ボイラ
【課題】火炉空間を有効利用できると共に、局部的に熱負荷が高くなることを防止して、水壁管やバーナ構成部材等の損傷を抑制できるボイラの提供である。
【解決手段】水平断面が方形状の火炉3と、該火炉3の各壁面2a〜2dに上下方向に複数段設置されたバーナ1とを備えたボイラにおいて、各壁面2a〜2dに設置されるバーナ1の全てを各壁面2a〜2dの幅方向中心位置(C1,C2など)よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、各壁面2a〜2dにおけるバーナ1の分布が上段のバーナ1は比較的壁面の側端部側で、下段のバーナ1は比較的壁面の幅方向中心位置側になるように配置する。火炉3上方に比べて輻射強度の弱い火炉3下方のバーナ1の輻射強度を強めることができ、火炉3下方の未燃燃料を燃焼域が広い火炉3上方のバーナ1で燃焼できる。そして、火炉3内に未燃領域や熱負荷の高い部分の発生を防止できる。
【解決手段】水平断面が方形状の火炉3と、該火炉3の各壁面2a〜2dに上下方向に複数段設置されたバーナ1とを備えたボイラにおいて、各壁面2a〜2dに設置されるバーナ1の全てを各壁面2a〜2dの幅方向中心位置(C1,C2など)よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、各壁面2a〜2dにおけるバーナ1の分布が上段のバーナ1は比較的壁面の側端部側で、下段のバーナ1は比較的壁面の幅方向中心位置側になるように配置する。火炉3上方に比べて輻射強度の弱い火炉3下方のバーナ1の輻射強度を強めることができ、火炉3下方の未燃燃料を燃焼域が広い火炉3上方のバーナ1で燃焼できる。そして、火炉3内に未燃領域や熱負荷の高い部分の発生を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電用のボイラに係り、特に火炉の空間を燃焼に有効利用できるようなバーナの配置を有するボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の火力発電用のボイラとしては、水平断面が方形状(角部が短い辺となっている多角形状のものを含む。以下同様)の火炉壁を有するものが知られており、火力発電用のボイラの主なバーナ配置と燃焼に関する形式として、以下の2つの形式が広く用いられている。
【0003】
一つは、火炉壁の対向する2つの面にそれぞれバーナを配置して、両面のバーナからの火炎が火炉の中央側で互いに向い合う、例えば対向燃焼式と呼ばれるボイラである。一例として、下記特許文献1には、対向する2つの面のエアポート段の相対するバーナ群を、軸心をずらせて配設する燃焼装置が開示されており、相対するバーナの軸心をずらすことで、バーナの火炎を対向壁に到達させて熱伝達率を向上させている。
【0004】
もう一つは、1以上の火炉壁、典型的には前後左右の4つの火炉壁もしくは角部のそれぞれにバーナを配置し、各バーナからの火炎が火炉中央の空間部の仮想円まわりに向けて延び、一方向に旋回するファイアーボールが形成される、例えば旋回燃焼式又はタンジェンシャル燃焼式と呼ばれるボイラである。なお、ファイアーボールとは、火炉内に形成される球状火炎の総称である。
【0005】
例として、下記特許文献2から特許文献4がある。
特許文献2には、各壁面にバーナが配置され、各バーナの噴出方向軸線を、平面視において、火炉内壁面の端部から、該バーナが配設された火炉内壁幅の一辺の長さの25%未満の距離に配置するようにした燃焼装置が開示されている。バーナをコーナ部から火炉壁面に配置することで、四隅に器材が密集することを防止して、且つ炉内の空間の有効利用を図っている。
【0006】
また、特許文献3には、微粉炭混合気ノズル内に濃淡分離体を配設して、仮想円の周囲に微粉炭火炎が形成するファイアボルテックス(ファイアーボール)中心側に吹き込む量を多く、ファイアボルテックス外周側に吹き込む量を淡くすることで、微粉炭火炎の火炉内壁面への衝突を防いでスラッギングを低減し、バーナの大容量化を可能とした微粉炭バーナが開示されている。
【0007】
更に、特許文献4には、旋回燃焼式のバーナユニットを二つ以上備えた蒸気発生装置において、隣接するバーナユニットの間に対向燃焼式のバーナを備える蒸気発生装置が開示されている。対向燃焼式のバーナを隣接するバーナユニットの間に備えることで、隣接する水冷壁での放散熱量や吸収熱量を均一化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−195704号公報
【特許文献2】特開平11−141806号公報
【特許文献3】特開平10−213309号公報
【特許文献4】特開平8−178203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらのボイラを大型化する場合、それにあわせてバーナ1個あたりの容量(出力)を増大させ、火炉に開口するバーナの径を大きくすると、以下のような問題が生じうる。
【0010】
図11には、対向燃焼式ボイラの火炉の水平断面図の一例を示す。
図11に示すように、このボイラの火炉炉壁2のうち、火炉前壁13および火炉後壁14には、燃料を火炉3内に投入して燃焼を行うバーナ1が、火炉の幅方向に複数列、上下方向に複数段、設置されている。
【0011】
ボイラの大型化に伴い、隣接するバーナ同士の間隔が拡がるので、図11に示すように燃焼に未使用の未燃領域5の範囲が大きくなって、無駄なスペースが生じ、火炉3内の空間が有効に利用されない。
【0012】
そして、バーナ1の個々の火炎4が大きくなるため、火炉3内の熱負荷に偏差が生じた場合に、各バーナ1における出力調整、すなわち熱負荷の調整がしにくい。したがって、局部的に熱負荷が高い部分が発生しやすく、火炉壁面に設置された水壁管を傷める可能性が高まる。上記特許文献1記載の構成のように、相対するバーナ群を、軸心をずらせて配設しても、ボイラの大型化に伴う未燃領域の拡大や熱負荷の調整等の問題は解消されない。
【0013】
一方、前述の旋回燃焼式ボイラでは、旋回流を発生させるため、バーナはある程度、火炉炉壁の局部に密集した配置となることが多い。このため、火炉壁面に水壁管が存在せず、水壁管から離れた局部的に熱負荷が高い領域が広くなりやすく、バーナの構成部材等を傷める可能性が高まる。上記特許文献2記載の構成のように、バーナをコーナ部から火炉壁面に配置すれば、四隅に器材が密集することを防止できるものの、あまり有効な解決策とは言えない。
【0014】
火炉炉壁に設置される熱吸収を行うための水壁管は、火炉壁面中のバーナの設置部位を避けるようにバーナ周辺で曲げられて配置されるが、火炉に開口するバーナの径が大きくなったり、密集した配置となったりすると、バーナを避けるための水壁管の加工数が増加し、製作コストの増大、対象部位の耐久性への影響等が懸念される。上記特許文献3記載の構成によってはバーナの大容量化が可能となるが、バーナの容量を大きくすると、上記問題が生じる。
【0015】
特に水壁管全体を流れる流体の熱吸収を均一化するために採用されることが多い、スパイラル水壁管を有するボイラでは、この問題が顕著となる。すなわち、火炉の上下方向に連続して配置されるバーナの領域が大きくなると、これを迂回しなければならない水壁管の本数が多くなるので、加工数の増加や対象部位の耐久性への影響が大きい。そして、水壁管を曲げる範囲が大きくなり、曲げ部の熱に対する強度が低下してリークが発生しやすくなる等の問題も生じうる。
【0016】
したがって、旋回燃焼式ボイラでは、スパイラル水壁管に対して、水壁管全体を流れる流体の熱吸収に偏差が生じやすい垂直水壁管(鉛直方向に流体が流れる水壁管)が採用される場合が多い。
【0017】
一方、バーナ1個あたりの容量(出力)を大きくせずに、その設置数を増やすと(例えば上記特許文献4に記載の構成)、設備コストが増加する。また、局部的にバーナの配置を密集させると、近接するバーナ間の熱負荷が増大するために水壁管を傷める可能性が高まる。
【0018】
本発明の課題は、火炉空間を有効利用できると共に、局部的に熱負荷が高くなることを防止して、水壁管やバーナ構成部材等の損傷を抑制できるボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の課題は、ボイラの火炉壁に設置するバーナを適度に分散させて配置し、火炉全体としては、旋回燃焼が可能となるように構成したボイラによって解決される。具体的に本発明の課題は、次の手段により解決することができる。
【0020】
請求項1記載の発明は、水平断面が方形状の炉壁から形成される火炉と、該火炉の炉壁の各壁面に上下方向に複数段設置されたバーナとを備えたボイラにおいて、各壁面に設置されるバーナ全てを各壁面の幅方向中心位置よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、各壁面におけるバーナの分布が上段のバーナは比較的壁面の側端部側であって、下段のバーナは比較的壁面の前記幅方向中心位置側になるように配置するボイラである。
【0021】
請求項2記載の発明は、上下方向に最も低い位置に配置されるバーナから最も高い位置に配置されるバーナまで、順にj=1、2、…、nとし、各バーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をL1、L2、…、Lnとし、任意のx番目のバーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をLxとしたとき、x=nの場合を除いてL1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さい関係となるように配置する請求項1記載のボイラである。
なお、方形状とは、角部が短い辺となっている多角形状のものを含む意である。
【0022】
(作用)
以下の説明は、燃料として石炭を粉砕した微粉炭を用いるボイラを前提にしているが、本発明の対象とするボイラは、植物(例えば、木材チップ等のバイオマス)や廃棄物由来の固体燃料、液体燃料、気体燃料など燃料の種類は石炭に限らず、それらのうち、複数種を混焼させるボイラであっても良い。また、これらの燃料を同時に燃焼させても良いし、切り替えて燃焼させても良い。
【0023】
図2には、水平断面が方形状の火炉の各壁面(同一水平断面上)にバーナを一つずつ設置して、その設置位置と輻射強度との関係を示す。すなわち、四方の火炉壁面に一つずつバーナを設置した時の火炉壁近傍の輻射強度を比較したものである。また、図3には、火炉壁における輻射強度の測定位置(火炉壁近傍の斜線部S付近)を示す。
【0024】
図2の横軸の炉壁方向距離とは、炉壁の幅方向の距離のことであり、例えば、図3に示すように、火炉の正面視で図中の0は炉壁前面の左端部、1.0は炉壁前面の右端部に相当する。そして、図2の実線は各バーナを火炉炉壁の中心部(幅方向中心位置)に設置した場合を示し、点線は各バーナを火炉炉壁の側端部(角部)に設置した場合を示す。
【0025】
旋回燃焼では、図2に示すように、バーナ1を火炉炉壁2の中心部(幅方向中心位置)に近づけて設置するほど、炉壁幅方向の距離に関わらず、どの箇所でも輻射強度が強く着火しやすい状態にあることが分かる。火炉上方のバーナ1は、火炉下方のバーナ1による燃焼によって火炎4及び熱風が上昇することにより輻射強度が強くなる。
【0026】
しかし、火炉下方のバーナ1はこのような燃焼による輻射の影響を受けにくい。火炉下方のバーナ1は、その下にある水冷ホッパのために火炎4からの輻射熱が奪われ、冷却される傾向にある。
【0027】
そこで、バーナの着火を促進させるためには火炉下方に設置するバーナを火炉炉壁の中心部に近づけて設置し、輻射強度を強めることが望ましい。
また、火炉上方に設置するバーナは火炉炉壁の角部に近づけて設置する。火炉炉壁の角部に近づけてバーナを設置して、燃料を噴射、燃焼させた場合、火炉の内部に形成されるファイアーボールの径が大きくなる。
【0028】
したがって、火炉上方に設置されたバーナ部分の同一水平断面上における燃焼域が拡大されることにより、火炉下方に設置されたバーナの燃焼によって発生した未燃燃料を捕捉し、燃焼させることが可能となる。
【0029】
そして、本発明によれば、火炉炉壁の四面に火炉上部から下部に向かって火炉炉壁の側端部側から火炉の中心方向へバーナを複数段設置し、各段の水平断面上の複数のバーナ(例えば、4つ)で旋回燃焼を行うことにより、火炉内にファイアーボールを形成する。
この上段から下段に向けてのバーナの配置に関しては、全ての壁面において幅方向中心位置からの左右が同じ側の面に角部から中心部にかけて配置すると、各段のバーナは全ての壁面にバランス良く配置されるため、各段のバーナ部の水平断面上におけるファイアーボールは比較的均整の取れたきれいな球状を形成できる。
このファイアーボールは火炉炉壁から火炉中心部の間で広範囲に形成することが可能であるため、火炉内に未燃領域や熱負荷の高い部分が生じることを防止できる。
【0030】
以上のことから、請求項1記載の発明によれば、各壁面に設置されるバーナ全てを各壁面の幅方向中心位置よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、各壁面におけるバーナの分布が上段のバーナは比較的壁面の側端部側であって、下段のバーナは比較的壁面の幅方向中心位置側になるように配置することで、火炉下方の輻射強度を強めることができると共に、未燃燃料を燃焼させることが可能となり、更に熱負荷の高い部分が生じることを防止できる。
【0031】
例えば、上下方向に最も低い位置に配置されるバーナから最も高い位置に配置されるバーナまで、順にj=1、2、…、nとし、各バーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をL1、L2、…、Lnとし、任意のx番目のバーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をLxとしたとき、x=nの場合を除いて、L1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さい関係となるように配置されると良い。
【0032】
請求項2記載の発明によれば、このような関係となるように各壁面にバーナを配置することによって、複数のバーナが分布する状態では、全体として上段のバーナが比較的壁面の側端部側に、下段のバーナが比較的壁面の幅方向中心位置側になるように配置される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、火炉内の未燃領域が縮小され、火炉内の熱負荷の偏差が低減することによって火炉空間を有効利用できると共に、水壁管やバーナ構成部材等の損傷のリスクを低減できるボイラを提供することができる。具体的には以下の効果を有する。
【0034】
請求項1記載の発明によれば、火炉上方のバーナは比較的壁面の側端部に近く、火炉下方のバーナは比較的壁面の幅方向中心位置に近いため、火炉上方に比べて輻射強度の弱い火炉下方のバーナの輻射強度を強めることができると共に、火炉下方のバーナの燃焼によって発生した未燃燃料を燃焼域が広い火炉上方のバーナによって燃焼させることが可能となる。そして、各段のバーナは全ての壁面にバランス良く配置されるため、火炉内に未燃領域や熱負荷の高い部分が生じることを防止できる。
【0035】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、各壁面のバーナをL1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さい関係となるように配置することで、簡便、且つ確実に、上段のバーナが比較的壁面の側端部側に、下段のバーナが比較的壁面の幅方向中心位置側になるように配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態のボイラの火炉構造を示した図(斜視図)である。
【図2】水平断面が方形状の火炉の各壁面にバーナを一つずつ設置した場合のその設置位置と輻射強度との関係を示した図である。
【図3】図2の火炉壁における輻射強度の測定位置を示した図である。
【図4】図4(a)は、火炉炉壁に設置するバーナの分布を表した図であり、図4(b)は、バーナの本数を6本とした場合の設置例を示した図であり、図4(c)は、バーナの本数を5本とした場合の設置例を示した図である。
【図5】図1のボイラの火炉炉壁の展開図(簡略図)の例である。
【図6】図1中のA−A断面(下段バーナ)におけるバーナの配置例を示した図(水平断面図)である。
【図7】図1中のB−B断面(上段バーナ)におけるバーナの配置例を示した図(水平断面図)である。
【図8】図1中のB−B断面(上段バーナ)におけるバーナの配置例を示した図(水平断面図)である。
【図9】本発明の一実施形態のボイラのバーナの断面図である。
【図10】混合気噴出ノズルと燃焼用空気ノズルを交互に配置した例を示した図である。
【図11】対向燃焼式ボイラのバーナの配置形態の一例を示した図(水平断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0038】
図1には、本発明の一実施形態のボイラの火炉構造を示す。
本実施例は、火炉3と、微粉炭等の燃料と空気の混合気(微粉炭混合気)を火炉3に供給する燃料搬送管6と、燃焼用空気を搬送する燃焼用空気搬送管7と、燃料搬送管6によって搬送される燃料を火炉3内に噴出し、燃焼用空気搬送管7によって搬送される搬送燃焼用空気と燃焼させるバーナ1と、火炉3の内壁に設置され、燃料の燃焼により発生した熱により水を加熱し蒸気を生成する火炉水壁管17,18などから構成される。燃料である微粉化された石炭は、搬送用空気と混合され微粉炭混合気を形成し、燃料搬送管6を通してバーナ1の本体に設けられた混合気噴出ノズル11(図9)に搬送され、火炉3内へ噴出する。
【0039】
火炉3の水壁管17,18の構成は、上方で水平断面積が縮小するノーズ部20付近より下方のバーナ等が配置される領域では、内部流体が下部から上部に向かってらせん状に上昇するスパイラル水壁管17になっている。そして、ノーズ部20付近よりも上方では、内部流体が下部から上部に向かって垂直(鉛直方向)に上昇する垂直水壁管18になっている。
【0040】
なお、図1はボイラの概略構成の一例を示すものであり、ノーズ部20の有無、水壁管の配置、スパイラル水壁管17と垂直水壁管18などの水壁管の種類やその範囲については、本実施例に限定されるものではない。
【0041】
図9には、図1のボイラのバーナの流路断面構造の例を示す。本実施例では、混合気噴出ノズル11の外周に燃焼用空気ノズル12が設けられており、押し込みファン(図示せず)等から搬送されてきた燃焼用空気を燃焼用空気ノズル12から火炉3内へ投入する。
【0042】
図1のスパイラル水壁管17の巻き方向は、ボイラの上側から見て時計回りに内部流体が上昇するような例を示しているが、同様のバーナの配置に対して巻き方向が逆、すなわちボイラ上側から見て反時計回りに内部流体が上昇するようにしても良い。
【0043】
なお、バーナ1の流路断面構造は本実施例に限定されるものではなく、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12とが別々に独立して配置されるものであっても良い。
例えば、スパイラル水壁管17の長手方向に沿って、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12とが交互に配置されるものが挙げられる。図10には、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12を交互に配置した例を示す。
【0044】
図10(a)には、ボイラの火炉構造(斜視図)を示し、図10(b)には、図10(a)のD部の拡大図を示す。なお、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12は各水平断面上で一対設けても良いし、複数対設けても良い。
【0045】
図10(a)及び(b)に示す形態の混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12を設置する場合、それらの配列がスパイラル水壁管17の長手方向に沿う方向になっていることが望ましい。したがって、図10(b)に示された右上がりのノズルの配置の場合は、スパイラル水壁管17の傾斜が図1に示されているものとは逆の右上がりの形態とすることが望ましい。
【0046】
そして、このような形態であれば、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12の開口径がそれぞれ小さくなるので、これらのノズルを迂回するスパイラル水壁管17の本数が少なく、曲げ加工の量も小さくできるので、製作コストの増大を招きにくい。また、スパイラル水壁管17の曲げ加工に伴い対象部位の耐久性が低下する可能性も低減でき、本実施例のバーナ配置との組合せにより、その効果が一層大きくなる。
【0047】
ここで、バーナ1の距離に関して、各バーナ1の各壁面2a〜2dの幅方向中心(中心線C1、中心線C2)からの距離は、混合気噴出ノズル11の中心軸を基準とする。
火炉3に設置されるバーナ1は火炉炉壁2の各壁面(四面)2a〜2dに上下方向に複数段設置される。火炉3の上方に設置するバーナ1は火炉炉壁2の側端部側に設置する。また、コーナ(角部)16に設置しても良い。
【0048】
一方、火炉3の下方に設置するバーナ1は図1中の中心線C1及び中心線C2で示される火炉炉壁2の幅方向中心位置に近づけて配置し、より下方に設置するバーナ1ほど中心線C1及び中心線C2に近づけて配置する。
【0049】
本実施例では、各段のバーナ部の水平断面上には、四面に各1個ずつの計4個のバーナ1を設置しているが、必ずしも各壁面1個のみに限定されるものではなく、複数個のバーナ1を設置しても良い。
【0050】
基本的にバーナ1を適度に分散させて配置し、火炉3の全体としては、旋回燃焼が可能に構成できれば良いため、4つの壁面2a〜2dに設置される複数のバーナ1の全てが各壁面の幅方向中心位置よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、上段のバーナ1は比較的火炉炉壁2の側端部側に配置し、下段のバーナ1は比較的壁面の幅方向中心位置側に配置する。そして、以下の条件(1)〜(3)を満たすように配置すると良い。
【0051】
(1) 火炉炉壁2に設置される複数のバーナ1全てを各壁面2a〜2dの幅方向中心位置(中心線C1、中心線C2など)よりも左右いずれかの側に配置する。
(2)(1)に関し、各壁面2a〜2dに設置されるバーナは、全ての壁面において中心線C1(又は中心線C2など)からの左右が同じ側に配置する。
(3)各壁面2a〜2dに設置されるバーナ1の本数をnとし、
上下方向に最も低い位置(最下段)に配置されるバーナ1から最も高い位置に配置されるバーナ1まで、順にj=1、2、…、nとし、
各バーナ1について、各壁面2a〜2dの幅方向中心位置からの距離をL1、L2、…、Ln(nは段数)とし、
任意のx番目のバーナについて、各壁面2a〜2dの幅方向中心位置からの距離をLxとしたとき、x=nの場合を除いて、L1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さくなるように配置する。
【0052】
図4には、上記(3)の概念図を示す。図4(a)には、火炉炉壁2の壁面2aに設置するバーナ1の分布を表した図を示し、図4(b)には、バーナ1の本数を6本とした場合の設置例を示し、図4(c)には、バーナ1の本数を5本とした場合の設置例を示している。
【0053】
複数のバーナ1が分布する状態では、図4(a)に示すように、全体的に見て上段のバーナ1の領域IIは下段のバーナ1の領域Iよりも火炉炉壁2のコーナ16側に配置され、下段のバーナ1の領域Iは上段のバーナ1の領域IIよりも中心線C1側に配置される。
【0054】
図1では、各壁面2a〜2dに設置される複数のバーナ1を上段から下段に向けて壁面のコーナ16側から中心線C1(又は中心線C2など)の方向へ順次傾斜状に配置しているが、図4(b)や図4(c)に示すように、任意の上段のバーナ1が任意の下段のバーナ1よりも幅方向中心位置(中心線C1)に近い場合があっても良い。すなわち、複数のバーナ1の分布が全体として概ね図4(a)に示されるようになればよい。
【0055】
このようにバーナ1を配置することで、上段のバーナ1と下段のバーナ1の配置関係が全ての壁面において比較的バランスがとれたものとなり、火炉上方と下方に形成されるファイアーボール15が均整の取れたきれいな球状となる。
なお、複数のバーナ1を上段から下段に向けて壁面のコーナ16側から中心線C1(又は中心線C2など)の方向へ順次傾斜状に配置した場合は、例えば図1に示すようにn=5(5段)の時はL5>L4>L3>L2>L1という関係になる。
【0056】
例えば、図5には火炉炉壁2の四面の展開図の例を示すが、図5(a)ではバーナ1を全ての壁面において中心線C1(又は中心線C2など)から右側に配置しており、バーナ1の配置が四面とも全て右上がり傾斜となる。図5(b)ではバーナ1を全ての壁面において中心線C1(又は中心線C2など)から左側に配置しており、バーナ1の配置が四面とも全て右下がり傾斜となる。
【0057】
このように、火炉炉壁2の各壁面2a〜2dにバーナ1を配置することで、各壁面2a〜2dのバーナ1の配置方向が同じとなり、同じ段のバーナ1が全ての壁面にバランス良く配置されるため、各段のバーナ部の水平断面上におけるファイアーボール15が均整の取れたきれいな球状を形成できる。
【0058】
更に、火炉炉壁2の前面2aの炉壁幅をWa、火炉炉壁2の右側面2bの炉壁幅をWbとしたとき、同一水平断面上に設置した特定のバーナ1(火炉炉壁2の各壁面で対応する位置関係にあるバーナ同士)は、下からx段目(xは1以上n以下の整数)のバーナ1の中心線C1(又は中心線C2)からの距離をLxとすると、四面でLx/(Wa/2)及びLx/(Wb/2)が一定となるようにバーナ1を配置することが望ましい。
【0059】
すなわち、更に火炉炉壁2の後面2cの炉壁幅をWc、火炉炉壁2の左側面2dの炉壁幅をWdとし、火炉炉壁2の中心線をそれぞれ中心線C3及び中心線C4としたとき(図5)、Lx/(Wa/2)、Lx/(Wb/2)、Lx/(Wc/2)及びLx/(Wd/2)が一定となるようにバーナ1を配置する。
【0060】
このように火炉炉壁2の各壁面2a〜2dにバーナ1を配置すると、同じ段のバーナ1が全ての壁面にとてもバランス良く配置されるため、各段のバーナ部の水平断面上におけるファイアーボール15がいびつな形状とならず、非常に均整の取れたきれいな球状を形成できる。
【0061】
そして、上述のようにバーナ1を火炉炉壁2に設置し、バーナ1から燃料および燃焼用空気を火炉3内に噴出することで、火炉炉壁2の四面(壁面2a〜2d)から噴出されるバーナ1からの火炎4の旋回流が発生し、火炉3内部にファイアーボール15が形成される。
【0062】
火炉3の内部にファイアーボール15を形成する旋回燃焼では、各バーナ1からの燃料等の噴出をファイアーボール15の接線方向になるようにし、火炉3の中心にファイアーボール15の外周に沿った旋回流を発生させて燃料と燃焼用空気の混合を促進し、燃焼性の向上を図っている。
【0063】
また、旋回燃焼では、図2に示すようにバーナ1を火炉炉壁2の中心線C1〜C4に近づけて設置するほど輻射強度が強く着火しやすい状態にある。火炉上方のバーナ1は、火炉下方のバーナ1による燃焼によって火炎4及び熱風が上昇することにより輻射強度が強くなる。しかし、火炉下方のバーナ1はこのような燃焼による輻射の影響を受けにくい。
【0064】
火炉下方のバーナ1は、その下にある水冷ホッパ(図示せず)のために火炎4からの輻射熱が奪われ、冷却される傾向にある。したがって、バーナ1の着火を促進させるためには火炉3の下方に設置するバーナ1を火炉炉壁2の中心線C1〜C4に近づけて設置し、輻射強度を強めることが望ましい。
【0065】
一方、火炉上方に設置するバーナ1は火炉炉壁2のコーナ16に近づけて設置する。火炉炉壁2のコーナ16に近づけてバーナ1を設置し、燃料を噴射、燃焼させた場合、火炉3の内部に形成されるファイアーボール15の径が大きくなる。したがって、火炉3の上方に設置されたバーナ1部分の同一水平断面上における燃焼域が拡大されることにより、火炉3の下方に設置されたバーナ1の燃焼によって発生した未燃燃料を捕捉し、燃焼させることが可能となる。
【0066】
以上のことから、火炉炉壁2に設置されるバーナ1を各壁面2a〜2dの上部から下部に向けてコーナ16から中心線C1〜C4の方向へ配置することで、輻射強度を強めることができると共に、未燃燃料を燃焼させることが可能となる。
【0067】
そして、上段から下段に向けてのバーナ1の配置は、全ての壁面において中心線C1(又は中心線C2など)からの左右が同じ側に配置することで、ファイアーボール15を火炉炉壁2から火炉中心部の間で広範囲に形成することが可能となり、火炉3内に未燃領域が生じることを防止できる。
【0068】
図6には、図1中のA−A断面(下段バーナ)におけるバーナ1の配置例(水平断面図)を示す。
火炉炉壁2の中心線C1〜C4にバーナ1を設置した場合、旋回燃焼により形成されるファイアーボール15の径が小さくなる。したがって、バーナ1からの火炎4が噴出する方向を火炉3の中心方向から側壁方向へ向け、形成されるファイアーボール15の径を拡大することが望ましい。具体的には、図6に示すように火炉炉壁2の平面視の幅方向中心線Ca又は中心線Cbに対して、0°<θ1≦45°となるようにバーナ1を設置すると良い。
【0069】
図7及び図8には、図1中のB−B断面(上段バーナ)におけるバーナ1の配置例を示す。火炉炉壁2のコーナ16にバーナ1を設置した場合、図7に示すようにバーナ1からの火炎4が火炉炉壁2内に設置されたスパイラル水壁管17に接触することにより、スパイラル水壁管17が損傷予測域10で損傷し、リークが発生する恐れがある。したがって、火炉炉壁2のコーナ16に設置したバーナ1は火炉3の中心方向に向けて燃料を噴霧、燃焼させることが望ましい。
【0070】
具体的には、図8に示すように、火炎4の噴出方向が火炉炉壁2に対して0°<θ2≦45°となるように各バーナ1を設置することで、スパイラル水壁管17の損傷を防止できる。
なお、隣接する壁面に設置したバーナ1の火炎4の噴出方向は略直交するように、対向する壁面に設置したバーナ1の火炎4の噴出方向は略平行となるように、各壁面2a〜2dにバーナ1を設置する。
【0071】
微粉炭等の燃料と空気の混合気を火炉3に供給する燃料搬送管6は、燃料である石炭を微粉砕するミル等の粉砕装置(図示せず)と接続される。この粉砕装置がメンテナンス、故障等により停止した場合は、バーナ1への燃料の供給が停止される。本実施例では、同一水平断面上に設置された4個のバーナ1による旋回燃焼によって燃料を燃焼させている。
【0072】
したがって、同一水平断面上にあるバーナ1に別々の粉砕装置から燃料を供給するように接続した場合、一部の粉砕装置がメンテナンス、故障等により停止すると4個のバーナ1のうち、一部のバーナ1の燃焼が停止されるため、同一水平断面上に設置された4個のバーナ1の全てで燃焼が行われなくなり、ファイアーボール15の形成が失われる。したがって、旋回燃焼によるファイアーボール15の形成を維持するためには、同一水平断面上にあるバーナ1には同じ粉砕装置から燃料が供給されることが望ましい。
【0073】
同一水平断面上にあるバーナ1に同じ粉砕装置から燃料を供給することで、ボイラの火炉3が大型化してもボイラの火炉炉壁2に設置するバーナ1を適度に分散させて配置し、火炉3全体としては、旋回燃焼が可能となるので、燃焼に未使用の未燃領域の範囲が大きくならず、火炉3の空間が無駄なく燃焼に有効利用できる。
【0074】
また、バーナ1が火炉炉壁2の局部に密集しないので、壁面に水壁管17,18が存在しない領域を小さくでき、水壁管17,18から離れた局部的に熱負荷の高い領域が生じない。したがって、バーナ1の構成部材等が損傷する可能性が低い。
【0075】
更に、バーナ1を避けるための水壁管17,18の加工数も少なく、製作コストを抑制でき、対象部位の耐久性への影響等も小さい。
特にスパイラル水壁管17を有するボイラでは、スパイラル水壁管17を曲げる範囲が小さくて済み、曲げ部の熱に対する強度の低下も生じにくく、水壁管17,18全体を流れる流体の熱吸収を均一化させることができる。
【0076】
また、バーナ1に大容量バーナではなく小容量バーナを設置すると、各バーナ1における出力調整、すなわち熱負荷の調整がしやすくなり、局部的に熱負荷が高い部分が発生することを防止できる。
さらに、小容量バーナは大容量バーナに比べてバーナ径が小さいため、バーナ1を避けるための水壁管17,18の加工数を低減することができ、急な角度で水壁管17,18を曲げる必要もなくなるため、曲げ部の熱に対する強度の低下を防止し、リークの発生を防ぐことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、火力発電用のボイラに限らず、特に火炉空間を燃焼に有効利用できるようなバーナ配置を有するボイラにおいても利用可能性がある。
【符号の説明】
【0078】
1 バーナ 2 火炉炉壁
3 火炉 4 火炎
5 未燃領域 6 燃料搬送管
7 燃焼用空気搬送管 10 火炎による水壁管損傷予測域
11 混合気噴出ノズル 12 燃焼用空気ノズル
13 火炉前壁 14 火炉後壁
15 ファイアーボール 16 火炉炉壁コーナ
17 スパイラル水壁管 18 垂直水壁管
20 ノーズ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電用のボイラに係り、特に火炉の空間を燃焼に有効利用できるようなバーナの配置を有するボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の火力発電用のボイラとしては、水平断面が方形状(角部が短い辺となっている多角形状のものを含む。以下同様)の火炉壁を有するものが知られており、火力発電用のボイラの主なバーナ配置と燃焼に関する形式として、以下の2つの形式が広く用いられている。
【0003】
一つは、火炉壁の対向する2つの面にそれぞれバーナを配置して、両面のバーナからの火炎が火炉の中央側で互いに向い合う、例えば対向燃焼式と呼ばれるボイラである。一例として、下記特許文献1には、対向する2つの面のエアポート段の相対するバーナ群を、軸心をずらせて配設する燃焼装置が開示されており、相対するバーナの軸心をずらすことで、バーナの火炎を対向壁に到達させて熱伝達率を向上させている。
【0004】
もう一つは、1以上の火炉壁、典型的には前後左右の4つの火炉壁もしくは角部のそれぞれにバーナを配置し、各バーナからの火炎が火炉中央の空間部の仮想円まわりに向けて延び、一方向に旋回するファイアーボールが形成される、例えば旋回燃焼式又はタンジェンシャル燃焼式と呼ばれるボイラである。なお、ファイアーボールとは、火炉内に形成される球状火炎の総称である。
【0005】
例として、下記特許文献2から特許文献4がある。
特許文献2には、各壁面にバーナが配置され、各バーナの噴出方向軸線を、平面視において、火炉内壁面の端部から、該バーナが配設された火炉内壁幅の一辺の長さの25%未満の距離に配置するようにした燃焼装置が開示されている。バーナをコーナ部から火炉壁面に配置することで、四隅に器材が密集することを防止して、且つ炉内の空間の有効利用を図っている。
【0006】
また、特許文献3には、微粉炭混合気ノズル内に濃淡分離体を配設して、仮想円の周囲に微粉炭火炎が形成するファイアボルテックス(ファイアーボール)中心側に吹き込む量を多く、ファイアボルテックス外周側に吹き込む量を淡くすることで、微粉炭火炎の火炉内壁面への衝突を防いでスラッギングを低減し、バーナの大容量化を可能とした微粉炭バーナが開示されている。
【0007】
更に、特許文献4には、旋回燃焼式のバーナユニットを二つ以上備えた蒸気発生装置において、隣接するバーナユニットの間に対向燃焼式のバーナを備える蒸気発生装置が開示されている。対向燃焼式のバーナを隣接するバーナユニットの間に備えることで、隣接する水冷壁での放散熱量や吸収熱量を均一化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−195704号公報
【特許文献2】特開平11−141806号公報
【特許文献3】特開平10−213309号公報
【特許文献4】特開平8−178203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらのボイラを大型化する場合、それにあわせてバーナ1個あたりの容量(出力)を増大させ、火炉に開口するバーナの径を大きくすると、以下のような問題が生じうる。
【0010】
図11には、対向燃焼式ボイラの火炉の水平断面図の一例を示す。
図11に示すように、このボイラの火炉炉壁2のうち、火炉前壁13および火炉後壁14には、燃料を火炉3内に投入して燃焼を行うバーナ1が、火炉の幅方向に複数列、上下方向に複数段、設置されている。
【0011】
ボイラの大型化に伴い、隣接するバーナ同士の間隔が拡がるので、図11に示すように燃焼に未使用の未燃領域5の範囲が大きくなって、無駄なスペースが生じ、火炉3内の空間が有効に利用されない。
【0012】
そして、バーナ1の個々の火炎4が大きくなるため、火炉3内の熱負荷に偏差が生じた場合に、各バーナ1における出力調整、すなわち熱負荷の調整がしにくい。したがって、局部的に熱負荷が高い部分が発生しやすく、火炉壁面に設置された水壁管を傷める可能性が高まる。上記特許文献1記載の構成のように、相対するバーナ群を、軸心をずらせて配設しても、ボイラの大型化に伴う未燃領域の拡大や熱負荷の調整等の問題は解消されない。
【0013】
一方、前述の旋回燃焼式ボイラでは、旋回流を発生させるため、バーナはある程度、火炉炉壁の局部に密集した配置となることが多い。このため、火炉壁面に水壁管が存在せず、水壁管から離れた局部的に熱負荷が高い領域が広くなりやすく、バーナの構成部材等を傷める可能性が高まる。上記特許文献2記載の構成のように、バーナをコーナ部から火炉壁面に配置すれば、四隅に器材が密集することを防止できるものの、あまり有効な解決策とは言えない。
【0014】
火炉炉壁に設置される熱吸収を行うための水壁管は、火炉壁面中のバーナの設置部位を避けるようにバーナ周辺で曲げられて配置されるが、火炉に開口するバーナの径が大きくなったり、密集した配置となったりすると、バーナを避けるための水壁管の加工数が増加し、製作コストの増大、対象部位の耐久性への影響等が懸念される。上記特許文献3記載の構成によってはバーナの大容量化が可能となるが、バーナの容量を大きくすると、上記問題が生じる。
【0015】
特に水壁管全体を流れる流体の熱吸収を均一化するために採用されることが多い、スパイラル水壁管を有するボイラでは、この問題が顕著となる。すなわち、火炉の上下方向に連続して配置されるバーナの領域が大きくなると、これを迂回しなければならない水壁管の本数が多くなるので、加工数の増加や対象部位の耐久性への影響が大きい。そして、水壁管を曲げる範囲が大きくなり、曲げ部の熱に対する強度が低下してリークが発生しやすくなる等の問題も生じうる。
【0016】
したがって、旋回燃焼式ボイラでは、スパイラル水壁管に対して、水壁管全体を流れる流体の熱吸収に偏差が生じやすい垂直水壁管(鉛直方向に流体が流れる水壁管)が採用される場合が多い。
【0017】
一方、バーナ1個あたりの容量(出力)を大きくせずに、その設置数を増やすと(例えば上記特許文献4に記載の構成)、設備コストが増加する。また、局部的にバーナの配置を密集させると、近接するバーナ間の熱負荷が増大するために水壁管を傷める可能性が高まる。
【0018】
本発明の課題は、火炉空間を有効利用できると共に、局部的に熱負荷が高くなることを防止して、水壁管やバーナ構成部材等の損傷を抑制できるボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の課題は、ボイラの火炉壁に設置するバーナを適度に分散させて配置し、火炉全体としては、旋回燃焼が可能となるように構成したボイラによって解決される。具体的に本発明の課題は、次の手段により解決することができる。
【0020】
請求項1記載の発明は、水平断面が方形状の炉壁から形成される火炉と、該火炉の炉壁の各壁面に上下方向に複数段設置されたバーナとを備えたボイラにおいて、各壁面に設置されるバーナ全てを各壁面の幅方向中心位置よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、各壁面におけるバーナの分布が上段のバーナは比較的壁面の側端部側であって、下段のバーナは比較的壁面の前記幅方向中心位置側になるように配置するボイラである。
【0021】
請求項2記載の発明は、上下方向に最も低い位置に配置されるバーナから最も高い位置に配置されるバーナまで、順にj=1、2、…、nとし、各バーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をL1、L2、…、Lnとし、任意のx番目のバーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をLxとしたとき、x=nの場合を除いてL1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さい関係となるように配置する請求項1記載のボイラである。
なお、方形状とは、角部が短い辺となっている多角形状のものを含む意である。
【0022】
(作用)
以下の説明は、燃料として石炭を粉砕した微粉炭を用いるボイラを前提にしているが、本発明の対象とするボイラは、植物(例えば、木材チップ等のバイオマス)や廃棄物由来の固体燃料、液体燃料、気体燃料など燃料の種類は石炭に限らず、それらのうち、複数種を混焼させるボイラであっても良い。また、これらの燃料を同時に燃焼させても良いし、切り替えて燃焼させても良い。
【0023】
図2には、水平断面が方形状の火炉の各壁面(同一水平断面上)にバーナを一つずつ設置して、その設置位置と輻射強度との関係を示す。すなわち、四方の火炉壁面に一つずつバーナを設置した時の火炉壁近傍の輻射強度を比較したものである。また、図3には、火炉壁における輻射強度の測定位置(火炉壁近傍の斜線部S付近)を示す。
【0024】
図2の横軸の炉壁方向距離とは、炉壁の幅方向の距離のことであり、例えば、図3に示すように、火炉の正面視で図中の0は炉壁前面の左端部、1.0は炉壁前面の右端部に相当する。そして、図2の実線は各バーナを火炉炉壁の中心部(幅方向中心位置)に設置した場合を示し、点線は各バーナを火炉炉壁の側端部(角部)に設置した場合を示す。
【0025】
旋回燃焼では、図2に示すように、バーナ1を火炉炉壁2の中心部(幅方向中心位置)に近づけて設置するほど、炉壁幅方向の距離に関わらず、どの箇所でも輻射強度が強く着火しやすい状態にあることが分かる。火炉上方のバーナ1は、火炉下方のバーナ1による燃焼によって火炎4及び熱風が上昇することにより輻射強度が強くなる。
【0026】
しかし、火炉下方のバーナ1はこのような燃焼による輻射の影響を受けにくい。火炉下方のバーナ1は、その下にある水冷ホッパのために火炎4からの輻射熱が奪われ、冷却される傾向にある。
【0027】
そこで、バーナの着火を促進させるためには火炉下方に設置するバーナを火炉炉壁の中心部に近づけて設置し、輻射強度を強めることが望ましい。
また、火炉上方に設置するバーナは火炉炉壁の角部に近づけて設置する。火炉炉壁の角部に近づけてバーナを設置して、燃料を噴射、燃焼させた場合、火炉の内部に形成されるファイアーボールの径が大きくなる。
【0028】
したがって、火炉上方に設置されたバーナ部分の同一水平断面上における燃焼域が拡大されることにより、火炉下方に設置されたバーナの燃焼によって発生した未燃燃料を捕捉し、燃焼させることが可能となる。
【0029】
そして、本発明によれば、火炉炉壁の四面に火炉上部から下部に向かって火炉炉壁の側端部側から火炉の中心方向へバーナを複数段設置し、各段の水平断面上の複数のバーナ(例えば、4つ)で旋回燃焼を行うことにより、火炉内にファイアーボールを形成する。
この上段から下段に向けてのバーナの配置に関しては、全ての壁面において幅方向中心位置からの左右が同じ側の面に角部から中心部にかけて配置すると、各段のバーナは全ての壁面にバランス良く配置されるため、各段のバーナ部の水平断面上におけるファイアーボールは比較的均整の取れたきれいな球状を形成できる。
このファイアーボールは火炉炉壁から火炉中心部の間で広範囲に形成することが可能であるため、火炉内に未燃領域や熱負荷の高い部分が生じることを防止できる。
【0030】
以上のことから、請求項1記載の発明によれば、各壁面に設置されるバーナ全てを各壁面の幅方向中心位置よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、各壁面におけるバーナの分布が上段のバーナは比較的壁面の側端部側であって、下段のバーナは比較的壁面の幅方向中心位置側になるように配置することで、火炉下方の輻射強度を強めることができると共に、未燃燃料を燃焼させることが可能となり、更に熱負荷の高い部分が生じることを防止できる。
【0031】
例えば、上下方向に最も低い位置に配置されるバーナから最も高い位置に配置されるバーナまで、順にj=1、2、…、nとし、各バーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をL1、L2、…、Lnとし、任意のx番目のバーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をLxとしたとき、x=nの場合を除いて、L1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さい関係となるように配置されると良い。
【0032】
請求項2記載の発明によれば、このような関係となるように各壁面にバーナを配置することによって、複数のバーナが分布する状態では、全体として上段のバーナが比較的壁面の側端部側に、下段のバーナが比較的壁面の幅方向中心位置側になるように配置される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、火炉内の未燃領域が縮小され、火炉内の熱負荷の偏差が低減することによって火炉空間を有効利用できると共に、水壁管やバーナ構成部材等の損傷のリスクを低減できるボイラを提供することができる。具体的には以下の効果を有する。
【0034】
請求項1記載の発明によれば、火炉上方のバーナは比較的壁面の側端部に近く、火炉下方のバーナは比較的壁面の幅方向中心位置に近いため、火炉上方に比べて輻射強度の弱い火炉下方のバーナの輻射強度を強めることができると共に、火炉下方のバーナの燃焼によって発生した未燃燃料を燃焼域が広い火炉上方のバーナによって燃焼させることが可能となる。そして、各段のバーナは全ての壁面にバランス良く配置されるため、火炉内に未燃領域や熱負荷の高い部分が生じることを防止できる。
【0035】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、各壁面のバーナをL1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さい関係となるように配置することで、簡便、且つ確実に、上段のバーナが比較的壁面の側端部側に、下段のバーナが比較的壁面の幅方向中心位置側になるように配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態のボイラの火炉構造を示した図(斜視図)である。
【図2】水平断面が方形状の火炉の各壁面にバーナを一つずつ設置した場合のその設置位置と輻射強度との関係を示した図である。
【図3】図2の火炉壁における輻射強度の測定位置を示した図である。
【図4】図4(a)は、火炉炉壁に設置するバーナの分布を表した図であり、図4(b)は、バーナの本数を6本とした場合の設置例を示した図であり、図4(c)は、バーナの本数を5本とした場合の設置例を示した図である。
【図5】図1のボイラの火炉炉壁の展開図(簡略図)の例である。
【図6】図1中のA−A断面(下段バーナ)におけるバーナの配置例を示した図(水平断面図)である。
【図7】図1中のB−B断面(上段バーナ)におけるバーナの配置例を示した図(水平断面図)である。
【図8】図1中のB−B断面(上段バーナ)におけるバーナの配置例を示した図(水平断面図)である。
【図9】本発明の一実施形態のボイラのバーナの断面図である。
【図10】混合気噴出ノズルと燃焼用空気ノズルを交互に配置した例を示した図である。
【図11】対向燃焼式ボイラのバーナの配置形態の一例を示した図(水平断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0038】
図1には、本発明の一実施形態のボイラの火炉構造を示す。
本実施例は、火炉3と、微粉炭等の燃料と空気の混合気(微粉炭混合気)を火炉3に供給する燃料搬送管6と、燃焼用空気を搬送する燃焼用空気搬送管7と、燃料搬送管6によって搬送される燃料を火炉3内に噴出し、燃焼用空気搬送管7によって搬送される搬送燃焼用空気と燃焼させるバーナ1と、火炉3の内壁に設置され、燃料の燃焼により発生した熱により水を加熱し蒸気を生成する火炉水壁管17,18などから構成される。燃料である微粉化された石炭は、搬送用空気と混合され微粉炭混合気を形成し、燃料搬送管6を通してバーナ1の本体に設けられた混合気噴出ノズル11(図9)に搬送され、火炉3内へ噴出する。
【0039】
火炉3の水壁管17,18の構成は、上方で水平断面積が縮小するノーズ部20付近より下方のバーナ等が配置される領域では、内部流体が下部から上部に向かってらせん状に上昇するスパイラル水壁管17になっている。そして、ノーズ部20付近よりも上方では、内部流体が下部から上部に向かって垂直(鉛直方向)に上昇する垂直水壁管18になっている。
【0040】
なお、図1はボイラの概略構成の一例を示すものであり、ノーズ部20の有無、水壁管の配置、スパイラル水壁管17と垂直水壁管18などの水壁管の種類やその範囲については、本実施例に限定されるものではない。
【0041】
図9には、図1のボイラのバーナの流路断面構造の例を示す。本実施例では、混合気噴出ノズル11の外周に燃焼用空気ノズル12が設けられており、押し込みファン(図示せず)等から搬送されてきた燃焼用空気を燃焼用空気ノズル12から火炉3内へ投入する。
【0042】
図1のスパイラル水壁管17の巻き方向は、ボイラの上側から見て時計回りに内部流体が上昇するような例を示しているが、同様のバーナの配置に対して巻き方向が逆、すなわちボイラ上側から見て反時計回りに内部流体が上昇するようにしても良い。
【0043】
なお、バーナ1の流路断面構造は本実施例に限定されるものではなく、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12とが別々に独立して配置されるものであっても良い。
例えば、スパイラル水壁管17の長手方向に沿って、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12とが交互に配置されるものが挙げられる。図10には、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12を交互に配置した例を示す。
【0044】
図10(a)には、ボイラの火炉構造(斜視図)を示し、図10(b)には、図10(a)のD部の拡大図を示す。なお、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12は各水平断面上で一対設けても良いし、複数対設けても良い。
【0045】
図10(a)及び(b)に示す形態の混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12を設置する場合、それらの配列がスパイラル水壁管17の長手方向に沿う方向になっていることが望ましい。したがって、図10(b)に示された右上がりのノズルの配置の場合は、スパイラル水壁管17の傾斜が図1に示されているものとは逆の右上がりの形態とすることが望ましい。
【0046】
そして、このような形態であれば、混合気噴出ノズル11と燃焼用空気ノズル12の開口径がそれぞれ小さくなるので、これらのノズルを迂回するスパイラル水壁管17の本数が少なく、曲げ加工の量も小さくできるので、製作コストの増大を招きにくい。また、スパイラル水壁管17の曲げ加工に伴い対象部位の耐久性が低下する可能性も低減でき、本実施例のバーナ配置との組合せにより、その効果が一層大きくなる。
【0047】
ここで、バーナ1の距離に関して、各バーナ1の各壁面2a〜2dの幅方向中心(中心線C1、中心線C2)からの距離は、混合気噴出ノズル11の中心軸を基準とする。
火炉3に設置されるバーナ1は火炉炉壁2の各壁面(四面)2a〜2dに上下方向に複数段設置される。火炉3の上方に設置するバーナ1は火炉炉壁2の側端部側に設置する。また、コーナ(角部)16に設置しても良い。
【0048】
一方、火炉3の下方に設置するバーナ1は図1中の中心線C1及び中心線C2で示される火炉炉壁2の幅方向中心位置に近づけて配置し、より下方に設置するバーナ1ほど中心線C1及び中心線C2に近づけて配置する。
【0049】
本実施例では、各段のバーナ部の水平断面上には、四面に各1個ずつの計4個のバーナ1を設置しているが、必ずしも各壁面1個のみに限定されるものではなく、複数個のバーナ1を設置しても良い。
【0050】
基本的にバーナ1を適度に分散させて配置し、火炉3の全体としては、旋回燃焼が可能に構成できれば良いため、4つの壁面2a〜2dに設置される複数のバーナ1の全てが各壁面の幅方向中心位置よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、上段のバーナ1は比較的火炉炉壁2の側端部側に配置し、下段のバーナ1は比較的壁面の幅方向中心位置側に配置する。そして、以下の条件(1)〜(3)を満たすように配置すると良い。
【0051】
(1) 火炉炉壁2に設置される複数のバーナ1全てを各壁面2a〜2dの幅方向中心位置(中心線C1、中心線C2など)よりも左右いずれかの側に配置する。
(2)(1)に関し、各壁面2a〜2dに設置されるバーナは、全ての壁面において中心線C1(又は中心線C2など)からの左右が同じ側に配置する。
(3)各壁面2a〜2dに設置されるバーナ1の本数をnとし、
上下方向に最も低い位置(最下段)に配置されるバーナ1から最も高い位置に配置されるバーナ1まで、順にj=1、2、…、nとし、
各バーナ1について、各壁面2a〜2dの幅方向中心位置からの距離をL1、L2、…、Ln(nは段数)とし、
任意のx番目のバーナについて、各壁面2a〜2dの幅方向中心位置からの距離をLxとしたとき、x=nの場合を除いて、L1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さくなるように配置する。
【0052】
図4には、上記(3)の概念図を示す。図4(a)には、火炉炉壁2の壁面2aに設置するバーナ1の分布を表した図を示し、図4(b)には、バーナ1の本数を6本とした場合の設置例を示し、図4(c)には、バーナ1の本数を5本とした場合の設置例を示している。
【0053】
複数のバーナ1が分布する状態では、図4(a)に示すように、全体的に見て上段のバーナ1の領域IIは下段のバーナ1の領域Iよりも火炉炉壁2のコーナ16側に配置され、下段のバーナ1の領域Iは上段のバーナ1の領域IIよりも中心線C1側に配置される。
【0054】
図1では、各壁面2a〜2dに設置される複数のバーナ1を上段から下段に向けて壁面のコーナ16側から中心線C1(又は中心線C2など)の方向へ順次傾斜状に配置しているが、図4(b)や図4(c)に示すように、任意の上段のバーナ1が任意の下段のバーナ1よりも幅方向中心位置(中心線C1)に近い場合があっても良い。すなわち、複数のバーナ1の分布が全体として概ね図4(a)に示されるようになればよい。
【0055】
このようにバーナ1を配置することで、上段のバーナ1と下段のバーナ1の配置関係が全ての壁面において比較的バランスがとれたものとなり、火炉上方と下方に形成されるファイアーボール15が均整の取れたきれいな球状となる。
なお、複数のバーナ1を上段から下段に向けて壁面のコーナ16側から中心線C1(又は中心線C2など)の方向へ順次傾斜状に配置した場合は、例えば図1に示すようにn=5(5段)の時はL5>L4>L3>L2>L1という関係になる。
【0056】
例えば、図5には火炉炉壁2の四面の展開図の例を示すが、図5(a)ではバーナ1を全ての壁面において中心線C1(又は中心線C2など)から右側に配置しており、バーナ1の配置が四面とも全て右上がり傾斜となる。図5(b)ではバーナ1を全ての壁面において中心線C1(又は中心線C2など)から左側に配置しており、バーナ1の配置が四面とも全て右下がり傾斜となる。
【0057】
このように、火炉炉壁2の各壁面2a〜2dにバーナ1を配置することで、各壁面2a〜2dのバーナ1の配置方向が同じとなり、同じ段のバーナ1が全ての壁面にバランス良く配置されるため、各段のバーナ部の水平断面上におけるファイアーボール15が均整の取れたきれいな球状を形成できる。
【0058】
更に、火炉炉壁2の前面2aの炉壁幅をWa、火炉炉壁2の右側面2bの炉壁幅をWbとしたとき、同一水平断面上に設置した特定のバーナ1(火炉炉壁2の各壁面で対応する位置関係にあるバーナ同士)は、下からx段目(xは1以上n以下の整数)のバーナ1の中心線C1(又は中心線C2)からの距離をLxとすると、四面でLx/(Wa/2)及びLx/(Wb/2)が一定となるようにバーナ1を配置することが望ましい。
【0059】
すなわち、更に火炉炉壁2の後面2cの炉壁幅をWc、火炉炉壁2の左側面2dの炉壁幅をWdとし、火炉炉壁2の中心線をそれぞれ中心線C3及び中心線C4としたとき(図5)、Lx/(Wa/2)、Lx/(Wb/2)、Lx/(Wc/2)及びLx/(Wd/2)が一定となるようにバーナ1を配置する。
【0060】
このように火炉炉壁2の各壁面2a〜2dにバーナ1を配置すると、同じ段のバーナ1が全ての壁面にとてもバランス良く配置されるため、各段のバーナ部の水平断面上におけるファイアーボール15がいびつな形状とならず、非常に均整の取れたきれいな球状を形成できる。
【0061】
そして、上述のようにバーナ1を火炉炉壁2に設置し、バーナ1から燃料および燃焼用空気を火炉3内に噴出することで、火炉炉壁2の四面(壁面2a〜2d)から噴出されるバーナ1からの火炎4の旋回流が発生し、火炉3内部にファイアーボール15が形成される。
【0062】
火炉3の内部にファイアーボール15を形成する旋回燃焼では、各バーナ1からの燃料等の噴出をファイアーボール15の接線方向になるようにし、火炉3の中心にファイアーボール15の外周に沿った旋回流を発生させて燃料と燃焼用空気の混合を促進し、燃焼性の向上を図っている。
【0063】
また、旋回燃焼では、図2に示すようにバーナ1を火炉炉壁2の中心線C1〜C4に近づけて設置するほど輻射強度が強く着火しやすい状態にある。火炉上方のバーナ1は、火炉下方のバーナ1による燃焼によって火炎4及び熱風が上昇することにより輻射強度が強くなる。しかし、火炉下方のバーナ1はこのような燃焼による輻射の影響を受けにくい。
【0064】
火炉下方のバーナ1は、その下にある水冷ホッパ(図示せず)のために火炎4からの輻射熱が奪われ、冷却される傾向にある。したがって、バーナ1の着火を促進させるためには火炉3の下方に設置するバーナ1を火炉炉壁2の中心線C1〜C4に近づけて設置し、輻射強度を強めることが望ましい。
【0065】
一方、火炉上方に設置するバーナ1は火炉炉壁2のコーナ16に近づけて設置する。火炉炉壁2のコーナ16に近づけてバーナ1を設置し、燃料を噴射、燃焼させた場合、火炉3の内部に形成されるファイアーボール15の径が大きくなる。したがって、火炉3の上方に設置されたバーナ1部分の同一水平断面上における燃焼域が拡大されることにより、火炉3の下方に設置されたバーナ1の燃焼によって発生した未燃燃料を捕捉し、燃焼させることが可能となる。
【0066】
以上のことから、火炉炉壁2に設置されるバーナ1を各壁面2a〜2dの上部から下部に向けてコーナ16から中心線C1〜C4の方向へ配置することで、輻射強度を強めることができると共に、未燃燃料を燃焼させることが可能となる。
【0067】
そして、上段から下段に向けてのバーナ1の配置は、全ての壁面において中心線C1(又は中心線C2など)からの左右が同じ側に配置することで、ファイアーボール15を火炉炉壁2から火炉中心部の間で広範囲に形成することが可能となり、火炉3内に未燃領域が生じることを防止できる。
【0068】
図6には、図1中のA−A断面(下段バーナ)におけるバーナ1の配置例(水平断面図)を示す。
火炉炉壁2の中心線C1〜C4にバーナ1を設置した場合、旋回燃焼により形成されるファイアーボール15の径が小さくなる。したがって、バーナ1からの火炎4が噴出する方向を火炉3の中心方向から側壁方向へ向け、形成されるファイアーボール15の径を拡大することが望ましい。具体的には、図6に示すように火炉炉壁2の平面視の幅方向中心線Ca又は中心線Cbに対して、0°<θ1≦45°となるようにバーナ1を設置すると良い。
【0069】
図7及び図8には、図1中のB−B断面(上段バーナ)におけるバーナ1の配置例を示す。火炉炉壁2のコーナ16にバーナ1を設置した場合、図7に示すようにバーナ1からの火炎4が火炉炉壁2内に設置されたスパイラル水壁管17に接触することにより、スパイラル水壁管17が損傷予測域10で損傷し、リークが発生する恐れがある。したがって、火炉炉壁2のコーナ16に設置したバーナ1は火炉3の中心方向に向けて燃料を噴霧、燃焼させることが望ましい。
【0070】
具体的には、図8に示すように、火炎4の噴出方向が火炉炉壁2に対して0°<θ2≦45°となるように各バーナ1を設置することで、スパイラル水壁管17の損傷を防止できる。
なお、隣接する壁面に設置したバーナ1の火炎4の噴出方向は略直交するように、対向する壁面に設置したバーナ1の火炎4の噴出方向は略平行となるように、各壁面2a〜2dにバーナ1を設置する。
【0071】
微粉炭等の燃料と空気の混合気を火炉3に供給する燃料搬送管6は、燃料である石炭を微粉砕するミル等の粉砕装置(図示せず)と接続される。この粉砕装置がメンテナンス、故障等により停止した場合は、バーナ1への燃料の供給が停止される。本実施例では、同一水平断面上に設置された4個のバーナ1による旋回燃焼によって燃料を燃焼させている。
【0072】
したがって、同一水平断面上にあるバーナ1に別々の粉砕装置から燃料を供給するように接続した場合、一部の粉砕装置がメンテナンス、故障等により停止すると4個のバーナ1のうち、一部のバーナ1の燃焼が停止されるため、同一水平断面上に設置された4個のバーナ1の全てで燃焼が行われなくなり、ファイアーボール15の形成が失われる。したがって、旋回燃焼によるファイアーボール15の形成を維持するためには、同一水平断面上にあるバーナ1には同じ粉砕装置から燃料が供給されることが望ましい。
【0073】
同一水平断面上にあるバーナ1に同じ粉砕装置から燃料を供給することで、ボイラの火炉3が大型化してもボイラの火炉炉壁2に設置するバーナ1を適度に分散させて配置し、火炉3全体としては、旋回燃焼が可能となるので、燃焼に未使用の未燃領域の範囲が大きくならず、火炉3の空間が無駄なく燃焼に有効利用できる。
【0074】
また、バーナ1が火炉炉壁2の局部に密集しないので、壁面に水壁管17,18が存在しない領域を小さくでき、水壁管17,18から離れた局部的に熱負荷の高い領域が生じない。したがって、バーナ1の構成部材等が損傷する可能性が低い。
【0075】
更に、バーナ1を避けるための水壁管17,18の加工数も少なく、製作コストを抑制でき、対象部位の耐久性への影響等も小さい。
特にスパイラル水壁管17を有するボイラでは、スパイラル水壁管17を曲げる範囲が小さくて済み、曲げ部の熱に対する強度の低下も生じにくく、水壁管17,18全体を流れる流体の熱吸収を均一化させることができる。
【0076】
また、バーナ1に大容量バーナではなく小容量バーナを設置すると、各バーナ1における出力調整、すなわち熱負荷の調整がしやすくなり、局部的に熱負荷が高い部分が発生することを防止できる。
さらに、小容量バーナは大容量バーナに比べてバーナ径が小さいため、バーナ1を避けるための水壁管17,18の加工数を低減することができ、急な角度で水壁管17,18を曲げる必要もなくなるため、曲げ部の熱に対する強度の低下を防止し、リークの発生を防ぐことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、火力発電用のボイラに限らず、特に火炉空間を燃焼に有効利用できるようなバーナ配置を有するボイラにおいても利用可能性がある。
【符号の説明】
【0078】
1 バーナ 2 火炉炉壁
3 火炉 4 火炎
5 未燃領域 6 燃料搬送管
7 燃焼用空気搬送管 10 火炎による水壁管損傷予測域
11 混合気噴出ノズル 12 燃焼用空気ノズル
13 火炉前壁 14 火炉後壁
15 ファイアーボール 16 火炉炉壁コーナ
17 スパイラル水壁管 18 垂直水壁管
20 ノーズ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平断面が方形状の炉壁から形成される火炉と、該火炉の炉壁の各壁面に上下方向に複数段設置されたバーナとを備えたボイラにおいて、
各壁面に設置されるバーナ全てを各壁面の幅方向中心位置よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、各壁面におけるバーナの分布が上段のバーナは比較的壁面の側端部側であって、下段のバーナは比較的壁面の前記幅方向中心位置側になるように配置することを特徴とするボイラ。
【請求項2】
上下方向に最も低い位置に配置されるバーナから最も高い位置に配置されるバーナまで、順にj=1、2、…、nとし、
各バーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をL1、L2、…、Lnとし、
任意のx番目のバーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をLxとしたとき、
x=nの場合を除いてL1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さい関係となるように配置することを特徴とする請求項1記載のボイラ。
【請求項1】
水平断面が方形状の炉壁から形成される火炉と、該火炉の炉壁の各壁面に上下方向に複数段設置されたバーナとを備えたボイラにおいて、
各壁面に設置されるバーナ全てを各壁面の幅方向中心位置よりも左右いずれかの側であって、全ての壁面において同じ側に配置すると共に、各壁面におけるバーナの分布が上段のバーナは比較的壁面の側端部側であって、下段のバーナは比較的壁面の前記幅方向中心位置側になるように配置することを特徴とするボイラ。
【請求項2】
上下方向に最も低い位置に配置されるバーナから最も高い位置に配置されるバーナまで、順にj=1、2、…、nとし、
各バーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をL1、L2、…、Lnとし、
任意のx番目のバーナについて、各壁面の幅方向中心位置からの距離をLxとしたとき、
x=nの場合を除いてL1からLxまでの総和がL(n−x+1)からLnまでの総和よりも小さい関係となるように配置することを特徴とする請求項1記載のボイラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−149821(P2012−149821A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8977(P2011−8977)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】
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