説明

ボンド磁石用フェライト磁性粉およびその製造方法、並びにボンド磁石

【課題】バインダーの含有量を増やすことなく、ボンド磁石用フェライト磁性粉の流動性を向上出来るボンド磁石用フェライト磁性粉およびその製造方法、並びに当該ボンド磁石用フェライト磁性粉を含むボンド磁石を提供する。
【手段】ボンド磁石用フェライト磁性粉の原料粉を焼成して粉砕し、平均粒子径を2.5μm以下、比表面積を1.25m/g以上とした後、アニールし、さらに圧縮して、当該圧縮された焼成粉において、乾式空気分散レーザー回折法により測定される平均粒子径をRa(μm)とし、空気透過法により計測される比表面積径をDa(μm)としたとき、Ra<2.5μm、且つ、Ra−Da<0.5μmとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ土類金属元素を構成成分とするフェライト磁性粉に係わり、より詳しくは、磁石に成形する際の加工性に優れ、且つ高磁力を確保出来るボンド磁石用フェライト磁性粉およびその製造法、並びに当該ボンド磁石用フェライト磁性粉を含むボンド磁石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術に係るボンド磁石用フェライト磁性粉として、例えば特許文献1に記載されたボンド磁石用フェライト磁性粉がある。当該ボンド磁石用フェライト磁性粉は、マグネトプランバイト型フェライト構造を有する粉末であって、平均粒子径が0.9〜1.5μm、粒度分布の幾何標準偏差σgが1.8〜2.5、1ton/cm2の圧力で圧縮したときの圧縮密度が3.40g/cm3以上、そして、JIS K-5101で測定した粉体pHが7〜10であるボンド磁石用フェライト磁性粉である。特許文献1によれば、当該ボンド磁石用フェライト磁性粉は、粒度分布が広く、圧縮密度が高いことから、ボンド磁石中への高充填が可能であり、高い配向性を維持することから、磁気特性ならびに成形性に優れたボンド磁石を得ることが可能である旨、記載されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3257936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年のエレクトロニクス機器の進歩により、これらの機器に用いられるボンド磁石に対しても、更なる小型化、形状の多様化、および、磁気特性の向上が求められてきた。ここで本発明者らの検討によれば、当該ボンド磁石に用いるボンド磁石用フェライト磁性粉において、流動性の向上と、磁力の向上とは相反する関係にあり、当該相反する関係は、ボンド磁石に特有の課題である。これは、ボンド磁石用フェライト磁性粉における流動性と磁力とが、当該ボンド磁石用フェライト磁性粉中の、フェライト磁性粉と、樹脂やゴム等のバインダーとの含有割合によって大きく左右されることによる。つまり、バインダー含有率が高くなると流動性は向上し扱い易い状態になるのに対し、ボンド磁石としての性能、すなわち磁力は低下する。反対に、フェライト磁性粉含有率が高くなると、磁力は高くなるが、流動性が低下し扱い難くなる。さらに、フェライト磁性粉含有率が高くなり過ぎると、フェライト磁性粉とバインダーとの混練時において当該混練物の粘度が高くなり、遂には、混練装置が過負荷で停止する恐れや、成形機による射出が出来なくなって生産が停止してしまう恐れもある。
【0005】
さらに、一般的に、磁石の保持力特性を上げるためには、フェライト磁性粉粒子を微粒子化することが求められる。しかし、本発明者らの検討によれば、フェライト磁性粉粒子を微粒子化すると当該粒子と樹脂との混ざり易さが低下して、当該樹脂中における当該粒子の分散性が低下し、製造されるボンド磁石の磁気特性が低下する傾向となる。
【0006】
本発明者は上述の状況下においてなされたものであり、その課題とするところは、バインダーの含有量を増やすことなく、ボンド磁石用フェライト磁性粉の流動性を向上出来るボンド磁石用フェライト磁性粉およびその製造方法、並びに当該ボンド磁石用フェライト磁性粉を含むボンド磁石を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明者らが研究を行った結果、バインダーの含有量を増やすことなく、ボンド磁石用フェライト磁性粉の流動性を向上させる為には、当該ボンド磁石用フェライト磁性粉の粒度分布と結晶形状に加えて、当該ボンド磁石用フェライト磁性粉が、バインダーと混練される際の分散性が重要であることに想到した。
【0008】
そこで、本発明者らは、当該フェライト磁性粉がバインダーと混練される際の分散性を高める構成について研究を行った。そして、当該研究の結果、フェライト磁性粉粒子を、一旦微粒子化し、その後、当該フェライト磁性粉粒子の凝集を抑え、高い分散状態を維持させながら、弱く物理凝集させることで、当該混練の際の分散性を高めることが出来ることに想到した。
【0009】
つまり、フェライト磁性粉がバインダーと混練される際の分散性が高いと、フェライト磁性粉とバインダーとが、より均一に分散されることになり、バインダーの含有量を上げることなく、得られたボンド磁石用フェライト磁性粉の成型時における流動性が向上するのである。さらに、当該ボンド磁石用フェライト磁性粉において、バインダーの含有量を増やすことなくフェライト磁性粉を高充填しているので配向性が良くなり、成形後の磁気特性が向上するものである。
【0010】
ここで、本発明者らは、上述した微粒子化しながら凝集を抑制され、高い分散状態を維持しながら弱く物理凝集した当該フェライト磁性粉粒子を示すパラメータとして、当該フェライト磁性粉の乾式空気分散レーザー回折法により測定された平均粒子径であるRa(μm)、および、空気透過法により計測された比表面積径Da(μm)に注目した。そして、Ra<2.5μm、且つ、Ra−Da<0.5μmであるとき、高い保磁力を発揮することを始めとして優れた磁気特性を示すと共に、バインダーとして用いられる樹脂との親和性が著しく向上し、当該ボンド磁石用フェライト磁性粉を用いて製造されるボンド磁石の成形性、ならびに成形後の磁気特性が向上することに想到し、本発明を完成させたものである。
【0011】
即ち、上述の課題を解決するため、第1の手段は、
ボンド磁石の製造に用いられるフェライト磁性粉であって、
当該フェライト磁性粉の乾式空気分散レーザー回折法により測定された平均粒子径をRa(μm)とし、空気透過法により計測された比表面積径をDa(μm)としたとき、Ra<2.5μm、且つ、Ra−Da<0.5μmであることを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉である。
【0012】
第2の手段は、
ボンド磁石の製造に用いられるフェライト磁性粉の製造方法であって、
当該フェライト磁性粉の原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、
当該焼成粉を粉砕する工程と、
前記粉砕された焼成粉を、アニールする工程と、
前記アニールされた焼成粉を圧縮する工程と、を有することを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0013】
第3の手段は、
第2の手段に記載のボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法であって、
前記アニールされた焼成粉を圧縮する工程とは、
水平に対し所定角度をもって傾けて設置された中空円柱構造を有する外筒と、当該外筒内に内接して設置され自由回転可能な円柱形状の内筒と、を用い、
前記外筒を、当該外筒の円柱の軸を回転軸として回転させて、前記内筒を、当該内筒の円柱の軸を回転軸として自由回転させ、
前記外筒の上位側から、前記アニールされたフェライト磁性粉を投入し、前記外筒の内面と内筒の外面との間を通過させて外筒の下位側から取り出すものであることを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0014】
第4の手段は、
前記アニールされた焼成粉を圧縮する工程における、圧縮の圧力が0.1N/mm以上、80N/mm以下であることを特徴とする第2または第3の手段に記載のボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0015】
第5の手段は、
第1の手段に記載のボンド磁石用フェライト磁性粉を含むことを特徴とするボンド磁石である。
【発明の効果】
【0016】
上記課題を解決するための第1の手段に係るボンド磁石用フェライト磁性粉によれば、当該フェライト磁性粉とバインダーとの混練の際において、当該フェライト磁性粉の分散性が向上し、フェライト磁性粉がバインダー中へ均一に分散されて、当該混練物を成型する際の流動性が向上した。この結果、当該成型時において成形性を保ったまま、フェライト磁性粉を高充填することができ、成形後の磁気特性に優れたボンド磁石を製造することができた。
【0017】
第2から第4のいずれかの手段に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法によれば、フェライト磁性粉とバインダーとの混練時において分散性に優れるフェライト磁性粉を製造することが出来る為、当該フェライト磁性粉を用いることで成形性、および成形後の磁気特性に優れたボンド磁石を製造することができた。
【0018】
第5の手段に係るボンド磁石によれば、成形性、および成形後の磁気特性に優れるので、エレクトロニクス機器の小型化、形状の多様化に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず本発明に係る、ボンド磁石用フェライト磁性粉(以下、フェライト磁性粉と記載する場合がある。)について説明する。
当該フェライト磁性粉は、乾式空気分散レーザー回折法により測定された平均粒子径をRa(μm)とし、空気透過法により計測された比表面積径をDa(μm)としたとき、Ra<2.5μm、且つ、Ra−Da<0.5μmである。
【0020】
Raは、乾燥空気中に分散したフェライト磁性粉の粒子径を測定しており、当該フェライト磁性粉の分散状態における平均粒子径を測定していることになる。ここで、Ra<2.5μmとすることにより、高い磁力を有するボンド磁石を得るために、バインダーである樹脂に対してフェライト磁性粉の混合率を90%以上とした場合においても、当該ボンド磁石をモーター用磁石やマグロールなどに用いる場合に最低限必要な保磁力である2000Oe以上を確保することができる。
【0021】
一方、Daは、フェライト磁性粉体中の空気の流通量によりフェライト磁性粉の比表面積を測定し、粒子形状を立方体に近似して粒子径に換算したパラメータであり、当該フェライト磁性粉を所定の圧力を加えて成形したときの、粒子間の空気の透過し易さを測定していることになる。ここで、空気の透過し易さを示すパラメータDaは、分散状態での平均粒子径Raと比例関係にあり、分散状態での平均粒子径Raが小さくなると、空気が透過しにくくなっていた。その結果、従来法によって製造されたフェライト磁性粉においては、実質的な空気透過性の改善幅である(Ra−Da)は、Ra−Da>0.6μmの範囲に限られていた。これに対し、本発明に係るフェライト磁性粉は、(Ra−Da)が0.5μm以下となり、平均粒子径Raが小さくなっても、空気の透過し易さが著しく改善した。この結果、バインダーである樹脂がフェライト磁性粉間に入り込み易くなり、樹脂とフェライト磁性粉との親和性が改善され、混練、成形後の磁気特性が改善するものと考えられる。
【0022】
以上のことより、フェライト磁性粉体において、Ra<2.5μm、且つ、Ra−Da<0.5μmを満たすことで、バインダー量を増やすことなく、フェライト磁性粉がバインダー中に均一に分散されて、成型時の流動性が向上することとなる。そして、フェライト磁性粉が高充填されることで、当該フェライト磁性粉の配向性が向上し、成形性、および成形後の磁気特性に優れたボンド磁石を製造することができる。
【0023】
次に、本発明に係るボンド磁石用のフェライト磁性粉の製造方法について説明する。
本発明に係るフェライト磁性粉の製造工程は、配合工程、混合工程、造粒工程、焼成工程、粉砕工程、アニール工程、圧縮工程等の諸工程を有する。
以下、各工程毎に説明する。
【0024】
・ 配合混合工程
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとを、モル比でSrCO3: Fe2O3=1: 5.20〜6.00の範囲となるよう評量し、混合して混合物を得る。
【0025】
・ 造粒工程
得られた混合物へ5〜15wt%の水を添加して混合して、φ3〜10mmの球状に造粒し造粒粉を得る。
【0026】
・ 焼成工程
造粒工程で得られた造粒粉を、乾燥後電気炉で900℃〜1350℃の範囲で10分間〜2時間の範囲で焼成して焼成粉を得る。ここで、焼成温度は900℃以上あれば、フェライト化反応が進行する。一方、焼成温度が1350℃以下であれば、当該焼成粉において、結晶の粗大成長や粒子間焼結を回避することが出来る。
【0027】
4.粉砕工程
粉砕工程においては、焼成工程で得られた焼成粉を、平均粒子径が2.5μm以下となるまで粉砕を行い、フェライト磁性粉を製造する。当該焼成粉の粉砕方法としては湿式、乾式など適宜選択すればよい。
【0028】
5.アニール工程
アニール工程は、上述した焼成粉の粉砕時または乾燥後の解砕時に、フェライト磁性粉の結晶に発生する結晶歪を除去する為のものである。アニール温度としては1000℃〜850℃の範囲とすることが好ましい。これは、当該アニール工程の温度を850℃以上にすることにより当該結晶歪みが除去されてHcをより高めることができるからである。一方、当該アニール温度が1000℃以下であれば、フェライト磁性粉の凝集の発生を抑制し、当該フェライト磁性粉の分散性を保つことが出来るからである。
【0029】
ここで、当該凝集をさらに減少させる手段として、上述した微粉砕されたフェライト磁性粉を分割し、当該分割された1の部分を1000℃〜850℃の範囲でアニールし、他の分を800℃以下でアニールまたは全くアニールしないこととし、当該1の部分と他の部分とを混合して用いる構成も好ましい。勿論、上述した微粉砕されたフェライト磁性粉を多数に分割し、1000℃以下の様々な温度でアニールし、それらを混合して用いる構成も好ましい。但し、分割したフェライト磁性粉を混合する際、各分割された粉体の保磁力と比表面積とを測定し、加重平均でHc>2000Oe、比表面積が1.25m/g以上となるように混合することにより、混合後のフェライト磁性粉においてHcを2000Oe以上、比表面積を1.25m/g以上とすることが好ましい。
【0030】
さらに、フェライト磁性粉に上述のアニール工程を施すと、当該フェライト磁性粉のpH値は10〜12程度となり、強アルカリ性をあらわすようになる。当該pH値の上昇は、アルカリ土類金属を含有するフェライト磁性粉の場合は、特に顕著となる。そこで、上述したアニール工程の後、後述する圧縮工程を行う前に、当該pH値の上昇したフェライト磁性粉を水中に懸濁させ、ここに鉱酸を添加することでフェライト磁性粉の粉体pHを下げ、残留成分を除去する工程を附加する構成を採ることが好ましい。当該構成を採ることで、後述する当該フェライト磁性粉とバインダーとの混練において、両者の親和性をより良好にする効果が得られるからである。
【0031】
6.圧縮工程
圧縮工程は、アニールされたフェライト磁性粉に所定の圧縮力を附加して弱く物理凝集させて、微粒子化しながら凝集が抑制され、高い分散状態を維持しながら弱く物理凝集したフェライト磁性粉粒子を得る工程である。そして、当該圧縮力としては0.1〜80N/mm、さらに好ましくは0.1〜50N/mmを附加することが望ましい。
これは、当該圧縮力が0.1N/mm以上とすると、所定の特性を得るのに1分間以下の圧縮時間で可能となるためである。一方、当該圧縮力が80N/mm以下、さらに好ましくは50N/mm以下であれば、得られるフェライト磁性粉の粒子において粉砕がおこらず、保持力の低下が所定内に抑えられて好ましいからである。
また、圧縮を加えるときのフェライト磁性粉の厚みとしては3mm以下とすることが望ましい。3mm以上では所定の空気の透過し易さを改善する効果が得られない。
【0032】
当該圧縮力を附加する装置の好ましい一例について、図1を用いて説明する。
図1は、フェライト磁性粉の粒子に圧縮力を附加する装置の一例の斜視図である。ここで、符号1は中空円柱構造を有する外筒である。外筒1は、例えば内径194mm、長さは600mmであり、水平に対して、例えば15°傾けて設置される。このとき、当該外筒1の上位に位置する端部を外筒上位側1(a)、下位に位置する端部を外筒下位側1(b)とする。また外筒1は図示していない回転装置に接続されており、当該円柱の軸を中心としての回転が可能である。
【0033】
外筒1中には、例えば外径112mm、長さが600mmの円柱形状の内筒2が設けてある。この内筒2は、外筒1内において自由接触線3を介して外筒1に内接している。この結果、内筒2は、外筒1の回転に伴い自由回転可能となっている。ここで、上述した回転装置を用いて外筒1を、例えば60rpmで右回転させる。すると内筒2は自由接触線3を介して右回転する。
【0034】
ここで、外筒上位側1(a)から、スコップ4等を用いてアニールされたフェライト磁性粉5(a)を投入する。投入されたフェライト磁性粉5(a)は、外筒1の内面および内筒2の外面に引きずられるかたちで、外筒1と内筒2との間を回転しながら外筒下位側1(b)へ向かって進むが、このとき内筒2の自重による圧縮力を受ける。当該圧縮力は、内筒2の自重の調整により所定値に設定可能であるが、上述したように0.1〜80N/mmの範囲内となるように、調整する。ここで、外筒1と内筒2との間のギャップの大きさは、ここを通過するフェライト磁性粉5(a)の量と内筒2の自重とで決定されるが、当該フェライト磁性粉5(a)の供給量を調整することで、当該ギャップの大きさを3mm以下とする。このようにして、当該圧縮力を受け外筒下位側1(b)側から排出される圧縮済みのフェライト磁性粉5(b)として、平均粒子径をRa(μm)とし、空気透過法により計測された比表面積径をDa(μm)としたとき、Ra<2.5μm、且つ、Ra−Da<0.5μmである、本発明に係るフェライト磁性粉を得ることが出来る。
【0035】
尚、外筒1の内径および内筒2の外径の大きさは、フェライト磁性粉5(a)の処理量に合わせて適宜決めればよい。また、外筒1の傾斜角度、外筒1・内筒2の軸方向の長さは、および、外筒1の回転速度は、経済的な処理時間を得るために適宜調整すれば良い。
【0036】
このようにして製造されたフェライト磁性粉5(b)は、一般にバインダーと言われる天然、及び合成ゴム又はプラスチック類と混練する時に今まで以上に均一に分散されるため、流動性および配向性が向上する。当該流動性および配向性の向上により、磁場中で射出成形したときに個々の粒子がより均一に配向する為、製造されるボンド磁石において磁力が向上することとなる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明するが、本発明は、当該実施例の範囲に限られる訳ではない。
【0038】
(実施例1)
酸化鉄と炭酸ストロンチウムとを、モル比でSrCO3: Fe2O3=1:5.75となるよう評量する。そして、当該秤量物をサンプルミルで混合し混合粉とする。次に、当該混合粉に10Wt%の水を加えて混練してから造粒し平均粒子径8mmの造粒粉とし、乾燥した。当該乾燥した造粒粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気中にて1200℃、2時間焼成して焼成物を得た。当該焼成物を、まずサンプルミルで粗砕し、さらにウエットミルで150分間湿式粉砕した後、乾燥し、焼成粉である平均粒子径1.89μmのストロンチウムフェライト粉とした。
【0039】
次に、当該ストロンチウムフェライト粉の4Kgを、3.8Kgと0.2Kgとに2分割した。そして、前者の3.8Kgのストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて950℃で20分間アニールした。一方、後者の0.2Kgのストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて600℃で20分間アニールした。そして、前者および後者にてアニールされたストロンチウムフェライト粉を、サンプルミルで混合し、混合ストロンチウムフェライト粉を得た。当該混合ストロンチウムフェライト粉の粉体特性を測定したところ、比表面積1.46m/g、空気透過法で計測された比表面積径1.51μm、平均粒子径2.17μm、圧縮密度3.49g/cmであった。尚、当該比表面積、等の測定方法の態様については、後述する。
【0040】
次に、当該混合ストロンチウムフェライト粉を、図1に示した圧縮力附加装置を用いて圧縮し、実施例1に係るフェライト磁性粉を製造した。
ここで、当該圧縮力附加装置は、外径215mm、内径194mm、長さ600mmの外筒を水平から15°傾斜させた中に、外径112mm、長さ600mm、重量29kgの内筒を設置し(圧縮力0.483N/mm)、当該外筒を60rpmで回転させたものを用いた。
当該圧縮力附加装置へ混合ストロンチウムフェライト粉を投入したところ、当該混合ストロンチウムフェライト粉は、外筒上位側から外筒下位側までを4秒間で通過させることが出来た。そこで、外筒下位側で回収した圧縮済みの混合ストロンチウムフェライト粉を再度、外筒上位側から投入して圧縮処理を行い、当該圧縮処理を6回繰り返して実施例1に係るフェライト磁性粉を製造した。
【0041】
得られた実施例1に係るフェライト磁性粉の粉体特性を測定したところ、平均粒子径(Ra)2.17μm、比表面積1.49m/g、空気透過法による比表面積径(Da)1.82μm、Ra−Daは0.35μm、圧縮密度3.49g/cmであった。
また、メルトフローレート (MFR)は、87.5g/10minと高い流動性を示していた。
磁気特性の測定を行ったところ、Brは3037Gauss(以下Gとする)、iHcは2384Oe、BHmaxは2.26MGOe、SQxは0.980であった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が良いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していた。
以上、実施例1に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0042】
ここで実施例1に係るフェライト磁性粉の比表面積、等の測定方法の態様について説明する。
【0043】
1.比表面積の測定
湯浅アイオニクス(株)製、MS-17を用いて測定した。
【0044】
2.平均粒子径の測定
フェライト磁性粉単体の平均粒子径測定は乾式法によって行われるのが好ましい。これは、一般的にフェライト磁性粉が水溶液中では凝集し易いためである。そこで、本実施例における平均粒子径測定は、測定値の再現性に優れる乾式のレーザー回折法で行った。測定装置は、日本電子株式会社製、“HELOS&RODOS” MODEL No. DESK JET 660Cのレーザー回折式粒度分布計を使用した。ここで、測定条件はpressure5Bar、Feed rate 55%, injector depression 130 mbar,rotation rate 30%, focal length 20mm, time resol. 1000ms, measuring time/timeout 3.00s, start/stop with 0.5% on channel 27, density 5.10g/ccmで行った。そして、当該測定で得られるメディアン径(x50)の値を平均粒子径とした。
【0045】
3.空気透過法による比表面積径の測定
測定装置は、島津製作所(株)製、粉体比表面積測定装置SS-100を用いて行った。
当該粉体比表面積測定装置に付属のプレス機を用い、フェライト粉試料を、断面積2cm、厚さ1cmにプレス成形する。一方、当該粉体比表面積測定装置の試料筒にワセリンを少量塗り、プレス成形されたフェライト粉試料をセットする。
そして、空気が、当該プレス成形されたフェライト粉試料内を2cm透過する時間tを計測し、この計測時間tから下記の換算式を用いて、フェライト粉試料の比表面積を算出した。
Sw=(14/ρ)・((ΔP・A・t・ε)/(η・L・Q・(1−ε)))0.5
但し、Swは比表面積である。ρはフェライトの密度であり本実施例においては5.1g/cm3である。ΔPは圧力差であり本実施例においては40g/cm2である。Aは試料層の断面積であり本実施例においては2cmである。ηは水の粘性係数であり180×10−6g/cm2である。Lは試料の厚さであり本実施例においては1cmである。Wは試料の重量であり本実施例においては5gである。Qは空気の透過量であり本実施例においては2cm3である。tは空気の透過所要時間である。εは試料層の空隙率(1−W/(ρ・A・L))である。
【0046】
次に、計測された比表面積をSw、ρをフェライト粉の真密度とし、フェライト粉試料の粒子形状は立方体且つ均一であると近似して、比表面積径:Da=6/(ρ・Sw)より、比表面積径を算出した。
【0047】
4.圧縮密度の測定
圧縮密度は、測定に係るフェライト磁性粉を1ton/cm2で成形した時の密度値を測定し、当該測定値を圧縮密度の値とした。
【0048】
5.メルト・フロー・レイト(MFR)の測定
流動性の指標であるMFRは、以下の様に測定した。
(1)フェライト磁性粉3000gを採取し、シランカップリング剤(日本ユニカ株式会社製、商品名A-1122)30g、水15g、メタノール30gと伴にハイスピードミキサー(深江工業株式会社製、FS−GC−5JD)内に装填し、周速8m/sec、処理時間5分間で混合し、混合物を得る。
(2)得られた混合物を100℃×90分間乾燥し、乾燥粉を得る。
(3)得られた乾燥粉3075gと、6−ナイロン(宇部興産株式会社製、P-1010)408.8gとをハイスピードミキサー(深江工業株式会社製、FS−GC−5JD)内に装填し、周速8m/sec、処理時間5分間で混合し、混合物を得る。
(4)得られた混合物を230℃で混練し、平均径がほぼ2mmのペレットにする。尚、当該混練には、KCK株式会社製の連続混練押し出し式装置(KCK70-22VEX(6))を用いた。
(5)得られたペレットに270℃で荷重10kgを掛け、10分間で当該連続混練押し出し式装置から押し出された重量を測定し、この値をメルト・フロー・レイト(MFR)とした。尚、測定に用いたメルトインデクサーは、東洋精機株式会社製のC-5059D2を用いた。この装置の構造はJIS−K7210に準拠したものである。
【0049】
6.磁気特性の測定
磁気特性は、以下の様に測定した。
(1)上記「5.メルト・フロー・レイト(MFR)の測定」で説明した(1)〜(4)と同様にして、平均径がほぼ2mmのペレットを得る。
(2)得られたペレットを、当該射出成形機(住友重機製)を用い10KOeの磁場中にて、温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出成形し、直径15mm×高さ8mmの円柱状の成形品を得た。尚、当該円柱状の成形品において、磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿う方向となっている。
(3)得られた円柱状の成形品のBr、iHc、BHmax、SQx(Br/4πI)を、BHトレーサー(東英工業製、BHトレーサー)で測定した。
【0050】
(実施例2)
実施例1と同様にしてストロンチウムフェライト粉を製造した。
次に、当該ストロンチウムフェライト粉の4Kgを、3.6Kgと0.4Kgとに2分割した。そして、前者の3.6Kgのストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて900℃で20分間アニールした。一方、後者の0.4Kgのストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて600℃で20分間アニールした。そして、前者および後者にてアニールされたストロンチウムフェライト粉を、ハイスピードミキサーで混合し、混合ストロンチウムフェライト粉を得た。当該ストロンチウムフェライト粉の粉体特性を測定したところ、比表面積1.52m/g、空気透過法により計測された比表面積径1.39μm、平均粒子径2.07μm、圧縮密度3.49g/cmであった。尚、当該比表面積、等の測定方法の態様は、実施例1と同様である。
【0051】
次に、当該ストロンチウムフェライト粉へ実施例1と同様の圧縮工程を行って、実施例2に係るフェライト磁性粉を得た。
得られたフェライト磁性粉の粉体特性を測定したところ、平均粒子径(Ra)2.07μm、比表面積1.53m/g、空気透過法により計測された比表面積径(Da)1.65μm、Ra−Daは0.42μm、圧縮密度3.49g/cmであった。
さらに実施例1と同様にMFRを測定したところ、90.5g/10minと高い流動性を示していた。
また、実施例1と同様に磁気測定を行ったところ、Brは3030G、iHcは2091Oe、BHmaxは2.24MGOe、SQxは0.977であった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が良いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していた。
以上、実施例2に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0052】
(実施例3)
実施例2において圧縮行程のパス数を6回から3回に変えて、実施例3に係るフェライト磁性粉を得た。
得られたフェライト磁性粉の粉体特性を測定したところ、平均粒子径(Ra)2.07μm、比表面積1.53m/g、空気透過法により計測された比表面積径(Da)1.57μm、Ra−Daは0.50μm、圧縮密度3.49g/cmであった。
さらに実施例1と同様にMFRを測定したところ、87.1g/10minと高い流動性を示していた。
また、実施例1と同様に磁気測定を行ったところ、Brは3022G、iHcは2294Oe、BHmaxは2.23MGOe、SQxは0.977であった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が良いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していた。
以上、実施例3に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0053】
(実施例4)
実施例1と同様だが、ウェットミルによる湿式粉砕工程を250分間おこなって粉砕した後、乾燥して焼成粉とし、平均粒子径1.69μmのストロンチウムフェライト粉を製造した。
当該平均粒子径1.69μmのストロンチウムフェライト粉と、実施例1で製造した平均粒子径1.89μmのストロンチウムフェライト粉とを、30:70で秤量し、ハイスピードミキサーで混合して混合ストロンチウムフェライト粉を得た。
得られた混合ストロンチウムフェライト粉へ、実施例1と同様にアニール処理および圧縮処理を行い、実施例4に係るフェライト磁性粉を製造した。
製造されたフェライト磁性粉の粉体特性を測定したところ、平均粒子径(Ra)1.80μm、比表面積2.23m/g、空気透過法により計測された比表面積径(Da)1.39μm、Ra−Daは0.41μm、圧縮密度3.51g/cmであった。
さらに実施例1と同様にMFRを測定したところ、105.3g/10minと高い流動性を示していた。
また、実施例1と同様に磁気測定を行ったところ、Brは3033G、iHcは2583Oe、BHmaxは2.25MGOe、SQxは0.973であった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が良いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していた。
以上、実施例4に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同様にしてストロンチウムフェライト粉を製造し、圧縮工程前のストロンチウムフェライト粉を、比較例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉として、粉体特性、流動特性、および磁気特性を実施例1と同様にして測定した。
すると、平均粒子径(Ra)2.17μm、比表面積1.46m/g、空気透過法により計測された比表面積径(Da)1.51μm、Ra−Daは0.66μm、圧縮密度3.49g/cmであり、Ra−Daが0.5μmを超えていた。
また、MFRを測定したところ、65.2g/10minと、実施例と比較して低い流動性を示した。
また、実施例1と同様に磁気測定を行ったところ、Brは3000G、iHcは2392Oe、BHmaxは2.19MGOe、SQxは0.965あった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が低いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も低く、さらには、磁気特性も低かった。
以上、比較例1に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0055】
(比較例2)
実施例2と同様にしてストロンチウムフェライト粉を製造し、圧縮工程前のストロンチウムフェライト粉を比較例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉として、粉体特性、流動特性、および磁気特性を実施例1と同様にして測定した。
すると、平均粒子径(Ra)2.07μm、比表面積1.52m/g、空気透過法により計測された比表面積径(Da)1.39μm、Ra−Daは0.68μm、圧縮密度3.49g/cmであり、Ra−Daが0.5μmを超えていた。
また、MFRを測定したところ、60.3g/10minと、実施例1、2と比較して低い流動性を示していた。
また、実施例1と同様に磁気測定を行ったところ、Brは2996G、iHcは2270Oe、BHmaxは2.13MGOe、SQxは0.964あった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が低いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も低く、さらには、磁気特性も低かった。
以上、比較例2に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0056】
(比較例3)
実施例1と同様にしてストロンチウムフェライト粉を製造し圧縮工程を行うことなく、このストロンチウムフェライト粉の全量を電気炉内に設置し、1050℃で20分間アニールして比較例3に係るフェライト磁性粉を得た。
得られた比較例3に係るフェライト磁性粉の粉体特性を測定したところ、
すると、平均粒子径(Ra)2.33μm、比表面積1.16m/g、空気透過法により計測された比表面積径(Da)1.70μm、Ra−Daは0.63μm、圧縮密度3.47g/cmであり、Ra−Daが0.5μmを超えていた。
さらに実施例1と同様にMFRを測定したところ、57.9g/10minと、実施例1、2と比較して低い流動性を示していた。
また、実施例1と同様に磁気測定を行ったところ、Brは2963G、iHcは2371Oe、BHmaxは2.16MGOe、SQxは0.969あった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が低いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も低く、さらには、磁気特性も低かった。
以上、比較例3に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0057】
(比較例4)
実施例1において、ウェットミルによる湿式粉砕工程を250分間として粉砕した後、乾燥し、焼成粉である平均粒子径1.69μmのストロンチウムフェライト粉を得た。
次に、圧縮工程を行うことなく、このストロンチウムフェライト粉の全量を電気炉内に設置し、1050℃で20分間アニールして比較例4に係るフェライト磁性粉を得た。
得られた比較例4に係るフェライト磁性粉の粉体特性を測定したところ、
すると、平均粒子径(Ra)1.78μm、比表面積2.03m/g、空気透過法により計測された比表面積径(Da)1.16μm、Ra−Daは0.62μm、圧縮密度3.47g/cmであり、Ra−Daが0.5μmを超えていた。
さらに実施例1と同様にMFRを測定したところ、57.2g/10minと、実施例と比較して低い流動性を示していた。
また、実施例1と同様に磁気測定を行ったところ、Brは2968G、iHcは2353Oe、BHmaxは2.16MGOe、SQxは0.967あった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が低いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も低く、さらには、磁気特性も低かった。
以上、比較例4に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0058】
(比較例5)
実施例1と同様にしてストロンチウムフェライト粉を製造し、圧縮工程を行うことなく、このストロンチウムフェライト粉の全量を電気炉内に設置し、1080℃で20分間アニールして比較例5に係るフェライト磁性粉を得た。
得られた比較例5に係るフェライト磁性粉の粉体特性を測定したところ、
すると、平均粒子径(Ra)2.42μm、比表面積1.02m/g、空気透過法により計測された比表面積径(Da)1.82μm、Ra−Daは0.6μm、圧縮密度3.47g/cmであり、Ra−Daが0.5μmを超えていた。
さらに実施例1と同様にMFRを測定したところ、57.6g/10minと、実施例と比較して低い流動性を示していた。
また、実施例1と同様に磁気測定を行ったところ、Brは2960G、iHcは2298Oe、BHmaxは2.12MGOe、SQxは0.952あった。即ち、フェライト磁性粉の流動性が低いことから、配向性の指標の一つであるSQx値も低く、さらには、磁気特性も低かった。
以上、比較例5に係るフェライト磁性粉について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0059】
【表1】

【0060】
(実施例1〜4および比較例1〜5のまとめ)
表1の結果から明らかなように、本発明に係るフェライト磁性粉において、Ra<2.5μm、且つ、Ra−Da<0.5μmとすることで、フェライト磁性粉の流動性を示すMFRを大きく向上させることが出来た。そして、当該MFRの向上により、当該フェライト磁性粉とバインダーとの混練の際において、当該フェライト磁性粉の分散性が向上する結果、フェライト磁性粉とバインダー中へ均一に分散されて、成型時の流動性が向上する。この結果、当該混練物において、バインダー量を増やすことなく流動性を保つことが可能となり、フェライト磁性粉の配合量を保持または増量できることになる。そして、当該混練物を成形したボンド磁石において、成形性を保ちながら、フェライト磁性粉が高充填でき、磁気特性に優れたボンド磁石を製造することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】圧縮力附加装置の一例の概念的な斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1.外筒
1(a).外筒上位側
1(b).外筒下位側
2.内筒
3.自由接触線
4.スコップ
5(a).フェライト磁性粉
5(b).圧縮済みのフェライト磁性粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンド磁石の製造に用いられるフェライト磁性粉であって、
当該フェライト磁性粉の乾式空気分散レーザー回折法により測定された平均粒子径をRa(μm)とし、空気透過法により計測された比表面積径をDa(μm)としたとき、Ra<2.5μm、且つ、Ra−Da<0.5μmであることを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉。
【請求項2】
ボンド磁石の製造に用いられるフェライト磁性粉の製造方法であって、
当該フェライト磁性粉の原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、
当該焼成粉を粉砕する工程と、
前記粉砕された焼成粉を、アニールする工程と、
前記アニールされた焼成粉を圧縮する工程と、を有することを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法であって、
前記アニールされた焼成粉を圧縮する工程とは、
水平に対し所定角度をもって傾けて設置された中空円柱構造を有する外筒と、当該外筒内に内接して設置され自由回転可能な円柱形状の内筒と、を用い、
前記外筒を、当該外筒の円柱の軸を回転軸として回転させて、前記内筒を、当該内筒の円柱の軸を回転軸として自由回転させ、
前記外筒の上位側から、前記アニールされたフェライト磁性粉を投入し、前記外筒の内面と内筒の外面との間を通過させて外筒の下位側から取り出すものであることを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項4】
前記アニールされた焼成粉を圧縮する工程における、圧縮の圧力が0.1N/mm以上、80N/mm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のボンド磁石用フェライト磁性粉を含むことを特徴とするボンド磁石。

【図1】
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【公開番号】特開2007−214510(P2007−214510A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35512(P2006−35512)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【出願人】(595156333)DOWAエフテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】