説明

ボールペンレフィル

【課題】インキ中の水分の蒸発を防止及び、空気中の二酸化炭素等の酸性成分の進入を防止し、経時によるインキ収容筒内の変色又は消色を防止したボールペンレフィルを提供することである。
【解決手段】インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを装着し、内部に、少なくとも水、pH指示薬、塩基性成分であるpH調整剤からなる変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ及び、該水性ボールペン用インキの後端にグリース状のインキ追従体を充填してなるボールペンレフィルであって、前記インキ収容筒が、空気難透過性材料からなる樹脂層を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペンレフィルに関し、さらに詳細としてはインキ収容筒内に、pH指示薬、塩基性物質を含有した水性ボールペン用インキを充填したボールペンレフィルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記後の筆跡を任意的、あるいは経時的なpHの変化により消色もしくは変色するpH指示薬を用いた筆記具用インキが多く提案されている。
【0003】
こうした筆記後の筆跡を任意的、あるいは経時的なpHの変化により消色もしくは変色できるpH指示薬を用いた筆記具用インキとしては、特開昭54−131428号公報「インク組成物」や特開2002−356631号公報「消色性水性インキ」では筆記後の筆跡を任意的に消色できるpH指示薬を用いた筆記具用インキとして、特開平5−59312号公報「消色性インキ組成物」では筆記後の筆跡を経時的なpHの変化により消色できるpH指示薬を用いた筆記具用インキが従来技術として知られている。
【特許文献1】「特開昭54−131428号公報」
【特許文献2】「特開平5−59312号公報」
【特許文献3】「特開2002−356631号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたpHの変化により変色あるいは消色する水性ボールペン用インキにおいて、筆記後の筆跡において、筆記後の筆跡を経時的なpHの変化によって、変色或いは消色するタイプのインキは、インキ組成物中の塩基性の成分と、空気中の二酸化炭素の酸性成分が反応してpHが低下し、その結果、pH指示薬の化学構造が変化して変色又は消色するものである。
【0005】
そのため、pH指示薬、及び塩基性成分を用いた水性ボールペン用インキを充填したボールペンレフィルでは、水性ボールペン用インキと空気の接触をできるだけ避ける必要がある。
【0006】
こうした問題を鑑みて、インキ組成物中の塩基性の成分が反応して、経時的にpHが低下して、pH指示薬の化学構造が変化して変色又は消色するタイプの水性ボールペン用インキを充填したボールペンレフィルには、インキ収容筒を金属材料としたり、インキ収容筒を軸筒内に装着し、インキ収容筒が外部に露出して空気に接しないようにしたりする必要があった。
【0007】
しかし、インキ収容筒に金属材料とすると内部のボールペン用インキを視認できないので、インキ残量の確認や、変色前の色を筆跡でしか確認できないという問題が発生する。また、インキ収容筒を外部に露出して空気に接しないようにするには、替え芯等のボールペンレフィルのみで流通することは困難であるとともに、ノック式ボールペンのようにボールペンレフィルが空気に接しやすい構造には不向きであった。
【0008】
本発明の目的は、インキ中の水分の蒸発を防止及び、空気中の二酸化炭素等の酸性成分の進入を防止し、経時によるインキ収容筒内の変色又は消色を防止したボールペンレフィルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを装着し、内部に、少なくとも水、pH指示薬、塩基性成分であるpH調整剤からなる変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ及び、該水性ボールペン用インキの後端にグリース状のインキ追従体を充填してなるボールペンレフィルであって、前記インキ収容筒が、空気難透過性材料からなる樹脂層を有するボールペンレフィル。
2.前記空気難透過性材料が、25℃、ドライ、20μmにおいて2.0cc/m2・24hr/atm以下の樹脂であることを特徴とする第1項にボールペンレフィル。
3.前記空気難透過性材料が、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂であることを特徴とする第1項または第2項にボールペンレフィル。
4.前記インキ収容筒が、内側に水蒸気難透過性材料からなる樹脂層と、外側に空気難透過性材料からなる樹脂層を被覆した積層構造としたことを特徴とする第1項ないし第3項の何れか1項に記載のボールペンレフィル。
5.前記ボールペンチップ内に、ボールをチップ先端部の内縁に押圧するコイルスプリングを配設したことを特徴とする第1項ないし第4項の何れか1項に記載のボールペンレフィル。
6.前記水性ボールペン用インキに、剪断減粘性付与剤を添加し、剪断速度1.92sec−1の時の粘度が1000mPa・s以上であることを特徴とする第1項ないし第5項の何れか1項に記載のボールペンレフィル。
7.前記インキ追従体の後端に、不活性ガスを充填するとともに、インキ収容筒の後端に、外部との空気流通を遮断した尾栓を装着し、加圧ボールペンレフィルたことを特徴とする第1項ないし第6項の何れか1項に記載のボールペンレフィル。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、インキ中の水分の蒸発を防止及び、空気中の二酸化炭素等、酸性成分の進入を防止し、経時によるインキ収容筒内の変色又は消色を防止したボールペンレフィルを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
空気難透過性樹脂からなる樹脂層には、空気透過度が、25℃、ドライ、20μmにおいて2.0cc/m2・24hr/atm以下の樹脂を用いる。空気透過度が、25℃、ドライ、20μmにおいて2.0cc/m2・24hr/atmを越えるものであると、空気中の二酸化炭素等の酸性成分とインキ組成物中の塩基性の成分が反応して、経時的にpHが低下して、pH指示薬の化学構造が変化して変色又は消色しやすくなる。
【0012】
また、前記した厚さ20μmにおいて、25℃、ドライにおける空気透過度が2.0cc/m2・24hr/atm以下の材料を厚さ50μm以上とする及び/又は厚さ20μmにおいて、25℃、ドライにおける空気透過度が、0.5cc/m2・24hr/atm以下とし、更に優れた空気透過遮断性を発揮せしめることが好ましい。
【0013】
空気難透過性樹脂としては、上記特性を有するものの中から選ばれる少なくとも1種から形成することができるが、空気透過度が極めて低いエチレンビルアルコール共重合体樹脂が最も好ましい。
【0014】
また、インキ収容筒には、空気難透過性樹脂を単独で形成してあってもよいが、pH指示薬、及び塩基性成分を用いた水性ボールペン用インキを充填したボールペンレフィルでは、水性ボールペン用インキ中の水分の蒸発及び大気中の水分の吸湿を防止する必要もある。これは、インキ組成物中の水分量が変化すると、インキ組成物中のpHに変化が生じ、pH指示薬の化学構造が変化して変色又は消色する恐れがあるからである。
【0015】
そのため、水蒸気難透過性材料からなる樹脂層に、空気難透過性樹脂の樹脂層を被覆した積層構造とすることが最も好ましい。水蒸気難透過性材料には、厚さ25μm、25℃、90%RHにおける水蒸気透過度が1.0g/m2・24hr以下である樹脂材料であれば、十分な遮断性を得ることができる。また、水蒸気難透過性材料には、前記特性を有する樹脂材料であれば特に限定されるものではないが、成形性やボールペンチップの装着性(曲げ弾性率)、インキの追従性(濡れ性)等を考慮してポリプロピレンを用いることが最も好ましい。特に、剪断減粘性付与剤を添加等して、静止時(剪断速度1.92sec−1)のインキ粘度が1000mPa・s以上に高く設定されている場合には特に効果的である。
【0016】
本発明に用いるpH指示薬は、pHの変化、具体的には、塩基性領域で発色し、酸性領域で消色又は変色するものであり、消色するpH指示薬としては、o−クレゾールフタレーン、フェノールフタレーン、p−クレゾールフタレーン、チモールフタレーン、γ−ジニトロフェノール、p−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用してもよい。また、変色するpH指示薬としては、ブロモフェノールブルー、ブロモフェノールレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールグリーン、ブロモクレゾールパープル、チモールブルー、メチルレッド、メチルオレンジ、メチルバイオレット、フェノールレッド、m−クレゾールパープル、テトラブロモフェノールブルー、キノリンブルー、α−ナフトールフタレーン、等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0017】
pH指示薬は、インキ組成物全量に対して含有量は、0.1質量%未満だと、十分な筆跡の濃さが得られず、10.0質量%を超えると、析出物が発生するため、0.1以上、10質量%以下、好ましくはインキ組成物全量に対して含有量、0.1質量%、5.0質量%以下とする。
【0018】
pH調整剤は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、等のアルカリ性無機塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性成分が挙げられる。これらのpH調整剤は単独又は2種以上混合して使用してもかまわないが、これらpH調整剤の中でも、pHの安定性に優れる弱塩基性無機塩、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0019】
pH調整剤は、インキ組成物全量に対して含有量は、0.1質量%未満だと所望のpHが得られず、20質量%を超えると変色性あるいは消色性が低下するので、0.1質量%以上、20質量%以下、好ましくは、インキ組成物全量に対して、0.1質量%以上、10.0質量%以下とする。
【0020】
また、インキの潤滑性を高めることで滑らかな筆感を有してチップ内の腐食防止を図ることができるため防錆潤滑剤としてリン酸系界面活性剤を用いていることができる。具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬(株))、フォスファノールシリーズ(東邦化学工業(株))の中から、プライサーフA212C、同A210G、同A207H、同AL、同A208B、同A208S、同A208F、同A212E、同A219B、同A206K、同A217E、同A215C、同A213B、同M208B、同M208F、フォスファノールRE−210、同RE−410、同RE−510、同RE−610、同RE−710、同RE−960、同RS−410、同RS−610、同RS−710、同RB−410、同RM−410、同RM−510、同RM−710、同RL−210、同RD−510Y、同RP−710、同RA−600、同BH−650、同ML−200、同GB−520等が挙げられる。これらの防錆潤滑剤は単独又は2種以上混合して使用してもよい。含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜10質量%が望ましい。
【0021】
ところで、pH指示薬を用いた水性ボールペン用インキは、インキ粘度が極めて低く、ペン先部からのインキ垂れ下がり、筆記時には筆跡のにじみや裏抜け、さらには紙面等の被写体へのインキの浸透により、その被写体のpHの影響によって、筆記時に不用意に筆跡が変色してしまうことがあった。
【0022】
こうした問題を鑑みて、インキ粘度を調整し、インキ垂れ下がり、筆跡のにじみ、裏抜けを防止し、被写体から受けるpH変化を抑制するために、インキ組成物中に剪断減粘性付与剤を含有させることが考えられる。
【0023】
しかし、剪断減粘性付与剤を含有することによって、他のインキ組成物への影響、例えば、pH指示薬やpH調整剤等の溶解安定性、析出物の発生、インキ組成物のpHの変化、インキ溶解安定性等、が低下するという新たな問題が発生する。
【0024】
そのため、pH指示薬を用いた水性ボールペン用インキには、剪断減粘性付与剤としてイオン反発によって増粘するものを除くことが必要である。これは、剪断減粘性付与剤には、大別して、インキ組成物中でイオン反発によって増粘するタイプと、インキ組成物中で溶解分散し、分子鎖が3次元網目構造となる等、イオン反発を利用しないで増粘するタイプと、2種類のタイプに別れる。
【0025】
前者のインキ組成物中でイオン反発によって増粘する剪断減粘性付与剤とは、具体的には、架橋型アクリル酸重合体のように、カルボキシル基(−COO)がイオン反発することによって膨潤し、増粘するものである。そのため、他の組成物、特にpH指示薬の溶解安定性に大きく影響するため、析出物の発生や所望する色が得られない等、溶解安定性に問題がある。
【0026】
一方、後者のインキ組成物中で分子鎖が3次元網目構造により増粘する等、イオン反発を利用しない剪断減粘性付与剤は、他のインキ組成物、特にpH指示薬への影響が少なく、経時安定性に優れているため、ボールペン用インキとしては、イオン反発を利用しないで増粘するタイプの剪断減粘性付与剤を用いることが重要である。
【0027】
本発明に用いることができる剪断減粘性付与剤としては、天然ガム、セルロース、多糖類等の一般的な剪断減粘性付与剤の中からイオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除くものが使用できる。具体的には、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ウエランガム、ラムザンガム、カラヤガム、トラガントガム、サクシノグリカン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。これら剪断減粘性付与剤を単独又は2種以上混合して使用してもよい。特に、経時安定性を考慮して、非イオン性又は弱イオン性であるガーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム等の多糖類を用いることが好ましく、この中でも、耐塩性及びイオン安定性の高いものがよい。また、ボールペン用インキとしては、筆跡が良好なキサンタンガムを用いることが最も好ましい。
【0028】
剪断減粘性付与剤の含有量は、インキ組成物全量に対して、0.1質量%未満だと、インキ粘度が低く、インキ垂れ下がり、筆跡のにじみや裏抜け等が防止し難く、5.0質量%を超えると、インキ粘度が高く、筆跡のカスレ、書き味が低下する恐れがあるため、0.1質量%以上、5質量%以下が望ましい。
【0029】
また、剪断減粘性付与剤を添加した時の水性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、インキ垂れ下がりがなく、筆跡のにじみや裏抜け等を防止するために、20℃の環境下で、剪断速度1.92sec−1時において1000mPa・s以上とすることが好ましい。
【0030】
その他添加剤として、水性ボールペン用インキ組成物に一般的に用いられる、シリコン系、アセチレングリコール系の濡れ性向上剤等を添加することができ、これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。またベンゾトリアゾール、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防錆剤、防菌剤も配合可能である。
【0031】
また、着色剤としては、pH指示薬に染料及び/又は顔料を併用して用いても良い。染料としては、従来から水性ボールペンに採用されている水溶性染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。これらの着色剤は単独又は2種以上混合して使用してもかまわない。また、顔料としては、有機、無機、加工顔料、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系等がある。これらの着色材は単独、2種以上混合して使用してもかまわない。
【0032】
また、所望により、水溶性有機溶剤を用いることができる。水溶性有機溶剤としては、水分の溶解安定性、水分蒸発乾燥防止等を考慮し、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカービトール、エチルカービトール等が挙げられるが、ボールペンとしては、他のインキ組成物、特に剪断減粘性付与剤の溶解安定性を考慮してグリセリンを用いることが最も好ましい。これらの有機溶剤は単独又は2種以上混合して使用してもよい。含有量は、インキ組成物全量に対し、1質量%〜30質量%が望ましい。
【0033】
図1、2に示す、本発明のボールペンレフィル1は、インキ収容筒2の下記の配合により得られた水性ボールペン用インキ3及びグリース状のインキ追従体4を直詰めし、インキ収容筒2の先端部に、コイルスプリング6によってボールをチップ先端部の内縁に押圧したボールペンチップ5を圧入装着し、インキ収容筒2の後端部に尾栓7を圧入装着して得ている。尾栓7は内外を連通する空気流通孔7aを設けてある。
【0034】
インキ収容筒2は、内側に、水蒸気難透過性材料であるポリプロピレン樹脂層2a、外側に空気難透過性材料であるエチレンビルアルコール共重合体樹脂層を積層した構造としてある。
【0035】
インキ配合1
イオン交換水 72.8質量%
有機溶剤(グリセリン) 20.0質量%
弱アルカリ性無機塩(炭酸カリウム) 0.5質量%
防錆潤滑剤 0.2質量%
pH調整剤(トリエタノールアミン) 5.0質量%
pH指示薬(メチルレッド) 0.6質量%
防菌剤(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン) 0.3質量%
剪断減粘性付与剤(キサンタンガム) 0.6質量%
【0036】
インキ配合1の水性ボールペン用インキは、イオン交換水、有機溶剤、炭酸カリウム、防錆潤滑剤、pH指示薬、PH調整剤、防菌剤をマグネットホットスターラーで60℃加温撹拌してベースインキを作成した。
【0037】
上記作製したベースインキに投入し60℃で加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで混合攪拌して分散させ後、濾紙を用い濾過を行って、実施例1の水性ボールペン用インキを得た。インキ粘度は、剪断速度1.92sec−1で1100mPa・s、剪断速度192sec−1で300mPa・sであった。また、pHは、9.5であった。
【0038】
尚、インキ粘度は、ブルックフィールド社製 DV−II+Pro型粘度計(CPE−42コーンプレート)を用いて、20℃の環境下で、回転数、1.92sec−1、192sec−1にて測定した。また、PH測定はトウアイオンメーター社製 IM−40S型を用いて、20℃室温環境下にて測定した結果である。
【0039】
筆記後の筆跡変化については、インキ配合1では筆記後、黄色であったが経時によって赤色に変色した。これは筆記後、一定期間放置しておくと、空気中の二酸化炭素等の酸性成分と、インキ組成物中の塩基性の成分(炭酸カリウム)が反応して、経時的にpHが低下して、pH指示薬の化学構造が変化して変色したためである。
【0040】
インキ収容筒2に、空気難透過性材料であるエチレンビルアルコール共重合体樹脂層2bを有しているので、水性ボールペン用インキと空気が接触し難いので、インキ収容筒2内のpH変化が少なく、インキ収容筒2内で変色することがない。また、水蒸気難透過性材料であるポリプロピレン樹脂層2aを設けることによって、インキ中の水分の蒸発及び大気中の水分の吸湿が極めて少なくすることができるので好ましい。
【0041】
図3に示す、実施例2のボールペンレフィル11は、インキ収容筒12に実施例1と同じ水性ボールペン用インキ及びグリース状のインキ追従体を直詰めし、インキ収容筒12の先端部に、コイルスプリング6によってボールをチップ先端部の内縁に押圧したボールペンチップ5を圧入装着し、インキ収容筒12の後端部に尾栓17を圧入装着して得ている。尾栓17は内外を連通する空気流通孔を設けておらず、インキ追従体4の後端には、不活性ガス(窒素ガス)Kを充填し、加圧ボールペン用のボールペンレフィルとしてある。
【0042】
インキ収容筒12は、内側に、水蒸気難透過性材料であるポリプロピレン樹脂層12a、外側に厚さ空気難透過性材料であるエチレンビルアルコール共重合体樹脂層12bの積層構造としてある。
【0043】
インキ収容筒12に、空気難透過性材料であるエチレンビルアルコール共重合体樹脂層を有しているので、不活性ガスを封入しても、不活性ガスKがインキ収容筒12から漏れ出し難くすることができるので加圧ボールペンとして使用することができる。但し、加圧ボールペンとして使用する場合には、pH指示薬への反応を避けるため、圧縮空気を用いることなく、窒素ガスやアルゴンガスのような不活性ガスKを用いることが重要である。
【0044】
また、加圧ボールペン用のボールペンレフィルとすることで、尾栓によってインキ収容筒内外の空気の流通を防止できるので、水性ボールペン用インキと空気が接触し難い構造となるので好ましい。
【0045】
本実施例では便宜上、コイルスプリングによって、ボールをチップ先端部の内縁に押圧したボールペンチップを配設しているが、コイルスプリングを配設しないボールペンチップであってもよい。但し、コイルスプリングによって、ボールをチップ先端部の内縁に押圧したボールペンチップを用いることでチップ先端部での水性ボールペン用インキと空気の接触も防止できるので好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、キャップ式、ノック式等、pH指示薬を添加した水性ボールペン用インキを収納したボールペンレフィルとして広く利用することができ、加圧ボールペンよして使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1のボールペンレフィルを示す縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A拡大断面図である。
【図3】実施例2のボールペンレフィルを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0048】
1、11 ボールペンレフィル
2、12 インキ収容筒
2a、12a 第1樹脂層
2b、12b 第2樹脂層
3 水性ボールペン用インキ
4 インキ追従体
5 ボールペンチップ
6 コイルスプリング
7、17 尾栓
7a 空気流通孔
K 不活性ガス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを装着し、内部に、少なくとも水、pH指示薬、塩基性成分であるpH調整剤からなる変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ及び、該水性ボールペン用インキの後端にグリース状のインキ追従体を充填してなるボールペンレフィルであって、前記インキ収容筒が、空気難透過性材料からなる樹脂層を有することを特徴とするボールペンレフィル。
【請求項2】
前記空気難透過性材料が、25℃、ドライ、20μmにおいて2.0cc/m2・24hr/atm以下の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のボールペンレフィル。
【請求項3】
前記空気難透過性材料が、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂であることを特徴とする請求項1または2にボールペンレフィル。
【請求項4】
前記インキ収容筒が、内側に水蒸気難透過性材料からなる樹脂層と、外側に空気難透過性材料からなる樹脂層を被覆した積層構造としたことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のボールペンレフィル。
【請求項5】
前記ボールペンチップ内に、ボールをチップ先端部の内縁に押圧するコイルスプリングを配設したことを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のボールペンレフィル。
【請求項6】
前記水性ボールペン用インキに、剪断減粘性付与剤を添加し、剪断速度1.92sec−1の時の粘度が1000mPa・s以上であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のボールペンレフィル。
【請求項7】
前記インキ追従体の後端に、不活性ガスを充填するとともに、インキ収容筒の後端に、外部との空気流通を遮断した尾栓を装着し、加圧ボールペンレフィルたことを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載のボールペンレフィル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−160585(P2007−160585A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357236(P2005−357236)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】