ボール回転調節装置、発射装置用アタッチメント、ボール発射装置
【課題】保守や使用が容易であって、安全性も高く、実際の選手が投球したりストロークしたりするのとほとんど同一の挙動を示す直球や変化球を自在に発射できるボール回転調節装置、発射装置用アタッチメント、ボール発射装置を提供する。
【解決手段】ボールを射出するボール発射装置に取り付けられる発射装置用アタッチメント10であって、ボール16が入射する入射口20と入射したボール16を発射する発射口21を有する筒状の本体部11と、本体部11の内部に取り付け可能であると共に、入射口20と発射口21との間で、入射したボール16に摩擦を付与する付与ユニット12と、発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部14と、を備える。
【解決手段】ボールを射出するボール発射装置に取り付けられる発射装置用アタッチメント10であって、ボール16が入射する入射口20と入射したボール16を発射する発射口21を有する筒状の本体部11と、本体部11の内部に取り付け可能であると共に、入射口20と発射口21との間で、入射したボール16に摩擦を付与する付与ユニット12と、発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部14と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やテニスなどの練習において使用されるボールの発射装置に取り付けられるボール回転調節装置、発射装置用アタッチメント、およびボール発射装置そのものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球でのバッティング練習や、テニスでのストローク練習などにおいて、野球ボールやテニスボールを自動で発射するボール発射装置が用いられる。野球の練習に使用されるボール発射装置は、ピッチングマシーンやバッティングマシーンと呼ばれる。
【0003】
このようなボール発射装置の例として、先端にボールを載せたアームを回転させてボールを発射する装置(例えば、特許文献1参照)や、近接させた一対のローラの間にボールを通して、一対のローラの回転によりボールを発射する装置(例えば、特許文献2参照)が使用されている。
【0004】
プロ野球選手は、練習のために、直球のみならず変化球の練習も行いたい欲求を有している。また、プロ野球選手には、試合での成果が要求されるため、ボール発射装置は、実際のピッチャーが投げるボールに近い状態のボールを、発射する必要がある。
【0005】
加えて、プロスポーツチームのみならず、アマチュアスポーツチームや、大学生や高校生のチームにおいても、ボール発射装置が練習に用いられる。このため、ボール発射装置の取り扱いの容易性や、耐久性、使用時の安全性などが求められている。
【0006】
当然ながら、テニスや卓球においても、自動でボールを発射する発射装置が要求されうる。
【特許文献1】特開平9−38266号公報
【特許文献2】特開2000−107339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に代表されるボールを載置したアームの回転によるアーム式のボール発射装置では、アームのぶれやアームが回転する際の載置されたボールの位置ずれなどにより、発射されるボールのコントロールが悪くなる問題が多い。加えて、かなりの長さのあるアームが回転するために、広い場所も必要となる上、使用者にとっての安全確保が難しい問題もある。
【0008】
加えて、アーム式のボール発射装置は、発射されるボールに回転を付与することが困難であり、縦方向や横方向に関する変化球を投げることが困難である。ボールへの回転の付与が困難であることで、発射されたボールのコントロールが定まりにくい問題もある。
【0009】
実際のピッチャーが投球するときには、ピッチャーは、手で握ったボールに適当な回転をかけて放つ。これに対してアーム式のボール発射装置は、載置されたボールを放つので、ボールに付与される摩擦や回転などの点で、実際のピッチャーが投げたボールと異なるボールが発射されてしまう。
【0010】
特許文献2に代表される、一対のローラの間に挟まれたボールを、一対のローラの回転により発射するローラ式のボール発射装置では、アーム式の場合と同様に一対のローラの回転速度のずれや、ローラの対向位置のずれによって発射されるボールのコントロールが悪くなる問題もある。またローラ式のボール発射装置であれば、カーブやシュートなどの変化球を発射できるが、ローラがボールの軌道を強制的に制御しているだけなので、手と指とで変化球に必要な回転を与える、実際のピッチャーの投げる変化球とは相違する。
【0011】
加えて、当然ながら一対のローラの回転速度の制御や、保守に負担が掛かる。プロスポーツチームであれば保守を容易にできるが、アマチュアスポーツチームでは費用面なども考慮すると保守を行うのは困難である。また、一対のローラを必要とするので、ボール発射装置が大掛かりになり、安全性での問題もある。
【0012】
本発明は、保守や使用が容易であって、安全性も高く、実際の選手が投球したりストロークしたりするのとほとんど同一の挙動を示す直球や変化球を自在に発射できるボール回転調節装置、発射装置用アタッチメント、ボール発射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、ボール発射導管開口部の内部中心方向へ直角方向に、ボールへの摩擦抵抗を調節してボールの回転数に変化を与えることができる装置を設置し、且つボール発射導管開口部自体が360度回転する事によって、上記装置が移動し、回転軸の向きを変えることができる装置等により、前述の問題点を解決している。
【0014】
また本発明の発射装置用アタッチメントは、ボールを射出する発射装置に取り付けられる発射装置用アタッチメントであって、ボールが入射する入射口と入射したボールが発射する発射口を有する筒状の本体部と、本体部の内部に取り付け可能であると共に、入射口と発射口との間で、入射したボールに摩擦を付与する付与ユニットと、発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部と、を備える発射装置用アタッチメントである。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に、本発明のボール回転装置は、ボールの回転数に変化を与えることは勿論、例えばボール回転装置を上部に移動させることで、ボールが発射導管から発射口を通過するときに、ボール表面への摩擦抵抗によりバックスピンがかかり、上向きの力(マグナス力)がかかるため、ストレート一種でも、より確かで様々なストレートを作り出すことができる。
【0016】
しかも、ボール回転装置は360度移動することができるため、回転軸の向きと回転数を変化させることにより、多様な球種(変化球)をもたらすことができる。
【0017】
また、調節ツマミで摩擦抵抗帯を最上部まで上げ、発射導管を通過するボールへの摩擦抵抗を無くせば、回転のほとんど無いボールが発射される。
【0018】
本発明の発射装置用アタッチメントが、発射されるボールへ人間の指が与えるのと同様な回転を与えることができる。この回転により、発射されるボールは、人間のスポーツ選手が投球したボールとほぼ同様の挙動を示す。加えて、縦方向、横方向の回転を自在に与えることができるので、本発明の発射装置用アタッチメントは、種々の変化球を発射できる。
【0019】
また、本発明の発射装置用アタッチメントは、アーム式やローラ式のみならず、圧縮空気や反発式のボール発射装置に取り付け可能であるので、幅広く使用できる。ボールへの回転付与において、大型の装置や部材を必要としないので、アマチュアスポーツ選手や初心者でも簡単に使用でき、安全性も高い。保守も容易に行える。
【0020】
加えて、発射装置用アタッチメントおよびボール発射装置は、野球用のみならず、テニス用や卓球用などの幅広い用途への適用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の第1の発明に係るボール回転調節装置は、円筒状のボール発射導管内にボールを導いて、先端開口部からボールを発射するボール発射装置において、上記ボール発射導管の開口部付近内部における円周方向の一カ所に、突出する摩擦抵抗帯を設け、上記発射導管内を通過するボール表面に摩擦抵抗を生じさせることを特徴とする。
【0022】
この構成により、ボール発射装置から射出されるボールに、摩擦力および回転力を与えて、ボールに回転を生じさせる。
【0023】
本発明の第2の発明に係るボール回転調節装置では、上記摩擦抵抗帯は、ボールを傷つけることのない程度の弾性と摩擦抵抗を持つことを特徴とし、かつ摩擦抵抗帯を突出後退可能にする調節つまみを設け、ボールへの摩擦抵抗を調節することができる。
【0024】
この構成により、ボールに与える回転数を調整できる。
【0025】
本発明の第3の発明に係るボール回転調節装置では、上記ボール回転調節装置を設置した発射導管開口部付近自体が、上記ボール発射導管と独立し、内部中心方向と直角方向へ360度回転する事により、ボール表面への摩擦抵抗が移動することができる。
【0026】
この構成により、ボールに与える回転方向を容易に変更できる。
【0027】
本発明の第4の発明に係るボール回転調節装置では、上記ボール回転調節装置は、発射導管開口部付近内部の円周方向上に、複数、取り付けることができる。
【0028】
この構成により、ボールに複雑な変化を与えることができる。
【0029】
本発明の第5の発明に係るボール回転調節装置では、上記ボール回転調節装置をリモートコントロール等で、突出、後退、回転可能にする事のできる制御部を具備することを特徴とする。
【0030】
この構成により、ボールへの摩擦の付与を、遠隔的に調整できる。
【0031】
本発明の第6の発明に係る発射装置用アタッチメントは、ボールを射出するボール発射装置に取り付けられる発射装置用アタッチメントであって、ボールが入射する入射口と入射したボールを発射する発射口とを有する筒状の本体部と、
本体部の内部に取り付け可能であると共に、入射口と発射口との間で、入射したボールに摩擦を付与する付与ユニットと、発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部と、を備える。
【0032】
この構成により、種々の方式からなるボール発射装置から射出されるボールに、容易かつ確実に摩擦力および回転力を与えることができる。特に、装置を大掛かりとすることもなく、使用上の難しさも防止できる。
【0033】
本発明の第7の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第6の発明に加えて、付与ユニットは、本体部に入射したボール表面に接する所定幅と所定長さを有する摩擦体を有する。
【0034】
この構成により、摩擦体により摩擦力や回転力がボールに付与されるので、実際の人間が投じたり打ったりするボールの挙動に近似した挙動を示す。
【0035】
本発明の第8の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7の発明に加えて、摩擦体は、ボールの曲面に対応する凹面を有する。
【0036】
この構成により、ボールへの摩擦力の付与が、効果的に行われる。
【0037】
本発明の第9の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7から第8のいずれかの発明に加えて、摩擦体は、本体部に入射したボール表面に少なくとも2箇所で接する複数の凸部を有する。
【0038】
本発明の第10の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第9の発明に加えて、複数の凸部が2つであって、2つの凸部は、相互に略平行であると共に本体部でのボールの発射方向に略平行であり、更に2つの凸部は、人間の指約2つ分の間隔を有している
これらの構成により、生身のピッチャーが、人差し指と中指を用いて、ボールに摩擦や回転を与えるのに近似した挙動が得られる。結果として、打撃練習に最適なボールを発射できる。
【0039】
本発明の第11の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7から第8のいずれかの発明に加えて、摩擦体は、本体部に入射したボール表面に一箇所で接する1つの凸部を有し、凸部は、摩擦体の幅方向の一方に偏った位置に設けられる。
【0040】
この構成により、変化球を実現しやすくなる。
【0041】
本発明の第12の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7から第8のいずれかの発明に加えて、摩擦体は、らせん状の凸部を有している。
【0042】
この構成により、ジャイロ回転を行うボールを発射できる。
【0043】
本発明の第13の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7から第12のいずれかの発明に加えて、摩擦体は、本体部に入射するボールと同等の素材および本体部に入射するボールの直径以上の長さの少なくとも一方を有している。
【0044】
この構成により、ボールへ付与される回転数を増加させることができる。
【0045】
本発明の第14の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第6から第13のいずれかの発明に加えて、付与ユニットは、摩擦体の表面と本体部の中心との距離を変更できるように、本体部内部において上下移動可能である。
【0046】
この構成により、ボールに与える摩擦力や回転力を容易に変更できる。結果として、発射されるボールの球種を変化させたり、同じ球種での変化度合いを変化させたりできる。
【0047】
本発明の第15の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第6から第14のいずれかの発明に加えて、本体部は回転可能であり、本体部の回転に合わせて付与ユニットの位置が変更できる。
【0048】
この構成により、ボールに与える回転方向を容易に変化できる。また、種々の変化球を発射できる。
【0049】
本発明の第16の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第6から第15のいずれかの発明に加えて、本体部は、複数の付与ユニットを取り付け可能である。
【0050】
この構成により、複雑な変化球を実現できる。
【0051】
以下、図面を用いて説明する。
【0052】
(実施の形態1)
図1は、ボール回転調節装置を取り付けたボール発射導管開口部の側面図である。
ボール発射導管開口部(1)上部にボール回転調節装置(2)を取り付ける事のできるスペースを設け、取り付けはボルトで固定する。調節ツマミ(3)で、摩擦抵抗帯(4)を突出後退可能にできる。摩擦抵抗帯は、ウレタン、ゴム等、抵抗の衝撃を和らげる素材で構成されるものであるが、内部にバネ(5)を入れる事で、発射導管内を通過するボール表面に摩擦抵抗を生じさせつつも、より滑らかな摩擦抵抗をボールに与えることができる。
【0053】
本発明は上述のように構成されているものであるから、以下その動作を説明する。
ボール発射装置により弾き出されたボールが発射導管を通過し、開口部の部分にあるボール回転装置の調節により、ボールの回転数に変化を与え、また発射口自体が360度回転する事によって、回転軸の向きを変えることができ、多様な球種も生み出すことができる。
【0054】
尚、上記実施形態では、主に野球ボールの発射を前提に説明したが、本発明の装置はこれに限定されず、ソフトボール、テニス、ゴルフその他の各種球技用のボール発射装置等として使用可能である。
【0055】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
【0056】
まず、野球のボールを例にして、投球されたボールの回転や変化の理論概要について説明する。
【0057】
(ボール挙動の理論概要)
野球においてピッチャーは、その手の内部にボールを握り指でボールを押さえた状態で、ボールを投球する。直球であれば、ピッチャーは、人差し指と中指をボールの縫い目に直交させて押し当てておき、ボールを放つ瞬間に人差し指と中指がボールに逆回転(バックスピン)を与える。
【0058】
ピッチャーが投げたボールは、どのような速球であろうとも、当然に重力の影響でバッターの手元に来るときに降下してしまう。ボールに回転がほとんど無い棒球であれば、ピッチャーの手元からバッターまでの間に、ボールはかなり降下する。ボールにバックスピンが掛かっている場合には、ボールは周囲大気に対する抵抗力を生じるので、降下に対する抵抗力によって、ボールの降下量は減少する。俗に、ホップするといわれるようなボールである。
【0059】
ピッチャーは、なるべく多くのバックスピンのかかった直球を投じることを好む。このようにバックスピンが多く掛かったボールであれば、バッターの手元で伸びるボールとなりバッターは打ちにくくなり、ピッチャーは、バッターを打ち取りやすくなるからである。また、バックスピンの回転数によって、ピッチャーからバッターまでのボールの軌道や挙動が変化するので、バッターの手元で降下が大きい直球や、降下が小さい直球などが生じる。つまり、直球と呼ばれる球種であっても、バックスピンの回転数(勿論、回転方向)によって、ボールは微妙な変化を生じさせる。
【0060】
すなわち、実際のバッターは、実戦においてはこのようなバックスピンの掛かったボールを打つ必要があるので、打撃練習においてもこのようなピッチャーが投げるのに近似したボールの投球を必要としている。
【0061】
従来のアーム式のボール発射装置では、アームの先端の受け皿に載置されたボールが発射される際にボールに無理やりバックスピンを与える。ローラ式のボール発射装置は、一対のローラを上下に配置し、上のローラと下のローラの回転速度を変える事で、バックスピンを与える。
【0062】
しかし、これらアーム式やローラ式のボール発射装置では、ボールに無理にバックスピンを掛けることになり、生身のピッチャーの掛けるバックスピンとは異なる。すなわち、生身のピッチャーがボールを投ずるときに手と指の摩擦で生じさせるスピンとは大きく相違する。また、バックスピンを与えるための手間が掛かる上に、再現率が悪い問題もある。
【0063】
次に、野球での変化球について説明する。
【0064】
一般的には、ピッチャーが投げる変化球として、カーブ、シュート、スライダー、フォーク等がある。これらの変化球は、ボールに与えられた回転方向と回転数によって実現される。例えば、カーブやシュートなどは、ボールに横方向の回転が与えられれば実現される。スライダーも同様である。フォークは、回転をほとんど与えないことにより実現される。また、変化の度合いは回転数で定まる。ボールに縦方向の回転が与えられている場合には、ボールは縦方向を中心とした変化を生じさせる。
【0065】
これらの変化球の理論については、岩波書店発行の「魔球を作る〜究極の変化球を求めて〜(姫野龍太郎 著)」に詳しく記載されており、参考になる。
【0066】
野球の実戦においては、ピッチャーは直球に加えて、カーブやシュートなどの変化球を織り交ぜて投球する。バッターは、これらの変化球にも対応して、ヒットを打つ必要がある。ピッチャーは、握ったボールを放つ瞬間に、手首のひねりと指が与える摩擦によって、カーブやシュートなどに対応する回転をボールに与えることができる。結果として、ピッチャーは、その手と指の動作だけで変化球を投げることができる。
【0067】
従来のアーム式のボール発射装置は、アームからボールが離れる動作に追加できる動作が少なく、変化球を投げるのは困難である。ローラ式のボール発射装置は、一対のローラのそれぞれの回転数を変えることで、回転方向を生み出すことはできるが、バッターの手元で変化する変化球ではなく、ボール発射装置からバッターの手元までを曲線的な軌道を描く変化球しか投げられない。ピッチャーが投げる変化球は、バッターの手元に届くという直球の挙動に、変化を生み出す回転が加わった複数のベクトルの結果で生じるものである。このような変化球は、一対のローラのみでは実現困難である。当然ながら、変化球を投げるための設定に手間が掛かる上、再現率が悪い問題もある。
【0068】
このように、生身のピッチャーは、握ったボールをバッターに向けて放つという直球を生じさせる動作と、手と指とでボールに回転を与えて、ボールを変化させる(直球であっても変化球であっても)動作を合わせて行っている。従来のアーム式やローラ式のボール発射装置は、これらの動作に全て対応し切れていない。このため、このようなボール発射装置で練習をしたとしても、実戦への対応力が不十分である問題があった。
【0069】
本発明の発明者は、このピッチャーの投球動作を、(1)ボールをバッターの手元に投ずるという動作、(2)ボールを投ずる際にボールに変化を与える、という2つの動作に分割することに着眼した。この結果、(2)のボールを投ずる際にボールに変化を与える、ことが、生身のピッチャーの投ずるボールの挙動に近似した挙動を生じさせるとの発想に至り、本発明に想到した。
【0070】
従来の技術で提案されている、アーム式やローラ式のボール発射装置では、生身の人間であるピッチャーが投げた場合に生じる摩擦や回転が付与されていない。このため、直球における球筋の相違(ボールの回転数により落ち方が大きかったり小さかったりすること)や変化球に基づく打撃練習が困難である。あるいはローラ式のボール発射装置が、無理に回転をかけて発射する変化球は、ピッチャーが投げるのとは異なる挙動の変化球である。
【0071】
選手が、実際のピッチャーが投じるボールと異なるボールによって練習を重ねても、実戦との相違が大きいので、選手は実戦では結果を残せない問題が生じやすい。
【0072】
特に、実際のピッチャーが投げるボールには、直球である場合でも、ピッチャーの手と指によりバックスピンが掛けられている。このバックスピンにより、ピッチャーの投げたボールは、バッターの手元までの軌道を描く。一方、従来のボール発射装置では、生身のピッチャーが投げるのと同様のバックスピンが掛けられず、いわゆる棒球にしかならないので、バッターにとっては本来のボールを打撃する練習にはならない。
【0073】
すなわち実戦で結果を残しやすい効果的な打撃練習のためには、生身のピッチャーが投げるのに近い球筋を有するボール発射装置が必要である。本発明の発射装置用アタッチメントは、従来の問題を解決し、生身のピッチャーが投げるのに近い球筋や挙動を有するボールを発射できる。
【0074】
まず、この発射装置用アタッチメントの全体構成を説明する。
【0075】
(全体構成)
図2は、本発明の実施の形態2における発射装置用アタッチメントの側面図である。図面を見やすくするために、内部が透視できるように表されている。
【0076】
発射装置用アタッチメント10は、ボールを射出するボール発射装置に取り付けられる。ボール発射装置は、本体部11にボールを投入しつつ射出できる機能、構造を有していればどのようなものでも良く、圧縮空気を利用したボール発射装置、反発式のボール発射装置、アーム式のボール発射装置、ローラ式のボール発射装置などのいずれにも、発射装置用アタッチメント10は取り付けられる。
【0077】
発射装置用アタッチメント10は、ボールが入射する入射口20と入射したボールが発射される発射口21を有する筒状の本体部11と、本体部11の内部に取り付け可能であると共に、入射口20と発射口21との間で、入射したボールに摩擦を付与する付与ユニット12と、発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部14を備えている。
【0078】
付与ユニット12は、ボールに実際に接して摩擦を付与する部材である摩擦体15と、摩擦体15の位置を調整する調整部13とを有している。付与ユニット12は、図2より明らかな通り、本体部11の内部に飛び出すように取り付けられ、本体部11の外部に設けられた調整部13により、本体部11の外部から調整される。
【0079】
発射装置用アタッチメント10は、ボール発射装置に取り付けられて、本体部11の内部を通過するボール16へ摩擦を付与した上で(すなわち、ボール16に回転を与える)、発射口21から選手に対してボール16を発射する。発射されるボール16は、与えられた摩擦によって、人間の選手が投げたのと同じような摩擦や回転を付与される。
【0080】
付与ユニット12が備える摩擦体15は、調整部13での調整により、位置、高さなどを変え、ボールへ与える摩擦力や回転方向を変化できる。付与ユニット12は、本体部11から取り外し可能であり、本体部11の好きな位置に取り付けられる。また、付与ユニット12は、摩擦体15の形状や素材によって、ボールに異なる変化を与えることができるので、使用目的によって、本体部11をそのままに付与ユニット12のみを取り替えることができる。あるいは、磨耗した摩擦体15のみを、付与ユニット12に対して取り替えることもできるので、ユーザーにとって簡便である。
【0081】
このように、発射装置用アタッチメント10は、野球やテニスなどのボールを発射するボール発射装置から発射されるボールに、本来の挙動に近い摩擦や回転を与える。
【0082】
(動作説明)
ボールへの摩擦や回転の付与について説明する。
【0083】
ここでは、野球の打撃練習に使用されることを前提に説明する。
【0084】
発射装置用アタッチメント10は、種々のボール発射装置に取り付けが可能であり、従来のボール発射装置のみでは実現できなかった、「実際のピッチャーが投げたボールと同様の挙動を示す」ボールを発射できる。
【0085】
ボール16は、入射口20から、本体部11の内部に入る。本体部11は、筒状を有しているので、本体部11に入射されたボール16は、本体部11内部を直進する。付与ユニット12が無ければ、ボール16は、何らの影響や力を受けない。このため、入射口20に入射されたボール16は、本体部11内部をそのまま直進し、発射口21から発射される。この場合には、ボール16には、ボール発射装置において与えられた力のみが働き、発射口21から発射されたボール16は、実際のピッチャーが投げるボールのような挙動を示さない。
【0086】
これに対して、付与ユニット12が本体部11の内部に取り付けられ、付与ユニット12が有する摩擦体15が、本体部11内部を通過するボール16の表面に接することで、ボール16には摩擦が付与される。摩擦が付与されたボール16は、本体部11内部を進み、発射口21から発射される。このとき、ボール16には摩擦が付与されているので、ボール16は回転しながら発射口21から発射される。ボール16は、この回転の回転方向、回転数によって定まる挙動に従って、発射口21から選手の位置に到達する。一般的に、ボールに与えられた回転方向(回転軸)と回転数によって、ボールの球種(直球や変化球)が定まることが論理上知られており、発射口21から発射されるボール16は、この直球や変化球の挙動をもって、選手に到達する。
【0087】
ここで、実際のピッチャーがボールを投げる際には、手で握ったボールを放つ際に、人差し指と中指(場合によっては親指など他の指も)を使って、ボールへ摩擦(回転)を与えている。この与えられた回転方向や回転数により、ボールは縦方向や横方向の変化をしたり、直球においても、選手の手元で異なる落下量を示したりする。
【0088】
付与ユニット12は、摩擦体15により、本体部11内部を通過するボール16に摩擦を与える。この摩擦付与の挙動は、実際のピッチャーが手と指で摩擦を与える挙動と酷似している。ボール16が通過する際に、摩擦体15がボール表面に接するだけであるので、ピッチャーの指により摩擦が与えられるのとほとんど変わらないからである。ボール発射装置をピッチャーがボールを投げる身体部分に該当するとすると、発射装置用アタッチメント10は、ピッチャーの手に該当する。特に、摩擦体15は、ピッチャーの指に該当する。すなわち、生身のピッチャーが身体、手、指を一体的に使ってボールに摩擦や回転を与えることを、発射装置用アタッチメント10が行っていることになる。このとき、ボールに投げる力を与えるのは、ボール発射装置そのものであり、投げられるボールに摩擦や回転を与えるのが、発射装置用アタッチメント10であって、役割を分担している状態である。生身のピッチャーの場合には、投げる動作と摩擦や回転を付与する動作が一体的であるが、実施の形態2における発射装置用アタッチメント10は、この動作の内の「摩擦や回転を付与する動作」の役割を抜き出して実現するものである。言い換えると、ピッチャーがボールを投げる際の動作(2)ボールを投ずる際にボールに変化を与える、をこの発射装置用アタッチメント10が実現する。
【0089】
また、摩擦体15は付与ユニット12に設けられており、調整部13によって摩擦体15の突出量(通過するボール16に対する押し当てられる強度)が調整できる。このため、付与ユニット12は、ボール16に対して異なる摩擦量(言い換えれば、回転数)を与えることができる。この結果、本体部11に入射したボール16は、生身のピッチャーが投げたと同様の挙動をもって、選手に届くことになる。
【0090】
ここでは、野球の打撃練習に用いられる、ピッチングマシーンやバッティングマシーンを、ボール発射装置の例として説明したが、テニスや卓球のボールを発射するボール発射装置でも同様である。
【0091】
以上のように、本発明の発射装置用アタッチメント10は、生身の人間が投げるのに非常に近い挙動を示すボールを発射できるので、実戦に最適な練習が可能となる。
【0092】
図3は、本発明の実施の形態2におけるボール発射装置の全体図である。図3は、ボール発射装置30に発射装置用アタッチメント10が取り付けられて、ボール16が発射される様子を示している。
【0093】
ボール発射装置30は、種々の機能によってボール16を発射する装置である。ローラ式やアーム式などのボール発射装置が使用されれば良いが、好適には圧縮空気によるものや圧縮板の反発によるボール発射装置が使用される。発射装置アタッチメント10は、直進して発射されるボール16表面に、付与ユニット12で摩擦と回転力を与えるからである。
【0094】
ボール発射装置30は、供給されたボール16を圧力などで射出するボール射出部31を備えている。ボール発射装置30に供給されたボール16は、圧縮空気の圧力などにより、ボール射出部31を直進する。ボール射出部31を抜け出たボール16は、入射口20から本体部11に入る。本体部11に入ったボール16は、本体部11を通過するが、この通過の際に付与ユニット12に、その表面が接触する。具体的には、付与ユニット12が備える摩擦体15に、ボール16の表面が接触する。この接触により、ボール16は、回転力を受ける。図3に示される状態では、摩擦体15がボール16の上面に回転力を与えるので、ボール16は、バックスピンの回転動作を行うことになる。このようなバックスピンの回転方向の回転力を得たボール16は、発射口21から外部に発射され、バッターの手元に到達する。また、バックスピンであるので、ボール16は、基本的には直球としてバッターに到達する。
【0095】
発射口21からバッターの手元までの間、ボール16は、付与ユニット12から受けた回転力によりバックスピンが生じており、ボール16の初速、バックスピンの回転方向、バックスピンの回転数、周囲環境の状態などのパラメータに従った挙動を示す。この挙動は、生身のピッチャーが投じた直球の挙動に近似している。すなわち、ピッチャーが行う(1)ボールをバッターの手元に投ずるという動作は、ボール発射装置30により行われ、(2)ボールを投ずる際にボールに変化を与えるという動作は、ピッチャーの手や指の代わりをする付与ユニット12(摩擦体15)によって行われる。このような機能により、発射装置用アタッチメント10は、生身のピッチャーが投じたのと同様の挙動を、ボール16に与えることができる。
【0096】
(各部の詳細)
次に各部の詳細について説明する。
【0097】
(本体部)
本体部11は、ボール発射装置30に取り付けが可能であり、ボール16の入射口20と発射口21を備える筒状の部材である。入射口20は、ボール発射装置30から射出されたボール16を、本体部11内部に導く。発射口21は、本体部11内部を通過したボール16を、外部に発射する。
【0098】
本体部11は、ボール16を通過させる空間を形成できる筒状を有していれば良い。角筒状でもよいし、円筒状でもよいが、ボール16が球であることを考慮すると、円筒状が好適である。加えて、本体部16は、付与ユニット12を取り付ける。付与ユニット12は、摩擦体15によってボール16に摩擦を与えるので、ボール16に対して様々な角度からボールに摩擦を与えることができるのが適当である。このため、本体部11が円筒状であって、ボール発射装置30の取り付け位置に対して回転可能であることが好ましい。この点からも、本体部11は、円筒状であるのが好適である。もちろん、取り付け部14を介して、回転可能とされてもよい。
【0099】
本体部11は、金属、樹脂、木材などの素材で形成される。ただし、耐久性や強度確保の点から金属製であることが好適である。勿論、部材の一部に異なる素材が使用されても良い。また、本体部11は、付与ユニット12を取り付ける必要があるので、網状に孔が開いていることも好適である。この孔を通じて、摩擦体15は本体部11の内部に、調整部13は本体部11の外部とした上で、本体部11は、付与ユニット12を、取り付けることができるからである。
【0100】
本体部11の大きさは、使用するボール16の大きさ、ボール発射装置30の大きさや機能、および装置の使用目的によって適宜決められればよい。例えば、ボール発射装置30が、野球の打撃練習に使用されるのであれば、本体部11の内径は、野球のボールより一回りか二回り程度大きければよく、長さは、付与ユニット12を無理なく取り付けられる程度であればよい。
【0101】
なお本体部11は、取り付け部14を介して、ボール発射装置30に取り付け可能であるので、ボール発射装置30とは別個に取替えが可能である。このため、使用者にとってのランニングコストが低減できるメリットもある。
【0102】
(付与ユニット)
次に付与ユニットについて説明する。
【0103】
図4は、本発明の実施の形態2における付与ユニットの正面図と側面図である。
【0104】
図4は、付与ユニット11から摩擦体15が取り外された状態を示している。
【0105】
図4(a)は、付与ユニット11を正面からみた状態を示しており、図4(b)は、付与ユニット11を側面から見た状態を示している。
【0106】
付与ユニット11は、外形を形成するケース42、摩擦体15を取り付ける取り付け板44、摩擦体15と接する取り付け座45、これらと接続されて摩擦体15の突出量を調整する調整部13、調整部13の軸をケース42と接続する固定ねじ41とナット43を備えている。また、摩擦体15がボール16と接したときに生じる衝撃を吸収する、衝撃吸収部46を有している。
【0107】
これらの構成をもって、摩擦体15を調整可能に取り付けることができる。すなわち、付与ユニット12は、摩擦体15を取り付けると共に摩擦体15の突出量を調整する機能を有する。
【0108】
ケース42の内部空間に摩擦体15が設置され、摩擦体15は、取り付け板44と取り付け座45により取り付けられる取り付け板44と取り付け座45は、上下ねじ40でケース42と貫かれて接続されている。上下ねじ40は、調整部13の回転動作により上下するので、上下ねじ40の上下動作に応じて、摩擦体15が上下する。摩擦体15が下方に下がると、本体部11の中で、ボール16に対する接触圧力が高まる。すなわちより大きな摩擦や回転力を与えることができる。逆に、摩擦体15が上方に移動すると、摩擦体15とボール16との接触圧力が弱まり、摩擦体15は、少ない摩擦力や回転力を、ボール16に与える。
【0109】
また、図4から明らかな通り、摩擦体15は、付与ユニット12から取り外し可能である。摩擦体15は、ボール16との接触により磨耗するが、摩擦体15の取替え可能であると、ランニングコストが低減する。
【0110】
なお、図4で示される付与ユニット12の構造は一例であり、摩擦体15を調整可能に取り付けることができ、本体部11に取り付け可能であれば、どのような構造を有していても良い。
【0111】
(摩擦体)
次に摩擦体15について説明する。
【0112】
付与ユニット12は、摩擦体15を有している。
【0113】
摩擦体15は、付与ユニット12と共に、ボール16に実際の摩擦を与える。摩擦体15は、本体部11に入射されて本体部11を通過するボール16の表面と接する。摩擦体15は、所定の幅と所定の長さを有しており、この所定の幅と所定の長さが、ボール16表面に摩擦を生じさせる。
【0114】
図5は、本発明の実施の形態2における摩擦体の構成図である。
【0115】
摩擦体15は、基板53に、ショック吸収体51とショック吸収体51の表面を覆う抵抗体50と、基板53を付与ユニット12に取り付ける取り付け部52を備えている。
【0116】
基板53は、摩擦体15の全体形状を支持すると共に付与ユニット12に取り付ける基礎となる。基板53は、金属や樹脂で形成されている。
【0117】
ショック吸収体51とその表面の抵抗体50は、摩擦体15の本体を形成する。ショック吸収体51は、ネオプレンスポンジなどの吸収性のある合成素材で形成される。抵抗体50は、天然皮革や合成皮革で形成され、ショック吸収体51の周囲に貼り付けられる。勿論、最初から一体的に製造されても良い。あるいは、抵抗体50がショック吸収体51から取り外し可能に貼り付けられていることで、抵抗体50だけの取替えも可能となる。
【0118】
抵抗体50が天然もしくは人口の皮革で作られていることで、ボール16の素材との相性がよくなり、摩擦体15は、ボール16への損傷を低減しつつ、必要な摩擦力を与えることができる。特に、使用されるボール16と同一かなじみの良い素材で、摩擦体15(表面の抵抗体50)が形成されるのが好適である。この場合には、ボール16の損傷も、摩擦体15(表面の抵抗体50)の損傷も、低減できる。このため、使用期間も長くでき、コストメリットを得ることができる。
【0119】
摩擦体15は、所定の幅と所定の長さを有している。これらの幅や長さは、本体部11の大きさによって定まるが、ボール16へ与える摩擦力を変える要素ともなるので、ボール16の種類や、ボール発射装置30の使用目的にも応じて定められれば良い。
【0120】
なお、摩擦体15の長さが、使用するボール16の直径以上であると、ボール16へ与えられる摩擦力と回転力が増加する傾向がある。摩擦体15の長さが、長くなれば、ボール16の表面との接触量が増大するので、そのぶんだけ、ボール16に与えられる摩擦力と回転力が増加するからである。ただし、摩擦体15が余りに長すぎると、ボール16へ制動が掛かりすぎて、速度低下や方向変動などの問題を生じさせるので、長すぎない程度が好ましい。
【0121】
摩擦体15は、ボール16の曲面に対応する凹面55を有していることも好適である。凹面55によって、摩擦体15は、ボール16の曲面に沿って接触できる。ボール16の曲面に沿った接触により、摩擦体15がボール16に不要な制動をかけることがなく、ボール16への損傷を与えることも少なくなる。また、凹面55が無い場合には、摩擦体15の一部のみがボール16の表面に接することになってしまい、十分な摩擦力を与えることができない問題もある。この点からも、摩擦体15は、凹面55を有していることが好適である。
【0122】
また、摩擦体15は、ボール16の表面に少なくとも2箇所で接する少なくとも2つの凸部56を備えていることも好適である。凸部56は、曲面を有する凹面55に加えて、ピンポイント的にボール16の表面に接触して、摩擦力を与える。図5では、凸部56は、摩擦体15の両サイドの2箇所に設けられており、所謂ピッチャーの人差し指と中指の役割を有している。
【0123】
ピッチャーは、握ったボールを投げる際に、所定間隔で開いた人差し指と中指をボール表面に引っ掛けるようにしてボールに回転を与えている。
【0124】
凸部56も、摩擦体15において一対で設けられており、それぞれの間隔が人間の指2つ分程度(もちろん、この間隔に限定されるものではない)である。入射口20に入ったボール16は、凹面55に加えて凸部56に、その表面を接触する。まさしく、人間の人差し指と中指による接触に近い態様であり、ボール16には、生身のピッチャーが投げたのと同じような摩擦力、回転力が付与される。結果として、生身のピッチャーが投げたのと近似した挙動を示すボールが発射される。
【0125】
凸部56は、摩擦体15の長さ方向の全部に渡って形成されていても良く、一部のみにおいて形成されていても良く、不連続に形成されていても良い。凸部56は、摩擦体15そのものの形状により形成されても良く、別の部材が摩擦体15に取り付けられることで、凸部56が形成されても良い。
【0126】
また、凸部56の突出が余りに大きすぎると、凹面55とボール16との接触が困難となり、摩擦体15全体によるボール16への摩擦力の付与が困難となる。このため、凸部56は、凹面55と適切に連なった形態を有していることが適当である。
【0127】
図5では、摩擦体15が2つの凸部56を有している形態を示しているが、摩擦体15は、1つの凸部56を有していても良い。凸部56が一箇所である場合には、ボール16へ一点集中的に摩擦力が付与されるので、回転軸が予測困難となって、様々な変化球が発射される可能性がある。様々な球種への対応力をつける練習に好適である。特に、1つの凸部56が、摩擦体15の幅方向の一方に偏った位置に設けられることで、ボール16は、予測不能な変化を示しうる。
【0128】
あるいは、1つの凸部56を有する摩擦体15を備える2つの付与ユニット12が、本体部11に取り付けられれば、ボール16に触れる凸部56が2箇所となる。3つの付与ユニット12が、本体部11に取り付けられれば、ボール16には3つの凸部56が接する。凸部56は人間の指に相当するので、指の位置や本数によって投球される変化球と同等の挙動を有するボールを発射する場合には、1つの凸部56を有する複数の付与ユニット12が、本体部11に取り付けられればよい。
【0129】
このように、摩擦体15が、凸部56を有することで、発射装置用アタッチメント10は、生身のピッチャーが投げたボールの挙動に近づけることもでき、バッターの練習に最適な変化球を発射することもできる。
【0130】
また、摩擦体15は、らせん状の凸部を有していることも好適である。らせん状の凸部を有していることで、ボール16に投球方向を軸とした回転(いわゆるジャイロ回転)を生じさせることができる。摩擦体15に接触するボール16は、らせん凸部にそった回転力をうけるので、バッターに向かう方向を回転軸とした回転を行う。現代では、複雑な変化球を投げるピッチャーが多々存在しており、これらの複雑な変化球に、バッターは対応する必要がある。
【0131】
従来のアーム式やローラ式のボール発射装置では、このような複雑な変化球を発射することは事実上無理であったが、本発明の発射装置用アタッチメント10は、その摩擦体15の形状を変えるだけで、複雑な変化球を発射することも可能である。
【0132】
(付与ユニットの調整)
次に、付与ユニット12の調整について説明する。
【0133】
図6、図7は、本発明の実施の形態2における付与ユニットとボールとの関係を示す正面図である。図6は、本体部11内部を通過するボール16に摩擦体15がほとんど接しない状態を示しており、図7は、本体部11内部を通過するボール16に、摩擦体15が最大限に接している状態を示している。
【0134】
付与ユニット12は、摩擦体15を備えており、この摩擦体15は、調整部14により、上下移動が可能である。摩擦体15の上下移動は、摩擦体15の表面(ボール16と接する面)と本体部11の中心との距離を変更できる。言い換えると、摩擦体15の上下移動により、摩擦体15は、ボール16へ付与する摩擦力を変更できる。摩擦力が大きい場合には、発射されたボール16の回転数が多くなり、摩擦力が小さい場合には、発射されたボールの回転数が少なくなる。また、摩擦体15が、ボール16と全く接しない場合には、摩擦体15は、ボール16へ摩擦力を付与せず、ボール16は無回転状態で発射されて、バッターの手元に届く。
【0135】
調整部13は、回しねじになっており、この回しねじの回転によって摩擦体15の位置が上下する。摩擦体15が下がると、ボール16との接触力が大きくなり、摩擦体15が上がると、ボール16との接触力が小さくなる。
【0136】
図6では、回しねじがある方向に回されて、摩擦体15が最大限まで上方に移動した状態が示されている。摩擦体15は、本体部11の中心から遠ざかり、本体部11内部を通過するボール16の表面とほとんど接しない。このため、本体部11を通過するボール16は、摩擦体15と接しないままに、発射口21から発射される。結果として、ボール16は、回転をほとんどしないままバッターの手元に届く。回転がほとんど無いのであるから、ボール16は、バッターの手元で落下しやすい。すなわちナックルボールに近い。
【0137】
一方、図7では、回しねじが反対の方向に回されて、摩擦体15が最大限まで下方に移動した状態が示されている。なお、下方とは、ボール16に向かって近づく意味である。摩擦体15は、本体部11の中心に近づき、本体部11内部を通過するボール16の表面に大きな力で接する。このため、本体部11を通過するボール16は、大きな力で摩擦体15と接した上で、発射口21から発射される。結果として、ボール16は、高い回転数をもってバッターの手元に届く。付与ユニット12が、本体部11の上部に取り付けられている場合には、摩擦体15は、ボール15の上部に回転力を与えるので、発射口21から発射されるボール16は、バックスピンを有している。高い回転数のバックスピンによって、発射されたボール16は、バッターの手元までしっかり伸びる直球となる。
【0138】
なお、調整部13による摩擦体15の上下移動の調整は、回しねじの調節量に対応しているので、微細に調整できる。このため使用目的に応じて、摩擦体15の突出量(ボール16への接触力)を変えることができ、突出量の違いによってボール16に与える回転数を変えることができる。直球を発射する場合には、摩擦体15の突出量の違いによって、ボール16のバックスピンの回転数が変わり、バッターの手元までのボール16の軌道が変化する。
【0139】
このような異なる軌道を、発射装置用アタッチメント10は容易に実現できるので、打撃練習での高い効果を生む。
【0140】
実際の生身のピッチャーが投げるボールは、直球であってもバックスピンが掛かっており、その回転数はピッチャーによって様々である。
【0141】
発射装置用アタッチメント10は、バックスピンの回転数は、摩擦体15の突出量(付与ユニット12の上下移動の調整)により変えることができるので、様々なピッチャーを想定した打撃練習の助けとなる。また、ピッチャーの手と指が生じさせるのに近似した摩擦と回転により、ボール16が発射されるので、ボール16は、生身のピッチャーが投球するボールと近似した挙動を示す。このため、実施の形態2における発射装置用アタッチメント10により、選手は、実戦に即した打撃練習をできる。
【0142】
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。
【0143】
実施の形態3では、発射装置用アタッチメント10が、横方向を中心とした変化球を発射できることについて説明する。
【0144】
実施の形態2では、主にボール16に縦方向のバックスピンを与えることについて説明した。すなわち、実施の形態2では、直球(縦方向の変化をおこなうことも含む)について説明した。
【0145】
しかしながら、付与ユニット12を本体部11の横や下に取り付けたり、複数の付与ユニット12が本体部11に取り付けられたりすることで、横方向の変化球(カーブ、シュート、スライダー)が実現できる。
【0146】
図8は、本発明の実施の形態3におけるボール発射装置の構成図である。図8は、図3と同様の構成を有し、ボール発射装置30に取り付けられた発射装置用アタッチメント10は、ボール発射装置30から射出されるボール16に摩擦力と回転力を与える。発射口21から発射されたボール16は、所定の回転方向に、所定の回転数の回転を有する。このとき、図8に示されるように、付与ユニット12が本体部11の側面に取り付けられていることで、ボール16の側面に摩擦力が付与される。側面に摩擦力を受けたボール16は横方向に回転を行うので、この回転に従って、ボール16は、横方向の変化を生じる。例えば、カーブやシュートである。
【0147】
図9は、本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの正面図である。図9は、本体部11の発射口21側から見ている状態を示している。
【0148】
図9では、付与ユニット12が本体部11の左側面に取り付けられている。付与ユニット12が本体部11の側面に取り付けられても良く、付与ユニット12が取り付けられた状態で、本体部11が回転することで、付与ユニット12の位置が変更されることでもよい。すなわち、本体部11は、回転可能であって、この本体部11の回転に合わせて付与ユニット12の位置が変更可能であってもよい。
【0149】
図9では、付与ユニット12は、本体部11の発射口21から見て左側面に取り付けられている状態である。すなわち、本体部11に入ったボール16は、発射方向に対して(バッターに対して)右側の面に摩擦を受ける。摩擦は、ボールの直進に対して制動をかける働きを有するので、ボール16は、発射方向に対して右向きに向かう回転を生じる。右向きに向かう横回転がボール16に生じると、ボール16は、右バッターに対して食い込んでくる変化球となる。すなわちボール16は、シュートと呼ばれる球種となる。
【0150】
一方付与ユニット12が、図9とは反対側、発射口21から見て右側に取り付けられた場合には、ボール16には、発射方向に対して左側に向かう回転が生じる。この結果、ボール16は、右バッターから遠ざかる方向に変化する。すなわち、ボール16は、カーブと呼ばれる球種となる。このように、付与ユニット12の位置を変えて、摩擦体15がボール16と接する位置を可変とすることで、ボール16に様々な回転方向での回転を生じさせることができる。この回転方向への回転に従って、ボール16は、種々の変化球となる。
【0151】
このように、付与ユニット12の位置を変えるだけで(あるいは付与ユニット12が取り付けられた本体部11を回転させるだけで)、ボール16の回転方向を制御でき、種々の変化球を実現できる。また、実施の形態2で説明したように、摩擦体15は、調整部13によって、その表面と本体部11の中心との距離を増減できる。このため、付与ユニット12の位置が変化したとしても、摩擦体15がボール16に与える摩擦力は可変とできる。摩擦力が高ければ、ボール16の回転数は増す。すなわち、付与ユニット12を図9に示すように、発射口からみて左側面に取り付けた場合であって、摩擦体15の突出量が大きい場合には、ボール16は、発射方向右に向けた回転方向であって高い回転数をもって発射される。回転数が高いことで、より角度のあるシュートボールが発射できる。逆に、摩擦体15の突出量を少なくすれば、ボール16の回転数が少なくなり、角度の小さいシュートボールが発射できる。
【0152】
これは、付与ユニット12の位置を発射口から見て右側にしてカーブボールを発射する場合にも同様である。摩擦体15の突出量の加減により、ボール16の回転数を変えることができ、角度や切れの異なるカーブボールが発射できる。また、実験の結果、カーブボールを発射する位置と同じ位置に付与ユニット12が取り付けられた場合に、ボール16への回転数を少なくすれば、フォークボールが発射されることが分かった。このように、付与ユニット12の位置だけでなく、付与ユニット12がボール16に与える回転数によっても、種々の変化球を制御できる。
【0153】
また、本体部11の右側面や左側面に付与ユニット12を位置することを説明したが、右斜め上、左斜め下、あるいは下のいずれかに付与ユニット12が取り付けられてもよく、この場合にも、取り付け位置に応じた回転がボール16に与えられ、回転方向と回転数に応じた変化球が発射できる。
【0154】
このように、付与ユニット12の位置が可変であることと、摩擦体15の突出量が可変であることとが多様に組み合わされることで、様々な変化球が発射できる。また、いずれの変化球も、摩擦体15が与える回転により実現されるので、発射装置用アタッチメント10が発射する変化球の挙動は、生身のピッチャーが、手と指とで生じさせる回転で投球する変化球の挙動に近似する。このため、実戦に即した打撃練習が実現できる。
【0155】
また、図10に示されるように、複数の付与ユニット12が、本体部11に取り付けられても良い。複数の付与ユニット12が取り付けられることで、例えば、一つの付与ユニット12の摩擦体15が突出しているときは、他の付与ユニット12の摩擦体15が引っ込んでおり、一方のみがボール16への摩擦付与に貢献させるようにしておくことができる。このようにしておけば、本体部11を回転させたり、付与ユニット12を取り替えたりすること無く、ボール16の球種を切り替えることができる。図10は、本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの正面図である。
【0156】
図10に示されるように、付与ユニット12と12bとが二つ取り付けられており、ある球種の場合には一方の摩擦体15のみが突出してボール16に接し、他方の摩擦体15bはボール16に接しないように設定されていても良い。
【0157】
あるいは、両方の摩擦体15、15bがボール16に接するように設定されることで、ボール16により複雑な回転を与えることができ、複雑な変化球を実現することもできる。
【0158】
このように、複数の付与ユニット12が、本体部11に取り付けられることで、使用上の簡便性が増したり、複雑な変化球が実現できたりする。
【0159】
また、本体部11は、入射口20から入射するボール16の位置や向きを固定する固定部を備えていることも好適である。図11は、本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの側面図である。
【0160】
本体部10は、入射口20に近い場所に、固定部70を備えている。固定部70は、入射口20から入射するボール16の位置や向きを固定する。ボール16は、縫い目を有していることが多く、変化球の挙動はこの縫い目によっても左右される。このため、ボール16が発射される度に、ボールの位置や向きが固定されることは、変化球の挙動を統一することにとって効果的である。固定部70は、図11に示されるように、入射口20から本体部11内部にかけてボールの方向を固定する向きに形成された板部材で実現されればよい。勿論、他の手段で実現されても良い。いずれにせよ、入射口20に入射し、本体部11を通過するボールの位置や向きを固定する。
【0161】
以上のように、実施の形態3の発射装置用アタッチメントによれば、縦方向のみならず、横方向や斜め方向などを含んだ変化球を、発射できる。これは、野球における変化球のみならず、テニスや卓球における変化球にも適用できる。
【0162】
加えて、摩擦体15による摩擦のみで、これらの変化球が実現できるので、大掛かりな装置は不要であるし、準備や保守も容易である。中高生やアマチュアスポーツ選手でも、容易に発射装置用アタッチメントおよびこれを取り付けたボール発射装置を使用できる。
【0163】
また、生身のピッチャーが投球する変化球と近似した挙動を示すことで、選手は実戦に即した打撃練習ができる。テニスや卓球においても同様である。
【0164】
また、摩擦体15の磨耗や発射装置用アタッチメント10が故障や損傷をした場合でも、ボール発射装置30ではなく、これらの部材だけを交換すればよいので、ランニングコストが低廉で済むメリットがある。
【0165】
(実施の形態4)
次に実施の形態4について説明する。
【0166】
実施の形態4では、実施の形態2〜3で説明された発射装置用アタッチメント10が取り付けられたボール発射装置について説明する。
【0167】
図12は、本発明の実施の形態4におけるボール発射装置の構成図である。
【0168】
便宜上、発射装置用アタッチメント10以外の部分をボール発射装置30として示しているが、発射装置用アタッチメント10が取り付けられた全体をボール発射装置として捉えても良い。使用態様での便宜上にすぎないので、特に区別されるものではない。
【0169】
ボール発射装置30は、その先端に発射装置用アタッチメント10を取り付けている。ボール発射装置30は、発射装置用アタッチメント10に実際にボール16を射出するボール射出部31、ボール射出部31にボール16を投入する投入部82と、ボール射出部31において、ボール16に実際に射出圧力を与える加圧部80、筐体83を備えている。また、必要に応じて、ボール発射装置30は、キャスター84を備えている。キャスター84は、ボール発射装置30を容易に移動させることができる。
【0170】
使用者は、投入部82にボール16を投入する。投入されたボール16は通路81を経由してボール射出部31に供給される。加圧部80は圧縮空気や圧縮ガスなどの働きにより、押し出し板をボール16に瞬時に強い力で押し当てて、ボール16に射出圧力を加える。射出圧力を加えられたボール16は、ボール射出部31に沿って射出される。ボール射出部31に沿って射出されたボール16は、入射口20から本体部11に入射し、付与ユニット12での摩擦力を受けて、発射口21から外部に向けて発射される。
【0171】
このとき、付与ユニット12が有する摩擦体15の位置や突出量に応じた摩擦力が、ボール16に与えられる。この摩擦力によって、ボール16は、回転動作を行う。この回転動作により、ボール16は、縦方向や横方向の変化球となったり、生身のピッチャーが投げるのに近似した直球となったりする。この作用は、実施の形態2,3で説明したのと同様である。
【0172】
図12から明らかな通り、ボール発射装置30として、圧縮空気や圧縮ガスなどを用いた圧縮発射方式の装置が用いられると、発射装置用アタッチメント10を取り付けるだけで生身のピッチャーに近いボールの発射が実現できる。しかも、取り扱いが容易であるし、広い使用場所も不要である。消耗すれば、発射装置用アタッチメント10や摩擦体15のみを取り替えればよいので、メンテナンス性も高く、ランニングコストも低くて済むメリットがある。
【0173】
勿論、使用するボールをテニスボールに変えれば、テニスの練習に好適に利用できる。この際には、ボール発射装置30は、テニスのストロークで生じるトップスピン、バックスピン、スライスなどのテニスボールへの回転を、かけることができる。
【0174】
このように、発射装置用アタッチメント10を取り付けるだけで、実戦に即した練習に好適なボール発射装置30が実現できる。
【0175】
なお、図12では、圧縮空気や圧縮ガスを用いたボール発射装置30を例としたが、これは一例であり、ローラ式などのボール発射装置が適用されても良い。
【0176】
(実施の形態5)
次に実施の形態5について説明する。
【0177】
実施の形態5では、実施の形態4で説明したとおり、発射装置用アタッチメント10を装着した圧縮空気を用いたボール発射装置30を用いた各種の実験結果について説明する。
【0178】
(実験1)
実験1では、付与ユニット12を本体部11の天頂部(時計での12時の位置)に取り付けて、付与ユニット12から摩擦体15をボール16に向けて突出させた突出量の違いによって球種への影響度を確認した。実験1では、摩擦体15がボール16にバックスピンを与えるので、発射されるボール16は基本的に直球になる。なお、直球といえども、発射位置(投球位置)から一定量の落下を示す。しかしながら、摩擦体15が与える摩擦力によって、ボール16が受けるバックスピンの回転数は異なる。理論上、ボール16のバックスピンの回転数が多ければ、ボール16の落下量が少なくなる。
【0179】
実際の生身のピッチャーが投じたボールは、投げる際に与える回転力によりバックスピンの回転数が変わり、バッターの手元で「伸びる」ボールになったり、バッターの手元で「落ちる」ボールになったりしうる。すなわち、変化のある直球が投球される。本発明の発射装置用アタッチメント10およびこれを装着したボール発射装置30は、このバックスピンの回転数を変えることができるので、生身のピッチャーが投げる直球と同様に、変化のある直球を発射できる。実験1は、これを実証する。
【0180】
実験1では、本体部11の天頂部に、付与ユニット12を取り付けて、付与ユニット12からの摩擦体15の突出量を徐々に大きくしていった場合の「球種(ホップ、ストレート、ドロップ)」、「ボール16の回転数」を確認した。
【0181】
ここで、上述の岩波書店発行の「魔球を作る〜究極の変化球を求めて〜(姫野龍太郎 著)」によれば、投球後に18m前方にあるバッターの位置において、ボールが投球位置の高さより58cmまでの落下量に留まる場合には、このボールはストレートであり、それ以上の落下量を示す場合には、このボールはドロップ(落ちる)であると指摘されている。このことを基礎に、実験1では、発射されたボール16の球種判定の基準を、発射位置から到達位置(18m前方)までの落下量が58cmまでに留まる場合をストレート、58cm以上の落下量を示す場合にはドロップ、落下量が30cmまでに留まる場合をホップである、と決めた。
【0182】
実験条件は次の通りである。
【0183】
(1)ボール発射装置30からボール16を発射する高さは、地面から130cmである。
【0184】
(2)ボール発射装置30からボール16の到達位置までの距離を、18mとした。
【0185】
(3)ボール16の初速は、100km/hと、130km/hの2種類とした。
【0186】
(4)付与ユニット12からの摩擦体15の突出量は、基準位置より、9mm(摩擦体15がボール16に全く触れない位置)、10mm、13mm、15mm、17mm、19mm、21mm、23mmの8種類とした。
【0187】
(5)突出量毎に、30球のボールを発射して、球種を判定した。球種判定の基準は、
発射位置より30cmまでに落下量が留まる場合・・ホップ
発射位置より58cmまでに落下量が留まる場合・・ストレート
発射位置より58以上の落下量を示す場合・・ドロップ
(6)発射毎に、ボールの軌跡を600fpsの高速度カメラで撮影し、画像からボール16の回転数を計測した。
【0188】
(7)付与ユニット12は、本体部11の天頂部に取り付けられた。
【0189】
実験1の結果を、(表1)に示す。
【0190】
【表1】
【0191】
表1より明らかな通り、摩擦体15の突出量が大きくなり、ボール16に与える摩擦力が大きくなるにつれて、ボール16の回転数が増加し、ストレートの数が増える。この結果、摩擦力が大きければ、ボール16に与えられる回転力が大きくなり、ボール16の回転数が増加するという理論を、実証している。加えて、この結果は、バックスピンの回転数が増加することで、ボール16の落下量が減少し、ストレートに近づくとの理論を実証している。詳細の説明は省略するが、表1の結果を見れば明らかである。
【0192】
例えば、摩擦体15の突出量が10mmの場合には、ボール16の回転数は、1〜2回転である。これに対して、摩擦体15の突出量が23mmの場合には、ボール16の回転数は、13〜15回転にまで増加する。この結果、突出量が10mmの場合には、「ストレートが1球、ドロップが29球」であるのに対して、突出量が23mmの場合には、「ストレートが16球、ドロップが11球」にまで変化している。このように、摩擦体15がボール16に与える摩擦力が大きくなるにつれて、ボール16のバックスピンの回転数が増加し、それだけバッターの手元で落ちにくい(伸びる)直球が増えていく。この傾向は、ボール16の初速が速くなると(すなわち、実験1では100km/hの場合よりも130km/hの場合)より顕著に確認できる。例えば、摩擦体15の突出量が23mmの場合、ボール16の初速が100km/hではストレートと判定されるのは16球であるが、ボール16の初速が130km/hではストレートと判定されるのは25球である。初速が速ければ、それだけ到達までの落下量が少ないのは当然であり、摩擦体15の働きと相まって、本発明の発射装置用アタッチメント10およびこれを装着したボール発射装置30の発射するボール16は、生身のピッチャーが投球するボールの挙動に近似している。
【0193】
このように、実験1によれば、摩擦体15の働きによって、発射されるボール16の直球における球種や回転数を調整可能であり、これは理論にも一致していることが確認できる。
【0194】
(実験2)
次に実験2について説明する。
【0195】
実験2では、本体部11の様々な位置に、付与ユニット12を取り付けた場合の、ボール16の変化を確認した。図13は、本発明の実験2における付与ユニットの取り付け位置を示す模式図である。実験2では、図13に示されるとおり、本体部11の1)〜8)の位置のそれぞれに付与ユニット12を取り付けてからボールを発射して、その球種を確認した。
【0196】
位置1)は、本体部11の天頂部、すなわち時計で言うところの12時の位置である。位置2)は、本体部11において、6時の位置である。位置3)は、本体部11において、3時の位置である。位置4)は、本体部11において、9時の位置である。位置5)は、本体部11において、7時と8時の間の位置である。位置6)は、本体部11において、1時と2時の間の位置である。位置7)は、本体部11において、4時と5時の間の位置である。位置8)は、本体部11において、10時と11時の間の位置である。
【0197】
これら位置1)〜8)のそれぞれに、付与ユニット12を取り付けた場合の、発射されるボール16の球種を確認した。
【0198】
実験条件は、次の通りである。
【0199】
(1)ボール16の初速は130km/hである。
【0200】
(2)付与ユニットの位置毎に、30球のボールを発射した。
【0201】
(3)発射されるボールの軌跡を600fpsの高速度カメラで撮影し、撮影画像で見られるボール16の軌跡から、実験者が球種を判定した。
【0202】
(4)付与ユニットの位置毎に、理論的に想定される球種(右ピッチャーとして)を設定し、想定球種の数と想定球種外の数を計測して、表2に反映した。
【0203】
付与ユニット12の位置により、摩擦体15がボール16に与える回転方向が決定される。理論上は、ボール16の回転方向により、ボール16の球種は決定されるので、想定球種の再現率は、発射装置用アタッチメント10およびこれを装着したボール発射装置30が発射するボールが、生身のピッチャーが投げるボールの挙動に近似していることを示す。このため、実験2では、想定球種の再現率が着目される。
【0204】
表2は、実験2の結果を示す。
【0205】
【表2】
【0206】
表2より明らかな通り、位置1)では、想定球種はストレートである。実験の結果、想定球種であるストレートは28球、想定球種外は、2球であった。
【0207】
位置2)では、想定球種は縦のカーブである。実験の結果、想定球種である縦のカーブは、28球、想定球種外は、2球であった。位置3)では、想定球種はシュートもしくはフォークである。実験の結果、想定球種であるシュートは3球で、シュート外は27球とシュートの再現性は低かった。しかしながら、後述の位置6)ではシュートの再現率が高く、シュートボールを発射するためには、位置6)に付与ユニット12が取り付けられるのが適当である。なお、位置3)においてもう一つの想定球種であるフォークは、27球であり、フォークボールに関する再現性は高かった。
【0208】
位置4)では、想定球種は横のカーブもしくはフォークである。実験の結果、位置3)と同様に、横カーブの再現性は低いが、フォークの再現性は高い。カーブについては、むしろ位置5)や位置7)での再現性が高く、位置5)や位置7)に付与ユニット12が取り付けられることが適当であることが分かる。
【0209】
位置8)では、想定球種はスライダーであるが、実験の結果、スライダーとしての顕著な変化は見にくかった。位置1)と位置8)の間に付与ユニット12を取り付けた場合に、スライダーの再現が容易である。
【0210】
位置5)では、想定球種は左下へのカーブであり、想定球種が29球と、再現性が高かった。位置7)では、想定球種は右下カーブであり、想定球種が27球とやはり再現性が高かった。
【0211】
以上のように、付与ユニット12の位置を変えることで(付与ユニット12の取り付け位置を変えることで実現されてもよく、付与ユニット12を取り付けた本体部11を回転させることで実現されてもよい)、発射されるボール16の球種を、様々に変化させることができることが、実験からも裏付けられる。すなわち、実施の形態2〜4で説明した発射装置用アタッチメントおよびこれを装着したボール発射装置は、野球の打撃練習において、高いレベルでの打撃練習を実現できる。変化球に対する打撃練習に好適である。
【0212】
(実験3)
次に、実験3について説明する。
【0213】
実験3は、摩擦体15のサイズを大きくした場合に、回転数が増加することを実証する実験である。従来サイズとは、ボール16の直径程度の摩擦体15の長さ(ボール16の発射方向に沿った長さ)を有しており、1.5倍サイズは、従来サイズの1.5倍の摩擦体15の長さを有している。
【0214】
具体的に製造した摩擦体15のサイズは、従来サイズの場合には、長さが72mm程度、幅は35mm〜45mm程度(人間の二本分の指の幅と同等)である。1.5倍サイズの摩擦体15は、長さが135mm、幅は50mmである。
【0215】
表3は、実験3の結果を示す。
【0216】
【表3】
【0217】
表3より明らかな通り、摩擦体15の長さが長い1.5倍サイズの場合には、ボール16に付与される回転数が増加している。このように、摩擦体15の長さが増加することで、ボール16に対して与えられる回転数が増加することも、実験から実証された。
【0218】
なお、表1〜表3の中に記載している参照動画は、それぞれの実験において撮影した動画の整理番号を示している。
【0219】
以上のように、実施の形態2〜4で説明した発射装置用アタッチメントおよびこれを装着したボール発射装置は、理論通りの生身のピッチャーが投げたのと同様の挙動を実現できる。このため、発射装置用アタッチメントおよびこれを装着したボール発射装置は、野球の打撃練習に好適に使用できる。勿論、ボールをテニスボールに変えれば、テニスの練習(変化するテニスボールへの対応も可能)へも適用できるし、ボールを卓球のボールに変えれば、卓球の練習にも適用できる。
【0220】
以上、実施の形態1〜5で説明されたボール回転調節装置、発射装置用アタッチメント、ボール発射装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】ボール回転調節装置を取り付けたボール発射導管開口部の側面図
【図2】本発明の実施の形態2における発射装置用アタッチメントの側面図
【図3】本発明の実施の形態2におけるボール発射装置の全体図
【図4】本発明の実施の形態2における付与ユニットの正面図と側面図
【図5】本発明の実施の形態2における摩擦体の構成図
【図6】本発明の実施の形態2における付与ユニットとボールとの関係を示す正面図
【図7】本発明の実施の形態2における付与ユニットとボールとの関係を示す正面図
【図8】本発明の実施の形態3におけるボール発射装置の構成図
【図9】本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの正面図
【図10】本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの正面図
【図11】本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの側面図
【図12】本発明の実施の形態4におけるボール発射装置の構成図
【図13】本発明の実験2における付与ユニットの取り付け位置を示す模式図
【符号の説明】
【0222】
1 ボール発射導管開口部
2 ボール回転調節装置
3 調節ツマミ
4 摩擦抵抗帯
5 バネ
10 発射装置用アタッチメント
11 本体部
12 付与ユニット
13 調整部
15 摩擦体
16 ボール
20 入射口
21 発射口
30 ボール発射装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やテニスなどの練習において使用されるボールの発射装置に取り付けられるボール回転調節装置、発射装置用アタッチメント、およびボール発射装置そのものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球でのバッティング練習や、テニスでのストローク練習などにおいて、野球ボールやテニスボールを自動で発射するボール発射装置が用いられる。野球の練習に使用されるボール発射装置は、ピッチングマシーンやバッティングマシーンと呼ばれる。
【0003】
このようなボール発射装置の例として、先端にボールを載せたアームを回転させてボールを発射する装置(例えば、特許文献1参照)や、近接させた一対のローラの間にボールを通して、一対のローラの回転によりボールを発射する装置(例えば、特許文献2参照)が使用されている。
【0004】
プロ野球選手は、練習のために、直球のみならず変化球の練習も行いたい欲求を有している。また、プロ野球選手には、試合での成果が要求されるため、ボール発射装置は、実際のピッチャーが投げるボールに近い状態のボールを、発射する必要がある。
【0005】
加えて、プロスポーツチームのみならず、アマチュアスポーツチームや、大学生や高校生のチームにおいても、ボール発射装置が練習に用いられる。このため、ボール発射装置の取り扱いの容易性や、耐久性、使用時の安全性などが求められている。
【0006】
当然ながら、テニスや卓球においても、自動でボールを発射する発射装置が要求されうる。
【特許文献1】特開平9−38266号公報
【特許文献2】特開2000−107339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に代表されるボールを載置したアームの回転によるアーム式のボール発射装置では、アームのぶれやアームが回転する際の載置されたボールの位置ずれなどにより、発射されるボールのコントロールが悪くなる問題が多い。加えて、かなりの長さのあるアームが回転するために、広い場所も必要となる上、使用者にとっての安全確保が難しい問題もある。
【0008】
加えて、アーム式のボール発射装置は、発射されるボールに回転を付与することが困難であり、縦方向や横方向に関する変化球を投げることが困難である。ボールへの回転の付与が困難であることで、発射されたボールのコントロールが定まりにくい問題もある。
【0009】
実際のピッチャーが投球するときには、ピッチャーは、手で握ったボールに適当な回転をかけて放つ。これに対してアーム式のボール発射装置は、載置されたボールを放つので、ボールに付与される摩擦や回転などの点で、実際のピッチャーが投げたボールと異なるボールが発射されてしまう。
【0010】
特許文献2に代表される、一対のローラの間に挟まれたボールを、一対のローラの回転により発射するローラ式のボール発射装置では、アーム式の場合と同様に一対のローラの回転速度のずれや、ローラの対向位置のずれによって発射されるボールのコントロールが悪くなる問題もある。またローラ式のボール発射装置であれば、カーブやシュートなどの変化球を発射できるが、ローラがボールの軌道を強制的に制御しているだけなので、手と指とで変化球に必要な回転を与える、実際のピッチャーの投げる変化球とは相違する。
【0011】
加えて、当然ながら一対のローラの回転速度の制御や、保守に負担が掛かる。プロスポーツチームであれば保守を容易にできるが、アマチュアスポーツチームでは費用面なども考慮すると保守を行うのは困難である。また、一対のローラを必要とするので、ボール発射装置が大掛かりになり、安全性での問題もある。
【0012】
本発明は、保守や使用が容易であって、安全性も高く、実際の選手が投球したりストロークしたりするのとほとんど同一の挙動を示す直球や変化球を自在に発射できるボール回転調節装置、発射装置用アタッチメント、ボール発射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、ボール発射導管開口部の内部中心方向へ直角方向に、ボールへの摩擦抵抗を調節してボールの回転数に変化を与えることができる装置を設置し、且つボール発射導管開口部自体が360度回転する事によって、上記装置が移動し、回転軸の向きを変えることができる装置等により、前述の問題点を解決している。
【0014】
また本発明の発射装置用アタッチメントは、ボールを射出する発射装置に取り付けられる発射装置用アタッチメントであって、ボールが入射する入射口と入射したボールが発射する発射口を有する筒状の本体部と、本体部の内部に取り付け可能であると共に、入射口と発射口との間で、入射したボールに摩擦を付与する付与ユニットと、発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部と、を備える発射装置用アタッチメントである。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に、本発明のボール回転装置は、ボールの回転数に変化を与えることは勿論、例えばボール回転装置を上部に移動させることで、ボールが発射導管から発射口を通過するときに、ボール表面への摩擦抵抗によりバックスピンがかかり、上向きの力(マグナス力)がかかるため、ストレート一種でも、より確かで様々なストレートを作り出すことができる。
【0016】
しかも、ボール回転装置は360度移動することができるため、回転軸の向きと回転数を変化させることにより、多様な球種(変化球)をもたらすことができる。
【0017】
また、調節ツマミで摩擦抵抗帯を最上部まで上げ、発射導管を通過するボールへの摩擦抵抗を無くせば、回転のほとんど無いボールが発射される。
【0018】
本発明の発射装置用アタッチメントが、発射されるボールへ人間の指が与えるのと同様な回転を与えることができる。この回転により、発射されるボールは、人間のスポーツ選手が投球したボールとほぼ同様の挙動を示す。加えて、縦方向、横方向の回転を自在に与えることができるので、本発明の発射装置用アタッチメントは、種々の変化球を発射できる。
【0019】
また、本発明の発射装置用アタッチメントは、アーム式やローラ式のみならず、圧縮空気や反発式のボール発射装置に取り付け可能であるので、幅広く使用できる。ボールへの回転付与において、大型の装置や部材を必要としないので、アマチュアスポーツ選手や初心者でも簡単に使用でき、安全性も高い。保守も容易に行える。
【0020】
加えて、発射装置用アタッチメントおよびボール発射装置は、野球用のみならず、テニス用や卓球用などの幅広い用途への適用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の第1の発明に係るボール回転調節装置は、円筒状のボール発射導管内にボールを導いて、先端開口部からボールを発射するボール発射装置において、上記ボール発射導管の開口部付近内部における円周方向の一カ所に、突出する摩擦抵抗帯を設け、上記発射導管内を通過するボール表面に摩擦抵抗を生じさせることを特徴とする。
【0022】
この構成により、ボール発射装置から射出されるボールに、摩擦力および回転力を与えて、ボールに回転を生じさせる。
【0023】
本発明の第2の発明に係るボール回転調節装置では、上記摩擦抵抗帯は、ボールを傷つけることのない程度の弾性と摩擦抵抗を持つことを特徴とし、かつ摩擦抵抗帯を突出後退可能にする調節つまみを設け、ボールへの摩擦抵抗を調節することができる。
【0024】
この構成により、ボールに与える回転数を調整できる。
【0025】
本発明の第3の発明に係るボール回転調節装置では、上記ボール回転調節装置を設置した発射導管開口部付近自体が、上記ボール発射導管と独立し、内部中心方向と直角方向へ360度回転する事により、ボール表面への摩擦抵抗が移動することができる。
【0026】
この構成により、ボールに与える回転方向を容易に変更できる。
【0027】
本発明の第4の発明に係るボール回転調節装置では、上記ボール回転調節装置は、発射導管開口部付近内部の円周方向上に、複数、取り付けることができる。
【0028】
この構成により、ボールに複雑な変化を与えることができる。
【0029】
本発明の第5の発明に係るボール回転調節装置では、上記ボール回転調節装置をリモートコントロール等で、突出、後退、回転可能にする事のできる制御部を具備することを特徴とする。
【0030】
この構成により、ボールへの摩擦の付与を、遠隔的に調整できる。
【0031】
本発明の第6の発明に係る発射装置用アタッチメントは、ボールを射出するボール発射装置に取り付けられる発射装置用アタッチメントであって、ボールが入射する入射口と入射したボールを発射する発射口とを有する筒状の本体部と、
本体部の内部に取り付け可能であると共に、入射口と発射口との間で、入射したボールに摩擦を付与する付与ユニットと、発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部と、を備える。
【0032】
この構成により、種々の方式からなるボール発射装置から射出されるボールに、容易かつ確実に摩擦力および回転力を与えることができる。特に、装置を大掛かりとすることもなく、使用上の難しさも防止できる。
【0033】
本発明の第7の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第6の発明に加えて、付与ユニットは、本体部に入射したボール表面に接する所定幅と所定長さを有する摩擦体を有する。
【0034】
この構成により、摩擦体により摩擦力や回転力がボールに付与されるので、実際の人間が投じたり打ったりするボールの挙動に近似した挙動を示す。
【0035】
本発明の第8の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7の発明に加えて、摩擦体は、ボールの曲面に対応する凹面を有する。
【0036】
この構成により、ボールへの摩擦力の付与が、効果的に行われる。
【0037】
本発明の第9の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7から第8のいずれかの発明に加えて、摩擦体は、本体部に入射したボール表面に少なくとも2箇所で接する複数の凸部を有する。
【0038】
本発明の第10の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第9の発明に加えて、複数の凸部が2つであって、2つの凸部は、相互に略平行であると共に本体部でのボールの発射方向に略平行であり、更に2つの凸部は、人間の指約2つ分の間隔を有している
これらの構成により、生身のピッチャーが、人差し指と中指を用いて、ボールに摩擦や回転を与えるのに近似した挙動が得られる。結果として、打撃練習に最適なボールを発射できる。
【0039】
本発明の第11の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7から第8のいずれかの発明に加えて、摩擦体は、本体部に入射したボール表面に一箇所で接する1つの凸部を有し、凸部は、摩擦体の幅方向の一方に偏った位置に設けられる。
【0040】
この構成により、変化球を実現しやすくなる。
【0041】
本発明の第12の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7から第8のいずれかの発明に加えて、摩擦体は、らせん状の凸部を有している。
【0042】
この構成により、ジャイロ回転を行うボールを発射できる。
【0043】
本発明の第13の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第7から第12のいずれかの発明に加えて、摩擦体は、本体部に入射するボールと同等の素材および本体部に入射するボールの直径以上の長さの少なくとも一方を有している。
【0044】
この構成により、ボールへ付与される回転数を増加させることができる。
【0045】
本発明の第14の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第6から第13のいずれかの発明に加えて、付与ユニットは、摩擦体の表面と本体部の中心との距離を変更できるように、本体部内部において上下移動可能である。
【0046】
この構成により、ボールに与える摩擦力や回転力を容易に変更できる。結果として、発射されるボールの球種を変化させたり、同じ球種での変化度合いを変化させたりできる。
【0047】
本発明の第15の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第6から第14のいずれかの発明に加えて、本体部は回転可能であり、本体部の回転に合わせて付与ユニットの位置が変更できる。
【0048】
この構成により、ボールに与える回転方向を容易に変化できる。また、種々の変化球を発射できる。
【0049】
本発明の第16の発明に係る発射装置用アタッチメントでは、第6から第15のいずれかの発明に加えて、本体部は、複数の付与ユニットを取り付け可能である。
【0050】
この構成により、複雑な変化球を実現できる。
【0051】
以下、図面を用いて説明する。
【0052】
(実施の形態1)
図1は、ボール回転調節装置を取り付けたボール発射導管開口部の側面図である。
ボール発射導管開口部(1)上部にボール回転調節装置(2)を取り付ける事のできるスペースを設け、取り付けはボルトで固定する。調節ツマミ(3)で、摩擦抵抗帯(4)を突出後退可能にできる。摩擦抵抗帯は、ウレタン、ゴム等、抵抗の衝撃を和らげる素材で構成されるものであるが、内部にバネ(5)を入れる事で、発射導管内を通過するボール表面に摩擦抵抗を生じさせつつも、より滑らかな摩擦抵抗をボールに与えることができる。
【0053】
本発明は上述のように構成されているものであるから、以下その動作を説明する。
ボール発射装置により弾き出されたボールが発射導管を通過し、開口部の部分にあるボール回転装置の調節により、ボールの回転数に変化を与え、また発射口自体が360度回転する事によって、回転軸の向きを変えることができ、多様な球種も生み出すことができる。
【0054】
尚、上記実施形態では、主に野球ボールの発射を前提に説明したが、本発明の装置はこれに限定されず、ソフトボール、テニス、ゴルフその他の各種球技用のボール発射装置等として使用可能である。
【0055】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
【0056】
まず、野球のボールを例にして、投球されたボールの回転や変化の理論概要について説明する。
【0057】
(ボール挙動の理論概要)
野球においてピッチャーは、その手の内部にボールを握り指でボールを押さえた状態で、ボールを投球する。直球であれば、ピッチャーは、人差し指と中指をボールの縫い目に直交させて押し当てておき、ボールを放つ瞬間に人差し指と中指がボールに逆回転(バックスピン)を与える。
【0058】
ピッチャーが投げたボールは、どのような速球であろうとも、当然に重力の影響でバッターの手元に来るときに降下してしまう。ボールに回転がほとんど無い棒球であれば、ピッチャーの手元からバッターまでの間に、ボールはかなり降下する。ボールにバックスピンが掛かっている場合には、ボールは周囲大気に対する抵抗力を生じるので、降下に対する抵抗力によって、ボールの降下量は減少する。俗に、ホップするといわれるようなボールである。
【0059】
ピッチャーは、なるべく多くのバックスピンのかかった直球を投じることを好む。このようにバックスピンが多く掛かったボールであれば、バッターの手元で伸びるボールとなりバッターは打ちにくくなり、ピッチャーは、バッターを打ち取りやすくなるからである。また、バックスピンの回転数によって、ピッチャーからバッターまでのボールの軌道や挙動が変化するので、バッターの手元で降下が大きい直球や、降下が小さい直球などが生じる。つまり、直球と呼ばれる球種であっても、バックスピンの回転数(勿論、回転方向)によって、ボールは微妙な変化を生じさせる。
【0060】
すなわち、実際のバッターは、実戦においてはこのようなバックスピンの掛かったボールを打つ必要があるので、打撃練習においてもこのようなピッチャーが投げるのに近似したボールの投球を必要としている。
【0061】
従来のアーム式のボール発射装置では、アームの先端の受け皿に載置されたボールが発射される際にボールに無理やりバックスピンを与える。ローラ式のボール発射装置は、一対のローラを上下に配置し、上のローラと下のローラの回転速度を変える事で、バックスピンを与える。
【0062】
しかし、これらアーム式やローラ式のボール発射装置では、ボールに無理にバックスピンを掛けることになり、生身のピッチャーの掛けるバックスピンとは異なる。すなわち、生身のピッチャーがボールを投ずるときに手と指の摩擦で生じさせるスピンとは大きく相違する。また、バックスピンを与えるための手間が掛かる上に、再現率が悪い問題もある。
【0063】
次に、野球での変化球について説明する。
【0064】
一般的には、ピッチャーが投げる変化球として、カーブ、シュート、スライダー、フォーク等がある。これらの変化球は、ボールに与えられた回転方向と回転数によって実現される。例えば、カーブやシュートなどは、ボールに横方向の回転が与えられれば実現される。スライダーも同様である。フォークは、回転をほとんど与えないことにより実現される。また、変化の度合いは回転数で定まる。ボールに縦方向の回転が与えられている場合には、ボールは縦方向を中心とした変化を生じさせる。
【0065】
これらの変化球の理論については、岩波書店発行の「魔球を作る〜究極の変化球を求めて〜(姫野龍太郎 著)」に詳しく記載されており、参考になる。
【0066】
野球の実戦においては、ピッチャーは直球に加えて、カーブやシュートなどの変化球を織り交ぜて投球する。バッターは、これらの変化球にも対応して、ヒットを打つ必要がある。ピッチャーは、握ったボールを放つ瞬間に、手首のひねりと指が与える摩擦によって、カーブやシュートなどに対応する回転をボールに与えることができる。結果として、ピッチャーは、その手と指の動作だけで変化球を投げることができる。
【0067】
従来のアーム式のボール発射装置は、アームからボールが離れる動作に追加できる動作が少なく、変化球を投げるのは困難である。ローラ式のボール発射装置は、一対のローラのそれぞれの回転数を変えることで、回転方向を生み出すことはできるが、バッターの手元で変化する変化球ではなく、ボール発射装置からバッターの手元までを曲線的な軌道を描く変化球しか投げられない。ピッチャーが投げる変化球は、バッターの手元に届くという直球の挙動に、変化を生み出す回転が加わった複数のベクトルの結果で生じるものである。このような変化球は、一対のローラのみでは実現困難である。当然ながら、変化球を投げるための設定に手間が掛かる上、再現率が悪い問題もある。
【0068】
このように、生身のピッチャーは、握ったボールをバッターに向けて放つという直球を生じさせる動作と、手と指とでボールに回転を与えて、ボールを変化させる(直球であっても変化球であっても)動作を合わせて行っている。従来のアーム式やローラ式のボール発射装置は、これらの動作に全て対応し切れていない。このため、このようなボール発射装置で練習をしたとしても、実戦への対応力が不十分である問題があった。
【0069】
本発明の発明者は、このピッチャーの投球動作を、(1)ボールをバッターの手元に投ずるという動作、(2)ボールを投ずる際にボールに変化を与える、という2つの動作に分割することに着眼した。この結果、(2)のボールを投ずる際にボールに変化を与える、ことが、生身のピッチャーの投ずるボールの挙動に近似した挙動を生じさせるとの発想に至り、本発明に想到した。
【0070】
従来の技術で提案されている、アーム式やローラ式のボール発射装置では、生身の人間であるピッチャーが投げた場合に生じる摩擦や回転が付与されていない。このため、直球における球筋の相違(ボールの回転数により落ち方が大きかったり小さかったりすること)や変化球に基づく打撃練習が困難である。あるいはローラ式のボール発射装置が、無理に回転をかけて発射する変化球は、ピッチャーが投げるのとは異なる挙動の変化球である。
【0071】
選手が、実際のピッチャーが投じるボールと異なるボールによって練習を重ねても、実戦との相違が大きいので、選手は実戦では結果を残せない問題が生じやすい。
【0072】
特に、実際のピッチャーが投げるボールには、直球である場合でも、ピッチャーの手と指によりバックスピンが掛けられている。このバックスピンにより、ピッチャーの投げたボールは、バッターの手元までの軌道を描く。一方、従来のボール発射装置では、生身のピッチャーが投げるのと同様のバックスピンが掛けられず、いわゆる棒球にしかならないので、バッターにとっては本来のボールを打撃する練習にはならない。
【0073】
すなわち実戦で結果を残しやすい効果的な打撃練習のためには、生身のピッチャーが投げるのに近い球筋を有するボール発射装置が必要である。本発明の発射装置用アタッチメントは、従来の問題を解決し、生身のピッチャーが投げるのに近い球筋や挙動を有するボールを発射できる。
【0074】
まず、この発射装置用アタッチメントの全体構成を説明する。
【0075】
(全体構成)
図2は、本発明の実施の形態2における発射装置用アタッチメントの側面図である。図面を見やすくするために、内部が透視できるように表されている。
【0076】
発射装置用アタッチメント10は、ボールを射出するボール発射装置に取り付けられる。ボール発射装置は、本体部11にボールを投入しつつ射出できる機能、構造を有していればどのようなものでも良く、圧縮空気を利用したボール発射装置、反発式のボール発射装置、アーム式のボール発射装置、ローラ式のボール発射装置などのいずれにも、発射装置用アタッチメント10は取り付けられる。
【0077】
発射装置用アタッチメント10は、ボールが入射する入射口20と入射したボールが発射される発射口21を有する筒状の本体部11と、本体部11の内部に取り付け可能であると共に、入射口20と発射口21との間で、入射したボールに摩擦を付与する付与ユニット12と、発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部14を備えている。
【0078】
付与ユニット12は、ボールに実際に接して摩擦を付与する部材である摩擦体15と、摩擦体15の位置を調整する調整部13とを有している。付与ユニット12は、図2より明らかな通り、本体部11の内部に飛び出すように取り付けられ、本体部11の外部に設けられた調整部13により、本体部11の外部から調整される。
【0079】
発射装置用アタッチメント10は、ボール発射装置に取り付けられて、本体部11の内部を通過するボール16へ摩擦を付与した上で(すなわち、ボール16に回転を与える)、発射口21から選手に対してボール16を発射する。発射されるボール16は、与えられた摩擦によって、人間の選手が投げたのと同じような摩擦や回転を付与される。
【0080】
付与ユニット12が備える摩擦体15は、調整部13での調整により、位置、高さなどを変え、ボールへ与える摩擦力や回転方向を変化できる。付与ユニット12は、本体部11から取り外し可能であり、本体部11の好きな位置に取り付けられる。また、付与ユニット12は、摩擦体15の形状や素材によって、ボールに異なる変化を与えることができるので、使用目的によって、本体部11をそのままに付与ユニット12のみを取り替えることができる。あるいは、磨耗した摩擦体15のみを、付与ユニット12に対して取り替えることもできるので、ユーザーにとって簡便である。
【0081】
このように、発射装置用アタッチメント10は、野球やテニスなどのボールを発射するボール発射装置から発射されるボールに、本来の挙動に近い摩擦や回転を与える。
【0082】
(動作説明)
ボールへの摩擦や回転の付与について説明する。
【0083】
ここでは、野球の打撃練習に使用されることを前提に説明する。
【0084】
発射装置用アタッチメント10は、種々のボール発射装置に取り付けが可能であり、従来のボール発射装置のみでは実現できなかった、「実際のピッチャーが投げたボールと同様の挙動を示す」ボールを発射できる。
【0085】
ボール16は、入射口20から、本体部11の内部に入る。本体部11は、筒状を有しているので、本体部11に入射されたボール16は、本体部11内部を直進する。付与ユニット12が無ければ、ボール16は、何らの影響や力を受けない。このため、入射口20に入射されたボール16は、本体部11内部をそのまま直進し、発射口21から発射される。この場合には、ボール16には、ボール発射装置において与えられた力のみが働き、発射口21から発射されたボール16は、実際のピッチャーが投げるボールのような挙動を示さない。
【0086】
これに対して、付与ユニット12が本体部11の内部に取り付けられ、付与ユニット12が有する摩擦体15が、本体部11内部を通過するボール16の表面に接することで、ボール16には摩擦が付与される。摩擦が付与されたボール16は、本体部11内部を進み、発射口21から発射される。このとき、ボール16には摩擦が付与されているので、ボール16は回転しながら発射口21から発射される。ボール16は、この回転の回転方向、回転数によって定まる挙動に従って、発射口21から選手の位置に到達する。一般的に、ボールに与えられた回転方向(回転軸)と回転数によって、ボールの球種(直球や変化球)が定まることが論理上知られており、発射口21から発射されるボール16は、この直球や変化球の挙動をもって、選手に到達する。
【0087】
ここで、実際のピッチャーがボールを投げる際には、手で握ったボールを放つ際に、人差し指と中指(場合によっては親指など他の指も)を使って、ボールへ摩擦(回転)を与えている。この与えられた回転方向や回転数により、ボールは縦方向や横方向の変化をしたり、直球においても、選手の手元で異なる落下量を示したりする。
【0088】
付与ユニット12は、摩擦体15により、本体部11内部を通過するボール16に摩擦を与える。この摩擦付与の挙動は、実際のピッチャーが手と指で摩擦を与える挙動と酷似している。ボール16が通過する際に、摩擦体15がボール表面に接するだけであるので、ピッチャーの指により摩擦が与えられるのとほとんど変わらないからである。ボール発射装置をピッチャーがボールを投げる身体部分に該当するとすると、発射装置用アタッチメント10は、ピッチャーの手に該当する。特に、摩擦体15は、ピッチャーの指に該当する。すなわち、生身のピッチャーが身体、手、指を一体的に使ってボールに摩擦や回転を与えることを、発射装置用アタッチメント10が行っていることになる。このとき、ボールに投げる力を与えるのは、ボール発射装置そのものであり、投げられるボールに摩擦や回転を与えるのが、発射装置用アタッチメント10であって、役割を分担している状態である。生身のピッチャーの場合には、投げる動作と摩擦や回転を付与する動作が一体的であるが、実施の形態2における発射装置用アタッチメント10は、この動作の内の「摩擦や回転を付与する動作」の役割を抜き出して実現するものである。言い換えると、ピッチャーがボールを投げる際の動作(2)ボールを投ずる際にボールに変化を与える、をこの発射装置用アタッチメント10が実現する。
【0089】
また、摩擦体15は付与ユニット12に設けられており、調整部13によって摩擦体15の突出量(通過するボール16に対する押し当てられる強度)が調整できる。このため、付与ユニット12は、ボール16に対して異なる摩擦量(言い換えれば、回転数)を与えることができる。この結果、本体部11に入射したボール16は、生身のピッチャーが投げたと同様の挙動をもって、選手に届くことになる。
【0090】
ここでは、野球の打撃練習に用いられる、ピッチングマシーンやバッティングマシーンを、ボール発射装置の例として説明したが、テニスや卓球のボールを発射するボール発射装置でも同様である。
【0091】
以上のように、本発明の発射装置用アタッチメント10は、生身の人間が投げるのに非常に近い挙動を示すボールを発射できるので、実戦に最適な練習が可能となる。
【0092】
図3は、本発明の実施の形態2におけるボール発射装置の全体図である。図3は、ボール発射装置30に発射装置用アタッチメント10が取り付けられて、ボール16が発射される様子を示している。
【0093】
ボール発射装置30は、種々の機能によってボール16を発射する装置である。ローラ式やアーム式などのボール発射装置が使用されれば良いが、好適には圧縮空気によるものや圧縮板の反発によるボール発射装置が使用される。発射装置アタッチメント10は、直進して発射されるボール16表面に、付与ユニット12で摩擦と回転力を与えるからである。
【0094】
ボール発射装置30は、供給されたボール16を圧力などで射出するボール射出部31を備えている。ボール発射装置30に供給されたボール16は、圧縮空気の圧力などにより、ボール射出部31を直進する。ボール射出部31を抜け出たボール16は、入射口20から本体部11に入る。本体部11に入ったボール16は、本体部11を通過するが、この通過の際に付与ユニット12に、その表面が接触する。具体的には、付与ユニット12が備える摩擦体15に、ボール16の表面が接触する。この接触により、ボール16は、回転力を受ける。図3に示される状態では、摩擦体15がボール16の上面に回転力を与えるので、ボール16は、バックスピンの回転動作を行うことになる。このようなバックスピンの回転方向の回転力を得たボール16は、発射口21から外部に発射され、バッターの手元に到達する。また、バックスピンであるので、ボール16は、基本的には直球としてバッターに到達する。
【0095】
発射口21からバッターの手元までの間、ボール16は、付与ユニット12から受けた回転力によりバックスピンが生じており、ボール16の初速、バックスピンの回転方向、バックスピンの回転数、周囲環境の状態などのパラメータに従った挙動を示す。この挙動は、生身のピッチャーが投じた直球の挙動に近似している。すなわち、ピッチャーが行う(1)ボールをバッターの手元に投ずるという動作は、ボール発射装置30により行われ、(2)ボールを投ずる際にボールに変化を与えるという動作は、ピッチャーの手や指の代わりをする付与ユニット12(摩擦体15)によって行われる。このような機能により、発射装置用アタッチメント10は、生身のピッチャーが投じたのと同様の挙動を、ボール16に与えることができる。
【0096】
(各部の詳細)
次に各部の詳細について説明する。
【0097】
(本体部)
本体部11は、ボール発射装置30に取り付けが可能であり、ボール16の入射口20と発射口21を備える筒状の部材である。入射口20は、ボール発射装置30から射出されたボール16を、本体部11内部に導く。発射口21は、本体部11内部を通過したボール16を、外部に発射する。
【0098】
本体部11は、ボール16を通過させる空間を形成できる筒状を有していれば良い。角筒状でもよいし、円筒状でもよいが、ボール16が球であることを考慮すると、円筒状が好適である。加えて、本体部16は、付与ユニット12を取り付ける。付与ユニット12は、摩擦体15によってボール16に摩擦を与えるので、ボール16に対して様々な角度からボールに摩擦を与えることができるのが適当である。このため、本体部11が円筒状であって、ボール発射装置30の取り付け位置に対して回転可能であることが好ましい。この点からも、本体部11は、円筒状であるのが好適である。もちろん、取り付け部14を介して、回転可能とされてもよい。
【0099】
本体部11は、金属、樹脂、木材などの素材で形成される。ただし、耐久性や強度確保の点から金属製であることが好適である。勿論、部材の一部に異なる素材が使用されても良い。また、本体部11は、付与ユニット12を取り付ける必要があるので、網状に孔が開いていることも好適である。この孔を通じて、摩擦体15は本体部11の内部に、調整部13は本体部11の外部とした上で、本体部11は、付与ユニット12を、取り付けることができるからである。
【0100】
本体部11の大きさは、使用するボール16の大きさ、ボール発射装置30の大きさや機能、および装置の使用目的によって適宜決められればよい。例えば、ボール発射装置30が、野球の打撃練習に使用されるのであれば、本体部11の内径は、野球のボールより一回りか二回り程度大きければよく、長さは、付与ユニット12を無理なく取り付けられる程度であればよい。
【0101】
なお本体部11は、取り付け部14を介して、ボール発射装置30に取り付け可能であるので、ボール発射装置30とは別個に取替えが可能である。このため、使用者にとってのランニングコストが低減できるメリットもある。
【0102】
(付与ユニット)
次に付与ユニットについて説明する。
【0103】
図4は、本発明の実施の形態2における付与ユニットの正面図と側面図である。
【0104】
図4は、付与ユニット11から摩擦体15が取り外された状態を示している。
【0105】
図4(a)は、付与ユニット11を正面からみた状態を示しており、図4(b)は、付与ユニット11を側面から見た状態を示している。
【0106】
付与ユニット11は、外形を形成するケース42、摩擦体15を取り付ける取り付け板44、摩擦体15と接する取り付け座45、これらと接続されて摩擦体15の突出量を調整する調整部13、調整部13の軸をケース42と接続する固定ねじ41とナット43を備えている。また、摩擦体15がボール16と接したときに生じる衝撃を吸収する、衝撃吸収部46を有している。
【0107】
これらの構成をもって、摩擦体15を調整可能に取り付けることができる。すなわち、付与ユニット12は、摩擦体15を取り付けると共に摩擦体15の突出量を調整する機能を有する。
【0108】
ケース42の内部空間に摩擦体15が設置され、摩擦体15は、取り付け板44と取り付け座45により取り付けられる取り付け板44と取り付け座45は、上下ねじ40でケース42と貫かれて接続されている。上下ねじ40は、調整部13の回転動作により上下するので、上下ねじ40の上下動作に応じて、摩擦体15が上下する。摩擦体15が下方に下がると、本体部11の中で、ボール16に対する接触圧力が高まる。すなわちより大きな摩擦や回転力を与えることができる。逆に、摩擦体15が上方に移動すると、摩擦体15とボール16との接触圧力が弱まり、摩擦体15は、少ない摩擦力や回転力を、ボール16に与える。
【0109】
また、図4から明らかな通り、摩擦体15は、付与ユニット12から取り外し可能である。摩擦体15は、ボール16との接触により磨耗するが、摩擦体15の取替え可能であると、ランニングコストが低減する。
【0110】
なお、図4で示される付与ユニット12の構造は一例であり、摩擦体15を調整可能に取り付けることができ、本体部11に取り付け可能であれば、どのような構造を有していても良い。
【0111】
(摩擦体)
次に摩擦体15について説明する。
【0112】
付与ユニット12は、摩擦体15を有している。
【0113】
摩擦体15は、付与ユニット12と共に、ボール16に実際の摩擦を与える。摩擦体15は、本体部11に入射されて本体部11を通過するボール16の表面と接する。摩擦体15は、所定の幅と所定の長さを有しており、この所定の幅と所定の長さが、ボール16表面に摩擦を生じさせる。
【0114】
図5は、本発明の実施の形態2における摩擦体の構成図である。
【0115】
摩擦体15は、基板53に、ショック吸収体51とショック吸収体51の表面を覆う抵抗体50と、基板53を付与ユニット12に取り付ける取り付け部52を備えている。
【0116】
基板53は、摩擦体15の全体形状を支持すると共に付与ユニット12に取り付ける基礎となる。基板53は、金属や樹脂で形成されている。
【0117】
ショック吸収体51とその表面の抵抗体50は、摩擦体15の本体を形成する。ショック吸収体51は、ネオプレンスポンジなどの吸収性のある合成素材で形成される。抵抗体50は、天然皮革や合成皮革で形成され、ショック吸収体51の周囲に貼り付けられる。勿論、最初から一体的に製造されても良い。あるいは、抵抗体50がショック吸収体51から取り外し可能に貼り付けられていることで、抵抗体50だけの取替えも可能となる。
【0118】
抵抗体50が天然もしくは人口の皮革で作られていることで、ボール16の素材との相性がよくなり、摩擦体15は、ボール16への損傷を低減しつつ、必要な摩擦力を与えることができる。特に、使用されるボール16と同一かなじみの良い素材で、摩擦体15(表面の抵抗体50)が形成されるのが好適である。この場合には、ボール16の損傷も、摩擦体15(表面の抵抗体50)の損傷も、低減できる。このため、使用期間も長くでき、コストメリットを得ることができる。
【0119】
摩擦体15は、所定の幅と所定の長さを有している。これらの幅や長さは、本体部11の大きさによって定まるが、ボール16へ与える摩擦力を変える要素ともなるので、ボール16の種類や、ボール発射装置30の使用目的にも応じて定められれば良い。
【0120】
なお、摩擦体15の長さが、使用するボール16の直径以上であると、ボール16へ与えられる摩擦力と回転力が増加する傾向がある。摩擦体15の長さが、長くなれば、ボール16の表面との接触量が増大するので、そのぶんだけ、ボール16に与えられる摩擦力と回転力が増加するからである。ただし、摩擦体15が余りに長すぎると、ボール16へ制動が掛かりすぎて、速度低下や方向変動などの問題を生じさせるので、長すぎない程度が好ましい。
【0121】
摩擦体15は、ボール16の曲面に対応する凹面55を有していることも好適である。凹面55によって、摩擦体15は、ボール16の曲面に沿って接触できる。ボール16の曲面に沿った接触により、摩擦体15がボール16に不要な制動をかけることがなく、ボール16への損傷を与えることも少なくなる。また、凹面55が無い場合には、摩擦体15の一部のみがボール16の表面に接することになってしまい、十分な摩擦力を与えることができない問題もある。この点からも、摩擦体15は、凹面55を有していることが好適である。
【0122】
また、摩擦体15は、ボール16の表面に少なくとも2箇所で接する少なくとも2つの凸部56を備えていることも好適である。凸部56は、曲面を有する凹面55に加えて、ピンポイント的にボール16の表面に接触して、摩擦力を与える。図5では、凸部56は、摩擦体15の両サイドの2箇所に設けられており、所謂ピッチャーの人差し指と中指の役割を有している。
【0123】
ピッチャーは、握ったボールを投げる際に、所定間隔で開いた人差し指と中指をボール表面に引っ掛けるようにしてボールに回転を与えている。
【0124】
凸部56も、摩擦体15において一対で設けられており、それぞれの間隔が人間の指2つ分程度(もちろん、この間隔に限定されるものではない)である。入射口20に入ったボール16は、凹面55に加えて凸部56に、その表面を接触する。まさしく、人間の人差し指と中指による接触に近い態様であり、ボール16には、生身のピッチャーが投げたのと同じような摩擦力、回転力が付与される。結果として、生身のピッチャーが投げたのと近似した挙動を示すボールが発射される。
【0125】
凸部56は、摩擦体15の長さ方向の全部に渡って形成されていても良く、一部のみにおいて形成されていても良く、不連続に形成されていても良い。凸部56は、摩擦体15そのものの形状により形成されても良く、別の部材が摩擦体15に取り付けられることで、凸部56が形成されても良い。
【0126】
また、凸部56の突出が余りに大きすぎると、凹面55とボール16との接触が困難となり、摩擦体15全体によるボール16への摩擦力の付与が困難となる。このため、凸部56は、凹面55と適切に連なった形態を有していることが適当である。
【0127】
図5では、摩擦体15が2つの凸部56を有している形態を示しているが、摩擦体15は、1つの凸部56を有していても良い。凸部56が一箇所である場合には、ボール16へ一点集中的に摩擦力が付与されるので、回転軸が予測困難となって、様々な変化球が発射される可能性がある。様々な球種への対応力をつける練習に好適である。特に、1つの凸部56が、摩擦体15の幅方向の一方に偏った位置に設けられることで、ボール16は、予測不能な変化を示しうる。
【0128】
あるいは、1つの凸部56を有する摩擦体15を備える2つの付与ユニット12が、本体部11に取り付けられれば、ボール16に触れる凸部56が2箇所となる。3つの付与ユニット12が、本体部11に取り付けられれば、ボール16には3つの凸部56が接する。凸部56は人間の指に相当するので、指の位置や本数によって投球される変化球と同等の挙動を有するボールを発射する場合には、1つの凸部56を有する複数の付与ユニット12が、本体部11に取り付けられればよい。
【0129】
このように、摩擦体15が、凸部56を有することで、発射装置用アタッチメント10は、生身のピッチャーが投げたボールの挙動に近づけることもでき、バッターの練習に最適な変化球を発射することもできる。
【0130】
また、摩擦体15は、らせん状の凸部を有していることも好適である。らせん状の凸部を有していることで、ボール16に投球方向を軸とした回転(いわゆるジャイロ回転)を生じさせることができる。摩擦体15に接触するボール16は、らせん凸部にそった回転力をうけるので、バッターに向かう方向を回転軸とした回転を行う。現代では、複雑な変化球を投げるピッチャーが多々存在しており、これらの複雑な変化球に、バッターは対応する必要がある。
【0131】
従来のアーム式やローラ式のボール発射装置では、このような複雑な変化球を発射することは事実上無理であったが、本発明の発射装置用アタッチメント10は、その摩擦体15の形状を変えるだけで、複雑な変化球を発射することも可能である。
【0132】
(付与ユニットの調整)
次に、付与ユニット12の調整について説明する。
【0133】
図6、図7は、本発明の実施の形態2における付与ユニットとボールとの関係を示す正面図である。図6は、本体部11内部を通過するボール16に摩擦体15がほとんど接しない状態を示しており、図7は、本体部11内部を通過するボール16に、摩擦体15が最大限に接している状態を示している。
【0134】
付与ユニット12は、摩擦体15を備えており、この摩擦体15は、調整部14により、上下移動が可能である。摩擦体15の上下移動は、摩擦体15の表面(ボール16と接する面)と本体部11の中心との距離を変更できる。言い換えると、摩擦体15の上下移動により、摩擦体15は、ボール16へ付与する摩擦力を変更できる。摩擦力が大きい場合には、発射されたボール16の回転数が多くなり、摩擦力が小さい場合には、発射されたボールの回転数が少なくなる。また、摩擦体15が、ボール16と全く接しない場合には、摩擦体15は、ボール16へ摩擦力を付与せず、ボール16は無回転状態で発射されて、バッターの手元に届く。
【0135】
調整部13は、回しねじになっており、この回しねじの回転によって摩擦体15の位置が上下する。摩擦体15が下がると、ボール16との接触力が大きくなり、摩擦体15が上がると、ボール16との接触力が小さくなる。
【0136】
図6では、回しねじがある方向に回されて、摩擦体15が最大限まで上方に移動した状態が示されている。摩擦体15は、本体部11の中心から遠ざかり、本体部11内部を通過するボール16の表面とほとんど接しない。このため、本体部11を通過するボール16は、摩擦体15と接しないままに、発射口21から発射される。結果として、ボール16は、回転をほとんどしないままバッターの手元に届く。回転がほとんど無いのであるから、ボール16は、バッターの手元で落下しやすい。すなわちナックルボールに近い。
【0137】
一方、図7では、回しねじが反対の方向に回されて、摩擦体15が最大限まで下方に移動した状態が示されている。なお、下方とは、ボール16に向かって近づく意味である。摩擦体15は、本体部11の中心に近づき、本体部11内部を通過するボール16の表面に大きな力で接する。このため、本体部11を通過するボール16は、大きな力で摩擦体15と接した上で、発射口21から発射される。結果として、ボール16は、高い回転数をもってバッターの手元に届く。付与ユニット12が、本体部11の上部に取り付けられている場合には、摩擦体15は、ボール15の上部に回転力を与えるので、発射口21から発射されるボール16は、バックスピンを有している。高い回転数のバックスピンによって、発射されたボール16は、バッターの手元までしっかり伸びる直球となる。
【0138】
なお、調整部13による摩擦体15の上下移動の調整は、回しねじの調節量に対応しているので、微細に調整できる。このため使用目的に応じて、摩擦体15の突出量(ボール16への接触力)を変えることができ、突出量の違いによってボール16に与える回転数を変えることができる。直球を発射する場合には、摩擦体15の突出量の違いによって、ボール16のバックスピンの回転数が変わり、バッターの手元までのボール16の軌道が変化する。
【0139】
このような異なる軌道を、発射装置用アタッチメント10は容易に実現できるので、打撃練習での高い効果を生む。
【0140】
実際の生身のピッチャーが投げるボールは、直球であってもバックスピンが掛かっており、その回転数はピッチャーによって様々である。
【0141】
発射装置用アタッチメント10は、バックスピンの回転数は、摩擦体15の突出量(付与ユニット12の上下移動の調整)により変えることができるので、様々なピッチャーを想定した打撃練習の助けとなる。また、ピッチャーの手と指が生じさせるのに近似した摩擦と回転により、ボール16が発射されるので、ボール16は、生身のピッチャーが投球するボールと近似した挙動を示す。このため、実施の形態2における発射装置用アタッチメント10により、選手は、実戦に即した打撃練習をできる。
【0142】
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。
【0143】
実施の形態3では、発射装置用アタッチメント10が、横方向を中心とした変化球を発射できることについて説明する。
【0144】
実施の形態2では、主にボール16に縦方向のバックスピンを与えることについて説明した。すなわち、実施の形態2では、直球(縦方向の変化をおこなうことも含む)について説明した。
【0145】
しかしながら、付与ユニット12を本体部11の横や下に取り付けたり、複数の付与ユニット12が本体部11に取り付けられたりすることで、横方向の変化球(カーブ、シュート、スライダー)が実現できる。
【0146】
図8は、本発明の実施の形態3におけるボール発射装置の構成図である。図8は、図3と同様の構成を有し、ボール発射装置30に取り付けられた発射装置用アタッチメント10は、ボール発射装置30から射出されるボール16に摩擦力と回転力を与える。発射口21から発射されたボール16は、所定の回転方向に、所定の回転数の回転を有する。このとき、図8に示されるように、付与ユニット12が本体部11の側面に取り付けられていることで、ボール16の側面に摩擦力が付与される。側面に摩擦力を受けたボール16は横方向に回転を行うので、この回転に従って、ボール16は、横方向の変化を生じる。例えば、カーブやシュートである。
【0147】
図9は、本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの正面図である。図9は、本体部11の発射口21側から見ている状態を示している。
【0148】
図9では、付与ユニット12が本体部11の左側面に取り付けられている。付与ユニット12が本体部11の側面に取り付けられても良く、付与ユニット12が取り付けられた状態で、本体部11が回転することで、付与ユニット12の位置が変更されることでもよい。すなわち、本体部11は、回転可能であって、この本体部11の回転に合わせて付与ユニット12の位置が変更可能であってもよい。
【0149】
図9では、付与ユニット12は、本体部11の発射口21から見て左側面に取り付けられている状態である。すなわち、本体部11に入ったボール16は、発射方向に対して(バッターに対して)右側の面に摩擦を受ける。摩擦は、ボールの直進に対して制動をかける働きを有するので、ボール16は、発射方向に対して右向きに向かう回転を生じる。右向きに向かう横回転がボール16に生じると、ボール16は、右バッターに対して食い込んでくる変化球となる。すなわちボール16は、シュートと呼ばれる球種となる。
【0150】
一方付与ユニット12が、図9とは反対側、発射口21から見て右側に取り付けられた場合には、ボール16には、発射方向に対して左側に向かう回転が生じる。この結果、ボール16は、右バッターから遠ざかる方向に変化する。すなわち、ボール16は、カーブと呼ばれる球種となる。このように、付与ユニット12の位置を変えて、摩擦体15がボール16と接する位置を可変とすることで、ボール16に様々な回転方向での回転を生じさせることができる。この回転方向への回転に従って、ボール16は、種々の変化球となる。
【0151】
このように、付与ユニット12の位置を変えるだけで(あるいは付与ユニット12が取り付けられた本体部11を回転させるだけで)、ボール16の回転方向を制御でき、種々の変化球を実現できる。また、実施の形態2で説明したように、摩擦体15は、調整部13によって、その表面と本体部11の中心との距離を増減できる。このため、付与ユニット12の位置が変化したとしても、摩擦体15がボール16に与える摩擦力は可変とできる。摩擦力が高ければ、ボール16の回転数は増す。すなわち、付与ユニット12を図9に示すように、発射口からみて左側面に取り付けた場合であって、摩擦体15の突出量が大きい場合には、ボール16は、発射方向右に向けた回転方向であって高い回転数をもって発射される。回転数が高いことで、より角度のあるシュートボールが発射できる。逆に、摩擦体15の突出量を少なくすれば、ボール16の回転数が少なくなり、角度の小さいシュートボールが発射できる。
【0152】
これは、付与ユニット12の位置を発射口から見て右側にしてカーブボールを発射する場合にも同様である。摩擦体15の突出量の加減により、ボール16の回転数を変えることができ、角度や切れの異なるカーブボールが発射できる。また、実験の結果、カーブボールを発射する位置と同じ位置に付与ユニット12が取り付けられた場合に、ボール16への回転数を少なくすれば、フォークボールが発射されることが分かった。このように、付与ユニット12の位置だけでなく、付与ユニット12がボール16に与える回転数によっても、種々の変化球を制御できる。
【0153】
また、本体部11の右側面や左側面に付与ユニット12を位置することを説明したが、右斜め上、左斜め下、あるいは下のいずれかに付与ユニット12が取り付けられてもよく、この場合にも、取り付け位置に応じた回転がボール16に与えられ、回転方向と回転数に応じた変化球が発射できる。
【0154】
このように、付与ユニット12の位置が可変であることと、摩擦体15の突出量が可変であることとが多様に組み合わされることで、様々な変化球が発射できる。また、いずれの変化球も、摩擦体15が与える回転により実現されるので、発射装置用アタッチメント10が発射する変化球の挙動は、生身のピッチャーが、手と指とで生じさせる回転で投球する変化球の挙動に近似する。このため、実戦に即した打撃練習が実現できる。
【0155】
また、図10に示されるように、複数の付与ユニット12が、本体部11に取り付けられても良い。複数の付与ユニット12が取り付けられることで、例えば、一つの付与ユニット12の摩擦体15が突出しているときは、他の付与ユニット12の摩擦体15が引っ込んでおり、一方のみがボール16への摩擦付与に貢献させるようにしておくことができる。このようにしておけば、本体部11を回転させたり、付与ユニット12を取り替えたりすること無く、ボール16の球種を切り替えることができる。図10は、本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの正面図である。
【0156】
図10に示されるように、付与ユニット12と12bとが二つ取り付けられており、ある球種の場合には一方の摩擦体15のみが突出してボール16に接し、他方の摩擦体15bはボール16に接しないように設定されていても良い。
【0157】
あるいは、両方の摩擦体15、15bがボール16に接するように設定されることで、ボール16により複雑な回転を与えることができ、複雑な変化球を実現することもできる。
【0158】
このように、複数の付与ユニット12が、本体部11に取り付けられることで、使用上の簡便性が増したり、複雑な変化球が実現できたりする。
【0159】
また、本体部11は、入射口20から入射するボール16の位置や向きを固定する固定部を備えていることも好適である。図11は、本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの側面図である。
【0160】
本体部10は、入射口20に近い場所に、固定部70を備えている。固定部70は、入射口20から入射するボール16の位置や向きを固定する。ボール16は、縫い目を有していることが多く、変化球の挙動はこの縫い目によっても左右される。このため、ボール16が発射される度に、ボールの位置や向きが固定されることは、変化球の挙動を統一することにとって効果的である。固定部70は、図11に示されるように、入射口20から本体部11内部にかけてボールの方向を固定する向きに形成された板部材で実現されればよい。勿論、他の手段で実現されても良い。いずれにせよ、入射口20に入射し、本体部11を通過するボールの位置や向きを固定する。
【0161】
以上のように、実施の形態3の発射装置用アタッチメントによれば、縦方向のみならず、横方向や斜め方向などを含んだ変化球を、発射できる。これは、野球における変化球のみならず、テニスや卓球における変化球にも適用できる。
【0162】
加えて、摩擦体15による摩擦のみで、これらの変化球が実現できるので、大掛かりな装置は不要であるし、準備や保守も容易である。中高生やアマチュアスポーツ選手でも、容易に発射装置用アタッチメントおよびこれを取り付けたボール発射装置を使用できる。
【0163】
また、生身のピッチャーが投球する変化球と近似した挙動を示すことで、選手は実戦に即した打撃練習ができる。テニスや卓球においても同様である。
【0164】
また、摩擦体15の磨耗や発射装置用アタッチメント10が故障や損傷をした場合でも、ボール発射装置30ではなく、これらの部材だけを交換すればよいので、ランニングコストが低廉で済むメリットがある。
【0165】
(実施の形態4)
次に実施の形態4について説明する。
【0166】
実施の形態4では、実施の形態2〜3で説明された発射装置用アタッチメント10が取り付けられたボール発射装置について説明する。
【0167】
図12は、本発明の実施の形態4におけるボール発射装置の構成図である。
【0168】
便宜上、発射装置用アタッチメント10以外の部分をボール発射装置30として示しているが、発射装置用アタッチメント10が取り付けられた全体をボール発射装置として捉えても良い。使用態様での便宜上にすぎないので、特に区別されるものではない。
【0169】
ボール発射装置30は、その先端に発射装置用アタッチメント10を取り付けている。ボール発射装置30は、発射装置用アタッチメント10に実際にボール16を射出するボール射出部31、ボール射出部31にボール16を投入する投入部82と、ボール射出部31において、ボール16に実際に射出圧力を与える加圧部80、筐体83を備えている。また、必要に応じて、ボール発射装置30は、キャスター84を備えている。キャスター84は、ボール発射装置30を容易に移動させることができる。
【0170】
使用者は、投入部82にボール16を投入する。投入されたボール16は通路81を経由してボール射出部31に供給される。加圧部80は圧縮空気や圧縮ガスなどの働きにより、押し出し板をボール16に瞬時に強い力で押し当てて、ボール16に射出圧力を加える。射出圧力を加えられたボール16は、ボール射出部31に沿って射出される。ボール射出部31に沿って射出されたボール16は、入射口20から本体部11に入射し、付与ユニット12での摩擦力を受けて、発射口21から外部に向けて発射される。
【0171】
このとき、付与ユニット12が有する摩擦体15の位置や突出量に応じた摩擦力が、ボール16に与えられる。この摩擦力によって、ボール16は、回転動作を行う。この回転動作により、ボール16は、縦方向や横方向の変化球となったり、生身のピッチャーが投げるのに近似した直球となったりする。この作用は、実施の形態2,3で説明したのと同様である。
【0172】
図12から明らかな通り、ボール発射装置30として、圧縮空気や圧縮ガスなどを用いた圧縮発射方式の装置が用いられると、発射装置用アタッチメント10を取り付けるだけで生身のピッチャーに近いボールの発射が実現できる。しかも、取り扱いが容易であるし、広い使用場所も不要である。消耗すれば、発射装置用アタッチメント10や摩擦体15のみを取り替えればよいので、メンテナンス性も高く、ランニングコストも低くて済むメリットがある。
【0173】
勿論、使用するボールをテニスボールに変えれば、テニスの練習に好適に利用できる。この際には、ボール発射装置30は、テニスのストロークで生じるトップスピン、バックスピン、スライスなどのテニスボールへの回転を、かけることができる。
【0174】
このように、発射装置用アタッチメント10を取り付けるだけで、実戦に即した練習に好適なボール発射装置30が実現できる。
【0175】
なお、図12では、圧縮空気や圧縮ガスを用いたボール発射装置30を例としたが、これは一例であり、ローラ式などのボール発射装置が適用されても良い。
【0176】
(実施の形態5)
次に実施の形態5について説明する。
【0177】
実施の形態5では、実施の形態4で説明したとおり、発射装置用アタッチメント10を装着した圧縮空気を用いたボール発射装置30を用いた各種の実験結果について説明する。
【0178】
(実験1)
実験1では、付与ユニット12を本体部11の天頂部(時計での12時の位置)に取り付けて、付与ユニット12から摩擦体15をボール16に向けて突出させた突出量の違いによって球種への影響度を確認した。実験1では、摩擦体15がボール16にバックスピンを与えるので、発射されるボール16は基本的に直球になる。なお、直球といえども、発射位置(投球位置)から一定量の落下を示す。しかしながら、摩擦体15が与える摩擦力によって、ボール16が受けるバックスピンの回転数は異なる。理論上、ボール16のバックスピンの回転数が多ければ、ボール16の落下量が少なくなる。
【0179】
実際の生身のピッチャーが投じたボールは、投げる際に与える回転力によりバックスピンの回転数が変わり、バッターの手元で「伸びる」ボールになったり、バッターの手元で「落ちる」ボールになったりしうる。すなわち、変化のある直球が投球される。本発明の発射装置用アタッチメント10およびこれを装着したボール発射装置30は、このバックスピンの回転数を変えることができるので、生身のピッチャーが投げる直球と同様に、変化のある直球を発射できる。実験1は、これを実証する。
【0180】
実験1では、本体部11の天頂部に、付与ユニット12を取り付けて、付与ユニット12からの摩擦体15の突出量を徐々に大きくしていった場合の「球種(ホップ、ストレート、ドロップ)」、「ボール16の回転数」を確認した。
【0181】
ここで、上述の岩波書店発行の「魔球を作る〜究極の変化球を求めて〜(姫野龍太郎 著)」によれば、投球後に18m前方にあるバッターの位置において、ボールが投球位置の高さより58cmまでの落下量に留まる場合には、このボールはストレートであり、それ以上の落下量を示す場合には、このボールはドロップ(落ちる)であると指摘されている。このことを基礎に、実験1では、発射されたボール16の球種判定の基準を、発射位置から到達位置(18m前方)までの落下量が58cmまでに留まる場合をストレート、58cm以上の落下量を示す場合にはドロップ、落下量が30cmまでに留まる場合をホップである、と決めた。
【0182】
実験条件は次の通りである。
【0183】
(1)ボール発射装置30からボール16を発射する高さは、地面から130cmである。
【0184】
(2)ボール発射装置30からボール16の到達位置までの距離を、18mとした。
【0185】
(3)ボール16の初速は、100km/hと、130km/hの2種類とした。
【0186】
(4)付与ユニット12からの摩擦体15の突出量は、基準位置より、9mm(摩擦体15がボール16に全く触れない位置)、10mm、13mm、15mm、17mm、19mm、21mm、23mmの8種類とした。
【0187】
(5)突出量毎に、30球のボールを発射して、球種を判定した。球種判定の基準は、
発射位置より30cmまでに落下量が留まる場合・・ホップ
発射位置より58cmまでに落下量が留まる場合・・ストレート
発射位置より58以上の落下量を示す場合・・ドロップ
(6)発射毎に、ボールの軌跡を600fpsの高速度カメラで撮影し、画像からボール16の回転数を計測した。
【0188】
(7)付与ユニット12は、本体部11の天頂部に取り付けられた。
【0189】
実験1の結果を、(表1)に示す。
【0190】
【表1】
【0191】
表1より明らかな通り、摩擦体15の突出量が大きくなり、ボール16に与える摩擦力が大きくなるにつれて、ボール16の回転数が増加し、ストレートの数が増える。この結果、摩擦力が大きければ、ボール16に与えられる回転力が大きくなり、ボール16の回転数が増加するという理論を、実証している。加えて、この結果は、バックスピンの回転数が増加することで、ボール16の落下量が減少し、ストレートに近づくとの理論を実証している。詳細の説明は省略するが、表1の結果を見れば明らかである。
【0192】
例えば、摩擦体15の突出量が10mmの場合には、ボール16の回転数は、1〜2回転である。これに対して、摩擦体15の突出量が23mmの場合には、ボール16の回転数は、13〜15回転にまで増加する。この結果、突出量が10mmの場合には、「ストレートが1球、ドロップが29球」であるのに対して、突出量が23mmの場合には、「ストレートが16球、ドロップが11球」にまで変化している。このように、摩擦体15がボール16に与える摩擦力が大きくなるにつれて、ボール16のバックスピンの回転数が増加し、それだけバッターの手元で落ちにくい(伸びる)直球が増えていく。この傾向は、ボール16の初速が速くなると(すなわち、実験1では100km/hの場合よりも130km/hの場合)より顕著に確認できる。例えば、摩擦体15の突出量が23mmの場合、ボール16の初速が100km/hではストレートと判定されるのは16球であるが、ボール16の初速が130km/hではストレートと判定されるのは25球である。初速が速ければ、それだけ到達までの落下量が少ないのは当然であり、摩擦体15の働きと相まって、本発明の発射装置用アタッチメント10およびこれを装着したボール発射装置30の発射するボール16は、生身のピッチャーが投球するボールの挙動に近似している。
【0193】
このように、実験1によれば、摩擦体15の働きによって、発射されるボール16の直球における球種や回転数を調整可能であり、これは理論にも一致していることが確認できる。
【0194】
(実験2)
次に実験2について説明する。
【0195】
実験2では、本体部11の様々な位置に、付与ユニット12を取り付けた場合の、ボール16の変化を確認した。図13は、本発明の実験2における付与ユニットの取り付け位置を示す模式図である。実験2では、図13に示されるとおり、本体部11の1)〜8)の位置のそれぞれに付与ユニット12を取り付けてからボールを発射して、その球種を確認した。
【0196】
位置1)は、本体部11の天頂部、すなわち時計で言うところの12時の位置である。位置2)は、本体部11において、6時の位置である。位置3)は、本体部11において、3時の位置である。位置4)は、本体部11において、9時の位置である。位置5)は、本体部11において、7時と8時の間の位置である。位置6)は、本体部11において、1時と2時の間の位置である。位置7)は、本体部11において、4時と5時の間の位置である。位置8)は、本体部11において、10時と11時の間の位置である。
【0197】
これら位置1)〜8)のそれぞれに、付与ユニット12を取り付けた場合の、発射されるボール16の球種を確認した。
【0198】
実験条件は、次の通りである。
【0199】
(1)ボール16の初速は130km/hである。
【0200】
(2)付与ユニットの位置毎に、30球のボールを発射した。
【0201】
(3)発射されるボールの軌跡を600fpsの高速度カメラで撮影し、撮影画像で見られるボール16の軌跡から、実験者が球種を判定した。
【0202】
(4)付与ユニットの位置毎に、理論的に想定される球種(右ピッチャーとして)を設定し、想定球種の数と想定球種外の数を計測して、表2に反映した。
【0203】
付与ユニット12の位置により、摩擦体15がボール16に与える回転方向が決定される。理論上は、ボール16の回転方向により、ボール16の球種は決定されるので、想定球種の再現率は、発射装置用アタッチメント10およびこれを装着したボール発射装置30が発射するボールが、生身のピッチャーが投げるボールの挙動に近似していることを示す。このため、実験2では、想定球種の再現率が着目される。
【0204】
表2は、実験2の結果を示す。
【0205】
【表2】
【0206】
表2より明らかな通り、位置1)では、想定球種はストレートである。実験の結果、想定球種であるストレートは28球、想定球種外は、2球であった。
【0207】
位置2)では、想定球種は縦のカーブである。実験の結果、想定球種である縦のカーブは、28球、想定球種外は、2球であった。位置3)では、想定球種はシュートもしくはフォークである。実験の結果、想定球種であるシュートは3球で、シュート外は27球とシュートの再現性は低かった。しかしながら、後述の位置6)ではシュートの再現率が高く、シュートボールを発射するためには、位置6)に付与ユニット12が取り付けられるのが適当である。なお、位置3)においてもう一つの想定球種であるフォークは、27球であり、フォークボールに関する再現性は高かった。
【0208】
位置4)では、想定球種は横のカーブもしくはフォークである。実験の結果、位置3)と同様に、横カーブの再現性は低いが、フォークの再現性は高い。カーブについては、むしろ位置5)や位置7)での再現性が高く、位置5)や位置7)に付与ユニット12が取り付けられることが適当であることが分かる。
【0209】
位置8)では、想定球種はスライダーであるが、実験の結果、スライダーとしての顕著な変化は見にくかった。位置1)と位置8)の間に付与ユニット12を取り付けた場合に、スライダーの再現が容易である。
【0210】
位置5)では、想定球種は左下へのカーブであり、想定球種が29球と、再現性が高かった。位置7)では、想定球種は右下カーブであり、想定球種が27球とやはり再現性が高かった。
【0211】
以上のように、付与ユニット12の位置を変えることで(付与ユニット12の取り付け位置を変えることで実現されてもよく、付与ユニット12を取り付けた本体部11を回転させることで実現されてもよい)、発射されるボール16の球種を、様々に変化させることができることが、実験からも裏付けられる。すなわち、実施の形態2〜4で説明した発射装置用アタッチメントおよびこれを装着したボール発射装置は、野球の打撃練習において、高いレベルでの打撃練習を実現できる。変化球に対する打撃練習に好適である。
【0212】
(実験3)
次に、実験3について説明する。
【0213】
実験3は、摩擦体15のサイズを大きくした場合に、回転数が増加することを実証する実験である。従来サイズとは、ボール16の直径程度の摩擦体15の長さ(ボール16の発射方向に沿った長さ)を有しており、1.5倍サイズは、従来サイズの1.5倍の摩擦体15の長さを有している。
【0214】
具体的に製造した摩擦体15のサイズは、従来サイズの場合には、長さが72mm程度、幅は35mm〜45mm程度(人間の二本分の指の幅と同等)である。1.5倍サイズの摩擦体15は、長さが135mm、幅は50mmである。
【0215】
表3は、実験3の結果を示す。
【0216】
【表3】
【0217】
表3より明らかな通り、摩擦体15の長さが長い1.5倍サイズの場合には、ボール16に付与される回転数が増加している。このように、摩擦体15の長さが増加することで、ボール16に対して与えられる回転数が増加することも、実験から実証された。
【0218】
なお、表1〜表3の中に記載している参照動画は、それぞれの実験において撮影した動画の整理番号を示している。
【0219】
以上のように、実施の形態2〜4で説明した発射装置用アタッチメントおよびこれを装着したボール発射装置は、理論通りの生身のピッチャーが投げたのと同様の挙動を実現できる。このため、発射装置用アタッチメントおよびこれを装着したボール発射装置は、野球の打撃練習に好適に使用できる。勿論、ボールをテニスボールに変えれば、テニスの練習(変化するテニスボールへの対応も可能)へも適用できるし、ボールを卓球のボールに変えれば、卓球の練習にも適用できる。
【0220】
以上、実施の形態1〜5で説明されたボール回転調節装置、発射装置用アタッチメント、ボール発射装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】ボール回転調節装置を取り付けたボール発射導管開口部の側面図
【図2】本発明の実施の形態2における発射装置用アタッチメントの側面図
【図3】本発明の実施の形態2におけるボール発射装置の全体図
【図4】本発明の実施の形態2における付与ユニットの正面図と側面図
【図5】本発明の実施の形態2における摩擦体の構成図
【図6】本発明の実施の形態2における付与ユニットとボールとの関係を示す正面図
【図7】本発明の実施の形態2における付与ユニットとボールとの関係を示す正面図
【図8】本発明の実施の形態3におけるボール発射装置の構成図
【図9】本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの正面図
【図10】本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの正面図
【図11】本発明の実施の形態3における発射装置用アタッチメントの側面図
【図12】本発明の実施の形態4におけるボール発射装置の構成図
【図13】本発明の実験2における付与ユニットの取り付け位置を示す模式図
【符号の説明】
【0222】
1 ボール発射導管開口部
2 ボール回転調節装置
3 調節ツマミ
4 摩擦抵抗帯
5 バネ
10 発射装置用アタッチメント
11 本体部
12 付与ユニット
13 調整部
15 摩擦体
16 ボール
20 入射口
21 発射口
30 ボール発射装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のボール発射導管内にボールを導いて、先端開口部からボールを発射するボール発射装置において、上記ボール発射導管の開口部付近内部における円周方向の一カ所に、突出する摩擦抵抗帯を設け、上記発射導管内を通過するボール表面に摩擦抵抗を生じさせることを特徴とする、ボール回転調節装置。
【請求項2】
上記摩擦抵抗帯は、ボールを傷つけることのない程度の弾性と摩擦抵抗を持つことを特徴とし、かつ摩擦抵抗帯を突出後退可能にする調節つまみを設け、ボールへの摩擦抵抗を調節することができる、請求項1記載のボール回転調節装置。
【請求項3】
上記ボール回転調節装置を設置した発射導管開口部付近自体が、上記ボール発射導管と独立し、内部中心方向と直角方向へ360度回転する事により、ボール表面への摩擦抵抗が移動することができる、請求項1〜2記載のボール回転調節装置。
【請求項4】
上記ボール回転調節装置は、発射導管開口部付近内部の円周方向上に、複数、取り付けることのできる、請求項1〜3記載のボール回転調節装置。
【請求項5】
上記ボール回転調節装置をリモートコントロール等で、突出、後退、回転可能にする事のできる制御部を具備することを特徴とする、請求項1〜4記載のボール回転調節装置。
【請求項6】
ボールを射出するボール発射装置に取り付けられる発射装置用アタッチメントであって、
ボールが入射する入射口と入射したボールを発射する発射口とを有する筒状の本体部と、
前記本体部の内部に取り付け可能であると共に、前記入射口と前記発射口との間で、入射したボールに摩擦を付与する付与ユニットと、
前記発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部と、を備える発射装置用アタッチメント。
【請求項7】
前記付与ユニットは、前記本体部に入射したボール表面に接する所定幅と所定長さを有する摩擦体を有する請求項6記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項8】
前記摩擦体は、ボールの曲面に対応する凹面を有する請求項7記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項9】
前記摩擦体は、前記本体部に入射したボール表面に少なくとも2箇所で接する複数の凸部を有する請求項7から8のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項10】
前記複数の凸部が2つであって、前記2つの凸部は、相互に略平行であると共に前記本体部でのボールの発射方向に略平行であり、更に前記2つの凸部は、人間の指約2つ分の間隔を有している請求項9記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項11】
前記摩擦体は、前記本体部に入射したボール表面に一箇所で接する1つの凸部を有し、前記凸部は、前記摩擦体の幅方向の一方に偏った位置に設けられる請求項7から8のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項12】
前記摩擦体は、らせん状の凸部を有している請求項7から8のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項13】
前記摩擦体は、前記本体部に入射するボールと同等の素材および前記本体部に入射するボールの直径以上の長さの少なくとも一方を有している請求項7から12のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項14】
前記付与ユニットは、前記摩擦体の表面と前記本体部の中心との距離を変更できるように、前記本体部内部において上下移動可能である請求項6から13のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項15】
前記本体部は回転可能であり、前記本体部の回転に合わせて前記付与ユニットの位置が変更できる請求項6から14のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項16】
前記本体部は、複数の前記付与ユニットを取り付け可能である請求項6から15のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項17】
前記本体部は、前記入射口から入射するボールの位置、向きを固定する固定部を更に備える請求項6から16のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項18】
請求項6から17のいずれか記載の発射装置用アタッチメントと、
前記発射装置用アタッチメントに接続されるボール射出部と、
前記ボール射出部にボールを供給する投入部と、
前記ボール射出部においてボールに射出圧力を与える加圧部と、
筐体とを備え、
前記投入部に投入されたボールは、前記ボール射出部に供給され、
前記ボール射出部に供給されたボールは、前記加圧部により圧力を与えられて、前記ボール射出部に沿って射出され、
前記ボール射出部に沿って射出されたボールは、前記発射装置用アタッチメントの内部に入射し、
前記発射装置用アタッチメントの内部に入射したボールは、前記付与ユニットにより摩擦が付与されるボール発射装置。
【請求項1】
円筒状のボール発射導管内にボールを導いて、先端開口部からボールを発射するボール発射装置において、上記ボール発射導管の開口部付近内部における円周方向の一カ所に、突出する摩擦抵抗帯を設け、上記発射導管内を通過するボール表面に摩擦抵抗を生じさせることを特徴とする、ボール回転調節装置。
【請求項2】
上記摩擦抵抗帯は、ボールを傷つけることのない程度の弾性と摩擦抵抗を持つことを特徴とし、かつ摩擦抵抗帯を突出後退可能にする調節つまみを設け、ボールへの摩擦抵抗を調節することができる、請求項1記載のボール回転調節装置。
【請求項3】
上記ボール回転調節装置を設置した発射導管開口部付近自体が、上記ボール発射導管と独立し、内部中心方向と直角方向へ360度回転する事により、ボール表面への摩擦抵抗が移動することができる、請求項1〜2記載のボール回転調節装置。
【請求項4】
上記ボール回転調節装置は、発射導管開口部付近内部の円周方向上に、複数、取り付けることのできる、請求項1〜3記載のボール回転調節装置。
【請求項5】
上記ボール回転調節装置をリモートコントロール等で、突出、後退、回転可能にする事のできる制御部を具備することを特徴とする、請求項1〜4記載のボール回転調節装置。
【請求項6】
ボールを射出するボール発射装置に取り付けられる発射装置用アタッチメントであって、
ボールが入射する入射口と入射したボールを発射する発射口とを有する筒状の本体部と、
前記本体部の内部に取り付け可能であると共に、前記入射口と前記発射口との間で、入射したボールに摩擦を付与する付与ユニットと、
前記発射装置の射出口に取り付け可能な取り付け部と、を備える発射装置用アタッチメント。
【請求項7】
前記付与ユニットは、前記本体部に入射したボール表面に接する所定幅と所定長さを有する摩擦体を有する請求項6記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項8】
前記摩擦体は、ボールの曲面に対応する凹面を有する請求項7記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項9】
前記摩擦体は、前記本体部に入射したボール表面に少なくとも2箇所で接する複数の凸部を有する請求項7から8のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項10】
前記複数の凸部が2つであって、前記2つの凸部は、相互に略平行であると共に前記本体部でのボールの発射方向に略平行であり、更に前記2つの凸部は、人間の指約2つ分の間隔を有している請求項9記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項11】
前記摩擦体は、前記本体部に入射したボール表面に一箇所で接する1つの凸部を有し、前記凸部は、前記摩擦体の幅方向の一方に偏った位置に設けられる請求項7から8のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項12】
前記摩擦体は、らせん状の凸部を有している請求項7から8のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項13】
前記摩擦体は、前記本体部に入射するボールと同等の素材および前記本体部に入射するボールの直径以上の長さの少なくとも一方を有している請求項7から12のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項14】
前記付与ユニットは、前記摩擦体の表面と前記本体部の中心との距離を変更できるように、前記本体部内部において上下移動可能である請求項6から13のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項15】
前記本体部は回転可能であり、前記本体部の回転に合わせて前記付与ユニットの位置が変更できる請求項6から14のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項16】
前記本体部は、複数の前記付与ユニットを取り付け可能である請求項6から15のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項17】
前記本体部は、前記入射口から入射するボールの位置、向きを固定する固定部を更に備える請求項6から16のいずれか記載の発射装置用アタッチメント。
【請求項18】
請求項6から17のいずれか記載の発射装置用アタッチメントと、
前記発射装置用アタッチメントに接続されるボール射出部と、
前記ボール射出部にボールを供給する投入部と、
前記ボール射出部においてボールに射出圧力を与える加圧部と、
筐体とを備え、
前記投入部に投入されたボールは、前記ボール射出部に供給され、
前記ボール射出部に供給されたボールは、前記加圧部により圧力を与えられて、前記ボール射出部に沿って射出され、
前記ボール射出部に沿って射出されたボールは、前記発射装置用アタッチメントの内部に入射し、
前記発射装置用アタッチメントの内部に入射したボールは、前記付与ユニットにより摩擦が付与されるボール発射装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−45443(P2009−45443A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170978(P2008−170978)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(596017602)共和技研株式会社 (5)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(596017602)共和技研株式会社 (5)
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