説明

ボトム衣類

【課題】比較的高齢者のための臀部の造形機能を高めるボトム衣類を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るボトム衣類1は、少なくとも臀部を覆う本体部10と、本体部10の左右一対にそれぞれ配置され、本体部10の緊締力よりも強い緊締力を有する帯状の第1の緊締部20,20及び第2の緊締部30,30とを備え、第1の緊締部20,20は、臀部の頂点Dよりも後中心側において、本体部上部Eから臀溝Fまで縦方向に延在し、第2の緊締部30,30は、臀部の頂点Dよりも下側において少なくとも臀溝F上側を覆い、第1の緊締部20,20の下端部から脇側上方へ向けて立ち上がっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臀部の造形機能を有するボトム衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、臀部の造形機能を有するボトム衣類として、ガードルが開示されている。特許文献1及び2に開示のガードルは、着用者のヒップアップを図り、ヒップの型を体裁良く綺麗に整えるために、伸縮性を有する帯状の緊締部を備えている。この緊締部は、臀溝に沿って股部から斜め上方脇側方向へ延在し、更に、臀部の脇側において上方向へ延在している。
【0003】
しかしながら、この種の緊締部を備えるガードルでは、緊締部が大殿筋の筋腹のほぼ中央近傍部分を横切って圧迫するので、脚の動きを妨げて脚が動かし難いと共に着用感も低下することがある(特許文献3参照)。
【0004】
この点に関し、特許文献3に開示のガードルは、運動時などにも脚部が動かし易く、着用感が優れ、快適な着心地が得られ、かつヒップアップ機能が得られる帯状の緊締部を備えている。この緊締部は、ヒップの頂点部よりも後正中線寄りの左右の大殿筋の縁近傍に沿って延在しており、その上端はヒップラインを越えて斜め脇側上方向に延びてウエストラインの脇側に至っており、その下端は斜め脇側下方向に延びて臀溝最下点近傍まで到達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3010476号公報
【特許文献2】特開平8−127903号公報
【特許文献3】特開平8−158109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、理想的な臀部形状は、図1に示すように、臀部全体が丸い形状で、左右に二つの山が現れる形状である。
【0007】
これに対し、10歳代後半〜20歳代の若者においては、臀部が脇側に張り出す傾向があり、この脇側に張り出した臀部を小尻に造形することが望まれている。この種の若者に対しては、特許文献1及び2に開示のガードルが効果を奏すると考えられる。
【0008】
一方、50歳代以上の高齢者においては、図2に示すように、
(1)臀部が下内側(下側かつ後中心側)に下垂し(領域A)、
(2)大転子の後側付近の肉が削げて(領域B)、
臀部全体が四角い形状となり、左右の二つの山がなくなってしまう傾向がある。
【0009】
この種の高齢者が、特許文献1及び2に開示のガードルを着用した場合、下内側に下垂した肉をある程度脇側上方に引き上げることができるものの、臀部全体が一つの山に造形されてしまい、臀部全体の四角い形状を丸く造形することができない。更に、大転子の後側付近の肉の削げを改善することができない。
【0010】
また、この種の高齢者が、特許文献3に開示のガードルを着用した場合、下内側に下垂した肉をある程度上方向へ引き上げることができ、ある程度左右に二つの山を造形することができるものの、臀部全体の四角い形状を丸く造形することができない。更に、大転子の後側付近の肉の削げを改善することができない。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、比較的高齢者のための臀部の造形機能を高めるボトム衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のボトム衣類は、少なくとも臀部を覆う本体部と、本体部の左右一対にそれぞれ配置され、本体部の緊締力よりも強い緊締力を有する帯状の第1の緊締部及び第2の緊締部とを備え、第1の緊締部は、臀部の頂点よりも後中心側において、本体部上部から臀溝まで縦方向に延在し、第2の緊締部は、臀部の頂点よりも下側において少なくとも臀溝上側を覆い、第1の緊締部の下端部から脇側上方へ向けて立ち上がっていることを特徴とする。
【0013】
このボトム衣類によれば、第1の緊締部が、高齢者特有の臀部の下内側に下垂した肉を上方向へ引き上げるように作用する。また、第2の緊締部が、臀部の下部全体、特に高齢者特有の臀部の下内側に下垂した肉を脇側上方に引き上げるように作用すると共に、第1の緊締部によって引き上げた臀裂側の肉を臀部の頂点側へ移動させるように作用する。これらの第1の緊締部による上方向への引き上げ力と第2の緊締部による脇側上方への引き上げ力との作用により、左右に二つの山を形成することができると共に、臀部全体を丸く造形することができる。
【0014】
更に、このボトム衣類によれば、第1の緊締部による上方向への引き上げ力と第2の緊締部による脇側上方への引き上げ力との合成引き上げ力が、臀部の肉を大転子の後側へ移動させるように作用する。したがって、高齢者特有の大転子の後側の削げを低減することができ、臀部全体をより丸く造形することができる。
【0015】
上記した第2の緊締部は、臀部の頂点よりも下側において少なくとも臀溝を覆うことが好ましい。これによれば、第2の緊締部による脇側上方への引き上げ力を高めることができる。
【0016】
上記した第2の緊締部の最大幅は、上記した第1の緊締部の最大幅より大きいことが好ましい。これによれば、第1の緊締部によって引き上げた臀裂側の肉を臀部の頂点側へ移動させるように作用する第2の緊締部の脇側上方への引き上げ力を高めることができ、脇側上方への引き上げ力を効率よく作用させることができる。
【0017】
また、上記した第2の緊締部における下辺の最下点は、上辺の最下点よりも後中心側に位置することが好ましい。これによれば、第2の緊締部による上方への引き上げ力を高めることができ、脇側上方への引き上げ力を効率よく作用させることができる。
【0018】
また、上記した第2の緊締部は、臀溝の下側まで覆うことが好ましい。50歳以上の高齢者においては、図2に示すように、臀溝の下側の大腿部に複数の肉の盛り上がりが生じてしまう。これによれば、臀溝の下側まで覆う第2の緊締部が、脇側上方への引き上げ力を効率よく作用させると共に、臀溝の下側の大腿部に生じた複数の肉の盛り上がりをスムージングすることによって低減することができる。
【0019】
また、上記した第1の緊締部は、本体部上部であるウエスト付近の後中心から延びていることが好ましい。これによれば、第1の緊締部による上方向への引き上げ力を効率よく作用させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、比較的高齢者のための臀部の造形機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】理想的な臀部を示す図である。
【図2】高齢者の臀部を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るガードルの裏側を示す図である。
【図4】図3に示す本実施形態のガードルの作用を示す図である。
【図5】本発明の第1の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。
【図6】本発明の第2の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。
【図7】本発明の第3の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。
【図8】本発明の第4の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。
【図9】本発明の第5の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。
【図10】本発明の第6の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。
【図11】本発明の第7の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。
【図12】第1の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【図13】第2の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【図14】第3の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【図15】本実施例のガードルを着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【図16】第4の比較例、及び、第4の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【図17】第5の比較例、及び、第5の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【図18】第6の比較例、及び、第6の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【図19】第7の比較例、及び、第7の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明のボトム衣類の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係るガードルの裏側(着用者の肌に接する内側)を示す図である。本実施形態のガードル1は、着用者の臀部及び大腿部を覆うロングタイプのガードルであり、本体部10と、一対の第1の緊締部20,20と、一対の第2の緊締部30,30とを備えている。
【0024】
本体部10は、着用者の臀部及び大腿部を覆い、臀部及び大腿部に対して密着性を有している。例えば、本体部10には、伸縮性を有するツーウェイラッセル素材(ナイロン63%、ポリウレタン14%、綿23%、70デニール)が適用される。本体部10の裏側には、第1の緊締部20,20及び第2の緊締部30,30が部分的に設けられている。
【0025】
第1の緊締部20,20及び第2の緊締部30,30は、本体部10の左右一対にそれぞれ配置されており、臀裂Cを覆うことなく離間している。第1の緊締部20,20及び第2の緊締部30,30は、本体部10の緊締力よりも強い緊締力を有している。例えば、第1の緊締部20,20及び第2の緊締部30,30には、本体部10より伸長回復性が大きいパワーネット素材(ナイロン81.5%、ポリウレタン18.5%、280デニール)が適用される。第1の緊締部20,20及び第2の緊締部30,30は、幅を有しており、その周縁部が本体部10の裏側に縫着されている。
【0026】
ここで、第1の緊締部20,20は、着用状態において、臀部の頂点Dよりも後中心側(すなわち、臀裂C側)寄りに位置しており、縦方向に延在している。第1の緊締部20,20は、本体部上部Eの後中心寄りから臀溝Fまで延びている。第1の緊締部20,20の下端部には、第2の緊締部30,30の一方の端部がそれぞれ連結されている。
【0027】
第2の緊締部30,30は、着用状態において、臀部の頂点Dよりも下側寄りに位置しており、臀部の下部及び臀溝Fの下側の大腿部を覆っている。第2の緊締部30,30は、第1の緊締部20,20の下端部から臀溝Fにほぼ沿って脇側上方へ向けて立ち上がっている。第2の緊締部30,30の他方の端部は、次第に幅が狭くなるように、大転子の後側Bの下方まで延びている。第2の緊締部30,30の立ち上がり角度θは、平置き状態において、臀裂に対して50度以上90度以下であることが好ましく、更に好ましくは50度以上80度以下であり、本実施形態では68度に設定する。
【0028】
第2の緊締部30,30の立ち上がり角度θとは、換言すれば、股部に設けられたクロッチ部の中心の最下点(クロッチポイント)Gから上方に約40〜50mm、且つ脇側に約40〜50mmの位置を始点Hとし、始点Hにおいて臀裂Cにほぼ平行な線Iに対して、始点Hから第2の緊締部30,30の脇側端Jまでを結ぶ線Kがなす角度である。
【0029】
また、第2の緊締部30,30は、下辺の最下点31が上辺の最下点32よりも後中心側に位置するように、臀溝Fにほぼ沿って弧状に形成されている。また、第2の緊締部30,30の最大幅W2は、第1の緊締部20,20の最大幅W1より大きい。例えば、第2の緊締部30,30の幅は50mm〜120mmであり、第1の緊締部20,20の幅は20mm〜40mmである。
【0030】
また、第2の緊締部30,30及び第1の緊締部20,20は、上記した始点Hが後中心側の端辺33から30mm以上脇側に位置するように形成される。
【0031】
この本実施形態のガードル1によれば、図4に示すように、第1の緊締部20による引き上げ力F1が、高齢者特有の臀部の下内側Aに下垂した肉を上方向へ引き上げるように作用する。また、第2の緊締部30による引き上げ力F2が、臀部の下部全体、特に高齢者特有の臀部の下内側Aに下垂した肉を脇側上方に引き上げるように作用すると共に、第1の緊締部20によって引き上げた臀裂C側の肉を臀部の頂点D側へ移動させるように作用する。これらの第1の緊締部20,20による上方向への引き上げ力F1と第2の緊締部30,30による脇側上方への引き上げ力F2との作用により、左右に二つの山を形成することができると共に、臀部全体を丸く造形することができる。
【0032】
更に、本実施形態のガードル1によれば、第1の緊締部20による上方向への引き上げ力F1と第2の緊締部30による脇側上方への引き上げ力F2との合成引き上げ力F3が、臀部の肉を大転子後側Bへ移動させるように作用する。したがって、高齢者特有の大転子後側Bの削げを低減することができ、臀部全体をより丸く造形することができる。
【0033】
また、本実施形態のガードル1によれば、第2の緊締部30が臀溝Fの下側の大腿部まで覆うので、臀溝Fの下側の大腿部に生じた高齢者特有の複数の肉の盛り上がりをスムージングすることによって低減することができる。
【0034】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本体部、第1の緊締部、及び、第2の緊締部は、様々な態様に変形可能である。以下に、本体部、第1の緊締部、及び、第2の緊締部のいくつかの変形例を示す。
[第1の変形例]
【0035】
図5は、本発明の第1の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。この第1の変形例のガードル1Aは、ガードル1において一対の第2の緊締部30,30に代えて一対の第2の緊締部30A,30Aを備えている構成で本実施形態と異なっている。図5に示すように、第2の緊締部30A,30Aは、第2の緊締部30,30において脇側端部が丸く形成されていてもよい。
[第2の変形例]
【0036】
図6は、本発明の第2の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。この第2の変形例のガードル1Bは、ガードル1において本体部10に代えて本体部10Bを備えている構成で本実施形態と異なっている。図6に示すように、本体部10Bには、本体部10の本体部上部Eに切替部11が形成されていてもよい。例えば、切替部11は、ウエストゴムや別布を本体部10の本体部上部Eに縫着することによって形成される。これにより、着用時の本体部上部Eすなわちウエスト部分でのフィット感を向上させることができる。また、本体部10Bには、第1の緊締部及び第2の緊締部によって造形した臀部形状をつぶさないためのゆとりを得るために、接ぎ合わせ部(ダーツ部)12が形成されてもよい。
[第3の変形例]
【0037】
図7は、本発明の第3の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。この第3の変形例のガードル1Cは、ガードル1において一対の第1の緊締部20,20に代えて一対の第1の緊締部20C,20Cを備えている構成で本実施形態と異なっている。第1の緊締部20C,20Cには、第1の緊締部20,20の上端部に切替部21,21が形成されている。切替部21,21は、第1の緊締部20,20と同一の素材からなり、それぞれ本体部上部Eを後中心から前中心まで半周するように本体部10の本体部上部Eに縫着されている。なお、切替部21,21は半周することなく互いに離間していてもよい。このように、第2の変形例における切替部11を第1の緊締部20,20の素材で形成してもよい。
[第4の変形例]
【0038】
図8は、本発明の第4の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。この第4の変形例のガードル1Dは、ガードル1における一対の第2の緊締部30,30に代えて一対の第2の緊締部30D,30Dを備えている構成で本実施形態と異なっている。図8に示すように、第2の緊締部30D,30Dは、第2の緊締部30,30において更に大腿部も覆うように形成されていてもよい。
[第5の変形例]
【0039】
図9は、本発明の第5の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。この第5の変形例のガードル1Eは、ガードル1において一対の第1の緊締部20,20及び一対の第2の緊締部30,30に代えて一対の第1の緊締部20E,20E、一対の第2の緊締部30E,30Eを備えており、更に一対の本体部上部緊締部21E,21E、第3の緊締部40,40を備えている構成で本実施形態と異なっている。本体部上部緊締部21E,21Eは、第1の緊締部20,20と同様の第1の緊締部20E,20Eの上端部から本体部上端Eに沿って脇側まで延在している。また、第2の緊締部30E,30Eでは、第2の緊締部30,30において脇側端部が大転子後側の下方よりも更に脇側上方に延びている。そして、本体部上部緊締部21E,21Eの脇側端部と第2の緊締部30E,30Eの脇側端部とが、大転子後側より前側において縦方向にほぼ円弧状に延在する第3の緊締部40,40によって連結されていてもよい。
[第6の変形例]
【0040】
図10は、本発明の第6の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。この第6の変形例のガードル1Fは、ガードル1において本体部10及び一対の第2の緊締部30,30に代えて本体部10F、一対の第2の緊締部30F,30Fを備えている構成で本実施形態と異なっている。本体部10Fは、着用者の臀部のみを覆う。そのため、第2の緊締部30F,30Fは、第2の緊締部30,30において大腿部を覆う部分が削除されている。すなわち、第2の緊締部30F,30Fは、臀部の頂点よりも下側から臀溝上側、好ましくは臀溝までを覆うように形成されている。このように、第6の変形例のガードル1Fは、ショートタイプのガードルであってもよい。
[第7の変形例]
【0041】
図11は、本発明の第7の変形例に係るガードルの裏側を示す図である。この第7の変形例のガードル1Gは、ガードル1Fにおいて一対の第2の緊締部30F,30Fに代えて一対の第2の緊締部30G,30Gを備えている構成で第6の変形例と異なっている。図11に示すように、第2の緊締部30G,30Gは、第2の緊締部30F,30Fにおいて、第1の緊締部20,20に連結する一方の端部から他方の端部に向けて幅が一定であってもよい。
【0042】
更に、本発明は上記した本実施形態及び本変形例に限定されることなく種々の変形が可能である。本実施形態及び本変形例の第1の緊締部は、縦方向に延在するものであるが、この縦方向は広義の意味に解釈するものとする。すなわち、第1の緊締部は、ウエストラインに対して直角方向に延在してもよいし、やや斜め方向に延在してもよい。また、本実施形態及び本変形例の第1及び第2の緊締部は、直線状に形成してもよいし、緩やかな曲線状に形成してもよい。
【0043】
また、本実施形態及び本変形例では、第1の緊締部及び第2の緊締部にパワーネット素材が適用されたが、第1の緊締部及び第2の緊締部の素材はこれに限定されない。例えば、サテンパワーネット素材、トリコネット素材等が適用されてもよい。また、本実施形態及び本変形例では、本体部にツーウェイラッセル素材が適用されたが、本体部の素材はこれに限定されない。例えば、本体部にはベア天竺等が適用されてもよい。
【0044】
また、本実施形態及び本変形例では、第1の緊締部及び第2の緊締部を本体部の裏側に設けたが、本体部の表側(着用者の肌に接しない外側)に設けてもよい。
【0045】
また、本実施形態及び本変形例では、第1の緊締部及び第2の緊締部を本体部に当て布として縫着する一例を示したが、第1の緊締部及び第2の緊締部の当て布は複数の生地により構成しても良く、また、縫着でなく接着剤等で貼り付けてもよい。また、第1の緊締部及び第2の緊締部は、縦編素材や丸編素材の編組織を変化させたり、オパール加工を施すことによって形成されてもよいし、ポリエステルやウレタン等の樹脂を本体部に塗布することによって形成してもよい(樹脂加工)。
【0046】
また、本実施形態及び変形例では、ショートタイプ、及び、膝上丈のロングタイプのガードルを例示したが、本発明の特徴は種々の丈長さに適用可能である。
【0047】
また、本実施形態及び変形例の特徴は、ガードル(ファンデーション)以外でも、ショーツ、パンティストッキング、レギンス、スパッツ、タイツ、スポーツ用タイツ、水着、レオタード、ボディスーツ、パンツ等のように臀部を覆うボトム衣類であればすべてに適用可能である。なお、アウターに適用する場合、本実施形態及び変形例のボトム衣類を内側に内蔵してもよい。
【0048】
なお、ショーツ等の本体部の緊締力が低い場合には、第2の緊締部の立ち上がり角度θを鋭角にすると、顕著な効果が得られる。
【実施例1】
【0049】
図3に示す本発明の実施形態のガードル1を実施例として製作し、以下の評価を行った。
[評価1]
【0050】
本実施例に対して対比を行った比較例は、出願人の主要な商品であり、それらの特徴及び仕様は次のとおりである。
第1の比較例:Tバックショーツを着用したヌードと同等の状態である。
第2の比較例:主に20〜30歳代の若者向けであり、「ヒップアップして小尻脚長」を目的とするガードルである。特許文献1及び2と同様に、ヒップアップすること、及び、若者特有の脇側に張り出した臀部を小尻に造形することを目的として、臀溝に沿って股部から斜め上方脇側方向へ延在する緊締部を備える。
第3の比較例:主に50歳以上の高齢者向けであり、「ヒップアップの造形性」と「運動時の股関節の安定」との両立を目的とするガードルである。特許文献1及び2と同様に、臀溝に沿って股部から斜め上方脇側方向へ延在する緊締部を備える。
【0051】
本評価では、本発明の実施例及び各比較例を着用した高齢者の臀部を撮影した後、それぞれのモアレ等高線解析を行った。これらの解析結果を図12〜15に示す。図12は、第1の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図であり、図13は、第2の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。また、図14は、第3の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図であり、図15は、本実施例のガードル1を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【0052】
図12によれば、第1の比較例では、(1)臀部が下内側に下垂し、(2)大転子の後側付近の肉が削げている。その結果、臀部全体が四角い形状となり、左右の二つの山が低い。また、臀溝の下側の大腿部に複数の肉の盛り上がりが存在している。
【0053】
図13及び図14によれば、第2の比較例及び第3の比較例では、臀溝に沿って股部から斜め上方脇側方向へ延在する緊締部によって、下内側に下垂した肉をある程度脇側上方に引き上げることができ、臀溝の下側の大腿部に生じた複数の肉の盛り上がりをある程度スムージングして低減することができた。しかしながら、臀部全体が一つの山に造形されてしまい、臀部全体の四角い形状を丸く造形することができていない。また、大転子の後側付近の肉の削げを改善することができていない。
【0054】
これらに対し、図15によれば、本実施例のガードル1では、第1の緊締部20による上方向への引き上げ力と第2の緊締部30による脇側上方への引き上げ力とにより、下内側に下垂した肉を臀部の頂点及び脇側上方に引き上げ、左右に二つの山を形成することができ、臀部全体を丸く造形することができた。更に、第1の緊締部20による上方向への引き上げ力と第2の緊締部30による脇側上方への引き上げ力との合成引き上げ力により、大転子の後側の削げを低減することができ、臀部全体をより丸く造形することができた。また、臀溝の下側まで覆う第2の緊締部によって、臀溝の下側の大腿部に生じた複数の肉の盛り上がりをスムージングして低減し、臀溝上方の中心側をスッキリさせることができた。その結果、図2に示すように理想的なヒップであって、若々しく綺麗なヒップに造形することができた。
[評価2]
【0055】
本実施例に対して対比を行った比較例は、本実施例を発案するにあたり出願人が試行錯誤した試作品であり、それらの特徴及び仕様は次のとおりである。
第4の比較例:図16(a)に示すように、本実施例のガードル1において、第2の緊締部30の脇側端部が大転子後側の下方付近まで延在せず、第2の緊締部30の立ち上がりが不十分であるタイプのガードルである。
第5の比較例:図17(a)に示すように、本実施例のガードル1において、第1の緊締部20を省略したタイプのガードルである。
【0056】
本評価でも、本発明の実施例及び各比較例を着用した高齢者の臀部を撮影した後、それぞれのモアレ等高線解析を行った。これらの解析結果を図16(b)〜17(b)に示す。図16(b)は、第4の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図であり、図17(b)は、第5の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【0057】
図16(b)によれば、第4の比較例では、第1の緊締部20の作用によって、臀部の下内側に下垂した肉を上方向に引き上げることができた。しかしながら、第2の緊締部30の作用が不足しているため、臀部の下脇側の肉を十分に引き上げることができず、第1の緊締部20によって引き上げた臀裂側の肉を臀部の頂点側へ十分に移動させることができていない。その結果、左右に二つの山を形成することが不十分であり、臀部全体を丸く造形することが不十分であった。また、第1の緊締部20及び第2の緊締部30の合成引き上げ力の作用が不十分であるため、大転子の後側の削げの改善が不十分であった。更に、臀溝の下側の大腿部に生じた複数の肉の盛り上がりをスムージングして低減することが不十分であった。
【0058】
図17(b)によれば、第5の比較例では、第2の緊締部30の作用によって、臀部の下部全体、特に下内側に下垂した肉を脇側上方に引き上げることができ、臀部の下部から脇側にかけてある程度丸く形成することができた。しかしながら、第1の緊締部20の作用が不足しているため、臀裂から頂点にかけての造形が不十分であり、左右に二つの山を形成することが不十分であり、臀部全体を丸く造形することが不十分であった。また、第1の緊締部20及び第2の緊締部30の合成引き上げ力の作用が不十分であるため、大転子の後側の削げの改善が不十分であった。なお、臀溝の下側まで覆う第2の緊締部30により、臀溝の下側の大腿部に生じた複数の肉の盛り上がりはスムージングされ低減された。
【0059】
これより、第1の緊締部20及び第2の緊締部30の双方の作用により、上記した本実施例の作用効果が奏されることがわかる。
[評価3]
【0060】
本実施例に対して対比を行った比較例は、本実施例を発案するにあたり出願人が試行錯誤した試作品であり、それらの特徴及び仕様は次のとおりである。
第6の比較例:図18に示すように、本実施例において第2の緊締部30の立ち上り角度を68度から50度に鋭角にしたタイプのガードルである。
第7の比較例:図19に示すように、本実施例において第2の緊締部30の立ち上り角度を68度から90度に鈍角にしたタイプのガードルである。
【0061】
本評価でも、本発明の実施例及び各比較例を着用した高齢者の臀部を撮影した後、それぞれのモアレ等高線解析を行った。これらの解析結果を図18(b)〜19(b)に示す。図18(b)は、第6の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図であり、図19(b)は、第7の比較例を着用したときの高齢者の臀部のモアレ等高線解析結果を示す図である。
【0062】
図18(b)及び図19(b)によれば、第6の比較例及び第7の変形例でも、本実施例のガードル1と同様の効果が得られた。これより、第2の緊締部30,30の立ち上がり角度θは、臀裂に対して50度以上90度以下であることが好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0063】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G…ガードル(ボトム衣類)、10,10B,10F…本体部、11,21…切替部、20,20C,20E…第1の緊締部、30,30A,30D,30E,30F,30G…第2の緊締部、31…第2の緊締部の下辺の最下点、32…第2の緊締部の上辺の最下点、33…第1及び第2の緊締部の後中心側の端辺、40…第3の緊締部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも臀部を覆う本体部と、前記本体部の左右一対にそれぞれ配置され、前記本体部の緊締力よりも強い緊締力を有する帯状の第1の緊締部及び第2の緊締部とを備え、
前記第1の緊締部は、臀部の頂点よりも後中心側において、前記本体部上部から臀溝まで縦方向に延在し、
前記第2の緊締部は、臀部の頂点よりも下側において少なくとも臀溝上側を覆い、前記第1の緊締部の下端部から脇側上方へ向けて立ち上がっている、
ことを特徴とするボトム衣類。
【請求項2】
前記第2の緊締部は、臀部の頂点よりも下側において少なくとも臀溝を覆う、
ことを特徴とする請求項1に記載のボトム衣類。
【請求項3】
前記第2の緊締部の最大幅は、前記第1の緊締部の最大幅より大きい、
ことを特徴とする請求項1乃至2の何れか1項に記載のボトム衣類。
【請求項4】
前記第2の緊締部における下辺の最下点は、上辺の最下点よりも後中心側に位置する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のボトム衣類。
【請求項5】
前記第2の緊締部は、臀溝の下側まで覆う、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のボトム衣類。
【請求項6】
前記第1の緊締部は、前記本体部上部の後中心から延びている、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のボトム衣類。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−72523(P2012−72523A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219050(P2010−219050)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】