説明

ボイスコイルおよびこれを用いた動電型スピーカーならびにその製造方法

【課題】 長径方向に比べて短径方向が短い細長形であっても、ボイスコイルの剛性が高く、動作不良が少なくて品質が安定し、かつ、電気音響変換の能率が高く、全高が低くても再生音圧レベルが高い動電型スピーカーを提供する。
【解決手段】 ボイスコイルは、コイル積層体とコイル支持部材とを備え、コイル積層体の積層された複数のコイルパターンが、所定の位置に規定される複数のスルーホールランドを有し、積層された2つのコイルパターンが、それぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通して直列接続するボイスコイルを形成するとともに、コイル積層体およびコイル支持部材が、コイルパターンと略同形状の環状形に形成されて、かつ、コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有する環状形に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであって、音声再生能力に優れ、ディスプレイ等の機器に取り付けるのに適するボイスコイル、および、動電型スピーカー、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音声を再生するスピーカーを取り付けるディスプレイ等の音響機器においては、スピーカーを取り付けるのに要する空間を小型化することが要望されている。特に、細長形(矩形、長円形(楕円形、トラック形を含む))の動電型スピーカーは、短径方向に振動板面積が限られる、細長形のスピーカー振動板に特有な分割振動の影響が大きくて平坦な再生音圧周波数特性を得ることが難しい、磁気空隙の磁束密度が高いスピーカー用磁気回路を採用しようとすると、磁気回路の幅がスピーカー振動板よりも広くなり小型化できない、といった様々な理由から音声再生能力において不利な点がある。したがって、従来には、これらの問題を解決するために様々なスピーカー振動板、ボイスコイル、スピーカー用磁気回路、および、これを用いた動電型スピーカーが提案されている。
【0003】
例えば、従来には、スピーカー形状の縦、横の寸法が長手側と短手側とからなるトラック型スピーカーにおいて、磁気回路を構成するマグネット(3)をほぼスピーカー外形に収まる範囲内で大きな形状とし、かつ前記磁気回路を構成するポール(1)及びボイスコイルVCの形状は前記長手側の方向に沿って延びる細長い形状としてボイスコイルVCと前記長手側との間のダンパーの幅寸法を確保するとともに、ポール(1)の断面積Sは、ポール形状を円とした場合、前記短手側の寸法aに対しほぼ1/3以上の直径を有する円と円等の断面積としたトラック型スピーカーがある(特許文献1)。また、少なくとも2個の棒状マグネットを上部プレートと下部プレートとで前記下部プレートに設けた棒状のセンターポール部をはさんで平行に挟持した磁気回路と、この磁気回路に結合されたフレームと、このフレームの外周部に結合された振動板と、この振動板に結合されるとともに、その一部が前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置されたボイスコイルとからなるスピーカーであって、前記上部プレートと前記下部プレートから構成された磁気ギャップの形状が少なくとも平行な2つの直線部を有し、上部プレートの磁気ギャップ窓形状、ならびに、ボイスコイル形状がトラック型形状であるものがある(特許文献2)。
【0004】
また、振動膜の面上に音声信号電流が流れる導体が被着されており、該導体に鎖交する磁束と上記音声信号電流とに対応して電気音響変換が行われる電気音響変換装置の振動膜において、上記振動膜の周縁部に上記導体と電気的に絶縁された導体層を被着させて、上記周縁部の剛性を高めたことを特徴とする振動膜を備えたスピーカーがある(特許文献3)。あるいは、平坦部を有するヨーク上に、複数個の磁石を所定の距離を隔て、かつ隣り合う磁石の磁極面が互いに逆になるように配置するとともに、前記磁石の磁極面から所定の距離を保ち、かつ磁極面に各々対応した箇所にコイルを配置した振動膜により構成された薄型スピーカーにおいて、前記磁石の磁極面の外縁部に相当する箇所の前記振動膜に成型した凸部の近傍に、線状導体をヨークに対して非平面のコイル状に布線したことを特徴とする薄型スピーカーがある(特許文献4)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−197190号公報
【特許文献2】特開2004−266337号公報
【特許文献3】特開昭55−27735号公報
【特許文献4】特開2006−311174号公報
【0006】
しかしながら、長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーでは、磁気回路の磁気空隙およびボイスコイルを平行な二辺の直線部を含むトラック形状にすると、磁束と交叉するボイスコイル長が長くなってボイスコイルで発生する駆動力が増大し、能率が高く、再生音圧レベルが高い動電型スピーカーを実現できる一方で、トラック形状のコイルが巻回されるボビンの強度が不足しやすく、動作不良が発生しやすくなるという問題がある。また、フィルム面上に音声信号電流が流れる導体が形成されるボイスコイルを備えるスピーカーは、スピーカーの全高を薄くできる場合があるものの、磁気回路の磁気空隙の最も磁束密度が高い位置にコイルを配置するのが困難であるため、電気音響変換の能率が低く、再生音圧レベルが低いスピーカーになりやすいという問題がある。特に、後者の場合には、磁気回路と振動板に一体化されたコイルとの距離を離さなければ、最低共振周波数f0以下の周波数の低域成分を含む音声信号を再生する際には、磁気回路とコイルとが接触して異音を発生する場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであっても、ボイスコイルの剛性が高く、動作不良が少なくて品質が安定し、かつ、電気音響変換の能率が高く、全高が低くても再生音圧レベルが高い動電型スピーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のボイスコイルは、エッチングにより形成される導電性金属のコイルパターンと、コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を備えるボイスコイルであって、コイル積層体の積層された複数のコイルパターンが、それぞれ所定の位置に規定される複数のスルーホールランドを有し、積層された2つのコイルパターンが、それぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数のコイルパターンが直列接続するボイスコイルを形成するとともに、コイル積層体が、コイルパターンと略同形状の環状形に形成されて、かつ、コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有し、コイル支持部材が、コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する環状形に形成される。
【0009】
好ましくは、本発明のボイスコイルは、コイル積層体を構成する耐熱性フィルムが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、のいずれかを含み、複数の耐熱性フィルムが、フィルム層間に塗布される接着剤が硬化する、もしくは、フィルム層間に配置されるエポキシプリプレグシートが熱硬化することにより積層され、コイル積層体が形成される。
【0010】
また、好ましくは、本発明のボイスコイルは、コイルパターンを形成する導電性金属が、銅を含み、コイル積層体を構成する耐熱性フィルムが、ポリエーテルエーテルケトンを含み、複数のポリエーテルエーテルケトンのフィルムが、熱融着ならびに結晶化することにより積層され、コイル積層体が形成される。
【0011】
さらに好ましくは、本発明のボイスコイルは、コイル支持部材が、ポリエーテルエーテルケトンを含み、コイル積層体とコイル支持部材とが、ポリエーテルエーテルケトンが熱融着ならびに結晶化することにより連結する。
【0012】
また、本発明の動電型スピーカーは、上記のボイスコイルと、ボイスコイルのコイル積層体が配置され、かつ、コイル積層体の内孔に収容されるポールにより規定される磁気空隙を有する磁気回路と、ボイスコイルのコイル支持部材が連結するスピーカー振動板と、を備える。
【0013】
また、本発明の動電型スピーカーは、磁気回路が、平行する二辺の直線部を含む磁気空隙を有し、環状形のボイスコイルが、平行な二辺の直線部を含むトラック形状を有し、スピーカー振動板が、平行する二辺の直線部に沿った長径方向と、長径方向と直角な短径方向とを有する細長形である。
【0014】
好ましくは、本発明のボイスコイルの製造方法は、導電性金属のコイルパターンと、コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を含むボイスコイルの製造方法であって、耐熱性フィルムが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、のいずれかを含む場合に、複数の耐熱性フィルムを、フィルム層間に塗布される接着剤を硬化する、もしくは、フィルム層間に配置されるエポキシプリプレグシートを熱硬化することにより積層し、コイル積層体を形成する工程と、積層された複数のコイルパターンのうち、積層された2つのコイルパターンのそれぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数のコイルパターンが直列接続されるコイルを形成する工程と、コイル積層体を、コイルパターンと略同形状の環状形に形成し、かつ、コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有するように形成する工程と、コイル支持部材を、コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する環状形に形成する工程と、コイル積層体とコイル支持部材とを、接着剤で接着する、もしくは、エポキシプリプレグシートを熱硬化して、連結する工程と、を含む。
【0015】
また、本発明のボイスコイルの製造方法は、導電性金属のコイルパターンと、コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を含むボイスコイルの製造方法であって、コイルパターンを形成する導電性金属が銅を含み、耐熱性フィルムがポリエーテルエーテルケトンを含む場合に、複数の耐熱性フィルムを加熱プレス成形して、熱融着ならびに結晶化することにより積層し、コイル積層体を形成する工程と、積層された複数のコイルパターンのうち、積層された2つのコイルパターンのそれぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数のコイルパターンが直列接続されるコイルを形成する工程と、コイル積層体を、コイルパターンと略同形状の環状形に形成し、かつ、コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有するように形成する工程と、コイル支持部材を、コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する環状形に形成する工程と、コイル積層体とコイル支持部材とを、接着剤で接着する、もしくは、エポキシプリプレグシートを熱硬化して、連結する工程と、を含む。
【0016】
また、本発明のボイスコイルの製造方法は、導電性金属のコイルパターンと、コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を含むボイスコイルの製造方法であって、コイルパターンを形成する導電性金属が銅を含み、耐熱性フィルムがポリエーテルエーテルケトンを含む場合に、複数の耐熱性フィルムを加熱プレス成形して、熱融着ならびに結晶化することにより積層し、コイル積層体を形成する工程と、積層された複数のコイルパターンのうち、積層された2つのコイルパターンのそれぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数のコイルパターンが直列接続されるコイルを形成する工程と、コイル積層体を、コイルパターンと略同形状の環状形に形成し、かつ、コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有するように形成する工程と、ポリエーテルエーテルケトンを含むコイル支持部材を、コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する環状形に形成する工程と、コイル積層体とコイル支持部材とを、加熱プレス成形して、ポリエーテルエーテルケトンを熱融着ならびに結晶化して連結する工程と、を含む。
【0017】
また、本発明のボイスコイルの製造方法は、銅を含む導電性金属のコイルパターンと、ポリエーテルエーテルケトンを含む耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するポリエーテルエーテルケトンを含むコイル支持部材と、を含むボイスコイルの製造方法であって、コイル積層体とコイル支持部材とを、加熱プレス成形して、ポリエーテルエーテルケトンを熱融着ならびに結晶化して連結する工程と、積層された複数のコイルパターンのうち、積層された2つのコイルパターンのそれぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数のコイルパターンが直列接続されるコイルを形成する工程と、連結されたコイル積層体とコイル支持部材とを、環形状に形成し、内径の内側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を形成する工程と、を含む。
【0018】
以下、本発明の作用について説明する。
【0019】
本発明のボイスコイルは、エッチングにより形成される導電性金属のコイルパターンと、コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を備える。コイル積層体は、積層された複数のコイルパターンが、それぞれ所定の位置に規定される複数のスルーホールランドを有し、積層された2つのコイルパターンが、それぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数のコイルパターンが直列接続するボイスコイルを形成する。なお、コイル積層体の最外層には、導電性金属のコイルパターンを設けない耐熱性フィルムの層を設けても良い。
【0020】
本発明のボイスコイルでは、コイル積層体を構成する耐熱性フィルムが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、のいずれかを含むものである場合には、複数の耐熱性フィルムが、フィルム層間に塗布される接着剤が硬化する、もしくは、フィルム層間に配置されるエポキシプリプレグシートが熱硬化することにより積層され、コイル積層体が形成される。あるいは、コイルパターンを形成する導電性金属が銅を含み、コイル積層体を構成する耐熱性フィルムがポリエーテルエーテルケトンを含むものである場合には、複数のポリエーテルエーテルケトンのフィルムが、熱融着ならびに結晶化することにより、コイル積層体が形成される。したがって、コイル積層体は、コイルパターンと略同形状の環状形に形成されて、かつ、コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有していても、剛性の高い強固なボイスコイルを形成することができる。
【0021】
また、本発明のボイスコイルのコイル支持部材は、コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する環状形に形成される。コイル積層体とコイル支持部材とは、接着剤で接着する、もしくは、エポキシプリプレグシートを熱硬化して、連結される。コイル積層体、および、コイル支持部材を構成する材料が、ポリエーテルエーテルケトンを含む場合には、ポリエーテルエーテルケトンのフィルムが、熱融着ならびに結晶化することによりこれらが連結される。そして、コイル積層体とコイル支持部材とが、ともにポリエーテルエーテルケトンを含む場合には、ポリエーテルエーテルケトンを熱融着ならびに結晶化することにより、コイル積層体とコイル支持部材を予め一体化して形成することができる。加熱プレス成形する工程により、ポリエーテルエーテルケトンのフィルムが熱融着ならびに結晶化して積層し、コイル積層体とコイル支持部材とを形成し、かつ、連結するので、少ない工程で、剛性の高い強固なボイスコイルを形成することができる。
【0022】
また、後者のコイル積層体の場合には、コイルパターンの銅と、耐熱性フィルムのポリエーテルエーテルケトンとが、互いに線膨張係数が近い値の材料であるので、積層体のコイルが発熱しても、膨張率の差異による各層間での剥離や、変形が生じにくくなる。したがって、コイル支持部材もコイル積層体を構成する耐熱性フィルムと同じポリエーテルエーテルケトンとする場合には、一つの製造工程でコイル積層だけでなくコイル支持部材も構成することができ、品質の安定したボイスコイル、ならびに、動電型スピーカーを実現することができる。
【0023】
さらに、本発明のボイスコイルのコイル積層体は、磁気回路のポールを収容する内孔を有し、コイル支持部材により磁気回路の磁気空隙に配置されるので、電気音響変換の能率を高くすることができ、再生音圧レベルが高い動電型スピーカーを実現することができる。磁気回路が、平行する二辺の直線部を含む磁気空隙を有し、環状形のボイスコイルが、平行な二辺の直線部を含むトラック形状を有する場合には、ボイスコイルのコイル支持部材が連結するスピーカー振動板が、平行する二辺の直線部に沿った長径方向と、長径方向と直角な短径方向とを有する細長形、代表的には、トラック形状の動電型スピーカーが実現される。なお、長径方向とは、矩形、長円形、楕円形、あるいは、トラック形を含む細長形を規定する長軸が延びる方向であり、短径方向とは、長軸と直交する短軸が延びる方向である。もちろん、本発明のボイスコイルは、トラック形状のみならず、円形であってもよい。
【0024】
なお、本発明の動電型スピーカーにおいては、コイル積層体の積層厚さが、ボビンに巻き回して構成するコイルの場合のコイル巻き幅に比較して、同程度の電気インピーダンス、ないし、ボイスコイル長とすれば、薄くすることができる。磁気回路の磁気空隙において、高い磁束密度を保つ長さに比べて、コイル積層体の積層厚の方が短くなり、いわば、ショートボイスの動電型スピーカーが実現できる。したがって、耐熱性フィルムに一体化されたコイルを用いるボイスコイルであっても、磁気回路とコイルとが接触することなく最低共振周波数f0以下の周波数の低域成分を含む音声信号を再生することができ、かつ、動電型スピーカーの全高を低く、薄くすることができる。
【発明の効果】
【0025】
長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであって、細長形状の磁気空隙を有する磁気回路を用いる場合であっても、ボイスコイルの剛性が高く、動作不良が少なくて品質が安定し、かつ、電気音響変換の能率が高く、全高が低くても再生音圧レベルが高い動電型スピーカーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
長径方向に比べて短径方向が短い細長形の動電型スピーカーであっても、ボイスコイルの剛性が高く、動作不良が少なくて品質が安定し、かつ、電気音響変換の能率が高く、全高が低くても再生音圧レベルが高い動電型スピーカーを提供するという目的を、ボイスコイルのコイル積層体の積層された複数のコイルパターンが、それぞれ所定の位置に規定される複数のスルーホールランドを有し、積層された2つのコイルパターンが、それぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数のコイルパターンが直列接続するボイスコイルを形成するとともに、コイル積層体が、コイルパターンと略同形状の環状形に形成されて、かつ、コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有し、コイル支持部材が、コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する環状形に形成されるようにすることにより、実現した。
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態によるボイスコイルおよび動電型スピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する図である。図1(a)は、動電型スピーカー1を前面側から見た斜視図であり、図1(b)は、動電型スピーカー1のB−B’断面の斜視拡大図である。なお、後述するように、動電型スピーカー1の一部の構造や、内部構造等は、省略している。また、点O−Aを結ぶ直線(長軸)が延びる方向が長径方向であり、また、点O−B
を結ぶ直線(短軸)が延びる方向が短径方向である。
【0029】
本実施例の動電型スピーカー1は、長径方向長L1が約300.0mm、短径方向長L2が約45.0mmのトラック形のスピーカー振動板2を有する細長形の動電型スピーカーであり、細長形であっても口径が約131mmの円形振動板と同等の振動板面積を有するスピーカーである。スピーカー振動板2は、エッジ3によってその外周端を支持されており、エッジ3の外周端は、フレーム6に固定されている。また、スピーカー振動板2の背面側には、トラック形のボイスコイル4が連結している。また、フレーム6は、トラック形のスピーカー振動板2に対応した細長形状であり、フレーム6に固定される磁気回路10も、その幅が短径方向長L2以下の狭い細長形状を有している。したがって、動電型スピーカー1は、ディスプレイ等の機器が有する表示部の側面など、スピーカーを取り付ける幅が少ない機器に適するスピーカーである。
【0030】
動電型スピーカー1のスピーカー振動板2は、その外周端にエッジ3の内周側が接着されており、また、中央背面にはボイスコイル4を構成するコイル支持部材4aが接着される。スピーカー振動板2は、スピーカー振動板の軽量化を図るために発泡させた熱可塑性樹脂を形成して構成されている。本実施例の場合には、押出成形された熱可塑性樹脂発泡シート(具体的には、発泡ポリプロピレン(PP))を、プラグアシスト成形を併用した真空成形法を用いることで、リブを有するスピーカー振動板2を得ている。すなわち、長径方向長L1と短径方向長L2が著しく異なる細長形のスピーカー振動板2は、長径方向の分割振動の影響が顕著になりやすいので、長径方向に延びるリブを有し、かつ、短径方向断面形状が略W字形になるようにして、長径方向に剛性を有する形状とされている。
【0031】
エッジ3は、本実施例では、柔軟性を有する発泡ゴムを金型内に注入して加熱発泡して形成したものである。スピーカー振動板2の長径方向に直線状に延びるトラック形の長辺では、スピーカー振動板2を自由支持するように薄肉のコルゲーション(またはロール)によるフリーエッジが形成され、短径方向に円弧状になるトラック形の短辺では、スピーカー振動板2を固定支持するように厚肉で自由に振動しないフィックスドエッジが形成される。その結果、細長形のスピーカー振動板2は、短径方向ではエッジ3のフリーエッジ部のコンプライアンスで柔軟に支持される一方で、長径方向ではスピーカー振動板2を形成する熱可塑性樹脂の発泡シートの柔軟性によって、曲げ振動可能にされている。
【0032】
ボイスコイル4は、トラック形に形成されたコイル支持部材4aと、同様のトラック形を有する音声電流が供給されるコイル積層体4bと、から形成される。コイル支持部材4aは、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂で成形された部材であり、内径および外径を有する環状形であるトラック形に形成されて、その結果、内径側に内孔4cを有している。コイル支持部材4aは、筒状の一方端にコイル積層体4bを連結する一方で、他端側がスピーカー振動板2の背面中央に接着剤により連結される。コイル積層体4bも、内径および外径を有する環状形であるトラック形に形成されて、内径側に内孔4cを有している。したがって、ボイスコイル4を備える動電型スピーカー1では、コイル積層体4bが、後述する磁気回路10の円形の磁気空隙13aおよび13bに配置される。
【0033】
なお、(図示しない)錦糸線8は、フレーム6に固定されるターミナル7とコイル積層体4bとをハンダづけして導通させて、コイル積層体4bに音声電流を供給する。錦糸線8は、スピーカー振動板2に金属ハトメを設けてターミナル7まで導通させるようにしてもよい。もちろん、錦糸線8は、絶縁体で被覆されたリード線で代用してもよい。
【0034】
フレーム6は、スピーカー振動板2の形状に対応して細長形のバスケット状にプレス成形された鉄板フレームであり、エッジ3を固定する略矩形の固定部と、磁気回路10を固定する固定部と、これらの固定部を連結する連結部と、複数の連結部の間に規定される窓と、ターミナル7を取り付ける取付孔と、を備える。したがって、スピーカー振動板2、エッジ3、および、ボイスコイル4からなるスピーカー振動系は、フレーム6ならびに磁気回路10に対して振動可能に支持される。
【0035】
図2は、動電型スピーカー1を構成する磁気回路10を説明する斜視図である。磁気回路10は、フレーム6にそれぞれ固定される細長形のトッププレート11aおよび11bと、トッププレート11aおよび11bの間に狭持されるように配置されるセンターポール12を含むポール14と、同一方向に着磁された2つの主マグネット15aおよび15bと、から構成される。トッププレート11およびセンターポール12は、均等な幅を有する平行な二辺の直線部を含む磁気空隙13aおよび13bを形成する。主マグネット15aおよび15bは、それぞれ、トッププレート11aおよびポール14のアンダープレートとの間に、そして、トッププレート11bおよびポール14のアンダープレートとの間に、狭持され、短径方向にセンターポール12を中間にして対称配置される。2つの主マグネット15aおよび15bは、外形が長径方向に長い細長形であり、細長形のトッププレート11aおよび11b、ならびに、ポール14の形状に対応した略細長形状である。磁気回路10の長径方向の長さは約72.5mmであり、短径方向の長さは約36.2mmであり、磁気空隙13aおよび13bの幅は約1.76mmである。なお、センターポール12は、ポール14のアンダープレートと一体に形成されていても良く、また、別ピースを接着剤で固着されていても良い。
【0036】
本実施例の2つの主マグネット15aおよび15bは、残留磁化および保磁力がさらに大きく、小さい体積でも保磁力の強いNd−Fe−B系の希土類磁石であり、フェライト系磁石であってもよい。なお、希土類磁石とは、Nd−Fe−B系のネオジウム磁石、もしくは、Sm−Co系のサマリウムコバルト磁石であって、磁石の最大エネルギー積(BH)maxが大きな値をとる磁石である。磁気回路10は、ボイスコイル4のコイル積層体4bを平面視した場合に投影する領域の外部に磁石が配置される外磁型磁気回路であり、かつ、長径方向に細長く、保磁力の強い主マグネット15aおよび15bが短径方向に配置されるので、本発明の動電型スピーカー1のような細長形のスピーカーに適する。磁気回路10の最大幅を小さくすることができれば、細長形のスピーカー振動板2を前面視した場合に形成される領域内に磁気回路10が収まるからである。したがって、軽量なスピーカー振動板2を採用することを含めて、能率の高い動電型スピーカー1が実現される。
【0037】
図3は、動電型スピーカー1を構成するボイスコイル4を説明する斜視図である。ボイスコイル4は、コイル支持部材4aと、コイル積層体4bと、からなり、内径および外径を有する環状形であるトラック形に形成されて、その結果、内径側に内孔4cを有している。また、トラック形は、長径方向に沿って平行な二辺の直線部4dと、直線部4dの長径側端部を連結する円弧部4eと、からなる。本実施例の場合には、ボイスコイル4は、長径方向の外形長が約81.2mm、短径方向の外形長が約12.7mm、円弧部4eの半径が約6.35mmのトラック形であり、直径約64.3mmの円形ボイスコイルに相当する。また、ボイスコイル4の全高は、約5.6mmであり、直線部4dの幅は、約1.3mmである。一方の円弧部4eには切欠部が2箇所設けられており、ここにコイル積層体4bに導通する錦糸線8aおよび8bの一端が、それぞれハンダ付けされて固定されている。
【0038】
動電型スピーカー1では、トラック形のボイスコイル4の平行な二辺の直線部4dが、磁気回路10の平行な二辺の直線部を含む磁気空隙13aおよび13bに配置される。そして、長径方向から磁気回路10を側面視すると、マグネット15aおよび15bが配置されない長径端部16aおよび16bが形成されているので、ここからトラック形のボイスコイル4の円弧部4eが突出するように露出する。ボイスコイル4は、トラック形の円弧部4eに錦糸線8aおよび8bを接続して取り出しているので、錦糸線8aおよび8bは、磁気回路10に干渉しないようにターミナル7へ導出される。なお、磁気回路10では、長径端部16aおよび16bを、通気性を有する織布又は不織布等で形成される防塵部材により覆って、磁気空隙13aおよび13bに鉄粉等の異物が侵入するのを防止するようにしてもよい。また、図4に図示する錦糸線8aおよび8bは、コイル支持部材4aに切欠部を設けてボイスコイル4の上側へ導出されているが、錦糸線8aおよび8bは、コイル積層体4bの下側から導出するものであってもよい。
【0039】
錦糸線8aおよび8bを介してボイスコイル4のコイル積層体4bに音声電流が供給されると、磁気空隙13aおよび13bに配置された直線部4dには駆動力が作用し、ボイスコイル4は図1〜図3における上下方向に振動し、連結されたスピーカー振動板2も上下方向に振動する。磁気回路10は、平行な二辺の直線部を含む磁気空隙13aおよび13bが長径方向に均等な幅を有するので、長径方向においてほぼ磁束密度分布が一定になり、長径方向のボイスコイル4の平行な二辺の直線部4dに沿って、ほぼ一定の駆動力が発生する。スピーカー振動板2は、短径方向ではその外周端を支持するエッジ3のフリーエッジ部が柔軟に支持し、その一方で、長径方向ではスピーカー振動板2を形成する熱可塑性樹脂発泡シートの柔軟性によって曲げ振動可能になる。最低共振周波数f0付近若しくはそれ以下の周波数でボイスコイル4が大きく変位する場合には、長径方向の両端を固定されたスピーカー振動板2は、長径方向に弓状に曲がって変形する。
【0040】
図4は、本実施例のボイスコイル4を説明する図である。図4(a)は、ボイスコイル4の構成を模式的に説明する展開斜視図であり、図4(b)は、コイル積層体4bの構成を説明する部分拡大図である。すなわち、ボイスコイル4は、コイル積層体4bと、コイル積層体4bを磁気回路10の磁気空隙13aおよび13bに配置するコイル支持部材4aと、を備え、コイル積層体4bは、エッチングにより形成される導電性金属のコイルパターン5pと、コイルパターン5pが貼り合わされる耐熱性フィルム5xと、を複数積層させたコイル積層体である。本実施例のコイル積層体4bの場合には、具体的には、コイル層5aから5hを積層した8層のコイル積層体4bが形成されており、図4(b)では、図4(a)の点線で囲んだ部分5を拡大して図示している。
【0041】
コイル層5aから5hは、それぞれ、耐熱性フィルム5xに、導電性金属のコイルパターン5pがエッチングにより形成されている。本実施例では、耐熱性フィルム5xは、厚みが50μmのポリイミドフィルムであり、コイルパターン5pは、厚みが18μmの銅箔であり、これらは接着剤で接着されている。コイルパターン5pは、ポリイミドフィルム5xに貼り合わされた銅箔をエッチングして形成されており、導体幅が0.3mm、導体ピッチが0.1mmで、その始点5s1と、終点5s2とにスルーホールランドをそれぞれ有する約2ターンのコイルである。それぞれのコイル層5a〜5hには、ボイスコイル4の円弧部4eの共通する所定の位置に、合計9つのスルーホール5sが設けられることが想定されているので、コイルパターン5pの始点5s1および終点5s2は、その中の2つから選択されている。なお、図4に図示するスルーホール5sは、積層した後に設けられたスルーホールが、各コイル層を展開した図面上に現れているものである。
【0042】
コイル積層体4bでは、積層された2つのコイルパターン5pが、それぞれの始点5s1もしくは終点5s2に形成されたスルーホールランドを銅メッキすることにより導通し、8層のコイルパターン5pが直列接続するボイスコイルを形成する。例えば、図4(b)に図示するとおり、上から2層目に相当するコイル層5bのコイルパターン5pの終点に形成されたスルーホールランド5s2と、その次の層であるコイル層5cのコイルパターン5pの始点に形成されたスルーホールランド5s1とは、平面視した場合に同じ位置に設けられるので、コイル層5bとコイル層5cとを積層後に所定の位置にスルーホールを設けて銅メッキすれば、2層目と3層目のコイルパターン5pが直列接続する。つまり、上下層の隣り合ったコイル層において、コイルパターン5pの終点5s2と始点5s1とを同一の所定位置に設けているので、スルーホールを設けて導通させれば、同様にして隣り合って積層する2つのコイルパターン5pを直列接続することができる。そして、最下面のコイル層5hのコイルパターン5pの終点5s2から、最上面のコイル層5aまでスルーホールを設けて導電させることができるので、錦糸線8aおよび8bを接続すれば、合計が約16ターンで、直流抵抗値が約8.39Ωのトラック形のコイルが形成される。なお、銅メッキは、銀メッキであっても良い。
【0043】
コイル積層体4bを、コイル層5aから5hを積層して形成する工程を説明する。コイル層5aから5hは、それぞれ、耐熱性フィルム5xの一面に銅箔を接着剤で貼り合わせてエッチングし、始点5s1および終点5s2にスルーホールランドを有するコイルパターン5pを形成する。その後に、各層間に厚さ約38μmのエポキシプリプレグシートを挟んで積層させ、コイルパターン5pと始点5s1および終点5s2が所定の位置からずれないようにして治具で規制した上で、180℃で約2時間かけて加熱プレス成形する。エポキシプリプレグシートが熱硬化する結果、コイル層5aから5hは強固に接着されて、積層厚が約0.6mmの厚みに積層される。次に、所定の位置に直径0.3mmのスルーホールを空け、銅メッキをして各層のコイルパターン5pを直列接続したコイルを形成する。そして、これを内径および外径をプレスにより打ち抜いて、コイルを含むトラック形に成形する。したがって、コイル積層体4bは、コイルパターン5pの形状に合わせたトラック形であって、長径方向に平行な二辺の直線部4dと、直線部4dの長径側端部を連結する円弧部4eと、を備え、コイルパターン5pの内径側に磁気回路10のセンターポール12を収容する内孔4cを有している。
【0044】
なお、コイル積層体4bは、最上面のコイル層5aならびに最下層のコイル層5hには、コイルパターン5pを設けない耐熱性フィルム5xの層をさらに設けて、コイルパターン5pの保護を、もしくは、コイル積層体4bの強度の強化を図ってもよい。また、本実施例では、耐熱性フィルム5xは、厚みが50μmのポリイミドフィルムであるが、他のハンダ処理の耐熱性を有するポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、等のフィルムであっても良く、その厚みも、積層して強度を保てるものであればこの実施例の場合に限られるものではない。さらに、各コイル層は、耐熱性フィルム5xの両面にコイルパターン5pを設けてもよい。また、エポキシプリプレグシートの代わりに、接着剤によって各層間を接着しても良い。
【0045】
コイル支持部材4aは、コイル積層体4bと略同形状のトラック形の内径および外径を有するように形成されるので、長径方向に平行な二辺の直線部4dと、直線部4dの長径側端部を連結する円弧部4eと、を備え、その内径側に磁気回路10のセンターポール12を収容する内孔4cを有している。コイル支持部材4aは、樹脂を射出成形、もしくは、一定の厚みを有する樹脂部材をプレス型で打ち抜いて形成された部材であり、厚さが約1.3mmのトラック形を有する。コイル積層体4bは、コイル支持部材4aの下側端面に接着剤で接着される。また、コイル支持部材4aとコイル積層体4bとの連結は、接着剤の代わりに、エポキシプリプレグシートを用いて加熱して連結しても良い。したがって、コイル支持部材4aは、コイル積層体4bを磁気回路10の磁気空隙13aおよび13bに配置することができる。なお、コイル支持部材4aを形成する部材は、本実施例の場合に限られるものではなく、合成樹脂、ケミカルウッド(ウレタン)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、等であっても良く、軽量化を図るために発泡ビーズを含むウレタン、アクリル、PC、PP、等の樹脂であってもよい。
【0046】
図1に示すように、本実施例の動電型スピーカー1は、細長形のスピーカー振動板2を備えていながらも、コイル積層体4bの積層厚さが約0.6mm程度に薄くされるので、最低共振周波数f0以下の周波数の低域成分を含む音声信号を再生する場合であっても、磁気回路10とボイスコイル4とが接触しないようにしたうえで、動電型スピーカー1の全高を約20mmとして、従来の動電型スピーカーよりも薄くすることができる。なお、本実施例の動電型スピーカー1は、ボイスコイル4を振動可能に支持するダンパーを備えない場合であるが、柔軟性を有する繊維の織布を基材としてフェノール樹脂を含浸して成形するコルゲーションダンパー、もしくは、金属または樹脂で形成する蝶ダンパーを備えていても良い。
【0047】
また、磁気回路10の磁気空隙13aおよび13bにおいて、高い磁束密度を保つトッププレート11aおよび11bの厚さ約4.0mmに比べて、コイル積層体4bの積層厚の方が薄く、短くなる。したがって、動電型スピーカー1は、ショートボイスの動電型スピーカーとなり、高調波歪が少なく、音声再生能力に優れた動電型スピーカーを実現することができる。さらに、動電型スピーカー1は、ボイスコイル4のコイル積層体4bがコイルパターン5pからなるものであっても、コイル支持部材4aを備えることによって、コイル積層体4bを磁気回路10の磁束密度が高い磁気空隙11aおよび11bの内部に配置できるので、能率が高い再生音質に優れる動電型スピーカーとなる。
【0048】
本実施例のボイスコイル4は、コイル支持部材4aならびにコイル積層体4bがともに樹脂で成形されているので、長い平行な二辺の直線部4dを含むトラック形であっても、紙、アルミ等の金属箔、等で円筒形状にされたボビンに線材を巻回して構成するようなトラック形のボイスコイルよりも、剛性を高めることができる。したがって、トラック形のスピーカー振動板2を備えていても、動作の安定した再生音質に優れる動電型スピーカー1を実現することができる。もちろん、スピーカー振動板2の形状は、矩形、長円形、楕円形、あるいは、トラック形を含む細長形であってもよい。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の他の本実施例の動電型スピーカー1(図示しない)を説明する。動電型スピーカー1は、先の実施例における動電型スピーカー1と、それを構成するボイスコイル4が本実施例のボイスコイル4(図示しない)に置き換えられる他は、共通する動電型スピーカーである。また、本実施例のボイスコイル4は、コイル支持部材4aを構成する材料、コイル積層体4bを構成する材料、ならびに、製造方法が異なる他は、先の実施例におけるボイスコイル4と、トラック形の形状、寸法、等はほぼ変わらない。したがって、動電型スピーカー1と共通する部分は、共通の番号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施例のボイスコイル4は、ポリエーテルエーテルケトンからなるコイル支持部材4aと、ポリエーテルエーテルケトンを耐熱性フィルム5xとするコイル積層体4bと、から構成されている。また、コイル積層体4bは、コイルパターン5pを形成する導電性金属が銅を含む。そして、ポリエーテルエーテルケトンの耐熱性フィルム5xは、加熱プレス成形されることにより積層され、熱融着ならびに結晶化してコイル積層体4bを形成している。すなわち、先の実施例と異なり、本実施例のボイスコイル4のコイル積層体4は、接着剤またはエポキシプリプレグシートを用いずに、ポリエーテルエーテルケトンが熱融着ならびに結晶化することにより、形成されている。
【0051】
本実施例のボイスコイル4を製造する工程を説明する。コイル支持部材4aには、約5.0mmの厚みを有するポリエーテルエーテルケトンの部材を用意する。 コイル支持部材4aは、コイル積層体4bと略同形状の内径および外径を有する環状形、つまり、トラック形に形成する。一方、コイル積層体4bは、厚さが約50μmのポリエーテルエーテルケトンの耐熱性フィルム5xの一面に、銅箔を加熱プレス成形して貼り合わせてからエッチングし、コイルパターン5pを形成する。この加熱プレス成形は、約200℃〜220℃で圧力30kg/cmのプレス条件下で5分行い、銅箔を熱融着によって貼り付ける。そして、8層に渡るコイル層5aから5hを用意し、これらを積層させ、コイルパターン5pと始点5s1および5s2が所定の位置からずれないようにして治具で規制し、これを加熱プレス成形する。各コイル層5aから5hのコイルパターン5pの形成を含む構成については、ほぼ先の実施例と同様であるので、重複する製造工程の説明は省略する。
【0052】
図5は、本実施例のボイスコイル4のコイル積層体4を製造する工程を説明するグラフであり、特に、コイル積層体4を加熱プレス成形して、ポリエーテルエーテルケトンのフィルムを熱融着ならびに結晶化して積層し、コイル積層体4bを形成する工程を説明する時間−加熱温度を表すグラフである。加熱プレス成形の工程は、コイル積層体4をプレス並びに加熱してポリエーテルエーテルケトンを熱融着により接着する工程と、高い温度を保ってポリエーテルエーテルケトンを結晶化する工程と、結晶化の工程の後でコイル積層体4を取り出す工程と、を含む。なお、この加熱プレス成形の工程は、コイル積層体4のみについて加工してもよいが、治具を用いて多数の本発明のコイル積層体4を一度に加熱プレス成形すれば、ボイスコイル4の製造コストを低減することができる。
【0053】
最初に、コイルパターン5pが形成された耐熱性フィルム5xからなる8層のコイル層5a〜5hと、同じくポリエーテルエーテルケトンからなる最上面のコイル層5aならびに最下層のコイル層5hを保護するためのフィルム2層とを、コイルパターン5pと始点5s1および終点5s2が所定の位置からずれないようにして治具で規制して積層する。そして、これを加熱プレス成形するプレス成形機にセットして、圧力50kg/cmのプレス条件下で、約30℃から約220℃まで約25分で上昇する温度勾配を与える。その結果、ポリエーテルエーテルケトンは、相互に熱融着により接着する。ポリエーテルエーテルケトンは、軟化点が約180℃〜210℃であるので、コイル積層体4bを形成する積層されたコイル層ならびに保護のフィルム層は、融着されて一体化される。
【0054】
次に、加熱プレス成形のプレス圧力条件をそのまま一定に保ち、かつ、加熱してさらに温度を約255℃まで上昇させ、温度を約255℃に保ったまま約30分から約40分程度の時間に渡ってプレス成形する。ポリエーテルエーテルケトンの耐熱性フィルム5xは、結晶化して硬化し、剛性及び耐熱性が向上し、一体化したコイル積層体4bが形成される。また、ボイスコイル4のコイル積層体4bは、治具で規制されて積層されるので、コイルパターン5pと各スルーホール5sが所定の位置からずれることはない。
【0055】
最後に、結晶化の工程が終了すると、加熱プレス成形の温度を100℃まで約10分程度の時間で低下させる熱勾配を与え、100℃以下になれば加熱プレス成形の圧力を開放して、プレス成形機からコイル積層体4bを取り出す。コイル積層体4bの厚みは約0.6mmであり、ボイスコイル4の全高は、コイル支持部材4aとコイル積層体4bの高さを合わせて約5.6mmになる。
【0056】
次に、コイル積層体4bの積層された複数のコイルパターン5pのうち、積層された2つのコイルパターン5pのそれぞれの始点もしくは終点に形成されたスルーホール5sを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、8層のコイルパターンが直列接続されるボイスコイルを形成する。すなわち、9つの所定の位置に直径0.3mmのスルーホールを開口して、銅メッキをして各層のコイルパターン5pを直列接続したコイルを形成する。
【0057】
次の工程では、コイル積層体4bをトラック形の環形状に形成する。具体的には、内径および外径をプレスにより打ち抜いて、コイルを含むトラック形に成形する。したがって、ボイスコイル4は、コイルパターン5pの形状に合わせたトラック形であって、長径方向に平行な二辺の直線部4dと、直線部4dの長径側端部を連結する円弧部4eと、を備え、コイルパターン5pの内径側に磁気回路10のセンターポール12を収容する内孔4cを有するようにプレス加工される。そして、コイル積層体4bは、コイル支持部材4aと接着剤で接着されて、トラック形のボイスコイル4を形成する。なお、コイル積層体4bとコイル支持部材4aとは、接着剤の代わりに、エポキシプリプレグシートを用いて連結してもよい。
【0058】
また、上記の製造工程では、コイル積層体4bのみについて、ポリエーテルエーテルケトンの耐熱性フィルム5xを熱融着ならびに結晶化して積層体を形成しているが、コイル支持部材4aとコイル積層体4bとを、加熱プレス成形の工程で一体化させてもよい。つまり、コイル積層体4bとコイル支持部材4aとを、あらためて加熱プレス成形して、ポリエーテルエーテルケトンを熱融着ならびに結晶化することにより、これらを連結してボイスコイル4を形成してもよい。
【0059】
また、本実施例の場合には、コイル支持部材4aとコイル積層体4bとが、それぞれポリエーテルエーテルケトンを含んでいるので、コイル積層体4bを形成する加熱プレス成形の工程で、ポリエーテルエーテルケトンが熱融着ならびに結晶化する結果、コイル支持部材4aとコイル積層体4bとが連結されて一体化されたボイスコイル4を形成してもよい。その場合には、コイル積層体4bとコイル支持部材4aとを、加熱プレス成形して、ポリエーテルエーテルケトンを熱融着ならびに結晶化して連結する工程の後に、積層された複数のコイルパターン5pのうち、積層された2つのコイルパターン5pのそれぞれの始点5s1もしくは終点5s2に形成されたスルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数のコイルパターン5pが直列接続されるコイルを形成する。そして、連結されたコイル積層体4bとコイル支持部材4aとを、トラック形の環形状に形成し、内径の内側に内孔4cを形成すればよい。
【0060】
本実施例の場合には、コイルパターン5pを形成する銅と、耐熱性フィルム5xを構成するポリエーテルエーテルケトンとが、互いに線膨張係数が近い値の材料である。銅の線膨張係数が約17.8ppm/℃であるのに対し、ポリエーテルエーテルケトンの線膨張係数は約15ppm/℃である。したがって、コイル積層体4bのコイルパターン5pの銅が発熱しても、膨張率の差異によって耐熱性フィルム5xが各層間で剥離する、コイル積層体4bの変形が生じる、等の問題が発生しにくい。なお、先の実施例の場合では、耐熱性フィルム5xを構成するポリイミドの線膨張係数は、約40ppm/℃であり、耐熱性フィルム5xを接着するエポキシプリプレグシートの線膨張係数は、約29ppm/℃である。本実施例の場合には、コイル支持部材4aも同じポリエーテルエーテルケトンであるので、成形したトラック形状が変形することも少なく、品質の安定したボイスコイル4、ならびに、動電型スピーカー1を実現することができる。
【0061】
また、本実施例の場合には、コイル積層体4bを製造する時間を、先の実施例の場合の約2時間に比べて、約80分に短縮することができる。特に、コイル支持部材4aとコイル積層体4bとを、一つの加熱プレス成形の工程で一体化するようにすれば、後の工程でコイル支持部材4aとコイル積層体4bとを連結させる接着剤を乾燥させる時間が不要になり、製造コストを低減することができる。また、先の実施例では、エポキシプリプレグシートの熱硬化が進んでいる工程では、各コイル層が動きやすいので、コイル積層体4bの取扱に注意を要する一方で、本実施例では、耐熱性フィルム5xを構成するポリエーテルエーテルケトンが熱融着ならびに結晶化するので、コイル積層体4bを形成する過程で各コイル層のずれが生じにくいという利点がある。
【0062】
また、本実施例では、耐熱性フィルム5xを構成するポリエーテルエーテルケトンが熱融着ならびに結晶化するので、耐熱性フィルム5xの耐熱性がさらに向上する。耐熱性フィルム5xが結晶化していないポリエーテルエーテルケトンの場合に比べて、ボイスコイル4が許容できる温度上昇が大きくなり、その結果、動電型スピーカー1が大きな音圧レベルを再生するような場合に、大きな電流がコイルパターン5pに流れ、コイルパターン5pの直流抵抗に伴ってコイルパターン5pが発熱したとしても、コイル積層体4bが変形する、または、コイル層間で剥離するといった動作不良が生じにくい。特に、接着剤、ないし、エポキシプリプレグシートを用いずにコイル支持部材4aとコイル積層体4bとを連結する場合には、トラック形のような寸法精度の高さが要求される場合であっても、磁気回路10の磁気空隙13aおよび13bにおいて、接触することなく良好に振動するボイスコイル4を実現することができる。
【実施例3】
【0063】
図6は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー21を説明する断面図である。動電型スピーカー21は、正面視した場合に円形となるスピーカー振動板22と、円筒状のボイスコイル24とを備えるので、図6では、中心線から軸対称な左半分を省略して図示している。なお、動電型スピーカー21の一部の構造や、内部構造等は、省略している。また、先の実施例の動電型スピーカー1と共通する部分については、重複する説明を省略する。
【0064】
本実施例の動電型スピーカー21は、口径が約130mmの円形のスピーカー振動板22を有する動電型スピーカーである。スピーカー振動板22は、基材が繊維からなる織布もしくは不織布を含み、この基材に熱硬化性樹脂が含浸されて成形されるドーム振動板である。スピーカー振動板22は、エッジ23によってその外周端を支持されており、エッジ23の外周端はフレーム26に固定されている。また、スピーカー振動板22の中央部の背面側には、ボイスコイル24の一端側が連結されており、ボイスコイル24は、ダンパー29によって磁気回路30の円形の磁気空隙33に振動可能に配置される。また、フレーム26は、スピーカー振動板22に対応したバスケット状であり、磁気回路30は、フレーム26に固定される。
【0065】
磁気回路30は、円環状のトッププレート31と、センターポール32を含むポール34と、外磁型磁気回路を構成する主マグネット35と、ポール34の背面側に連結するキャンセルマグネット37と、防磁カバー38と、から構成される。トッププレート31およびセンターポール32は、均等な幅を有する円形の磁気空隙33を形成する。本実施例の場合には、磁気空隙33の直径は、内側で約18.95mm、外側で約20.80mm、トッププレート31aの厚みは4.5mm、である。
【0066】
図7は、動電型スピーカー21を構成するボイスコイル24を説明する斜視図である。ボイスコイル24は、コイル支持部材24aと、コイル積層体24bと、からなり、磁気回路30の円形の磁気空隙33に対応する円筒形に形成されて、その結果、内径側に内孔24cを有している。コイル支持部材24aと、コイル積層体24bとは、それぞれを形成した後に接着剤で接着されて連結されている。本実施例の場合には、ボイスコイル24は、内径が約19.35mm、外径が約20.31mm、全高が約19.8mmであり、その厚みは約0.48mmである。コイル支持部材24aの一方端には切欠部24dおよび24eが設けられており、ここにコイル積層体24bに導通する錦糸線28aおよび28bの一端が、それぞれハンダ付けされて固定されている。
【0067】
コイル積層体24bは、エッチングにより形成される導電性金属のコイルパターンと、コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体であり、外径形状がトラック形でなく円形である点を除いて、先述の実施例2で説明したコイル積層体4bと構成が共通するコイル積層体である。本実施例のコイル積層体24bの場合には、具体的には、8層のコイル層を積層して、積層厚が約0.6mmのコイル積層体が形成されている。各コイル層には、厚さ50μmのポリエーテルエーテルケトンの耐熱性フィルムに銅を含む導電性金属によるコイルパターンが形成されており、スルーホールによって各コイル層のコイルパターンが直列接続されて、合計が約16ターンの円形のコイルが形成される。
【0068】
錦糸線28aおよび28bは、コイル積層体24bが形成するコイルの始点と終点のスルーホールランドに接続している。コイル支持部材24aの切欠部24dおよび24eは、これらのスルーホールランドが露出する位置に設けられており、錦糸線28aおよび28bをハンダ付けできるように形成されている。なお、コイル支持部材24aは、発泡性樹脂であるウレタン、アクリル、PC、PP、等の樹脂を射出成形して形成してもよく、その場合には所定の寸法を有する切欠部24dおよび24eを容易に設けることができる。したがって、コイルの始点と終点のスルーホールランドが、円筒形状のコイルの側面に突出するようなことがないので、磁気回路30の磁気空隙33を狭くして磁束密度を高めても、ボイスコイル24が磁気空隙に接触して異音を生じる等の不具合を、発生しにくくできる。錦糸線28aおよび28bの他端側は、ターミナル27にハンダ付けされて固定される。
【0069】
磁気回路30の磁気空隙33において、高い磁束密度を保つトッププレート31の厚さ約4.5mmに比べて、コイル積層体24bの積層厚の方が薄く、短くなる。したがって、動電型スピーカー21は、ショートボイスの動電型スピーカーとなり、高調波歪が少なく、音声再生能力に優れた動電型スピーカーを実現することができる。動電型スピーカー21は、ボイスコイル24のコイル積層体24bがコイルパターンからなるものであっても、コイル支持部材24aを備えることによって、コイル積層体24bを磁気回路30の磁束密度が高い磁気空隙31の内部に配置できるので、能率が高い再生音質に優れる動電型スピーカーとなる。
【0070】
もちろん、本実施例のボイスコイルは、矩形等の他の異形の磁気空隙に対応した異なる寸法のボイスコイルであっても良い。また、および、これを用いた動電型スピーカーは、円形、ないし、トラック形のスピーカー振動板に限らず、楕円形、長円形、長方形、矩形といった長径寸法と短径寸法との比が大きい細長形の動電型スピーカーであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の動電型スピーカーは、ディスプレイ等の映像・音響機器に内蔵するスピーカーとしてのみならず、音声を再生するスピーカーを内蔵するキャビネットを有するゲーム機、スロットマシン等の遊戯機にも適用が可能である。また、本発明のスピーカー用磁気回路を備える動電型スピーカーは、全幅が狭く、小型・薄型のキャビネットで音声を再生するスピーカーシステムが実現できるので、設置空間が限定される車両用のスピーカーに特に適する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を構成する磁気回路10を説明する斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を構成するボイスコイル4を説明する図である。(実施例1)
【図4】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1を構成するボイスコイル4を説明する図である。(実施例1)
【図5】本発明の他の好ましい実施形態によるボイスコイル4のコイル積層体4を製造する工程を説明するグラフである。(実施例2)
【図6】本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー21を説明する図である。(実施例3)
【図7】本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー21を構成するボイスコイル24を説明する図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0073】
1、21 動電型スピーカー
2、22 スピーカー振動板
3、23 エッジ
4、24 ボイスコイル
4a、24a コイル支持部材
4b、24b コイル積層体
5 コイル層
5x 耐熱性フィルム
5p コイルパターン
6、26 フレーム
7、27 ターミナル
8、28 錦糸線
29 ダンパー
10、30 磁気回路
11a、11b、31 トッププレート
12、32 センターポール
13a、13b、33 磁気空隙
14、34 ポール
15a、15b、35 主マグネット
37 キャンセルマグネット
38 防磁カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングにより形成される導電性金属のコイルパターンと、該コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、該コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を備えるボイスコイルであって、
該コイル積層体の積層された複数の該コイルパターンが、それぞれ所定の位置に規定される複数のスルーホールランドを有し、積層された2つの該コイルパターンが、それぞれの始点もしくは終点に形成された該スルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数の該コイルパターンが直列接続するボイスコイルを形成するとともに、
該コイル積層体が、該コイルパターンと略同形状の環状形に形成されて、かつ、該コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有し、
該コイル支持部材が、該コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する該環状形に形成される、
ボイスコイル。
【請求項2】
前記コイル積層体を構成する前記耐熱性フィルムが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、のいずれかを含み、
複数の該耐熱性フィルムが、フィルム層間に塗布される接着剤が硬化する、もしくは、フィルム層間に配置されるエポキシプリプレグシートが熱硬化することにより積層され、該コイル積層体が形成される、
請求項1に記載のボイスコイル。
【請求項3】
前記コイルパターンを形成する前記導電性金属が、銅を含み、前記コイル積層体を構成する前記耐熱性フィルムが、ポリエーテルエーテルケトンを含み、
複数の該ポリエーテルエーテルケトンのフィルムが、熱融着ならびに結晶化することにより積層され、該コイル積層体が形成される、
請求項1に記載のボイスコイル。
【請求項4】
前記コイル支持部材が、ポリエーテルエーテルケトンを含み、前記コイル積層体と該コイル支持部材とが、該ポリエーテルエーテルケトンが熱融着ならびに結晶化することにより連結する、
請求項3に記載のボイスコイル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の前記ボイスコイルと、
該ボイスコイルの前記コイル積層体が配置され、かつ、該コイル積層体の前記内孔に収容される前記ポールにより規定される磁気空隙を有する磁気回路と、
該ボイスコイルの前記コイル支持部材が連結するスピーカー振動板と、
を備える、
動電型スピーカー。
【請求項6】
前記磁気回路が、平行する二辺の直線部を含む前記磁気空隙を有し、
前記環状形の前記ボイスコイルが、平行な二辺の該直線部を含むトラック形状を有し、
前記スピーカー振動板が、平行する二辺の該直線部に沿った長径方向と、該長径方向と直角な短径方向とを有する細長形である、
請求項5に記載の動電型スピーカー。
【請求項7】
導電性金属のコイルパターンと、該コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、該コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を含むボイスコイルの製造方法であって、
該耐熱性フィルムが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、のいずれかを含む場合に、複数の該耐熱性フィルムを、フィルム層間に塗布される接着剤を硬化する、もしくは、フィルム層間に配置されるエポキシプリプレグシートを熱硬化することにより積層し、該コイル積層体を形成する工程と、
積層された複数の該コイルパターンのうち、積層された2つの該コイルパターンのそれぞれの始点もしくは終点に形成された該スルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数の該コイルパターンが直列接続されるコイルを形成する工程と、
該コイル積層体を、該コイルパターンと略同形状の環状形に形成し、かつ、該コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有するように形成する工程と、
該コイル支持部材を、該コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する該環状形に形成する工程と、
該コイル積層体と該コイル支持部材とを、接着剤で接着する、もしくは、エポキシプリプレグシートを熱硬化して、連結する工程と、
を含む、ボイスコイルの製造方法。
【請求項8】
導電性金属のコイルパターンと、該コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、該コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を含むボイスコイルの製造方法であって、
該コイルパターンを形成する該導電性金属が銅を含み、該耐熱性フィルムがポリエーテルエーテルケトンを含む場合に、複数の該耐熱性フィルムを加熱プレス成形して、熱融着ならびに結晶化することにより積層し、該コイル積層体を形成する工程と、
積層された複数の該コイルパターンのうち、積層された2つの該コイルパターンのそれぞれの始点もしくは終点に形成された該スルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数の該コイルパターンが直列接続されるコイルを形成する工程と、
該コイル積層体を、該コイルパターンと略同形状の環状形に形成し、かつ、該コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有するように形成する工程と、
該コイル支持部材を、該コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する該環状形に形成する工程と、
該コイル積層体と該コイル支持部材とを、接着剤で接着する、もしくは、エポキシプリプレグシートを熱硬化して、連結する工程と、
を含む、ボイスコイルの製造方法。
【請求項9】
導電性金属のコイルパターンと、該コイルパターンが貼り合わされる耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、該コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するコイル支持部材と、を含むボイスコイルの製造方法であって、
該コイルパターンを形成する該導電性金属が銅を含み、該耐熱性フィルムがポリエーテルエーテルケトンを含む場合に、複数の該耐熱性フィルムを加熱プレス成形して、熱融着ならびに結晶化することにより積層し、該コイル積層体を形成する工程と、
積層された複数の該コイルパターンのうち、積層された2つの該コイルパターンのそれぞれの始点もしくは終点に形成された該スルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数の該コイルパターンが直列接続されるコイルを形成する工程と、
該コイル積層体を、該コイルパターンと略同形状の環状形に形成し、かつ、該コイルパターンの内径側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を有するように形成する工程と、
ポリエーテルエーテルケトンを含む該コイル支持部材を、該コイル積層体と略同形状の内径および外径を有する該環状形に形成する工程と、
該コイル積層体と該コイル支持部材とを、加熱プレス成形して、該ポリエーテルエーテルケトンを熱融着ならびに結晶化して連結する工程と、
を含む、ボイスコイルの製造方法。
【請求項10】
銅を含む導電性金属のコイルパターンと、ポリエーテルエーテルケトンを含む耐熱性フィルムと、を複数積層させたコイル積層体と、該コイル積層体を磁気回路の磁気空隙に配置するポリエーテルエーテルケトンを含むコイル支持部材と、を含むボイスコイルの製造方法であって、
該コイル積層体と該コイル支持部材とを、加熱プレス成形して、該ポリエーテルエーテルケトンを熱融着ならびに結晶化して連結する工程と、
積層された複数の該コイルパターンのうち、積層された2つの該コイルパターンのそれぞれの始点もしくは終点に形成された該スルーホールランドを銅メッキまたは銀メッキすることにより導通し、複数の該コイルパターンが直列接続されるコイルを形成する工程と、
該連結された該コイル積層体と該コイル支持部材とを、環形状に形成し、内径の内側に磁気回路の磁気空隙を規定するポールを収容する内孔を形成する工程と、
を含む、ボイスコイルの製造方法。


【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−232049(P2009−232049A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73549(P2008−73549)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】