説明

ボールミル装置

【課題】小型で簡単な構造のボールミル装置を提供する。
【解決手段】磁性を有する複数個のボールと、非金属材料から形成され、ボールが封入された単一のポット1と、ポットを起立状態に支持する基台3が備えられる。基台の上面には、その上にポットが固定される回転テーブル5が配置される。回転テーブルの回転軸にモータが接続される。モータは電源から電力の供給を受ける。電源からモータへの供給電力が制御部によって制御される。基台には磁石23が取り付けられ、磁石は、ポットの外周面に対向し、かつポットの一半径方向に局在して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星ボールミル装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星ボールミル装置は、原料物質をボールとともに封入した複数個のポットを主軸の同心円上に配置し、主軸をモータによって回転駆動させることで各ポットを主軸のまわりに公転運動させるとともに、各ポットをその中心軸のまわりに自転運動させることによって、各ポット内に大きな圧縮力および剪断力を生じさせて原料物質を粉砕し、あるいは合成する装置である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
遊星ボールミル装置においては、ポットの公転および自転運動を同時に生じさせるために、主軸と各ポットの自転軸とが遊星歯車機構によって互いに連結されている。
しかしながら、ポットを公転および自転運動させるための駆動機構は、遊星ボールミル装置の小型化を制限するとともに、装置の構造を複雑にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−146698号公報
【特許文献2】特開2002−143706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、小型で簡単な構造のボールミル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、磁性を有する複数個のボールと、非金属材料から形成され、前記ボールが封入された単一のポットと、前記ポットを起立状態に支持する基台と、前記基台に設けられ、前記ポットの外側から磁力によって前記ボールを前記ポットの半径方向外向きに一方向に引き付けながら、前記ポットおよび前記ボールを前記ポットの中心軸のまわりに相対回転運動させる駆動手段と、を備えたことを特徴とするボールミル装置を構成したものである。
【0007】
本発明の好ましい実施例によれば、前記駆動手段は、前記基台の上面に配置され、その上に前記ポットが固定される回転テーブルと、前記回転テーブルの回転軸に接続されたモータと、前記モータに電力を供給する電源と、前記電源から前記モータへの供給電力を制御する制御部と、前記基台に取り付けられ、前記ポットの外周面に対向し、かつ前記ポットの一半径方向に局在して配置された磁石と、を有している。
この実施例において、また、前記駆動手段は、前記基台に設けられた磁石支持手段をさらに有し、前記磁石支持手段は、前記ポットの一半径方向に前記ポットおよび前記磁石間の距離を変更可能になっていることが好ましい。
【0008】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記駆動手段は、前記基台に対して前記ポットの中心軸のまわりに回転可能に取り付けられ、前記中心軸から半径方向にのびる回転アームと、前記回転アームを回転運動させるモータと、前記モータに電力を供給する電源と、前記電源から前記モータへの供給電力を制御する制御部と、前記回転アームの先端に取り付けられ、前記ポットの外周面に対向し、かつ前記ポットの一半径方向に局在して配置された磁石と、を有している。
この実施例において、また、前記回転アームは、その腕の長さを変更可能になっていることが好ましい。
【0009】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記磁石は電磁石からなり、前記電磁石は前記電源から電力供給を受け、前記制御部は前記電源から前記電磁石への供給電力を制御するようになっている。
【0010】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記駆動手段は、前記ポットの外周を取り巻いて、かつ前記ポットの中心軸に対し同軸に配置された単相または三相または多相誘導電動機の固定子と、前記単相または三相または多相誘導電動機の固定子に電力を供給する電源と、前記電源から前記固定子への供給電力を制御する制御部と、を有し、前記単相または三相または多相誘導電動機の固定子によって生じる回転磁界によって、前記ボールが前記ポット内において運動せしめられるようになっている。
【0011】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記ボールは、内部に磁性体を備えた合成樹脂製の球体からなっており、また、前記ポットは合成樹脂から形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポットを公転運動させるための回転駆動系が不要となるので、ボールミル装置の構造が簡単となり、ボールミル装置を容易に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1実施例によるボールミル装置の斜視図である。
【図2】図1のボールミル装置の構造を概略的に示す側断面図である。
【図3】ボールミル装置のポットの1実施例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
【図4】ポット内にボールが収容された状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
【図5】ポットが回転運動する間のボールの運動状態を説明する平面図である。
【図6】図1のボールミル装置を用いててん茶を粉砕して得られた粉末の粒度分布を示すグラフである。
【図7】本発明の別の実施例によるボールミル装置の概略構成を示す斜視図である。
【図8】本発明のさらに別の実施例によるボールミル装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の1実施例によるボールミル装置の斜視図であり、図2は、図1のボールミル装置の構造を概略的に示す側断面図である。図3は、ポットの1実施例を示した図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。また、図4は、ポット内にボールが収容された状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
【0015】
図1〜図4を参照して、本発明によれば、非金属材料から形成され、内部に複数個のボール2が封入される単一のポット1と、ポット1を起立状態に支持する基台3が備えられる。
個々のボール2は、少なくともその一部分が磁性を有しておればよいが、例えば、食品や生薬等の人体が摂取する物を粉砕する場合には、人体への影響を考慮して、内部に磁性体を備えた合成樹脂製の球体からなっていることが好ましい。この場合、合成樹脂製のボールの内部に鉄球等の金属球を単体で組み込んでもよいし、フェライトビーズ等の流動体を組み込んでもよい。
また、ポット1は、任意の非金属材料から形成され得るが、例えば、食品や生薬等の人体が摂取する物を粉砕する場合には、人体への影響を考慮して、合成樹脂から形成されていることが好ましい。
【0016】
この場合、合成樹脂は、人体に対する毒性がなく、耐摩耗性に優れたものであればいずれも使用可能であり、例えば、ポリアセタール、テフロン(登録商標)、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルスルホンおよびポリエチレンテレフタレートからなるグループより選ばれたポリマーであることが好ましく、あるいは、これらのポリマーを配合したものよりなる混合物であってもよいし、あるいは、これらのポリマーの構成モノマーからなるコポリマーであってもよい。
より好ましくは、合成樹脂は、人体に対する毒性がなく、高耐摩耗性、高自己潤滑性および高耐衝撃性を有する合成樹脂であり、特に、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリアミドイミド(例えば、トーロン(登録商標))およびポリベンゾイミダゾールのいずれか1つまたはそれらの混合物であり、あるいは、ポリエーテルエーテルケトンまたはポリアミドイミド(例えば、トーロン(登録商標))またはポリベンゾイミダゾールの構成モノマーからなるコポリマーである。
【0017】
ポット1およびボール2が合成樹脂から形成される場合、同一種類の合成樹脂から形成されたポット1およびボール2を常に組み合わせて使用する必要はなく、異なる種類の合成樹脂から形成されたポット1およびボール2を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
基台3の上面には一対の垂直な支持板4a、4bが互いに間隔をあけて固定され、一対の支持板4a、4bの間に挟まれた基台3の上面領域には、ポット1を起立状態に支持する回転テーブル5が配置される。回転テーブル5の下面中央には回転軸5aが突設され、この回転軸5aは、下向きに基台3の内部にのび、基台3に設けられた軸受6によって回転可能に支持される。また、回転テーブル5の上面中心には、ポット1を位置決めする突起7が設けられる。突起7には、(後述する)ポット1の底壁外面の中心に設けられた凹部21が嵌め込まれる。
【0019】
基台3の内部にはモータ8が配置されるとともに、モータ8の駆動軸8aは回転テーブル5の回転軸5aに結合される。モータは、家庭用AC100Vの電源から電源ユニット9(変圧器、整流器、安定化回路等から構成される)を通じて電力供給を受け、回転テーブル5はモータ8によって回転駆動されるようになっている。
【0020】
基台3の内部には、また、電源ユニット9からモータ8への供給電力を制御する制御部10が配置される。制御部10は、図示はしないが、基台3の上面または側面に設けられた操作パネル部を有し、操作パネル部を通じて、少なくとも、モータの回転数と回転継続時間とを設定可能になっており、制御部10は、これらの設定値に基づいて、モータ8への供給電力を制御する。
【0021】
基台3の一対の支持板4a、4bの上部は、板状の連結部材11によって互いに連結され、連結部材11には、回転テーブル5に対応する位置に、ポット1を回転テーブル5に固定して回転テーブル5と一体的に回転させるためのポット固定機構12が設けられる。
ポット固定機構12は、連結部材11に固定されたブラケット13と、回転テーブル5の中心軸に沿ってのびるとともに、ブラケット13に対し上下にスライド可能に取り付けられたロッド14と、L字形状をなし、一方の腕の端がピン15によってブラケット13に取り付けられ、ピン15のまわりに回動可能なアングルレバー16と、アングルレバー16の中間部とロッド14の上端部を連結するリンク17と、ブラケット13から下方に突出するロッド14の下端に軸受18を介してロッド14の軸と同心に取り付けられ、ロッド14に対して回転自在とされた押圧カップ19とを有している。押圧カップ19の下端面中心には、ポット1を位置決めする突起20が設けられる。この突起20は、(後述する)ポット1の蓋1bの上面中心に設けられた凹部22に嵌め込まれる。
【0022】
そして、アングルレバー16は、他方の腕が垂直に起立する第1の位置(図2の仮想線で示した位置)と、当該他方の腕が水平に倒れる第2の位置(図2の実線で示した位置)をとるようになっていて、アングルレバ16ーが第1の位置をとるとき、押圧カップ9の下端面および回転テーブル5の上面間の距離がポット1の高さよりも大きくなって、ポット1を回転テーブル5にセット可能な状態となり、第2の位置をとるときは、押圧カップ9によって、回転テーブル5上に置かれたポット1が回転テーブル5に押しつけられ、ポット1が回転テーブル5と押圧カップ19の間に固定されて、回転テーブル5、ポット1および押圧カップ19が一体となって回転し得る状態となる。
【0023】
さらに、回転テーブル5の外側であって一対の支持部材4a、4bの間には、板状の永久磁石23が取り付けられ、回転テーブル5上に置かれたポット1の外周面に対向しかつポット1の一半径方向に局在して配置される。
こうして、回転テーブル5と、モータ8と、電源ユニット9と、制御部10と、磁石23とから、ポットの外側から磁力によって、ボールをポットの半径方向外向きに一方向に引き付けながら、ポット1およびボール2をポット1の中心軸のまわりに相対回転運動させる駆動機構が構成される。
【0024】
図3を参照して、ポット1は、一端が閉じられた円筒形状のポット本体1aと、ポット本体1aの他端開口をリング状のパッキン1cを介して密閉し得る蓋体1bからなっている。また、ポット本体1aの内側空洞部1dの周壁面1eから底壁面1fへの移行部分1gは、所定の曲率半径rをもって湾曲している。
【0025】
良好な粉砕を実現するために、ポット1およびボール2の寸法、並びにボール2の比重を適宜変化させてもよい。ボール2の比重を変化させる方法としては、互いに比重の異なる2種類の合成樹脂を用意し、ボール2を、第1の合成樹脂から形成された球形の核と、核の外側を取り巻く、第2の合成樹脂から形成された外皮層からなる2層構造として比重を変化させる方法、あるいは、ボール2の内部に組み込む磁性体の寸法または種類を変える方法がある。
【0026】
図4を参照して、ポット1の内側空洞部1dの周壁面1eから底壁面1fへの移行部分1gの曲率半径rは、ボール2の半径と等しいかまたはそれよりも大きくなっている。
さらに、ポット1の内側空洞部1dの径sは、ボール2の直径Rの2.5〜4倍の大きさを有し、かつ、ポット1本当たりに5〜8個の同一のボール2が収容される。
【0027】
こうして、まず、ボールミル装置のアングルレバー16が第1の位置にセットされ、被粉砕物およびボール2が封入されたポット1が回転テーブル5上に置かれる。このとき、回転テーブル5の突起7にポット1の底の凹部21が嵌め込まれることにより、ポット1の中心軸が回転テーブル5の回転軸に一致するように位置決めされる。次に、ポット固定機構12のアングルレバー16が第2の位置まで回動せしめられ、ポット1が押圧カップ19および回転テーブル5の間に固定される。このとき、押圧カップ19の突起20がポット1の蓋1bの凹部22に嵌め込まれる。
【0028】
その後、制御部10の操作パネル部を通じて、ポット1の回転数および回転継続時間の値が入力された後、ポット1の回転運動が開始される。そして、モータ8の駆動によって回転テーブル5、ポット1および押圧カップ19が一体となって回転する。設定された回転継続時間が経過するとポット1の回転が停止し、その後、アングルレバー16が第2の位置から第1の位置まで回動せしめられてポット1がボールミル装置から取り外される。
【0029】
図5は、ポット1が回転運動する間のボール2の運動を説明する平面図である。図5を参照して、ポット1が回転運動すると、各ボール2は、ポット1との摩擦や被粉砕物の存在によって、ポット1の回転による遠心力を受けてポット1の内壁に押しつけられながらポット1の内壁に沿って運動する。その結果、複数個のボール2は、全体としてポット1の内壁に沿って回転運動する。
【0030】
さらに、このボール2の集団が、磁石23による磁力の影響を受ける範囲内に到達するたびに、磁石による引力により、ボール2の集団内においてボール2の入れ替え運動が生じる。
そして、このポット1の回転運動によるボール2の集団の回転運動と、磁石23の磁力によるボール2の集団内での入れ替え運動の複雑な組み合わせによって、ポット1内の被粉砕物が、各ボール2の衝突を受け、ボール2間またはポット1の内壁およびボール2間において圧縮、剪断等の作用を受け、効果的に粉砕される。この粉砕作用は、遊星ボールミル装置によって公転および自転運動せしめられるポット内に生じる粉砕作用に類似している。
【0031】
以上、本発明の好ましい1実施例について説明したが、本発明の構成はこの実施例に限定されない。例えば、この実施例では、永久磁石23およびポット1間の距離は固定されているが、永久磁石23をポット1の半径方向に移動可能に支持する構成とすれば、ポット1おびポット1間の距離を変更することで、ポット1内のボール2に及ぼされる磁力を調節することができる。永久磁石の代わりに電磁石を用いることもできる。電磁石を用いた場合には、電磁石への供給電力を調整することで、容易に磁力を調節することができる。この場合には、電磁石を電源ユニット9に接続し、電源ユニット9から電磁石に電力供給を行うようにし、その供給電力を制御部10によって制御するような構成とすればよい。この構成において、さらに、モータ8の回転数を検出するセンサーを設け、制御部10において、センサーの検出信号に基づいて電磁石への供給電力を制御するようにしてもよい。
【0032】
また、この実施例では、回転テーブル5、よってポット1の回転軸が鉛直方向を向くようにしているが、この回転軸を傾斜させるとともに、この傾斜した回転軸のまわりに回転するポットの外周面に対向するように磁石を配置する構成とすることもできる。この構成によれば、粉砕過程に重力の一部を寄与させることができる。
【0033】
次に、本発明のボールミル装置によって従来の遊星ボールミルと同様の粉砕物が得られるか実証実験を行って調べた。実証実験の内容は次のとおりである。
遊星ボールミル装置のポットとして、図3に示したのと同じ構造の、下記の仕様のものを作成した。
(i)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製ポット:容積45cc、内径s=46mm、深さd=28mm、周壁面から底壁面への移行部分の曲率半径r=8mm
また、このポットと組み合わせるボールとして、下記の仕様のものを作成した。
(ii)鉄球入りポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製ボール:直径R=15mm、PEEKの外皮の厚さ2.5mm
【0034】
そして、被粉砕物として抹茶の原料であるてん茶を使用し、ポットに、茶葉を5個のボールとともに封入した後、ポットを、図1のボールミル装置の回転テーブルに固定し、ボールミル装置を800rpmの回転数で4時間運転し、てん茶を粉砕した。そして、得られた粉末の粒度分布を、粒度分布測定装置を用いて測定した。
【0035】
測定結果を図6のグラフに示す。なお、図6のグラフ中、MV(μm)、MN(μm)、MA(μm)、CSおよびSD(μm)の定義は、それぞれ、次のとおりである。
MV:体積で重み付けされた平均径
MA:面積で重み付けされた平均径
MN:仮想の個数分布から求められた平均径
SD:粒度分布幅の目安となる標準偏差
CS:粒子を球状と仮定した場合の比表面積
図6のグラフから、本発明のボールミル装置によっても、従来の遊星ボールミル装置と同様にてん茶の粉末が得られることがわかる。
【0036】
図7は、本発明の別の実施例によるボールミル装置の概略構成を示す斜視図である。この実施例は、駆動機構の構成のみが図1の実施例と異なる。すなわち、図1の実施例では、静止する磁石に対してポットがその中心軸のまわりに回転するようになっているのに対し、図7の実施例では、静止するポットに対して磁石がポットの中心軸のまわりに回転するようになっている。
【0037】
図7に示すように、この実施例では、ポット1は(図示しない)基台の上面に起立状態に固定される。そして、回転アーム26が、基台に対してポット1の中心軸のまわりに回転可能に取り付けられ、ポット1の中心軸から半径方向にのびている。回転アーム26の回転軸はモータ25の駆動軸25aに連結され、回転アーム26はモータ25によってポット1の中心軸のまわりに回転するようになっている。
【0038】
図示はしないが、モータに電力を供給する電源と、電源からモータへの供給電力を制御する制御部が、さらに備えられる。また、回転アーム26の先端には磁石27が取り付けられ、ポット1の外周面に対向し、かつポット1の一半径方向に局在して配置される。なお、回転アーム26の腕の長さを変更可能としておけば、磁力を容易に調節することができる。
【0039】
この実施例においては、ポット1の外側から磁力によってポット1内のボールをポットの半径方向外向きに一方向に引き付けながら、ポットおよびボールをポットの中心軸のまわりに相対回転運動させる駆動手段が、回転アーム26と、磁石27と、モータ25と、電源と、制御部とから構成される。
【0040】
こうして、モータ25によって回転アーム26が回転し、磁石27がポット1の中心軸のまわりに回転すると、ポット1内のボールが図1の実施例と同様の運動を行い、それによって、ポット1内の被粉砕物が粉砕される。
【0041】
図8は、本発明のさらに別の実施例によるボールミル装置の概略構成を示す平面図である。この実施例は、図7の実施例のように磁石を静止したポットに対してポットの中心軸のまわりに回転させる代わりに、ポットおよび磁石は静止させたまま、磁石から生じる磁界をポットの中心軸のまわりに回転させることによって、図7の実施例と同様の効果を生じさせたものである。
【0042】
図8に示すように、この実施例では、ポット1の周囲に、ポット1と同心的に三相誘導電動機の固定子28が配置される。なお、三相誘導電動機の固定子の代わりに、単相誘導電動機の固定子や多相誘導電動機の固定子を配置してもよい。
そして、この三相誘導電動機の固定子28には、電動機の通常動作時と同様に、制御部30からの制御信号に基づき、電源29から3つのコイルのそれぞれに三相交流が供給される。このとき、電流変化の1周期の間における合成磁束の矢印の向きは1回転し、すなわち、電流が1周期流れる間に回転磁束も1回転する。したがって、f(Hz)の交流では回転磁界は1秒間にf回転し、この回転磁界によって、ポット1内に封入されたボールが図7の実施例と同様の運動を行い、それによって、ポット1内の被粉砕物が効果的に粉砕される。
【0043】
この実施例においては、ポット1の外側から磁力によってポット1内のボールをポットの半径方向外向きに一方向に引き付けながら、ポットおよびボールをポットの中心軸のまわりに相対回転運動させる駆動手段が、三相誘導電動機の固定子28と、電源29と、制御部30とから構成される。
図8の実施例においても、図7の実施例と同様の作用効果が得られることは言うまでもない。この実施例によれば、機械的回転駆動機構が不要となるので、ボールミル装置の構成をより一層簡単にすることができ、より小型のボールミル装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ポット
1a ポット本体
1b 蓋体
1c パッキン
1d 内側空洞部
1e 周壁面
1f 底壁面
1g 移行部分
2 ボール
3 基台
4a、4b 支持板
5 回転テーブル
5a 回転軸
6 軸受
7 突起
8 モータ
8a 駆動軸
9 電源ユニット
10 制御部
11 連結部材
12 ポット固定機構
13 ブラケット
14 ロッド
15 ピン
16 アングルレバー
17 リンク
18 軸受
19 押圧カップ
20 突起
21、22 凹部
23 永久磁石
25 モータ
25a 駆動軸
26 回転アーム
27 永久磁石
28 三相誘導電動機の固定子
29 電源
30 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する複数個のボールと、
非金属材料から形成され、前記ボールが封入された単一のポットと、
前記ポットを起立状態に支持する基台と、
前記基台に設けられ、前記ポットの外側から磁力によって前記ボールを前記ポットの半径方向外向きに一方向に引き付けながら、前記ポットおよび前記ボールを前記ポットの中心軸のまわりに相対回転運動させる駆動手段と、を備えたことを特徴とするボールミル装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記基台の上面に配置され、その上に前記ポットが固定される回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転軸に接続されたモータと、
前記モータに電力を供給する電源と、
前記電源から前記モータへの供給電力を制御する制御部と、
前記基台に取り付けられ、前記ポットの外周面に対向し、かつ前記ポットの一半径方向に局在して配置された磁石と、を有することを特徴とする請求項1に記載のボールミル装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、
前記基台に設けられた磁石支持手段をさらに有し、前記磁石支持手段は、前記磁石を前記ポットの前記一半径方向に動かすことによって、前記ポットおよび前記磁石間の距離を変更可能になっていることを特徴とする請求項1に記載のボールミル装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、
前記基台に対して前記ポットの中心軸のまわりに回転可能に取り付けられ、前記中心軸から半径方向にのびる回転アームと、
前記回転アームを回転運動させるモータと、
前記モータに電力を供給する電源と、
前記電源から前記モータへの供給電力を制御する制御部と、
前記回転アームの先端に取り付けられ、前記ポットの外周面に対向し、かつ前記ポットの一半径方向に局在して配置された磁石と、を有することを特徴とする請求項1に記載のボールミル装置。
【請求項5】
前記回転アームは、その腕の長さを変更可能になっていることを特徴とする請求項4に記載のボールミル装置。
【請求項6】
前記磁石は電磁石からなり、前記電磁石は前記電源から電力供給を受け、前記制御部は前記電源から前記電磁石への供給電力を制御するようになっていることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載のボールミル装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、
前記ポットの外周を取り巻いて、かつ前記ポットの中心軸に対し同軸に配置された単相または三相または多相誘導電動機の固定子と、
前記単相または三相または多相誘導電動機の固定子に電力を供給する電源と、
前記電源から前記固定子への供給電力を制御する制御部と、を有し、
前記単相または三相または多相誘導電動機の固定子によって生じる回転磁界によって、前記ボールが前記ポット内において運動せしめられることを特徴とする請求項1に記載のボールミル装置。
【請求項8】
前記ボールは、内部に磁性体を備えた合成樹脂製の球体からなっていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のボールミル装置。
【請求項9】
前記ポットは合成樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のボールミル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−201291(P2010−201291A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46844(P2009−46844)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、経済産業省、「地域イノベーション創出研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(391053696)JOHNAN株式会社 (16)
【出願人】(592074175)株式会社福寿園 (11)
【Fターム(参考)】