説明

ボトル

【課題】ボトル内の減圧吸収性能の向上を図った上で、可動壁部をスムーズに移動させることができるボトルを提供する。
【解決手段】底部14の底壁部19が、外周縁部に位置する接地部18と、接地部18に径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部21と、立ち上がり周壁部21の上端部から径方向の内側に向けて突出する可動壁部22と、可動壁部22の径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部23と、を備え、可動壁部22は、立ち上がり周壁部21との接続部分を中心に陥没周壁部23とともに上方に向けて移動自在に配設され、可動壁部22における径方向に沿う外端部には、上方に向けて膨出する上方膨出部32が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルとして、例えば下記特許文献1に示されるように、底部の底壁部が、外周縁部に位置する接地部と、該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する可動壁部と、該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、可動壁部が陥没周壁部を上方に向けて移動させるように、立ち上がり周壁部との接続部分を中心に回動することにより、ボトル内の減圧を吸収する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/061758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のボトルでは、ボトル内の減圧吸収性能を向上させることに対して改善の余地があった。
ここで、減圧吸収性能を向上させるためには、可動壁部の上方への移動量を確保する必要がある。そのためには、可動壁部と立ち上がり周壁部との接続部分において、可動壁部の接線と水平面とのなす角度(俯角)を、例えば、水平面に対して45度程度と大きくして、可動壁部を可能な限り下方に位置させた形状にすることが考えられる。しかしながら、この場合には可動壁部の上方へ向けた移動量は確保し易くなるものの、可動壁部が上方に移動し難くなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ボトル内の減圧吸収性能の向上を図った上で、可動壁部をスムーズに移動させることができるボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るボトルは、合成樹脂材料で形成された有底筒状のボトルであって、底部の底壁部が、外周縁部に位置する接地部と、該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する可動壁部と、該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、前記可動壁部は、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に前記陥没周壁部とともに上方に向けて移動自在に配設され、前記可動壁部におけるボトル径方向に沿う外端部には、上方に向けて膨出する上方膨出部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、可動壁部と立ち上がり周壁部との接続部分を中心にして可動壁部が移動する際に、上方膨出部が可動壁部の初動時の起点となる。この場合、ボトルの内圧変化に応じて上方膨出部が上方に移動し始めることで、これに追従して可動壁部全体が上方に移動することになる。これにより、ボトルの内圧変化に応じて可動壁部全体をスムーズに移動させることができる。
したがって、可動壁部と立ち上がり周壁部との接続部分において、可動壁部の接線と水平面とのなす角度(俯角)を大きくして、減圧吸収性能の向上を図った場合であっても、可動壁部が上方に移動し難くなるのを抑制できる。その結果、ボトル内の減圧吸収性能の向上を図った上で、可動壁部をスムーズに移動させることができる。
【0008】
また、前記可動壁部のうち、前記上方膨出部よりもボトル径方向の内側に位置する部分には、下方に向けて窪んだ下方膨出部が形成されていてもよい。
【0009】
この場合、可動壁部のボトル径方向に沿う外端部から内端部までの長さが、立ち上がり周壁部におけるボトル径方向の内端部と、陥没周壁部におけるボトル径方向の外端部と、を結ぶ可動壁部の表面形状に倣って延びる仮想線の接線に沿う長さよりも長くなる。これにより、可動壁部の移動量を確保できるので、減圧吸収性能の更なる向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るボトルによれば、ボトル内の減圧吸収性能の向上を図った上で、可動壁部をスムーズに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるボトルの側面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるボトル底面図である。
【図3】(a)は図2のA−A線に沿う断面図であり、(b)は(a)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るボトルを説明する。
本実施形態に係るボトル1は、図1に示されるように、口部11、肩部12、胴部13及び底部14を備え、これら11〜14が、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置させた状態で、この順に連設された概略構成となっている。
【0013】
以下、前記共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸O方向に沿って口部11側を上側、底部14側を下側といい、また、ボトル軸Oに直交する方向を径方向といい、ボトル軸Oを中心に周回する方向を周方向という。
なお、ボトル1は、射出成形により有底筒状に形成されたプリフォームが、ブロー成形されて形成され、合成樹脂材料で一体に形成されている。また、口部11には、図示しないキャップが装着される。さらに、口部11、肩部12、胴部13及び底部14はそれぞれ、ボトル軸Oに直交する横断面視形状が円形状となっている。
【0014】
肩部12と胴部13との接続部分には、第1環状凹溝16が全周に亘って連続して形成されている。
胴部13は筒状に形成され、ボトル軸O方向の両端部同士の間は、これら両端部より小径に形成されている。胴部13には、ボトル軸O方向に間隔をあけて複数の第2環状凹溝15が全周に亘って連続して形成されている。
【0015】
胴部13と底部14との接続部分には、第3環状凹溝20が全周に亘って連続して形成されている。
図1〜3に示すように、底部14は、上端開口部が胴部13の下端開口部に接続されたヒール部17と、ヒール部17の下端開口部を閉塞し、かつ外周縁部が接地部18とされた底壁部19と、を備えるカップ状に形成されている。
ヒール部17には、第3環状凹溝20と同じ深さの第4環状凹溝31が全周に亘って連続して形成されている。
【0016】
底壁部19は、図3に示すように、接地部18に径方向内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部21と、立ち上がり周壁部21の上端部から径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部22と、可動壁部22の径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部23と、を備えている。
【0017】
立ち上がり周壁部21は、下方から上方に向かうに従い漸次縮径している。
可動壁部22は、下方に向けて突の曲面状に形成されるとともに、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次下方に向けて延在している。この可動壁部22と立ち上がり周壁部21とは上方に向けて突の曲面部25を介して連結されている。そして、可動壁部22は、陥没周壁部23を上方に向けて移動させるように、曲面部(立ち上がり周壁部21との接続部分)25を中心に回動自在となっている。
【0018】
ここで、可動壁部22のうち、径方向に沿う外端部、すなわち曲面部25に近接した部分には、上方に向けて膨出する上方膨出部32が形成されている。この上方膨出部32は、可動壁部22の法線方向に沿って突の曲面形状に形成されるとともに、周方向の全周に亘って延びる環状に形成されている。具体的に、上方膨出部32は、曲面部25における径方向の内端部と、陥没周壁部23における径方向の外端部と、を結ぶ可動壁部22の表面形状に倣って延びる仮想線L(例えば、下方に凸の曲線、又は直線)よりも上方に位置している。また、上方膨出部32の頂部は、曲面部25よりも下方に位置している。なお、上方膨出部32の径方向に沿う外端部での接線と、水平面と、のなす角度(俯角)θ1は、仮想線Lの径方向に沿う外端部での接線と、水平面と、のなす角度(俯角)θ2に対して10度以上小さく設定することが好ましい。図示の例では、θ1が28度程度、θ2が44度程度に設定されている。
【0019】
また、可動壁部22のうち、上方膨出部32よりも径方向の内側に位置する部分には、下方に向けて窪んだ下方膨出部33が形成されている。下方膨出部33は、可動壁部22の法線方向に沿って突の曲面形状に形成されるとともに、周方向の全周に亘って延びる環状に形成されている。具体的に、下方膨出部33は、上述した仮想線Lよりも下方に位置している。この場合、上述した上方膨出部32のうち、径方向の外端部は曲面部25における径方向の内端部に連設され、径方向の内端部は下方膨出部33における径方向の外端部に連設されている。
【0020】
なお、上方膨出部32は、上述した下方膨出部33に比べて曲率半径が小さく形成されている。また、ボトル軸O方向に沿う縦断面視において、下方膨出部33の径方向に沿う外端部から内端部までの接線に沿う長さD1は、上方膨出部32の径方向に沿う外端部から内端部までの接線に沿う長さD2よりも長く形成されている。
【0021】
陥没周壁部23は、ボトル軸Oと同軸に配設されるとともに、上方から下方に向かうに従い漸次拡径している。陥没周壁部23の上端部には、ボトル軸Oと同軸に配置された円板状の頂壁24が接続されており、陥没周壁部23及び頂壁24の全体で有頂筒状をなしている。なお、陥没周壁部23は、横断面視円形状に形成されている。また、陥没周壁部23は、径方向の内側に向けて突の曲面状に形成された湾曲壁部23aの上端が頂壁24に、湾曲壁部23aの下端が屈曲部23bを介して傾斜壁部23cに連接されて構成されている。傾斜壁部23cは、上方から下方に向かうに従い漸次拡径し、その下端が環状の可動壁部22の径方向における内端部に連接されている。
【0022】
そして、本実施形態では、ヒール部17のうち、接地部18に径方向の外側から連なる下ヒール部27は、該下ヒール部27に上方から連なる上ヒール部28より小径に形成されている。なお、上ヒール部28は、胴部13のボトル軸O方向両端部とともに、ボトル1の最大外径部となっている。
【0023】
さらに本実施形態では、下ヒール部27と上ヒール部28との連結部分29は、上方から下方に向かうに従い漸次縮径されている。また、この連結部分29の縦断面視形状は、上方から下方に向けて直線状に延在している。
【0024】
このように構成されたボトル1内が減圧すると、底壁部19の曲面部25を中心にして可動壁部22が上方に向かって回動することで、可動壁部22は、陥没周壁部23を上方に向けて持ち上げるように移動する。すなわち、減圧時にボトル1の底壁部19を積極的に変形させることで、胴部13等の変形を伴うことなく、ボトル1の内圧変化(減圧)を吸収することができる。この場合、立ち上がり周壁部21と可動壁部22との接続部分を、上方に向けて突の曲面部25に形成することで、この曲面部25を中心にして可動壁部22を移動(回動)させ易くすることができる。そのため、ボトル1の内圧変化に応じて可動壁部22を柔軟に変形させることができる。
【0025】
特に、本実施形態では、可動壁部22に上方に向けて膨出する上方膨出部32を形成することで、曲面部25を中心にして可動壁部22が移動する際に、上方膨出部32が可動壁部22の初動時の起点となる。この場合、ボトル1の内圧変化に応じて上方膨出部32が上方に移動し始めることで、これに追従して可動壁部22全体が上方に移動することになる。これにより、ボトル1の内圧変化に応じて可動壁部22全体をスムーズに移動させることができる。
したがって、可動壁部22の接線と水平面とのなす角度θ2を大きくして、減圧吸収性能の向上を図った場合であっても、可動壁部22が上方に移動し難くなるのを抑制できる。その結果、ボトル1内の減圧吸収性能の向上を図った上で、可動壁部22をスムーズに移動させることができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、可動壁部22のうち、上方膨出部32よりも径方向の内側に位置する部分に下方膨出部33を形成したため、可動壁部22の径方向に沿う外端部から内端部までの長さが、可動壁部22の表面形状に倣って延びる仮想線Lの長さよりも長くなる。これにより、可動壁部22の移動量を確保できるので、減圧吸収性能の更なる向上を図ることができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0028】
例えば、上方膨出部32及び下方膨出部33の断面視形状は、曲面状に限らず適宜設計変更が可能である。
また、上方膨出部32及び下方膨出部33は、周方向に間欠的に形成しても構わない。
さらに、下方膨出部33は、径方向に沿って複数形成しても構わない。例えば、径方向に沿って波形に形成しても構わない。
【0029】
また、立ち上がり周壁部21は、例えばボトル軸O方向に沿って平行に延在させる等、適宜変更してもよい。
さらに、陥没周壁部23は、例えばボトル軸O方向に沿って平行に延在させる等、適宜変更してもよい。
【0030】
また、ボトル1を形成する合成樹脂材料は、例えばポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリエステル等、またはこれらのブレンド材料等、適宜変更してもよい。
さらに、ボトル1は単層構造体に限らず中間層を有する積層構造体としてもよい。この中間層としては、例えばガスバリア性を有する樹脂材料からなる層、再生材からなる層、若しくは酸素吸収性を有する樹脂材料からなる層等が挙げられる。
また、前記実施形態では、肩部12、胴部13及び底部14のそれぞれのボトル軸Oに直交する横断面視形状を円形状としたが、これに限らず例えば、多角形状にする等適宜変更してもよい。
【0031】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…ボトル
14…底部
18…接地部
19…底壁部
21…立ち上がり周壁部
22…可動壁部
23…陥没周壁部
25…曲面部
32…上方膨出部
33…下方膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料で形成された有底筒状のボトルであって、
底部の底壁部が、
外周縁部に位置する接地部と、
該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、
該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する可動壁部と、
該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、
前記可動壁部は、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に前記陥没周壁部とともに上方に向けて移動自在に配設され、
前記可動壁部におけるボトル径方向に沿う外端部には、上方に向けて膨出する上方膨出部が形成されていることを特徴とするボトル。
【請求項2】
前記可動壁部のうち、前記上方膨出部よりもボトル径方向の内側に位置する部分には、下方に向けて窪んだ下方膨出部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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