説明

ボビン搬送装置、スワイベルヘッドおよびスワイベル装置

【課題】ボビン自体を経糸(縦糸)の周囲に高速に移動させ、かつ、誤動作による筬の損傷や糸切れを最小限にできるボビン搬送装置を提供する。
【解決手段】ボビン搬送装置は、経糸の周囲を上下移動する2本のアームと、各アームに設けられた電磁石と、磁石に吸引される材料から成るボビンと、2本のアームの上下移動を行う上下駆動手段と、2本のアームの開閉動作を行う開閉駆動手段と、各アームの電磁石の通電状態を個別にON/OFFするスイッチ手段と、上下駆動手段と開閉駆動手段とスイッチ手段を同期させる制御信号とから構成される。ボビンを保持する側のアームの電磁石は電流が流され磁化された状態であり、ボビンを保持しない側のアームの電磁石は電流が流されず磁化されない状態である。2本のアームが経糸の周囲を上下移動し、アームが閉じた時に、各々の電磁石の磁化状態が切り替わることにより、各アームの間でボビンの受渡しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機のボビン搬送装置、特に、スワイベル織機のボビン搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地場産業である繊維産業において、特に低価格品については中国等が安い人件費と品質向上競争力アップが顕著である。また近年、製造型小売業を中心とした低価格品と、欧米の高級ブランドに代表される高級品が売れ筋となる二極化が進んでいる。また、中国の織物品質が向上により、中国産織物による中国国内での縫製が増加している。
かかる状況から、日本の国内織産地の生産量、とりわけ播州織産地の生産量も減少している。播州織の歴史の中には、大正11年開発のラペット織、昭和24年開発のスワイベル織、昭和28年開発のループ織等があり。それらは刺繍として使われてきた。現在、播州織技法のスワイベル織を用いて、織物産地では過去に例のない新しい縫製品を製造、納期短縮、コストダウン、高付加価値化を目指して数々の研究が行われている。
【0003】
一方、上述のスワイベル織機やシャトル織機においては、緯糸(横糸)や横糸としてのスワイベル糸を移動させるシャトルが存在する。かかるシャトルには糸を掴んで移動するものや、シャトル自体に糸を巻きだすための小型の筒状のボビンが取り付けられているものがある。
シャトル動作時に懸念されるのが、シャトルの誤動作によって発生する織機の筬(オサ)の損傷である。また、シャトルの誤動作によって発生する経糸(縦糸)の糸切れである。シャトルの誤動作によって発生する糸切れの本数は数百本程度に及ぶことから損害は大きい。
近年、上述した納期短縮やコストダウンを図るべく生産性を向上するために、シャトルの移動の高速化が益々要求されており、それと同時にシャトルの誤動作による被害を回避する装置が要望されている。
【0004】
ここで、スワイベル織りにおけるシャトルは、経糸(縦糸)の周囲を上下左右に行き来し、横糸としてのスワイベル糸を織り込んでいくものである。
ボビンがシャトルに取り付けられている場合、ボビンが経糸(縦糸)の周囲を上下左右に行き来し、横糸としてのスワイベル糸を縦糸に通していくことになる。ボビンが高速に移動する勢いで、ボビンから糸が過剰に巻き出されることがある。
本発明者は、既に、ボビンの過剰な糸巻き出しを抑制し、シャトル移動の十分な高速化を図れることができる織機の糸張力装置を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−076402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、納期短縮やコストダウンを図るべく生産性を向上するために、シャトルの移動の高速化が益々要求されており、それと同時にシャトルの誤動作による被害を回避する装置が要望されている。
上記状況に鑑みて、本発明は、シャトルに取り付けられるボビン自体を経糸(縦糸)の周囲に高速に移動させ、かつ、誤動作による筬の損傷や糸切れを最小限にできるボビン搬送装置を提供することを目的とする。
【0007】
より、具体的には、経糸(縦糸)の周囲の上下左右にボビンを高速移動できる小型で動作範囲が少ないボビン搬送装置を提供する。また、ボビン搬送動作時に懸念される万が一の誤動作によって発生する筬の損傷を回避でき、誤動作によって発生する経糸(縦糸)の糸切れを最小化できるボビン搬送装置を提供する。
更に、ボビンの糸たるみ除去ができ、また、ボビンの糸切れ、ボビンの移動不良、ボビンの脱落を検知できるボビン搬送装置を提供する。また、これらの目的を達成できるボビン搬送装置を備え、スワイベル織りを行うためのスワイベルヘッド、あるいは、スワイベル装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明のボビン搬送装置は、下記1)〜8)の構成要素を備え、ボビンを保持する側のアームの電磁石は電流が流され磁化された状態であり、ボビンを保持しない側のアームの電磁石は電流が流されず磁化されない状態であり、2つのアームが経糸(縦糸)の周囲を上下移動し、アームが閉じた時に、各々の電磁石の磁化状態が切り替わり、各々のアームの間でボビンの受渡しを行うものである。
【0009】
1)経糸(縦糸)の周囲を上下移動する第1のアームおよび第2のアーム
2)第1のアームに設けられた第1の電磁石
3)第2のアームに設けられた第2の電磁石
4)磁石に吸引される材料から成るボビン
5)第1のアームと第2のアームの上下移動を行う上下駆動手段
6)第1のアームと第2のアームの開閉動作を行う開閉駆動手段
7)第1の電磁石と第2の電磁石の通電状態を個別にON/OFFするスイッチ手段
8)上下駆動手段と開閉駆動手段とスイッチ手段を同期させる制御信号
【0010】
かかる構成によれば、第1のアームおよび第2のアームの2本のアームが経糸(縦糸)の周囲を上下に移動し、2本のアームが経糸(縦糸)の周囲を囲むように開閉することができ、電磁石の通電状態を制御することによってボビンを高速に受渡しできる。
アームの上下動作と開閉動作だけであり動作範囲が少ない。また、2本のアームと電磁石とボビンから成り、装置自体の小型化を図ることができる。
【0011】
ここで、第1のアームおよび第2のアームの2本のアームは、連動して同時に動作するものが好ましい。2本のアームは、経糸(縦糸)の周囲を連動して同時に上下し、経糸(縦糸)の周囲を囲んで連動して同時に開閉する。
具体的には、第1のアームおよび第2のアームの2本のアームは、第1種のてこの原理を用いて、支点部分で重なり合い、作用点部分に電磁石が取り付けられ、力点部分に開閉駆動手段が設けられる。そして、開閉駆動手段がカム機構を用いてカムが旋回することによりアームを開閉する。ロータリーソレノイドなどのカム駆動機構を用いて、カムを旋回させてアームの開閉動作を行う。
【0012】
また、上下駆動手段は、アーム回転軸を回転駆動するものであり、第1のアームと第2のアームが該アーム回転軸の周囲に取り付けられたものであることが好ましい。第1のアームと第2のアームが水平状態にある場合に、アーム回転軸を例えば90°程度回転駆動することにより、第1のアームと第2のアームが垂直状態になる。例えば、アームの下端部に電磁石を設け、アームの支点部分にアーム回転軸を取り付けた場合、アームの支点部分から下端部までの長さ分、電磁石および電磁石に吸引されているボビンを上下移動できることになる。第1のアームと第2のアームが水平状態ではなく、斜め30°の状態にある場合に、アーム回転軸を60°程度回転駆動してもよい。この場合、アームの下端部に電磁石を設け、アームの支点部分にアーム回転軸を取り付けるならば、アームの支点部分から下端部までの長さの約1/2だけ、電磁石および電磁石に吸引されているボビンを上下移動できることになる。
【0013】
また、アーム回転軸の回転動作と、筬揺動軸の回転動作とが、機械的に連動していることが好ましい。具体的には、連結レバーを用いて、筬揺動軸と連結レバーを接触させて、その連結レバーの回転角とアーム回転軸の回転角を機械的に連動させるようにする。
これにより、ボビン搬送動作時に懸念される万が一の誤動作によって発生する筬の損傷を回避でき、誤動作によって発生する経糸(縦糸)の糸切れを最小化する。
【0014】
また、ボビンの回転軸の周囲に設けられた複数の翼と、ボビンの糸の巻き出し回転方向とは逆方向に前記翼に風圧を付与する空気噴出し部と、空気噴出し部に空気を送り込むエアーコンプレッサーと、エアーコンプレッサーに対してアームの動作と同期した制御信号を送る制御部とを更に備えたことが好ましい。これにより、ボビンの糸たるみ除去ができる。ボビンの回転軸の周囲に設けられた複数の翼は、タービン羽根のような形状でもよい。
ボビンの糸たるみ除去は、以下に説明するように、ボビン両端に設置した翼に対して空気を送り込み、ボビンを回転させて過剰な糸を巻き取り、糸を緊張させることにより実現する。
ボビンが高速に移動する場合、ボビンが過剰に糸を巻き出すことになる。ボビンが停止した時点で空気噴出し部から空気を送り出して、ボビンの回転軸の周囲に設けられた翼に噴き付ける。翼に噴き出すれた空気の風圧によって、ボビンには糸の巻き出し回転方向とは逆方向にモーメントが生じる。逆方向のモーメントによりボビンが糸の巻き出し回転方向とは逆方向に回転し、ボビンに糸が巻き戻されることになる。従って、ボビンの過剰な糸巻き出しを防止し、ボビン移動の十分な高速化を図ることができる。
【0015】
ここで、翼は、ボビンの糸の巻き付け部以外の部位に設けられる。例えば、ボビンの軸受け部近傍に設けられるもので、ボビンの軸方向に平行な面を有するものである。また、ボビンの軸方向に平行でなくとも風車の如く空圧によりボビンに対して回転力を与えられるものでも構わない。また、翼は少なくとも2つ以上必要であり、好適には4枚から6枚の翼が必要である。これは、ボビンの停止状態にかかわらず、風圧を効率的に翼に付加させるためである。
また、空気噴出し部とは、シャトルの停止位置で、ボビンに設けられた翼の少なくとも1つにボビンの糸の巻き出し回転方向とは逆方向に回転力が加わるように、上記の翼に風圧を付与する、すなわち、空気を噴き付けるものである。また、空気噴出し部には、エアーコンプレッサーから流出する空気が送り込まれるようチューブが連結されている。そして、エアーコンプレッサーに対しては、ボビンの停止と同期した制御信号を送る制御部が設けられる。
【0016】
また、ボビン近傍には、ボビンの回転を検出するセンサもしくはボビンの画像を撮像するCCDセンサが更に設けられ、ボビンの糸切れの検出、ボビンの受渡し移動の完了の検出、あるいは、ボビンの脱落の検出を行えることが好ましい。これにより、ボビンの糸切れ、ボビンの移動不良、ボビンの脱落を検知でき、安定した織物を実現できる。
上述したように、ボビンの回転軸の周囲に設けられた複数の翼に空気を噴き付けることにより、ボビンの糸たるみ除去できる。その一方で、糸が切れていたりすると、翼に空気を噴き付けると、ボビンの回転はなかなか止まらない。また、ボビンが脱落すると、空気を噴き付ける翼が存在しないので、ボビンの回転軸の回転が生じない。また、左右の電磁石によりボビンの移動がうまくいかなかった場合、ボビンが本来存在する側でボビンの回転軸の回転が生じず、ボビンが本来存在しない側でボビンの回転軸の回転が生じることになる。
【0017】
すなわち、ボビンの糸切れ検出は、ボビンの糸たるみを防止するためにボビン両側に設けた翼やタービン羽根の頂部と谷部を検出し、糸切れによるボビンの連続的な回転を検出することにより糸切れが発生したと判断できる。また、ボビンの脱落は、ボビンが第1のアームの位置または第2のアームの位置に有ることを検出し、両側とも検出できなければボビン脱落と判断できる。
従って、ボビンの回転、あるいは、ボビンの回転軸の回転を検出するセンサ、或いは、ボビンの形状画像を撮像するCCDセンサにより、ボビンの糸切れ、ボビンの移動不良、ボビンの脱落を検知できるのである。
【0018】
次に、本発明のスワイベルヘッドとスワイベル装置について説明する。
本発明のスワイベルヘッドは、上述したボビン搬送装置と、このボビン搬送装置を緯糸(横糸)方向に移動させ位置決めする移動駆動手段とを備える。
スワイベルヘッドは、上述のボビン搬送装置を、織機織物幅方向に移動でき、すなわち、緯糸(横糸)方向に移動できるように、緯糸(横糸)方向に伸びるレールに取り付けられる。緯糸(横糸)方向に移動させ位置決めする移動駆動手段とは、例えば、サーボモータで実現できる。つまり、サーボ機構でスワイベルヘッドのレール上の位置や姿勢を制御する。サーボ機構は、電気式に限定されず、空気圧,油圧式、或いは、電気−油圧式でも構わない。
【0019】
また、本発明のスワイベル装置は、上記のスワイベルヘッドを複数台備え、各々のスワイベルヘッドが独立に移動できるものであり、織機カム角度と織機に連動するジャガード制御装置から出される織物パターンに記述された指令値の双方をステップ毎に受取り、該指令値に従って、各々のスワイベルヘッドの位置決めとスワイベル動作を行うことを特徴とする。
各々のスワイベルヘッドが独立に移動できるとは、個々のスワイベルヘッドがヘッド移動・位置決め用サーボモータを備えていることを意味する。織機カム角度は、織機コントローラからスワイベル装置にデータとして送られる。織物パターン情報や柄位置情報はジャガード制御装置からスワイベル装置に指令値として送られる。
なお、スワイベル動作とは、アームの上下動作、アームの開閉動作によるボビン移動を意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のボビン搬送装置によれば、ボビン自体を経糸(縦糸)の周囲に高速に移動させ、かつ、誤動作による筬の損傷や糸切れを最小限にできるといった効果を有する。
アームの上下動作、アームの開閉動作、左右の電磁石によるボビン移動により、経糸(縦糸)の周囲の上下左右にボビンを高速移動できるため、装置自体が小型化でき、装置の動作範囲を少なくできる。
【0021】
また、アーム回転軸の回転動作と筬揺動軸の回転動作を機械的に連動させることにより、ボビン搬送動作時の誤動作によって発生する筬の損傷、経糸(縦糸)の糸切れを最小化できる。
更に、ボビンの糸たるみ除去ができ、また、ボビンの糸切れ、ボビンの移動不良、ボビンの脱落を検知でき、安定な織りを実現し、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ボビン搬送装置の外観構成図
【図2】ボビン搬送装置によるボビンの受渡し動作の説明図
【図3】スワイベルヘッドの外観構成図
【図4】ボビン搬送装置の動作説明図
【図5】ボビン搬送装置と筬回転軸の連携動作の説明図
【図6】スワイベル装置の外観構成図
【図7】ボビンの移動動作の説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0024】
図1は、ボビン搬送装置の外観構成図である。ボビン搬送装置1は、経糸(縦糸)の周囲を上下移動する第1のアーム(12,13,14)および第2のアーム(22,23,24)と、第1のアームの下端部に設けられた第1の電磁石15と、第2のアームの下端部に設けられた第2の電磁石25と、鉄製のボビン2から構成されている。
図1に示す状態は、ボビン2を保持する側の第1のアームの電磁石15は電流が流され磁化された状態であり、ボビン2を保持しない側の第2のアームの電磁石25は電流が流されず磁化されない状態である。第1のアームと第2のアームが、経糸(縦糸)の周囲を上下移動し、アームが閉じた時に、各々の電磁石(15,25)の磁化状態が切り替わり、各々のアームの間でボビン2の受渡しを行うことができる。
以下に、ボビン搬送装置の構成について、図1を参照して詳細に説明する。
【0025】
第1のアーム(12,13,14)および第2のアーム(22,23,24)は、支点部分4で重なり合う。アームの開閉駆動手段はカム機構であり、ロータリーソレノイド5により、楕円形のカム3が旋回駆動する。第1のアーム12の突起部11と第2のアーム22の突起部21の間隔は、楕円形のカムの短径から長径の長さになる。楕円形のカム3が旋回することにより、第1のアーム12と第2のアーム22を開閉し、支点部分4を隔てて反対側の第1のアーム14と第2のアーム24を開閉する。すなわち、第1のアーム14の下端部に設けられた第1の電磁石15と、第2のアーム24の下端部に設けられた第2の電磁石25とを近づけたり遠ざけたりする。
第1のアーム14と第2のアーム24は、スプリングバネ10により、アームが閉じる方向にバネの付勢力が加わっている。また、スプリングバネ10の下部にはストッパー(16,26)を設けてアームが閉じる角度を調整している。これによりアームの下端部のボビン2に過剰な力が加わるのを防いでいる。なお、カム3の長径が垂直方向に近づくと、バネの付勢力によってアームが閉じることになる。
【0026】
第1の電磁石15または第2の電磁石25のいずれか一方に、ボビン2が磁力により引き付けられている。図1では、第1の電磁石15にボビン2が引き付けられている。ボビン2は、ボビンの回転軸2cの両側(2a,2b)にそれぞれ円筒状のタービン羽根(7a,7b)が設けられている。
18と28は空気噴出し部であり、19と29は、エアーコンプレッサー(図示せず)から送り込まれる空気を導入するチューブ(図示せず)を取り付ける開口部である。図1では、第1の電磁石15に引き付けられたボビン2の片側2bのタービン羽根(第1の電磁石15と嵌合し図1には見えていない)に、エアーコンプレッサー(図示せず)から送り込まれる空気が空気噴出し部18から噴き出すことになる。
【0027】
また、第1のアーム(12,13,14)と第2のアーム(22,23,24)の上下移動を行う上下駆動手段として、円筒状のアーム回転体6を回転駆動させている。アーム回転体6の円筒内部にはアーム回転軸9となるものが挿入される。円筒状のアーム回転体6と一体化している台座8の上に、第1のアーム(12,13,14)と第2のアーム(22,23,24)の交差部分(13,23)が重なり、支点部分4がそれらを貫通して、2本のアームを台座8に取り付けている。
【0028】
図1には図示していないが、第1の電磁石15と第2の電磁石25の通電状態を個別にON/OFFするスイッチ手段があり、また、上下駆動手段としてのアーム回転体6の回転駆動と、開閉駆動手段としてのロータリーソレノイド5の駆動によるカム3の旋回と、スイッチ手段を同期させる制御信号の信号線がある。
【0029】
次に、図2を参照して、ボビン搬送装置によるボビンの受渡し動作を説明する。
図2(1)は、第1のアーム14の下端部の電磁石15のコイル(15a,15b)の通電状態がONであり、ボビン2を保持している状態を示している。ボビン2の回転軸(2c,2d,2e)の左端2eとタービン羽根を備える円筒体2bが、第1の電磁石15に引き付けられ、それらが第1の電磁石15と嵌合している。この時、カム3の長径が水平状態(カムの短径が垂直状態)であり、第1のアーム12の突起部11と第2のアーム22の突起部21の間隔は広がり、第1のアーム14と第2のアーム24は開いた状態になっている。また、この時、ボビン2を保持していない第2のアーム24の下端部の電磁石25のコイル(25a,25b)の通電状態はOFFである。
【0030】
図2(2)は、カム3の長径が垂直状態(カムの短径が水平状態)であり、第1のアーム12の突起部11と第2のアーム22の突起部21の間隔は狭まり、第1のアーム14と第2のアーム24は閉じた状態になっている。この状態で、第1の電磁石15と第2の電磁石25の磁化状態が切り替わり、第1のアーム14と第2のアーム24の間でボビン2の受渡しを行う。すなわち、第1のアーム14の下端部の電磁石15のコイル(15a,15b)の通電状態がONからOFFに切り替わり、第2のアーム24の下端部の電磁石25のコイル(25a,25b)の通電状態がOFFからONに切り替わる。
【0031】
図2(3)は、カム3の長径が再び水平状態(カムの短径が垂直状態)になり、第1のアーム12の突起部11と第2のアーム22の突起部21の間隔は再び広がり、第1のアーム14と第2のアーム24は再び開いた状態になっている。この時、第2のアーム24の下端部の電磁石25のコイル(25a,25b)の通電状態がONであり、ボビン2を保持できる状態になっている。ボビン2の回転軸(2c,2d,2e)の右端2dとタービン羽根を備える円筒体2aが、第2の電磁石25に引き付けられ、それらが第2の電磁石25と嵌合している。また、この時、ボビン2を保持していない第1のアーム14の下端部の電磁石15のコイル(15a,15b)の通電状態はOFFである。
【0032】
図3は、スワイベルヘッドの外観構成図である。スワイベルヘッド40は、図1に示したボビン搬送装置を下部に備え、ボビン搬送装置のアーム回転体6を支持体(41,47)により支持し、ヘッド移動サーボモータ46と、ボビンセンサ42を有するものである。スワイベルヘッド40は、コ字状に形成された係合部材(50,51,52)により、スワイベルヘッド40が移動する方向に配置されたスライドレール(図示せず)と係合する。
また、53は配線端子台と制御回路基板とサーボモータを収納しているケースである。スライドレール(図示せず)の上部に沿って駆動する車輪54は、このケース53に内蔵されているサーボモータによって駆動する。
また、45は回転する車輪であり貫通孔の内壁には螺旋状に溝が形成されている。この車輪45が、スライドレール下にあるレールと並行に配置された軸体(図示せず)と嵌合する。この軸体の周囲には螺旋状の溝が形成されている。サーボモータ46が回転することにより、車輪48が回転し、ベルト49により、その回転は車輪45に伝達される。車輪45が回転すると、貫通孔の内壁の螺旋状の溝と軸体の周囲の溝が噛み合い、スワイベルアーム40は軸体の長手方向に移動することになる。
【0033】
次に、図4を参照してボビン搬送装置の動作を説明する。また、図5を参照してボビン搬送装置と筬回転軸の連携動作を説明する。
図5に示すように、筬揺動軸61とアーム回転軸9を、連結レバー68を用いて機械的に連動させて、筬揺動軸61に連動して、アームが上下移動し開閉できる。これにより、筬とアームの上下動作、アームの開閉動作によるボビン移動といったスワイベル動作時のアームの干渉を回避する。
スワイベル動作必要時には、連結レバー68を筬駆動軸69と接触させ、機械的な連動状態で、図4のようにスワイベルヘッドを下降側に回転させ下降揺動を行う(14´から14,15´から15)。図4に示すように、筬が移動(64´から64,65´から65,66´から66)しながら、スワイベルヘッドが下降揺動して、経糸(72,73)の間に電磁石15が移動する。電磁石15がこの位置で、アーム開閉によるボビン移動を行う。
【0034】
スワイベルヘッドの下降位置でのスワイベル動作(アーム開閉によるボビン移動)の後、スワイベルヘッドは織機カム角度信号により上昇側に回転させ上昇揺動を行う。
織機が高速運転するときには空気圧ロータリーアクチュエータ(PRA)によりアームを上昇位置に移動待機させ、非スワイベル動作時の不要なヘッド揺動を無くする。空気圧/機械を組み合わせたハイブリッド駆動方式の採用は、織機カム角度による制御の不具合によって、PRAの上昇動作に遅れが発生しても、空気圧駆動の持つ圧縮性を生かして、織機の機械動作を優先し、筬とアームの干渉回避動作を可能にする。
【0035】
図6は、スワイベル装置の外観構成図である。
スワイベル装置は、織機織物幅の範囲内を独立に移動する4式のスワイベルヘッド(1A、1B,1C,1D)を備える。各々のスワイベルヘッド(1A、1B,1C,1D)は、スライドレール81に沿って、サーボモータによって最大100mm/sの移動速度で独立にスライド移動する。各々のスワイベルヘッド(1A、1B,1C,1D)には、信号線とエアーコンプレッサー(図示せず)から送り込まれる空気を導入するチューブを束ねた蛇腹状の帯(57a〜57d)がある。スライドレール81は、両端で吊り下げ用の係合部材(82,83)がある。また、各々のスワイベルヘッド(1A、1B,1C,1D)の円筒状のアーム回転体の円筒内部(9a〜9d)に、1本のアーム回転軸90が貫通している。各々のスワイベルヘッド(1A、1B,1C,1D)は、アームの下端部に電磁石(15a〜15d,25a〜25d)を備える。各々のスワイベルヘッド(1A、1B,1C,1D)の下方には、筬が配置される。
【0036】
スワイベル装置は、織機コントローラ(図示せず)から送られる織機カム角度と、織機に連動するジャガード制御装置(図示せず)から出される織物パターン(約5,000〜10,000ステップ)に記述された指令値の双方をステップ毎に受取る。スワイベル装置は、ステップ毎に受取る指令値に従って、位置決め、スワイベル動作(アームの上下動作、アームの開閉動作によるボビン移動)を行う。
スワイベル装置は、スワイベル動作時に懸念される万が一の誤動作によって発生する織機オサの損傷を確実に回避でき、誤動作によって発生するタテ糸切れを最小化する。例えば、一度に切れるタテ糸の本数を数百本から4本程度に低減させる。
【0037】
次に、図7を参照してボビンの移動動作について説明する。
ボビン搬送装置におけるボビンは、経糸(縦糸)の周囲を上下移動する。図7は、4本の経糸(縦糸)70の周囲を、第1のアーム14の下端部に設けられた第1の電磁石15と、第2のアーム24の下端部に設けられた第2の電磁石25と、ボビン2とが、それぞれどのような移動動作を行うのかを模式図で示したものである。
図7(1)は、経糸(縦糸)70の上方に、第1の電磁石15と第2の電磁石25あり、ボビン2は第1の電磁石15に引き付けられている状態を示している。この状態は、例えば、図3に示すようなアームの状態であり、第1のアームと第2のアームが斜め約30°の状態にあると想定すればよい。
【0038】
次に、図7(2)は、経糸(縦糸)70の上方から下方に、第1の電磁石15と第2の電磁石25とボビン2が移動した状態を示している。この状態は、第1のアームと第2のアームが斜め約30°の状態から、アーム回転軸を60°程度回転駆動して、アームが垂直状態になったと想定すればよい。アームの支点部分4にアーム回転体6を取り付けているので、アームの支点部分4からアームの下端部までの長さの約1/2だけ移動したことになる。
【0039】
次に、図7(3)は、カム3(図示せず)を旋回させて、経糸(縦糸)70の下方でアームが閉じた状態を示している。この時に、各々の電磁石(15,25)の磁化状態が切り替わり、各々のアームの間でボビン2の受渡しを行う。
次に、図7(4)は、カム3(図示せず)を更に旋回させてアームが再び開いた状態を示している。図7(2)の状態と異なり、ボビン2は第2の電磁石25に引き付けられている
次に、図7(5)は、経糸(縦糸)70の下方から上方に、第1の電磁石15と第2の電磁石25とボビン2が移動した状態を示している。この状態は、第1のアームと第2のアームが垂直の状態から、図7(2)とは反対方向に、アーム回転軸を60°程度回転駆動して、再びアームが斜め約30°の状態になったと想定すればよい。
【0040】
次に、図7(6)は、カム3(図示せず)を旋回させて、経糸(縦糸)70の上方でアームが閉じた状態を示している。この時に、各々の電磁石(15,25)の磁化状態が切り替わり、各々のアームの間で再びボビン2の受渡しを行う。そして、カム3(図示せず)を更に旋回させてアームが再び開いた状態(図7(1))になる。ボビン2は第1の電磁石15に引き付けられている。このように、図7(1)〜(6)を繰り返すことにより、4本の経糸(縦糸)70の周囲を、反時計回りにボビンを移動させることができる。
なお、図7(1)で、ボビン2が第2の電磁石25に引き付けられている状態にすることにより、時計回りにボビンを移動させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、織機、特にスワイベル織機に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 ボビン搬送装置
2 ボビン
3 カム
4 支点部分
5 ロータリーソレノイド
6 アーム回転体
7 翼(タービン羽根)
12,13,14 第1のアーム
22,23,24 第2のアーム
15 第1の電磁石
25 第2の電磁石
40 スワイベルヘッド
42 ボビンセンサ
46 ヘッド移動サーボモータ
60 筬(オサ)
68 連結レバー
70 経糸(縦糸)
81 スライドレール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸(縦糸)の周囲を上下移動する第1のアームおよび第2のアームと、
第1のアームに設けられた第1の電磁石と、
第2のアームに設けられた第2の電磁石と、
磁石に吸引される材料から成るボビンと、
第1のアームと第2のアームの上下移動を行う上下駆動手段と、
第1のアームと第2のアームの開閉動作を行う開閉駆動手段と、
第1の電磁石と第2の電磁石の通電状態を個別にON/OFFするスイッチ手段と、
上記の上下駆動手段と開閉駆動手段とスイッチ手段を同期させる制御信号と、
から構成され、
ボビンを保持する側のアームの電磁石は電流が流され磁化された状態であり、
ボビンを保持しない側のアームの電磁石は電流が流されず磁化されない状態であり、
第1のアームと第2のアームが経糸(縦糸)の周囲を上下移動し、アームが閉じた時に、各々の電磁石の磁化状態が切り替わり、各々のアームの間でボビンの受渡しを行う、
ことを特徴とするボビン搬送装置。
【請求項2】
前記の第1のアームおよび第2のアームは、第1種のてこの原理を用いて、支点部分で重なり合い、作用点部分に前記電磁石が取り付けられ、力点部分に前記開閉駆動手段が設けられ、
前記開閉駆動手段が、カム機構を用いてカムが旋回することによりアームを開閉し得るものである、ことを特徴とする請求項1に記載のボビン搬送装置。
【請求項3】
前記上下駆動手段は、アーム回転軸を回転駆動するものであり、前記の第1のアームと第2のアームが該アーム回転軸の周囲に取り付けられたものである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のボビン搬送装置。
【請求項4】
前記アーム回転軸の回転動作と、筬揺動軸の回転動作とが、機械的に連動していることを特徴とする請求項3に記載のボビン搬送装置。
【請求項5】
前記ボビンの回転軸の周囲に設けられた複数の翼と、
前記ボビンの糸の巻き出し回転方向とは逆方向に前記翼に風圧を付与する空気噴出し部と、
前記空気噴出し部に空気を送り込むエアーコンプレッサーと、
前記エアーコンプレッサーに対して前記アームの動作と同期した制御信号を送る制御部と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のボビン搬送装置。
【請求項6】
前記ボビンの回転を検出するセンサもしくはボビンの画像を撮像するCCDセンサが更に設けられ、
ボビンの糸切れの検出、ボビンの受渡し移動の完了の検出、あるいは、ボビンの脱落の検出を行えることを特徴とする請求項1又は5に記載のボビン搬送装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかのボビン搬送装置と、
該ボビン搬送装置を、緯糸(横糸)方向に移動させ位置決めする移動駆動手段と、
を備えたスワイベルヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載のスワイベルヘッドを複数台備え、各々のスワイベルヘッドが独立に移動できるものであり、
織機カム角度と織機に連動するジャガード制御装置から出される織物パターンに記述された指令値の双方をステップ毎に受取り、該指令値に従って、各々のスワイベルヘッドの位置決めとスワイベル動作を行う、ことを特徴とするスワイベル装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−60670(P2013−60670A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197770(P2011−197770)
【出願日】平成23年9月11日(2011.9.11)
【出願人】(502406203)株式会社片山商店 (9)
【Fターム(参考)】