説明

ホログラム記録媒体用基板およびホログラム記録媒体

【課題】透明性、耐溶剤性を併せ持つ高分岐ポリカーボネート樹脂より形成されたホログラム記録媒体用基板およびホログラム記録媒体を提供する。
【解決手段】二次元イメージとして情報を付与された情報光と、情報光と干渉可能な参照光を重ね合わせ、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、支持体となる第二の基板、反射層、ギャップ層、フィルタ層、保護層、記録層、光透過性の第一の基板より構成されるホログラム記録媒体であって、第一の基板は、H−NMR分析により求められる分岐化剤含有量が2.0〜6.0モル%であり、粘度平均分子量が1.6×10〜3.2×10である高分岐ポリカーボネート樹脂から形成されることを特徴とするホログラム記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐溶剤性を有する高分岐ポリカーボネート樹脂より形成されたホログラム記録媒体用基板、および該ホログラム記録媒体用基板から構成される密着性、記録性能に優れたホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いて記録再生を行うホログラム記録媒体は、光磁気記録媒体や相変化光記録媒体などに比べ、大容量・高速転送を実現可能な光記録技術の一つである。特に、体積ホログラムを利用する記録方式は、多重記録が可能なため、高密度記録媒体として有望視されている。
【0003】
二次元イメージとして情報を付与された情報光と参照光が照射されると、体積ホログラム記録媒体の記録層には暗部と明部からなる干渉縞が形成される。光が強く照射された明部では、光重合性化合物の重合反応が進行し、光が弱く照射された暗部から明部に向かって光重合性化合物が拡散して、濃度勾配が生じる。つまり、体積ホログラム記録媒体では、この光重合性化合物の濃度差に伴う屈折率差を記録情報として保持する。
【0004】
体積ホログラム記録媒体において、記録層の厚膜化は重要である。一般に、厚いホログラムほど、回折させるための入射光角度条件は厳しくなり、ブラック条件から少し外れるだけで回折光は消失する。この角度選択性を利用して、同一体積内に複数のホログラムを形成し、読み出すことが可能である。つまり、記録層の膜厚を増加させることによって角度選択性が向上させることができれば、多重度が上がり、記録容量を増加させることが可能となる。
【0005】
この体積ホログラム記録媒体の記録層として、一般的に光重合性化合物および光重合開始剤に加え、三次元架橋ポリマーマトリクスを有する構成が知られている(特許文献1)。三次元架橋ポリマーマトリクスは、光重合性化合物の過剰な移動を抑制し、記録層において、明部に相当する箇所および暗部に相当する箇所の体積変化を抑制する機能を有している。三次元架橋ポリマーマトリクスの材料としては、エポキシ化合物、カチオン重合性モノマーを由来とした反応硬化物などが挙げられる(特許文献2)。
【0006】
体積ホログラム記録媒体は、ホログラム記録層、記録層を挟む光透過層および支持体層から構成され、光透過層および支持体層には、ガラス基板が一般的に用いられてきた。但し、量産性、コスト等を考慮に入れると射出成形を含む種々の加工法によって形成されたプラスチック基板を用いることが切望されている。この場合、透明性、機械的特性、寸法安定性が優れている、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)にカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネート樹脂(以下、PC−Aという)が検討されている。
【0007】
しかしながら、光透過層としてPC−Aからなる基板を積層させる場合、記録層中の組成物、溶剤等の影響によりPC−Aが白濁し、記録再生に用いるレーザー波長の光線透過率が低下し、ホログラム記録再生性能が低下することが判明した。そこで、PC−A基板の白濁を防止するために、基板にSiO等の無機保護層を設けた場合、基板の白濁は改善されるが、記録層との密着性が低下し、基板剥離が問題となる。また、ホログラム記録時の反応・熱により、記録層が収縮し、基板および無機保護膜に応力が生じて無機保護膜に亀裂等の欠陥が発生するため、実用化は困難である。さらに、PC−A基板に紫外線硬化樹脂を塗布し、光硬化させ、有機保護膜として設けた場合、基板の白濁は改善されるが、紫外線硬化樹脂中の微量な未反応分子が記録層の光反応を阻害し、記録再生特性を低下させるという致命的な問題がある。
このように、体積ホログラム記録媒体に用いられる光透過層として、透明性、耐溶剤性のある基板材料が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−161137号公報
【特許文献2】特開2005−107312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、透明性、耐溶剤性を併せ持つ高分岐ポリカーボネート樹脂より形成されたホログラム記録媒体用基板およびホログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成せんとして、ホログラム記録媒体用基板およびホログラム記録媒体について鋭意研究を重ねた。その結果、記録層と接触した時のPC−A基板の白濁が記録層中の組成物、溶剤による結晶化に起因することを見出した。
【0011】
PC−Aは通常使用される状態ではその結晶化度は0.3〜0.7と低い値をとる。高度に結晶化させるためには、ガラス転移温度以上の高温度で長時間処理するか、あるいは溶媒に溶解し、徐々に溶媒を蒸発させる手法があり、特に後者の場合は容易に結晶化させることが可能である。溶媒による結晶化に影響する因子は、溶媒の種類や蒸発速度、溶質の分子構造が挙げられる。溶質の分子構造が結晶化に及ぼす因子として、ポリカーボネート樹脂の構成単位であるビスフェノールの中心炭素位置の対称性がある場合、比較的結晶化しやすくなる。そのため、対称性を有するビスフェノールAを構成単位とするPC−Aは比較的結晶化しやすい。また、中心炭素位置への嵩高な置換基の導入は結晶化の障害因子となるが、特殊なモノマーを使用することは原料コストの大幅なアップを招くため好ましくない。
【0012】
そこで、PC−Aの結晶化を抑制するため、溶剤による結晶化メカニズムから考察した。PC−Aは常温、常湿で非晶(アモルファス)であるため、規則配列をとっていないが、溶剤との接触によりポリマー分子鎖が膨潤し分子鎖間の絡み合いが緩和し、溶剤が蒸発すると共にポリマー分子鎖が規則配列をとり結晶化する。そのため、結晶化を抑制するためには、分子鎖間の膨潤による絡み合い緩和を抑制することと溶剤蒸発時の規則配列(分子鎖移動)を阻害することが必要となる。
【0013】
これらを解決する手法として、ポリマー分子鎖を高度に分岐させ、且つ特定の粘度平均分子量を有する分岐状ポリカーボネート樹脂を用いることを見出した。つまり、ポリマー分子鎖を高度に分岐させることで分子鎖間の絡み合い点密度を増加させるとともに、規則配列を分岐構造により阻害することが可能である。但し、分岐状ポリカーボネート樹脂であっても、ポリマー分子鎖が短い場合、絡み合い点密度および規則配列に対する抑制効果は得られないため、ある程度のポリマー分子鎖(粘度平均分子量)が必要である。その結果、安価なビスフェノールAを構造単位とするPC−Aを用いて、ホログラム記録層に対して耐性のある基板を得ることできた。つまり、特定の粘度平均分子量を有し、且つ高度に分岐したPC−Aからなる基板は、耐溶剤性に優れており、透明性を有し、該基板を用いたホログラム記録媒体は記録再生性能が優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明によれば、
1.二次元イメージとして情報を付与された情報光と、情報光と干渉可能な参照光を重ね合わせ、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、支持体となる第二の基板、反射層、ギャップ層、フィルタ層、保護層、記録層、光透過性の第一の基板より構成されるホログラム記録媒体であって、第一の基板は、H−NMR分析により求められる分岐化剤含有量が2.0〜6.0モル%であり、粘度平均分子量が1.6×10〜3.2×10である高分岐ポリカーボネート樹脂から形成されることを特徴とするホログラム記録媒体、
2.高分岐ポリカーボネート樹脂は、分岐化剤含有量が2.5〜5.0モル%であり、粘度平均分子量が1.8×10〜3.0×10である前項1記載のホログラム記録媒体、
3.分岐化剤が、フロログリシン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)およびイサチンビス(o−クレゾール)からなる群より選ばれる少なくとも1種の分岐化剤である前項1記載のホログラム記録媒体、
4.高分岐ポリカーボネート樹脂は、絡み合い点間分子量が2.6×10〜3.2×10g/molである前項1記載のホログラム記録媒体、
5.高分岐ポリカーボネート樹脂は、アセトン浸漬における結晶化速度が3×10−3%/sec以下である前項1記載のホログラム記録媒体、および
6.二次元イメージとして情報を付与された情報光と、情報光と干渉可能な参照光を重ね合わせ、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、支持体となる第二の基板、反射層、ギャップ層、フィルタ層、保護層、記録層、光透過性の第一の基板より構成されるホログラム記録媒体における第一の基板であって、該第一の基板はH−NMR分析により求められる分岐化剤含有量が2.0〜6.0モル%であり、粘度平均分子量が1.6×10〜3.2×10である高分岐ポリカーボネート樹脂から形成されることを特徴とするホログラム記録媒体用基板、
が提供される。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ホログラム記録媒体>
本発明のホログラム記録媒体は、図1に示したように、支持基板である第二の基板1と、反射層2、ギャップ層3、フィルタ層4、保護層5、記録層6、第一の基板7より構成され、必要に応じて第一の基板上に反射防止層等を有する光記録媒体である。更に、該光記録媒体は、前記情報光および参照光が、両光の光軸が同軸になるように照射される同軸干渉方式(コリニア方式)に用いられる。
【0016】
<第一の基板>
第一の基板7は、記録層6の表面に積層され、記録層6の表面を保護するとともに記録媒体の機械的強度を保持する。ホログラムの記録再生に使用する情報光および参照光を透過させるため、光学的な歪みの少ないことが好ましい。第一の基板7の厚みは、50〜1200μmが好ましく、90〜700μmであることが好ましい。基板の厚みが50μm未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。基板の厚みが1200μmを超えると、ディスク表面から記録、ピットが形成された層までの距離が遠くなり、記録再生の光の焦点距離が長すぎて、ホログラム記録に必要な光量が不足するため好ましくない。
【0017】
本発明のホログラム記録媒体において、第一の基板7は、高分岐ポリカーボネート樹脂よりなり、必要に応じて一価および/または多価アルコールの高級脂肪酸エステル並びにリン系熱安定剤を含有してもよい。また本発明のホログラム記録媒体において、後述するように第二の基板1も第一の基板7と同じ樹脂組成物を用いることができる。
【0018】
(高分岐ポリカーボネート樹脂)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂は、二価フェノール、分岐化剤、一価フェノール類、およびホスゲンの反応により得ることができ、H−NMR分析により求められる分岐化剤含有量が2.0〜6.0モル%であり、粘度平均分子量が1.6×10〜3.2×10である。
【0019】
(粘度平均分子量)
本発明に用いられる高分岐ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、1.6×10〜3.2×10であり、1.8×10〜3.0×10が好ましく、1.9×10〜2.8×10がより好ましい。粘度平均分子量が1.6×10未満の場合、溶剤に対する結晶化抑制効果が低下するため好ましくない。また、粘度平均分子量が3.2×10より大きい場合、成形時の溶融粘度が高くなり成形性が劣るため、好ましくない。
【0020】
本発明における粘度平均分子量とは、樹脂組成物0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度を測定し、下記式から算出したものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−40.83
ηsp:比粘度
η:極限粘度
c:定数(=0.7)
M:粘度平均分子量
【0021】
(ガラス転移温度)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、120〜180℃の範囲が好ましく、130〜170℃の範囲がより好ましい。ガラス転移温度が120℃未満であると、基板が熱変形を起こしやすくなり、ホログラム記録時の干渉縞の位置がずれてしまい、情報が再生できなくなるため好ましくない。また、ガラス転移温度が180℃を超えると射出成形等の成形工程において流動性が悪く、成形性が劣るので好ましくない。本発明におけるガラス転移温度とは、示差走査熱量分析装置(DSC)を使用し、JIS K7121に準拠した昇温速度20℃/minで測定し得られるものである。
【0022】
(分岐化剤含有量)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂のH−NMR分析により求められる分岐化剤含有量は2.0〜6.0モル%であり、2.5〜5.0モル%が好ましく、3.0〜4.5モル%がより好ましい。分岐剤含有量が2.0モル%未満の場合、分子鎖間の絡み合い点密度が直鎖と変わらず、結晶化速度の抑制にはほとんど効果がないため、好ましくない。分岐剤含有量が6.0モル%より多い場合、射出成形時に塩化メチレン不溶分(ゲル)が発生し、成形品外観を悪化させるため好ましくない。
【0023】
本発明におけるH−NMR分析により求められる分岐化剤含有量は、例えばポリカーボネート樹脂構成単位にビスフェノールA、分岐化剤に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを用いた場合、ビスフェノールA由来のケミカルシフト1.679ppm(6H、シングレット)およびサテライトピークである1.464ppm(3H、シングレット)、1.889ppm(3H、シングレット)の1プロトンあたりの積分強度比の総和に対する分岐化剤由来のケミカルシフト2.180ppm(3H、シングレット)の1プロトンあたりの積分強度比によって求められる。
【0024】
(絡み合い点間分子量)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂の絡み合い点密度の指標である絡み合い点間分子量は、2.6×10〜3.2×10が好ましい。2.6×10未満の場合、溶剤に対する結晶化抑制の効果がほとんどないため好ましくない。3.2×10より大きいとポリマー鎖が架橋、多岐に分岐した熱不溶物(ゲル)が多量に発生するため好ましくない。本発明における絡み合い点間分子量は、回転型レオメーターを用いた動的粘弾性測定におけるゴム状平坦領域のゴム状平坦弾性率(G)より求められる。ポリカーボネート樹脂の場合、実際にはゴムのような架橋点はないが、熱運動によって分子鎖間に一時的な絡み合い結合が生じると仮定し、ゴム弾性論から次式により絡み合い点間分子量を算出した。
=ρRT/G
:ゴム状平坦弾性率
ρ:密度
R:気体定数
T:温度
:絡み合い点間分子量
【0025】
(結晶化速度)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂のアセトン浸漬による結晶化速度は、3.0×10−3%/sec以下が好ましい。3.0×10−3%/secより大きい場合、溶剤に対する結晶化抑制の効果がほとんどないため好ましくない。本発明における結晶化速度は、下記手法により算出した。
【0026】
(i)長さ40mm、幅10mm、厚み100μmのポリカーボネートフィルムを密封容器内、室温でアセトン中に1週間浸漬後、フィルムを取り出し、溶媒を完全に蒸発させたものを100%結晶化フィルムとして、示差熱分析装置(DSC)により昇温速度20℃/minで220〜230℃における結晶融解熱量(積分値)を測定する。
(ii)アセトンへの浸漬時間を変えて同様の測定を行い、各々の浸漬時間における結晶融解熱量(積分値)から結晶化度を算出する。
(iii)結晶化理論におけるAvramiの式よりK、nを近似する。
X=1−exp(−Kt
X:結晶化度(%)
K、n:定数
t:時間(sec)
(iv)時間tに対して結晶化度をプロットし、t=0〜10secまでの線形近似における傾きを結晶化速度として算出する。
【0027】
(高分岐ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂は、二価フェノール、分岐化剤、一価フェノール類、およびホスゲンの界面重合反応により得ることができる。
【0028】
本発明で使用される二価フェノールの代表的な例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0029】
本発明で使用される分岐化剤として用いる3価フェノールの代表的な例は、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノ−ル、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリスフェノール、ビス(2,4−ジヒドロキシルフェニル)ケトン、フロログリシン、フロログルシド、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、イサチンビス(o−クレゾール)、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、トリメリト酸、ピロメリト酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの酸クロライド等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも、フロログリシン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、イサチンビスフェノールおよびイサチンビス(o−クレゾール)からなる群より選ばれる少なくとも1種の分岐化剤が好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0030】
本発明で使用される末端停止剤として用いる一価フェノールはどのような構造でもよく特に制限はない。例えば、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、4−ヒドロキシベンゾフェノン、フェノール等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも、p−tert−ブチルフェノールが好ましい。
【0031】
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂は、好適には下記第一の方法または第二の方法で製造される。
第一の製造方法は、二価フェノール類とホスゲンを溶媒の存在下反応させポリカーボネートオリゴマーを得る。これに一価フェノール類を反応させる。次いで得られたポリカーボネートオリゴマーに分岐化剤を反応させた後、ポリカーボネートオリゴマーを乳化し、無攪拌条件下で重合させる方法である。ホスゲン化から乳化前までの反応温度は好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃である。乳化後の反応温度は好ましくは20〜50℃、より好ましくは30〜40℃である。重合時間は1〜6時間が好ましく、2〜4時間がより好ましい。得られた反応混合物は洗浄、分離等の通常の手段で処理することにより、所望する本発明の高分岐ポリカーボネートが得られる。
【0032】
第二の製造方法は、まず二価フェノールと分岐化剤およびホスゲンを溶媒の存在下反応させてポリカーボネートオリゴマーを得る。これに一価フェノールを反応させる。得られたポリカーボネートオリゴマーを乳化した後、初めに反応させた二価フェノールの量の1/30〜1/200の量、好ましくは1/40〜1/100の量の二価フェノールを加え、攪拌条件下で重合させる方法である。
【0033】
ホスゲン化から乳化前までの反応温度は好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃である。乳化後の反応温度は好ましくは20〜50℃、より好ましくは30〜40℃である。連続的に重合反応を行う場合、各重合槽内の攪拌速度は100rpm以下、好ましくは50rpm以下で、重合槽内の高粘度乳化流体がほぼピストンフローで流体進行方向の垂直方向で滞留時間にあまり差が無いように混合する程度でよい。重合時間は1〜6時間が好ましく、2〜4時間がより好ましい。得られた反応混合物は洗浄、分離等の通常の手段で処理することにより、所望する本発明の高分岐ポリカーボネートが得られる。
【0034】
なお、反応触媒としてトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミンを用いることができるが、この触媒がクロロホーメート基と反応して熱的に不安定なウレタン結合を形成すること、触媒が残存し高分岐ポリカーボネート樹脂中の全窒素含有量が増大することから、第三級アミンの使用量は使用する二価フェノールに対し0.2モル%以下が好ましく、0.1モル%以下がより好ましく、0.05モル%以下がさらに好ましい。
【0035】
また、高分岐ポリカーボネート樹脂中の全塩素含有量を低下させるには、反応時溶媒として使用されるジクロロメタン(塩化メチレン)、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素溶媒を除去することが必要である。例えば、パウダーやペレットの乾燥処理を十分に行うことが挙げられる。
【0036】
(添加剤)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂には、本発明の特性を損なわない範囲で、さらに熱安定剤、酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、耐候剤(紫外線吸収剤)、核剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、抗菌剤、着色剤(顔料、染料等)、充填剤、強化剤、他樹脂やゴム等の重合体、難燃剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。
【0037】
(離型剤)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂は、離型剤として一価および/または多価アルコールの高級脂肪酸エステルを配合することが好ましい。
かかる一価および/または多価アルコールの高級脂肪酸エステルとして、炭素原子数1〜22の一価または多価アルコールと炭素原子数12〜22の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0038】
具体的には、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、および2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられる。
【0039】
なかでもグリセリンとステアリン酸とのモノまたはジエステル、グリセリンとベヘニル酸とのモノまたはジエステル、ペンタエリスリトールとステアリン酸との全エステル、およびペンタエリスリトールとベヘニル酸との全エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。特にステアリン酸モノグリセリド、またはペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
【0040】
かかる一価および/または多価アルコールの高級脂肪酸エステルの含有量は、ポリカーボネート樹脂に対して0.01〜1重量%が好ましく、0.015〜0.5重量%がより好ましく、0.02〜0.2重量%がさらに好ましい。含有量がこの範囲内であれば、離型性に優れ、また離型剤がマイグレートし金属表面に付着することもなく好ましい。また、かかる一価および/または多価アルコールの高級脂肪酸エステル中に含まれるナトリウム金属の含有量は1ppm以下が好ましい。1ppmを超えると製造された光透過層用基板は色相が悪化し、光透過層用基板の加水分解による白色欠点が増加することにより品質が低下する。
【0041】
(リン系熱安定剤)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂には、リン系熱安定剤を配合することが好ましい。リン系熱安定剤としては、例えば亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0042】
なかでも、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、及び4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)等が好ましく使用され、特にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。これらのリン系熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂に対して、好ましくは10〜10000ppm、より好ましくは20〜1000ppmである。これらのリン系熱安定剤を配合することにより、高分岐ポリカーボネート樹脂の熱安定性がさらに向上する。
【0043】
(酸化防止剤)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂は、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としては、フェノール系酸化防止剤を示すことができ、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい添加量の範囲は、ポリカーボネート樹脂に対して0.0001〜0.05重量%である。
【0044】
(ペレット製造工程)
本発明で使用される高分岐ポリカーボネート樹脂は、その使用目的がホログラム記録媒体の光透過性基板であることを考えると、従来公知の常法により製造した後、溶液状態において濾過処理を行い未反応成分等の不純物や異物を除去することが好ましい。さらに、射出成形(射出圧縮成形を含む)に供するためのペレット状ポリカーボネート樹脂を得る押出工程(ペレット化工程)においても、溶融状態の時に、焼結金属フィルターを通すなどして異物を除去することが望ましい。該フィルターとしては濾過精度10μm以下のものが好ましく使用される。いずれにしても射出成形(射出圧縮成形を含む)前の原料樹脂は異物、不純物、溶媒などの含有量を極力低くしておくことが必要である。
【0045】
更にかかる低異物のペレットを製造するためには、上記以外にも押出機やペレタイザー等の製造装置を清浄な空気の雰囲気下に設置すること、冷却バス用の冷却水を異物量の少ないものにすること、並びに原料の供給ホッパー、供給流路、および得られたペレットの貯蔵タンク等をより清浄な空気等で満たすことが好ましい。例えば、特開平11−21357号公報に提案されているのと同様な方法をとることが適当である。また押出機内に窒素ガスに代表される不活性ガスを流し込み、酸素を遮蔽する方法も、色相の改善手段として好適に利用できる。
【0046】
更にかかるペレットの製造においては、光学成形材料用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を更に行うことができる。
【0047】
また、ペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱(楕円柱を含む)である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。楕円柱において長径に対する短径の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上である。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
【0048】
(光透過性基板の製造)
本発明の基板は、高分岐ポリカーボネート樹脂を射出成形、射出圧縮成形または押出成形により成形することにより製造することができる。特に射出成形、射出圧縮成形により形成されことが好ましい。
【0049】
高分岐ポリカーボネート樹脂から基板を製造する場合には射出成形機(射出圧縮成形機を含む)を用いる。この射出成形機としては一般的に使用されているものでよいが、炭化物の発生を抑制し基板の信頼性を高める観点からシリンダーやスクリューとして樹脂との付着性が低く、かつ耐蝕性、耐摩耗性を示す材料を使用してなるものを用いるのが好ましい。また、基板の形状は、種々の加工法を使用することにより、シート状、フィルム状、ディスク状等の2次元的もしくは3次元的形状に適応することが可能である。
【0050】
射出成形の条件としては、シリンダー温度は好ましくは300〜450℃、より好ましくは320〜390℃であり、金型温度は好ましくは50〜180℃、より好ましくは100〜140℃であり、これらにより光学的に優れた基板を得ることができる。
成形工程での環境は、本発明の目的から考えて、可能な限りクリーンであることが好ましい。また、成形に供する材料を十分乾燥して水分を除去することや、溶融樹脂の分解を招くような滞留を起こさないように配慮することも重要となる。
【0051】
<第二の基板>
第二の基板1は、第一の基板7と同じ高分岐ポリカーボネート樹脂または既存の光学用ポリカーボネート樹脂を使用することができる。また第一の基板7と同じ方法で成形することが出来る。第二の基板1は、第一の基板7と対向位置に配置され、ホログラムを記録する際の情報光および参照光の照射位置に関する情報が形成される。また、記録媒体の機械的強度を保持する支持体である。
【0052】
第二の基板1における光照射位置情報に関する情報としては、例えば、トラッキング、フォーカス、アドレスに関する情報があげられる。例えば、トラッキングに関する情報としては、ウォブルピット、ウォブルグルーブ、トラッキングピット等があげられる。フォーカスに関する情報としては、第二の基板1表面に形成した反射膜、フォーカス用ピット等があげられる。アドレスに関する情報としては、ウォブルピット上の凹凸、ウォブル変調信号、エンコードしたピット列等があげられる。
【0053】
第二の基板1の厚みは、50〜2000μmが好ましく、100〜1500μmであることが好ましい。基板の厚みが50μm未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。基板の厚みが2000μmを超えると、ディスク表面から記録、ピットが形成された層までの距離が遠くなり、記録再生の光の焦点距離が長すぎて、記録に必要な光量が低下するため好ましくない。
【0054】
<反射層>
前記第二の基板1におけるサーボピットパターン8の表面に反射層2として反射膜が形成される。前記反射膜の材料としては、情報光や参照光に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金等が好ましい。前記反射膜の形成方法としては、特に制限はなく、真空蒸着法、スパッタリング法等のPVD法、あるいはCVD法等、種々の薄膜形成法が適用できる。しかし、ホログラム記録媒体としては、高温高湿の耐環境試験で生じる剥離を生じさせないために、特に基板との密着性が大きい条件で作製することが好ましい。このためにはスパッタリング法が好適に用いられる。
反射層2の膜厚範囲は10〜500nmが好ましいが、反射率の低下による信号特性の低下を抑えるためには、より好ましくは30〜200nm、特に好ましくは40〜100nmである。
【0055】
<ギャップ層>
ギャップ層3は、前記第二の基板1の表面を平坦化する目的で形成される。ギャップ層3に用いられる材料としては、ギャップ層3上にフィルタ層4を積層しても、積層時の熱によってギャップ層3が変形することなく、またフィルタ層4上に記録材料を積層・硬化させたときの熱や収縮応力でギャップ層3が変形しフィルタ層4にひび割れ等の欠陥が発生することない耐熱性に優れた材料であることが好ましい。
【0056】
<フィルタ層>
フィルタ層4は、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光及び参照光によるホログラム記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する機能がある。ホログラム記録媒体に前記フィルタ層4を積層することにより、高解像度、回折効率の優れたホログラム記録が得られる。フィルタ層4の機能は、第一の波長の光を透過し、該第一の波長の光と異なる第二の波長の光を反射することが好ましく、前記第一の波長の光が350〜600nmであり、かつ第二の波長の光が600〜900nmであることが好ましい。
前記フィルタ層4としては、特に制限はなく、例えば、誘電体蒸着層、単層又は2層以上のコレステリック層、更に必要に応じてその他の層の積層体により形成される。また色材含有層を有していてもよい。
【0057】
<保護層>
保護層5は、フィルタ層4と記録層6との間に形成される。保護層5は、ホログラム記録媒体の記録性能低下防止を目的に使用される。情報光および参照光の集光位置が記録層内に存在するが、保護層5がない場合、過剰露光により過剰な光反応が生じ、記録性能が低下する。つまり、保護層5を使用することにより、集光位置付近での過剰な光反応を抑制することができ、記録性能を維持することが可能である。
【0058】
保護層5に用いられる材料としては、特に制限はないが、ギャップ層3と同様に透明なプラスチックフィルムが好適に用いられる。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂からなるプラスチックフィルムが好ましい。耐熱性、光学的な等方性が求められることから、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂がより好ましい。
【0059】
保護層5の厚みとしては、特に制限はないが、1〜200μmが好ましく、3〜100μmがより好ましい。1μm未満ではホログラム記録時におけるホログラム記録層中のモノマー消費が大きすぎて感度低下や多重度低下を招くことがあり、好ましくない。また、200μmを超えると焦点位置が記録層より遠くなるため、記録性能の低下を招くので好ましくない。
【0060】
<記録層>
本発明のホログラム記録媒体は、第一の基板7および第二の基板1と、第一の基板7と第二の基板1の間に形成された記録層6より構成される。第一の基板7および第二の基板1は前述の通りである。記録層6は、第一の基板7と第二の基板1の間に形成され、三次元架橋ポリマーマトリックス、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含む。
【0061】
マトリクスを形成する三次元架橋ポリマーとなる化合物は、エポキシ化合物が用いられる。具体的には、エポキシ化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエポキシオクタン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、およびエポキシプロポキシプロピル末端のポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0062】
ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、ビニル化合物などが挙げられる。より具体的には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ビシクロペンテニルアクリレート、アクリル酸フェニル、イソボルニルアクリレート、アクリル酸アダマンチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、メタクリル酸アダマンチル、イソボルニルメタクリレート、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ビニルピリジン、スチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、トリブロモフェニルアクリレート、トリクロロフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、トリクロロフェニルメタクリレート、ビニルベンゾエート、3,5−ジクロロビニルベンゾエート、ビニルナフタレン、ビニルナフトエート、ナフチルメタクリレート、ナフチルアクリレート、N−フェニルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、ビシクロペンテニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールトリメタクリレート、N−ビニルカルバゾールおよびN−ビニルピロリドンが挙げられる。
【0063】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、有機過酸化物、およびチオキサントン誘導体等が挙げられる。具体的には、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンジルメトキシエチルエーテル、2,2’−ジエチルアセトフェノン、2,2’−ジプロピルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、3,3’4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)1,3,5−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)1,3,5−トリアジン、2−[(p−メトキシフェニル)エチレン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)1,3,5−トリアジン、チバスペシャルティケミカルズ社製のイルガキュア149、184、369、651、784、819、907、1700、1800、1850など各番号のもの、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、デカノイルーパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、およびシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
必要に応じてシアニン、メロシアニン、キサンテン、クマリン、エオシンなどの増感色素、シランカップリング剤、および可塑剤などを加えてもよい。
【0064】
(記録層の製造)
本発明のホログラム記録媒体の製造方法は、マトリクスとなる三次元架橋ポリマーに、ラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤を加えて、記録層材料溶液を作製する工程と、この記録層材料溶液を基板上に塗布し、硬化させて記録層6を形成する工程を含む。
【0065】
基板に上記の三次元架橋ポリマー、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤を含む記録層溶液を塗布するにはキャスティング法やスピンコート法を採用することができる。樹脂製のスペーサーを介して2枚のガラス基板やプラスチック基板を配置し、その間隙に記録層材料溶液を注入することもできる。マトリクスポリマーの三次元架橋は、脂肪族第一アミンでは室温でも進行するが、反応性に応じて30℃〜150℃程度に加熱してもよい。記録層6の膜厚は、20μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。20μm未満の場合には、十分な記録容量を得ることが困難となり、2mmを越えると感度および回折効率が低下する。より好ましくは、記録層6の膜厚は50μm〜1mmの範囲内である。
【0066】
<ホログラムの記録再生方式>
本発明の実施形態にかかるホログラム記録媒体には、情報光と参照光とを記録層内部で干渉させることによってホログラム記録再生が行なわれる。記録されるホログラムは、透過型および反射型ホログラムの両方を用いることができる。情報光と参照光との干渉方法は、二光束干渉法あるいは同軸干渉法(コリニア、コアキシャル方式)とすることができるが、特にコリニア方式が好ましい。
【0067】
以下、具体例を示して本発明をさらに詳細に説明する。なお、本実施例では一連の作業は、記録層が感光しないように、波長600nmより短い光が遮光されている室内で行った。
【発明の効果】
【0068】
本発明のホログラム記録媒体用基板は、透明性、耐溶剤性に優れており、該基板を用いた本発明のホログラム記録媒体は、記録層と接触しても透明性が損なわれることなく、且つ、密着性に優れており、良好なホログラム記録再生特性を示す。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。実施例および比較例において「部」は重量部である。なお評価は下記の方法に従った。
【0070】
(1)ガラス転移温度
ティー・エイ・インスツルメント社製の熱分析システムDSC−2910を使用して、JIS K7121に従い窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0071】
(2)粘度平均分子量
塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂組成物ペレット0.7gを溶解し、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記式により粘度平均分子量を算出した。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−40.83
ηsp:比粘度
η:極限粘度
c:定数(=0.7)
M:粘度平均分子量
【0072】
(3)絡み合い点間分子量
ティー・エイ・インスツルメント社の動的粘弾性装置RDA−IIIを使用して、25mmφのパラレルプレートを治具として用い、周波数0.05〜500rad/sec、温度180、200、220℃における回転ずり歪み(貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”)を測定した。得られた結果から基準温度200℃における回転ずり歪みのマスターカーブを作成し、ゴム状平坦領域の損失弾性率G”の極小値における貯蔵弾性率の値をゴム状平坦弾性率とし、以下式により絡み合い点間分子量を測定した。
=ρRT/G
:ゴム状平坦弾性率[MPa]
ρ:密度[g/cm
R:気体定数(=8.20574×10−2[cm・atm・K−1・mol−1])
※ 1[atm]=1.0132[MPa]
T:温度[K]
:絡み合い点間分子量[g/mol]
【0073】
(4)分岐化剤含有量
分岐化剤含有量をJOEL製NMR装置にてH−NMRを測定し、ピーク積分強度比より算出した。
【0074】
(5)結晶化速度
長さ40mm、幅10mm、厚み100μmのポリカーボネートフィルムを密封容器内、室温でアセトン中に1週間浸漬後、フィルムを取り出し、溶媒を完全に蒸発させたものを100%結晶化フィルムとして、ティー・エイ・インスツルメント社製の熱分析システムDSC−2910により昇温速度20℃/minで220〜230℃における結晶融解熱量(積分値)を測定し。100%結晶の結晶融解熱量とした。その後、浸漬時間を変えて同様の測定を行い、各々の浸漬時間における結晶融解熱量(積分値)から結晶化度を算出した。結晶化理論におけるAvramiの式よりK、nを近似するため、時間tに対して結晶化度をプロットし、t=0〜10secまでの線形近似における傾きを結晶化速度として算出した。
X=1−exp(−Kt
X:結晶化度[%]
K、n:定数
t:時間[sec]
【0075】
(6)耐溶剤試験(光線透過率)
樹脂組成物ペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機((株)名機製作所製M35B−D−DM)を使用して、直径120mmφ、厚さ0.6mmの光ディスク基板(パターン無し鏡面スタンパ使用)を成形した。該基板より半径40mm位置が中心となるように3cm角板を切削した。3cm角のガラスプレートにアセトン、トルエン、THF各100μlを滴下し、上述の3cm角板を積層し、100℃で12時間熱処理後の各角板をガラスプレートから剥離し、全光線透過率を測定した。
【0076】
(7)ホログラム記録層の調製
3次元架橋ポリマーとして1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを用いた。また、ラジカル重合性化合物としてポリエチレングリコールジアクリレートを用いた。該モノマーは室温で液体である。ポリエチレングリコールジアクリレート100重量部に、光重合開始剤としてイルガキュア−784(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)3重量部を加え混合した。また、粘度調節溶剤としてTHFを0.3重量部加えて混合した。ホログラム記録層溶液の全体量に対して、マトリクス材料の割合が67重量%、光重合性モノマーの割合が33重量%となるように室温にて混合し、ホログラム記録層溶液を調製した。
【0077】
(8)ホログラム記録媒体の作成
ペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SD−40Eを使用して、直径120mmφ、厚さ1.1mmの支持基板を成形した。支持基板上にAg合金をDCマグネトロンスパッタリング法により反射膜を作成した。反射膜上に紫外線硬化樹脂を塗布し、ギャップ層としてパンライト(登録商標)フィルムD−92を貼り合せ、UV照射した。ギャップ層上にSiO、TiOのターゲットを使用して真空蒸着により積層し、フィルタ層を形成した。フィルタ層上にパンライト(登録商標)フィルムD−92を保護層としてギャップ層と同様の手法で積層した。フィルタ層上に保護膜として紫外線硬化樹脂ソニーケミカル製SK−1200を塗布し、UV硬化させて有機保護膜とした。保護層上に、(7)で調製したホログラム記録層溶液をスピンコート法により塗布し、ペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機((株)名機製作所製M35B−D−DM)を使用して成形した直径120mmφ、厚さ0.6mmの光透過性基板を貼り合せた。得られたホログラム記録媒体を遮光して、80℃で5時間保持することにより、厚さ0.6mmの記録層を有するホログラム記録媒体(図1参照)を作成した。光透過性基板の白濁の有無を目視にて確認した。
【0078】
(9)ホログラム記録媒体の記録再生評価
上記ホログラム記録媒体をパルステック工業株式会社製、コリニアホログラム記録試験機SHOT−2000を用いて半導体レーザー(532nm)により情報光及び記録用参照光を照射し、記録ホログラムの焦点位置における記録スポットの大きさ直径200μmで一連の多重ホログラム13×13(49多重)をホログラム記録媒体の記録層に情報を干渉像として記録した。この記録時のディスク回転数は、10rpmとし、1情報記録のレーザー光の照射時間は、100μs、光強度は、100mWである。また、同装置を用いて再生を行った。再生条件は、ホログラム記録媒体の回転数を、10rpmとし、再生光として、参照光と同様の波長532nmのレーザー光を用い、照射時間100μsec、光強度100mWで再生した際のビットエラーレート(以下、BERと略)およびSNRを測定した。実用目安としてSNRは4以上、BERは1×10−3以下である。
【0079】
[実施例1]
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液3570部およびイオン交換水20779部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3290部、およびハイドロサルファイト6.58部を溶解した後、塩化メチレン9812部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン2000部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液595部およびp−tert−ブチルフェノール194部を加え、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン142部を加えて撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン5部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。
【0080】
次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルタに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。その後、該パウダーにトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.0025重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.05重量%となるように添加し、均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融押出を行い、高分岐ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットの前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0081】
[実施例2]
p−tert−ブチルフェノール324部、および1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン238部とした以外は全て実施例1と同様に操作を行い、高分岐ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットの前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0082】
[実施例3]
p−tert−ブチルフェノール162部、および1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン119部とした以外は全て実施例1と同様に操作を行い、高分岐ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットの前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0083】
[比較例1]
p−tert−ブチルフェノール97部、および1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン71部とした以外は全て実施例1と同様に操作を行い、高分岐ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットの前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0084】
[比較例2]
p−tert−ブチルフェノール281部、および1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン309部とした以外は全て実施例1と同様に操作を行い、高分岐ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットの前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0085】
[比較例3]
p−tert−ブチルフェノール205部、および1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン142部とした以外は全て実施例1と同様に操作を行い、高分岐ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットの前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0086】
[比較例4]
p−tert−ブチルフェノール32部、および1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン142部とした以外は全て実施例1と同様に操作を行い、高分岐ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットの前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0087】
[比較例5]
p−tert−ブチルフェノール129部、および1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン71部とした以外は全て実施例1と同様に操作を行い、高分岐ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットの前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0088】
[比較例6]
ポリカーボネート樹脂として帝人化成(株)製パンライト(登録商標)L−1225を用いて、前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0089】
[比較例7]
ポリカーボネート樹脂として帝人化成(株)製パンライト(登録商標)AD−5503を用いて、前記(1)〜(9)の評価を実施し、結果を表1に記載した。
【0090】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】コリニア方式で使用されるホログラム記録媒体と、その情報光および参照光を示す概略図である。
【符号の説明】
【0092】
1 第二の基板
2 反射層
3 ギャップ層
4 フィルタ層
5 保護層
6 記録層
7 第一の基板
8 サーボピットパターン
9 位置情報サーボ用光(赤色レーザー)
10 情報光/参照光(波長532nmの緑色レーザーまたは波長405nmの青色レーザー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元イメージとして情報を付与された情報光と、情報光と干渉可能な参照光を重ね合わせ、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、支持体となる第二の基板、反射層、ギャップ層、フィルタ層、保護層、記録層、光透過性の第一の基板より構成されるホログラム記録媒体であって、第一の基板は、H−NMR分析により求められる分岐化剤含有量が2.0〜6.0モル%であり、粘度平均分子量が1.6×10〜3.2×10である高分岐ポリカーボネート樹脂から形成されることを特徴とするホログラム記録媒体。
【請求項2】
高分岐ポリカーボネート樹脂は、分岐化剤含有量が2.5〜5.0モル%であり、粘度平均分子量が1.8×10〜3.0×10である請求項1記載のホログラム記録媒体。
【請求項3】
分岐化剤が、フロログリシン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)およびイサチンビス(o−クレゾール)からなる群より選ばれる少なくとも1種の分岐化剤である請求項1記載のホログラム記録媒体。
【請求項4】
高分岐ポリカーボネート樹脂は、絡み合い点間分子量が2.6×10〜3.2×10g/molである請求項1記載のホログラム記録媒体。
【請求項5】
高分岐ポリカーボネート樹脂は、アセトン浸漬における結晶化速度が3×10−3%/sec以下である請求項1記載のホログラム記録媒体。
【請求項6】
二次元イメージとして情報を付与された情報光と、情報光と干渉可能な参照光を重ね合わせ、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、支持体となる第二の基板、反射層、ギャップ層、フィルタ層、保護層、記録層、光透過性の第一の基板より構成されるホログラム記録媒体における第一の基板であって、該第一の基板はH−NMR分析により求められる分岐化剤含有量が2.0〜6.0モル%であり、粘度平均分子量が1.6×10〜3.2×10である高分岐ポリカーボネート樹脂から形成されることを特徴とするホログラム記録媒体用基板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−91860(P2010−91860A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262852(P2008−262852)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】