説明

ボールペンの製造方法

【課題】加工工程の追加や高い精度を要求せず、ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆したホットメルト剤の固着力を向上させる製造方法。
【解決手段】ボールペンチップの先端インキ吐出口をホットメルト剤で被覆したボールペンの製造方法において、前記ホットメルト剤が、少なくとも熱可塑性樹脂を含有し、溶融したホットメルト剤を前記ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆するように付着させた後、室温程度まで冷却し、その後40℃以上前記熱可塑性樹脂の融点より20℃低い温度以下の温度に再加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用前のインキ乾燥や不意のインキの吐出防止、ボールペンチップ先端部の保護などのために、少なくともボールペンチップの先端インキ吐出口をホットメルト剤で被覆したボールペンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水性インキを用いたノック式ボールペンのように、ボールペンチップの先端開口部からインキが乾燥することでの筆跡のカスレ等の防止の目的からボールペンチップの先端インキ吐出口を覆うシール部材としてホットメルト剤を固着させたものが知られている。
また、近年、油性インキでありながら軽く滑らかな書き味を特徴とした低粘度油性インキを用いたノック式ボールペンが開発されており、数百〜数千(mPa・s)という粘度の低さから、店頭陳列時、誤って、ペン先のボールが押され、インキが染み出すことを防止するため、水性インキを用いたノック式ボールペン同様、ボールペンチップの先端インキ吐出口を覆うシール部材としてホットメルト剤を固着させるものがある。
これらのホットメルト剤として、エチレン−酢酸ビニル共重合体などをベース樹脂を溶融させた浴にボールペンチップの先端を浸して付着させ放冷して固化させるものが知られているが、付着した樹脂が固化しただけのものなので、わずかな外力で被覆樹脂が剥がれ落ちてしまう恐れがある。
特に、ノック式ボールペンに於いては、ペン先を出没可能にするため、インキ吐出口を覆うシール部材としてホットメルト剤の外径を外装の先端開口内径より小さく形成しなくてはならず、被覆樹脂の大きさを調整して固着力を向上させることができない。
【0003】
そこで、特開2001−225584号公報(特許文献1)には、先端被覆樹脂の固着部位のうち、カシメ部、テーパー部のカシメ部側、又は、カシメ部及びテーパー部のカシメ部側に変形部を設け、被覆樹脂の固着力を向上させたボールペンチップの製造方法が開示されている。
また、特許第4305601号(特許文献2)には、直円筒状の金属チップの先端部近傍外面を押圧変形により受け座を加工する際、形成される周状に分散配置された凹部周囲の直円筒状の外面を覆うように被覆樹脂を固着させ、被覆樹脂の固着力を向上させたボールペンチップの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−225584号公報
【特許文献2】特許第4305601号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、変形部を設けるためには、加工工程を追加しなければならず製造コストが高くなる。更に、変形部の寸法バラツキにより被覆樹脂の固着力が強くなりすぎて、使用直前に取り外しにくいものが発生する恐れがあり、変形部の寸法は、高い精度が要求され、更に製造コストが高くなる。更に、使用直前に取り外した際、被覆樹脂の一部が変形部に残って、筆記時、残った被覆樹脂が紙面と接し、筆記の邪魔となったり、美観を損なう恐れがあった。
また、上記特許文献2に記載の発明では、凹部を形成するための別工程は、必要ないが受け座を形成する時に必然的に形成される周状に分散配置された凹部を利用しているため、受け座の設計が優先され、受け座の大きさ及び形状が直円筒状の外面に形成される凹部の大きさ及び形状に比例的に投影されることから、被覆樹脂の固着力を受け座形成と切り離し調整することができず、狙いどうりの固着力の設定がしにくい。更に、特許文献1に記載の発明と同様に、使用直前に取り外した際、被覆樹脂の一部が凹み部に残って、筆記の邪魔となったり、美観を損なう恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくともボールペンチップの先端インキ吐出口をホットメルト剤で被覆したボールペンの製造方法において、前記ホットメルト剤が、少なくとも熱可塑性樹脂を含有し、溶融したホットメルト剤を前記ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆するように付着させた後、室温程度まで冷却し、その後40℃以上前記熱可塑性樹脂の融点より20℃低い温度以下の温度に再加熱することを特徴としたボールペンの製造方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶融状態で付着されたホットメルト剤が、一度室温程度まで冷却された後に、再加熱され、再度冷却される時に、これら樹脂の分子配列の変化や相溶体の移動などが起こり収縮したり、ボールペンチップを構成する金属材質に対する濡れ性や密着性が向上して、金属表面の微細な凹部分に樹脂が侵入する、所謂アンカー効果などして固着力が向上するものと推察される。
また、ホットメルト剤が、粘着性付与樹脂を含有する場合、加えて金属表面への密着性やタック性が向上しより好ましいものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆するホットメルト剤としては、熱可塑性樹脂の単体又は複数種の熱可塑性樹脂の混合物及び熱可塑性樹脂に粘着性付与剤やワックスなど、その他添加物を混合したものを使用することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、シリコーン、スチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイソブチレン、アクリル、ポリアセタール、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル及び共重合体、ポリビニルブチラール、塩化ビニル酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、シリコーン、セルロース誘導体、ポリオレフィン系樹脂、合成ゴム系樹脂、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体が例示できる。
【0009】
ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆したホットメルト剤は、ペン先に衝撃が加わった時、外れたり、破損したりしにくいように、冷却状態でも適度な柔らかさが必要とされる。又、ホットメルト剤をボールペンチップの先端インキ吐出口に被覆する時、溶融温度が低いほうが作業性及び安全性で好ましい。又、被覆するボールペンチップの先端との、ぬれ性が高いほうが固着力が上がるため、溶融状態での粘度が低いほうが好ましいことから特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体がホットメルト剤として、より好ましい。
具体的な商品として、ポリアミド樹脂を主剤とするものには、セメダイン(株)製ホットメルト剤HM360や、住友スリーエム(株)製ホットメルト剤EC─3779、同7375、ダイセル・エボニック(株)製ホットメルト剤ベスタメルト722などが挙げられ、エチレン酢酸ビニル共重合体を主剤とするものには、セメダイン(株)製ホットメルト剤HM200、同207、同208S、同214、同223、同224、同244、日立化成ポリマー(株)製ホットメルト剤ハイボン9800、同9822、同9876、同9877、同9888などがある。これら一種もしくは二種以上の混合物を使用できる。
【0010】
粘着性付与剤として、テルペン樹脂及びその誘導体、テルペンフェノール共重合体、ロジン及びその誘導体、水添ロジン、ロジンエステル、石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン樹脂、α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体、スチレンとアクリロニトリル及びインデンのターポリマー、イソプレン系樹脂などが例示できる。
【0011】
軟化剤、可塑剤として、ポリブテン、液状ロジンエステル、低分子スチレン樹脂、塩素化パラフィン、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジブチルなどが例示できる。
【0012】
ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリビニルメチルエーテルなどが例示できる。
【0013】
その他添加材として、充填材としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、粉末パルプ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、その他無機・有機顔料など、吸着材としては、ゼオライト、シリカゲルなど、抗酸化剤としては、フェノール系、アミン系、リン酸系などが例示できる。
【0014】
ホットメルト剤をボールペンチップの先端に固着する方法としては、ボールペンチップの先端に付着したインキ、油分、汚れがあると、ホットメルト剤の固着力低下となるため、準備作業として、ソルミックスAP−4(エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンの混合溶剤、日本アルコール販売(株)製)を繊維のケバ立ちや紙粉が少ない紙性ウエスであるキムワイプ(日本製紙クレシア(株)製)に浸し、ボールペンチップの先端の汚れ拭きをしたほうが好ましい。
【0015】
次に、ホットプレート等の加熱機器上に、ホットメルト剤を溶融する溶融浴を設置し、この溶融浴にホットメルト剤のペレットを適量入れ、ヒーターにて加熱する。溶融温度が高すぎると酸化して固着力が低下し、逆に溶融温度が低すぎると溶融したホットメルト剤の粘度が高い状態となり、ボールペンチップの先端を溶融したホットメルト剤に浸漬しても濡れ性が低下し、固着力が低下するので、温度調節器付き加熱機器で適切な温度に管理する必要がある。
例えば、セメダイン(株)のホットメルト剤HM200の場合、溶融浴の大きさや液温度測定位置にもよるが220℃から240℃に設定して、ホットメルト剤のペレットを溶融状態とする。次いで、ボールペンチップの先端インキ吐出口を溶融したホットメルト剤に漬けて、1〜2秒後に引き上げ、固着したホットメルト剤の表面温度が室温まで冷却固化させるため2分程度、室温放置する。
【0016】
ボールペンチップの先端に固着させるホットメルト剤の外径は、ノック式ボールペンに於いては、ペン先を出没可能にするため、外装先端開口内径より小さく形成しなくてはならず、その調整方法としては、ボールペンチップの先端をどれぐらいの深さまで溶融したホットメルト剤液に浸漬するかで決まる。一つの方法としては、ボールペンチップの先端が下に出るように穴を明けたベークライトのような耐熱板をホットメルト剤が溶融した溶融浴の上面縁に置き浸漬作業をすることでホットメルト剤溶融液とボールペンチップの先端との距離を一定に規制する。
又、ボールペンチップの先端にホットメルト剤が固着することで溶融したホットメルト剤が減少するので、ボールペンチップの先端に固着させるホットメルト剤の外径のバラツキ減少及び、溶融したホットメルト剤の溶融温度変化減少のため、こまめにホットメルト剤を補充することが望ましい。
【0017】
ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆したホットメルト剤を一度室温程度まで冷却した後に、40℃以上ホットメルト剤に使われている熱可塑性樹脂の融点より20℃低い温度以下の温度に再加熱し、再度冷却することで、固着力が向上する。
特に、筆記中、ボールペンチップの先端へのインキ這い上がり防止のためフッ素処理等の撥水処理を施したボールペンチップは、固着力が低下するので再加熱処理は、有効である。
【0018】
再加熱の方法としては、ボールペンチップの先端インキ吐出口にホットメルト剤を被覆した所謂リフィールを恒温槽などの温度設定及び温度制御のできる機器に40℃以上ホットメルト剤に使われている熱可塑性樹脂の融点より20℃低い温度以下の温度範囲で設定、昇温後投入し、1時間程度処理し、室温で冷却する。
室温が低すぎると、急冷状態となるため、均一に温度が変化しなくなり、固着力が高まらない場合があり好ましくない。また、室温が高すぎると、再加熱温度との差が減少し、固着力向上効果が減少するため、室温約20〜30℃が好ましい。又、再加熱処理時間が30分程度と短かいと固着力向上効果が低くなるが長時間、例えば24時間処理しても効果に差はなく、ホットメルト剤を被覆する作業終了後、夜間無人処理することもできる。
尚、ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆したホットメルト剤どうしが触れた状態で再加熱処理すると、ホットメルト剤が再軟化し、ホットメルト剤どうしが付着したり、変形する恐れがあるため、リフィールは、並べた状態で再加熱処理をすることが好ましい。
【0019】
使用するボールペンチップの基本的な構造は、紙面などの被筆記面と接触してインキを転写する筆記部材となるボールと、これを回転自在に抱持するボールホルダーとからなるものであり、インキの通り道であるボールホルダーの貫通孔を通じて被筆記面にインキを付与するものである。
【0020】
ボールは、タングステンカーバイドやシリコンカーバイドなどを主成分とした焼結体のボールを使用できる。ボールの表面粗さが大き過ぎると、筆記時、ボールホルダーのボール受け座部とボールとの接触抵抗が大きくなり、筆記感が重くなったり、ボールホルダーのボール受け座部の摩耗によるインキ吐出量の増加や方向性筆跡といった不具合になるため、算術平均粗さRa5〜12nmが好ましく、適宜設定する必要がある。
ボール表面とホットメルト剤との固着接触面積を大きくすれば、一般論として固着力は上がる。ボールの表面積を大きくするためには、表面粗さを大きくすることとなるが、上述の通り、ボール受け座の摩耗促進となるなどの弊害もあるので、適宜調整が必要となる。
【0021】
ボールホルダーとなる金属製の柱状部材は、ステンレスや黄銅、洋白などの合金製の線材を切断して使用でき、先端外形を先端に向かい縮径するテーパー形状に切削する。この先端部分にホットメルト剤を付着させるが、ボール同様、ボールペンチップの先端インキ吐出口を覆うホットメルト剤の固着力を上げるには、ボールホルダー先端外形テーパー部の加工送りを速くしたり、切削速度を遅くしたりし、挽き目を荒くし、表面粗さを大きくするほうが望ましいが、表面粗さが大き過ぎると美観を損ねるため、算術平均粗さRa0.1〜3μmが好ましく、適宜加工条件を設定する必要がある。尚、ボールホルダーとしては、この他にパイプ材を塑性変形や切削加工を施した、所謂パイプ式ボールペンチップのものを使用することもできる。
【0022】
インキ収容管には、ステンレスや黄銅などの金属製のものやポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂や、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂など樹脂製のものが使用可能である。樹脂製のインキ収容管を使用した場合、ホットメルト剤を再加熱するに際して、インキ収容管に使用した材質の熱変形温度内とすることが好ましい。
【実施例】
【0023】
ホットメルト剤として下記の材料を用いた。尚、上記組成の「部」とあるのは、「重量部」を表す。
<材料1>
エバフレックスEV360(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、融点77℃、三井・デュポン ポリケミカル(株)製) 100部
【0024】
<材料2>
ナイロン11(ポリアミド樹脂、融点187℃、流浸工業(株)製) 100部
【0025】
<材料3>
エバフレックスEV360(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、融点77℃、三井・デュポン ポリケミカル(株)製) 50部
ハリエスターS(粘性付与剤、ロジン変性グセリンエステル、ハリマ化学(株)
製) 50部
【0026】
<材料4>
エバフレックスEV360(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、融点77℃、三井・デュポン ポリケミカル(株)製) 40部
ハリエスターS(粘性付与剤、ロジン変性グセリンエステル、ハリマ化学(株)
製) 30部
パラフィンワックス130(パラフィンワックス、融点54℃、日本精蝋(株)製) 30部
【0027】
<材料5>
HM200(エチレン酢酸ビニル共重合体系ホットメルト剤、セメダイン(株)
製) 100部
【0028】
<材料6>
ベスタメルト722(ポリアミド系ホットメルト剤、ダイセル・エボニック(株)
製) 100部
【0029】
以下、製造工程を説明する。尚、各工程に冠した括弧内の数字の順に工程が移行するものとする。
【0030】
各実施例、比較例で共通の工程を示す。
<(1)ホットメルト剤の溶融工程>
ホットメルト剤を溶融浴に適量入れ、ホットプレート設定温度をホットメルト剤の融点より10℃程度高い温度に設定し、溶融状態にする。
2種以上配合したものは、配合物の中で融点が高い配合物の融点より10℃程度高い温度に設定し、攪拌しながら溶融状態にする。
【0031】
<(2)ボールペンチップの先端汚れ拭き工程>
ぺんてる株式会社製の0.7mm油性ボールペン「ビクーニャ」用リフィール(製品符号:BXМ7H−A)のボールペンチップ先端部分をソルミックスAP−4(エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンの混合溶剤、日本アルコール販売(株)製)を浸した、紙性ウエスであるキムワイプ(日本製紙クレシア(株)製)で汚れ拭きする。
【0032】
<(3)ボールペンチップの先端へのホットメルト剤被覆工程>
リフィールをボールペンチップの最大外形2.3mmより僅かに大きい2.4mmの穴を明けたベークライト板の上面にボールペンチップとインキ収容管が圧入結合された段部が当たる位置まで差し込み、前記ホットメルト剤の溶融工程でホットメルト剤が溶融した溶融浴の上面縁にリフィールが差し込まれたベークライト板を当て、溶融したホットメルト剤にボールペンチップの先端を浸漬する。ホットメルト剤溶融液とボールペンチップの先端との距離を液面にて調整し、ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆したホットメルト剤の大きさが1.7〜2.2mmになるようにした。溶融したホットメルト剤に浸漬後、1〜2秒後に引き上げ、約20〜25℃の室温で、2分程度放置し、冷却固化する。
【0033】
<(4)再加熱工程>
前記ボールペンチップの先端へのホットメルト剤被覆工程で得られたリフィールを再加熱温度に設定した恒温槽に1時間入れ、約20〜25℃の室温で60分冷却する。
【0034】
実施例1
材料1を溶融温度85℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを再加熱温度40℃で処理し、室温冷却したもの。
【0035】
実施例2
材料1を溶融温度85℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを再加熱温度50℃で処理し、室温冷却したもの。
【0036】
実施例3
材料1を溶融温度85℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを材料1の融点より17℃低い再加熱温度60℃で処理し、室温冷却したもの。
【0037】
実施例4
材料2を溶融温度200℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを材料2の融点より87℃低い再加熱温度100℃で処理し、室温冷却したもの。
【0038】
実施例5
材料3を溶融温度85℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを配合物の中で融点の高いエバフレックスEV360の融点より17℃低い再加熱温度60℃で処理し、室温冷却したもの。
【0039】
実施例6
材料4を溶融温度200℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを配合物の中で融点の高いナイロン11の融点より87℃低い再加熱温度100℃で処理し、室温冷却したもの。
【0040】
実施例7
材料5を溶融温度220℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを再加熱温度50℃で処理し、室温冷却したもの。
【0041】
実施例8
材料6を溶融温度200℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを再加熱温度50℃で処理し、室温冷却したもの。
【0042】
比較例1
材料1を溶融温度85℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを再加熱温度30℃で処理し、室温冷却したもの。
【0043】
比較例2
材料1を溶融温度85℃で溶融したホットメルト剤を被覆したリフィールを材料1の融点より7℃低い再加熱温度70℃で処理し、室温冷却したもの。
【0044】
被覆したホットメルト剤の固着力増減率測定
上述の各実施例、比較例にて得られたボールペンサンプルを(株)イマダ製デジタルフォースゲージDPX─1に被覆したホットメルト剤部分を引っ掛ける冶具にて、リフィールを軸心方向に引っ張り、被覆したホットメルト剤が外れた荷重を各々5本、ピーク値を測定し、その平均値を再加熱なし品(5本)の平均値で除し固着力増減率とし、表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
比較例1の加熱処理では、室温との加熱温度の差が小さく、基準となる再加熱なし品と固着力が、変わらず、効果がみられない。
又、比較例2ようにホットメルト剤の融点に近い融点より7℃低い再加熱処理では、被覆したホットメルト剤が変形してしまう不具合が生じた。
実施例1では、固着力増減率が、上がり効果が認められる。更に、実施例2で上昇することから再加熱温度が高くなるにつれ効果が大きくなるが、ホットメルト剤の融点より17℃低い再加熱温度の実施例3と実施例2で固着力増減率の変化がないことから固着力向上効果は、均衡状態と言える。尚、ホットメルト剤の融点より20℃程度低い再加熱処理の実施例3では、被覆したホットメルト剤が比較例2のような変形とはならなかった。
更に実施例4では、別の材料で融点より87℃低い再加熱温度でも固着力向上効果が認められる。
又、2種類の配合をし、配合物の中で融点の高いエバフレックスEV360の融点より17℃低い再加熱温度の実施例5でも同様の効果が認められる。
同様に、3種類の配合をし、配合物の中で融点の高いナイロン11の融点より87℃低い再加熱温度の実施例6でも効果が認められる。
更に、実施例7、実施例8でも40℃以上の再加熱処理温度50℃にて処理し、固着力向上効果が認められることから、市販のホットメルト剤でも有効である。
これらのことから、40℃以上熱可塑性樹脂の融点より20℃低い温度以下で再加熱することで固着力向上効果が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともボールペンチップの先端インキ吐出口をホットメルト剤で被覆したボールペンの製造方法において、前記ホットメルト剤が、少なくとも熱可塑性樹脂を含有し、溶融したホットメルト剤を前記ボールペンチップの先端インキ吐出口を被覆するように付着させた後、室温程度まで冷却し、その後40℃以上前記熱可塑性樹脂の融点より20℃低い温度以下の温度に再加熱することを特徴としたボールペンの製造方法。
【請求項2】
前記ホットメルト剤が、粘着性付与樹脂を含有する請求項1に記載のボールペンの製造方法。

【公開番号】特開2012−116095(P2012−116095A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267892(P2010−267892)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】