ボ−ルねじのコマ固定構体
【目的】 ボ−ルナットの長孔に嵌挿されたコマの抜け落ちを防止する。
【構成】 ボ−ルナット5の外周面から内周面に向かって穿設された長孔4は、その平面形状がコマ8と同一の長円形をなす。長孔4の側壁面には、、その長手方向に沿って所定の幅寸法wで係止溝13が形成されている。また、コマ8の長手方向周縁部8Aには、変形可能な突起16が設けられている。長孔4に嵌挿されたコマ8は、突起16を係止溝13にカシメ固定される。その後、長孔4内に接着剤9が充填される。
【構成】 ボ−ルナット5の外周面から内周面に向かって穿設された長孔4は、その平面形状がコマ8と同一の長円形をなす。長孔4の側壁面には、、その長手方向に沿って所定の幅寸法wで係止溝13が形成されている。また、コマ8の長手方向周縁部8Aには、変形可能な突起16が設けられている。長孔4に嵌挿されたコマ8は、突起16を係止溝13にカシメ固定される。その後、長孔4内に接着剤9が充填される。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はボールねじに関するものであり、詳細には、ボールナットの長孔部にボールの循環路を構成するために嵌装されたコマの抜け止め構体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、図6乃至図11に基づいて、ボールねじ(10)の従来構造を説明する。ボールねじ(10)は、外周面に螺旋溝(1)を形成してなるねじ軸(3)と、内周面に螺旋溝(2)を形成すると共に、この螺旋溝(2)の一部を外面から内面に向かって延びる長円形の長孔(4)によって切欠き構造としたボールナット(5)と、ボールナット(5)の長孔(4)に嵌まり込み、長孔(4)によって切欠かれた螺旋溝(2)を接続することによってボールナット(5)の内周面上にボール(6)の循環路(7)を形成してなるコマ(8)と、上記循環路(7)と螺旋溝(1)との間に転動循環可能に嵌装された多数のボール(6)と、上記コマ(8)を長孔(4)内に嵌装した後、その抜け止め材としてボールナット(5)の長孔(4)に塗着され固化した接着剤層(9)とによって構成されている。
【0003】
長孔(4)には、図6および図8乃至図9に示すように、コマ(8)をボールナット(5)の半径方向に位置決めするため、深さ方向の中間に段部(11)が設けられており、この段部(11)から内側は、コマ(8)の長径方向寸法L1に合わせて比較的小径になっている。これに対して段部(11)から外側は、コマ(8)の頭部(12)の長径方向寸法L2に合わせて比較的大径になっている。従来のボールねじにおいては、コマ(8)を長孔(4)内に嵌挿し、頭部(12)の下面を段部(11)に当接させることによってコマ(8)をボールナット(5)に位置決めした後、コマ(8)の上方から長孔(4)内に接着剤(9)を充填し、この接着剤(9)の固化によってコマ(8)を固定している。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
従来のボールねじにおいては、コマ(8)の固定強度を長穴(4)の側壁面と接着剤(9)との間に働く接着力のみに依存しているため、実用上充分な固定強度が得られないという問題があった。
【0005】
そこで本考案の目的は、コマの固定強度を向上させ、コマの抜け落ちを防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
螺旋溝を外周面に形成してなるねじ軸と、前記螺旋溝に対向する螺旋溝を内周面に形成し、この螺旋溝の一部を外面から内面に向かって延びる長孔によって切欠き構造としたボールナットと、上記ボールナットの長孔内に嵌まり込み、切欠かれた上記螺旋溝を接続してボールナットの内周面にボールの循環路を形成するコマと、上記ボールナットの内面に形成されたボールの循環路と上記ねじ軸の螺旋溝との間に転動循環可能に嵌装された多数のボールからなるボールねじ装置において、上記長孔の側壁面の上記コマの上面に合せた位置に係止溝を形成すると共に、上記コマの上面周縁部に変形可能な突起を形成し、上記突起を変形させて上記係止溝に係合させるようにしたことを特徴とするボールねじのコマ固定構体を提供するものである。
【0007】
また、上記長孔の側壁面の上記コマの上面に合せた位置に係止溝を形成すると共に、その周縁部に変形可能な突起が形成された固定部材を上記コマの上面に装着し、上記突起を変形させて上記係止溝に係合させようにしたことを特徴とするボールねじのコマ固定構体を提供するものである。
【0008】
【作用】
コマをボールナットの長孔内に嵌め込んだ後、係止溝内に突起をカシメ固定し、これによってコマに所定の係止力を付加する。
【0009】
【実施例】
以下、図1乃至図5に基づいて本考案の実施例を説明する。尚、以下の記述において、従来技術を示す図6乃至図11と同一の構成部材は原則として同一の参照番号で表示し、重複する事項に関しては説明を省略する。
【0010】
図1、図2、図3に示すように、下面に溝(7)を形成してなるコマ(8)は、全体として長円形の平面形状をなし、その横断面は方形状をなす。ボールナット(5)の外周面から内周面に向かって穿設された長孔(4)は、図1に示すように、その平面形状はコマ(8)と同一の長円形となっている。長孔(4)の側壁面には、その長手方向に沿って所定の幅寸法Wで係止溝(13)が形成されている。また、コマ(8)の上面の長手方向周縁部(8A)には、変形可能な突起(16)が設けられている。尚、突起(16)には焼入れを施さないようにするのが望ましい。
【0011】
ボールねじ(10)の組立てに際しては、長孔(4)内にコマ(8)を嵌め込んだ後、突起(16)を適宜の工具等で変形させて、係止溝(13)内にカシメ固定する。そして、コマ(8)の上方から長孔(4)内に接着剤(9)を充填する。
【0012】
図4および図5は、突起(16)を具えた固定部材(14)をコマ(8)の上面に装着するようにした実施例を示す。固定部材(14)は、例えばプレス加工により形成されたもので、コマ(8)の上面に装着された後、上述したものと同様に、突起(16)を係止溝(13)内にカシメ固定される。
【0013】
【考案の効果】
本考案は、コマに形成された突起、あるいは固定部材に形成された突起を長孔の係止溝にカシメ固定するようにしたため、コマの長孔への固定強度が増大し、コマの抜け落ちが確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】長孔およびコマの平面図である。
【図2】図1の線Y−Yに沿う長孔と係止溝の横断面図である。
【図3】突起の圧入状態を示す横断面図である。
【図4】長孔、コマおよび固定部材の平面図である。
【図5】突起の圧入状態を示す横断面図である。
【図6】ボールねじの従来例を示す縦断面図である。
【図7】図6に示すボールねじの横断面図である。
【図8】コマの斜視図である。
【図9】長孔内へのコマの嵌め込み状態を説明する平面図である。
【図10】線X−Xに沿う長孔およびコマの縦断面図である。
【図11】線Y−Yに沿う長孔およびコマの横断面図である。
【符号の説明】
4 長孔
5 ボールナット
6 ボール
7 循環路
8 コマ
9 接着剤
10 ボールねじ
13 係止溝
16 突起
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はボールねじに関するものであり、詳細には、ボールナットの長孔部にボールの循環路を構成するために嵌装されたコマの抜け止め構体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、図6乃至図11に基づいて、ボールねじ(10)の従来構造を説明する。ボールねじ(10)は、外周面に螺旋溝(1)を形成してなるねじ軸(3)と、内周面に螺旋溝(2)を形成すると共に、この螺旋溝(2)の一部を外面から内面に向かって延びる長円形の長孔(4)によって切欠き構造としたボールナット(5)と、ボールナット(5)の長孔(4)に嵌まり込み、長孔(4)によって切欠かれた螺旋溝(2)を接続することによってボールナット(5)の内周面上にボール(6)の循環路(7)を形成してなるコマ(8)と、上記循環路(7)と螺旋溝(1)との間に転動循環可能に嵌装された多数のボール(6)と、上記コマ(8)を長孔(4)内に嵌装した後、その抜け止め材としてボールナット(5)の長孔(4)に塗着され固化した接着剤層(9)とによって構成されている。
【0003】
長孔(4)には、図6および図8乃至図9に示すように、コマ(8)をボールナット(5)の半径方向に位置決めするため、深さ方向の中間に段部(11)が設けられており、この段部(11)から内側は、コマ(8)の長径方向寸法L1に合わせて比較的小径になっている。これに対して段部(11)から外側は、コマ(8)の頭部(12)の長径方向寸法L2に合わせて比較的大径になっている。従来のボールねじにおいては、コマ(8)を長孔(4)内に嵌挿し、頭部(12)の下面を段部(11)に当接させることによってコマ(8)をボールナット(5)に位置決めした後、コマ(8)の上方から長孔(4)内に接着剤(9)を充填し、この接着剤(9)の固化によってコマ(8)を固定している。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
従来のボールねじにおいては、コマ(8)の固定強度を長穴(4)の側壁面と接着剤(9)との間に働く接着力のみに依存しているため、実用上充分な固定強度が得られないという問題があった。
【0005】
そこで本考案の目的は、コマの固定強度を向上させ、コマの抜け落ちを防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
螺旋溝を外周面に形成してなるねじ軸と、前記螺旋溝に対向する螺旋溝を内周面に形成し、この螺旋溝の一部を外面から内面に向かって延びる長孔によって切欠き構造としたボールナットと、上記ボールナットの長孔内に嵌まり込み、切欠かれた上記螺旋溝を接続してボールナットの内周面にボールの循環路を形成するコマと、上記ボールナットの内面に形成されたボールの循環路と上記ねじ軸の螺旋溝との間に転動循環可能に嵌装された多数のボールからなるボールねじ装置において、上記長孔の側壁面の上記コマの上面に合せた位置に係止溝を形成すると共に、上記コマの上面周縁部に変形可能な突起を形成し、上記突起を変形させて上記係止溝に係合させるようにしたことを特徴とするボールねじのコマ固定構体を提供するものである。
【0007】
また、上記長孔の側壁面の上記コマの上面に合せた位置に係止溝を形成すると共に、その周縁部に変形可能な突起が形成された固定部材を上記コマの上面に装着し、上記突起を変形させて上記係止溝に係合させようにしたことを特徴とするボールねじのコマ固定構体を提供するものである。
【0008】
【作用】
コマをボールナットの長孔内に嵌め込んだ後、係止溝内に突起をカシメ固定し、これによってコマに所定の係止力を付加する。
【0009】
【実施例】
以下、図1乃至図5に基づいて本考案の実施例を説明する。尚、以下の記述において、従来技術を示す図6乃至図11と同一の構成部材は原則として同一の参照番号で表示し、重複する事項に関しては説明を省略する。
【0010】
図1、図2、図3に示すように、下面に溝(7)を形成してなるコマ(8)は、全体として長円形の平面形状をなし、その横断面は方形状をなす。ボールナット(5)の外周面から内周面に向かって穿設された長孔(4)は、図1に示すように、その平面形状はコマ(8)と同一の長円形となっている。長孔(4)の側壁面には、その長手方向に沿って所定の幅寸法Wで係止溝(13)が形成されている。また、コマ(8)の上面の長手方向周縁部(8A)には、変形可能な突起(16)が設けられている。尚、突起(16)には焼入れを施さないようにするのが望ましい。
【0011】
ボールねじ(10)の組立てに際しては、長孔(4)内にコマ(8)を嵌め込んだ後、突起(16)を適宜の工具等で変形させて、係止溝(13)内にカシメ固定する。そして、コマ(8)の上方から長孔(4)内に接着剤(9)を充填する。
【0012】
図4および図5は、突起(16)を具えた固定部材(14)をコマ(8)の上面に装着するようにした実施例を示す。固定部材(14)は、例えばプレス加工により形成されたもので、コマ(8)の上面に装着された後、上述したものと同様に、突起(16)を係止溝(13)内にカシメ固定される。
【0013】
【考案の効果】
本考案は、コマに形成された突起、あるいは固定部材に形成された突起を長孔の係止溝にカシメ固定するようにしたため、コマの長孔への固定強度が増大し、コマの抜け落ちが確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】長孔およびコマの平面図である。
【図2】図1の線Y−Yに沿う長孔と係止溝の横断面図である。
【図3】突起の圧入状態を示す横断面図である。
【図4】長孔、コマおよび固定部材の平面図である。
【図5】突起の圧入状態を示す横断面図である。
【図6】ボールねじの従来例を示す縦断面図である。
【図7】図6に示すボールねじの横断面図である。
【図8】コマの斜視図である。
【図9】長孔内へのコマの嵌め込み状態を説明する平面図である。
【図10】線X−Xに沿う長孔およびコマの縦断面図である。
【図11】線Y−Yに沿う長孔およびコマの横断面図である。
【符号の説明】
4 長孔
5 ボールナット
6 ボール
7 循環路
8 コマ
9 接着剤
10 ボールねじ
13 係止溝
16 突起
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 螺旋溝を外周面に形成してなるねじ軸と、前記螺旋溝に対向する螺旋溝を内周面に形成し、この螺旋溝の一部を外面から内面に向かって延びる長孔によって切欠き構造としたボールナットと、上記ボールナットの長孔内に嵌まり込み、切欠かれた上記螺旋溝を接続してボールナットの内周面にボールの循環路を形成するコマと、上記ボールナットの内面に形成されたボールの循環路と上記ねじ軸の螺旋溝との間に転動循環可能に嵌装された多数のボールとからなるボールねじにおいて、上記長孔の側壁面の上記コマの上面に合せた位置に係止溝を形成すると共に、上記コマの上面周縁部に変形可能な突起を形成し、上記突起を変形させて上記係止溝に係合させるようにしたことを特徴とするボールねじのコマ固定構体。
【請求項2】 螺旋溝を外周面に形成してなるねじ軸と、前記螺旋溝に対向する螺旋溝を内周面に形成し、この螺旋溝の一部を外面から内面に向かって延びる長孔によって切欠き構造としたボールナットと、上記ボールナットの長孔内に嵌まり込み、切欠かれた上記螺旋溝を接続してボールナットの内周面にボールの循環路を形成するコマと、上記ボールナットの内面に形成されたボールの循環路と上記ねじ軸の螺旋溝との間に転動循環可能に嵌装された多数のボールとからなるボールねじにおいて、上記長孔の側壁面の上記コマの上面に合せた位置に係止溝を形成すると共に、その周縁部に変形可能な突起が形成された固定部材を上記コマの上面に装着し、上記突起を変形させて上記係止溝に係合させるようにしたことを特徴とするボールねじのコマ固定構体。
【請求項1】 螺旋溝を外周面に形成してなるねじ軸と、前記螺旋溝に対向する螺旋溝を内周面に形成し、この螺旋溝の一部を外面から内面に向かって延びる長孔によって切欠き構造としたボールナットと、上記ボールナットの長孔内に嵌まり込み、切欠かれた上記螺旋溝を接続してボールナットの内周面にボールの循環路を形成するコマと、上記ボールナットの内面に形成されたボールの循環路と上記ねじ軸の螺旋溝との間に転動循環可能に嵌装された多数のボールとからなるボールねじにおいて、上記長孔の側壁面の上記コマの上面に合せた位置に係止溝を形成すると共に、上記コマの上面周縁部に変形可能な突起を形成し、上記突起を変形させて上記係止溝に係合させるようにしたことを特徴とするボールねじのコマ固定構体。
【請求項2】 螺旋溝を外周面に形成してなるねじ軸と、前記螺旋溝に対向する螺旋溝を内周面に形成し、この螺旋溝の一部を外面から内面に向かって延びる長孔によって切欠き構造としたボールナットと、上記ボールナットの長孔内に嵌まり込み、切欠かれた上記螺旋溝を接続してボールナットの内周面にボールの循環路を形成するコマと、上記ボールナットの内面に形成されたボールの循環路と上記ねじ軸の螺旋溝との間に転動循環可能に嵌装された多数のボールとからなるボールねじにおいて、上記長孔の側壁面の上記コマの上面に合せた位置に係止溝を形成すると共に、その周縁部に変形可能な突起が形成された固定部材を上記コマの上面に装着し、上記突起を変形させて上記係止溝に係合させるようにしたことを特徴とするボールねじのコマ固定構体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図6】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図6】
【図10】
【公開番号】実開平5−22914
【公開日】平成5年(1993)3月26日
【考案の名称】ボ−ルねじのコマ固定構体
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−17775
【出願日】平成3年(1991)2月28日
【出願人】(000102692)エヌテイエヌ株式会社 (9,006)
【公開日】平成5年(1993)3月26日
【考案の名称】ボ−ルねじのコマ固定構体
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)2月28日
【出願人】(000102692)エヌテイエヌ株式会社 (9,006)
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