301R,301G,301Bが2次元マトリクス状に配列された発光パネル311R,311G,311B等から成る画像形成装置の概念図を図16に示すが、発光パネル311R,311G,311Bから出射された光は、ダイクロイック・プリズム303に入射し、これらの光の光路は1本の光路に纏められ、ダイクロイック・プリズム303から出射したこれらの光は光通過制御装置304によって通過/非通過が制御され、コリメート光学系112を介して導光板121に入射される。
【0110】
あるいは又、図17に示すように、赤色を発光する発光素子301R、及び、赤色を発光する発光素子301Rから出射された出射光の通過/非通過を制御するための一種のライト・バルブである光通過制御装置(例えば、液晶表示装置304R)、緑色を発光する発光素子301G、及び、緑色を発光する発光素子301Gから出射された出射光の通過/非通過を制御するための一種のライト・バルブである光通過制御装置(例えば、液晶表示装置304G)、青色を発光する発光素子301B、及び、青色を発光する発光素子301Bから出射された出射光の通過/非通過を制御するための一種のライト・バルブである光通過制御装置(例えば、液晶表示装置304B)、並びに、これらのGaN系半導体から成る発光素子301R,301G,301Bから出射された光を案内する光案内部材302、及び、1本の光路に纏めるための手段(例えば、ダイクロイック・プリズム303)を備えた画像形成装置とすることもできる。
【符号の説明】
【0111】
11A,11B,11C,12A,12B・・・感光材料前駆体層、21A,21B,21C,22A,22B,31A,31B,31C,32A,32B・・・感光材料層、13,23,33・・・積層構造体、14・・・保護層、15・・・支持体、16A,16B・・・樹脂層、30,30A,30B・・・ホログラム記録フィルム、41,51・・・レーザ光源、42,47,49,52・・・全反射ミラー、43,53・・・可変ビームスプリッタ、44,45,48,54・・・ダイクロイック・ミラー、46,50・・・ビーム整形光学系、60・・・観察者の瞳、100,200・・・画像表示装置、111・・・画像形成装置、112・・・コリメート光学系、120・・・光学装置、121・・・導光板、122・・・導光板の第1面、123・・・導光板の第2面、130・・・第1回折格子部材、140・・・第2回折格子部材、150・・・反射型空間光変調装置、151・・・液晶表示装置(LCD)、152・・・偏光ビームスプリッター、153・・・光源、251・・・光源、252・・・コリメート光学系、253・・・走査手段、254・・・リレー光学系、255・・・クロスプリズム、256・・・全反射ミラー、301,301R,301G,301B・・・発光素子、302・・・光案内部材、303・・・ダイクロイック・プリズム、304,304R,304G,304B・・・光通過制御装置、311R,311G,311B・・・発光パネル、312・・・マイクロレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感光材料から成るM層(但し、M≧2)の感光材料前駆体層の各層と、(M−1)層の樹脂層の各層とを、交互に積層して、積層構造体を得た後、
(B)参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、M層の感光材料前駆体層から、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層の感光材料層を得、その後、
(C)積層構造体の一方の面側から積層構造体にエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、感光材料層の表面におけるピッチの値を保持したまま、M層の感光材料層相互のスラント角を異ならせる、
各工程を有するホログラム記録フィルムの製造方法。
【請求項2】
エネルギー線は紫外線である請求項1に記載のホログラム記録フィルムの製造方法。
【請求項3】
M層の感光材料層における再生中心波長は、Mの値に応じて変化する請求項1に記載のホログラム記録フィルムの製造方法。
【請求項4】
感光材料から成り、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層(但し、M≧2)の感光材料層の各層と、(M−1)層の樹脂層の各層とが、交互に積層して成る積層構造体から構成されており、
M層の感光材料層相互において、感光材料層の表面におけるピッチの値は同じであり、スラント角が異なっているホログラム記録フィルム。
【請求項5】
M層の感光材料層における再生中心波長は、Mの値に応じて変化する請求項4に記載のホログラム記録フィルム。
【請求項6】
樹脂層は、第2の感光材料から成り、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成された(M−1)層の第2感光材料層から成る請求項4に記載のホログラム記録フィルム。
【請求項7】
樹脂層は、エネルギー線の一部を吸収するフィルムから成る請求項4に記載のホログラム記録フィルム。
【請求項8】
(A)2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する画像形成装置、
(B)画像形成装置の各画素から出射された光を平行光とするコリメート光学系、及び、
(C)コリメート光学系にて平行光とされた光が入射され、導光され、出射される光学装置、
を備えた画像表示装置であって、
光学装置は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板、
(b)導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を回折反射する、導光板に配設された第1回折格子部材、及び、
(c)導光板の内部を全反射により伝播した光を回折反射し、導光板から出射する、導光板に配設された第2回折格子部材、
を備えており、
第1回折格子部材及び第2回折格子部材は、ホログラム記録フィルムから成り、
ホログラム記録フィルムは、
感光材料から成り、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層(但し、M≧2)の感光材料層の各層と、(M−1)層の樹脂層の各層とが、交互に積層して成る積層構造体から構成されており、
M層の感光材料層相互において、感光材料層の表面におけるピッチの値は同じであり、スラント角が異なっている画像表示装置。
【請求項9】
(A)光源、
(B)光源から出射された光を平行光とするコリメート光学系、
(C)コリメート光学系から出射された平行光を走査する走査手段、
(D)走査手段によって走査された平行光をリレーするリレー光学系、及び、
(E)リレー光学系にて平行光とされた光が入射され、導光され、出射される光学装置、
を備えた画像表示装置であって、
光学装置は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板、
(b)導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を回折反射する、導光板に配設された第1回折格子部材、及び、
(c)導光板の内部を全反射により伝播した光を回折反射し、導光板から出射する、導光板に配設された第2回折格子部材、
を備えており、
第1回折格子部材及び第2回折格子部材は、ホログラム記録フィルムから成り、
ホログラム記録フィルムは、
感光材料から成り、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成されたM層(但し、M≧2)の感光材料層の各層と、(M−1)層の樹脂層の各層とが、交互に積層して成る積層構造体から構成されており、
M層の感光材料層相互において、感光材料層の表面におけるピッチの値は同じであり、スラント角が異なっている画像表示装置。
【請求項10】
M層の感光材料層における再生中心波長は、Mの値に応じて変化する請求項8又は請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項11】
樹脂層は、第2の感光材料から成り、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成された(M−1)層の第2感光材料層から成る請求項8又は請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項12】
樹脂層は、エネルギー線の一部を吸収するフィルムから成る請求項8又は請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項13】
(A)感光材料から成る感光材料前駆体層に参照レーザ光及び物体レーザ光を積層構造体に照射することで、感光材料前駆体層から、所望のピッチ及びスラント角を有する干渉縞が形成された感光材料層を得た後、
(B)感光材料層の各領域に異なるエネルギー量のエネルギー線を照射し、次いで、加熱することで、感光材料層の表面におけるピッチの値を保持したまま、感光材料層の各領域におけるスラント角を異ならせる、
各工程を有するホログラム記録フィルムの製造方法。
【請求項14】
エネルギー線は紫外線である請求項13に記載のホログラム記録フィルムの製造方法。
【請求項15】
再生中心波長は、感光材料層の各領域において異なっている請求項13に記載のホログラム記録フィルムの製造方法。
【請求項16】
エネルギー線の照射エネルギー量が少ないほど、再生中心波長は長波長側に位置する請求項13に記載のホログラム記録フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−175291(P2011−175291A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110285(P2011−110285)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【分割の表示】特願2008−312837(P2008−312837)の分割
【原出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】