説明

ボール盤

【課題】アッパカバーを開けずにベルトの位置を確認することができるボール盤を提供する。
【解決手段】ロアカバー8のうち、少なくとも作業者側の部位を透明部材で形成したため、アッパカバー9を開けなくても作業者側の多段変速プーリ13とベルト15の一部が見え、ベルト15の位置(回転数)を目視で確認することができる。また、ロアカバー8全体を透明部材で形成するようにすれば、両方の多段変速プーリ13、14と、ベルト15の全体が見え、ベルト15の位置だけでなく、内部の汚れなど全体状況を確認できる。従って、ボール盤1のメンテナンスを行う上において便利である。そして、ロアカバー17に窓18を形成し、そこに透明樹脂19を取付ける構造にすれば、既存のロアカバー17に対して後作業で透明窓を形成することができ、ロアカバー17全体を透明なものに交換したりする場合に比べてコストの面で有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボール盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドリルを用いて孔あけ加工を行うための工作機械としてボール盤が知られている。この種のボール盤としては、ドリルの種類に応じて回転数を変えるために、モータの回転軸とドリルの主軸にそれぞれを多段変速プーリを取付け、各多段変速プーリの間にベルトを掛けている。
【0003】
多段変速プーリ及びベルトは、ボール盤の上部に設けられたヘッドケース内に収納されている。多段変速プーリ及びベルトは、高速で駆動するため、接触防止や防塵のためにヘッドケースによって保護されている。ヘッドケースはロアカバーとアッパカバーから構成され、アッパカバーを開けてベルトを手で操作して、多段変速プーリにおけるベルトが掛かる位置を変更することにより、ドリルの回転数を変更することができる。ベルトの位置を変更した後、安全のためにアッパカバーは閉められる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−94207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあってはベルト位置を変更した後にアッパカバーを閉めるため、多段変速プーリにおけるベルトの位置を確認したい場合には、再度アッパカバーを開けて内部を見なければならず面倒である。特に、卓上型のボール盤の場合は、ヘッドケースの位置が高くなるため、小柄な人にはアッパカバーを開けて、ヘッドケースの内部を確認するのが大変である。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、アッパカバーを開けずにベルトの位置を確認することができるボール盤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、上部が開放した容器型のロアカバーと、該ロアカバーの上部を開閉自在に覆うアッパカバーとから形成されたヘッドケースを上部に備え、該ヘッドケース内にベルトを掛け回した一対の多段変速プーリを収納したボール盤において、前記ロアカバーのうち、少なくとも作業者側の部位を透明部材で形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、ロアカバー全体を透明部材で形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、ロアカバーの作業者側部位に窓を形成し、該窓に透明部材を取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ロアカバーのうち、少なくとも作業者側の部位を透明部材で形成したため、アッパカバーを開けなくても作業者側の多段変速プーリ及びベルトの一部が見え、ベルト位置を目視で確認することができる。ベルト位置を確認できるため、回転数を知ることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、ロアカバー全体を透明部材で形成したため、両方の多段変速プーリと、ベルト全体が見え、ベルト位置だけでなく、ヘッドケースの内部の汚れなど全体状況を確認できる。従って、ボール盤のメンテナンスを行う上において便利である。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、ロアカバーに窓を形成し、そこに透明部材を取付ける構造にしたため、既存のロアカバーに対して後作業で透明窓を形成することができ、ロアカバー全体を透明なものに交換したりする場合に比べて、コストの面で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示す図である。この実施形態に係るボール盤1は卓上型で、図示せぬ作業台の上に設置されており、全体として高い位置にある。
【0013】
ボール盤1は、ベース2、支柱3、テーブル4、ハンドル5、ドリルチャック6などを備えている。ドリルチャック6にはドリル6aが取り付けられ、ドリル6aは後述するヘッドケース7内部の機構によって回転される。ハンドル5を回すと、ドリルチャック6に保持されたドリル6aが回転しながら下降し、孔あけ加工を行うことができる。図1中、左側が作業者側で、ハンドル5は作業者の右手で操作される。
【0014】
ボール盤1の上部にはヘッドケース7が設置されている。ヘッドケース7は、上部が開放した容器状のロアカバー8と、そのロアカバー8の上部を開閉自在に覆うアッパカバー9とから構成されている。アッパカバー9は不透明樹脂製で、ロアカバー8は全体が透明樹脂(透明部材)製で形成されている。
【0015】
ロアカバー8の作業者寄りの底面からは、ドリルチャック6を回転させる主軸10が突出されており、作業者から遠い側の底面からはモータ11の回転軸12が突出されている。主軸10及び回転軸12には、それぞれ多段変速プーリ13、14が上下逆になる関係で取付けられ、その多段変速プーリ13、14間にループ状のベルト15が掛け回されている。多段変速プーリ13、14におけるベルト15の位置を変更することにより、ドリルチャック6の主軸10の回転数が変化する。作業者は使用するドリル6aの径や、作業内容により、回転数を選択する。
【0016】

ドリル6aの回転数を変えるためにベルト15の位置を変更する場合は、アッパカバー9を開け(図3)、内部のベルト15を手で持って一対の多段変速プーリ13、14における係合位置(上下位置)を変える。ベルト15の位置を変更した後、安全のため、アッパカバー9を閉めて、ヘッドケース7を閉塞する。
【0017】
そして、作業後に、ヘッドケース7内の多段変速プーリ13、14におけるベルト15の係合位置を確認したい場合は、ロアカバー8全体が透明樹脂製のため、アッパカバー9を再度開けなくてもロアカバー8を透した目視で内部の多段変速プーリ13、14を確認することができる。多段変速プーリ13、14が見えるため、そこに掛かっているベルト15の位置を容易に知ることができる(図4)。
【0018】
また、この実施形態では、ロアカバー8全体を透明樹脂で形成したため、両方の多段変速プーリ13、14と、ベルト15の全体が見える。従って、ベルト15の位置だけでなく、ヘッドケース7の内部の汚れの状況なども知ることができるため、清掃、整備などのメンテナンスを行う上において便利である。
【0019】
(第2実施形態)図5〜図7は、本発明の第2実施例を示す図である。本実施形態は、前記第1実施形態とほぼ同様の構成要素を備えている。よって、同一又は同等の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0020】
この実施形態に係るボール盤16では、ロアカバー17を不透明樹脂(金属でも可)で形成すると共に、ロアカバー17の作業者側に切欠状の窓18を形成し、そこに透明樹脂(透明部材)19を嵌め込んだ構造が採用されている(図5,6)。透明樹脂19の替わりに透明ガラスを用いても良い。
【0021】
この実施形態によれば、アッパカバー9を開けなくても、窓18から少なくとも作業者側の多段変速プーリ13を目視で確認することができるため、ベルト15の位置を知ることができる(図7)。
【0022】
また、ロアカバー17の一部に透明な窓18を形成する構造なので、不透明な既存のロアカバー17に対して後作業で透明な窓18を形成することができ、ロアカバー17全体を透明なものに交換したりする場合に比べてコストの面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るボール盤を示す側面図。
【図2】ボール盤を示す正面図。
【図3】アッパカバーを開けた状態のヘッドケースを示す正面図。
【図4】ヘッドケースを示す断面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係るヘッドケースを示す正面図。
【図6】アッパカバーを開けた状態のヘッドケースを示す正面図。
【図7】ヘッドケースを示す断面図。
【符号の説明】
【0024】
1、16 ボール盤
7 ヘッドケース
8、17 ロアカバー
9 アッパカバー
13、14 多段変速プーリ
15 ベルト
18 窓
19 透明樹脂(透明部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開放した容器型のロアカバーと、該ロアカバーの上部を開閉自在に覆うアッパカバーとから形成されたヘッドケースを上部に備え、該ヘッドケース内にベルトを掛け回した一対の多段変速プーリを収納したボール盤において、
前記ロアカバーのうち、少なくとも作業者側の部位を透明部材で形成したことを特徴とするボール盤。
【請求項2】
ロアカバー全体を透明部材で形成したことを特徴とする請求項1記載のボール盤。
【請求項3】
ロアカバーの作業者側部位に窓を形成し、該窓に透明部材を取付けたことを特徴とする請求項1記載のボール盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−66729(P2009−66729A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239758(P2007−239758)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】