説明

ホワイトソース含有食品の風味向上方法

【課題】ホワイトソース含有食品の風味向上方法を提供する。特に、ホワイトソース含有食品が冷凍食品の場合、冷凍変性による澱粉の老化や食品中の離水が防止され、しかもホワイトソースの風味を損なわないホワイトソース含有冷凍食品の風味向上方法を提供する。
【解決手段】ホワイトソース含有食品100重量部中、スクラロースを0.0001〜0.01重量部含む。更には、ホワイトソース含有食品100重量部中、ゼラチン及び又は増粘多糖類を0.01〜5重量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトソース含有食品の風味向上方法に関する。特に、ホワイトソース含有食品が冷凍食品の場合、冷凍変性による澱粉の老化や離水が防止され、しかもホワイトソースの風味を損なわないホワイトソース含有冷凍食品の風味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の加工技術の発達により、スープ、グラタン、カレーといった、ホワイトソースをベースとした食品も、半調理食品や調理済食品として、多くの商品が流通されている。かかる食品を半調理食品や調理済食品の状態で流通した場合に、ホワイトソース特有の風味を維持することが食品製造業者の課題となっている。更に冷蔵・冷凍流通ホワイトソースの場合は、再加熱後に、調理加工時の良好な風味と食感を再現する手段が求められていた。
【0003】
また、これらホワイトソースを含有する食品は澱粉を主材としており、澱粉は、凍結解凍時に老化ならびに離水が起こりやすいため、特に冷凍すると、ホワイトソースの本来の食感、風味が損なわれる傾向があった。この問題を解決するため、ゼラチンや増粘多糖類を添加することが行われている。しかし、澱粉の老化を防止するために充分な量のゼラチンを添加した場合、ゼラチン特有の臭いが強くなりすぎて、ホワイトソースを含有する冷凍食品を加熱調理した際、ホワイトソース特有の風味が劣る場合があり、その解決策が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、半調理食品や調理済食品に加工した場合も、ホワイトソース特有の風味を維持することができるホワイトソース含有食品の風味向上方法を提供することを目的とする。また、冷凍解凍時における澱粉の老化や離水を防止しつつ、しかもホワイトソース等の独特の風味を損なわないホワイトソース含有冷凍食品の風味向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、ホワイトソース含有食品100重量部中、スクラロースを0.0001〜0.01重量部含むことにより、半調理食品や調理済食品に加工した場合も、ホワイトソース特有の風味を維持することができるホワイトソース含有食品となることが判った。更に、冷凍解凍後も、ホワイトソース特有の風味を保持でき、更に、ホワイトソース含有食品100重量部中、ゼラチン及び又は増粘多糖類を0.01〜5重量部含むことにより、ホワイトソース含有食品の冷凍解凍時における澱粉の老化を防止しつつ、しかもホワイトソース等の独特の風味を損なわないホワイトソース含有冷凍食品となることが判った。
【0006】
すなわち本発明は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、以下の態様を有する;
項1.ホワイトソース含有食品100重量部中、スクラロースを0.0001〜0.01重量部含むことを特徴とするホワイトソース含有食品の風味向上方法。
項2.ホワイトソース含有冷凍食品100重量部中、スクラロースを0.0001〜0.01重量部含むことを特徴とするホワイトソース含有冷凍食品の冷凍解凍後の風味向上方法。
項3.更に、ゼラチン及び又は増粘多糖類を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の風味向上方法。
項4.半調理あるいは調理済みの形に加工されることを特徴とする請求項1乃至3記載の風味向上方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ホワイトソース含有食品100重量部中、スクラロースを0.0001〜0.01重量部、好ましくは0.0005〜0.005重量部含むことを特徴とする。スクラロースは、砂糖の約600倍の甘味度を有する高甘味度甘味料として使用されている物質である。高甘味度甘味料として、他にアスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム等が知られているが、アスパルテームは耐熱性に問題があり、ステビア、アセスルファムカリウムは、ホワイトソースの独特の風味を保持する効果が充分でない等の理由から、十分な効果は望めない。
【0008】
スクラロースの含有量について、前記含有量よりも少なくなると、前記ホワイトソースの風味向上効果が充分でなく、これよりも多くなると、スクラロース由来の甘味が最終製品の味へ強く影響し好ましくない。なお、甘味の付与を兼ねてスクラロースを使用する場合は、この限りでない。
【0009】
本発明に係るホワイトソース含有食品は、ホワイトソースを基本味として含有した食品であればよく、特に、ホワイトソース含有食品中の澱粉が膨潤、増粘して粘りとこくを有しているような食品であれば特に制限がない。かかる食品の例として、グラタン、シチュー、クリームコロッケ、ドリア、カレー、スープ等が挙げられ、半調理あるいは調理済みの形で冷凍又は冷蔵される食品である。ホワイトソース以外にもブラウンソース、ミートソース等を基本味とする冷凍又は冷蔵される食品にも適用できる。中でも、特に冷凍食品は、冷凍解凍後の風味劣化が問題となっていたが、本発明により、冷凍解凍後の風味も良好となったものである。
【0010】
更に、本発明のホワイトソース含有食品には、ゼラチン及び又は増粘多糖類を含有することが好ましい。ゼラチン及び又は増粘多糖類として、具体的には、ゼラチン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、グアガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カードラン、タラガム、ペクチン、ファーセレラン、ジェランガム、ネイティブジェランガム等を挙げることができることができる。
【0011】
ゼラチン及び又は増粘多糖類のホワイトソース含有冷凍食品への含有量は、対象となる食品の処方や使用されるゼラチン、増粘多糖類の種類によって異なるので一概に規定はできない。本発明ではゼラチン及び又は増粘多糖類を含むことが好ましい。ゼラチンの添加量のおよその目安を例示すれば、ゼラチンのゼリー強度が300ブルームのもので食品100重量部に対して、0.2〜2重量部、50ブルームのもので同0.5〜5重量部が適している。適量のゼラチン及び又は増粘多糖類を添加することにより、冷凍解凍時の澱粉の老化や離水を有意に防止することができる。ゼラチン及び又は増粘多糖類の添加量の上限は、最終製品の粘度が高くなり過ぎる等、悪影響を及ぼさない限りにおいて制限は無い。
【0012】
しかし、ゼラチンの添加量を増やすと、ゼラチン特有の臭気がホワイトソース含有食品の風味を損ねるという問題があるが、ゼラチン1重量部に対して、スクラロースを0.0002〜0.05重量部配合することにより、ゼラチン特有の臭気を有意にマスキングすることができる。
【0013】
本発明に係るホワイトソース含有食品中のスクラロース、ゼラチン及び又は増粘多糖類を添加する時期、方法等は特に限定されない。また、本発明に係るホワイトソース含有食品は、常法により製造することができる。ゼラチン及び又は増粘多糖類は、例えば40〜80℃に加温した湯に溶解して添加する方法がとれるが、それぞれの効果を妨げない範囲において、任意の添加方法を採ることができる。また、スクラロースについては最終製品に含まれていれば特に添加方法に制限はないが、作業性の面から水溶液の状態で添加する方法が好ましい。
【0014】
本発明のホワイトソース含有食品には、上記効果に悪影響を与えない限りにおいて、糖類、酸化防止剤、脂肪酸エステル類等の乳化剤、調味料、香料、色素、各種澱粉、澱粉加水分解物、還元澱粉分解物、各種蛋白質、蛋白質加水分解物、レシチン、日持ち向上剤、その他の添加剤を添加しても構わない。
【0015】
例えば、糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)等をあげることができる。
【0016】
本発明により、半調理食品や調理済食品に加工した場合も、ホワイトソース特有の風味を維持することができるホワイトソース含有食品の風味向上方法を提供できるようになった。また、冷凍食品は冷凍解凍後の風味劣化が問題となっていたが、冷凍解凍時における澱粉の老化や離水を防止しつつ、しかもホワイトソース等の独特の風味を損なわないホワイトソース含有冷凍食品の風味向上方法を提供することができるようになった。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を示す。
【0018】
実施例1:冷凍ホワイトソースの調製
バター250部を溶解後、75〜80℃に加熱しながら小麦粉160部を加え、均一に混合する。更に牛乳2600部、塩3部を添加し、全量が約2700部になるまで水分を蒸発させた。このもの100部に対して予め70℃の湯5部に溶解した表1のゼラチン、増粘多糖類、スクラロースを添加し、ホワイトソースを調製した。各々のホワイトソースをアルミパウチ袋に入れヒートシールをした後、凍結し、冷凍ホワイトソースとした。
【0019】
この冷凍ホワイトソースを−40℃にて1週間冷凍した後、解凍し、5℃にて1日保存した。解凍後のホワイトソースについて、目視による物性(離水)のチェックを行なった後、70℃達温まで加温して、官能評価に供した。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例と比較例とを比較すると、両者とも離水はほとんど認められず良好であったが、加温後、食した評価では、比較例はゼラチン由来の特有の異味が感じられたのに対し、実施例はホワイトソースの好ましい風味が増強され、ゼラチンの異味は感じられずにマスキングされており、食感も滑らかで良好であった。それに対し、ブランクは明らかに離水が起こっており、更に加温時の食感も滑らかさに欠けていた。
【0022】
すなわち、スクラロース添加品である実施例は、ホワイトソースの嗜好性を向上させる効果があり、澱粉の老化防止並び離水防止目的で配合されるゼラチン特有の臭いを効果的にマスキングでき、なおかつ離水防止ならびに老化防止効果に全く悪影響を及ぼさないことが見出された。
【0023】
実施例2:ライスコロッケの調製
米100部、トレハロース((株)林原製)2部、水140部を混合し、炊飯し、ライス部分とする。実施例1の牛骨ゼラチンとローカストビーンガムの添加量をそれぞれ0.3部と1部に代えた以外は実施例1と同様の方法で、ホワイトソースを調製した。このホワイトソース200部と上記ライス部分100部とを混合し、5℃まで冷却後成形、打ち粉付け、バッターリング、衣付けを行った後、170〜175℃で1分30秒油ちょうした後、室温まで冷却後、−40℃にて急速冷凍して、冷凍ライスコロッケを調製した。このライスコロッケを−40℃にて1週間冷凍した後、電子レンジにて加熱調理し、官能評価に供した。
【0024】
実施例2と比較例2とを比較すると、実施例2は滑らかな食感を有し、澱粉の老化が防止され、ゼラチン由来の異味はマスキングされており、ホワイトソースの好ましい風味が増強されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホワイトソース含有食品100重量部中、スクラロースを0.0001〜0.01重量部含むことを特徴とするホワイトソース含有食品の風味向上方法。
【請求項2】
ホワイトソース含有冷凍食品100重量部中、スクラロースを0.0001〜0.01重量部含むことを特徴とするホワイトソース含有冷凍食品の冷凍解凍後の風味向上方法。
【請求項3】
更に、ゼラチン及び又は増粘多糖類を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の風味向上方法。
【請求項4】
半調理あるいは調理済みの形に加工されることを特徴とする請求項1乃至3記載の風味向上方法。

【公開番号】特開2007−202564(P2007−202564A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62176(P2007−62176)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【分割の表示】特願2002−20788(P2002−20788)の分割
【原出願日】平成14年1月29日(2002.1.29)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】